JP2013099423A - ミシン - Google Patents
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Abstract
【課題】ミシンの下糸の糸巻き時に上糸が天秤に巻き込まれるのを防止する。
【解決手段】ミシン1は、内部に主軸45を設けたアーム部4と、上糸を担持し、主軸45の回転により上下動する縫針7と、主軸45の回転により上下動する天秤8と、上糸と協働して被加工布に縫製を行う下糸51を、主軸45の回転に連動してボビン52に巻回する下糸巻きを行う糸巻き機構50と、糸巻き機構50による下糸巻きを指示可能な糸巻きキー67及び起動ペダル70と、アーム部4に設けた糸供給源から天秤8を経て縫針7に至る上糸供給経路の途中部に設けられ、上糸に張力を付与する糸調子装置10と、上糸に付与する張力を変更する糸調子ソレノイド12と、を備え、下糸巻きの指示があった場合に、上糸に対し所定の第1張力を付与するように、糸調子ソレノイド12を制御する。
【選択図】図1
【解決手段】ミシン1は、内部に主軸45を設けたアーム部4と、上糸を担持し、主軸45の回転により上下動する縫針7と、主軸45の回転により上下動する天秤8と、上糸と協働して被加工布に縫製を行う下糸51を、主軸45の回転に連動してボビン52に巻回する下糸巻きを行う糸巻き機構50と、糸巻き機構50による下糸巻きを指示可能な糸巻きキー67及び起動ペダル70と、アーム部4に設けた糸供給源から天秤8を経て縫針7に至る上糸供給経路の途中部に設けられ、上糸に張力を付与する糸調子装置10と、上糸に付与する張力を変更する糸調子ソレノイド12と、を備え、下糸巻きの指示があった場合に、上糸に対し所定の第1張力を付与するように、糸調子ソレノイド12を制御する。
【選択図】図1
Description
本発明は、ミシンに関し、特に、下糸のボビンへの巻き取り時に上糸が天秤へ巻き込まれるのを防止したミシンに関する。
ミシンは、上糸と協働して被加工布を縫製する下糸をボビンに巻回して針板の下のミシン釜に収容して使用する。
従来、下糸をボビンに巻き取るのに針棒を駆動する主軸の回転を利用して行うミシンがある(例えば特許文献1の図9参照)。
このミシンでは、アーム部の上部に、ボビンを取り付ける糸巻き軸を備えた糸巻き機構を設け、糸巻き軸を支持した糸巻き軸受けに糸車を設置する。糸巻き軸受けは揺動自在であり、糸車を主軸に設けたプーリに対し離接自在とする。
ボビンに下糸を巻き取る時、操作者は糸立棒に取り付けた糸こまから糸を引き出してボビンに係止し、そのボビンを糸巻き軸に装着する。操作者が糸巻き軸受けを揺動することで糸車はプーリと接触する。糸車は、主軸とともに回転するプーリにより回転する。糸車の回転により、糸巻き軸受け及び糸巻き軸を介してボビンは回転する。糸こまから引き出した糸はボビンに巻き付けられる。
しかしながら、特許文献1のミシンでは、ボビンに下糸を巻き取る時、主軸の回転を利用するので、主軸の回転に連動して上下動する天秤が、上糸を天秤に通している場合に上糸供給源から引き出すことがある。ミシンは、上糸供給源から引き出された上糸が天秤に巻き込まれてしまうことがあった。
本発明の目的は、下糸のボビンへの巻き取り時に上糸が天秤へ巻き込まれるのを防止したミシンを提供することにある。
上記目的を達成するために、第1の発明は、内部に主軸を設けたアーム部と、上糸を担持し、前記主軸の回転により上下動する縫針と、前記主軸の回転により上下動する天秤と、前記上糸と協働して被加工布に縫製を行う下糸を、前記主軸の回転に連動してボビンに巻回する下糸巻きを行う糸巻き機構と、前記糸巻き機構による前記下糸巻きを指示可能な第1操作手段と、前記アーム部に設けた糸供給源から前記天秤を経て前記縫針に至る上糸供給経路の途中部に設けられ、前記上糸に張力を付与する糸調子装置と、前記糸調子装置により前記上糸に付与する張力を変更する駆動手段と、前記第1操作手段により前記下糸巻きの指示があった場合に、前記上糸に対し所定の第1張力を付与するように、前記駆動手段を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
本願第1発明のミシンは、糸巻き機構と、第1操作手段とを有する。操作者が第1操作手段により糸巻き機構の下糸巻きを指示すると、主軸の回転に連動して糸巻き機構は下糸をボビンに巻回する。この下糸巻きの実行時に、制御手段は糸調子装置を制御して第1張力を上糸に対して付与する。ミシンは、下糸巻きの実行時に天秤が上糸を通したままの状態で上下動しても、上糸供給源から余分な上糸を引き出すことがなく、上糸が天秤に巻き込まれることがなくなる。
第2の発明は、上記第1発明において、前記第1操作手段による前記下糸巻きの指示が解除された場合に、前記第1張力の付与を解除するように、前記駆動手段を制御することを特徴とする。
本願第2発明では、下糸巻きの指示が解除した場合、糸調子装置による張力付与を解除する。ミシンは、糸調子装置を駆動する駆動手段が不要に動作して劣化することを抑制することができる。
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記上糸と前記下糸との協働による前記被加工布への縫製を指示可能な第2操作手段を有し、前記制御手段は、前記第2操作手段により前記被加工布への前記縫製の指示があった場合に、前記上糸に対し前記第1張力よりも小さな第2張力を付与するように、前記駆動手段を制御することを特徴とする。
本願第3発明では、縫製時に、糸調子装置は弱めの張力を上糸に対し付与する。ミシンは、糸巻き時には、上糸の余分な引き出しを防止できる張力を上糸に付与し、且つ縫製時には、被加工布に対して最適な縫目を形成できる張力を上糸に付与することができる。
本発明によれば、下糸のボビンへの巻き取り時に上糸が天秤へ巻き込まれるのを防止することができる。
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。以下の説明では、図1の紙面左斜め下側、右斜め上側、左斜め上側、右斜め下側を、夫々ミシン1の前方、後方、左方、右方とする。
図1に示すように、本実施形態のミシン1は、ベッド部2と、脚柱部3と、アーム部4とを備える。ベッド部2は、作業テーブルT上に載置してある。脚柱部3は、ベッド部2の後端部から上方に立設する。アーム部4は、脚柱部3の上端部からベッド部2と対向するように前方へ延びる。
アーム部4は、ミシンモータ(図示略)の駆動力を主軸45(図5参照)を介して縫針7を有する針棒6を上下駆動する針棒駆動機構、上糸(図示略)を引き上げる天秤8を上下駆動する天秤駆動機構、及び糸調子装置10等を設けている。針棒駆動機構と天秤駆動機構は公知の技術である為、ここではその詳細な説明を省略する。
ミシン1は、ベッド部2の上方に作業台5と移動機構9を備える。移動機構9は、被加工布(図示略)を上下から挟んで保持する。移動機構9は、XY送り用パルスモータ74(図6参照)を駆動源として、X軸方向(左右方向)及びY軸方向(前後方向)に移動可能である。移動機構9は、XY送り用パルスモータ74の駆動により被加工布をX軸方向、Y軸方向に移動することができる。
図1、図2を参照して、アーム部4に設けた糸調子装置10について説明する。糸調子装置10は、図示しない糸供給源から天秤8を経て縫針7に至る上糸供給経路の途中部に設置してある。
糸調子装置10は、糸調子機構11と、糸調子ソレノイド12(駆動手段)と、押圧力伝達部材13と、ベアリング14等を備える。糸調子機構11は、アーム部4の右側フレーム4aに設ける。糸調子ソレノイド12は、アーム部4の左側フレーム4bに設ける。押圧力伝達部材13は、糸調子ソレノイド12の駆動力を1対の糸調子皿22、23のうちの押圧側糸調子皿22に伝達する。ベアリング14は、押圧力伝達部材13の中間ロッド31を支持する。
図2、図3を参照して、糸調子機構11について説明する。糸調子機構11は、アーム部4の右側フレーム4aと左側フレーム4bとに亙って一体的に水平状に形成した支持フレーム4c内部に設けてある。糸調子機構11は、糸調子台16と、糸調子軸18と、押圧側糸調子皿22と、被押圧側糸調子皿23とを備える。糸調子台16は、略円筒状に形成してある。糸調子軸18は、糸調子台16に対し相対移動不能に装着する。押圧側糸調子皿22と被押圧側糸調子皿23は、糸調子軸18の右端に装着する。
糸調子台16は、右側フレーム4aに形成した右方向きの円筒状の固定穴4gに固定ビス17により固着する。糸調子台16の内部は、左方側に設けた円柱状の軸受け穴16aと、右方側に軸受け穴16aに連続して設けたバネ収容穴16bとが形成してある。
糸調子軸18は、左側から右側に向かって、小径軸部18aと、大径軸部18bと、皿支持軸部18cと、ネジ形成軸部18dとを同軸上に一体的に形成している。小径軸部18aと大径軸部18bとは、略円筒形状である。大径軸部18bの外径は、小径軸部18aの外径よりも大きい。ネジ形成軸部18dは、その外周面に雄ネジを形成してある。皿支持軸部18cとネジ形成軸部18dとは、その中央部に所定幅を有するスリット18eを軸心に沿って形成し、径方向に2分割してある。小径軸部18aと大径軸部18bとは、後述する駆動ロッド25が挿通する挿通穴18fを形成してある。挿通穴18fは、スリット18eに連通する。
糸調子軸18は、その小径軸部18aを糸調子台16の軸受け穴16aに挿通する。固定ビス19は、糸調子軸18を糸調子台16に固定する。コイルバネからなる糸取りバネ20は、糸掛け部20aを有し、糸調子軸18の大径軸部18bに固定する。糸取りバネ20は、大径軸部18bの外側に位置するバネ収容穴16bに収容してある。皿支持軸部18cとネジ形成軸部18dは、糸調子台16の右端面よりも右方に突出する。
図3に示すように、皿押え部材21は、1対の半月状穴部21aを形成した円板状の部材である。皿押え部材21は、1対の半月状穴部21aの間に押圧部22bを形成する。押圧側糸調子皿22と被押圧側糸調子皿23は、夫々中心に軸穴22a、23aを有する略皿状の部材である。皿押え部材21は糸調子軸18の皿支持軸部18cに嵌め込む。皿押え部材21の押圧部22bは、皿支持軸部18cに形成したスリット18eに位置する。押圧側糸調子皿22と被押圧側糸調子皿23は夫々の軸穴22a、23aを皿支持軸部18cに嵌め込む。固定ナット24はネジ形成軸部18dに螺着し、押圧側糸調子皿22と被押圧側糸調子皿23の右方への移動を規制する。
押圧側及び被押圧側糸調子皿22、23は、夫々糸調子軸18に対して回転可能である。所定長さを有する駆動ロッド25は小径軸部18aと大径軸部18bの挿通穴18fに挿通する。駆動ロッド25の右端は、皿押え部材21の押圧部22bに当接可能である。
図2を参照して、糸調子ソレノイド12について説明する。糸調子ソレノイド12は、一般的な比例ソレノイドである。糸調子ソレノイド12は、制御装置60(図6参照)が駆動電圧を供給した時、駆動電圧(駆動電流)に応じて出力軸12aを右方に所定距離だけ進出駆動する。糸調子ソレノイド12は、出力軸12aの進出する距離に応じて押圧側糸調子皿22に対する押圧力を変える。出力軸12aは、右端側部分の内部に、ストローク調節ボルト27に螺合する雄ネジを有するボルト穴12bが形成してある。
ストローク調節ボルト27は、ボルト穴12bに螺合により連結する。固定ナット29は、ストローク調節ボルト27を出力軸12aに座金28を介して螺着する。ストローク調節ボルト27は、固定ナット29を緩めることにより、出力軸12aからの突出量Lを調節可能である。糸調子ソレノイド12は出力軸12aの右端部の座金28の後方に、環状のクッション材30が装着してある。
図2を参照して、押圧力伝達部材13について説明する。押圧力伝達部材13は、駆動ロッド25と、中間ロッド31等を備える。駆動ロッド25は小径軸部18aと大径軸部18bの挿通穴18fに挿通する。駆動ロッド25の右端は、皿押え部材21の押圧部22bに当接可能である。中間ロッド31は、円柱状に形成してあり、左端部分がストローク調節ボルト27の右端部に接続する。中間ロッド31は、右端部分が駆動ロッド25に当接可能である。
中間ロッド31は、右端部側がベアリング14の内部に嵌め込まれる。ベアリング14は、支持フレーム4cの右端部側に形成した大径穴部4dに圧入固定した円筒状のリニアボールブッシュ型のベアリングである。ベアリング14は、ストローク調節ボルト27と駆動ロッド25の間に位置する。中間ロッド31は、左端部側が支持フレーム4cの大径穴部4dの後方に設けた小径穴部4fに位置するように配設してある。小径穴部4fの径は、大径穴部4dの径よりも小さい。
中間ロッド31には、小径穴部4fの径と略同じ径を有する左右1対の座金32、33が嵌め込んである。中間ロッド31には、座金32、33の間に圧縮コイルバネ34が介装してある。左側の座金33は、中間ロッド31に固着したEリング35で位置決めしてある。
右側の座金32は、圧縮コイルバネ34のバネ力(付勢力)により、常にベアリング14に左方から圧接する。故に、中間ロッド31と出力軸12aとは、座金28がクッション材30に当接する非作動位置(図2参照)まで、一体的に左方に移動する。この時、中間ロッド31の右端は駆動ロッド25の左端に接触していない。
糸調子ソレノイド12は、左側フレーム4bより左側に突出する部分を合成樹脂製の保護カバー38で覆っている。保護カバー38は、左端面の中央部に糸調子ソレノイド12の出力軸12aの作動状態を確認する為の円形の切欠き孔38aを形成してある。
糸調子装置10の作動について説明する。糸調子ソレノイド12の非作動時には、前述したように、圧縮コイルバネ34のバネ力により、中間ロッド31と出力軸12aとが共に非作動位置に位置する。この時、駆動ロッド25の左端と中間ロッド31の右端との当接が解除してある為、駆動ロッド25はフリー状態となる。その結果、被押圧側糸調子皿23と押圧側糸調子皿22は何ら押圧力を受けることがなくフリー状態となる為、両糸調子皿22、23間の上糸に対して張力を付与することがない。
一方、糸調子ソレノイド12に駆動電圧を供給した時、出力軸12aは圧縮コイルバネ34のバネ力に抗して所定距離右方に進出する。図4に示すように、出力軸12aの進出により中間ロッド31は右方に移動して駆動ロッド25の左端に当接し、その駆動ロッド25を右方に押圧する。駆動ロッド25は、右端で皿押え部材21の押圧部22bを押圧する。皿押え部材21を介して押圧力を受けた押圧側糸調子皿22は被押圧側糸調子皿23を押圧する。それ故、被押圧側糸調子皿23と押圧側糸調子皿22は、両糸調子皿22、23間の上糸に対して張力を付与する。
図5を参照して、糸巻き機構50について説明する。アーム部4の上部には下糸51をボビン52に巻回する糸巻き機構50が設けてある。糸巻き機構50は、プーリ45aと、糸巻き軸53と、糸巻き車54と、糸巻き軸受け55と、ボビン押え軸56と、ボビン押え57と、リンク機構58とを備える。プーリ45aは、主軸45に設けてある。糸巻き軸53は、ボビン52を装着可能であり、上端がアーム部4の機枠Fから突出する。糸巻き軸53は、下端部が糸巻き車54と一体に形成してある。糸巻き車54は、プーリ45aに当接してプーリ45aの回転を糸巻き軸53に伝達する。糸巻き車54の周縁は、ゴム輪54aで被覆してある。糸巻き軸受け55は、前後方向(図5において左右方向)に変位可能であり、糸巻き軸53を支持している。糸巻き軸受け55は、糸巻き車54がプーリ45aに当接する回転位置と糸巻き車54がプーリ45aに当接しない退避位置との間を移動可能である。
糸巻き軸53の上端部近傍には、ボビン押え57が設けてある。ボビン押え57は、アーム部4の機枠Fに回動自在に挿通したボビン押え軸56に調節ネジ56aによって固定してある。調節ネジ56aはボビン押え57のボビン押え軸56への取り付け位置を調節する。ボビン押え57は、ボビン52に巻回した下糸51に当接する。ボビン押え57は、ボビン52の糸巻量に応じてボビン押え軸56を中心に回動する。
ボビン押え57は、上下方向略中央部分に、前後方向に延びる穴部57aを形成する。穴部57aは、ボビン52の鍔部52aが遊嵌する。穴部57aにより、ボビン押え57は、その操作部を幅広くしている。糸巻き軸受け55は、リンク機構58を介してボビン押え軸56と接続する。糸巻き軸受け55は、ボビン押え57を操作することで回転位置と退避位置との間で移動する。
操作者は、糸巻き軸53にボビン52を装着した後、ボビン押え57を操作する。糸巻き軸受け55は、プーリ45aに当接する回転位置に移動する。その後、操作者が糸巻きキー67(図6参照)をONした状態で起動ペダル70(図6参照)をONすることで、ミシン1は糸巻き処理を実行する。ミシンモータ72の駆動により主軸45がプーリ45aと共に回転し、プーリ45aの回転に伴って糸巻き軸53とボビン52は回転する。それ故、ミシン1は下糸51をボビン52に巻回することができる。起動ペダル70をOFFした場合、ミシンモータ72の駆動が停止し糸巻き処理は終了する。
図6を参照して、ミシン1の制御系の電気的構成について説明する。制御装置60は、CPU62とROM63とRAM64とを含むマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータにデータバス等を介して接続した入力インターフェース61及び出力インターフェース65等を有する。
入力インターフェース61は、糸巻きキー67を有する操作パネル66と、操作者による足踏み操作により縫製開始指令を出力する起動ペダル70等に電気的に接続する。出力インターフェース65は、ミシンモータ72と、XY送り用パルスモータ74と、糸調子ソレノイド12に夫々駆動回路71、73、75を介して電気的に接続する。
操作パネル66は、各種情報、各種指示を入力可能なキーと、情報表示用のディスプレイとを備える。糸巻きキー67は、操作者が押圧操作(ON操作)をすることで糸巻き処理の実行を指令可能なキーである。制御装置60は、操作者が糸巻きキー67を押圧操作(ON操作)した状態で足踏みによる起動ペダル70の押圧操作(ON操作)をすることにより糸巻き処理の実行指令を出力する。制御装置60は、操作者の足踏みによる起動ペダル70の押圧の解除操作(OFF操作)により糸巻き処理の中止指令を出力する。制御装置60は、操作者が糸巻きキー67を押圧していない状態(OFF操作)で足踏みによる起動ペダル70の押圧操作(ON操作)をすることにより縫製処理の実行指令を出力する。尚、糸巻きキー67のON操作と起動ペダル70のON操作とが併せて第1操作手段に相当し、糸巻きキー67のOFF操作と起動ペダル70のON操作とが併せて第2操作手段に相当する。
ROM63は、各種の駆動機構の駆動制御と各種模様を選択する模様選択制御と各種の表示制御とを含む縫製制御の制御プログラム、糸巻き処理の制御プログラム(図9参照)、縫製処理の制御プログラム(図10参照)等を予め格納している。
RAM64は、操作パネル66を介して入力した各種データ、CPU62が演算処理した演算結果を記憶する各種メモリ、ポインタ、カウンタ値を記憶する。図7に示すように、RAM64は、被加工布に縫目を形成する為の針落ち点を指示する複数のステッチデータを含む縫製データのデータテーブル80を記憶する。
図7を参照して、被加工布に縫目を形成する為の縫製データについて説明する。縫製データのデータテーブル80は、読み出す順序を示すデータ順位と、縫製データの種類と各種設定と指示値等からなるデータ内容とで構成してある。本実施形態において縫製データは、データ順位0から10の合計11個のデータからなる。縫製データは、ステッチデータと、エンドデータとを含んでいる。
ステッチデータは、X軸方向とY軸方向の相対的な座標により指示するデータである。エンドデータは、縫製処理の終了を指示するデータである。尚、縫製データとして、一時停止データ、糸の色を示す糸色データ、針棒6の上下動の速度を指示する縫製速度データ等、縫製に必要な各種パラメータを指示するデータを含むようにしてもよい。
図8を参照して、糸巻き処理及び縫製処理を実施する際に制御装置60が実行する制御手順を説明する。図8において、操作者がミシン1の電源をONし、図7の縫製データを選択すると、この処理が開始する。
S10において、制御装置60は、XY送り用パルスモータ74の駆動回路73に制御信号を出力する。制御装置60は、駆動回路73によりXY送り用パルスモータ74を駆動する。移動機構9(図1参照)がXY方向に移動し、被加工布は縫製開始位置に移動する。制御装置60は、処理をS15に移す。
S15では、制御装置60は、データテーブル80から縫製データを順に読み出す為のデータ順位カウンタNを0に設定し、処理をS20に移す。
S20では、制御装置60は、操作者が起動ペダル70を押圧操作によりONにしたか否かを判定する。操作者が起動ペダル70をONにしておらず判定が満たされない場合(S20:NO)、制御装置60はS20を繰り返す。操作者が起動ペダル70をONにした場合に判定が満たされ(S20:YES)、制御装置60は、処理をS25に移す。
S25では、制御装置60は、操作者が糸巻きキー67を押圧操作によりONにしたか否かを判定する。上記S20で起動ペダル70をONした時、糸巻きキー67がONである場合(S25:YES)、制御装置60は、処理をS100に移し後述の糸巻き処理を実行する。一方、上記S20で起動ペダル70をONした時、糸巻きキー67がOFFである場合(S25:NO)、制御装置60は、処理をS200に移し後述の縫製処理を実行する。S100で糸巻き処理を実行した後、制御装置60は、処理を上記S20に戻す。S200で縫製処理を実行した後、制御装置60は、処理を上記S10に戻す。
図9を参照し、上記S100の糸巻き処理の制御手順を説明する。操作者は、予め下糸51用の糸こまをミシン1のアーム部4に設けてある図示しない糸たて棒に装着する。操作者は、糸こまから引き出した下糸51を、図5に示すアーム部4の上部に設けた糸巻き機構50の糸巻き軸受け55に支持した糸巻き軸53の上端に導く。操作者は、下糸51を糸巻き軸53に装着したボビン52に、下糸51がボビン52から外れない程度に巻き付けておく。
S110において、制御装置60は、糸調子ソレノイド12の駆動回路75に制御信号を出力する。制御装置60は、駆動回路75により糸調子ソレノイド12に駆動電圧を供給する。糸調子装置10の押圧力伝達部材13は、右方に大きく移動する。押圧力伝達部材13の駆動ロッド25は、押圧側糸調子皿22を右方に強く押す。押圧側糸調子皿22と被押圧側糸調子皿23は、上糸に強い張力(第1張力)を付与する。制御装置60は、処理をS115に移す。
S115では、制御装置60は、ミシンモータ72の駆動回路71に制御信号を出力する。制御装置60は、駆動回路71によりミシンモータ72を駆動し、主軸45を回転させる。主軸45の回転とともにプーリ45aは回転する。プーリ45aの回転により、プーリ45aに接触した糸巻き車54は回転する。糸巻き車54の回転により、糸巻き軸受け55及びボビン52が回転して、下糸51はボビン52へ巻き付けられる。この時、主軸45の回転に伴い天秤8が上下動するが、糸調子装置10が上糸に第1張力を付与しているので、天秤8はアーム部4の上部に設けた図示しない上糸供給源から余分な上糸を引き出すことがない。故に、ミシン1は、ボビン52への下糸51の糸巻き処理を実施する時に上糸が天秤8に巻き込まれるのを防止することができる。尚、S115では、制御装置60は、XY送り用パルスモータ74を駆動しない。従って、移動機構9(図1参照)はXY方向に移動しない。制御装置60は、処理をS120に移す。
S120では、制御装置60は、操作者が起動ペダル70の押圧操作を解除してOFFにしたか否かを判定する。糸巻き処理実行中に、起動ペダル70をOFFにすると、制御装置60は、糸巻き処理を中止する。操作者が起動ペダル70をOFFにしておらず判定が満たされない場合(S120:NO)、制御装置60は、S120を繰り返す。操作者が起動ペダル70をOFFにした場合に判定が満たされ(S120:YES)、制御装置60は、処理をS125に移す。
S125では、制御装置60は、糸調子ソレノイド12の駆動回路75に制御信号を出力する。制御装置60は、駆動回路75による糸調子ソレノイド12への駆動電圧の供給を停止する。糸調子装置10は、圧縮コイルバネ34の作用により押圧力伝達部材13が左方へ移動する。押圧力伝達部材13の駆動ロッド25は、押圧側糸調子皿22の押圧を解除する。押圧側糸調子皿22と被押圧側糸調子皿23とは、上糸への第1張力の付与を解除する。ミシン1は、糸調子ソレノイド12への不要な通電による、無駄な電力消費と発熱による糸調子ソレノイド12の劣化とを抑制することができる。S125が終了すると、制御装置60は、処理をS130に移す。
S130では、制御装置60は、ミシンモータ72の駆動回路71に制御信号を出力する。制御装置60は、ミシンモータ72の駆動を停止し、主軸45の回転を停止する。制御装置60は、処理を図8のS20に戻す。
以上において、上記S110及びS125の各手順を実行する制御装置60は、各請求項記載の制御手段として機能する。
以上において、上記S110及びS125の各手順を実行する制御装置60は、各請求項記載の制御手段として機能する。
図10を参照し、上記S200の縫製処理の制御手順を説明する。S210で、制御装置60は、糸調子ソレノイド12の駆動回路75に制御信号を出力する。制御装置60は、駆動回路75により糸調子ソレノイド12に駆動電圧を供給する。糸調子装置10の押圧力伝達部材13は、右方に小さく移動する。押圧力伝達部材13の駆動ロッド25は、押圧側糸調子皿22を右方に弱く押す。押圧側糸調子皿22と被押圧側糸調子皿23は、上糸に弱い張力(第2張力)を付与する。制御装置60は、処理をS215に移す。
S215では、制御装置60は、ミシンモータ72の駆動回路71に制御信号を出力する。制御装置60は、駆動回路71によりミシンモータ72を駆動し、主軸45を回転させる。制御装置60は、処理をS220に移す。
S220では、制御装置60は、RAM64に記憶したデータテーブル80からデータ順位Nのデータを読み込み、処理をS225に移す。
S255では、制御装置60は、上記S220で読み込んだデータ順位Nのデータがステッチデータであるか否かを判定する。データ順位Nのデータがステッチデータである場合は判定が満たされ(S225:YES)、制御装置60は、処理をS230に移す。データ順位Nのデータがステッチデータ以外のデータである場合は判定が満たされず(S225:NO)、制御装置60は、処理を後述のS245に移す。
S230では、制御装置60は、被加工布の送り開始のタイミングか否かを判定する。被加工布の送り開始のタイミングでない場合には判定が満たされず(S230:NO)、制御装置60はS230を繰り返す。被加工布の送り開始のタイミングの場合に判定が満たされ(S230:YES)、制御装置60は、処理をS235に移す。
S235では、制御装置60は、XY送り用パルスモータ74の駆動回路73に制御信号を出力する。制御装置60は、駆動回路73によりXY送り用パルスモータ74を駆動する。制御装置60は、移動機構9を縫製データに従ってXY方向に移動し、被加工布に対し1データ分の縫製を行う。この時、第2張力を上糸に対し付与しているので、ミシン1は、天秤8の上昇時に糸調子機構11の調整によって被加工布側の上糸に適度な張力を付与することができる。ミシン1は、被加工布に対して最適な縫目を形成することができる。S235が終了すると、制御装置60は、処理をS240に移す。
S240では、制御装置60は、データ順位カウンタNの数値を1増加した後、処理を上記S220に戻す。
上記S225での判定が満たされない場合に移行するS245では、制御装置60は、糸調子ソレノイド12の駆動回路75に制御信号を出力する。制御装置60は、駆動回路75による糸調子ソレノイド12への駆動電圧の供給を停止する。糸調子装置10は、圧縮コイルバネ34の作用により押圧力伝達部材13が左方に移動する。押圧力伝達部材13の駆動ロッド25は、押圧側糸調子皿22の押圧を解除する。押圧側糸調子皿22と被押圧側糸調子皿23は、上糸への第2張力の付与を解除する。制御装置60は、処理をS250に移す。
S250では、制御装置60は、ミシンモータ72の駆動回路71に制御信号を出力する。制御装置60は、ミシンモータ72の駆動を停止し、主軸45の回転を停止する。制御装置60は、処理を図8のS10に戻す。
以上において、上記S210及びS245の各手順を実行する制御装置60は、各請求項記載の制御手段として機能する。
以上説明したように、本実施形態のミシン1は、操作者が糸巻きキー67をON操作した状態で起動ペダル70をON操作することにより糸巻き機構50の下糸巻きを指示する。下糸巻きでは、主軸45の回転に連動して糸巻き機構50が下糸51をボビン52に巻回する。下糸巻きの実行時には、糸調子装置10が第1張力を上糸に対して付与する。故に、ミシン1は、天秤8が上糸を通したままの状態で上下動しても、上糸供給源から余分な上糸を引き出すことがなく、上糸が天秤8に巻き込まれることがなくなる。
操作者が起動ペダル70をOFF操作して下糸巻きの指示を解除すると、糸調子装置10は上糸への張力付与を解除する。故に、ミシン1は、糸調子ソレノイド12への不要な通電による、無駄な電力消費と発熱による糸調子ソレノイド12の劣化とを抑制することができる。
ミシン1は、縫製時には第1張力よりも小さい第2張力を上糸に対し付与する。故に、ミシン1は、糸巻き時には、上糸の余分な引き出しを防止できる張力を上糸に付与し、且つ縫製時には、被加工布に対して最適な縫目を形成できる張力を上糸に付与することができる。
以下、本発明の実施形態のその他の変更を例示する。前述の第1指示手段は、起動ペダル70と操作パネル66に設けた糸巻きキー67とに限らない。起動ペダル70は、操作パネル66上に設けるキーであってもよい。糸巻きキー67は、押圧操作(ON操作)のみで制御装置60が糸巻き処理の実行指令を出力できるように構成してもよい。
糸調子ソレノイド12は、比例ソレノイドに限らず、ONとOFFのみを有するソレノイドであってもよい。この場合、ミシンは、下糸巻きを実行する時、糸調子ソレノイドをONすることで上糸に第1張力を付与する。ミシンは、縫製時に適切な張力を上糸に付与する為に、一対の糸調子皿22、23と固定ナット24の間に公知の糸調子バネを設ければよい。
図6中に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
図8、図9、図10に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
1 ミシン
4 アーム部
8 天秤
10 糸調子装置
12 糸調子ソレノイド(駆動手段)
13 押圧力伝達部材
22 押圧側糸調子皿
23 被押圧側糸調子皿
25 駆動ロッド
45 主軸
45a プーリ
50 糸巻き機構
51 下糸
52 ボビン
60 制御装置
67 糸巻きキー(第1操作手段、第2操作手段)
70 起動ペダル(第1操作手段、第2操作手段)
4 アーム部
8 天秤
10 糸調子装置
12 糸調子ソレノイド(駆動手段)
13 押圧力伝達部材
22 押圧側糸調子皿
23 被押圧側糸調子皿
25 駆動ロッド
45 主軸
45a プーリ
50 糸巻き機構
51 下糸
52 ボビン
60 制御装置
67 糸巻きキー(第1操作手段、第2操作手段)
70 起動ペダル(第1操作手段、第2操作手段)
Claims (3)
- 内部に主軸を設けたアーム部と、
上糸を担持し、前記主軸の回転により上下動する縫針と、
前記主軸の回転により上下動する天秤と、
前記上糸と協働して被加工布に縫製を行う下糸を、前記主軸の回転に連動してボビンに巻回する下糸巻きを行う糸巻き機構と、
前記糸巻き機構による前記下糸巻きを指示可能な第1操作手段と、
前記アーム部に設けた糸供給源から前記天秤を経て前記縫針に至る上糸供給経路の途中部に設けられ、前記上糸に張力を付与する糸調子装置と、
前記糸調子装置により前記上糸に付与する張力を変更する駆動手段と、
前記第1操作手段により前記下糸巻きの指示があった場合に、前記上糸に対し所定の第1張力を付与するように、前記駆動手段を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とするミシン。 - 請求項1記載のミシンにおいて、
前記制御手段は、
前記第1操作手段による前記下糸巻きの指示が解除された場合に、前記第1張力の付与を解除するように、前記駆動手段を制御する
ことを特徴とするミシン。 - 請求項1又は請求項2記載のミシンにおいて、
前記上糸と前記下糸との協働による前記被加工布への縫製を指示可能な第2操作手段を有し、
前記制御手段は、
前記第2操作手段により前記被加工布への前記縫製の指示があった場合に、前記上糸に対し前記第1張力よりも小さな第2張力を付与するように、前記駆動手段を制御する
ことを特徴とするミシン。
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