JP2013095954A - 銅合金箔、該銅合金箔の製造方法及び該銅合金箔を集電体とするリチウムイオン二次電池用電極及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

銅合金箔、該銅合金箔の製造方法及び該銅合金箔を集電体とするリチウムイオン二次電池用電極及びリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】銅箔中にWを銅合金として取り込み、常温での引張強さ650MPa以上、300℃×1時間熱処理後の引張強さ450MPa以上、導電率が80%以上の電解銅箔を提供すること。また、膨張、収縮の大きい集電体と集電体(銅箔)との密着性をポリイミドバインダにより保持し、集電体(銅箔)が破断しない銅箔を提供すること。
【解決手段】タングステン(W)を0.008〜0.020wt%含み、常温での引張強度が650MPa以上で、300℃×1時間後の引張強度が450MPa以上で、導電率が80%以上である銅合金箔。該銅合金箔は常温での伸びが2.5%以上、300℃×1時間後の伸びが3.5%以上である。
【選択図】なし

Description

本発明は、正極と、負極集電体の表面に負極活物質層が形成された負極と、非水電解液とを備えるリチウムイオン二次電池、ならびに該電池負極電極の集電体を構成するのに優れた電解銅箔に関するものである。
近年リチウムイオン二次電池の負極活物質として炭素材料の理論容量を大きく超える充放電容量を持つ次世代の負極活物質の開発が進められている。例えば、珪素(Si)、ゲルマニウム(Ge)や錫(Sn)などリチウム(Li)と合金化可能な金属を含む材料が期待されている。
これらのSi、GeやSnなどの活物質、特にSiやSnは電子伝導性が悪い。負極の導電性が悪いと、電極の内部抵抗が上がるため、サイクル特性が劣化する。そのため、導電材として黒鉛やカーボンブラック等の炭素材を活物質層に添加するのが一般的である。しかし、導電材として炭素材を用いても、ある程度の添加量超えると最早抵抗が下がらなくなることが分かってきた。
特に、SiやSnなどを活物質に用いる場合、これらの材料は、充放電時のLiの吸蔵・放出に伴う体積変化が大きいため、集電体と活物質との接着状態を良好に維持することが難しい。また、これらの材料はLiの挿入、脱離に伴う体積変化率が非常に大きく、充放電サイクルによって膨張、収縮を繰り返し、活物質粒子が微粉化したり、脱離したりするため、サイクル劣化が非常に大きいという欠点がある。
このような欠点を解消する目的で、活物質と集電体の密着性を改善するためポリイミドバインダを用いる提案がなされている。
ポリイミドバインダを使用するには該樹脂の硬化温度が300℃程度であり、この温度に耐えられる集電体(銅箔)の出現が期待されている。
このような期待に添うべく本発明者は、常温での引張強さが650MPa以上、300℃×1時間熱処理後の引張強さが450MPa以上、導電率が80%以上の電解銅箔を製箔すべく鋭意研究し、また、SiまたはSn合金系活物質の大きな膨張、収縮に対して、集電体(銅箔)と活物質との密着性をポリイミドバインダにより保持し、集電体(銅箔)が破断しない銅箔の開発に専念した結果、このような過酷な条件を満足する箔は、銅箔での達成は困難で、特殊な金属を取り込んだ銅合金箔で達成することに成功した。
ところで、銅合金箔製箔用電解銅めっき浴には硫酸銅めっき浴を使用し、銅箔表面の光沢化や平滑化、銅箔の応力減少などを目的として、該めっき浴には種々の添加剤が添加されている。添加剤を用いない場合には、銅箔に要求される表面形態や硬さなどは得られないことから、添加剤の重要性は非常に高い。特に硫酸銅めっき浴は単純酸性浴であるために均一電着性に劣り、添加剤無しでは電解銅箔は製造できない。硫酸銅めっき浴に用いられる添加剤には塩素イオン、ポリオキシエチレン系の界面活性剤、平滑剤、有機硫化物などの光沢剤、ニカワ、ゼラチンなどが提案され、使用されている。
硫酸銅めっき浴に塩素や添加剤を入れないと電気が流れやすい高電流部分(陽極に近い箇所や、陰極の端、とがったものの先端など)にめっきが集中し、一般的に言うヤケの状態(めっき面がより凸凹になる)になる。そのため通常の硫酸銅めっきでは20〜80ppm程度の塩素イオンを添加する。塩素が20ppm以下になると、上記理由から、ヤケが出やすくなり、逆に80ppmを超えるとレベリング作用が効きすぎて低電流部分(小穴の中など)でクモリが発生するためである。
しかし、メカニズムは不明であるが、電解めっき浴中に塩素イオンを添加すると銅箔中に特定の金属を混入させて(合金化して)銅箔の特性を変化させることができなくなる。即ち、塩素イオンが存在しない電解液では銅箔中に他の金属を混入させることが可能であり、他の金属を添加することで(合金化することで)銅箔の特性を変化させることができるが、電解液中に塩素イオンが入ると銅箔に他の金属が混入しづらくなり、銅箔の特性を他の金属で変化させることが極めて困難となる。
特許文献1、2には電解液にタングステン(W)を添加して製箔した銅箔につき開示している。Wを添加した電解めっき浴で製箔した銅箔はピンホールがなく、樹脂基板との接着性に優れ、180℃における熱間伸び率が高い電解銅箔が製造できる、と開示している。しかし、この文献の実施例には電解液に塩化物イオンを20〜100mg/l添加しており、また、銅箔中にWが取り込まれた、即ち、Cu−W合金箔が製造された、との記載はない。
特許3238278号公報 特開平9−67693号公報
リチウムイオン二次電池における重要な特性の一つに充放電サイクル寿命と過充電特性があり、更なる特性向上が求められている。
充放電サイクル寿命とは充放電を繰り返すと膨張収縮によるストレスなどによって集電体(銅箔)と活物質との接触が悪くなり、一部の活物質が充放電に利用できない電気伝導度になって容量の劣化を引き起こすに至る寿命である。
過充電特性とは、過充電が行われた際、集電体(銅箔)の経時的劣化による亀裂や破断が発生しないことを要求するものである。
本発明は銅箔中にWを銅合金として取り込み、その結果として、常温での引張強さ650MPa以上、300℃×1時間熱処理後の引張強さ450MPa以上、導電率が80%以上の電解銅箔を製箔することに成功したものである。
また、本発明はSi又はSn合金系活物質の大きな膨張、収縮に対して、集電体(銅箔)と活物質との密着性をポリイミドバインダにより保持し、集電体(銅箔)が破断しない銅箔の開発に成功したものである。
そこで本発明は、常温での引張強さ650MPa以上、300℃×1時間熱処理後の引張強さ450MPa以上、導電率が80%以上の電解銅箔を提供することを目的とする。
また、本発明はSi又はSn合金系活物質の大きな膨張、収縮に対して、集電体(銅箔)と活物質との密着性をポリイミドバインダによる保持し、集電体(銅箔)が破断しない銅箔を提供することを課題とする。
本発明の銅合金箔は、タングステン(W)を0.008〜0.020wt%含み、常温での引張強度が650MPa以上で、300℃×1時間後の引張強度が450MPa以上で、導電率が80%以上である。
本発明の銅合金箔は、常温での伸びが2.5%以上、300℃×1時間後の伸びが3.5%以上である。
本発明の銅合金箔の製造方法は、タングステン(W)を0.008〜0.020wt%を含み、常温での引張強度が650MPa以上で、300℃×1時間後の引張強度が450MPa以上で、導電率が80%以上である銅合金箔の製造方法であって、該銅合金箔は、Wを50〜150ppm、チオ尿素系化合物を5ppm〜10ppm、塩素イオンを10ppm〜50ppm添加した硫酸銅系電解液で製箔する製造方法である。
本発明のリチウムイオン二次電池用電極は、前記銅合金箔を集電体とし、該集電体の表面に、シリコン、ゲルマニウム、錫又はそれらの合金化合物またはそれらを主成分とする活物質が堆積されているリチウムイオン二次電池用電極である。
本発明のリチウムイオン二次電池は前記電極を用いたリチウムイオン二次電池である。
本発明は、常温での引張強さ650MPa以上、300℃×1時間熱処理後の引張強さ450MPa以上、導電率が80%以上の電解銅箔を製造し、提供することができる。
また、本発明によれば膨張、収縮性が大きく、かつポリイミドバインダにより密着性が向上したSi又はSn合金系活物質の大きな膨張、収縮に対して集電体(銅箔)と活物質との密着性を保持しながら、集電体(銅箔)が破断しない銅箔を提供することができ、該銅箔を集電体としたリチウムイオン二次電池用電極、該電極を使用したリチウムイオン二次電池を提供することができる。
また、本発明は塩素イオンの存在下でチオ尿素系化合物を添加することで、銅箔にタングステン(W)を添加することに成功し、上記特性の銅箔を製造可能とした優れた銅合金箔の製造方法を提供することができる。
上記特性の銅合金箔により、Si又はSn合金系活物質の大きな膨張、収縮に対して、集電体(銅箔)と活物質との密着性を保持しながら、集電体(銅箔)が破断しない電解銅箔を提供でき、該電解銅箔を負極集電体とすることで、優れたリチウムイオン二次電池を提供することができる、優れた効果を有するものである。
以下で「銅箔」と「銅合金箔」とを区別して使用する必要がない時は単に「銅箔」と表現する。
リチウムイオン二次電池を構成する負極電極は銅箔からなる集電体に活物質を塗布、乾燥して構成する。
本発明の負極集電体用電解銅箔は、300℃×1時間加熱後の引張り強さが450MPa以上、300℃×1時間加熱後の伸び率3.5%以上の電解銅合金箔である。
上述したように、リチウムイオン二次電池の負極集電体を構成する集電体(銅箔)は、ポリイミドバインダを使用する場合、通常300℃×1時間の熱処理に耐える必要性がある。即ち、リチウムイオン二次電池用集電体表面には活物質、導電材とバインダの混合物に溶剤などを加えてペースト状に調製した活物質組成物が塗布され、乾燥工程を経て、リチウムイオン二次電池の負極とするが、その乾燥工程において、300℃×1時間の熱処理を必要とする。この乾燥工程の加熱条件に耐え、かつ活物質の充放電サイクルによる膨張、収縮に耐える銅箔としては、300℃×1時間加熱後の引張り強さが450MPa以上、伸び率3.5%以上の電解銅箔が必要である。
また、SiやSnなどの活物質は電子伝導性が悪い。負極の導電性が悪いと、電極の内部抵抗が上がるため、サイクル特性が劣化する。そのため、集電体としての銅箔には80%以上の導電率が要求される。
本発明者等はCu−W合金箔を製造するのに種々の実験を繰り返した。その結果、電解液中に塩素が含まれていない場合は、箔中に容易にタングステンを取り込むことができ、タングステンを添加することで常温及び加熱後の箔の強度を高めることができる。しかし、銅合金箔の表面形状がヤケメッキ状となり、伸び率も低下する、との見解を得た。
また、電解液に塩素を添加した場合はエチレンチオ尿素等のチオ尿素系化合物を添加するとタングステンが箔中に取り込まれる、との見解を得た。また、エチレンチオ尿素等のチオ尿系化合物を含む場合は箔中に含有されるタングステンの量がある量を超えると銅合金箔の強度向上率が低下する、との見解も得た。これらの実験結果の原因については追及していない。
このような実験結果を踏まえて電解銅箔を次の条件で製箔する。
即ち、300℃×1時間加熱後の引張り強さが450MPa以上、300℃×1時間加熱後の伸びが3.5%以上の銅合金箔を製箔する硫酸銅系電解液にWを0.008〜0.020wt%、チオ尿素系化合物(例えばエチレンチオ尿素)を5ppm〜10ppm、塩素イオンを10ppm〜50ppm添加した電解めっき浴で製箔する。
銅合金箔中にWを0.008〜0.020wt%含有させる。Wの含有量を0.008wt%以上とするのは、これ以下ではWを含有させた効果が現れず、0.020wt%以上含有させても強度向上等の効果は少なく、導電率が低下するためである。従ってWの添加量は0.008〜0.020wt%、好ましくは0.010〜0.016wt%である。
電解液にチオ尿素系化合物を添加する第一の目的は銅箔中にWを取り込み、Cu−W合金箔とするためである。上述したように塩素を添加した電解液では銅箔にWを取り込むことはできない。しかし、本発明ではチオ尿素系化合物を添加することで、銅箔中にWを取り込むことに成功した。添加するチオ尿素系化合物の量を5ppm〜10ppmとするのは、5ppm以下では銅箔中にWを規定量取り込むことができず、300℃1時間加熱後の伸びが3.5%以下、もしくは引張強度450MPa以下となり、10ppmを超えて添加すると銅箔中にWが入りすぎて銅合金箔の300℃1時間加熱後の引張強度が450MPa以下、もしくは伸びが3.5%以下となり、導電率も80%以下となって好ましくないためである。なお、より好ましい添加量は5〜9ppmである。
塩素イオンの添加量は10〜50ppmである。塩素イオンが10ppm以下の添加では、300℃×1時間加熱後の引張り強さが450MPa以下となり、また、塩素イオンを50ppm以上添加すると、表面粗さが著しく大きくなり、電池としての100サイクル後の特性が悪くなるためである。従って、塩素イオンは10〜50ppmとすることが好ましく、特に好ましく20〜45ppmである。
なお、この時に銅箔中に含有されるピーク塩素濃度は100〜450ppmである。この銅箔中のピーク塩素濃度はSIMSを用いて強度を測定し、そのピーク強度から算出した値である。
電解銅合金箔は、タングステン、チオ尿素系化合物、塩素を上記した規定量添加した硫酸銅溶液を電解液として、貴金属酸化物被覆チタンを陽極に、チタン製回転ドラムを陰極として、電流密度40〜55A/dm2、液温45〜60℃の条件で電解処理することで製箔する。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。
〈実施例1〜39〉
表1に示す量の銅、硫酸、塩素イオン、タングステン、ETU(エチレンチオ尿素)を添加した硫酸銅電解液にチタンドラムをセットし、下記電解条件で電解銅合金箔を製膜した。
電解条件
電流密度 40〜55A/dm2、
温度 45〜60℃
このようにして製箔した電解銅合金箔に下記条件で防錆処理を施した。
製箔した電解銅合金箔(未処理銅合金箔)をCrO3;1g/l水溶液に5秒間浸漬して、クロメート処理を施し、水洗後乾燥させた。
なお、ここでは、クロメート処理を行ったが、ベンゾトリアゾール系処理、或いはシランカップリング剤処理、又はクロメート処理後にシランカップリング剤処理を行ってもよいことは勿論である。
Figure 2013095954
〈比較例41〜49〉
表2に示す量の銅、硫酸、塩素、タングステン、ETU(エチレンチオ尿素)を添加した硫酸銅電解液にチタンドラムをセットし、下記電解条件で電解銅合金箔を製膜した。
電解条件
電流密度 40〜55A/dm2、
温度 45〜60℃
このようにして製箔した銅箔に実施例1と同様の表面処理を行った。
〈比較例50〉
表2に示す量の銅、硫酸、塩素、タングステン、膠を添加した硫酸銅電解液にチタンドラムをセットし、下記電解条件で電解銅合金箔を製膜した。
電解条件
電流密度 40〜55A/dm2、
温度 45〜60℃
Figure 2013095954
作成した銅箔に付き次の試験を実施した。
銅合金箔中のWの含有量の測定
W含有量は、一定重量の電解銅合金箔を酸で溶解した後、溶液中のWをICP発光分光分析法により求めた。
銅合金箔の引張り強度、伸びの測定
引張強度及び伸び率をIPC−TM−650に基づき、引張試験機を用いてそれぞれ測定した。
(3)導電率の測定
導電率の測定は、20×200mm長の銅箔の抵抗値を測定し、銅箔の断面積で割って算出した。
抵抗値の測定はJIS−K6271に基づき、4端子法(電流電圧法)で測定した。
塩素含有量の測定
塩素含有量はSIMS(二次イオン質量分析計)で測定した。
(4)電池性能試験
リチウム二次電池用負極の作製
粉末状のSi合金系活物質(平均粒径0.1μm〜10μm)を90重量%、結着材としてポリイミド系バインダを10重量%の割合で混合して負極合剤を調整し、該負極合剤をN−メチルピロリドン(溶剤)に分散させて活物質スラリーとした。
次いで、このスラリーを実施例、比較例で製作した厚さ12μmの帯状の電解銅箔の両面に塗布し、乾燥後ローラープレス機で圧縮形成して、帯状負極とした。この帯状負極は、成形後の負極合剤の膜厚が両面共に90μmで同一であり、その幅が55.6mm、長さが551.5mmに形成された。
リチウム二次電池用正極の作製
炭酸リチウム0.5モルと炭酸コバルト1モルと混合し、空気中で900℃、5時間焼成して正極活物質(LiCoO2)とした。
この正極活物質(LiCoO2)を91重量%、導電剤としてグラファイトを6重量%、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを3重量%の割合で混合して正極合材を作製し、これをN−メチル−2ピロリドンに分散してスラリー状とした。
次に、このスラリーを厚み20μmの帯状のアルミニウムからなる正極集電体の両面に均一に塗布し、乾燥後ローラープレス機で圧縮成形して厚み160μmの帯状正極を得た。この帯状正極は、成形後の正極合剤の膜厚が表面共に70μmであり、その幅が53.6mm、長さが523.5mmに形成された。
リチウム二次電池の作製
上記のようにして作製した帯状正極と、帯状負極と、厚さが25μm、幅が58.1mmの微多孔性ポリプロピレンフィルムよりなるセパレーターと積層し、積層電極体とした。この積層電極体は、その長さ方向に沿って負極を内側にして渦巻型に多数回巻回し、最外周にセパレーターの最終端部をテープで固定し、渦巻式電極体とした。この渦巻式電極体の中空部分は、その内径が、3.5mm、外形が17mmに形成されている。
作製した渦巻式電極体を、その上下両面に絶縁板を設置した状態で、ニッケルメッキが施された鉄製の電池缶に収納し、正極及び負極の集電を行うために、アルミニウム製の正極リードを正極集電体から導出して電池蓋に接続し、ニッケル製の負極リードを負極集電体から導出して電池缶に接続した。
この渦巻式電極体が収納された電池缶に、プロピレンカーボネイトとジエチルカーボネイトとの等容量混合溶媒中にLiPF6を1モル/lの割合で溶解した非水電解液5.0gを注入した。次いで、アスファルトで表面を塗布された絶縁封口ガスケットを介して電池缶をかしめて電池蓋を固定し、電池缶内の気密性を保持させた。
以上のようにして、直径18mm、高さ65mmの円筒形リチウム二次電池を作製した。
このリチウム二次電池における負極の評価を次の方法により温度25℃で行った。
充放電試験(活物質と集電体の密着性の評価)
(1)Cレート算出
試験極中の活物質量によりCレートを算出し以下とした。
Si:1C=4,000mAh/g
(2)初回条件
充電:0.1C相当電流で定電流充電し、0.02V(対Li/Li+)到達後、定電位充電し、充電電流が0.05C相当に低下した時点で終了した。
放電:0.1C相当電流で定電流放電し、1.5Vになった時点で終了した。
充放電サイクル条件
初回充放電試験を実施した後、同じ0.1C相当電流で100サイクルまで充放電を繰り返した。
充放電試験終了後電池を分解し、負極集電体材料として用いた電極(銅箔)について変形の有無を観察し、その結果を充放電100サイクル後の箔に破断等の変形が無かったものを合格とし表1、2にOKで示した。
一方、箔が変形すると充放電中にセパレーターを破り内部短絡(ショート)の危険性が高く、サイクル寿命が低下することは勿論、他の安全性においても問題が発生する危険性があり、使用することが出来ないため、不合格とし、表1、2にNGで示した。
表1に示す評価結果から、本発明の銅合金箔は、Si又はSn合金系活物質の大きな膨張、収縮に対して集電体(銅箔)と活物質との密着性を保持しながら、集電体(銅箔)が破断しないことを実証している。
表1から明らかなように、実施例1〜39は電解銅箔を製箔する硫酸銅系電解液にWを50〜200ppm、エチレンチオ尿素を5ppm〜10ppm、塩素イオンを10ppm〜50ppm添加したことで、350℃×1時間加熱後の引張り強さが450MPa以上、350℃×1時間加熱後の伸びが3.5%以上の電解銅箔を製造することがで、この銅箔を集電体としたリチウムイオン二次電池も高い性能を発揮した。
より具体的には、実施例1〜3、11〜13、21〜23はETUの添加量が少なく、塩素イオン濃度が異なる実施例であり、銅合金箔中のW濃度が塩素イオン濃度に反比例して少なくなっている現象が見られる。
実施例4〜6、14〜16、24〜26はETUの添加量が標準程度で、塩素イオン濃度が異なる実施例であり、銅合金箔中のW濃度が塩素イオン濃度に反比例して少なくなる傾向が見られる。
実施例7〜9、17〜19、27〜20はETUの添加量を多くし、塩素イオン濃度が異なる実施例であり、ETUの濃度が高いと塩素イオン濃度の影響は銅合金箔中に含有するWの濃度に対し、その影響は顕著でなくなる。
電解液中のW濃度の変化は、Wの添加量が50〜100wt%の間では銅合金箔中に含有するWの濃度にあまり変化がない。また、W添加量が150〜200wt%の間では銅合金箔中に含有するWの濃度にあまり変化がない。しかし、Wの添加量が100〜150の間では顕著な増加傾向が見られる。
銅合金箔中に含有するWの濃度の銅箔特性への影響、導電率への影響については、相関関係は見られない。
比較例41は電解液中のW濃度が低く、銅合金箔中に含有するW濃度が低すぎたために加熱後の強度が不足し、電池性能を満足することができなかった。
比較例42、43は電解液中のW濃度が高く、銅合金中に含有するW濃度が多すぎたため、加熱後の強度が不足し、導電率も80%以下であった。この箔は電池性能試験で集電体に変形は生じなかったが、導電率が劣るため、電池としては満足できないものとなった。
なお、比較例43は電解液中の塩素イオンの量が少なかったために、銅合金箔中にWが多く取り込まれたものと思われる。
比較例44は塩素イオンとETUとの添加量を少なくしたため銅合金箔中のW濃度が少なく、満足できるものとはならなかった。
比較例45はETUを添加しなかったために銅合金箔中にWを取り込むことができず、満足できるものとはならなかった。
比較例46はETUの添加量が少ないために銅合金箔中のW濃度が不足し、満足できるものではなかった。
比較例47はETUの添加量が多すぎたために銅合金箔中のW濃度が高くなり、脆い箔となってしまった。
比較例48、49、50は塩素イオンを大量に添加したため、レベリング作用により銅箔表面に曇りが発生し、また、加熱後の銅箔特性が落ち、満足できないものとなった。
比較例50はETUに代えて膠を添加しCu−W合金箔を作成しようとした例である。表2に示すようにWの取り込みはできなかった。このように、塩素イオンの添加を必須とする電解液でタングステンを含有し、銅合金箔を製造にはETUの添加が必要である。
上述したように本発明は、常温での引張強さが650MPa以上で、300℃×1時間熱処理後の引張強さが450MPa以上で、導電率が80%以上の電解銅箔を製造し、提供することができる優れた効果を有する。
また、本発明は膨張、収縮性が大きく、かつポリイミドバインダにより密着性が向上したSi又はSn合金系活物質の大きな膨張、収縮に対して集電体(銅箔)と活物質との密着性を保持しながら、集電体(銅箔)が破断しない銅箔を提供することができ、該銅箔を集電体としたリチウムイオン二次電池用電極、該電極を使用したリチウムイオン二次電池を提供することができる優れた効果を有するものである。
また、本発明は塩素イオンの存在下でチオ尿素系化合物を添加することで、銅箔にタングステン(W)を添加することに成功し、上記特性の銅箔を製造可能とした優れた銅合金箔の製造方法を提供することができる。
上記特性の銅合金箔により、Si又はSn合金系活物質の大きな膨張、収縮に対して、集電体(銅箔)と活物質との密着性を保持しながら、集電体(銅箔)が破断しない電解銅箔を提供でき、該電解銅箔を負極集電体とすることで、優れたリチウムイオン二次電池を提供することができる、優れた効果を有するものである。

Claims (6)

  1. タングステン(W)を0.008〜0.020wt%含み、常温での引張強度が650MPa以上で、300℃×1時間後の引張強度が450MPa以上で、導電率が80%以上である銅合金箔。
  2. 常温での伸びが2.5%以上、300℃×1時間後の伸びが3.5%以上である請求項1に記載の銅合金箔。
  3. タングステン(W)を0.008〜0.020wt%含み、常温での引張強度が650MPa以上で、300℃×1時間後の引張強度が450MPa以上で、導電率が80%以上である銅合金箔の製造方法であって、該銅合金箔は、Wを50~200ppm、チオ尿素系化合物を5ppm〜10ppm、塩素イオンを10ppm〜50ppm添加した硫酸銅系電解液で製箔する銅合金箔の製造方法。
  4. 請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用電解銅箔の表面に、シリコン、ゲルマニウム、錫又はそれらの合金化合物またはそれらを主成分とする活物質が堆積されているリチウムイオン二次電池用電極。
  5. 請求項3に記載の製造方法で製造されたリチウムイオン二次電池用電解銅箔の表面に、シリコン、ゲルマニウム、錫又はそれらの合金化合物またはそれらを主成分とする活物質が堆積されているリチウムイオン二次電池用電極。
  6. 請求項4または5に記載のリチウムイオン二次電池用電極を使用したリチウムイオン二次電池。
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