JP2008034359A - 非水電解液二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】サイクル特性に優れた非水電解液二次電池を提供すること。
【解決手段】非水電解液二次電池は、ケイ素系材料からなる活物質の粒子12aを含む活物質層12を備えた負極10を有する。該二次電池に対して電池容量の50%以上の充放電を少なくとも5回行った後の負極10の比抵抗が20〜900mΩ・cmである。活物質の粒子12aが、JIS G2312に規定される金属ケイ素からなることが好ましい。金属材料13の被覆が、ピロリン酸銅浴を用いた電解めっきによって形成されていることも好ましい。
【選択図】図1
【解決手段】非水電解液二次電池は、ケイ素系材料からなる活物質の粒子12aを含む活物質層12を備えた負極10を有する。該二次電池に対して電池容量の50%以上の充放電を少なくとも5回行った後の負極10の比抵抗が20〜900mΩ・cmである。活物質の粒子12aが、JIS G2312に規定される金属ケイ素からなることが好ましい。金属材料13の被覆が、ピロリン酸銅浴を用いた電解めっきによって形成されていることも好ましい。
【選択図】図1
Description
本発明は、リチウム二次電池などの非水電解液二次電池に関する。
本出願人は先に、表面が電解液と接する一対の集電用表面層と、該表面層間に介在配置された、リチウム化合物の形成能の高い活物質の粒子を含む活物質層とを備えた非水電解液二次電池用負極を提案した(特許文献1参照)。この負極の活物質層には、リチウム化合物の形成能の低い金属材料が浸透しており、浸透した該金属材料中に活物質の粒子が存在している。活物質層がこのような構造になっているので、この負極においては、充放電によって該粒子が膨張収縮することに起因して微粉化しても、その脱落が起こりづらくなる。その結果、この負極を用いると、電池のサイクル寿命が長くなるという利点がある。
しかし本発明者らが更に検討を重ねたところ、前記の負極は、充放電の繰り返しに起因する活物質の粒子の脱落は防止できるものの、活物質層中への前記の金属材料の浸透の仕方や浸透の程度によっては、充放電を繰り返すことで活物質の粒子が電気的に孤立しやすくなる場合があることが判明した。
従って本発明の目的は、前述した従来技術の負極よりも性能が一層向上した非水電解液二次電池を提供することにある。
本発明は、ケイ素系材料からなる活物質の粒子を含む活物質層を備えた負極を有する非水電解液二次電池において、
前記電池に対して電池容量の50%以上の充放電を少なくとも5回行った後の前記負極の比抵抗が20〜900mΩ・cmであることを特徴とする非水電解液二次電池を提供するものである。
前記電池に対して電池容量の50%以上の充放電を少なくとも5回行った後の前記負極の比抵抗が20〜900mΩ・cmであることを特徴とする非水電解液二次電池を提供するものである。
また本発明は、ケイ素系材料からなる活物質の粒子を含む活物質層を備えた負極を有する非水電解液二次電池用において、
前記電池に対して電池容量の50%以上の充放電を少なくとも5回行った後の前記負極について、対極として金属リチウムを用いた交流インピーダンス測定を行ったときの抵抗虚数成分Z”が5〜500mΩ・cm2であることを特徴とする非水電解液二次電池を提供するものである。
前記電池に対して電池容量の50%以上の充放電を少なくとも5回行った後の前記負極について、対極として金属リチウムを用いた交流インピーダンス測定を行ったときの抵抗虚数成分Z”が5〜500mΩ・cm2であることを特徴とする非水電解液二次電池を提供するものである。
本発明の非水電解液二次電池によれば、充放電による体積変化に起因して負極中の活物質の粒子が微粉化してもその脱落が効果的に防止されると共に、電気的に孤立した活物質の粒子が負極中に発生することも効果的に防止される。その結果、本発明の電池はサイクル特性に優れたものとなる。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には本発明の非水電解液二次電池における負極の一実施形態の断面構造の模式図が示されている。負極10は、集電体11と、その少なくとも一面に形成された活物質層12を備えている。なお図1においては、便宜的に集電体11の片面にのみ活物質層12が形成されている状態が示されているが、電池の構成によっては、活物質層は集電体の両面に形成されていてもよい。
活物質層12は、活物質の粒子12aを含んでいる。活物質としては、ケイ素系材料が用いられる。ケイ素系材料を用いることは、負極重量あたりの容量密度を向上させる点から有利である。
ケイ素系材料としては、リチウムの吸蔵が可能で且つケイ素を含有する材料、例えばケイ素単体、ケイ素と金属との合金、ケイ素酸化物などを用いることができる。これらの材料はそれぞれ単独で、或いはこれらを混合して用いることができる。前記の金属としては、例えばCu、Ni、Co、Cr、Fe、Ti、Pt、W、Mo及びAuからなる群から選択される1種類以上の元素が挙げられる。これらの金属のうち、Cu、Ni、Coが好ましく、特に電子伝導性に優れる点、及びリチウム化合物の形成能の低さの点から、Cu、Niを用いることが望ましい。本実施形態においては、後述する理由により、ケイ素系材料として、JIS G 2312に規定される金属ケイ素を用いることが好ましい。負極を電池に組み込む前に、又は組み込んだ後に、ケイ素系材料からなる活物質に対してリチウムを吸蔵させてもよい。
活物質層12においては、粒子12aの表面の少なくとも一部が、リチウム化合物の形成能の低い金属材料13で被覆されている。この金属材料13は、粒子12aの構成材料と異なる材料である。該金属材料13で被覆された該粒子12aの間には空隙が形成されている。つまり該金属材料13は、リチウムイオンを含む非水電解液が粒子12aへ到達可能なような隙間を確保した状態で該粒子12aの表面を被覆している。図1中、金属材料13は、粒子12aの周囲を取り囲む太線として便宜的に表されている。なお同図においては、活物質層12に含まれる粒子12aのうち、他の粒子との間に接触がないように描かれているものが存在するが、これは活物質層12を二次元的にみたことに起因するものであり、実際は各粒子は他の粒子と直接又は金属材料13を介して接触している。「リチウム化合物の形成能の低い」とは、リチウムと金属間化合物若しくは固溶体を形成しないか、又は形成したとしてもリチウムが微量であるか若しくは非常に不安定であることを意味する。
前記の金属材料13は導電性を有するものであり、その例としては銅、ニッケル、鉄、コバルト又はこれらの金属の合金などが挙げられる。特に金属材料13は、活物質の粒子12aが膨張収縮しても該粒子12aの表面の被覆が破壊されにくい延性の高い材料であることが好ましい。そのような材料としては銅を用いることが好ましい。
金属材料13は、活物質層12の厚み方向全域にわたって存在していることが好ましい。そして金属材料13のマトリックス中に活物質の粒子12aが存在していることが好ましい。これによって、充放電によって該粒子12aが膨張収縮することに起因して微粉化しても、その脱落が起こりづらくなる。また、金属材料13を通じて活物質層12全体の電子伝導性が確保されるので、電気的に孤立した活物質の粒子12aが生成すること、特に活物質層12の深部に電気的に孤立した活物質の粒子12aが生成することが効果的に防止される。このことは、活物質として半導体であり電子伝導性の乏しい材料であるケイ素系材料を用いる場合に特に有利である。金属材料13が活物質層12の厚み方向全域にわたって活物質の粒子12aの表面に存在していることは、該材料13を測定対象とした電子顕微鏡マッピングによって確認できる。
金属材料13は、粒子12aの表面を連続に又は不連続に被覆している。金属材料13が粒子12aの表面を連続に被覆している場合には、金属材料13の被覆に、非水電解液の流通が可能な微細な空隙を形成することが好ましい。金属材料13が粒子12aの表面を不連続に被覆している場合には、粒子12aの表面のうち、金属材料13で被覆されていない部位を通じて該粒子12aへ非水電解液が供給される。このような構造の金属材料13の被覆を形成するためには、例えば後述する条件に従う電解めっきによって金属材料13を粒子12aの表面に析出させればよい。
活物質の粒子12aの表面を被覆している金属材料13は、その厚みの平均が好ましくは0.05〜2μm、更に好ましくは0.1〜0.25μmという薄いものである。つまり金属材料13は最低限の厚みで以て活物質の粒子12aの表面を被覆している。これによって、エネルギー密度を高めつつ、充放電によって粒子12aが膨張収縮して微粉化することに起因する脱落を防止している。また粒子12a間の電気的接触を確保している。ここでいう「厚みの平均」とは、活物質の粒子12aの表面のうち、実際に金属材料13が被覆している部分に基づき計算された値である。従って活物質の粒子12aの表面のうち金属材料13で被覆されていない部分は、平均値の算出の基礎にはされない。
金属材料13で被覆された粒子12aどうしの間には空隙が形成されている。この空隙は、リチウムイオンを含む非水電解液の流通の経路としての働きを有している。この空隙の存在によって非水電解液が活物質の粒子12aへ容易に到達するので、初期充電の過電圧を低くすることができる。その結果、負極の表面でリチウムのデンドライトが発生することが防止される。デンドライトの発生は両極の短絡の原因となる。過電圧を低くできることは、非水電解液の分解防止の点からも有利である。非水電解液が分解すると不可逆容量が増大するからである。更に、過電圧を低くできることは、正極がダメージを受けにくくなる点からも有利である。
更に、粒子12a間に形成されている空隙は、充放電で活物質の粒子12aが体積変化することに起因する応力を緩和するための空間としての働きも有する。充電によって体積が増加した活物質の粒子12aの体積の増加分は、この空隙に吸収される。その結果、該粒子12aの微粉化が起こりづらくなり、また負極10の著しい変形が効果的に防止される。
本実施形態において用い得る活物質であるケイ素は半導体であり電子伝導性の乏しい材料であることが知られている。そこで本実施形態においては、活物質層12の電子伝導性を確保する目的で、金属材料13を用いている。従って本実施形態においては、負極10の比抵抗(JIS K 6911)が低い値に維持されている。また負極10の反応抵抗が低い値に維持されている。特に、本実施形態の電池は、充放電を繰り返した後であっても負極の10の比抵抗及び反応抵抗が低い値に維持されていることによって特徴付けられる。
具体的には、本実施形態の二次電池に対して電池容量50%以上の充放電を少なくとも5回行った後に該電池から取り出された負極10の比抵抗が20〜900mΩ・cmという低い値となっており、好ましくは30〜600mΩ・cm、更に好ましくは40〜400mΩ・cmという低い値となっている。充放電を繰り返した後でも負極10の比抵抗が低い値に維持されていることによって、本実施形態の二次電池はサイクル特性に優れたものとなる。比抵抗の測定は、露点−40℃以下の環境にて行われる。
これに対して従来の二次電池においては、充放電によって負極活物質の粒子が微粉化することに起因して、電気的に孤立した粒子が多数発生し、それによって負極の比抵抗が充放電を繰り返すに連れて次第に上昇していた。その結果、電池のサイクル特性を高めることが困難であった。
前記の充放電の条件に特に制限はないが、充電終止電圧4.2、放電終止電圧2.7にて電池容量の100%の充放電を充放電レート0.2Cで行うことが、測定の再現性が最も良好になることから好ましい。
本実施形態において、負極10の比抵抗が充放電の繰り返しにより変化していく基準を、充放電を少なくとも5回行った後とした理由は次の通りである。一般に市販されている二次電池では、充放電を1回以上行って、電池を即使用可能な状態にして市場に出すことが通常である。従って前記の基準を、充放電を少なくとも5回行った後に設定すれば、即使用可能な状態を基準として、比抵抗の高低を客観的に評価できる。このような理由によって、充放電を少なくとも5回行った後を基準としたものである。充放電を50回、特に100回行った後であっても、負極10は、上述の比抵抗の値を満たすことが好ましい。充放電の程度を電池容量の50%以上とした理由は、一般に市販されている二次電池では、100%フル充放電を、例えば0.05C程度の低レートにて最低1回以上行っているところ、初期活性化のためには少なくとも電池容量の50%以上の充放電を1回以上行う必要があることによるものである。電池の容量は、正極及び負極の容量のうち、容量が小さい方の極の当該容量に依存する。
本実施形態において、電池容量の50%以上の充放電を少なくとも5回行った後の負極10の比抵抗が前記の上限値である900mΩ・cmを超えると、負極全体としての導電性が不十分となってしまう。一方、比抵抗の下限値に関しては、小さければ小さいほど好ましいが、20mΩ・cm程度に低ければ、負極全体の導電性が十分に確保される。
本実施形態においては、比抵抗に加えて、電池容量の50%以上の充放電を少なくとも5回行った後の負極10の表面抵抗(JIS K 6911)が0.5〜3mΩ/cm2、特に0.8〜1.5mΩ/cm2という低い値になっていることが好ましい。充放電を繰り返した後でも負極10の表面抵抗が低い値に維持されていることによって、本実施形態の二次電池はサイクル特性に一層優れたものとなる。
更に本実施形態の二次電池においては、該電池に対して上述の条件での充放電を上述の回数行った後に、該電池から取り出された負極10について、対極として金属リチウムを用いた交流インピーダンス測定を行ったときの抵抗虚数成分Z”が好ましくは5〜500mΩ・cm2、更に好ましくは10〜500mΩ・cm2、一層好ましくは10〜100mΩ・cm2、特に好ましくは10〜50mΩ・cm2という低い値になっている。交流インピーダンス測定における抵抗虚数成分Z”は、電極の反応抵抗の尺度となるものであり、この値が小さいほど電極の反応抵抗が小さく、レート特性、特に低温におけるレート特性が良好であることを意味する。抵抗虚数成分Z”は、交流インピーダンス測定で得られたcole−coleプロットにおける円弧の頂点の位置(Z”=|Z|sinθ)での値である。上述の抵抗虚数成分Z”の範囲は、上述の条件での充放電を少なくとも5回行った後において満足する必要があり、特に、充放電を少なくとも20回行った後において満足することが好ましい。
交流インピーダンス測定は、上述のとおり対極に金属リチウムを用い、また参照極にも金属リチウムを用いたラミネート型の三極セルによって測定される。印加電圧は10mVであり、周波数は10MHzから0.1Hzの範囲とする。測定は、20℃で行われる。セルの緊縛圧力は0.4kg/cm2とする。交流インピーダンス測定に用いる三極セルの電解液は、ジエチルカーボネートとモノフッ化エチレンカーボネートとの1:1(体積比)混合物に、1mol/lとなるようにLiPF6を溶解させたものを用いる。
なお場合によっては、二次電池から負極を取り出さず、二次電池の状態で交流インピーダンスの測定ができる場合がある。この場合には、二次電池の対極として金属リチウムを用い、また負極に隣接して金属リチウムからなる参照極を配置し、見かけ上三極セルを組み立てる。そして二次電池の充放電を行う場合には、参照極は用いずに、対極と負極を用いて行う。その後の交流インピーダンス測定は、参照極も含めた三極で行う。このようにして測定された抵抗虚数成分Z”は、二次電池から取り出された負極を対象として測定された抵抗虚数成分Z”と実質的に同じになる。
充放電を繰り返しても負極10の比抵抗や表面抵抗が上昇しないようにするためには、及び交流インピーダンス測定における抵抗虚数成分Z”が上昇しないようにするためには、例えば用いる活物質の粒子12aの材質の選択や、活物質層12の構造の工夫などの手段を採用すればよい。
活物質の粒子12aの材質の選択に関しては、後述する条件に従い電解めっきを行うことによって、粒子12aの表面を金属材料13で安定的に被覆することが可能となる材料から活物質の粒子12aを構成することが有利である。この観点から本発明者らが鋭意検討した結果、活物質の粒子12aをJIS G 2312に規定される金属ケイ素から構成することが有効であることが判明した。純ケイ素は半導体であり電子伝導性が低いことは先に述べた通りであるところ、金属ケイ素はケイ素を95〜99重量%含み、その他に鉄やアルミニウムなどの金属元素を1%前後含み、更に炭素、リン、硫黄、カルシウムなどの非金属元素を含むことから、純ケイ素に比較して電子伝導性が高い材料である。従って、金属ケイ素からなる活物質の粒子12aは、その表面におけるめっき核の発生が可能な活性サイトが多数均一に存在する。その結果、活物質の粒子12aの材料として金属ケイ素を用い、且つ後述する条件に従い電解めっきを行うことによって、粒子12aの表面を金属材料13で安定的に被覆することが可能となる。
本実施形態においては、金属ケイ素として、特にリチウム合金形成能の高い金属元素を0.1〜0.6重量%含むものを用いることが、リチウム拡散性に優れるため好ましい。そのような金属元素としては、例えばアルミニウムが挙げられる。
なお負極活物質の材料としてケイ素系材料を用いた従来の技術では、純度4N(99.99%)ないし5N(99.999%)の多結晶ケイ素を原料として用い、その電子伝導性を高めるために、3族元素や5族元素をドーピングしたり、金属元素との合金を形成したりすることが通常であった。しかし負極活物質の材料として、蒸留による高純度化精製工程を経ていない金属ケイ素を用いることは従来試みられたことはなかった。
活物質層12の構造を工夫することで、充放電を繰り返しても負極10の比抵抗や表面抵抗が上昇しないようにするためには、及び交流インピーダンス測定における抵抗虚数成分Z”が上昇しないようにするためには、例えば活物質層12の厚み方向の全域にわたって活物質の粒子12aが電極反応に利用されるようにすることが有利である。この理由は、すべての粒子12aがこれ以上微粉化が進行しないという状態に至るまでの充放電サイクル数が増加するからである。一部の粒子しか電極反応に利用されないような構造の場合には、電極反応に利用される粒子の数が実質的に少なくなるので、その粒子への付加が大きくなることから微粉化が加速度的に進行し、これ以上微粉化が進行しないという状態に至るまでの充放電サイクル数が極端に少なくなる。この観点から、活物質層12は、厚み方向の全域にわたってリチウムイオンを含む非水電解液が円滑に流通可能な空隙を有していることが好ましい。非水電解液が活物質の粒子12aへ容易に到達することは、初期充電の過電圧を低くすることができるという点からも有利である。負極の表面でリチウムのデンドライトが発生することが防止されるからである。デンドライトの発生は両極の短絡の原因となる。過電圧を低くできることは、非水電解液の分解防止の点からも有利である。非水電解液が分解すると不可逆容量が増大するからである。更に、過電圧を低くできることは、正極がダメージを受けにくくなる点からも有利である。
活物質層12は、好適には活物質の粒子12a及び結着剤を含むスラリーを集電体上に塗布し乾燥させて得られた塗膜に対し、所定のめっき浴を用いた電解めっきを行い、活物質の粒子12a間に金属材料13を析出させることで形成される。金属材料13の析出の程度は、負極10の比抵抗に影響を及ぼす。前述の比抵抗の値を実現するためには、電解めっきによって金属材料13を析出させるための条件を適切なものとすることが好ましい。めっきの条件にはめっき浴の組成、めっき浴のpH、電解の電流密度などがある。めっき浴のpHに関しては、これを7.1〜11に調整することが好ましい。pHをこの範囲内とすることで、活物質の粒子12aの溶解が抑制されつつ、該粒子12aの表面が清浄化されて、粒子表面へのめっきが促進される。特に、活物質の粒子12aとして金属ケイ素を用いた場合には、その表面におけるめっき核の発生が可能な活性サイトが多数均一に存在するため、該粒子12aの表面を金属材料13で安定的に被覆することが可能となる。そして、活物質の粒子12aの表面に存在するアルミニウムや鉄などの金属と金属材料13とが強固に結合する。その結果、活物質の粒子12が膨張収縮してもその表面から金属材料13の被覆が剥離しにくくなるように該被覆を形成することができる。これと共に、活物質の粒子12a間に適度な空隙が形成される。pHの値は、めっき時の温度において測定されたものである。
めっきの金属材料13として銅を用いる場合には、ピロリン酸銅浴を用いることが好ましい。また該金属材料としてニッケルを用いる場合には、例えばアルカリニッケル浴を用いることが好ましい。特にピロリン酸銅浴を用いると、活物質の粒子12aの表面に銅の被覆を安定的に形成することができ、該粒子12aが膨張収縮しても、該被覆が剥離しづらくなる。またピロリン酸銅浴を用いると、活物質層12の厚み方向全域にわたって、前記の空隙を容易に形成し得るので好ましい。また、活物質の粒子12aの表面に金属材料13が選択的に析出し、且つ該粒子12a間では金属材料13の析出が起こりづらくなるので、該粒子12a間の空隙が首尾良く形成されるという点でも好ましい。とりわけ、金属ケイ素からなる粒子12aとピロリン酸銅浴を用いた電解めっきの組み合わせによって、粒子12aが膨張収縮しても銅の被覆が一層剥離し難くなる。
前記の各種めっき浴に、タンパク質、活性硫黄化合物、セルロース等の銅箔製造用電解液に用いられる各種添加剤を加えることにより、金属材料13の特性を適宜調整することも可能である。
ピロリン酸銅浴を用いる場合、その浴組成、電解条件及びpHは次の通りであることが好ましい。
・ピロリン酸銅三水和物:85〜120g/l
・ピロリン酸カリウム:300〜600g/l
・硝酸カリウム:15〜65g/l
・浴温度:45〜60℃
・電流密度:1〜7A/dm2
・pH:アンモニア水とポリリン酸を添加してpH7.1〜9.5になるように調整する。
・ピロリン酸銅三水和物:85〜120g/l
・ピロリン酸カリウム:300〜600g/l
・硝酸カリウム:15〜65g/l
・浴温度:45〜60℃
・電流密度:1〜7A/dm2
・pH:アンモニア水とポリリン酸を添加してpH7.1〜9.5になるように調整する。
アルカリニッケル浴を用いる場合には、その浴組成、電解条件及びpHは次の通りであることが好ましい。
・硫酸ニッケル:100〜250g/l
・塩化アンモニウム:15〜30g/l
・ホウ酸:15〜45g/l
・浴温度:45〜60℃
・電流密度:1〜7A/dm2
・pH:25重量%アンモニア水:100〜300g/lの範囲でpH8〜11となるように調整する。
・硫酸ニッケル:100〜250g/l
・塩化アンモニウム:15〜30g/l
・ホウ酸:15〜45g/l
・浴温度:45〜60℃
・電流密度:1〜7A/dm2
・pH:25重量%アンモニア水:100〜300g/lの範囲でpH8〜11となるように調整する。
上述の各種方法によって形成される活物質層全体の空隙の割合、つまり空隙率は、15〜45体積%程度、特に20〜40体積%程度であることが好ましい。空隙率をこの範囲内とすることで、非水電解液の流通が可能な空隙を活物質層12内に必要且つ十分に形成することが可能となる。空隙率は次の(1)〜(7)の手順で測定される。
(1)前記のスラリーの塗布によって形成された塗膜の単位面積当たりの重量を測定し、粒子12aの重量及び結着剤の重量を、スラリーの配合比から算出する。
(2)電解めっき後の単位面積当たりの重量変化から、析出しためっき金属種の重量を算出する。
(3)電解めっき後、負極の断面をSEM観察することで、活物質層12の厚みを求める。
(4)活物質層12の厚みから、単位面積当たりの活物質層12の体積を算出する。
(5)粒子12aの重量、結着剤の重量、めっき金属種の重量と、それぞれの配合比から、それぞれの体積を算出する。
(6)単位面積当たりの活物質層12の体積から、粒子12aの体積、結着剤の体積、めっき金属種の体積を減じて、空隙の体積を算出する。
(7)このようにして算出された空隙の体積を、単位面積当たりの活物質層12の体積で除し、それに100を乗じた値を空隙率(%)とする。
(1)前記のスラリーの塗布によって形成された塗膜の単位面積当たりの重量を測定し、粒子12aの重量及び結着剤の重量を、スラリーの配合比から算出する。
(2)電解めっき後の単位面積当たりの重量変化から、析出しためっき金属種の重量を算出する。
(3)電解めっき後、負極の断面をSEM観察することで、活物質層12の厚みを求める。
(4)活物質層12の厚みから、単位面積当たりの活物質層12の体積を算出する。
(5)粒子12aの重量、結着剤の重量、めっき金属種の重量と、それぞれの配合比から、それぞれの体積を算出する。
(6)単位面積当たりの活物質層12の体積から、粒子12aの体積、結着剤の体積、めっき金属種の体積を減じて、空隙の体積を算出する。
(7)このようにして算出された空隙の体積を、単位面積当たりの活物質層12の体積で除し、それに100を乗じた値を空隙率(%)とする。
活物質の粒子12aの粒径を適切に選択することによっても、前記の空隙率をコントロールすることができる。この観点から、粒子12aはその最大粒径が好ましくは30μm以下であり、更に好ましくは10μm以下である。また粒子の粒径をD50値で表すと0.1〜8μm、特に0.3〜4μmであることが好ましい。粒子の粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定、電子顕微鏡観察(SEM観察)によって測定される。
負極全体に対する活物質の量が少なすぎると電池のエネルギー密度を十分に向上させにくく、逆に多すぎると強度が低下し活物質の脱落が起こりやすくなり、電極全体として比抵抗が高くなってしまう傾向にある。これらを勘案すると、活物質層の厚みは10〜40μm、好ましくは15〜30μm、更に好ましくは18〜25μmである。
本実施形態の電池における負極は、集電体と、その少なくとも一面に形成された活物質層を備えている。負極における集電体としては、非水電解液二次電池用負極の集電体として従来用いられているものと同様のものを用いることができる。集電体は、先に述べたリチウム化合物の形成能の低い金属材料から構成されていることが好ましい。そのような金属材料の例は既に述べた通りである。特に、銅、ニッケル、ステンレス等からなることが好ましい。また、コルソン合金箔に代表されるような銅合金箔の使用も可能である。更に集電体として、常態抗張力(JIS C 2318)が好ましくは500MPa以上である金属箔、例えば前記のコルソン合金箔の少なくとも一方の面に銅被膜層を形成したものを用いることもできる。更に集電体として常態伸度(JIS C 2318)が4%以上のものを用いることも好ましい。抗張力が低いと活物質が膨張した際の応力によりシワが生じ、伸び率が低いと該応力により集電体に亀裂が入ることがあるからである。これらの集電体を用いることで、上述した負極10の耐折性を一層高めることが可能となる。集電体11の厚みは、負極10の強度維持と、エネルギー密度向上とのバランスを考慮すると、9〜35μmであることが好ましい。なお、集電体11として銅箔を使用する場合には、クロメート処理や、トリアゾール系化合物及びイミダゾール系化合物などの有機化合物を用いた防錆処理を施しておくことが好ましい。
本実施形態の電池における正極は、正極活物質並びに必要により導電剤及び結着剤を適当な溶媒に懸濁し、正極合剤を作製し、これを集電体に塗布、乾燥した後、ロール圧延、プレスし、更に裁断、打ち抜きすることにより得られる。正極活物質としては、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物等の含リチウム遷移金属複合酸化物を始めとする従来公知の正極活物質が用いられる。また前記の正極活物質に代えて、対極に金属リチウムを用いることもできる。更に、正極活物質として、LiCoO2に少なくともZrとMgの両方を含有させたリチウム遷移金属複合酸化物と、層状構造を有し、少なくともMnとNiの両方を含有するリチウム遷移金属複合酸化物と混合したものも好ましく用いることができる。かかる正極活物質を用いることで充放電サイクル特性及び熱安定性の低下を伴うことなく、充電終止電圧を高めることが期待できる。正極活物質の一次粒子径の平均値は5μm以上10μm以下であることが、充填密度と反応面積との兼ね合いから好ましく、正極に使用する結着剤の重量平均分子量は350,000以上2,000,000以下のポリフッ化ビニリデンであることが好ましい。低温環境での放電特性を向上させることが期待できるからである。
正極と負極との間にはセパレータが介在配置される。セパレータとしては、合成樹脂製不織布、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、又はポリテトラフルオロエチレンの多孔質フイルム等が好ましく用いられる。特にセパレータとして、例えば多孔性ポリエチレンフィルム(旭化成ケミカルズ製;N9420G)が好ましく使用できる。電池の過充電時に生じる電極の発熱を抑制する観点からは、ポリオレフィン微多孔膜の片面又は両面にフェロセン誘導体の薄膜が形成されてなるセパレータを用いることが好ましい。セパレータは、突刺強度が0.2N/μm厚以上0.49N/μm厚以下であり、巻回軸方向の引張強度が40MPa以上150MPa以下であることが好ましい。充放電に伴い大きく膨張・収縮する負極活物質を用いても、セパレータの損傷を抑制することができ、内部短絡の発生を抑制することができるからである。
正極と負極との間は非水電解液で満たされる。非水電解液は、支持電解質であるリチウム塩を有機溶媒に溶解した溶液からなる。リチウム塩としては、LiClO4、LiA1Cl4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiBF4、LiSCN、LiCl、LiBr、LiI、LiCF3SO3、LiC4F9SO3等が例示される。有機溶媒としては、例えばエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。特に、非水電解液全体に対し0.5〜5重量%のビニレンカーボネート及び0.1〜1重量%のジビニルスルホン、0.1〜1.5重量%の1,4−ブタンジオールジメタンスルホネートを含有させることが充放電サイクル特性を更に向上する観点から好ましい。その理由について詳細は明らかでないが、1,4−ブタンジオールジメタンスルホネートとジビニルスルホンが段階的に分解して、正極上に被膜を形成することにより、硫黄を含有する被膜がより緻密なものになるためであると考えられる。
特に非水電解液としては、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン ,4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン或いは4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどのハロゲン原子を有する環状の炭酸エステル誘導体のような比誘電率が30以上の高誘電率溶媒を用いることも好ましい。電解液中のフッ素イオンの含有量が14質量ppm以上1290質量ppm以下の範囲内であることも好ましい。電解液に適量なフッ素イオンが含まれていると、フッ素イオンに由来するフッ化リチウムなどの被膜が負極に形成され、負極における電解液の分解反応を抑制することができると考えられるからである。また、前記高誘電率溶媒と、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、或いはメチルエチルカーボネートなどの粘度が1mPa・s以下である低粘度溶媒を混合した電解液も好ましい。より高いイオン伝導性を得ることができるからである。更に、酸無水物及びその誘導体からなる群のうちの少なくとも1種の添加物が0.001質量%〜10質量%含まれていることが好ましい。これにより負極の表面に被膜が形成され、電解液の分解反応を抑制することができるからである。この添加物としては、環に−C(=O)−O−C(=O)−基を含む環式化合物が好ましく、例えば無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2−スルホ安息香酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、無水ヘキサフルオログルタル酸、無水3−フルオロフタル酸、無水4−フルオロフタル酸などの無水フタル酸誘導体、又は無水3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、無水1,8−ナフタル酸、無水2,3−ナフタレンカルボン酸、無水1,2−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸などの無水1,2−シクロアルカンジカルボン酸、又はシス−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物或いは3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物などのテトラヒドロフタル酸無水物、又はヘキサヒドロフタル酸無水物(シス異性体、トランス異性体)、3,4,5,6−テトラクロロフタル酸無水物、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物、二無水ピロメリット酸、又はこれらの誘導体などが挙げられる。
次に、本実施形態の電池における負極の好ましい製造方法について、図2を参照しながら説明する。本製造方法では、活物質の粒子及び結着剤を含むスラリーを用いて集電体上に塗膜を形成し、次いでその塗膜に対して電解めっきが行われる。
先ず図2(a)に示すように集電体11を用意する。そして集電体11上に、活物質の粒子12aを含むスラリーを塗布して塗膜15を形成する。スラリーは、活物質の粒子の他に、結着剤及び希釈溶媒などを含んでいる。またスラリーはアセチレンブラックやグラファイトなどの導電性炭素材料の粒子を少量含んでいてもよい。特に、活物質の粒子12aの重量に対して導電性炭素材料を1〜3重量%含有することが好ましい。導電性炭素材料の含有量が1重量%未満であると、スラリーの粘度が低下して活物質の粒子12aの沈降が促進されるため、良好な塗膜15及び均一な空隙を形成しにくくなる。また導電性炭素材料の含有量が3重量%を超えると、該導電性炭素材料の表面にめっき核が集中し、良好な被覆を形成しにくくなる。
結着剤としてはスチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン(PE)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)などが用いられる。希釈溶媒としてはN−メチルピロリドン、シクロヘキサンなどが用いられる。スラリー中における活物質の粒子12aの量は30〜70重量%程度とすることが好ましい。結着剤の量は0.4〜4重量%程度とすることが好ましい。これらに希釈溶媒を加えてスラリーとする。
形成された塗膜15は、粒子12a間に多数の微小空間を有する。塗膜15が形成された集電体11を、リチウム化合物の形成能の低い金属材料を含むめっき浴中に浸漬する。めっき浴への浸漬によって、めっき液が塗膜15内の前記微小空間に浸入して、塗膜15と集電体11との界面にまで達する。その状態下に電解めっきを行い、めっき金属種を粒子12aの表面に析出させる(以下、このめっきを浸透めっきともいう)。浸透めっきは、集電体11をカソードとして用い、めっき浴中にアノードとしての対極を浸漬し、両極を電源に接続して行う。
浸透めっきによる金属材料の析出は、塗膜15の一方の側から他方の側に向かって進行させることが好ましい。具体的には、図2(b)ないし(d)に示すように、塗膜15と集電体11との界面から塗膜の表面に向けて導電性付与成分13の析出が進行するように電解めっきを行う。図2(b)ないし(d)においては、導電性付与成分13が、粒子12aの周囲を取り囲む太線として便宜的に表されている。導電性付与成分13をこのように析出させることで、活物質の粒子12aの表面を導電性付与成分13で首尾よく被覆することができると共に、導電性付与成分13で被覆された粒子12a間に空隙を首尾よく形成することができる。しかも、該空隙の空隙率を前述した好ましい範囲にすることが容易となる。
前述のように導電性付与成分13を析出させるための浸透めっきの条件には、めっき浴の組成、めっき浴のpH、電解の電流密度などがある。このような条件については既に述べた通りである。特に、先に述べた通り、活物質の粒子12aとして金属ケイ素を用い、めっき浴としてピロリン酸銅浴を用いると、めっきにより析出した銅が金属ケイ素からなる粒子12aの表面を強固に被覆するので、粒子12aが膨張収縮しても銅の被覆が剥離し難くなる。
図2(b)ないし(d)に示されているように、塗膜15と集電体11との界面から塗膜の表面に向けて金属材料13の析出が進行するようにめっきを行うと、析出反応の最前面部においては、ほぼ一定の厚みで金属材料13のめっき核からなる微小粒子13aが層状に存在している。金属材料13の析出が進行すると、隣り合う微小粒子13aどうしが結合して更に大きな粒子となり、更に析出が進行すると、該粒子どうしが結合して活物質の粒子12aの表面を連続的に被覆するようになる。
浸透めっきは、塗膜15の厚み方向全域に金属材料13が析出した時点で終了させる。このようにして、図2(d)に示すように、目的とする負極が得られる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〕
厚さ18μmの電解銅箔からなる集電体を室温で30秒間酸洗浄した。処理後、15秒間純水洗浄した。集電体の両面上に金属ケイ素からなる粒子を含むスラリーを膜厚15μmになるように塗布し塗膜を形成した。スラリーの組成は、粒子:スチレンブタジエンラバー(結着剤):アセチレンブラック=100:1.7:2(重量比)であった。粒子の平均粒径D50は2μmであった。平均粒径D50は、日機装(株)製のマイクロトラック粒度分布測定装置(No.9320−X100)を使用して測定した。金属ケイ素の組成は、Si:96.02重量%、Fe:0.47重量%、Al:0.20重量%、Ca:0.13重量%であった。
厚さ18μmの電解銅箔からなる集電体を室温で30秒間酸洗浄した。処理後、15秒間純水洗浄した。集電体の両面上に金属ケイ素からなる粒子を含むスラリーを膜厚15μmになるように塗布し塗膜を形成した。スラリーの組成は、粒子:スチレンブタジエンラバー(結着剤):アセチレンブラック=100:1.7:2(重量比)であった。粒子の平均粒径D50は2μmであった。平均粒径D50は、日機装(株)製のマイクロトラック粒度分布測定装置(No.9320−X100)を使用して測定した。金属ケイ素の組成は、Si:96.02重量%、Fe:0.47重量%、Al:0.20重量%、Ca:0.13重量%であった。
塗膜が形成された集電体を、以下の浴組成を有するピロリン酸銅浴に浸漬させ、電解により、塗膜に対して銅の浸透めっきを行い、活物質層を形成した。電解の条件は以下の通りとした。陽極にはDSEを用いた。電源は直流電源を用いた。
・ピロリン酸銅三水和物:105g/l
・ピロリン酸カリウム:450g/l
・硝酸カリウム:30g/l
・P比:7.7
・浴温度:50℃
・電流密度:3A/dm2
・pH:アンモニア水とポリリン酸を添加してpH8.2になるように調整した。
・ピロリン酸銅三水和物:105g/l
・ピロリン酸カリウム:450g/l
・硝酸カリウム:30g/l
・P比:7.7
・浴温度:50℃
・電流密度:3A/dm2
・pH:アンモニア水とポリリン酸を添加してpH8.2になるように調整した。
浸透めっきは、塗膜の厚み方向全域にわたって銅が析出した時点で終了させた。このようにして目的とする負極を得た。活物質層の縦断面のSEM観察によって該活物質層においては、活物質の粒子は、平均厚み240nmの銅の被膜で被覆されていることを確認した。また、活物質層の空隙率は30%であった。
得られた負極を用いてリチウム二次電池を製造した。正極としてはLiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2を用いた。電池の充電終止電圧における正極:負極の容量比が1:2となるように正負極の活物質の量を調整した。すると電池容量は、正極規制となる。即ち、正極容量50に対して負極容量は100となる。電解液としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの1:1体積%混合溶媒に1mol/lのLiPF6を溶解した溶液に対して、ビニレンカーボネートを2体積%外添したものを用いた。セパレータとしては、20μm厚のポリプロピレン製のものを用いた。
〔比較例1〕
浸透めっきの浴としてピロリン酸銅浴を用いることに代えて、前記の特許文献1を参考として以下の組成を有する硫酸銅の浴を用いた。電流密度は5A/dm2、浴温は40℃であった。陽極にはDSE電極を用いた。電源は直流電源を用いた。また活物質の粒子として金属ケイ素に代えて純度4Nの多結晶ケイ素を用いた。活物質層の空隙率は3%であった。これら以外は実施例1と同様にして二次電池を得た。
・CuSO4・5H2O 250g/l
・H2SO4 70g/l
浸透めっきの浴としてピロリン酸銅浴を用いることに代えて、前記の特許文献1を参考として以下の組成を有する硫酸銅の浴を用いた。電流密度は5A/dm2、浴温は40℃であった。陽極にはDSE電極を用いた。電源は直流電源を用いた。また活物質の粒子として金属ケイ素に代えて純度4Nの多結晶ケイ素を用いた。活物質層の空隙率は3%であった。これら以外は実施例1と同様にして二次電池を得た。
・CuSO4・5H2O 250g/l
・H2SO4 70g/l
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた二次電池について、二次電池に組み込む前の負極の比抵抗及び表面抵抗を測定した。また二次電池に組み込む前の負極の活物質層における空隙率を測定した。更に二次電池について、充電終止電圧4.2V、放電終止電圧2.7V、充放電レート0.2Cにて100%の充放電を5回行った後に電池から負極を取り出し、ジメチルカーボネートで洗浄し、ドライルーム中で乾燥後に比抵抗及び表面抵抗を測定した。これらの結果を表1に示す。
実施例及び比較例で得られた二次電池について、二次電池に組み込む前の負極の比抵抗及び表面抵抗を測定した。また二次電池に組み込む前の負極の活物質層における空隙率を測定した。更に二次電池について、充電終止電圧4.2V、放電終止電圧2.7V、充放電レート0.2Cにて100%の充放電を5回行った後に電池から負極を取り出し、ジメチルカーボネートで洗浄し、ドライルーム中で乾燥後に比抵抗及び表面抵抗を測定した。これらの結果を表1に示す。
更に実施例及び比較例で得られた二次電池について、100サイクルまでの容量維持率を測定した。容量維持率は、各サイクル目の放電容量を測定し、それらの値を初期放電容量で除し、100を乗じて算出した。充電条件は0.5C、4.2Vで、定電流・定電圧とした。放電条件は0.5C、2.7Vで、定電流とした。但し、1サイクル目は0.05Cとし、2〜4サイクル目は0.1C、5〜7サイクル目は0.5C、8〜10サイクル目は1Cとした。結果を表1に示す。
表1に示す結果から明らかなように、実施例及び比較例の負極は、これを電池に組み込む前の比抵抗に差がないのに対し、電池に組み込んで充放電を行うと、実施例の負極では比抵抗の増加の幅が小さいが、比較例の負極では比抵抗が大幅に増加することが判る。それに起因して、比較例の電池はサイクル特性に劣るものとなる。この理由は、比較例の負極においては、活物質の粒子であるケイ素と該活物質の粒子を被覆している金属元素である銅とが分離して活物質の粒子が電気的に孤立したためと考えられる。
また比較例の活物質層では、表1に示すように空隙の形成が少ないため、充放電による活物質の粒子の膨張収縮により負極にクラックが発生し、それに起因する損傷が目視によって認められた。このことも比抵抗や表面抵抗の大幅な増加を引き起こしている原因と考えられる。
〔実施例2〕
実施例1と同様にして負極を製造した。得られた負極を用いてリチウム二次電池を製造した。負極の面積は13.02cm2(3.1cm×4.2cm)とした。対極としては金属リチウムを用いた。電池の充電終止電圧における対極:負極の容量比が1:2となるように対極及び負極の活物質の量を調整した。また、負極に隣接して、参照極としての金属リチウムを配置した。電解液としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの1:1体積%混合溶媒に1mol/lのLiPF6を溶解した溶液を用いた。セパレータとしては、20μm厚のポリプロピレン製のものを用いた。これらを用いて、ラミネート型の二次電池を得た。緊縛圧力は0.4kg/cm2とした。
実施例1と同様にして負極を製造した。得られた負極を用いてリチウム二次電池を製造した。負極の面積は13.02cm2(3.1cm×4.2cm)とした。対極としては金属リチウムを用いた。電池の充電終止電圧における対極:負極の容量比が1:2となるように対極及び負極の活物質の量を調整した。また、負極に隣接して、参照極としての金属リチウムを配置した。電解液としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの1:1体積%混合溶媒に1mol/lのLiPF6を溶解した溶液を用いた。セパレータとしては、20μm厚のポリプロピレン製のものを用いた。これらを用いて、ラミネート型の二次電池を得た。緊縛圧力は0.4kg/cm2とした。
このようにして得られた二次電池について、充電終止電圧4.2V、放電終止電圧2.7V、充放電レート0.2Cにて100%の充放電を5回行った。充放電は、対極及び負極のみを用いて行った。次いで、この状態のまま、交流インピーダンス測定によって負極の抵抗虚数成分Z”を求めた。測定は、参照極としての金属リチウムを含む三極で行った。負極の抵抗虚数成分Z”は、充放電を40サイクル行った後にも測定した。その結果を表2に示す。交流インピーダンス測定の条件は先に述べたとおりである。なお表2には、比較例1で得られた二次電池における負極について測定された抵抗虚数成分Z”の値も併せて記載されている。
表2に示す結果から明らかなように、実施例2の負極では、充放電サイクルを繰り返すと、意外なことに抵抗虚数成分Z”の値が低下したのに対し、比較例1の負極では、充放電の繰り返しにより抵抗虚数成分Z”の値が大幅に増加することが判る。
10 非水電解液二次電池用負極
11 集電体
12 活物質層
12a 活物質の粒子
13 リチウム化合物の形成能の低い金属材料
15 塗膜
11 集電体
12 活物質層
12a 活物質の粒子
13 リチウム化合物の形成能の低い金属材料
15 塗膜
Claims (8)
- ケイ素系材料からなる活物質の粒子を含む活物質層を備えた負極を有する非水電解液二次電池において、
前記電池に対して電池容量の50%以上の充放電を少なくとも5回行った後の前記負極の比抵抗が20〜900mΩ・cmであることを特徴とする非水電解液二次電池。 - ケイ素系材料からなる活物質の粒子を含む活物質層を備えた負極を有する非水電解液二次電池用において、
前記電池に対して電池容量の50%以上の充放電を少なくとも5回行った後の前記負極について、対極として金属リチウムを用いた交流インピーダンス測定を行ったときの抵抗虚数成分Z”が5〜500mΩ・cm2であることを特徴とする非水電解液二次電池。 - 前記活物質の粒子が、JIS G 2312に規定される金属ケイ素からなる請求項1又は2記載の非水電解液二次電池。
- 前記活物質の粒子の表面の少なくとも一部がリチウム化合物の形成能の低い金属材料で被覆されている請求項1ないし3の何れかに記載の非水電解液二次電池。
- 前記金属材料が、前記活物質層の厚み方向全域にわたって前記活物質の粒子の表面に存在している請求項4記載の非水電解液二次電池用負極。
- 前記金属材料の被覆が、電解めっきによって形成されている請求項4又は5記載の非水電解液二次電池。
- 前記金属材料の被覆が、ピロリン酸銅浴を用いた電解めっきによって形成されている請求項6記載の非水電解液二次電池。
- 前記の充放電を行った後の前記負極の表面抵抗が0.1〜10mΩ/cm2である請求項1記載の非水電解液二次電池。
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