JP5730742B2 - リチウムイオン二次電池用電解銅箔とその製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用電解銅箔とその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は常態における抗張力が680MPa以上、ヤング率が55〜90GPaであり、300℃×1時間加熱後のヤング率が48GPa〜80GPaであるリチウムイオン二次電池用集電体として優れる電解銅箔に関するものである。
電解銅箔は、硫酸−硫酸銅水溶液を電解液とし、白金族元素又はその酸化物元素で被覆したチタンからなる不溶性陽極と、該陽極に対向させて設けられたチタン製陰極ドラムとの間に前記電解液を充填し、陰極ドラムを一定速度で回転させながら、両極間に直流電流を通ずることによって陰極ドラム表面に銅を析出させ、析出した銅を陰極ドラム表面から引き剥がして連続的に巻き取る方法によって製造される。
なお、本発明においては、電解銅箔が陰極ドラム表面に接していた側の面を「光沢面」と指称し、逆の面を「粗面」と指称する。
電解銅箔は前記のようにして製造され、リチウムイオン電池用負極集電体としては、製造された銅箔をこのままで使用する。この製造されたままの電解銅箔を本発明においては「未処理電解銅箔」と指称する。
一方、銅箔(集電体)に塗布される活物質と密着性を高めるため、未処理電解銅箔に粗化処理や耐熱性、耐薬品性及び防錆性を付与することを目的とした各種表面処理が施されることもある。表面処理が施された銅箔を本発明においては「表面処理銅箔」と指称する。
リチウムイオン二次電池にとって最も重要な特性である充放電サイクル寿命特性と充電初期の電池容量は、負極電極によって大きく影響される。負極電極に使用される銅箔は活物質を両面に同じように設けることができるように、光沢面と粗面との粗度差を小さくする必要がある。
表面粗度の差を小さくする方法としては、光沢面の表面粗さにあわせて、粗面側の粗度をできるだけ小さくするか、もしくは粗面側の表面粗さに合わせ、光沢面に粗化処理を施す。
従来電解銅箔の製造工程において、粗面側の山谷形状を先鋭化させる(粗くする)ことやピンホールを抑制することを目的として電解液に10〜100mg/lの塩素イオンと0.1 〜4.0mg/lの膠又はゼラチンを添加している。
しかしこのような製法で製造された電解銅箔は、近年開発された活物質を保持させる集電体としては適用できなくなってきている。
即ち、近年リチウムイオン二次電池の負極電極は、粉末シリコンあるいはシリコン化合物をイミド系のバインダーと共に有機溶媒によりスラリー状にした活物質を集電体(銅箔)上に塗布し、乾燥、プレスしている。この活物質を塗布、乾燥する工程で集電体(銅箔)は300℃以上の高温に1時間以上晒されるため、銅箔はこの熱処理工程で軟化し、抗張力が著しく低下し、抗張力が低下した集電体(銅箔)で作成したシリコン系の電池負極は、充放電による活物質の膨張、収縮による内部応力に耐えられず、銅箔に亀裂が発生する恐れがあるためである。
従って、シリコン系の活物質を集電体上に堆積する製造条件や電池特性に耐えうる銅箔の開発が望まれている。
また、リチウムイオン二次電池用負極集電体においては、銅箔の光沢面と粗面とを低粗度化し、かつ、光沢面と粗面との間の表面積の差を小さくし、集電体の両面での電池反応の差をできるだけ小さくする必要がある。しかし、銅箔両表面の低粗度化は銅箔(集電体)と活物質とのアンカ効果を低下し、銅箔との密着性が劣る結果となる。従って、光沢面と粗面との粗度差を小さくし、両面の表面粗さRzを2.5μm〜10μmになるように、必要に応じて、銅箔表面に粗化処理を施し、両面の表面粗さの差を3%以内にして、銅箔との密着性を満足させながら、銅箔両面での電池反応の差を最小限に抑える工夫がなされている。
このようなリチウムイオン二次電池電極用銅箔(集電体)の要望に対し、従来、電解銅箔の製造において、電解液に各種水溶性高分子物質、各種界面活性剤、各種有機イオウ系化合物、塩素イオンなどを適宜選定して添加し、光沢面と粗面との粗度差を小さくする努力がなされている。例えば、特許文献1には、電解液にメルカプト基を持つ化合物、塩化物イオン、並びに分子量10000以下の低分子量膠及び高分子多糖類を添加する電解銅箔の製造方法が開示されている。
本発明者等は、特許文献1に開示された電解銅箔の製造方法により、電解銅箔製造実験を数多く行うと共に、得られた電解銅箔の各特性を測定したところ、この電解銅箔製造方法によって製造される電解銅箔は、粗面の表面粗さRz2.1以下、プリント配線板製造時に負荷される温度(180℃)における抗張力が約182〜191MPaであった。
このように特許文献1に開示された電解銅箔の製造方法によって製箔された銅箔の抗張力が低いのは、製箔された銅箔が非常に小さい結晶粒で構成され、小さな結晶粒子が室温において表面積を最小にして熱力学的に安定な状態に推移しようとし、結晶粒界の界面エネルギーが駆動力となって室温において一次再結晶を起こし、結晶粒子が粗大化して著しい抗張力の低下を生じさせる、との推測ができる。
また特許文献2には、電解液に低分子量で水溶性のヒドロキシエチルセルロースなどのセルロースエーテル、低分子量で水溶性のポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコールエーテル、低分子量で水溶性のポリエチレンイミン及び水溶性スルホン化有機硫黄化合物を添加する電解銅箔の製造方法が開示されている。
特許文献2はプリント積層板に関する発明であり、銅箔とプリプレグ(半硬化熱硬化性樹脂)を積層して硬化させるために必要な加熱処理で、銅箔が樹脂の熱線膨張に追随できるように180℃における銅箔の伸び率が6%以上で、抗張力が185〜210MPaの特性を有する電解銅箔を追求したものである。従って、特許文献2に開示されている電解銅箔の製造方法では、電解液に添加するヒドロキシエチルセルロースの分子量が250000以上であるため、製箔された銅箔の粗面側表面粗さRzが2.5μm以下、180 ℃における伸び率が6%以上である低粗面電解銅箔となる。
特許文献1、2共に、プリント配線板用途として開発されたもので、配線板製造に必須な180℃×1時間以上の熱処理後の銅箔の伸びと、積層する樹脂の伸びとの差を小さくし、銅箔の特性を強化したものである。従って、電池用集電体に要求される300℃×1時間の加熱処理においてヤング率が48GPa以上を維持することはできない銅箔となっている。
特許第3313277号公報(第1頁) 特開2004−339558号公報
上記特許文献1、2に開示されている電解銅箔はプリント配線板に適した銅箔の開発であり、開発された銅箔はリチウムイオン二次電池用集電体として活用できるようなものではない。特許文献1、2で開示する電解銅箔は積層基板に積層する場合を想定して伸び率を塑性変形領域で、即ち、繰り返し負荷される伸び、縮みを配慮することなく伸びのみで評価することで足りていた。
しかし、リチウムイオン二次電池用集電体としての銅箔においては、繰り返し発生する伸び、縮みを考慮しなければならず、弾性変形内の伸び率が重要な要素となる。本発明では弾性変形領域の特性をヤング率で規定し、評価した。当然ながら、塑性変形の領域において伸び率が高くても、必ずしも、ヤング率が高いとは言えない。
シリコンあるいはシリコン化合物系活物質で、イミド系のバインダーを用いた活物質を銅箔に塗布し、乾燥、プレスして負極を製造する場合、上記プリント配線板用に開発された銅箔を集電体とすると、集電体(銅箔)には高温の熱処理(300℃で1時間以上)が施されるため、この熱処理で抗張力が低下し、電池の負極用集電体として電池に組み込まれた場合、充放電サイクルにおけるシリコン系活物質の体積変化率(4倍以上となる可能性がある)に追随できない。
即ち、集電体用の銅箔、特にシリコン系活物質用の集電体としては、300℃、1時間加熱後のヤング率が重要な評価要素となる。
本発明者等は、前記特許文献1及び特許文献2に開示された電解銅箔の製造方法を基に、リチウムイオン二次電池用負極集電体として要求される諸条件を、
銅箔の両面の表面粗さRz2.5μm〜10μmを有し、
300℃で1時間加熱処理後のヤング率を48〜80GPa、抗張力300MPa以上
と定め、電解銅箔製造実験を数多く行うと共に、得られた電解銅箔の各特性を調査し、本発明の電解銅箔の製造に成功した。
本発明のリチウムイオン二次電池用電解銅箔は、電解銅箔の粗面粗さRzが2.5μm〜10μmであり、常態における抗張力が680MPa以上、ヤング率が55〜90GPaであって、300℃×1時間加熱後のヤング率が48GPa〜80GPaであるリチウムイオン二次電池用電解銅箔である。
本発明のリチウムイオン二次電池用電解銅箔の製造方法は、硫酸−硫酸銅水溶液を電解液とし、白金族元素又はその酸化物元素で被覆したチタンからなる不溶性陽極と該陽極に対向するチタン製陰極ドラムとを用い、当該両極間に直流電流を通じる電解銅箔の製造方法において、前記電解液にヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリプロピレングリコール(PPG)またはポリエチレングリコール(PEG)の中より一種と、ポリエチレンイミン(PEI)と、3−メルカプトプロピルスルホン酸(MPS)又はビス(3−スルホプロピル)ジスルファイド(SPS)と塩素イオンとを添加する製造方法である。
前記ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレングリコール(PEG)それぞれの分子量は250000未満であることが好ましい。
前記ポリエチレンイミンの平均分子量は10000〜15000であることが好ましい。
本発明の電解銅箔は、リチウムイオン二次電池の集電体として要求される下記諸条件、
銅箔の両面の表面粗さRz2.5μm〜10μmを有し、
300℃×1時間加熱処理後のヤング率48〜80GPa、抗張力300MPa以上
を満足し、リチウムイオン二次電池用の集電体(銅箔)として優れた効果を発揮するものである。
本発明は、銅箔の両面の表面粗さRzが2.5μm〜10μmで、常態における抗張力が680MPa以上、ヤング率が55〜90GPaで、300℃×1時間加熱処理後のヤング率が48〜80GPa、の電解銅箔である。ここで常態とは23℃〜25℃である。
本発明において銅箔の両面の表面粗さRzを2.5μm〜10μmとするのは、電池の充放電サイクル特性を向上させるために活物質との密着性を図る必要があるからである。また、活物質との密着性が銅箔の両表面とも均一になるように配慮したためである。
なお本発明では、粗面の表面粗さRzが2.5μm〜10μmである未処理電解銅箔を製造し、一般的な粗化処理技術により、光沢面を粗面の表面粗さに合せる粗化処理を施し、両面の表面粗さを3%以内に抑えることも可能である。
本発明の電解銅箔の製造方法は、硫酸−硫酸銅水溶液からなる電解液に分子量250000未満のヒドロキシエチルセルロース、ポリプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールのいずれ1種、ポリエチレンイミ、MPS(3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸)又はSPS(ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド)及び塩素イオンの四つの添加剤を添加し、製箔する。
製箔された電解銅箔の粗面粗さRzは2.5μm〜10μmであり、常態(23℃〜25℃)における抗張力が680MPa以上、ヤング率が55GPa〜90GPaである。また、該電解銅箔を300℃1時間加熱後、常温において測定した抗張力が300MPa以上、ヤング率が48〜80GPa(加熱処理前に比べて低下率20%以下)である。
即ち、本発明に係る電解銅箔は、電解銅箔の粗面粗さRzが2.5μm〜10μmであり、製箔完了24時間後に(銅箔の機械特性が安定した状態となったところで)測定した常態(23℃〜25℃)における抗張力は680MPa以上であった。
また、本発明に係る電解銅箔の製造方法は、硫酸−硫酸銅水溶液を電解液とし、白金属元素又はその酸化物元素で被覆したチタンからなる不溶性陽極と該陽極に対向するチタン製陰極ドラムとを用い、当該両極間に直流電流を通じる電解銅箔の製造方法において、前記電解液に分子量250000未満のヒドロキシエチルセルロース、ポリプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールのいずれか1種、ポリエチレンイミン、MPS(3−メルカプト−1−プロパンスルホン酸)或はSPS(ビス(3−スルホプロピル)ジスルフィド)及び塩素イオンを添加したものである。
また、本発明は、前記低粗面電解銅箔の製造方法において、ポリプロピレングリコールまたはポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロースの分子量が250000未満のものである。
また、本発明は、前記いずれかの電解銅箔の製造方法において、ポリエチレンイミンの平均分子量が10000 〜15000のものである。
本発明の構成を詳しく説明すれば,次のとおりである。
本発明において硫酸−硫酸銅水溶液からなる電解液中に添加する添加剤は、ヒドロキシエチルセルロース、ポリプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールの中より分子量250000未満である一種、ポリエチレンイミン、MPS又はSPS及び塩素イオンの四つの添加剤であるが、これら添加剤が一定の濃度領域であって、しかも水溶性高分子については一定の分子量域でのみ、目的とする表面粗さRz2.5μm〜10μmを有する電解銅箔を得ることができる。
ヒドロキシエチルセルロース、ポリプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールの分子量は250000未満であることが好ましい。分子量が250000以上の場合には、前記他の三つの添加剤が後述する各好適濃度範囲に調整されていたとしても、300℃×1時間加熱処理後のヤング率の低下が20%以上と著しく低下するためである。
また、ヒドロキシエチルセルロース、ポリプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールのいずれか一種を、硫酸−硫酸銅水溶液からなる電解液に添加する濃度は0.07〜60PPMとすることが好ましく、より好ましくは5〜20PPMである。濃度が0.07PPM未満の場合には、粗面の表面粗さRzは、10μm以上となり、粗面と光沢面の表面粗さの差を3%以内にするための光沢面の表面粗化処理が難しくなるためである。また、300℃×1時間の加熱処理に伴って抗張力も著しく低下する。一方、濃度が60PPM を超えると、光沢面を粗化処理しなくても、Rz2.5以下かつ光沢面と粗面の粗さの差が3%以下の電解銅箔を得ることはできるが、活物質との密着性が低下して、電池のサイクル特性に悪影響を与えることとなり好ましくない。また濃度が上昇するにつれて電解時に陽極で生じる酸素発泡による泡が消滅し難くなり、電解槽や電解液供給タンクに泡が留まって電解銅箔の連続的な製造が困難になる。従って、分子量250000未満のヒドロキシエチルセルロース、ポリプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールの濃度は、生産効率の観点から60PPM以下に保つことが好ましい。
ポリエチレンイミンは、加熱処理後の抗張力の低下を防止する性質を有している。本発明に用いるポリエチレンイミンは、平均分子量が10000〜15000であることが好ましい。平均分子量が10000未満の場合には、高い光輝性を持つ粗面外観を有するRz2.5μm以下の低粗面電解銅箔が得られるが、該低粗面電解銅箔は加熱処理に伴って抗張力が著しく低下し、抗張力を高く維持することができない。一方、平均分子量が15000を超える場合には、180℃×1hの加熱処理に伴う抗張力の低下は抑制されるが、300℃と高温加熱における伸び率が低下する傾向にある。
さらに、ポリエチレンイミンは、硫酸−硫酸銅水溶液からなる電解液に対して濃度が0.03〜30PPMになるように添加することが好ましく、より好ましくは5〜20PPMである。濃度が0.03PPM未満の場合には、銅箔の粗面は低粗度化するが、加熱処理後の抗張力が著しく低下する。濃度が30PPMを超える場合には、めっき状態にならずに銅粉が析出していわゆるコゲ状態になり好ましくない。
塩素イオンの存在は非常に重要であり、電解液中に塩素イオンが存在しない場合には、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンイミン、アセチレングリコールを前記各好適濃度範囲に調整したとしても、表面粗さRz2.5μm〜10μmを有する電解銅箔を得ることはできない。
MPS又はSPSは,電解液中に塩素イオンが存在する場合にのみ,ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンイミン、アセチレングリコールとの作用により、銅の結晶核の生成を促し、微細結晶となるため、300℃×1時間の熱処理をした後のヤング率の低下を20%以下の水準に抑える。
塩素イオンは、硫酸−硫酸銅水溶液からなる電解液に対して濃度が5〜40PPM になるように添加することが好ましく、より好ましくは10〜30PPMである。濃度が5PPM未満の場合には、粗面がRz2.5μm以上にできない。濃度が40PPMを超える場合には、高温時の抗張力が著しく低下する。
また、塩素イオンの供給は電解液中で解離して塩素イオンを放出するような無機塩類であれば良く、例えば、NaClやHClなどが好適である。
本発明においては、硫酸−硫酸銅水溶液からなる電解液に対してヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンイミン、MPS又はSPS及び塩素イオンの四つの添加剤をそれぞれ前記各好適濃度範囲に調整して添加した電解液を用い、陽極には白金属酸化物にて被覆したチタン板を、陰極にはチタン製陰極ドラムを使って、電解液温40〜60℃及び電解電流密度40〜60A/dmの条件で電解することによって目的とする粗面Rz2.5〜10μmの電解銅箔を製箔でき、300℃×1時間加熱処理後のヤング率が48〜80GPa、抗張力が300MPa以上の銅箔を得ることができる。
実施例1.
硫酸(HSO):100g/l、硫酸銅五水和物(CuSO ・5HO):280g/lの硫酸−硫酸銅水溶液からなる電解液を調整した(以下、この電解液を「基本電解液」という。)。
基本電解液に表1の実施例1に示す添加剤A〜Dを添加し電解液とした。
これらの添加剤を含む電解液を白金属酸化物にて被覆したチタンからなる不溶性陽極と陰極であるチタン製陰極ドラムとの間に充填し、電解電流密度:50A/dm 、電解液温:60℃にて電析し、厚さ18μm の低粗面電解銅箔を製箔した。
得られた電解銅箔(未処理電解銅箔)に対して次の各測定試験を行った。
1.電着完了時点から24時間以内に25℃における抗張力(MPa)及びヤング率(GPa)を測定した。
2.180℃×1時間加熱し、常温(25℃)に戻ってから、抗張力(MPa)及びヤング率(GPa)を測定した。
3.300℃×1時間加熱し、常温(25℃)に戻ってから、抗張力(MPa)及びヤング率(GPa)を測定した。
なお、前記各抗張力(MPa)及び各ヤング率(GPa)は、IPC−TM−650に基づきインテスコ社製の2001型引張試験機を用いて測定した。そして、前記測定結果を用いて300℃1時間加熱処理を施した後の常温25℃におけるヤング率の低下率(%)を算出した。また、光沢面、粗面の表面粗さRzをJISB0601に基づき小坂研究所製のサーフコーダーSE1700αを用いて測定した。各測定試験の結果を表2に示す。
実施例2〜8、比較例1〜8
添加剤の種類と基本電解液に対する添加濃度及び電解電流密度と電解液温を表1に示すとおりに変更した外は、前記実施例1と同じ条件で厚さ18μmの電解銅箔を製箔した。そして、得られた各電解銅箔(未処理電解銅箔)に対して前記実施例1と同じ各測定試験を行った。各測定試験の結果を表2に示す。
Figure 0005730742
Figure 0005730742
実施例、比較例で製箔した銅箔の電池性能を向上させるために、必要により光沢面に粗化処理を施し、光沢面の表面粗さと粗面の表面粗さとの差を3%以下とした。
光沢面の粗化処理は次の通りである。
電流密度40〜55A/dm
浴温度45〜60℃
なお、粗面にも粗化処理を施し、光沢面、粗面共に粗化処理して両面の粗度を近似させることも可能である。
各実施例、比較例で製箔した銅箔を集電体としてリチウムイオン二次電池用負極を次のようにして作成した。
粉末状のSi合金系活物質(平均粒径0.1μm〜10μm)を90重量%、結着材としてポリイミド系バインダを10重量%の割合で混合して負極合剤を調整した。次いで、この負極合剤を溶剤であるN−メチルピロリドンに分散させてスラリーにした。このスラリーを実施例、比較例で製作した厚さ12μmの帯状の電解銅箔の両面に塗布し、300℃×1時間以上、熱ローラープレス機で加熱・圧縮形成し帯状負極とした。この帯状負極は、成形後の負極合剤の膜厚が両面共に90μm、その幅が55.6mm、長さが551.5mmに形成し、負極電極とした。
次に、正極は次にようにして作製した。
正極活物質(LiCoO2)は、炭酸リチウム0.5モルと炭酸コバルト1モルと混合し、空気中で900℃、5時間焼成してLiCoO2を得た。
この正極活物質(LiCoO2)を91重量%、導電剤としてグラファイトを6重量%、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを3重量%の割合で混合して正極合剤を作製し、これをN−メチル−2ピロリドンに分散してスラリー状とした。次に、このスラリーを厚み20μmの帯状のアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に均一に塗布し、乾燥後ローラープレス機で圧縮成形して厚み160μmの帯状正極とした。この帯状正極は、成形後の正極合剤の膜厚が表面共に70μm、その幅が53.6mm、長さが523.5mmに形成し、正極電極とした。
このようにして作製した帯状正極と、帯状負極と、厚さが25μm、幅が58.1mmの微多孔性ポリプロピレンフィルムからなるセパレータと積層し、積層電極体とした。この積層電極体は、その長さ方向に沿って負極を内側にして渦巻型に多数回巻回し、最外周セパレータの最終端部をテープで固定し、渦巻式電極体とした。この渦巻式電極体の中空部分は、その内径が3.5mm、外形が17mmに形成された。
上述のように作成した渦巻式電極体を、その上下両面に絶縁板が設置された状態で、ニッケルメッキが施された鉄製の電池缶に収納した。そして、正極及び負極の集電を行うために、アルミニウム製の正極リードを正極集電体から導出して電池蓋に接続し、ニッケル製の負極リードを負極集電体から導出して電池缶に接続した。
この渦巻式電極体が収納された電池缶に、プロピレンカーボネイトとジエチルカーボネイトとの等容量混合溶媒中にLiPF6を1モル/lの割合で溶解した非水電解液5.0gを注入し、アスファルトで表面を塗布された絶縁封口ガスケットを介して電池缶をかしめて電池蓋を固定し、電池缶内の気密性を保持させた。
以上のようにして、直径18mm、高さ65mmの円筒形非水電解液二次電池を作成し、この非水電解液二次電池における負極の評価を次の方法により温度25℃で行った。
(1)充放電試験(活物質と集電体の密着性の評価)
初回条件
充電:0.1C相当電流で定電流充電し、0.02V(対Li/Li+)到達後、定電位充電し、充電電流が0.05C相当に低下した時点で終了した。
放電:0.1C相当電流で定電流放電し、1.5Vになった時点で終了した。
充放電サイクル条件
初回充放電試験を実施した後、同じ0.1C相当電流で100サイクルまで充放電を繰り返した。
充放電試験の判定は、充放電100サイクル後放電容量保持率が30%以上を合格として○、それ以外を不合格として×とし、結果を表2に示す。
なお、サイクル後放電容量保持率は次式で算出した。
(各サイクル後放電容量保持率%)=[(各サイクル後の放電容量)/(最大放電容量)]×100
表2から明らかなように実施例1〜8は粗面の表面粗さRzが2.5μm以上10μm以下であり、常態での抗張力が680MPa以上、ヤング率が55以上90GPa以下であり、300℃1時間加熱後の抗張力が300以上、ヤング率が48以上80GPa以下であり、加熱前と加熱後のヤング率の低下率は20%以下であった。
これに対し比較例1は基本電解液に添加するポリエチレンイミドの分子量が70000と大きいため、加熱後の抗張力が落ち、ヤング率も48GPa以下となり、充放電効率も満足できないものとなった。
比較例2は基本電解液にポリエチレンイミドを添加しなかったために、加熱前のヤング率が満足できず、また、加熱後の抗張力が落ち、ヤング率も48GPa以下となり、充放電効率も満足できないものとなった。
比較例3は基本電解液に添加するポリエチレンイミドの分子量は適正であったがその配合量が多いため、加熱前のヤング率が満足できず、また、加熱後の抗張力が極端に落ち、ヤング率も48GPa以下となり、充放電効率も満足できないものとなった。
比較例4は基本電解液に添加する塩素イオンの量が多かったために、加熱後の抗張力が著しく低下し、充放電効率が満足できないものとなった。
比較例5は基本電解液に添加するポリエチレングリコールの添加量が少なすぎたために、加熱後の抗張力が落ち、ヤング率も48GPa以下となり、充放電効率も満足できないものとなった。
比較例6は基本電解液に添加するポリエチレングリコールの添加量が多すぎたために、加熱前の湖張力が満足できず、また、加熱後のヤング率が48GPa以下となり、充放電効率も満足できないものとなった。
比較例7は基本電解液に添加するヒドロキシエチルセルロースの分子量が250000と大きいため、加熱前の抗張力、ヤング率共に満足できず、また、加熱後の抗張力が落ち、ヤング率も48GPa以下となり、充放電効率も満足できないものとなった。
比較例8は基本電解液に膠を添加したもので、加熱後の抗張力が極端に落ち、充放電効率も満足できないものとなった。
なお、表2には各実施例、各比較例の180度時間加熱後の抗張力とヤング率の測定結果も示している。これらの結果をみると、各例ともに180℃1時間程度の加熱では抗張力、ヤング率共に加熱前と比較して大きな変化は見られず、従ってこれらの銅箔はプリント配線用に使用する場合は好ましく使用できるものである。
本発明によれば、硫酸−硫酸銅水溶液からなる電解液に対して塩素イオンと共に、分子量250000以下の有機添加剤であるヒドロキシエチルセルロ−ス、ポリエチレンイミン又はアセチレングリコールのいずれ1種、ポリエチレンイミン、MPS又はSPSを添加したので、粗面が 表面粗さRz3.0以上と粗度化され、300℃加熱処理後のヤング率の低下が20%以内の電解銅箔(未処理電解銅箔)を提供することができる。
本発明の電解銅箔は、リチウムイオン二次電池の集電体として要求される下記諸条件、
銅箔の両面の表面粗さRz2.5μm〜10μmを有し、
300℃加熱処理後のヤング率48〜80GPa、抗張力300MPa以上
を満足し、リチウムイオン二次電池用の集電体(銅箔)として優れた効果を有するものである。

Claims (4)

  1. 電解銅箔の粗面粗さRzが2.5μm〜10μmであり、常態における抗張力が680MPa以上、ヤング率が55〜90GPaであって、300℃×1時間加熱後のヤング率が48GPa〜80GPaであるリチウムイオン二次電池用電解銅箔。
  2. 電解銅箔の粗面粗さRzが2.5μm〜10μmであり、常態における抗張力が680MPa以上、ヤング率が55〜90GPaであって、300℃×1時間加熱後のヤング率が48GPa〜80GPaであるリチウムイオン二次電池用電解銅箔の製造方法であって、
    硫酸−硫酸銅水溶液を電解液とし、白金族元素又はその酸化物元素で被覆したチタンからなる不溶性陽極と該陽極に対向するチタン製陰極ドラムとを用い、当該両極間に直流電流を通じる電解銅箔を製箔する製造方法において、前記電解液にヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリプロピレングリコール(PPG)またはポリエチレングリコール(PEG)の中より一種と、ポリエチレンイミン(PEI)と、3−メルカプトプロピルスルホン酸(MPS)又はビス(3−スルホプロピル)ジスルファイド(SPS)と塩素イオンとを添加するリチウムイオン二次電池用電解銅箔の製造方法。
  3. 前記ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレングリコール(PEG)それぞれの分子量が250000未満である請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用電解銅箔の製造方法。
  4. ポリエチレンイミンの平均分子量が10000〜15000である請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用電解銅箔の製造方法。
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