JP2013095608A - ビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶、その製造方法、及びファラデー回転子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶であって、該ビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶は、組成式
(BiR)3−aM1aFe5−b−c−dAlbPtcM2dO12
(R:ランタノイド金属及びYのうちから選択される一種または二種以上の元素、
M1:Ca及びSrから選択される一種または二種の元素、
M2:Ge及びSiから選択される一種または二種の元素、
0.01<a<0.1,0.15≦b+d≦0.6,0.01≦c≦0.04,a=c+d)
で表されるものであることを特徴とするビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶。
【選択図】なし
Description
ビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶はガーネット結晶構造であり、この結晶構造は{c}、[a]、(d)で示される3種の陽イオンサイトで構成され、{c}サイトは組成式の式量で3.0、[a]サイトは組成式の式量で2.0、(d)サイトは組成式の式量で3.0となり、ビスマス元素や希土類元素は{c}サイトに位置し、Fe元素は[a]サイトと(d)サイトに位置するとともに反強磁性的に結合している。[a],(d)サイトが全てFe元素で占められているときは、[a]サイトには式量で2.0、(d)サイトには式量で3.0のFe元素が入り、反強磁性的に結合していることより、3.0−2.0、つまり差し引き式量で1.0の磁気モーメントが飽和磁化の大きさと関係する。なお、光の偏光面を回転させる能力であるファラデー回転能には、サイトに関わらず式量で5.0のFe元素が関与する。
このため、一般的には、Feイオンに近似しているがやや小さなイオン半径を持つGa元素を添加することで、主に(d)サイトのFe元素を置換して飽和磁化を下げるといったことが行なわれる。しかし、Gaイオンは[a]サイトのFe元素を置換するため、Ga元素の添加量は多くなり、添加量の増加はFe元素量の希釈につながり、ファラデー回転能の劣化が生じる。ファラデー回転能の劣化は、ファラデー回転子として一般的に要求される偏光面を45度回転させるための厚みを増加させることになり、つまり、ビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶のエピタキシャル膜の厚さを増加させることになるため、結晶成長が困難となる。
(BiR)3−aM1aFe5−b−c−dAlbPtcM2dO12
(R:ランタノイド金属及びYのうちから選択される一種または二種以上の元素、
M1:Ca及びSrから選択される一種または二種の元素、
M2:Ge及びSiから選択される一種または二種の元素、
0.01<a<0.1,0.15≦b+d≦0.6,0.01≦c≦0.04,a=c+d)
で表されるものであることを特徴とするビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶を提供する。
このような元素であれば、飽和磁化がより低く、磁化処理を行なうと角形ヒステリシスを持つビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶となる。
このように本発明のビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶から構成されたものであれば、厚さ700μm以下で十分なファラデー回転能を有し、容易に作製できるファラデー回転子となる。
このように組成式においてRが、TbとYb、TbとHo、あるいはTbとGdである本発明のビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶から構成されたものであれば、飽和磁化が200ガウス以下であり、角型ヒステリシスを持つ高品質のファラデー回転子となる。
(BiR)3−aM1aFe5−b−c−dAlbPtcM2dO12
(R:ランタノイド金属及びYのうちから選択される一種または二種以上の元素、
M1:Ca及びSrから選択される一種または二種の元素、
M2:Ge及びSiから選択される一種または二種の元素、
0.01<a<0.1,0.15≦b+d≦0.6,0.01≦c≦0.04,a=c+d)
で表される前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶を成長させることを特徴とするビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶の製造方法を提供する。
その結果、融液中に二価となる炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、酸化カルシウム、あるいは酸化ストロンチウムおよび四価となる酸化ゲルマニウムあるいは酸化ケイ素を含有させることで、得られたビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶の特性が優れたものであることを確認して、本発明を完成させた。
本発明のビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶は、組成式
(BiR)3−aM1aFe5−b−c−dAlbPtcM2dO12
(R:ランタノイド金属及びYのうちから選択される一種または二種以上の元素、
M1:Ca及びSrから選択される一種または二種の元素、
M2:Ge及びSiから選択される一種または二種の元素、
0.01<a<0.1,0.15≦b+d≦0.6,0.01≦c≦0.04,a=c+d)
で表されるものである。
なお、(BiR)3−aは、Bi量とR量の合計が3−aになることを表す。
M2は四価の陽イオンとなる元素の中でも比較的イオン半径が小さく、ガーネット結晶構造の主に(d)サイトに入るGeやSiより選択される。
一方、従来用いられていたPbは、1種の元素でPb2+とPb4+の両方になることができ、光学特性の改善には非常に好都合の元素であったが、その有害性のために使用できない。
ファラデー回転子の厚さが700μmを超えると、その回転子を製造するための結晶は、ラップ代や研磨代が必要なため750μm以上の厚さが必要となり、これほど厚い結晶のエピタキシャル成長は非常に困難なものとなる。従って、本発明の結晶の組成が上記範囲であれば、厚さ300μm〜700μmのファラデー回転子を提供することができる。
本発明の製造方法では、ガーネット結晶を構成する各金属の酸化物を白金坩堝内で溶融した融液(ガーネット結晶を製造するためのフラックス組成物)中に、白金製のジグに保持したガーネット単結晶基板を挿入し、液相エピタキシャル法により、組成式
(BiR)3−aM1aFe5−b−c−dAlbPtcM2dO12
(R:ランタノイド金属及びYのうちから選択される一種または二種以上の元素、
M1:Ca及びSrから選択される一種または二種の元素、
M2:Ge及びSiから選択される一種または二種の元素、
0.01<a<0.1,0.15≦b+d≦0.6,0.01≦c≦0.04,a=c+d)
で表されるビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶を成長させる。
(実施例1)
液相エピタキシャル法により、本発明のビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶を成長させた。
ガーネット単結晶基板として、格子定数が12.496Åで、厚さが1.2mmである直径76.2mmのNOGウェーハ(信越化学工業(株)商品名)を用いた。また、ビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶を成長させるための金属酸化物として、酸化ビスマス(Bi2O3)9000g、酸化ホウ素(B2O3)128g、酸化第二鉄(Fe2O3)465g、酸化テルビウム(Tb4O7)80g、酸化ユーロピウム(Eu2O3)10g、酸化アルミニウム(Al2O3)23g、酸化ゲルマニウム(GeO2)2g及び酸化カルシウム(CaO)5gを白金坩堝に仕込み、1100℃に加熱してこれを溶融させた。そして、この融液から上記したNOGウェーハに成長温度760〜770℃でビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶膜を液相エピタキシャル法で成長させた。この成長において、融液に微小結晶が析出することはなく、膜厚が680μmで結晶性の良好なビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶を得ることができた。
この単結晶を切断して研磨加工し、波長1.55μmでファラデー回転角45度となるように仕上げた結果、厚さは550μmであった。さらに、SiO2とTi3O5からなる無反射コーティングを施した後、大きさを1.0×1.0mmとし、これに6000エルステッドの磁界を加えて単一に磁化した状態で、波長1.55μmにおける光吸収損失を調べたところ、0.08dBと低損失であった。また、飽和磁化の値を測定した結果、650ガウスであった。
液相エピタキシャル法により、本発明のビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶を成長させた。
ガーネット単結晶基板として、格子定数が12.496Åで、厚さが1.2mmである直径76.2mmのNOGウェーハを用いた。また、ビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶を成長させるための金属酸化物として、酸化ビスマス(Bi2O3)9500g、酸化ホウ素(B2O3)83g、酸化第二鉄(Fe2O3)450g、酸化テルビウム(Tb4O7)68g、酸化イッテルビウム(Yb2O3)15g、酸化アルミニウム(Al2O3)60g、酸化ゲルマニウム(GeO2)2g及び炭酸ストロンチウム(SrCO3)7.4gを白金坩堝に仕込み、1100℃に加熱してこれを溶融させた。この融液から上記したNOGウェーハに成長温度760〜770℃で、ビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶膜を液相エピタキシャル法で成長させた。この成長において、融液に微小結晶が析出することはなく、膜厚が690μmで結晶性の良好なビスマス置換希土類鉄ガーネット単結晶を得ることができた。
この単結晶を切断して研磨加工し、波長1.55μmでファラデー回転角45度となるように仕上げた結果、厚さは600μmであった。さらに、SiO2とTi3O5からなる無反射コーティグを施した後、大きさを1.0×1.0mmとし、これに6000エルステッドの磁界を加えて単一に磁化した状態で、波長1.55μmにおける光吸収損失を調べたところ0.07dBであり、極めて低損失であった。また、飽和磁化を測定した結果は45ガウスであった。この1.0×1.0mmのチップを、5000エルステッドの外部磁界下で磁化処理を行なった後、磁化方向と逆方向へ磁界を印加し、保持力Hcを測定した結果、1400エルステッドであり、角型ヒステリシスを持った材料であることが確認できた。
実施例1及び2と同様に、ただし、ビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶の結晶成分を様々に変えて表1の組成で実施例3〜4、比較例1〜3のガーネット結晶を成長させ、波長1.55μmで45度回転角となる厚さ、光吸収損失、飽和磁化を実施例1及び2と同様に調べた。
測定結果をあわせて表1に示す。
比較例3では、本発明の組成式の「M2」を含まず、光吸収損失が増加した。このエピタキシャル膜の表面側より研磨を続けていくと次第に光吸収損失は小さくなったことより、結晶成長に伴い光吸収損失が増えていることが確認できた。
Claims (5)
- ビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶であって、該ビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶は、組成式
(BiR)3−aM1aFe5−b−c−dAlbPtcM2dO12
(R:ランタノイド金属及びYのうちから選択される一種または二種以上の元素、
M1:Ca及びSrから選択される一種または二種の元素、
M2:Ge及びSiから選択される一種または二種の元素、
0.01<a<0.1,0.15≦b+d≦0.6,0.01≦c≦0.04,a=c+d)
で表されるものであることを特徴とするビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶。 - 前記組成式において前記Rが、TbとYb、TbとHo、あるいはTbとGdであることを特徴とする請求項1に記載のビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶。
- 請求項1又は請求項2に記載のビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶から構成されたものであることを特徴とする厚さ700μm以下のファラデー回転子。
- 請求項2に記載のビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶から構成されたファラデー回転子であって、飽和磁化が200ガウス以下であり、角型ヒステリシスを持つものであることを特徴とするファラデー回転子。
- 液相エピタキシャル法により、白金坩堝内で溶融したフラックス組成物中でビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶を成長させるビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶の製造方法であって、組成式
(BiR)3−aM1aFe5−b−c−dAlbPtcM2dO12
(R:ランタノイド金属及びYのうちから選択される一種または二種以上の元素、
M1:Ca及びSrから選択される一種または二種の元素、
M2:Ge及びSiから選択される一種または二種の元素、
0.01<a<0.1,0.15≦b+d≦0.6,0.01≦c≦0.04,a=c+d)
で表される前記ビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶を成長させることを特徴とするビスマス置換希土類鉄ガーネット結晶の製造方法。
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