JP2013081099A - 弾性表面波素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】圧電基板と支持基板とが接合されていても、クラックや割れなどが発生せず、しかも周波数温度特性が良好な弾性表面波素子を提供する。
【解決手段】 LiTaO製の圧電基板2にSi製の支持基板3が、接着剤4を介して接合された弾性表面波素子1であって、圧電基板2の厚さが、40〜50μmに設定され、接着剤4の厚さが、20μm以上に設定されている。
【選択図】 図1

Description

この発明は、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)素子に関し、特に、圧電基板に温度補償のために異種基板を接合して温度に対する周波数特性を安定化させた弾性表面波素子に関する。
例えば、アナログテレビの跡地帯域にITS(Intelligent Transportation Systems、高度道路交通システム)の車車間通信や路車間通信などが割り当てられた場合、要求仕様が760±5MHzと広帯域でありながら、ガードバンドが高域側、低域側ともに5MHzであり、急峻な肩特性が必要となる。一方、広帯域の弾性表面波素子には、結合係数が高いLiTaO基板が、圧電基板として一般に使用されている。しかしながら、このLiTaO基板は、周波数温度特性が−36ppm/℃と悪く、−30〜+85℃では±1.7MHzも変動してしまい、仕様を満たすことが困難である。そして、弾性表面波素子・デバイスの温度変動は、これを使用する機器に影響を与えるため、温度に対する周波数変動が少ない、つまり温度特性が良好な弾性表面波素子が望まれていた。
そこで、圧電基板に、熱膨張係数が異なる支持基板(Si基板等)を接着剤等で接合することで、圧電基板の熱膨張・熱収縮を抑制し、圧電基板の温度に対する周波数特性を安定化させた技術が知られている(例えば、特許文献1等参照。)。さらに、この技術は、Si製の支持基板(温度補償基板)の両表面にSiO膜を形成することで、反りを抑制する、というものである。
特開2005−347295号公報
ところで、圧電基板と支持基板とを接合した弾性表面波素子の温度特性は、圧電基板の厚さに依存し、薄い程温度特性が良好である。しかしながら、圧電基板が薄すぎると、製造時や実使用時に、圧電基板にクラック・亀裂や割れなどが発生してしまう。同様に、接着剤の厚さを適正にしないと、圧電基板に作用する応力やたわみが大きくなり、圧電基板にクラックや割れなどが発生してしまう。
そこでこの発明は、圧電基板と支持基板とが接合されていても、クラックや割れなどが発生せず、しかも周波数温度特性が良好な弾性表面波素子を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、LiTaO製の圧電基板にSi製の支持基板が、接着剤を介して接合された弾性表面波素子であって、前記圧電基板の厚さが、40〜50μmに設定され、前記接着剤の厚さが、20μm以上に設定されている、ことを特徴とする。
すなわち、本願発明者は、シミュレーションや実験、その考察などの結果、弾性表面波素子としての周波数温度特性が良好で、しかも、クラックや割れなどが発生しない条件として、圧電基板の厚さが40〜50μmで、接着剤の厚さが20μm以上であることが必要である、という結論に至った。
請求項1に記載の発明によれば、圧電基板と接着剤との厚さが、適正値に設定されているため、弾性表面波素子としての周波数温度特性が良好で、つまり、温度に対する周波数特性が安定し、しかも、クラックや割れなどが発生しない。
この発明の実施の形態に係る弾性表面波素子の断面をモデル化した図である。 図1の弾性表面波素子に生じるたわみなどを示す図である。 図1の弾性表面波素子の変形状態を示す図であり、(a)は、温度上昇時を示し、(b)は、温度下降時を示す。 図1の弾性表面波素子における、温度変化とたわみ上限値との関係を示す図である。 図1の弾性表面波素子における、圧電基板の厚さとたわみとの関係を示す図である。 図1の弾性表面波素子における、接着剤の厚さとたわみとの関係を示す図である。 図1の弾性表面波素子における、圧電基板の厚さと圧電基板に作用する応力との関係を示す図である。 図1の弾性表面波素子において、圧電基板の厚さを変化させた場合の割れの有無と、周波数温度特性とを確認した実験結果を示す図である。 図8の周波数温度特性結果をグラフ化した図である。
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
図1は、この発明の実施の形態に係る弾性表面波素子1の断面をモデル化した図である。この弾性表面波素子1は、LiTaO製の圧電基板2にSi製の支持基板3が、接着剤(接合層)4を介して接合された素子であり、圧電基板2の上面に、図示されていない櫛型(IDT:InterDigital Transducer)電極が配置されている。
この弾性表面波素子1では、次のような理由により、圧電基板2の厚さHuが、40〜50μmに設定され、接着剤4の厚さhが、20μm以上に設定されている。
すなわち、温度変化によって弾性表面波素子1(接合体)には、図2に示すようなたわみωmaxが生じ、このたわみωmaxは、次式によって表される。ここで、接着剤4は、後述するようなエポキシ剤とする。

,e[m]:接着剤4の中央(Z=0)から上下部材中央までの距離(Z座標の絶対値)
ωmax[m]:たわみ
ω[m]:たわみの上限値
:被接合部材の剛性を表すωの影響を表すもの
:接着剤4の剛性比λの影響を表すもの
α,α[/℃]:熱膨張係数
Δθ[℃]:温度変化
,B[Pa・m]:伸び剛性、B=E*H、B=E*H
,E[Pa]:ヤング率
,H[m]:厚さ
λ:接着剤4の剛性比、λ=√{(S+S)/S
[/Pa・m]:S=1/B+e(e+e)/(D+D
[/Pa・m]:S=1/B+e(e+e)/(D+D
[/Pa・m]:S=4h/{(1−β)GL
β:ボイド面積率
G[Pa]:横弾性係数、G=E/2(v+1)
v:ポアソン比
L[m]:長さ
h[m]:接着剤4の厚さ
[Pa・m]:圧電基板2の曲げ剛性、D=E*H^(3/12)
[Pa・m]:支持基板3の曲げ剛性、D=E*H^(3/12)
LiTaO(BYLT)の熱膨張係数α=1.61×10−05[/℃](Z方向)
Siの熱膨張係数α=4.20×10−06[/℃]
接着剤4の熱膨張係数=1.00×10−04[/℃]
LiTaO(BYLT)のヤング率E=230[GPa]
Siのヤング率E=170[GPa]
接着剤4のヤング率=1.50[GPa]
LiTaO(BYLT)のポアソン比=0.3
Siのポアソン比=0.17
接着剤4として使用されるエポキシ剤は、例えば、概略次のようなものである。
主成分:エポキシメタクリレート
粘度:130±30[mPa・sec](回転粘度計25±1℃)
硬化前の屈折率:1.503±0.005[nD(589.3nm)](アッベ屈折計25±1℃)
硬化前の比重:1.10(比重計25±1℃)
硬化後の比重:1.20(アルキメデス法)
硬化収縮率:8〜9%
引張弾性率:1000〜1300[MPa]
表面硬度:13±2[Hv](微小硬度計)
熱膨張係数:1.0〜1.1×10−04[/℃]
硬化後の屈折率:nD1.534、nF1.543、nC1.531(アッベ屈折計)
接着強度:10[N/mm
上記の式から、Si製の支持基板3の方が、LiTaO製の圧電基板2よりも熱膨張係数が小さいため、常温から温度上昇した場合には、図3(a)に示すように、弾性表面波素子1全体が凸状に変形し、圧電基板2には圧縮応力が発生する。また、常温から温度下降した場合には、図3(b)に示すように、弾性表面波素子1全体が凹状に変形し、圧電基板2には引張り応力が発生する。
ところで、LiTaOもセラミックスの一種であり、セラミックスは、原子が共有結合で結びついているため、金属なような延性、展性がなく、圧縮応力よりも引張り応力に弱い。つまり、LiTaO製である圧電基板2は、温度上昇時・高温時よりも、温度下降時・低温時の方が弱く、クラックや割れなどが発生しやすい。
一方、上記の式から、次のようなことがわかる。すなわち、上記の(数1)から、たわみωmaxを小さくするには、ω、fおよびfを小さくすればよく、上記の(数2)から、被接合部材である圧電基板2および支持基板3の厚さ(e,e)を厚くすることで、たわみωmaxを小さくすることができる。また、fは、被接合部材の剛性を表すパラメータωの影響を表すものであり、ωを大きくすると、たわみωmaxを小さくすることができる。さらに、fは、接着剤4の剛性比λの影響を表すものであり、剛性比λを小さくすると、たわみωmaxを小さくすることができる。つまり、柔らかい接着剤4を用いることや、接着剤4を厚くすることなどによって、たわみωmaxを小さくすることができる。
図4は、上記の式に基づいて、厚さが異なる複数の圧電基板2における、温度変化Δθとたわみ上限値ωとの関係を示す図である。この図から、たわみ上限値ωは、圧電基板2の厚さに対して反比例状に変化し、圧電基板2が薄いほど、たわみ上限値ωが大きくなることが明らかである。また、図5は、上記の式に基づいて、厚さが異なる複数の接着剤4における、圧電基板2の厚さとたわみωmaxとの関係を示す図である。この図から、圧電基板2の厚さが40μm未満では、たわみωmaxが急激に大きくなることが確認される。
また、図6は、上記の式に基づいて、厚さが異なる複数の圧電基板2における、接着剤4の厚さとたわみωmaxとの関係を示す図である。この図から、接着剤4の厚さが20μm未満では、たわみωmaxが急激に大きくなることが確認される。
次に、厚さ方向の垂直応力について検討すると、接着剤4の端部で生じる最大垂直応力σzmaxは、次式によって表される。
σ:接着剤4の厚さ方向の垂直応力
:接着剤4の端部からの距離
:垂直応力の作用範囲寸法
max:接着剤4に生じる最大せん断応力
K:接着剤4の厚さ方向の変形に対するバネ定数
β:ボイド面積率
h:接着剤4の厚さ
E:厚さ方向のヤング率
上記の(数16)から、最大垂直応力σzmaxを小さくするには、接着剤4のヤング率を小さくすること(柔らかい接着剤4を用いること)や、接着剤4を厚くすることなどが有効である、ことがわかる。また、(数12)から、同式中の(e/D−e/D)の項がゼロとなるように、圧電基板2と支持基板3との剛性比を選択すれば、最大垂直応力σzmaxがゼロになることがわかる。
次に、圧電基板2に生じるx方向の応力σについて検討すると、この応力σは、次式によって表される。
σuo:接着剤4を剛体とした場合のσの上限値
Y:接着剤4のせん断ひずみ
max:最大せん断ひずみ
:境界条件dy/dξ
上記の(数21)から、応力σを低減するには、接着剤4の剛性比λを小さくすること、すなわち、柔らかい接着剤4を用いることや、接着剤4を厚くすることなどが、有効であることがわかる。また、上記の式から、せん断ひずみを低減するには、圧電基板2と支持基板3との熱膨張係数の差(α−α)や接合寸法Lを小さくすること、あるいは、接着剤4を厚くすることが有効であることがわかる。
図7は、上記の式に基づいて、厚さが異なる複数の接着剤4における、圧電基板2の厚さと圧電基板2に作用する応力σとの関係を示す図である。この図から、圧電基板2の厚さを厚くすると、圧電基板2に作用する応力σが低減・緩和されることが明らかである。
このようなシミュレーション・計算による検討に基づいて、接着剤4の厚さを20μmとし、圧電基板2の厚さを変化させて、圧電基板2の割れの有無および弾性表面波素子1の周波数温度特性を確認した実験結果を、図8、9に示す。ここで、上記のように、支持基板3の厚さを厚くするほど、たわみωmaxを小さくすることができ、また、弾性表面波素子1全体の強度・剛性、厚さなどを考慮して、支持基板3の厚さは、約360μmに設定されている。この実験結果から、少なくとも圧電基板2の厚さが32μm以下では、製造時などに圧電基板2に割れが発生することが確認された。また、圧電基板2の厚さを薄くするに従って、周波数温度特性が向上・良化し、圧電基板2の厚さが50μmの場合には−18ppm/℃で、従来の−36ppm/℃に比べて半減することが確認された。
以上のようなシミュレーションや実験、およびその考察により、圧電基板2の厚さが40μm以上であれば、たわみωmaxを抑制可能で、実際・実験においても割れが発生しないことが判明した。一方、圧電基板2の厚さを50μm以下にすることで、周波数温度特性を良好にすることができることが判明した。さらに、接着剤4の厚さについては、20μm以上であれば、たわみωmaxを抑制可能で、実際・実験においても圧電基板2の厚さを適正(40μm以上)にすれば、割れが発生しないことが判明した。
すなわち、圧電基板2の厚さHuを40〜50μmに設定し、接着剤4の厚さhを20μm以上に設定することで、弾性表面波素子1としての周波数温度特性を良好にした上で、製造時や実使用時におけるクラックや割れなどの発生を防止・抑制することができるものである。
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、接着剤4の厚さの上限値については規定していないが、この上限値は、弾性表面波素子1全体の厚さや接合性などを考慮して設定され、例えば、50μmとしてもよい。また、接着剤4は、上記のようなエポキシ剤に限らない。
1 弾性表面波素子
2 圧電基板
3 支持基板
4 接着剤(接合層)

Claims (1)

  1. LiTaO製の圧電基板にSi製の支持基板が、接着剤を介して接合された弾性表面波素子であって、
    前記圧電基板の厚さが、40〜50μmに設定され、前記接着剤の厚さが、20μm以上に設定されている、ことを特徴とする弾性表面波素子。
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