JP5561959B2 - 静電振動子及び電子機器 - Google Patents

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Description

本発明は、各種電子機器の基準周波数発振器に使用される静電振動子及びこの静電振動子を備えた電子機器に関する。
携帯電話等に代表される無線携帯機器や、パーソナルコンピュータ、時計等の電子機器の小型化と高精度化の要求が高まっている。このような電子機器には、小型でしかも安定な高周波信号源が必要不可欠である。この要求を満足させるための代表的な電子部品がATカット水晶振動子(以下、単にATカットと略す)である。
ATカットは、良好な結晶の安定性から、発振素子としての品質の指標である共振先鋭度すなわちQ値が極めて大きく、10000を超えることが知られている。これが、無線携帯機器、パーソナルコンピュータ等の安定な高周波信号源として、広くATカットが利用されている理由である。しかし、このATカットは、近年の強い小型化の要求に関しては、十分に満足させることができないことも明らかになってきている。
すなわち、ATカット以外の高周波電子部品は、シリコンのMEMS(Micro-Electro-Mechanical-System)技術の飛躍的な向上によって、ICとの一体形成及び接合形成が実現しており、ほぼワンチップ化されている。ところが、水晶単結晶とシリコン結晶の物理的接合が非常に困難であるために、これらの一体形成や接合形成が不可能である。このため、ATカットも含めた高周波電子部品のワンチップ化は実現できていない。以上が、ATカットが近年の小型化の要求を十分に満足させることができない理由である。
この問題を解決するために、近年とみに注目されている振動子が、シリコン単結晶とMEMS技術を用いた静電振動子である。この静電振動子は、シリコンより形成された振動子の高Q特性を持った機械振動を、静電力を介在して電気信号に変換する振動子である。また、この静電振動子は、水晶振動子と同等な高Q特性を持つインピーダンス特性を実現することができる。さらに、この静電振動子は、ATカットに代表される水晶振動子では実現できないICとの一体形成及び接合形成が実現できる。このように、静電振動子は、非常に優れた特徴を持った振動子である(例えば非特許文献1参照)。
この静電振動子の製造は、図5にて示すSOIウェハを用いて製造される。図5は前記SOIウェハの模式図である。SOIウェハは、シリコン基板501と、このシリコン基板501上に形成された酸化シリコン層すなわちボックス層502と、このボックス層502上にされたシリコン層503の三層構造を持つウェハである。本発明に係る静電振動子は、DRIE等のMEMS技術を用いて図5記載のシリコン層503部にて形成されている。
T.Mattila et al.,"14MHz Micromechanical Oscillator",TRANSDUCERS'01 EUROSENSORS XV,The 11th International Conference on Solid-State Sensors and Actuators,Munich,Germany,2001
しかし、従来の静電振動子には、以下で説明するような問題があった。図6は前述のATカットの周波数温度特性を示した特性図である。図6において、縦軸は周波数変化率、横軸は温度である。図中の特性曲線601が、前記ATカットの周波数温度特性である。また、図7は、従来の静電振動子の周波数温度特性を示した特性図である。これは、図6と同様に、縦軸は周波数変化率、横軸は温度を示す。さらに特性曲線701は、静電振動子の周波数温度特性である。
一般に振動子の周波数温度特性の特性曲線は、温度をT、基準温度をT0、周波数変化率をΔFとすれば、近似的に(1)式
Figure 0005561959
と書ける。ここで、αは周波数一次温度係数、βは周波数二次温度係数、γは周波数三次温度係数である。
Figure 0005561959
表1にATカットの周波数温度特性を示す図6記載の特性曲線601、および静電振動子の周波数温度特性を示す図7記載の特性曲線701のα、β、γを記載する。ここで、表1記載の数値は、基準温度T0=20℃での数値である。
静電振動子の温度に対する周波数変化率は、ATカットのそれに対して極めて大きい事が、図6、図7記載の特性曲線の比較、さらには表1記載の周波数温度係数値の比較によって判明する。特に、表1から、ATカットの数値に比較して極めて大きな静電振動子の周波数一次温度係数αと周波数二次温度係数βの値が、静電振動子の周波数変化率を劣化させている原因である事も判明する。それゆえ、この静電振動子は前述の如く、非常に優れた特徴を持っているにもかかわらず、その大きな周波数変化率が原因で、いまだに実用化が困難な状況である。
この問題を解決するために、シリコン酸化膜を静電振動子の振動部に形成するという手法が提案されている。しかし、いまだ不十分な周波数温度特性であるために、実用化が進んでいない。以下でその理由を説明する。図8及び図9は、その手法を用いた静電振動子の模式的な図である。図8は、振動部の片端部が固定された屈曲振動型静電振動子の斜視図である。固定部803と振動部804は、シリコン基板801上のボックス層802を介在して一体形成されている。二対の励振電極805は、振動部804において屈曲振動変位806を誘発するように配置されている。この励振電極805は、ボックス層802上に形成されている。ここで、振動部804の長さ寸法をLとした。
図9は図8記載の振動部804の断面図である。振動部804の断面構造は、断面周囲のシリコン酸化膜807と、中心部のシリコン部808の二層構造となっている。図9において、振動部804の幅寸法は図記載のごとく、屈曲振動変位806と平行なシリコン部808の寸法と定義され、その値はaである。また、振動部804の厚みは前記振動変位806と垂直なシリコン部808の寸法として定義され、その値はhである。さらにこのシリコン部808の周囲に形成されるシリコン酸化膜807の厚みはbである。
図10は図8及び図9にて説明した静電振動子の周波数温度特性を示した特性図である。図10において、縦軸は周波数変化率、横軸は温度である。図中の特性曲線1001がシリコン酸化膜付静電振動子の周波数温度特性である。また特性曲線601が、前記ATカットの周波数温度特性である。特性曲線1001は、図7記載の特性曲線701に比較して、その変化量はかなり小さくなっている。しかし、曲線形状が放物線形状となっており、ATカットの周波数温度特性である特性曲線601と比較すると、いまだ不十分な周波数温度特性である。
ここで、この特性曲線601の周波数一次温度係数α、周波数二次温度係数βは、それぞれ 0.1ppm/℃及び−2.5×10-3ppm/℃2である。すなわち、シリコン酸化膜付静電振動子においては、その周波数一次温度係数αは、ATカットの周波数一次温度係数と同程度の数値が実現されている。しかし、周波数二次温度係数βに関しては、ATカットの周波数二次温度係数の同程度の数値が実現されていない。
以下で、この理由を説明する。図8及び図9記載のシリコン酸化膜付の静電振動子において、その共振周波数Fは(2)式で与えられる。
Figure 0005561959
ここで、ES、ρSは、それぞれシリコンのヤング率と密度である。a、Lは、図8及び図9記載の振動子の幅寸法と長さ寸法である。また、シリコン酸化膜厚比Γ及び酸化膜補正関数φ(Γ)は、振動子の幅とシリコン酸化膜の厚みをそれぞれ、a、bとして(3)式、(4)式と書ける。
Figure 0005561959
Figure 0005561959
φ(Γ)は上式で定義された無次元の関数である。さらに(4)式中のΔE、Δρは、シリコン酸化膜のヤング率、密度をそれぞれ、EO、ρOとして、(5)式、(6)式と書ける。
Figure 0005561959
Figure 0005561959
ΔE、Δρは、(数5)、(数6)として定義されている。
(2)式で与えられるシリコンとシリコン酸化膜の二層構造を持った振動子の共振周波数の温度特性は、ほぼ、シリコン及びシリコン酸化膜のヤング率の温度係数と密度の温度係数で決定される。以上の数式は、図9記載の如く振動部断面周囲にシリコン酸化膜が形成される事によって、振動部の断面二次モーメントが変化するという理論的背景から導出された式である。物理的には、この断面二次モーメントの温度特性が変化する事で周波数温度特性の変化を説明する事ができる。
Figure 0005561959
表2は、シリコンとシリコン酸化膜のヤング率、密度及びそれらの温度係数を記載した表である。この表2記載の数値と(2)式を用いて、図7記載の静電振動子の周波数温度係数計算した特性図が、図11及び図12である。
図11は、周波数一次温度係数αのシリコン酸化膜厚比Γ(=b/a)の依存性を示す特性図である。縦軸は周波数一次温度係数α、横軸はシリコン酸化膜比Γである。本図記載の特性曲線群1101は、図9記載の振動部804の断面のアスペクト比a/hをパラメータとした、周波数一次温度係数αとシリコン酸化膜比Γの関係を示した複数の特性曲線である。本図より任意のアスペクト比a/hにおいても、周波数一次温度係数αが0になるシリコン酸化膜比Γが存在する事が判明する。すなわち、振動部804の断面のアスペクト比の大きさにかかわらず、その周波数一次温度係数αが0になる最適なシリコン酸化膜比Γが存在する事になる。
図12は、周波数二次温度係数βのシリコン酸化膜厚比Γ(=b/a)の依存性を示す特性図である。図12の縦軸は周波数二次温度係数β、横軸はシリコン酸化膜比Γである。本図記載の特性曲線群1201は、図9記載の振動部804の断面のアスペクト比a/hをパラメータとした周波数二次温度係数βと、シリコン酸化膜比Γの関係を示した複数の特性曲線である。本図よりアスペクト比a/hを変化させても、周波数二次温度係数βが0になるシリコン酸化膜比Γは存在しない事が判明する。すなわち、シリコン酸化膜の効果では市周波数二次温度係数βを0にする事は不可能である事が、本図より判明する。
以上が、従来のシリコン酸化膜付静電振動子においては、その周波数一次温度係数αは、ATカットの周波数一次温度係数と同程度の数値が実現できるにもかかわらず、周波数二次温度係数βに関しては、ATカットの周波数二次温度係数の同程度の数値が実現できない理由である。本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであって、周波数一次温度係数αと周波数二次温度係数βが同時にほぼゼロ、すなわちATカットと同程度となる静電振動子を提供することを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものである。両端固定型の振動境界条件をもったMEMS型静電駆動屈曲振動子の振動部は、酸化シリコン膜が形成されると共に前記振動部の両端部から前記酸化シリコン膜形成の際に発生する圧縮応力が前記振動部に印加される構造を有する事を特徴とする。
この圧縮応力の応力印加機構は次の通りである。応力印加機構は、前記振動部と平行な位置に少なくとも一個のビームを有し、このビームの両端部と前記振動部の両端部が一体形成され、前記振動部の少なくとも一方の端部がシリコン基板上に連結する事で酸化シリコン膜生成前後に生じる前記ビームの熱弾性変形応力を圧縮応力として前記振動部に印加される構造とした事を特徴とする。
本発明は、シリコン酸化膜で覆われ両端が固定されたビームであって静電駆動屈曲振動する振動部を有する振動板と、前記振動板の一部と接続し、前記振動板を固定するボックス層と、前記ボックス層の前記振動版の接続した面と向かい合う面に前記振動板と平行に接続された基板と、前記基板上に形成され、前記振動部の両側に空隙を隔てて平行に配置された電極とから構成される静電振動子である。
また、本発明の振動子の前記静電屈曲振動子は、ヤング率の温度係数が負であることを特徴とする。
また、本発明の振動子の前記振動子のシリコン酸化膜は、前記振動部の長手方向及び短手方向のいずれに対しても線対称に形成されていることを特徴とする。
また、本発明の振動子の前記振動部は、前記振動板に少なくとも2本形成され、全ての振動部が平行に配置されていることを特徴とする。
また、本発明の振動子の前記振動板は、シリコン酸化膜で覆われていない温度補償部と前記振動部とから形成されることを特徴とする。
また、本発明の振動子の前記温度補償部は、前記振動板に少なくとも2本形成され、前記基板の中心線に対して線対称に配置されていることを特徴とする。
また、本発明の振動子は、前記温度補償部の両側に前記固定部を介して前記振動部が形成されることを特徴とする。
また、本発明の振動子の前記基板は、前記温度補償部に対する位置に空隙を有することを特徴とする。
また、本発明の振動子の前記基板は、互いに向かい合う辺に沿って一組のボックス層を有し、前記振動部の固定された箇所が前記一組のバッファ層にそれぞれ接続され、前記基板の前記振動板と反対の面の一部に片端固定による実装が可能な突起部が形成されたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の静電振動子。
また、本発明の振動子の前記シリコン酸化膜は、熱酸化法にて形成された膜である事を特徴とする。
また、本発明の振動子の前記シリコン酸化膜は、CVD法にて形成された膜である事を特徴とする。
また、本発明は上記の振動子を備えた電子機器である。
酸化シリコン膜生成前後に生じる振動部以外の熱弾性変形に伴う圧縮応力の温度係数は、一次係数、二次係数共にプラスの値を持っている。この前記圧縮応力を酸化シリコン膜が形成された振動部に印加される機構を採用する事によって、周波数一次温度係数と周波数二次温度係数を同時にゼロにする事が可能となる。これによって、ATカットと同レベルの周波数温度特性を持った静電振動子が実現する。
本発明の一実施形態による静電振動子の構造を示す斜視図である。 図1記載の振動部102及び振動部103の横断面図である。 図1記載の振動部102及び振動部103の長さ方向断面図である。 本発明の第一の実施形態における圧縮応力印加機構を説明するための図である。 静電振動子の製造に関するSOIウェハの概念図である。 ATカットの周波数温度特性を示した特性図である。 従来の静電振動子の周波数温度特性を示した特性図である。 振動部にシリコン酸化膜が形成た片端部固定型屈曲振動型静電振動子の斜視図である。 図9は図8記載の振動部804の断面図である。 図8及び図9記載の静電振動子の周波数温度特性を示した特性図である。 周波数一次温度係数αのシリコン酸化膜厚比Γ(=b/a)の依存性を示す特性図である。 周波数二次温度係数βのシリコン酸化膜厚比Γ(=b/a)の依存性を示す特性図である。 本発明に係る振動部の圧縮応力の室温近傍における温度変化を説明する特性図である。 本発明に係る静電振動子の周波数一次温度係数αの振動子辺比L/a依存性を図示した特性図である。 本発明に係る振動子の周波数温度特性の周波数二次温度係数βの振動子辺比L/a依存性を図示した特性図である。 本発明に係る周波数二次温度係数βをゼロとならしむる振動子辺比Rとシリコン酸化膜比Γの関数関係を図示した特性図である。 本発明に係る静電振動子の効果を説明する特性図である。 本発明に係る第二の実施形態による静電振動子の構造を示す斜視図である。 本発明に係る第二の実施形態における圧縮応力印加機構を説明するための図である。 本発明に係る第三の実施形態による静電振動子の構造を示す斜視図である。 本発明に係る第三の実施形態による静電振動子の断面構造を示す図である。
以下、図面を参照し、本発明の実施形態とその作用を説明する。図1は、本発明の一実施形態による静電振動子の構造を示す斜視図である。シリコン基板(基板)101には、長さLの振動子が形成されている。この振動子は、振動境界条件が両端固定型の二本の同一形状寸法の第一のビームである振動部により構成される。この二本の振動部がそれぞれ振動部102と振動部103である前記振動子は、固定部104と固定部105と一体形成されている。また一対の温度補償部106が第二のビームとして振動部102と振動部103に対して平行な位置に形成されている。さらにこれらの温度補償部106、振動部102及び振動部103は、固定部104と固定部105を介在して一体形成されている。固定部104は、ボックス層107を介在してシリコン基板101上に固定されている。それに対して固定部105とシリコン基板101との間には、ボックス層107の厚みに相当する空隙108が存在する。前記振動部102と振動部103の振動変位はそれぞれ、振動変位109及び振動変位110であり、その振動振幅は互いに等しく、その位相は180°異なっている。この振動部102、103と固定部104と105は同一平面に形成され、これらを含めて振動板118と呼ぶ。
このような振動変位を励起させるための励振電極が、図記載の励振電極111と励振電極112である。この両励振電極もボックス層107を介在してシリコン基板101と一体形成されている。振動部102と振動部103の外側にある一対の励振電極111と前記両振動部の内側にある励振電極112は、互いに極性が異なるように電気的に接続されている。また本図の斜線部は、前記振動部102と振動部103を含んだ近傍のみに形成されたシリコン酸化膜113である。このシリコン酸化膜113は、熱酸化法によって形成されたシリコン酸化膜である。通常、熱酸化のプロセスにおいては、振動部102と振動部103と共に温度補償部106にもシリコン酸化膜が形成される。しかし、本図記載の静電振動子においては、熱酸化後、イオンミーリング加工等を用いて選択的に温度補償部106に形成されたシリコン酸化膜は除去されている。
熱酸化法においては、本発明に係る振動部、温度補償部以外のシリコン基板101、励振電極111及び励振電極112の表面にもシリコン酸化膜が形成される。しかし、本発明が課題とする周波数温度特性の改善に関しては、大きな影響を与えないので、本図の説明に関しては図示する事を省略している。
図2は、図1記載の振動部102及び振動部103の横断面図である。振動部102及び振動部103の断面構造は断面周囲のシリコン酸化膜113、中心部のシリコン部114の二層構造となっている。図2において、本図記載のごとく、振動部の幅寸法、厚み寸法及びシリコン酸化膜の厚み寸法は、図9と同じくa、h、bである。
図3は、図1記載の振動部102及び振動部103の長さ方向断面図であって、両振動部の中心点116近傍の断面図である。この断面図においても図2と同様に、その断面構造は、断面周囲のシリコン酸化膜113と、中心部のシリコン部114との二層構造となっている。本発明に係る図1記載の静電振動子の振動部においては、シリコン部114の周囲に形成された厚みbのシリコン酸化膜113と共に、振動部の長さ方向の軸線115と平行に応力が印加されている。この応力の印加方向と大きさは、軸線115方向に対しては、一様な分布をしている。それに対して、図3記載の横断面内での応力分布は、シリコン酸化膜113とシリコン部114の領域ばかりでなく、厚み方向、幅方向に対しても一様ではない。詳細な理論的説明は省略するが、静電振動子の振動部分布する応力は、振動部横断面内の平均応力として、その周波数及び周波数温度特性に影響する事が判明している。この振動部横断面内の平均応力が、本図記載の平均断面応力117である。この平均断面応力117は、中心点116方向に向かって作用する応力、すなわち圧縮応力となっており、(−)の符号を持っている。
振動部にシリコン酸化膜が形成され、さらに応力が作用する図1、図2及び図3記載の静電振動子のその共振周波数は(7)式で与えられる。
Figure 0005561959
ここで、ES、ρSはそれぞれシリコンのヤング率と密度であり、a、Lは、図1、図2及び図3記載の振動子の幅寸法と長さ寸法である。シリコン酸化膜厚比Γ、酸化膜補正関数φ(Γ)、ΔE及びΔρの定義は、(3)式から(6)式と同じ定義式による。さらに、図3記載の平均断面応力117が(7)式中のσ0である。また、<ρ>は、本図記載の静電振動子の密度であって、シリコンの密度ρS、シリコン酸化膜の密度ρ0、振動部の幅寸法a、厚み寸法h及びシリコン酸化膜の厚み寸法bを用いて、(8)式で与えられている。
Figure 0005561959
さらに、(7)式中の波数nは、振動境界条件が両端固定型である本図記載の静電振動子においては、(9)式で決定されている。
Figure 0005561959
(7)式、(8)式、(9)式にて示されるように、振動部にシリコン酸化膜と断面応力が同時に作用する場合、その周波数温度係数は、シリコン酸化膜厚比Γ(=b/a)だけでなく、平均断面応力σ0及び振動部辺比L/aに依存する事が判明する。言い換えれば、断面二次モーメントの温度特性変化だけでなく、振動部に印加される平均断面応力の温度特性にも依存するが判明する。
図4は、本発明に係る図1、図2及び図3記載の静電振動子において、熱弾性変形が圧縮応力として振動部に印加される機構を説明するための図である。本図は、図1記載の本発明に係るシリコン酸化膜113が形成された振動部102、振動部103と、この振動部と固定部104と固定部105を介在して平行な位置に一体形成された一対の温度補償部106よりなる静電振動子の正面図である。
本図において温度補償部106には、補償部熱弾性変形応力401が存在する。また振動部102と振動部103にも、振動部熱弾性応力402が存在する。なお、本発明に係る静電振動子のシリコン酸化膜形成のための熱酸化のプロセスにおいては、振動部102と振動部103と共にビーム106にもシリコン酸化膜が形成される。しかし、熱酸化後、イオンミーリング加工等を用いて選択的に温度補償部106に形成されたシリコン酸化膜は除去されている。
図4記載の補償部熱弾性変形応力401と振動部熱弾性応力402は大きさが違う。
Figure 0005561959
表3は、シリコン及びシリコン酸化膜の線膨張率を記載した表であってシリコンとシリコン酸化膜の線膨張は大きく相違している。シリコン酸化膜の線膨張率は、シリコンの五分の一以下の値となっている。前記温度補償部106は、シリコン酸化膜除去に伴って、その線膨張率がシリコンの線膨張率に等しくなる。
それに対して、シリコン酸化膜113が形成されている振動部102及び振動部103の線膨張率は、シリコン酸化膜の影響によって、シリコン酸化膜113の影響によって大きく変化している。この線膨張率は、従来のシリコンの線膨張率に比較して、その値は小さい。
本図記載の補償部熱弾性応力401は、温度補償部106の線膨張率に比例する。振動部熱弾性応力401は、振動部102及び振動部103の線膨張率に比例する。それゆえ、本図記載の振動部熱弾性応力401は、同図記載の補償部熱弾性応力402よりも大きい。この両者の熱弾性応力の大きさの違いが、図3記載の振動部に圧縮応力として作用する平均断面応力117が生じる原因である。
図13は、前述の振動部熱弾性応力401と補償部熱弾性応力402の熱弾性応力の大きさの違いによって発生する振動部の平均断面応力を示す。すなわち図13は、圧縮応力の室温近傍における温度変化を説明する特性図である。
シリコン酸化膜は水蒸気を含んだ雰囲気中で熱酸化される。その焼成温度は約1000度である。本図の縦軸は、振動部102及び振動部103の平均断面応力(圧縮応力)であり、横軸は温度である。また、本図の縦軸の領域は平均断面応力が負の値の領域であって、縦軸の上方向に行くに従って、ゼロに近い値をとる事になる。図中の三本の特性曲線1301、1302、1303が、本発明に係る平均断面応力の温度特性を表す特性曲線である。これらは、(3)式で定義されたシリコン酸化膜厚比Γによって異なる特性曲線となっている。
Γが大きいほど、本図記載の平均断面応力は負の側に大きくなり、圧縮応力として大きく作用する。すなわち、特性曲線1301、1302、1303に対応するシリコン酸化膜厚比Γをそれぞれ、Γ1、Γ2、Γ3とすれば、Γ1>Γ2>Γ3なる関係がある。この本図記載の平均断面応力の温度変化の大きな特徴は、その一次温度係数及び二次温度係数共に正の値を持っている点である。
ここで、この平均断面応力が圧縮応力として作用する特徴と、その温度係数が一次係数、二次係数ともに正の符号となるという特徴がある。これらの特徴は、図1、図2及び図3記載の温度補償部106の両端部と振動部102及び振動部103の両端部が接続している事によって説明できる。さらに一般的には、振動部にはシリコン酸化膜が形成される。これと共に、振動部両端には、シリコン酸化膜が形成されていない温度補償部が接続される事によって、振動部断面に誘発される平均断面応力が圧縮応力として作用する。さらにその圧縮応力の温度係数が一次係数、二次係数共に正の符号となる。
この圧縮応力として振動部に作用する平均断面応力の一次温度係数及び二次温度係数はが共に正の値を持っている。このため、シリコン酸化膜厚比Γ(=b/a)と振動部辺比L/aを制御する事によって、周波数の一次温度係数だけでなく二次温度係数も制御する事が可能となる。
図14は、図1記載の振動子の周波数一次温度係数αの振動子辺比L/a依存性を図示した特性図である。シリコン酸化膜厚比Γ(=b/a)をパラメータとしてその特性曲線を図示している。縦軸は周波数一次温度係数α、横軸は振動子辺比L/aである。
4本の特性曲線1401、特性曲線1402、特性曲線1403及び特性曲線1404において、対応するシリコン酸化膜比Γは、それぞれΓ1、Γ2、Γ3及びΓ4であって、Γ1<Γ2<Γ3<Γ4なる関係がある。シリコン酸化膜厚比Γの増加にしたがって、周波数一次温度係数αがゼロとなる振動子辺比Rは変化する。すなわち、本図においてシリコン酸化膜比Γ1においてはR1α、シリコン酸化膜比Γ2においてはR2α、シリコン酸化膜比Γ3においてはR3α、シリコン酸化膜比Γ4においてはR4αとなっている。周波数一次温度係数αをゼロとする振動子辺比は、シリコン酸化膜比Γの増加に対して減少する関数関係にある事が判明する。
図15は、図1記載の本発明に係る振動子の周波数温度特性の周波数二次温度係数βの振動子辺比L/a依存性を図示した特性図である。この図は、シリコン酸化膜厚比Γ(=b/a)をパラメータとしてその依存性を図示している。縦軸は周波数二次温度係数β、横軸は振動子辺比L/aである。4本の特性曲線1501、特性曲線1502、特性曲線1503及び特性曲線1504において、対応するシリコン酸化膜比Γはそれぞれ図14と同じ値Γ1、Γ2、Γ3及びΓ4であって、図14と同じくΓ1<Γ2<Γ3<Γ4なる関係がある。
本図より、周波数二次温度係数βがゼロとならしむる振動子辺比が存在する事が判明する。
この理由は、図13にて説明したように、本発明に係る振動子に作用する圧縮応力の二次温度係数が、正の値を持っている事に帰着される。図14と同様に、シリコン酸化膜厚比Γの増加にしたがって、周波数二次温度係数βがゼロとなる振動子辺比Rは変化する。すなわち、本図における振動子辺比Rはシリコン酸化膜比Γ1においてはR1β、シリコン酸化膜比Γ2においてはR2β、シリコン酸化膜比Γ3においてはR3β、シリコン酸化膜比Γ4においてはR4βとなる。周波数一次温度係数βをゼロとする振動子辺比は、シリコン酸化膜厚比Γの増加に対して減少する関数関係にある事が判明する。
図14にて説明した、周波数一次温度係数αをゼロとする振動子辺比とシリコン酸化膜比Γの関数関係を特性曲線L01として、図15にて説明した周波数二次温度係数βをゼロとならしむる振動子辺比Rとシリコン酸化膜比Γの関数関係を特性曲線L02として図示した特性図が図16である。
本図において、縦軸は振動子辺比R(=L/a)、横軸はシリコン酸化膜比Γ(=b/a)である。この二本の特性曲線1601と特性曲線1602の交点1603が、周波数一次温度係数αと周波数二次温度係数βが同時にゼロとなる点である。その時のシリコン酸化膜厚比がΓ0及び振動子辺比がR0である。この二つの設計パラメータを適応させた、図1記載の本発明に係る静電振動子の周波数温度特性の特性図が、図17である。
図17は、本発明に係る静電振動子の効果を説明する特性図でる。縦軸は周波数変化率、横軸は温度である。図中の特性曲線1701が本発明に係る周波数温度特性、また特性曲線601が、図6、図10で説明してATカットの周波数温度特性である。本図から判明するとおり、本発明に係る静電振動子は、シリコンのヤング率の一次温度係数及び二次温度係数が負の値である事に起因する劣悪な周波数温度特性を、ヤング率の一次温度係数が正の値であるシリコン酸化膜を振動部に形成すると共に、このシリコン酸化膜形成にともなって発生する一次温度係数及び二次温度係数共に正の値をもった圧縮応力を印加させる事により、その周波数一次温度係数αと周波数二次温度係数βを同時にゼロとする事が可能となる。これにより、ほぼ水晶ATカットと同程度の周波数温度特性が実現できるのである。
図18は、本発明の第二の実施形態による静電振動子の構造を示す斜視図である。シリコン基板1801には、振動境界条件が両端固定型の二本の同一形状寸法の第一のビームである振動部よりなる長さLの振動子が形成されている。この前記二本の振動部がそれぞれ振動部1802と振動部1803である。
前記振動子は、固定部1804と固定部1805とが一体形成されている。温度補償部1806が第二のビームとして振動部1802と振動部1803中間位置に形成されている。さらに、これらの温度補償部1806、振動部1802及び振動部1803は、固定部1804と固定部1805を介在して一体形成されている。固定部1804はボックス層1807を介在してシリコン基板1801上に固定されている。それに対して固定部1805とシリコン基板1801との間は、ボックス層1807の厚みに相当する空隙1808が存在する。この振動部1802、1803と固定部1804と1805は同一平面に形成され、これらを含めて振動板1818と呼ぶ。
記振動部1802と振動部1803の振動変位は、それぞれ振動変位1809及び振動変位1810である。その振動振幅は互いに等しく、その位相は180°異なっている。このような振動変位を励起させるための励振電極が、図記載の励振電極1811、励振電極1812、励振電極1813及び励振電極1814である。これらの励振電極もボックス層1807を介在してシリコン基板1801と一体形成されている。励振電極1811と励振電極1813は同一極性であり、励振電極1812と励振電極1814は励振電極1811及び励振電極1813に対して反転極性を持っている。
また本図の斜線部は、前記振動部1802と振動部1803を含んだ近傍のみに形成されたシリコン酸化膜1815である。このシリコン酸化膜1813は、熱酸化法によって形成されたシリコン酸化膜である。通常熱酸化法のプロセスにおいては、振動部1802と振動部1803と共に温度補償部1806にもシリコン酸化膜が形成される。しかし、本図記載の静電振動子においては、熱酸化後、イオンミーリング加工等を用いて選択的に温度補償部1806に形成されたシリコン酸化膜は除去されている。
シリコン基板1801に設けられた空隙部1816は、温度補償部1806に形成された酸化膜を除去する際に用いられる空隙である。これは、温度補償部1806の裏面の酸化膜をイオンミーリング加工等によって除去する際に必要な空隙である。熱酸化法においては、本発明に係る振動部、温度補償部以外のシリコン基板1801、励振電極1811、励振電極1812、励振電極1813、励振電極1814の表面にもシリコン酸化膜が形成されるが、本発明が課題とする周波数温度特性の改善に関しては、大きな影響を与えないので、本図の説明に関しては図示する事を省略している。
図19は、本発明に係る図18記載の静電振動子において、熱弾性変形が圧縮応力として振動部に印加される機構を説明するための図である。
本図は、図18記載の本発明に係るシリコン酸化膜1815が形成された振動部1802、振動部1803と、この振動部と固定部1804と固定部 を介在して両振動部の中間位置に形成された温度補償部1806よりなる静電振動子の正面図である。
本図において温度補償部1806には、補償部熱弾性変形応力1901が存在する。また振動部102と振動部103にも、振動部熱弾性応力1902が存在する。なお、本発明に係る静電振動子のシリコン酸化膜熱酸化のプロセスにおいては、振動部1802と振動部1803と共にビーム1806にもシリコン酸化膜が形成される。しかし、熱酸化後、イオンミーリング加工等を用いて選択的に温度補償部1806に形成されたシリコン酸化膜は除去されている。この図19記載の構造においても本発明に係る第一の実施例を説明する図4記載の作用と全く同じ作用がある。これによって、振動部1802、振動部1803の補償部熱弾性変形応力1902は、圧縮応力として作用し、図1記載の実施例と同じ効果を得る事ができる。
図20は、本発明の第三の実施形態による静電振動子の構造を示す斜視図である。
シリコン基板2001には、振動境界条件が両端固定型の二本の同一形状寸法の第一のビームである振動部よりなる長さLの振動子が形成されている。この前記二本の振動部がそれぞれ。振動部2002と振動部2003である。前記振動子は固定部2004と固定部2005と一体形成されている。固定部2004と固定部2005はボックス層2006を介在してシリコン基板2001上に固定されている。記振動部2002と振動部2003の振動変位はそれぞれ、振動変位2007及び振動変位2008である。その振動振幅は互いに等しく、その位相は180°異なっている。この振動部2002、2003と固定部2004と2005は同一平面に形成され、これらを含めて振動板2018と呼ぶ。
このような振動変位を励起させるための励振電極が、図記載の励振電極2009と励振電極2010である。この両励振電極もボックス層2006を介在してシリコン基板2001と一体形成されている。それゆえ、振動部2002と振動部2003は、このボックス層2006の厚みに相当する距離だけシリコン基板2001から浮いた状態となる。
振動部2002と振動部2003の外側にある一対の励振電極2009と前記両振動部の内側にある励振電極2010とは、互いに極性が異なるように電気的に接続されている。また本図の斜線部は、前記振動部2002と振動部2003を含んだ近傍のみに形成されたシリコン酸化膜2011である。このシリコン酸化膜2011は、熱酸化法によって形成されたシリコン酸化膜である。さらに、シリコン基板2001の裏面には突起部2012が形成されている。この突起部2012が収容器に対する実装部となる。
図21は、図20記載の第三の実施形態による静電振動子の断面構造を示す図であって、図20記載の振動部2002の部分の横断面図である。
図21においてシリコン基板2001には、熱弾性変形応力2101が存在する。振動部2002の両端がシリコン基板2001とボックス層2006を介在して一体形成されているので、このシリコン基板2001に存在する熱弾性変形応力2101は、また振動部2002にも、振動部熱弾性応力2102として印加されている。
このとき、振動部2002にはシリコン酸化膜2011が形成されており、その影響で振動部2002の線膨張率はシリコン基板2001の線膨張率に比較して小さい。それゆえ、振動部2002に印加される振動部熱弾性応力2102は圧縮応力となる。この応力印加機構は、先に説明した図1、図18で説明した応力印加機構と同等の原理である。これは、図1及び図18記載の温度補償部のかわりにシリコン基板に存在する熱弾性応力を利用した応力印加機構である。
図21記載の静電振動子を実際に収容器に実装する場合は、図21記載のシリコン基板2001の突起部2012の底面を実装部2103としている。この理由を以下で述べる。
シリコン基板2001の底面が単純な平面構造の場合は、この底面全体が実装部となり、収容器の熱膨張率の影響によって振動部に印加される圧縮応力が大きく変化する恐れがある。図21記載の如くシリコン基板2001に突起部2012の底面部2103を実装部とすれば、収容器の熱膨張率は振動部に影響を与えないからである。熱酸化法においては、本発明に係る振動部2002、振動部2003、励振電極2009及び励振電極2010の表面にもシリコン酸化膜が形成される。しかし、本発明が課題とする周波数温度特性の改善に関しては、全く影響を与えないので、図21の説明に関しては図示する事を省略している。さらにシリコン基板2001の表面部2103にもシリコン酸化膜が形成される。しかし、その厚みはシリコン基板2001の厚みに比較して十分に小さいので、前記圧縮応力には影響を与えない。それゆえ図21にては図示する事を省略している。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。すなわち、両端固定型の振動境界条件をもったMEMS型静電駆動屈曲振動子の振動部には、シリコン酸化膜が形成されると共に、前記振動部の近傍には少なくとも一個の酸化膜が形成されていない構造体が設けられている。この構造体の両端部と前記振動部の両端部が一体形成される構造を採用する事によって、前記振動部には圧縮応力が印加され、その結果、周波数温度特性が改善できる。
また、本発明による静電振動子は、周波数一次温度係数α及び周波数二次温度係数ともにほぼ0であり、これを用いて小型で高性能の電子機器を作成することができる。
本発明の効果を説明する図11〜図16及び(数2)〜(数9)は、図2、図3に示す
如く振動部の周囲全面にシリコン酸化膜を形成されて形状を基にして説明した図と数式である。シリコン酸化膜の形成部分は、振動部の長手方向、短手方向のいずれにも対称な配置、すなわち振動部の中心点に対称な配置であっても良い。この場合でも振動部の断面二次モーメントとその温度特性が変化する。このため、一部数式、及び効果を説明する図に若干の変更があるものの、本質的には同じ結果得られる。すなわち、本発明の特徴は、振動部にシリコンのヤング率の温度係数と異符号の温度係数をもつ酸化シリコン膜を形成する事で、振動部の断面二次モーメントを変化させる。またこれと共に、振動部の軸方向に圧縮応力を印加させる構造を採用する事で、振動部の周波数温度特性を改善できるという大きな特徴を持っている。ここで、シリコン酸化膜が振動部の中心点に対して対称配置となっていない場合は、断面二次モーメントの変化は生じるが、そのシリコン酸化膜の非対称性によって、振動部に曲げ応力が作用してしまい周波数温度特性の改善は不可能である。さらにシリコン酸化膜の形成においても、熱酸化法による形成に限られたものではなく、CVD法にて形成する方式を採用しても、まったく同一の効果が得られる。
101 シリコン基板
102 振動部
103 振動部
104 固定部
105 固定部
106 温度補償部
107 ボックス層
108 空隙
109 振動変位
110 振動変位
111 励振電極
112 励振電極
113 シリコン酸化膜
114 シリコン部
115 軸線
116 中心点
117 平均断面応力
118 振動板

Claims (10)

  1. シリコン酸化膜で覆われ両端が固定されたビームであって静電駆動屈曲振動する振動部を有する振動板と、
    前記振動板の一部と接続し、前記振動板を固定するボックス層と、
    前記ボックス層の前記振動板の接続した面と向かい合う面に前記振動板と平行に接続された基板と、
    前記基板上に形成され、前記振動部の両側に空隙を隔てて平行に配置された電極と、
    から構成され、
    前記振動部のシリコン酸化膜は、前記振動部の長手方向及び短手方向のいずれに対しても線対称に形成され
    前記振動板は、シリコン酸化膜で覆われていない温度補償部と前記振動部とから形成されることを特徴とする静電振動子。
  2. 前記振動部のうち前記シリコン酸化膜で覆われた部分は、ヤング率の温度係数が負であることを特徴とする請求項1に記載の静電振動子。
  3. 前記振動部は前記振動板に少なくとも2本形成され、全ての振動部が平行に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電振動子。
  4. 前記温度補償部は前記振動板に少なくとも2本形成され、前記基板の中心線に対して線対称に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の静電振動子。
  5. 前記温度補償部の両側に固定部を介して前記振動部が形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の静電振動子。
  6. 前記基板は、前記温度補償部に対する位置に空隙を有することを特徴とする請求項に記載の静電振動子。
  7. シリコン酸化膜で覆われ両端が固定されたビームであって静電駆動屈曲振動する振動部を有する振動板と、
    前記振動板の一部と接続し、前記振動板を固定するボックス層と、
    前記ボックス層の前記振動板の接続した面と向かい合う面に前記振動板と平行に接続された基板と、
    前記基板上に形成され、前記振動部の両側に空隙を隔てて平行に配置された電極と、
    から構成され、
    前記振動部のシリコン酸化膜は、前記振動部の長手方向及び短手方向のいずれに対しても線対称に形成され、
    記ボックス層は、前記基板の互いに向かい合う辺に沿って組となって配置され、前記振動部の固定された箇所が前記それぞれのボックス層に接続され、前記基板の前記振動板と反対の面の一部に片端固定による実装が可能な突起部が形成されたことを特徴とする静電振動子。
  8. 前記シリコン酸化膜は、熱酸化法にて形成された膜である事を特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の静電振動子。
  9. 前記シリコン酸化膜は、CVD法にて形成された膜である事を特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の静電振動子。
  10. 請求項1から請求項のいずれか1項に記載の静電振動子を備えた電子機器。
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