JP2013072147A - 壁装用化粧シート及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】通気性を向上しつつ、意匠性が低下するのを防止することが可能な壁装用化粧シート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】凹部12及び凸部11を有するエンボスが形成された表面層1を備え、凹部12に、少なくとも表面層1を貫通する複数の貫通孔3が形成されている壁装用化粧シートであり、化粧シート基材に形成すべきエンボスの凸部11が表されたエンボス画像を準備するステップと、化粧シート基材に形成すべき貫通孔3が表された穿孔画像を準備するステップと、エンボス画像と、穿孔画像とを重ね合わせ、エンボスの凸部11と重なる位置以外の位置に配置される貫通孔3の位置を特定するステップとをさらに備え、化粧シート基材に貫通孔3を形成するステップでは、特定された貫通孔3の位置に基づいて、貫通孔3を形成する壁装用化粧シートの製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、壁装用化粧シート及びその製造方法に関する。
従来より、凹凸を有するエンボスを表面層に形成し、意匠性を向上した化粧シートが多く提案されている。例えば、特許文献1に記載の化粧シートでは、発泡剤を混入した化粧シートの表面をエンボス版で押圧することで、表面層にエンボスを形成している。
特開平9−24567号公報
ところで、上記のような化粧シートは、樹脂などの通気性が殆どない材料で形成されているため、壁面に貼り付けると、化粧シートと壁面との間に結露が生じることがある。これを防止するため、例えば、化粧シートに貫通孔を形成し、通気性を向上するという方法が考えられる。しかしながら、エンボスが形成された化粧シートに貫通孔を形成する場合、例えば、エンボスの凸部に貫通孔を形成すると、貫通孔が目立ち意匠性が低下するおそれがある。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、通気性を向上しつつ、意匠性が低下するのを防止することが可能な壁装用化粧シート及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る化粧シートは、凹部及び凸部を有するエンボスが形成された表面層を備え、前記凹部に、少なくとも前記表面層を貫通する複数の貫通孔が形成されている。
本発明に係る壁装用化粧シートには、少なくとも前記表面層に貫通孔が形成されているため、通気性を向上することができる。また、貫通孔はエンボスの凹部に形成されているため、貫通孔の存在を目立たなくすることができる。例えば、この化粧シートに、照明器具などからの光が照射されたとき、エンボスの凹部には、凸部による影が生じるため、相対的に凹部は暗く見える。本発明に係る化粧シートでは、暗く見える凹部に貫通孔が形成されているため、貫通孔が視認し難くなり、意匠性が低下するのを防止することができる。特に、壁装用の化粧シートには照明等による光が照射することが多いため、凹部に貫通孔を形成することによる効果が優れている。したがって、上記構成により、通気性を向上しつつ、意匠性も維持することができる。
通気性を維持するためには、例えば、上記貫通孔の平面視の総面積が、100mm当たり、0.05〜1.3mmであることが好ましい。
本発明に係る化粧シートの製造方法は、表面層を有する化粧シート基材を準備するステップと、前記化粧シート基材の表面層に、凹部及び凸部を有するエンボスを形成するステップと、前記凹部に、前記化粧シート基材の少なくとも前記表面層を貫通する貫通する複数の貫通孔を形成するステップと、を備えている。
上記貫通孔は、種々の方法で形成できるが、例えば、レーザービームを化粧シート基材に照射することにより形成することができる。その他、切削加工、打ち抜き、あるいは高圧の水を供給することで貫通孔を形成することもできる。
上記のような貫通孔を形成する方法としては、例えば、以下の方法を挙げることができる。すなわち、化粧シート基材に形成すべきエンボスの凸部が表されたエンボス画像を準備するステップと、化粧シート基材に形成すべき貫通孔が表された穿孔画像を準備するステップと、エンボス画像と、穿孔画像とを重ね合わせ、前記エンボスの凸部と重なる位置以外に位置する前記貫通孔の位置を特定するステップと、をさらに設け、化粧シート基材に貫通孔を形成するステップにおいて、前記特定された貫通孔の位置に基づいて、貫通孔を形成する。
この構成によれば、貫通孔を形成する位置を正確に特定することができる。例えば、貫通孔の位置を特定したデータを、貫通孔を形成する装置に入力すれば、貫通孔を正確に形成することができる。
本発明に係る化粧シートは、凹部及び凸部を有するエンボスが形成された表面層と、通気性を有する少なくとも一層の支持層とを備え、前記凹部に、少なくとも前記表面層を貫通する複数の貫通孔が形成されている。
本発明に係る化粧シートの製造方法は、表面層、及び通気性を有する少なくとも一層の支持層を備えた化粧シート基材を準備するステップと、前記化粧シート基材の表面層に、凹部及び凸部を有するエンボスを形成するステップと、前記凹部に、前記化粧シート基材の少なくとも前記表面層を貫通する複数の貫通孔を形成するステップと、を備えている。
本発明に係る化粧シートの製造方法は、表面層からなる化粧シート基材を準備するステップと、前記化粧シート基材の表面層に、凹部及び凸部を有するエンボスを形成するステップと、前記凹部に、前記化粧シート基材を貫通する複数の貫通孔を形成するステップと、前記化粧シート基材と通気性を有する少なくとも一層の支持層を積層するステップと、を備えている。
本発明によれば、通気性を向上しつつ、意匠性を維持することができる。
本発明に係る壁装用化粧シートの一実施形態の断面図である。 図1の他の断面図である。 貫通孔の形成位置を説明する図である。 貫通孔の形成位置を説明する図である。 実施例及び比較例で用いたエンボス画像である。
以下、本発明に係る壁装用化粧シートの一実施形態について図面を参照しつつ説明する。ここでは、発泡樹脂材料を有する壁装用化粧シートに本発明を適用した場合について説明する。図1はこの化粧シートの断面図である。
図1に示すように、この化粧シートは、表面にエンボスが形成されたシート状の表面層1と、この表面層1を支持する支持層2とを備えている。表面層1は、発泡樹脂材料で形成されており、例えば、以下のような発泡剤を含有する発泡樹脂組成物を押出し製膜し、その後発泡剤を発泡させることで形成することができる。具体的には、樹脂成分として(1)ポリエチレン及び(2)エチレンとエチレン以外の成分とをモノマーとするエチレン共重合体(以下、「エチレン共重合体」と略記する)の少なくとも1種を含有することが好ましい。ポリエチレンは、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等が広く使用できるが、この中でも低密度ポリエチレンが好ましい。
エチレン共重合体は融点及びMFRの観点で押出し製膜に適している。エチレン共重合体としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−αオレフィン共重合体等を挙げることができる。これらのエチレン共重合体は単独又は2種以上を混合して使用できる。これらのエチレン共重合体の中でも特にエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体及びエチレン−メタクリル酸共重合体の少なくとも1種が好ましく、これらと他の樹脂とを併用する場合には、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体及びエチレン−メタクリル酸共重合体の少なくとも1種の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
エチレン共重合体は、エチレン以外のモノマーの含有量としては、5〜25質量%が好ましく、9〜20質量%がより好ましい。このような共重合比率を採用することにより、押出し製膜性がより高まる。具体例としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニルの共重合比率(VA量)としては9〜25質量%が好ましく、9〜20質量%がより好ましい。エチレン−メチルメタクリレート共重合体は、メチルメタクリレートの共重合比率(MMA量)としては5〜25質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましい。また、エチレン−メタクリル酸共重合体は、アクリル酸の共重合比率(MAA量)としては2〜15質量%が好ましく、5〜11質量%がより好ましい。
上記発泡樹脂材料に含まれる樹脂成分は、JIS K 6922に記載の190℃、荷重21.18Nの条件で測定したMFR(メルトフローレート)が10〜100g/10分であることが好ましい。MFRが上記範囲内の場合には、発泡剤含有樹脂層を押出し製膜により形成する際の温度上昇が少なく、非発泡状態で製膜できるため、後に絵柄模様層を形成する場合には、平滑な面に印刷処理をすることができて柄抜け等が少ない。MFRが大きすぎる場合は、樹脂が軟らかすぎることにより、形成される発泡樹脂層の耐傷性が不十分となるおそれがある。
発泡樹脂材料を形成する樹脂組成物としては、例えば、上記樹脂成分のほか、公知の無機充填剤、顔料、熱分解型発泡剤、発泡助剤、架橋助剤等を含む樹脂組成物を好適に使用できる。その他にも、安定剤、滑剤等を添加剤として使用できる。また、発泡樹脂材料に対しては、必要に応じて電子線照射を行うこともできる。例えば、発泡樹脂材料に電子線照射を行った後に、加熱して発泡させることができる。すなわち、樹脂架橋のために電子線照射を行うことができる。
上述した発泡剤を発泡させた後の表面層1の厚さは300〜700μm程度となることが好ましい。なお、発泡前の厚さは、例えば、40〜100μm程度とすることができる。
図1に示すように、上記材料で形成された表面層1の上面には、凸部11及び凹部12を有するエンボスが形成されている。エンボスは、後述するように、凹凸が形成されたエンボス版を表面層1に押圧することで形成する。エンボス模様としては、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。エンボスの深さHは、例えば、100〜600μmとすることができる。エンボスの凸部11は、意匠性を奏するために、例えば、表面層1の表面の50%以上の領域に形成することができる。
支持層2は、いわゆる裏打紙を採用することができ、例えば、壁紙用一般紙(パルプ主体のシートを既知のサイズ剤でサイズ処理したもの);難燃紙(パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤で処理したもの);水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質紙;上質紙;薄用紙;繊維混抄紙(合成繊維をパルプと混抄したもの)などを用いることができる。
また、図1に示すように、本実施形態に係る壁装用化粧シートでは、表面層1のエンボスの凹部12に、複数の貫通孔3が形成されている。貫通孔3は、化粧シートに通気性を持たせるために形成され、この観点から、貫通孔3の平面視の総面積は、100mm当たり、0.05〜1.3mmとすることが好ましい。これは、0.05mmより小さいと通気性が低下し、1.3mmより大きいと、貫通孔3が視認しやすくなり、意匠性が低下するおそれがあることによる。また、貫通孔3の孔径は、例えば、1〜20μmとすることができ、隣接する貫通孔3の間隔Dは、例えば、50〜5000μmとすることができる。貫通孔3は、エンボスの凹部12に形成されるのであるが、図2に示すように、凹部12のうち、凸部11の頂部からの深さSが100μmよりも低い位置に形成されることが好ましい。これは、貫通孔3が凸部11の頂部に近すぎると、視認しやすくなるおそれがあることによる。
上記説明では、表面層1を一層の発泡樹脂材料で形成しているが、その上面及び下面の少なくとも一方の面に、非発泡樹脂材料を積層することで表面層を構成することもできる。例えば、発泡樹脂材料の下面には、支持層2との接着力を向上させるために、接着樹脂層を設けることができる。このような、接着樹脂層の樹脂成分としては、特に限定はないが、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましい。EVAは公知又は市販のものを使用することができる。特に、酢酸ビニル成分(VA成分)が10〜46質量%であるものが好ましく、15〜41質量%であるものがより好ましい。接着樹脂層の厚さは特には限定されないが、例えば、5〜50μm程度とすることができる。
一方、発泡樹脂材料の上面には、耐傷性を向上させたりする目的で、スキン層としての非発泡樹脂層を形成することもできる。このような樹脂層を形成する材料としては、ポリオレフィン系樹脂、メタクリル系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられ、その中でもポリオレフィン系樹脂が好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の樹脂単体、炭素数が4以上のαオレフィンの共重合体(線状低密度ポリエチレン)、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン(メタ)アクリル酸系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、アイオノマー等の少なくとも1種が挙げられる。
スキン層の厚さは、特には限定されないが、例えば、5〜50μm程度とすることができる。
次に、上記のように構成された化粧シートの製造方法について、図3及び図4を参照しつつ説明する。まず、支持層2の上に、印刷、塗布などのコーティング、押し出し製膜によって、発泡樹脂材料からなる表面層1を形成する。この発泡樹脂材料とともに、非発泡樹脂層を形成する場合には、Tダイ押出し機による同時押出し製膜を用いることができる。例えば、両面に非発泡樹脂層を有する場合には、3つの層に対応する溶融樹脂を同時に押出すことにより3層の同時成膜が可能なマルチマニホールドタイプのTダイを用いることができる。
次に、表面層1に含有される発泡剤を発泡させる。発泡時の加熱条件は、熱分解型発泡剤の分解により発泡樹脂層が形成される条件ならば、特には限定されない。加熱温度は210〜240℃程度が好ましく、加熱時間は20〜80秒程度が好ましい。こうして、化粧シート作製用の化粧シート基材が得られる。
続いて、化粧シート基材の表面層1にエンボスを形成する。上述したように、エンボスの形成は、公知の方法で行われ、一般的には、エンボス版によって表面層1を押圧することにより行われる。
これに続いて、形成されたエンボスの凹部12に複数の貫通孔3を形成する。貫通孔3は、表面層1及び支持層2を貫通するものである。貫通孔1の形成方法は、特には限定されないが、例えば、次のような方法を採用することができる。この方法は、コンピュータ上で貫通孔を形成すべき位置を決定し、そのデータを加工装置に入力して貫通孔を形成するものである。まず、図3(a)に示すように、エンボス版に形成されているエンボスの凸部100を表すエンボス画像を準備し、これを画像データ化したエンボス画像データを生成する。この例では、エンボスの凸部と凹部との境界が明確であるが、例えば凸部と凹部との間が傾斜している場合には、境界が明確ではない。その場合には、所定の深さを境界として、それよりも高い領域と低い領域とを画像処理により二値化したエンボス画像データを作成し、貫通孔を形成する穿孔領域を特定することもできる。また、図3(b)に示すように、形成する貫通孔200を表した穿孔画像を準備し、これを画像データ化した穿孔画像データを生成する。ここで一例として挙げている穿孔画像には、所定の孔径及び間隔で配置された格子状の貫通孔200が表されている。次に、図4(a)に示すように、エンボス画像と、穿孔画像とを重ね合わせた合成画像を作成する。この合成画像は、エンボスの凸部100の画像により、貫通孔200の画像を覆っている。続いて、この合成画像から、エンボスの凸部100の画像を削除し、図4(b)に示すような、貫通孔200の画像のみを表示させた入力画像を形成する。このとき、貫通孔200のうち、一部でもエンボスの凸部100に重なっているものは、削除することとする。このとき、エンボスの凸部100と一部だけ重なっている貫通孔200を残すこともでき、いずれの貫通孔200を選択するかは適宜決定できる。こうして、形成すべき貫通孔200を表す入力画像が形成され、これにしたがって、形成すべき貫通孔の位置を特定する。例えば、この入力画像に基づく入力画像データから形成すべき貫通孔の位置を示すデータを作成し、貫通孔の形成装置に入力する。貫通孔の形成は、特には限定されないが、例えば、化粧シート基材にレーザービームを照射することで形成することができる。このとき、レーザービームを照射する装置に、上述した貫通孔の位置のデータを入力すれば、エンボスの凹部12にのみ貫通孔3を形成することができる。その他、貫通孔の形成には、切削加工、打ち抜き、高圧の水による穿孔など種々の方法を適用することができる。こうして、エンボスの凹部12に貫通孔3を形成することで、図1に示すような、化粧シートが得られる。なお、上記説明では、画像データの処理を説明するために、図3及び図4を参照したが、コンピュータ上では、このような画像を作成せず、エンボスの凸部及び貫通孔の位置、形状などのデータに基づいて、形成すべき貫通孔の位置を特定することもできる。
以上のように、本実施形態によれば、化粧シートに貫通孔3が形成されているため、通気性を向上することができる。また、貫通孔3はエンボスの凹部12に形成されているため、貫通孔の存在を目立たなくすることができる。例えば、化粧シートに、照明器具などからの光が照射されたとき、エンボスの凹部12には、凸部11による影が生じるため、相対的に凹部12は暗く見える。このように、本実施形態に係る化粧シートでは、暗く見える凹部12に貫通孔3が形成されているため、貫通孔3が視認しがたくなり、意匠性が低下するのを防止することができる。よって、通気性を向上しつつ、意匠性も維持した化粧シートを提供することができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、発泡樹脂材料で形成された表面層1と支持層2とで化粧シートを形成しているが、化粧シートの構成は特には限定されない。例えば、表面層1のみで化粧シートを構成することもできる。このとき、上記のような発泡樹脂材料で表面層1を形成する以外に、発泡剤を含まない樹脂材料のみで表面層1を形成することもできる。また、表面層1を多数の樹脂材料を積層することで形成することもできるし、複数の支持層2を積層することもできる。要するに、表面層1の表面にエンボスを形成することができ、エンボスの凹部に化粧シートを貫通する貫通孔が形成できるものであれば、材料及び層構成は特には限定されない。また、貫通孔の形成パターンは、上記のような格子状に限定されず、種々の態様が可能である。
また、貫通孔3は、化粧シートが表面層1の1層のみで構成されている場合にはその1層を貫通するように構成される。また、2層以上で構成されている場合には、少なくとも表面層1に貫通孔が形成されていればよい。例えば、2層以上のすべての層を貫通するように構成することができるし、あるいは、表面層1以外の少なくとも一層からなる支持層等に予め通気性能が施されている場合には、表面層1のみに貫通孔3が形成されていればよい。予め通気性能がある場合とは、例えば、支持層が紙などで構成されている場合である。また、製造においては、上記のように、支持層2に表面層1を積層した後に、貫通孔3を形成することもできるが、表面層1を単独で作成し、これに貫通孔3を形成した後、通気性を有する支持層等と貼り合わせて化粧シートを作製することもできる。あるいは、表面層1と通気性のある支持層等を貼り合わせた後、表面層1のみに貫通孔3を形成することもできる。
続いて、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されない。以下では、2種類の実施例と2種類の比較例を作成した。
(実施例1,2)
まず、マルチマニホールドTダイ押出し機を用いて、3層で構成された表面層を押し出し、支持層の上に製膜した。表面層は、支持層側の下から非発泡樹脂層(接着層)/発泡剤含有樹脂層/非発泡樹脂層(スキン層)で形成されており、順に厚みが10μm/70μm/10μmになるように支持層上に製膜した。こうして、化粧シート基材を作成した。なお、押出し条件は、非発泡樹脂層(スキン層)を形成するための樹脂を収容したシリンダー温度は115℃とし、発泡剤含有樹脂層を形成するための樹脂組成物を収容したシリンダー温度は110℃とした。そして、非発泡樹脂層(接着層)を形成するための樹脂を収容したシリンダー温度は100℃とした。また、ダイス温度はいずれも110℃とした。
次に、上記化粧シート基材の表面に、電子線(195KV,3Mrad)を照射して発泡剤含有樹脂層と非発泡樹脂層(スキン層)とを樹脂架橋した。また、非発泡樹脂層A上にコロナ放電処理を行った。続いて、非発泡樹脂層(スキン層)上に水性インキ「ハイドリック」(大日精化工業社製)により抽象絵柄を印刷した。これに続いて、抽象絵柄を印刷した化粧シート基材をギアオーブンで加熱(220℃×35秒)し、発泡剤含有樹脂層を500μmの厚みまで発泡させた。
続いて、凹部と凸部の高さ差が500μmの抽象パターンを有する30cm×30cmサイズのプレス版をエンボス版の代用として準備した。ここでは、実施例1,比較例1,比較例2として、図5(a−1)のようなプレス版を使用し、実施例2として、図5(b−1)のプレス版を使用した。これらの図は、プレス版に形成される抽象パターンのエンボス画像データであり、プレス版の凹凸の深さのグラデーションが色の濃さで表されており、濃い色の部分が深い凹部を表している。図5(a−1)は、リシン吹付け調パターンであり、エンボスの凹凸差は500μmである。一方、図5(b−1)は、織物調パターンであり、エンボスの凹凸差は500μmである。なお、図5には100mmの縮尺を付している。そして、このプレス版を用いて、ウェルダーエンボス機により上記化粧シート基材にエンボスを施した。最後に、この化粧シート基材を30cm×30cmのプレス版サイズにカットして、レーザービーム穿孔加工機に投入した。穿孔加工機では凹凸エンボスプレス版の凹凸差データから、図3及び図4に示した手順で凹部を判別した。このとき、図5(a−1)のパターンにおいて、穿孔すべき凹部を特定するために、画像処理を施し、図5(a−2)に示すように、プレス版の凸部の頂点から300μmより低い領域(頂点から300〜500μmの領域)を黒で表した。同様に、図5(b−1)の画像も図5(b−2)のように画像処理を施した。図5(b−2)は、380μmより低い領域を黒で表した。こうして、黒で表された領域を穿孔領域とし、化粧シート基材の凹部にレーザービームにて穿孔加工(孔径:平均20μm ピッチ:0.5mm)を行った。こうして、実施例1、2に係る化粧シートを得た。
なお、上記化粧シート基材を構成する材料の組成は、以下の通りである。
(1) スキン層
EMAA樹脂(ニュクレルN1560「三井デュポンポリケミカル株式会社製」)100重量部
(2) 発泡層
EVA樹脂(エバフレックスV406「三井デュポンポリケミカル株式会社製」)100重量部
酸化チタン(タイペークCR63「石原産業株式会社製」)30重量部
発泡剤(AZ3050I・「大塚化学株式会社製」)6重量部
キッカー剤(エフコケムZNS−P「株式会社ADEKA製」)4.2重量部
(3) 接着層
EVA樹脂(エバフレックスEV150「三井デュポンポリケミカル株式会社製」)100重量部
(4) 支持層
WK665DO「株式会社興人製」
(比較例1)
比較例1は、実施例1の作製過程で得られた穿孔前の化粧シート基材とした。
(比較例2)
比較例2は、次のように作製した。すなわち、実施例1の作成過程で得られた穿孔前の化粧シート基材の全面に対し、孔径が平均20μm、ピッチが0.5mmの貫通孔を形成し、これを比較例2とした。
次に、上記実施例及び比較例の評価を行った。評価方法は以下の2種類である。
(1) 通気性評価
JIS P 8117:2009 紙及び板紙−透気度及び透気抵抗度試験方法(中間領域)−ガーレー法 6 王研式試験機法 で、以下の式を用いて、ISO透気度 P[μm/(Pa・s)]を測定した。
P=127/tk
k:王研式透気度試験機による透気抵抗度指示値の平均値(s)
そして、ISO透気度が、1以上:◎、1未満〜0.08:○、0.08未満:×とした。
(2) 意匠性評価
実施例及び比較例に係る化粧シートを垂直な壁に貼り付け、1m離れた場所から化粧シート表面を見て、貫通孔が全く見えない場合:◎、貫通孔が目立たない場合:○、貫通孔が目立つ場合:×とする評価を行った。
結果は、以下の通りである。
以上の評価によれば、比較例1は貫通孔が形成されていないため、通気性が悪いことが分かる。また、比較例2は、凸部を含む化粧シートの全面に貫通孔が形成されているため、貫通孔が目立ち、意匠性が損なわれていることが分かる。一方、実施例1,2はともに通気性も高く、また意匠性も損なわれていない。
1 表面層
11 凸部
12 凹部
3 貫通孔

Claims (4)

  1. 凹部及び凸部を有するエンボスが形成された表面層を備え、
    前記凹部に、少なくとも前記表面層を貫通する複数の貫通孔が形成されている、壁装用化粧シート。
  2. 表面層を有する化粧シート基材を準備するステップと、
    前記化粧シート基材の表面層に、凹部及び凸部を有するエンボスを形成するステップと、
    前記凹部に、前記化粧シート基材の少なくとも前記表面層を貫通する複数の貫通孔を形成するステップと、
    を備えている、壁装用化粧シートの製造方法。
  3. 前記貫通孔は、レーザービームを化粧シート基材に照射することにより形成される、請求項2に記載の壁装用化粧シートの製造方法。
  4. 前記化粧シート基材に形成すべき前記エンボスの凸部が表されたエンボス画像を準備するステップと、
    前記化粧シート基材に形成すべき前記貫通孔が表された穿孔画像を準備するステップと、
    前記エンボス画像と、穿孔画像とを重ね合わせ、前記エンボスの凸部と重なる位置以外の位置に配置される前記貫通孔の位置を特定するステップと、
    をさらに備え、
    前記化粧シート基材に貫通孔を形成するステップでは、前記特定された貫通孔の位置に基づいて、前記貫通孔を形成する、請求項2または3に記載の壁装用化粧シートの製造方法。
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