JP2013068112A - 密閉形圧縮機およびこれを用いた冷蔵庫 - Google Patents
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Abstract
【課題】
密閉形圧縮機および密閉形圧縮機を備えた冷蔵庫において、ピストンを軽量化して電動機の負荷を低減するとともに、ピストン内部の潤滑および冷却の双方を改善して、密閉形圧縮機の効率と信頼性を向上させる。
【解決手段】
密閉形圧縮機50は、下部に電動要素7を上部に圧縮要素6を収容する密閉容器1の底部に貯留する潤滑油14で各部を潤滑する。圧縮要素はシャフト10とこのシャフトに連結されたコンロッド12とを有し、コンロッドはシャフトとの連結端と反対端に球状の球体部12aを有する。球体部は、密閉容器に固定されたシリンダ4内を往復動可能に移動するピストン5の内部にボールジョイント機構で保持されており、ピストンの内周面にこのピストンの軸方向に延びる複数の凹凸溝5gが形成されている。
【選択図】 図2
密閉形圧縮機および密閉形圧縮機を備えた冷蔵庫において、ピストンを軽量化して電動機の負荷を低減するとともに、ピストン内部の潤滑および冷却の双方を改善して、密閉形圧縮機の効率と信頼性を向上させる。
【解決手段】
密閉形圧縮機50は、下部に電動要素7を上部に圧縮要素6を収容する密閉容器1の底部に貯留する潤滑油14で各部を潤滑する。圧縮要素はシャフト10とこのシャフトに連結されたコンロッド12とを有し、コンロッドはシャフトとの連結端と反対端に球状の球体部12aを有する。球体部は、密閉容器に固定されたシリンダ4内を往復動可能に移動するピストン5の内部にボールジョイント機構で保持されており、ピストンの内周面にこのピストンの軸方向に延びる複数の凹凸溝5gが形成されている。
【選択図】 図2
Description
本発明は、往復動式の圧縮機を有する密閉形圧縮機およびこれを用いた冷蔵庫に関する。
地球温暖化を防止するために、冷凍冷蔵庫等の冷凍装置では、従来のフロン系冷媒に代わり脱フロン系冷媒が使用されている。そして、脱フロン系冷媒を用いた場合であっても高効率化や低騒音化並びに高信頼化を達成できるよう、例えば特許文献1では、レシプロ式密閉形電動圧縮機を用いている。この圧縮機では、回転軸の一体クランクピン部からコンロッドを延在させ、コンロッドとシリンダ室に収容されるピストンとをボールジョイント機構で連結している。ボールジョイント機構部では、受け側をなすボール受け座がカシメ(塑性変形)加工によりボールを受けており、カシメ部分に緩衝材としてPTFE,PFAなどの熱可塑性樹脂からなるリング状のバッファリングを介設させ、摺動動作を円滑化している。
ボールジョイント機構を有する密閉形圧縮機の他の例が、特許文献2に記載されている。この公報に記載の圧縮機では、ボールと受け座との摺動を円滑にするために、ボールの外径部分にリングの端面に平行な平面カット部を、ピストンの開放端側であるクランク軸側から受け座方向にボールを挿入する溝をそれぞれ設け、この溝の幅をボールの平行面間の長さにしている。
同様に特許文献3に記載の密閉形圧縮機でも、ピストンの内球面の一部と、コンロッドの外球面の一部が削除されて平行平面を有する形状に形成し、この平行平面部を利用して、コンロッドの外球部分をピストンの内球部に挿入し、その後ピストンを軸回りにほぼ90度回転させてコンロッドとピストンとの離脱を防止している。これらの方法により、ボールジョイントの摺動面への潤滑油の供給が潤沢になっている。
上記従来の密閉形圧縮機では、ピストン内部のボールジョイント機構部に種々の工夫を施して、ボールジョイント機構部の潤滑性能の改善を試みている。ところで、電動機の回転に伴いピストンはこの電動機の回転軸と直角方向に往復運動をするので、ピストンの回転軸に対する半径方向位置が変化する。このピストンの半径位置の変化は、電動機の回転軸を中心にした回転系ではアンバランス質量として作用する。アンバランス質量を軽減すれば、省電力化や低騒音化に結びつけることが可能となるが、上記いずれの特許文献においてもこのアンバランス質量については十分には考慮されていない。
一方、シリンダ内周部を往復動するピストンは、シリンダと僅かな隙間を持って往復動し、その隙間に潤滑油膜が形成されることで、ピストンおよびシリンダの摩耗を防止している。この潤滑油膜は温度に依存し、潤滑油温度が上昇すると粘性の低下により油膜切れを引き起こすおそれが生じる。そこでピストンを効果的に冷却して、摺動部の温度上昇を抑制することが望まれている。この摺動クリアランスの潤滑油の油膜切れによる摩耗を防止するためには温度上昇を抑制することが好ましい。上記各特許文献ではシリンダ内部のボールジョイント機構部の潤滑については考慮されているものの、シリンダを潤滑油で冷却することまでは考慮されていない。
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、ピストンを軽量化して電動機の負荷を低減するとともに、ピストン内部の潤滑および冷却の双方を改善して、冷蔵庫に用いる密閉形圧縮機の効率と信頼性を向上させることにある。
上記目的を達成するための本発明の特徴は、下部に電動要素を上部に圧縮要素を収容する密閉容器の底部に貯留する潤滑油で各部を潤滑する密閉形圧縮機において、前記圧縮要素はシャフトとこのシャフトに連結されたコンロッドとを有し、前記コンロッドは前記シャフトとの連結端と反対端に球状の球体部を有し、この球体部は、前記密閉容器に収容されたシリンダ内を往復動可能に移動するピストンの内部にボールジョイント機構で保持されており、前記ピストンの内周面にこのピストンの軸方向に延びる複数の凹凸溝を形成したことにある。
そしてこの特徴において、凹凸溝は前記ピストンと一体に粉末冶金の工法で形成するのがよく、ボールジョイント機構を構成する前記コンロッドの前記球体部は互いに平行な平面切り欠き形状を有し、前記ピストンの内部にこの切り欠き形状に対応した切り欠き形状を有する球体保持部を設け、前記ピストンは、前記球体保持部の切り欠き形状部が上下に位置するように配置されており、前記球体部の切り欠き形状の平面がほぼ水平面になるよう前記コンロッドを配置するのがよい。もしくは、前記ピストンの内周面に形成され前記ピストンの軸方向に延びる複数の凹凸溝を、前記ピストンの上半部分にだけ設けるか、前記ピストンの内周面に形成され前記ピストンの軸方向に延びる複数の凹凸溝の溝深さまたは凸部の高さを前記ピストンの前記コンロッドとの接続側に行くにつれ浅くするか低くしてもよい。
上記目的を達成する本発明の他の特徴は、下部に電動要素を上部に圧縮要素を収容する密閉容器の底部に貯留する潤滑油で各部を潤滑する密閉型圧縮機と、凝縮器と、減圧機構と、蒸発器とが冷媒配管で接続されて冷凍サイクルを構成する冷蔵庫において、前記密閉型圧縮機の前記圧縮要素はシャフトとこのシャフトに連結されたコンロッドとを有し、前記コンロッドは前記シャフトとの連結端と反対端に球状の球体部を有し、この球体部は、前記密閉容器に固定されたシリンダ内を往復動可能に移動するピストンの内部にボールジョイント機構で保持されており、前記ピストンの内周面にこのピストンの軸方向に延びる複数の凹凸溝が形成されていることにある。
本発明によれば、密閉形圧縮機および密閉形圧縮機を備えた冷蔵庫において、ピストンの内周壁面にピストンの往復動方向に延びる凹凸溝を形成したので、ピストンが軽量化され電動機の負荷が低減される。それとともに、ピストン内部の潤滑および冷却の双方が改善され、冷蔵庫に用いる密閉形圧縮機の効率と信頼性が向上する。
以下、本発明に係る冷蔵庫およびそれに用いる密閉形圧縮機の一実施例を、図面を参照しながら説明する。図1に、密閉形圧縮機50の一実施例を縦断面図で示す。密閉形圧縮機50では、密閉容器1内に各部材を収容している。中心部に縦軸にシャフト10が配置されており、上部に配置した圧縮要素6を下部に配置した電動要素7が回転駆動する構成になっている。
圧縮要素6は、密閉容器1内に配置したフレーム3と一体に成形されたシリンダ4内を、ピストン5が往復動するレシプロ式の圧縮機である。シャフト10の回転中心から偏心した位置には、クランクピン11が設けられており、ピストン5を往復動させる。圧縮要素6の下部に配置される電動要素7は、固定子8及び回転子9を有している。
ここで、シャフト10はフレーム3の中間部に保持された軸受部2を貫通してフレーム3の下方及び上方へ延在しており、フレーム3の上方側にクランクピン11が位置している。シャフト10の下部には回転子9が固定して取り付けられている。電動要素7の固定子8と回転子9間で発生する動力により、シャフト10は回転する。クランクピン11とピストン5間はコンロッド12で連結されており、クランクピン11の回転運動が、コンロッド12を介してピストン5の往復動に変換される。コンロッド12とピストン5の連結構造については詳細を後述する。
密閉容器1の底部には、潤滑油14が貯留されている。密閉容器1内に貯留されている潤滑油14は、シャフト10が回転すると、シャフト10の下端部に取り付けられた給油ピース20のポンプ作用により、給油ピース20の上端部からシャフト10内に形成された潤滑油路(通路)22を通ってシャフト10外周部に導かれる。その後、シャフト10の外周部に形成された外周螺旋溝21から再びシャフト内10に入り、シャフト10の上端部から矢印23で示したような潤滑油の流れとして噴出する。この流れ23の一部がシリンダ4の内部に流入する。
次に、ピストン5の一実施例について、図2〜図4を用いて説明する。図2(a)はピストン5の右側面図であり、シャフト10側から見た図である。図2(b)は、開口部側から見た斜視図である。また、図2(c)は、図2(a)におけるB−B矢視断面図を斜視図で示した図である。図3(a)は、図2(a)のA−A断面図であり、図3(b)は図2(a)のB−B断面図である。
本実施例に示したピストン5は有底円筒形状をしており、密閉容器1に収容された状態では、円筒軸がほぼ水平方向になるように配置される。そして、円筒の底部が密閉容器1の外周側に位置し、円筒の開口部がシャフト10側に位置している。開口内部の奥側には、底部から所定高さであって周方向に角度θcだけ、円筒軸の軸対称に球体保持部5dが形成されている。したがって、球体保持部5dは、円筒の周方向の2箇所を軸対称に切り欠いた形状に形成されている。球体保持部5dの内側は、球面に形成された内球面5aとなっている。開放端部を含む円筒部5hの内周面には、周方向にほぼ等間隔に、軸方向に延びる複数の凹凸溝5gが形成されている。なお、内球面5aの底部には所定半径で所定深さの円筒形の凹部5bが形成されている。
ピストン5の内球面5aは、後述するように、コンロッド12の先端部に設けられる球体部12aの外球面12hを支承する軸受となっている。図3(a)に示すように、ピストン5の垂直断面であるA−A断面では、球体保持部5dの内面側に形成される内球面5aの形状は、横方向の角度θaが、θa>90°であり、コンロッド12の球体部12aの外球面を可能な限り広い面積で包む形状としている。これにより、コンロッド12の球体部12aの外球面12hがピストン5の内球面5aに包持され、コンロッド12とピストン5が連結される。
一方、図3(b)に示すように、ピストン5の垂直断面であるA−A断面から、周方向に90度位相の異なるピストン5の水平断面であるB−B断面では、コンロッド12の外球面12hと油膜を介して接触する内球面5aの上下方向角度θbは、θb≪90°となっている。したがって、B−B断面ではA−A断面よりも球体部12aを支承する内球面5aの軸受面積が減少している。
このように、内球面5aの水平方向(A−A断面)における円弧の中心角θaを、鉛直方向(B−B断面)における円弧の中心角θbより大きく形成したので、ピストン5の球体部12a自身は球面で等方的であるにもかかわらず、水平方向の軸受面積に比して上下方向の軸受面積が少ないボールジョイント構造となっている。これは、ピストン5にコンロッド12を組み立てるために、球体保持部5dを切り欠いたためである。
したがって、潤滑油の軸受部での滞留時間が上下方向では短く、潤滑油の経路自体も上下方向で短くなり、このボールジョイント構造部に潤滑油が流入しやすくまたは流出しやすい。潤滑油の流動が激しくなるので、摺動による摩耗等を低減することができる。また、内球面5aの奥側に凹部5bを形成しているので、摺動面積をより低減できる。
ところで、実運転時のボールジョイント軸受部では、荷重はピストン5の内球面5aに均一には負荷されず、ピストン5方向(圧縮方向)の内球面5aの下部に大半の圧縮荷重が加わり、内球面5aの他の部分、例えば側部5dに加わる軸受荷重は小さいので比較的強度を必要としない。したがって、側部5dは所定の肉厚が確保されればよく、ピストン5の本体内壁5eとの間に溝5fを形成することが可能である。溝5fを形成したので、ピストン5自体の質量が小さくなる。それだけではなく、ボールジョイント構造部の放熱面積が増し、ボールジョイント構造部の温度上昇を抑制できる。
上述したように、ピストン5の内壁面5eには内周全体に亘って均等間隔で奥側に延びる凹凸溝5gを形成している。この凹凸溝5gは、図2(a)に示したように周方向に所定間隔だけ隔てた溝でもよく、図示していないが周方向にほぼ連続した溝でもよい。凹凸溝5gを形成したので、強度の低下が懸念されるが、ボールジョイント構造部を有するピストン方式の圧縮機においては、ピストン5の側面に加わる圧力(側圧)は小さいので、凹凸溝5gの形成による強度低下の心配はない。むしろ、ピストン5の加工時のチャッキングによる変形等を考慮して凹凸溝5gを設けている。
図4に、ピストン5にコンロッド12を保持した状態を、図2(a)のA−A断面およびB−B断面に対応した断面で示す。また、図5に、ピストン5に連結されるコンロッド12を斜視図で示す。コンロッド12は、一端側に、ピストン5の内球面5aに包持される球体部12aを有し、他端側にシャフト10に接続される円筒形の軸受部12bを有する。これら両端側は、ロッド部12cで繋がれている。
球体部12aは、球面を2つの平行な平板で切り落とした形状であり、切り落とされた形状部分が切り落とし面(平面)12fを形成し、ロッド部12cへの接続部分を除くその他の部分が球面(摺動面)12hを形成している。ロッド部12への接続部にはくびれ部12c(図4(b)参照)が形成されている。
球体部12aの2つの平行平面12fが形成された部分の幅方向寸法L’(図4(b)参照)は、球体部12aの外径寸法(2r)よりも小さい。そこで、この平行平面間部を利用して、コンロッド12とピストン5を連結する。連結の詳細については後述する。このように、球体部12aの外球面12hに平面12fを形成したので、ピストン5とコンロッド12を連結しても、潤滑油の通る経路を表すθcの角度が小さく、潤滑油が流れやすい。このため、摺動面12hに潤滑油を確実に供給できる。
コンロッド12とピストン5を、以下のようにして連結する。すなわち、コンロッド12の球体部12aに設けられた平面部12fを利用する。上述したように、ピストン5の内球面5aは、コンロッド12の球体部12aの外球面を90°以上の角度で包んでおり、またピストン5の内球面5aの開口寸法Lは球体部12aの外球面の外径2rよりも小さい。一方、球体部12aの外球面の2つの平面12f間の寸法L’は、内球面5aの開口寸法Lよりも小さい。
そこで、球体部12aの2つの切り落とし面12f間の部分(幅L’の部分)を内球面5aの開口(幅L)内へ挿入する。コンロッド12の球体部12aがピストン5の内球面5aに包持された状態になったら、コンロッド12の球体部12aをピストン5の軸回りに90°回転させて、両者を連結する。
連結後のコンロッド12とピストン5は、両者の相対的な回転がなければ、内球面5aの開口寸法Lが球体部12aの外径2rよりも小さいので、コンロッド12がピストン5から抜け出すおそれは無い。また、球体部12aおよび球体保持部5dがそれぞれ切り欠き部を有し、ピストン5の底部に凹部を有するので、摺動面積を低減できる。
このように構成した本実施例に記載の密閉形圧縮機50の動作および作用について、以下に説明する。密閉形圧縮機50では、密閉容器1内に保持された電動要素7に通電すると回転子8が駆動され、回転子8に直結したシャフト10が回転する。シャフト10に形成したクランクピン11に嵌合するコンロッド12に、ボールジョイント機構でピストン5が連結されているので、ピストン5はシャフト10の回転により往復動する。ピストン5は、密閉容器1に固定されたシリンダ4内に往復動可能に保持されているから、シリンダ4に導かれた図示しない冷媒ガスは、ピストン5の往復動により圧縮される。
シャフト10が回転するとピストン5が冷媒ガスを圧縮するだけでなく、密閉容器1の下部に貯留した潤滑油14が、シャフト10の下部に設置された給油ポンプ(給油ピース)20により汲み上げられる。その際、汲み上げられた潤滑油14の一部は、シャフト10の上下方向中間部に設けた軸受に給油する。潤滑油14の残りは、シャフト10の上端部まで汲み上げられ、遠心力を付勢されて、クランクピン11の上端から図1の矢印23で示したような流れを形成する。流れ出た潤滑油14の一部は、ピストン5方向にも飛散する。この飛散した潤滑油14はピストン5の内周側に形成した溝部5fや凹凸溝5gの表面に降りかかる。
ピストン5はシリンダ4との間で油膜を介しながら往復動するので、摩擦熱および冷媒の圧縮熱がピストン5に伝熱される。そこで、クランクピン11の上端から飛散し、ピストン5の内周側に導かれた潤滑油とピストン5に伝熱された摩擦熱および圧縮熱を熱交換させる。この熱交換を促進させるために、シリンダ4の内周面側に溝部5fや凹凸溝5gを形成し、この溝部5fおよび凹凸5gに流下被膜を形成して、ピストン5を冷却する。その結果、ピストン5とシリンダ4の摺動クリアランスにおける潤滑油の油膜切れによる摩耗を抑制し、圧縮機の信頼性を向上できる。
本実施例によれば、ピストン5の内周側に溝部5fや凹凸溝5gを形成したので、ピストン5の質量を軽減できる。ピストン5を軽量化すると、その分電動要素7の駆動負荷が低減し、消費電力を低下させることができる。また、ピストン5の質量を軽減したので、シャフト10の回転アンバランス量が小さくなり、騒音振動特性も向上できる。
本実施例によれば、凹凸溝5gが水平に配置されているので、この凹凸溝5gの凸部に導かれた潤滑油は、凝集して滴を形成すると自重で自由落下するが、その際、ボールジョイント連結機構に落下するので、より給油量が安定する。すなわち、ピストン5の円筒部5hの内周面が滑らかな面であれば、潤滑油が滴下せずに内周に沿って流れ落ちるのに対し、凹凸した面を形成したので、球体の平面カット部に油が滴下しより安定した給油になっている。
本実施例では、ピストン5の素材を鉄系焼結金属としている。そのため、ピストン5の母体並びに形状が複雑な溝部5fや凹凸溝5gも、焼結型で同時に形成できる。したがって、多大な工数を要する機械加工に頼る必要が無い。また、ピストン5の素材の質量が軽くなるので、コスト削減にも寄与する。
本発明に係るピストン5の他の実施例を、図6(a)〜図6(d)に示す。図6(a)および図6(c)は、図2(a)に対応する図であり、図6(b)および図6(d)は図3(b)に対応する図である。図6(a)および図6(b)は、他の実施例の側面図および縦断面図であり、図6(c)および図6(d)はさらに他の実施例の側面図および縦断面図である。
図6(a)および図6(b)の例では、上記実施例と異なり、ピストン5の上半部にのみ凹凸溝5gを形成している。ピストン5とシリンダ4の間の油膜が切れやすいのは、特にピストン5の上部側であるから、上側を重点的に冷却するためのものである。ピストン5の下側は円筒面になっているのでピストン5の上半部に設けた凹凸溝5gから自重で落下した潤滑油を受け止める構造となり、滑らかな円筒面を伝って次第に下部の中央に集められるようになる。その中央に集まる際に、シリンダ5の下半部を冷却可能になっている。
本実施例によれば、特にシリンダ5の上半部の冷却性能が高まり、密閉形圧縮機の信頼性を向上できる。この図6(a)および図6(b)で示した実施例では、凹凸溝5gの凸部がシリンダ5の軸心側を向いているが、凸部が中心側ではなく鉛直方向を向くように凹凸溝5gを構成してもよい。このようにすれば、シリンダ5内周面の凹凸溝5gに形成される潤滑油の凹凸溝5gへの滞留時間が短くなり潤滑油膜の厚さを薄くでき、さらに熱交換効率が向上し、冷却効果が高まる。
図6(c)および図6(d)に示す実施例が、上記各実施例と異なるのは、凹凸溝5kの溝深さまたは凸部高さをシリンダ5の軸方向開口端側から奥側に行くにつれて大きくしたことにある。この大きさは、凹凸溝5kの軸方向長さdthに対して、最大Δyである。クランクピン11の上端から噴出しピストン5に導かれる潤滑油の量は、ピストン5の開口端側で多く、奥側で少なくなる。したがって、ピストン5の表面に付着する潤滑油の量も開口端側で多く奥側で少なくなるので、奥側に付着する面積を増大させて、熱交換面積を増大させている。本実施例によれば、上記各実施例に比べ、さらにピストン5の冷却を均一化できる。
このように構成した密閉形圧縮機50を冷蔵庫100に適用した例を、図7に示す。図7は、冷蔵庫100の側面断面図である。冷蔵庫100は、外郭を構成する断熱箱体100aに、上から順に、夫々温度帯の異なる貯蔵室としての冷蔵室103および冷凍室104、野菜室105が区画されて設けられている。冷凍室104の後方には、蒸発器51が収納された蒸発器室51aが設けられている。蒸発器51の上方には、蒸発器51で熱交換した冷気を冷却風通路106を介して各貯蔵室に送風して循環する送風機52が設けられている。
密閉形圧縮機50は、冷蔵温度帯室である野菜室105の後方の機械室102に設置される。なお、密閉形圧縮機50の設置位置は、冷蔵室103の後方でもよい。ただし、密閉形圧縮機50を駆動すると高温となる場合には、比較的高温の貯蔵室の後方に設置するのがよい。蒸発器51は、比較的低温の貯蔵室の後方に設置する。
密閉形圧縮機50および冷蔵庫100の背面側等に配置される図示しない凝縮器や減圧機構および蒸発器51は、冷凍サイクルを形成する。密閉形圧縮機51の吐出管20から吐出された冷媒は、凝縮器、減圧機構、蒸発器51を経て、再び密閉形圧縮機51内へと戻される。この冷凍サイクルを繰り返すことにより、各貯蔵室内の物品を冷凍または冷蔵する。この冷凍サイクルには、プロパン(R290)やイソブタン(R600a)などの炭化水素系の冷媒(HC冷媒)が使用されている。
上記実施例に示した密閉形圧縮機50をこの冷蔵庫100に設置すれば、密閉形圧縮機50が、消費電力の低減、低騒音化、高信頼性及び低コスト化されて、冷蔵庫100の消費電力の低減、低騒音化、高信頼性及び低コスト化が可能になる。つまり、ピストンの内周側に、ピストンの肉厚を部分的に低減するとともに放熱手段となる凹凸溝を形成したので、圧縮機の省電力化および低騒音化、高信頼性化、低コスト化を図ることができる。
1…密閉容器、2…軸受部、3…フレーム、4…シリンダ、5…ピストン、5a…内球面、5b…凹部、5c…内壁、5d…球体保持部、5e…内壁面、5f…溝部、5g…凹凸溝、5h…円筒部、5k…溝、6…圧縮要素、7…電動要素、8…固定子、9…回転子、10…シャフト、11…クランクピン、12…コンロッド、12a…球体部、12b…軸受部、12c…ロッド部、12e…潤滑用孔(貫通孔)、12f…切り落とし面(平面)、12g…くびれ部、12h…球面(摺動面)14…潤滑油、20…給油ピース、21…外周螺旋溝、22…潤滑油路(通路)、23…(潤滑油の)流れ、50…密閉形圧縮機、51…蒸発器、51a…蒸発器室、52…送風機、100…冷蔵庫、100a…断熱箱体、102…機械室、103…冷蔵室、104…冷凍室、105…野菜室、106…冷却風通路。
Claims (6)
- 下部に電動要素を、上部に圧縮要素を収容する密閉容器の底部に貯留する潤滑油で各部を潤滑する密閉形圧縮機において、
前記圧縮要素はシャフトとこのシャフトに連結されたコンロッドとを有し、前記コンロッドは前記シャフトとの連結端と反対端に球状の球体部を有し、この球体部は、前記密閉容器に収容されたシリンダ内を往復動可能に移動するピストンの内部にボールジョイント
機構で保持されており、前記ピストンの内周面にこのピストンの軸方向に延びる複数の凹凸溝を形成したことを特徴とする密閉形圧縮機。 - 前記凹凸溝は前記ピストンと一体に粉末冶金の工法で形成したことを特徴とする請求項1に記載の密閉形圧縮機。
- 前記ボールジョイント機構を構成する前記コンロッドの前記球体部は互いに平行な平面切り欠き形状を有し、前記ピストンの内部にこの切り欠き形状に対応した切り欠き形状を有する球体保持部を設け、前記ピストンは、前記球体保持部の切り欠き形状部が上下に位置するように配置されており、前記球体部の切り欠き形状の平面がほぼ水平面になるよう前記コンロッドを配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の密閉形圧縮機。
- 前記ピストンの内周面に形成され前記ピストンの軸方向に延びる複数の凹凸溝を、前記ピストンの上半部分にだけ設けたことを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の密閉形圧縮機。
- 前記ピストンの内周面に形成され前記ピストンの軸方向に延びる複数の凹凸溝の溝深さまたは凸部の高さを前記ピストンの前記コンロッドとの接続側に行くにつれ浅くするか低くしたことを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の密閉形圧縮機。
- 下部に電動要素を上部に圧縮要素を収容する密閉容器の底部に貯留する潤滑油で各部を潤滑する密閉形圧縮機と、凝縮器と、減圧機構と、蒸発器とが冷媒配管で接続されて冷凍サイクルを構成する冷蔵庫において、
前記密閉形圧縮機の前記圧縮要素はシャフトとこのシャフトに連結されたコンロッドとを有し、前記コンロッドは前記シャフトとの連結端と反対端に球状の球体部を有し、この球体部は、前記密閉容器に固定されたシリンダ内を往復動可能に移動するピストンの内部にボールジョイント機構で保持されており、前記ピストンの内周面にこのピストンの軸方向に延びる複数の凹凸溝が形成されていることを特徴とする冷蔵庫。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2011205782A JP2013068112A (ja) | 2011-09-21 | 2011-09-21 | 密閉形圧縮機およびこれを用いた冷蔵庫 |
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Family Applications (1)
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2011
- 2011-09-21 JP JP2011205782A patent/JP2013068112A/ja not_active Withdrawn
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