JP2013063656A - 低反射透明板及びそれを用いた展示用ケース - Google Patents
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Abstract
【解決手段】展示物が外部から見えるように、透明板11が該展示物12に覆設されてなる展示用ケース21であって、該透明板は、テーパー形状の細孔を有する微細構造が発現するモスアイ効果によって低反射率が実現されている反射低減フィルムが、透明なガラス板又は透明な合成樹脂板の片面又は両面に貼り合わされてなる、視感度補正後の反射率が0.3%以下である低反射透明板であり、かつ該低反射透明板は、430nmから780nmの全ての波長領域で透過率が93%以上であり、ヘイズが2%以下のものであることを特徴とする展示用ケース。
【選択図】図7
Description
ここで「透明板」とは、厚さが実質的に均一であり、展示物を外界から保護するため、又は、展示物が液体中に存在する場合にはその液体が流れ出ないように該展示物に覆設されるものである。表面にモスアイ効果を奏する微細構造が形成されていない(形成される前の)透明板(例えば、後述する反射低減フィルムを貼り付ける前の透明板)の透過率は、展示物が外部から見える程度に大きければ定量的には特に限定はないが、意識して中を暗く見せたり、着色させたりする場合も考慮すると、波長領域430〜780nmで最も透過率の大きい波長での透過率が、10%以上であることが本発明の前記効果を奏し易いために好ましく、30%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
「展示物」は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等の電気的に表示するディスプレイ以外であって、外部から見ることができるものであれば特に限定はないが、例えば、写真、絵画、版画、書画、印刷物、絵葉書、説明書、カレンダー、パンフレット、時計の表示部分等の二次元展示物;立体オブジェ、動植物標本、医学生物学標本、鉱物標本、貴金属、宝石、骨董品、装飾品、人形、書籍、陳列商品、動植物、人等の三次元展示物等が挙げられる。展示物は、金魚、熱帯魚等の魚類、哺乳類、爬虫類、両生類等の水中動物;水草、海藻等の水中植物;医療用、研究用等の生体展示物等の、純水、海水、ホルムアルデヒド水溶液、アルコール水溶液等の液体中に存するものであってもよい。このうち、本発明においては、写真、絵画、版画、書画、印刷物、立体オブジェ、貴金属、宝石等であることが、本発明の効果をより発揮させ易い等の理由から特に好ましい。
本発明において「モスアイ効果」とは、一般に「モスアイ(Moth Eye)構造(蛾の眼構造)」と呼ばれる表面微細構造によって可視領域の波長における反射率が低減される効果をいう。
本発明の低反射透明板は、表面に上記構造を有することにより、光の反射率を低減させたり、光の透過性を向上させたりする。この場合の「光」は、少なくとも可視光領域の波長の光を含む光である。
本発明の低反射透明板は、(1)低反射透明板の前面(外側の面)のみにモスアイ効果を奏する微細構造を有していてもよく、(2)低反射透明板の後面(展示物側の面)のみに該構造を有していてもよく、(3)低反射透明板の前後両面に該構造を有していてよいが、このうち、(3)低反射透明板の前後両面にモスアイ効果を奏する微細構造を有していることが、照明の透明板への映り込みや透明板が反射で白くかすむ現象を防止でき、中にある展示物を見え易くできる点で好ましい。
本発明の低反射透明板は、透明板自体の表面に前記微細構造を形成したものであってもよいが、表面に上記微細構造を形成した反射低減フィルムを、透明なガラス板又は透明な合成樹脂板の片面又は両面に貼り合わせたものであってもよい。透明板自体に前記微細構造を形成するより、別途、反射低減フィルムを作製してそれを透明なガラス板又は透明な合成樹脂板の片面又は両面に貼り合わせる方が、前記微細構造の形成がし易いために好ましい。更には、反射低減フィルムを透明なガラス板又は透明な合成樹脂板の両面に貼り合わせることが、照明の透明板への映り込みや透明板が反射で白くかすむ現象を防止でき、中にある展示物を見え易くできる点で特に好ましい。
モスアイ効果を奏する微細構造の形成方法は特に限定はないが、凹凸が逆になった微細構造を有する型に、熱溶融した熱可塑性樹脂若しくはガラス、硬化前の硬化性樹脂等の「微細構造形成材料」を注ぎ、上記型を転写する形成方法が、好適な微細構造が得られる点で好ましい。微細構造形成材料で透明板を作製(型を転写して透明板自体の表面に直接前記微細構造を形成)してもよいし、微細構造形成材料で反射低減フィルムを作製(型を転写してその表面に前記微細構造を有する反射低減フィルムを作製)し、上記したように、得られた反射低減フィルムを透明なガラス板又は透明な合成樹脂板に貼り合わせてもよい。
(1)アルミニウム材料の表面に、「陽極酸化」と「陽極酸化によって得られた陽極酸化被膜のエッチング」との繰り返しによりテーパー形状の細孔を形成して微細構造を作製する方法
(2)シリコン基板に電子線を照射してパターニングした後、異方性エッチングをして微細構造を作製する方法
(3)表面の平坦な基材上に塗布したフォトレジストに、2本のレーザー光を照射して干渉縞を生じさせて作る干渉露光法
(4)金属製の基材表面を機械的に切削して構造を作製する方法
等が挙げられる。
アルミニウム材料とは、主成分がアルミニウムである材料であればよく、純アルミニウム(1000系)、アルミニウム合金の何れでもよい。アルミニウム材料の種類は特に限定はないが、工業的に圧延されたままのアルミニウム板、押出管、引き抜き管等を用いることが、コスト低減や工程簡略化のために好ましい。
本発明の低反射透明板や本発明における反射低減フィルムは、前記の「型」と「微細構造形成材料」を用いて作製される。「微細構造形成材料」としては、特に制限はなく、「硬化性組成物(物質)」、「熱可塑性組成物(物質)」の何れでも好適に使用し得る。本発明における、低反射透明板や反射低減フィルムは、表面にモスアイ構造という極めて特殊な微細構造を有しているので、かかる微細構造に適した機械的強度を与えるため、また、型となる陽極酸化被膜からの剥離性等の点から「硬化性組成物」を用いることが好ましい。
「反射低減フィルム」を例にとって、以下に特に好ましい製造方法を記載するが、低反射透明板に直接前記微細構造を形成する場合も類似の方法を使用することができる。
本発明の低反射透明板は、図5のように展示物に密着して覆設されていても、図6〜9のように、展示物から離れて覆設されていてもよいが、本発明の低反射透明板は、展示物から離れて覆設されていても、他の反射率を低減させる方式に比較して展示物が見え難くならないので、展示物から離れて覆設される形式の展示用ケースに用いられることが特に好ましい。例えば、アンチグレア方式等の他の方式では、展示物から離れて覆設されると、展示物がボケたり、展示物の輪郭が滲んで見えたりする。
本発明の低反射透明板は、展示物に覆設する展示用ケースに好適に適用できる。本発明は、展示物が外部から見えるように、上記の低反射透明板を該展示物に覆設してなることを特徴とする展示用ケースでもある。ここで、「展示用ケース」とは、展示物を外部から見えるように収納するもの全般をいう。
<型の作製>
アルミニウム材料として、99.85%のアルミニウム圧延板(2mm厚)を片面平面バフ研摩盤(Speedfam社製)により、アルミナ系の研摩材(フジミ研磨材社製)を用いて、10分間研摩して鏡面を得た。研摩面をスクラブ洗浄後、非浸食性の脱脂処理を行った。
<陽極酸化の条件>
使用液:0.05Mシュウ酸
電圧 :80Vの直流電圧
温度 :5℃
時間 :50秒
使用液:2重量%リン酸
温度 :50℃
時間 :5分
下記式(1)で示される化合物(1)11.8重量部、下記化合物(2)23.0重量部、テトラエチレングリコールジアクリレート45.2重量部、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート20.0重量部及び光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン2.0重量部により、光硬化性組成物(a)を得た。
2HEA−−IPDI−−(アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールとの重量平均分子量3500の末端水酸基のポリエステル)−−IPDI−−2HEA
で示される化合物である。ここで、「2HEA」は、2−ヒドロキシエチルアクリレートを示し、「IPDI」は、イソホロンジイソシアネートを示し、「−−」は、イソシアネート基と水酸基の通常の下記の反応による結合を示す。
−NCO + HO− → −NHCOO−
上記型の表面に剥離剤を塗布した後、上記光硬化性組成物(a)を塗布し、更にその上に厚さ80μmのTACフィルムを配置して、ローラーの間を通し光硬化性組成物(a)の膜厚を均一にし、かつ型の表面に光硬化性組成物(a)が十分行き渡るようにした。その後、TACフィルム上からUV光を、1mJ/cm2照射して光硬化性組成物(a)を硬化させた後、型から機械的に引き剥がした。このようにして、表面にモスアイ効果を奏する微細構造を有する反射低減フィルムを作製した。
<5°正反射率の測定>
上記によって作製した反射低減フィルムの裏面(微細構造のない方の面)にクロスニコル配置した偏光板を貼り付け、島津製作所製自記分光光度計UV−3150を使用して、表面の5°正反射率(%)を測定した。その結果を図3に示す。図3から明らかなように、波長380nm〜780nmにおける5°正反射率は、380nm〜780nmの何れの波長でも極めて低いものであった。なお、汎用の無色透明のアクリル板や下記で使用した無色透明のアクリル板の表面の5°正反射率は、380nm〜780nmの何れの波長でも、通常4%以上である。
図3に示された5°正反射スペクトルから、CIE1931に従い、等色関数と標準イルミナントD65を用いて視感度補正した反射率を求めたところ、視感度補正後の反射率は0.09%であった。
また、この反射低減フィルムを、厚さ2mmの無色透明のアクリル板の両面に、それぞれ微細構造のない方の面を貼り付け、低反射透明板を作製した。アクリル板自体、及び、得られた低反射透明板の透過率スペクトル(%)を、島津製作所製自記分光光度計UV−3150を用いて測定した。その結果を図4に示す。
展示物として絵画を用い、該絵画と上記で作製された低反射透明板を密着させる形で(L=0(cm))収納する額を作製した(図5)。絵画を額の正面及び斜め前から観察したところ、透明板が反射することも白くかすむこともなく、照明が反射して映り込むこともなく、内部の絵画をはっきりと見ることができた。
絵画を上記で作製された低反射透明板から離した形で(L=5cm)収納する額を作製した(図6及び図7)。絵画を額の正面及び斜め前から観察したところ、透明板が反射することも白くかすむこともなく、照明が反射して映り込むこともなく、内部の絵画をはっきり見ることができた。
縦50cm、横35cm、深さ10cm(L=7cm)の標本箱の上面に、上記製造方法によって作製された低反射透明板をセットした(図8)。標本を真上及び斜め上から観察したところ、低反射透明板が反射することも白くかすむこともなく、標本を細部まではっきり見ることができた。
ショーウィンドーに、上記によって作製された低反射透明板をセットした。展示物として、説明書を低反射透明板から奥行40cmのところ(L=40cm)にセットした(図9)。説明書を正面及び斜め前から観察したところ、透明板が反射することも白くかすむこともなく、説明書のどの部分をもはっきり読むことができた。
展示物として月の写真を用い、その写真を覆設する厚さ2mmの無色透明のアクリル板のうち、内部の(真ん中の)長方形部分のみについて、両面に上記の反射低減フィルムを貼り付けて低反射透明板を作製した(図10(b))。アクリル板の外周部分には、上記の反射低減フィルムを貼り付けなかった。該写真と低反射透明板の写真側の表面との距離Lは2mmであった。また、どこにも反射低減フィルムを貼り付けていない無色透明のアクリル板でも評価した(図10(a))。
2:型
3:基材
4:ローラー
5:反射低減フィルム
6:硬化装置
7:支持ローラー
11:低反射透明板
12:展示物
13:モスアイ効果を有する表面(前面)
14:モスアイ効果を有する表面(後面)
21:額
22:標本箱
23:ショーウィンドー
L:展示物の少なくともある1点から低反射透明板の表面までの距離
Claims (11)
- 展示物が外部から見えるように、透明板が該展示物に覆設されてなる展示用ケースであって、
該透明板は、平均高さ100nm以上1000nm以下の凸部又は平均深さ100nm以上1000nm以下の凹部を有し、その凸部又は凹部が、少なくともある一の方向に対し平均周期50nm以上400nm以下で存在するテーパー形状の細孔を有する微細構造が発現するモスアイ効果によって低反射率が実現されている反射低減フィルムが、透明なガラス板又は透明な合成樹脂板の片面又は両面に貼り合わされてなる、視感度補正後の反射率が0.3%以下である低反射透明板であり、
かつ、該低反射透明板は、430nmから780nmの全ての波長領域で透過率が93%以上であり、ヘイズが2%以下のものであることを特徴とする展示用ケース。 - 上記反射低減フィルムの微細構造が、該反射低減フィルムが貼り合わされてなる上記低反射透明板のヘイズが小さくなるように以下の陽極酸化に先立ってアルミニウム材料の表面を研摩し、次いで、該アルミニウム材料の表面に、陽極酸化と、該陽極酸化によって得られた陽極酸化被膜のエッチングとを繰り返すことによりテーパー形状の細孔を形成した型に、微細構造形成材料を供給され剥離されることによって得られたものである請求項1に記載の展示用ケース。
- 上記反射低減フィルムが、上記テーパー形状の細孔が形成された型に、上記微細構造形成材料が基材上に均一に塗布されたものを、該微細構造形成材料が塗布された方の面を向けて貼り合わせ、その後、該型から剥離することによって作製されたものである請求項1又は請求項2に記載の展示用ケース。
- 上記基材が、ポリエチレンテレフタレート又はトリアセチルセルロースよりなる請求項3に記載の展示用ケース。
- 上記低反射透明板が、上記反射低減フィルムが透明なガラス板又は透明な合成樹脂板の両面に貼り合わされてなるものである請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の展示用ケース。
- 上記低反射透明板が、上記展示物の少なくともある1点から1cm以上離れた場所に覆設されてなる請求項1ないし請求項5に記載の展示用ケース。
- 上記展示物が、写真、絵画、版画、書画、印刷物、絵葉書、説明書、カレンダー、パンフレット、時計の表示部分、立体オブジェ、動植物標本、医学生物学標本、鉱物標本、貴金属、宝石、骨董品、装飾品、人形、書籍、陳列商品、動植物、人、水中動物、水中植物、及び、医療用若しくは研究用の生体展示物の液体中に存するもの、からなる群より選ばれたものである請求項1ないし請求項6の何れかの請求項に記載の展示用ケース。
- 上記展示用ケースが、額、標本箱、鑑賞物用ケース、商品ケース又はショーウィンドーである請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載の展示用ケース。
- 上記展示用ケースが額である請求項8に記載の展示用ケース。
- 請求項1ないし請求項9の何れかの請求項に記載の展示用ケースに覆設される低反射透明板。
- 請求項1ないし請求項9の何れかの請求項に記載の展示用ケースに覆設される低反射透明板用の反射低減フィルム。
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