以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施例を説明する。
A.装置構成:
A−1.全体構成:
A−2.圧電素子駆動回路の概要:
A−3.デジタル電力増幅器で電力損失が発生するメカニズム:
A−4.デジタル電力増幅器での電力損失を回避するメカニズム:
A−5.圧電素子駆動回路の詳細:
A−6.スイッチ駆動方法:
B.変形例:
B−1.第1変形例:
B−2.第2変形例:
B−3.第3変形例:
B−4.第4変形例:
B−5.第5変形例:
B−6.第6変形例:
A.装置構成 :
A−1.全体構成 :
図1は、本実施例の圧電素子駆動回路200を搭載した液体噴射装置100の構成を示した説明図である。図示されているように液体噴射装置100は、大きく分けると、液体を噴射するための脈動発生部110と、脈動発生部110に向けて液体を供給する液体供給手段120と、脈動発生部110および液体供給手段120の動作を制御する制御部130などから構成されている。液体噴射装置100は、パルス状の液体を脈動発生部110から噴射することによって、生体組織を切除または切開することに使用する手術具(ウォータージェットメス)として機能する。
脈動発生部110は、金属製の第2ケース113に、同じく金属製の第1ケース114を重ねてネジ止めなどによって堅固に結合した構造となっており、第2ケース113の前面には円管形状の液体噴射管112が立設され、液体噴射管112の先端にはノズル111が挿着されている。第2ケース113と第1ケース114との合わせ面には、薄い円板形状の液体室115が形成されており、液体室115は、液体噴射管112を介してノズル111に接続されている。また、第1ケース114の内部には、積層型の圧電素子116が設けられている。脈動発生部110と制御部130とは配線ケーブル150によって接続されており、制御部130内の圧電素子駆動回路200からは、配線ケーブル150を介して駆動信号が圧電素子116に供給される。また、配線ケーブル150はコネクターによって脈動発生部110に取り付けられている。このため、配線ケーブル150は、長さや特性の異なる種々の配線ケーブル150に取り替えることができる。
液体供給手段120は、噴射しようとする液体(水、生理食塩水、薬液など)が貯められた液体容器123から、第1接続チューブ121を介して液体を吸い上げた後、第2接続チューブ122を介して脈動発生部110の液体室115内に供給する。このため、液体室115は液体で満たされた状態となっている。そして、制御部130から駆動信号を圧電素子116に印加すると、圧電素子116が伸張して液体室115が押し縮められ、その結果、液体室115内に充満していた液体が、ノズル111からパルス状に噴射される。圧電素子116の伸張量は、駆動信号として印加される電圧に依存する。また、駆動信号は、制御部130内に搭載された圧電素子駆動回路200によって生成されている。
A−2.圧電素子駆動回路構成の概要 :
図2は、制御部130に搭載された圧電素子駆動回路200の回路構成を示した説明図である。図示されているように圧電素子駆動回路200は、駆動信号の基準となる駆動波形信号(以下、WCOM)を出力する駆動波形信号発生回路210と、駆動波形信号発生回路210から受け取ったWCOMと後述する帰還信号(以下、dCOM)とに基づいて誤差信号(以下、dWCOM)を出力する演算回路220と、演算回路220からのdWCOMをパルス変調して変調信号(以下、MCOM)に変換する変調回路230と、変調回路230からのMCOMをデジタル的に電力増幅して電力増幅変調信号(以下、ACOM)を生成するデジタル電力増幅器240と、デジタル電力増幅器240からACOMを受け取って変調成分を取り除いた後、駆動信号(以下、COM)として脈動発生部110の圧電素子116に供給する平滑フィルター250と、平滑フィルター250から出力されたCOMに対して位相を進ませる補償(位相進み補償)を加えてdCOM(帰還信号)を生成する位相進み補償回路260とを備えている。尚、第1実施例の圧電素子駆動回路200には、COMに対して位相進み補償を加えたdCOMを負帰還させているが、負帰還させない構成とすることも可能である。この場合は、演算回路220や位相進み補償回路260が不要となる。その結果、変調回路230は、dWCOMではなく、WCOMに対してパルス変調を行う。
このうち、駆動波形信号発生回路210は、WCOMのデータを記憶した波形メモリーや、D/A変換器を備えており、波形メモリーから読み出したデータをD/A変換器でアナログ信号に変換することによって、WCOM(駆動波形信号)を生成する。演算回路220では、こうして出力されたWCOMからdCOMを減算した信号を、dWCOM(誤差信号)として出力する。
変調回路230では、dWCOMを一定周期(変調周期)の三角波と比較することによって、パルス波状のMCOM(変調信号)を生成(パルス変調)する。たとえばdWCOMの方が三角波よりも大きい期間では高電圧状態(出力が「H」)となり、dWCOMの方が三角波よりも小さい期間では低電圧状態(出力が「L」)となるようなMCOMが出力される。尚、MCOMが「H」となる時間比率は、「デューティー比(あるいはオンデューティー比)」と呼ばれる。変調回路230によって得られたMCOMは、デジタル電力増幅器240に入力される。詳細な構成については後述するが、デジタル電力増幅器240は、電源と、プッシュ・プル接続された2つのスイッチ素子(MOSFETなど)と、グランドGNDとが、この順序で直列に接続されている。MCOMの出力がONの場合は、電源側のスイッチ素子がONになり、グランドGND側のスイッチ素子がOFFになって、電源の電圧VddがACOMとして出力される。また、MCOMの出力がOFFの場合は、電源側のスイッチ素子がOFFになり、グランドGND側のスイッチ素子がONになってグランドGNDの電圧0がACOMとして出力される。その結果、変調回路230の動作電圧とグランドGNDとの間でパルス波状に変化するMCOMが、電源の電圧VddとグランドGNDの電圧0との間でパルス波状に変化するACOMに電力増幅される。この増幅では、プッシュ・プル接続された2つのスイッチ素子のON/OFFを切り換えているだけなので、アナログ波形を増幅する場合に比べれば、電力損失を抑制することが可能である。尚、本実施例では、1つの電源の高電圧側の電圧をVddとし、低電圧側の電圧をグランドGNDとしたが、発生する電圧の異なる2つの電源を用いて、電圧VddおよびグランドGNDを発生させても良い。すなわち、高い電圧を発生させる方の電源の高電圧側の電圧をVddとし、低い電圧を発生させる方の電源の高電圧側の電圧あるいは低電圧側の電圧をグランドGNDとしてもよい。このように2つの電源を用いれば、圧電素子116に対してマイナスのCOMを印加することができるので、圧電素子116の残留歪みによって圧電素子116の変位量が少なくなってしまう事態を回避することが可能となる。
こうして電力増幅されたACOM(電力増幅変調信号)は、LC回路によって構成される平滑フィルター250を通すことによってCOM(駆動信号)に変換され、圧電素子116に印加される。また、COMは演算回路220に負帰還されるが、平滑フィルター250を通過することによって、COMはWCOMに対して位相が遅れている。そこで、COMを単純に負帰還させるのではなく、コンデンサーと抵抗とによって構成された位相進み補償回路260を通して位相を進ませる補償(位相進み補償)を行い、得られた信号をdCOMとして演算回路220に負帰還させるようになっている。
A−3.デジタル電力増幅器で電力損失が発生するメカニズム :
上述したように、デジタル電力増幅器240は、大きな電力損失を伴うことなく、変調信号(MCOM)を電力増幅してACOMを生成することが可能である。しかし、デジタル電力増幅器240でも、ある条件が成立すると電力増幅時に大きな電力損失が発生することがある。
図3は、デジタル電力増幅器240で電力損失が発生する様子を示した説明図である。図示されるように、たとえば負荷に対して一定電圧を出力する場合には、変調信号のデューティー比が上限付近になると急激に電力損失が増加する。変調信号のデューティー比が下限付近になった場合にも急激に電力損失が増加する。このような現象が生じると、WCOMを変調してMCOMに変換してから増幅している意味が無くなってしまうので対策が必要となる。そのためには、このような現象が生じるメカニズムを明らかにしなければならない。
図4は、デジタル電力増幅器240の内部構成を示した回路図である。図示されるように、デジタル電力増幅器240は、プッシュ・プル接続された2つのスイッチ素子S1,S2を中心として構成されており、一方のスイッチ素子S1には電源Vddが接続され、他方のスイッチ素子S2にはグランドGNDが接続されている。尚、スイッチ素子S1が本発明の「第1のスイッチ素子」に対応し、スイッチ素子S2が本発明の「第2のスイッチ素子」に対応する。
更に、スイッチ素子S1には、グランドGND側から電源Vdd側に向かって電流が流れることを許容する向きの還流ダイオードD1が並列に接続され、スイッチ素子S2にも、グランドGND側から電源Vdd側に向かって電流が流れることを許容する向きの還流ダイオードD2が並列に接続されている。従って、還流ダイオードD1が本発明の「第1のダイオード」に対応し、還流ダイオードD2が本発明の「第2のダイオード」に対応する。また、還流ダイオードD1,D2には、端子間に寄生容量が存在する。図4では、還流ダイオードD1に存在する寄生容量を寄生容量C1と表し、還流ダイオードD2に存在する寄生容量を寄生容量C2と表している。尚、スイッチ素子S1,S2としては、MOSFETやIGBTなどの素子を用いることができる。
ゲートドライバー242は、変調回路230から供給されるMCOMに基づいて、スイッチ素子S1を駆動するための駆動信号Vg1、およびスイッチ素子S2を駆動するための駆動信号Vg2を出力する。そして、高電圧状態(以下では、「H」と表記する)の駆動信号Vg1が出力されるとスイッチ素子S1がON(導通状態)となり、低電圧状態(以下では、「L」と表記する)の駆動信号Vg1が出力されるとスイッチ素子S1がOFF(非導通状態)となる。スイッチ素子S2についても同様に、駆動信号Vg2が「H」になるとスイッチ素子S2がONになり、駆動信号Vg2が「L」になるとスイッチ素子S2がOFFになる。ゲートドライバー242が駆動信号Vg1,Vg2を出力する処理の詳細については後述する。
図5は、デジタル電力増幅器240が電力増幅する動作を示した説明図である。図5(a)は、スイッチ素子S1がOFFでスイッチ素子S2がONであるから、ACOMとして電圧0が出力されている状態を表している。また、図5(d)は、スイッチ素子S1がONでスイッチ素子S2がOFFであるから、ACOMとして電圧Vddが出力されている状態を表している。デジタル電力増幅器240が平滑フィルター250に対してACOMを出力する際には、これら2つの状態が交互に切り換わる。尚、以下では、スイッチ素子S1がOFFでスイッチ素子S2がONの状態(ACOMとして電圧0が出力されている状態)を、「ACOMがLの状態」と称し、逆に、スイッチ素子S1がONでスイッチ素子S2がOFFの状態(ACOMとして電圧Vddが出力されている状態)を、「ACOMがHの状態」と称することがある。
また、2つのスイッチ素子S1,S2が同時にONになると、電源VddからグランドGNDに向かって大きな突入電流が流れてスイッチ素子S1,S2に損傷を与える。そこで、こうしたことを回避するために、ACOMが「H」の状態と「L」の状態とを切り換える際には、スイッチ素子S1およびスイッチ素子S2が何れもOFFとなる状態(デッドタイム状態)を経由して切り換える。図5(b)は、ACOMがLからHに切り換わる際のデッドタイム状態を示しており、図5(e)は、ACOMがLからHに切り換わる際のデッドタイム状態を示している。
ここで、図5(a)に示した状態(ACOMがLの状態)に着目すると、この状態では、還流ダイオードD1の一方の端子は電圧Vddに接続され、他方の端子はグランドGNDに接続されている。従って、還流ダイオードD1の寄生容量C1には電荷が蓄積(充電)される。また、還流ダイオードD2の寄生容量C2については、何れの端子もグランドGNDに接続されているので、電荷が蓄積されることはない。この状態からデッドタイム状態になると、図5(b)に示すように、スイッチ素子S2がOFFになる。
そしてデッドタイム状態が経過すると、今度はスイッチ素子S1がONになる。ここで、還流ダイオードD2の寄生容量C2のハイ側(電源Vddに近い側)の端子に着目すると、図5(a)に示した状態では、還流ダイオードD2の寄生容量C2のハイ側の端子はグランドGNDに接続されており、図5(b)の状態でもグランドGNDの電圧に保たれている。一方、還流ダイオードD1の寄生容量C1には電荷が蓄えられているから、スイッチ素子S1をONにした瞬間に、寄生容量C1に蓄えられていた電荷が還流ダイオードD2の寄生容量C2に流入する。図5(d)には、寄生容量C1から寄生容量C2に向かって流れる電流を、破線の矢印で表している。このときの電流がスイッチ素子S1で抵抗損失を発生させる。また、還流ダイオードD1の寄生容量C1に蓄えられていた電荷だけでは、還流ダイオードD2の寄生容量C2のハイ側の端子電圧をVddまで上昇させることができなかった場合は、電源Vddから電荷が供給される。このときの電流もスイッチ素子S1で抵抗損失を発生させる。
このようにして還流ダイオードD2の寄生容量C2に電荷が流れ込むと、最終的には図5(d)に示した状態(ACOMがHの状態)となる。この状態では、還流ダイオードD2の寄生容量C2のハイ側の端子は電源Vddに接続され、ロー側(ハイ側とは反対側)の端子はグランドGNDに接続されているので電荷が蓄積(充電)されている。また、還流ダイオードD1の寄生容量C1の端子は何れも電源Vddに接続されているので電荷が蓄積されることはない。
以上では、図5(a)の状態(ACOMがLの状態)から図5(d)の状態(ACOMがHの状態)に切り換える場合について説明したが、今度は逆に、図5(d)の状態(ACOMがHの状態)から図5(a)の状態(ACOMがLの状態)に切り換える場合について説明する。図5(d)の状態からデッドタイム状態になると、図5(e)に示すように、スイッチ素子S1をOFFにする。この状態では、還流ダイオードD2の寄生容量C2には電荷が蓄えられて、ハイ側の端子電圧がVddとなっている。そしてデッドタイム状態が経過するとスイッチ素子S2がONになる。すると、還流ダイオードD2の寄生容量C2のハイ側の端子がグランドGNDに接続された状態となるので、寄生容量C2に貯まっていた電荷がグランドGNDに排出される。図5(d)には、寄生容量C2からグランドGNDに向かって流れる電流を、破線の矢印で表している。このときの電流がスイッチ素子S2で抵抗損失を発生させる。
また、還流ダイオードD1の寄生容量C1のハイ側の端子は電源Vddに接続されているので、還流ダイオードD2の寄生容量C2に貯まっていた電荷がグランドGNDに排出されて、寄生容量C2のハイ側端子の電圧が低下するに従って、還流ダイオードD1の寄生容量C1には電荷が蓄積(充電)されていき、最終的には、図5(a)に示した状態となる。
以上は、デジタル電力増幅器240に平滑フィルター250が接続されていないものとして説明した。しかし、図1に示したようにデジタル電力増幅器240には平滑フィルター250が接続されているので、このことによる影響も考慮する必要がある。そこで、先ず始めに、一般的な平滑フィルターに一定電圧を急に印加したときの挙動や、平滑フィルターに印加されている電圧を急に0に落としたときの挙動について検討する。
図6は、コイルとコンデンサーとによって構成される一般的な平滑フィルターに、一定周期Tで電圧Eと電圧0とに切り換わる電圧を印加した時に、一般的な平滑フィルターのコイルに流れる電流を示している。本実施例のデジタル電力増幅器240の出力(ACOM)は、電圧VddとグランドGNDの電圧とを繰り返すから、図5の電圧Eを電圧Vddと読み替えれば、本実施例の平滑フィルター250に適用することができる。
一定周期Tの中で電圧E(電圧Vddに対応)を印加している時間をtonとすると、デューティー比Dは、ton/T(パーセント表示の場合は100×ton/T)となる。また、平滑フィルター250から出力される出力電圧Vout(COMに相当)は、ほぼ、D×Eによって決まる電圧となる。そして、このときにコイルには、電圧Eが印加されている期間では、電流がマイナス(電源側に逆流している状態)からほぼ直線的に増加してプラス(グランドGNDに向けて流れる状態)に転じ、印加される電圧が電圧0になっている期間では、プラスからほぼ直線的に減少してマイナスに転じるようなノコギリ刃状の電流が流れる。
また、圧電素子駆動回路200によって駆動される対象が、容量性負荷の圧電素子116であるから、平滑フィルター250の出力電圧(COM)が一定の条件では、一周期の間でコンデンサーに出入りする電荷が等しくなり、プラス側への振幅の最大値とマイナス側への振幅の最大値とは等しくなる。
図7には、平滑フィルター250のコイルに流れる電流Iの算出式が示されている。図7(a)は、電圧E(電圧Vddに対応)を印加している期間について示したものであり、図7(b)は、印加する電圧を電圧0に落としている期間について示したものである。電圧Eを印加している期間にコイルに流れる電流Iは、図7(a)中の回路図で示される。平滑フィルター250を構成するコイルのインダクタンスをL、コンデンサーのキャパシタンスをC、コイルに流れる初期電流(電圧E印加時に流れていた電流)をI0、コンデンサーの初期電圧(電圧Eの印加時でのコンデンサーの端子間電圧)をE0とすると、電圧Eと、電流Iとの間には、(1)式で示した微分方程式が成立し、この方程式を解くと電流Iは(2)式によって求められる。ここで、ω0は、平滑フィルター250の共振周波数(=1/√(LC))である。そして、電圧Eが印加されている時間tonは平滑フィルター250の共振周期に比べると十分に短いから、cosω0tはほぼ1とみなすことができ、sinω0tはほぼω0tとみなすことができる。すると(2)式は、(3)式で近似することができ、電流Iは時間tの経過とともに直線的に増加することが分かる。
平滑フィルター250に印加する電圧が電圧0に落とされている期間についても同様である。すなわち、印加する電圧を電圧0に落としている期間にコイルに流れる電流Iは、図7(b)中の回路図で示すことができ、印加する電圧は0であるから、電流Iは(4)式で示した微分方程式が成立する。そしてこの方程式を解くと、印加する電圧が電圧0の期間に流れる電流Iは(5)式によって求められる。また、sinω0tをω0tと近似して、cosω0tを1と近似すると、電流Iは(6)式で求めることができる。従って、印加する電圧が電圧0に落とされている期間では、電流Iは時間tの経過とともに直線的に減少することが分かる。
また、図6に示したように、電圧Eを印加した瞬間(t=0)では、電流I=−IAであるから、(3)式より、I0=−IAとなる。更に、初期電圧E0は、図6の出力電圧Vout(=D×E。圧電素子駆動回路200のCOMに相当)に等しいから、これらを(3)式に代入して整理すると、コイルに流れる電流の振幅IAは、図8(a)に示した(7)式によって示される。(7)式に示されるように、電流の振幅IAはデューティー比Dの二次関数であり、図8(b)に示すように、D=0.5(デューティー比Dが50%)の時に最大値となる。
以上のことから次のようなことが分かる。デジタル電力増幅器240のACOMを平滑フィルター250で平滑化して、一定のCOMを負荷に印加する場合(デューティー比が一定の場合)、平滑フィルター250のコイルには、図6に示したようなノコギリ刃状の電流が流れる。電流の振幅がプラス側に最大となるのは、デジタル電力増幅器240のACOMが「H」から「L」の状態に切り換わる瞬間であり、マイナス側に最大となるのは、ACOMが「L」から「H」の状態に切り換わる瞬間である。また、電流Iの絶対値(すなわち振幅IA)は、デューティー比Dが50%の時に最大となり、デューティー比Dが50%から小さくなるにつれて、あるいは50%から大きくなるにつれて、振幅IAは小さくなる。尚、以上の説明では、COMが一定であるものとして説明した。この場合、一周期の間で圧電素子116に流入する電流と、流出する電流とは等しくなる。これに対して、COMが増加する場合は圧電素子116に流入する電流の方が多くなり、逆にCOMが減少する場合は圧電素子116から流出する電流の方が多くなる。従って、COMが変化する場合は、この圧電素子116に出入りする電流に相当する分だけ、平滑フィルター250のコイルに流れる電流Iが上方にシフト(増加)あるいは下方にシフト(減少)することになる。
デジタル電力増幅器240に平滑フィルター250を接続すると、平滑フィルター250のコイルに流れる電流Iがこのような挙動をすることを踏まえた上で、平滑フィルター250が接続された状態でのデジタル電力増幅器240の動作について考える。
図9は、図5(a)の状態(ACOMがLの状態)から、図5(d)の状態(ACOMがHの状態)に切り換わる際のデッドタイム状態中に発生する現象を示した説明図である。図9(a)に示されるように、ACOMがLの状態(スイッチ素子S1がOFFで、スイッチ素子S2がONの状態)では、還流ダイオードD1の寄生容量C1には電荷が蓄えられている。また、図8を用いて前述したように、ACOMがLからHに切り換わる直前には、平滑フィルター250のコイルからデジタル電力増幅器240に向かって大きさIAの電流が流れている。図9(a)では、コイルからの電流が流れる様子が、破線の矢印によって表されている。
この状態から、デッドタイム状態ではスイッチ素子S1,S2を何れもOFFの状態にする。すると、平滑フィルター250のコイルには、自己誘導現象によって電流をそのまま流し続けようとする方向に起電力が発生する。しかし、スイッチ素子S2はOFFに切り換わっているので、こちらを流れることはできない。その一方で、還流ダイオードD2の寄生容量C2には電荷が全く蓄えられていないので、この寄生容量C2がコイルの逆起電力によって充電される。また、還流ダイオードD1の寄生容量C1については、コイルの逆起電力が発生する結果、寄生容量C1のロー側(電源Vddの反対側)の端子電圧が上昇するので、ハイ側の端子との端子間電圧が小さくなる。その結果、還流ダイオードD1の寄生容量C1に蓄えられていた電荷が電源Vddに回生される。図9(b)に示した破線の矢印は、還流ダイオードD2の寄生容量C2に電荷が充電され、還流ダイオードD1の寄生容量C1に蓄えられていた電荷が回生される様子を表している。
そして、図9(c)に示すように、還流ダイオードD1の寄生容量C1に蓄えられていた電荷を全て回生し、スイッチ素子S2のハイ側の端子電圧が電圧Vddに達するまで寄生容量C2に電荷を蓄えた後に、スイッチ素子S1をONにしてやる。こうすれば、図5を用いて前述したように、ACOMの出力をLからHの状態に切り換える際に生じる電力損失は全く生じない。すなわち、図9(a)の状態を、デッドタイム状態の間に図9(c)の状態まで持って行くことができれば、電力損失の発生を回避することができる。ACOMの出力をHからLの状態に切り換える場合にも、同様なことが当て嵌まる。
図10は、図5(d)の状態(ACOMがHの状態)から、図5(a)の状態(ACOMがLの状態)に切り換わる際のデッドタイム状態中に発生する現象を示した説明図である。図10(a)に示されるように、ACOMがHの状態(スイッチ素子S1がONで、スイッチ素子S2がOFFの状態)では、還流ダイオードD2の寄生容量C2に電荷が蓄えられる。また、図6を用いて前述したように、ACOMの出力がHからLの状態に切り換わる直前には、デジタル電力増幅器240から平滑フィルター250のコイルに向かって大きさがIAの電流が流れている。図10(a)では、デジタル電力増幅器240の電源Vddからコイルに向かって電流が流れる様子が、破線の矢印によって表されている。
この状態から、デッドタイム状態ではスイッチ素子S1,S2を何れもOFFの状態にする。すると、平滑フィルター250のコイルには自己誘導現象によって、電流をそのまま流し続けようとする方向に逆起電力が発生する。しかし、スイッチ素子S1はOFFに切り換わっているので、電源Vddから電荷を供給することができず、その一方で、還流ダイオードD2の寄生容量C2には端子間電圧がVddの電荷が蓄えられているので、この電荷がコイルに向かって供給される。また、これに伴ってスイッチ素子S2のハイ側の端子電圧が低下するので、還流ダイオードD1の寄生容量C1の端子間電圧が増加し、その結果として寄生容量C1に電荷が蓄えられることになる。図10(b)に示した破線の矢印は、還流ダイオードD2の寄生容量C2に電荷が蓄えられていた電荷が回生され、還流ダイオードD1の寄生容量C1に電荷が充電される様子を表している。
そして、図10(c)に示すように、還流ダイオードD2の寄生容量C2に蓄えられていた電荷を全て回生し、スイッチ素子S1の端子間電圧が電圧Vddに達するまで寄生容量C1に電荷を蓄えた後に、スイッチ素子S2をONにしてやる。こうすれば、図5を用いて前述したように、ACOMをHからLに切り換える際に生じる電力損失は全く生じない。すなわち、図10(a)の状態を、デッドタイム状態の間に図10(c)の状態まで持って行くことができれば、電力損失の発生を回避することができる。
このように、ACOMの出力を切り換えたときに、平滑フィルター250のコイルで大きな逆起電力が発生して、デッドタイム状態中に寄生容量C1,C2での電荷の回生および充電が完了していれば、デジタル電力増幅器240で発生する電力損失を大幅に抑制することができる。図3に示した現象、すなわちデューティー比が下限付近の場合や逆に上限付近の場合に、圧電素子駆動回路200での電力損失が急激に増加する現象は、コイルで十分な大きさの逆起電力を発生させることができなくなったため、デッドタイム状態の期間内に寄生容量での電荷の回生および充電が完了できなかったことが原因で生じたものと考えられる。
A−4.デジタル電力増幅器での電力損失を回避するメカニズム :
図11には、デッドタイム状態の期間内に寄生容量での電荷の回生および充電が完了できた場合と、完了できなかった場合とについて、デジタル電力増幅器240の動作が切り換わる様子が示されている。図11(a)はデッドタイム状態の期間内に余裕を持って電荷の回生および充電が完了した場合を示し、図11(b)はデッドタイム状態の期間ちょうどで電荷の回生および充電が間に合った場合を示し、図11(c)はデッドタイム状態内に電荷の回生および充電が完了しなかった場合を示している。
先ず始めに、最も単純な場合である図11(b)の場合について説明する。デジタル電力増幅器240から出力されるMCOMがLの状態からデッドタイム状態に切り換わる直前では、図6に示したようにコイルの電流Iはマイナス方向(デジタル電力増幅器240に向かって逆流する方向)に流れている。また、デジタル電力増幅器240が出力するACOMの電圧は0である。この状態を、状態[A]と呼ぶことにする。続いて、スイッチ素子S2をOFFに切り換えてデッドタイム状態に移行すると、図9(b)を用いて前述したように、コイルの逆起電力によって還流ダイオードD2の寄生容量C2が充電され、それに伴って、デジタル電力増幅器240が出力するACOMが上昇し、デッドタイム状態が終了する時に、ちょうど電圧Vddに達する。コイルの逆起電力によって還流ダイオードD2の寄生容量C2が充電されて、ACOMが上昇している状態を、状態[B]と呼ぶことにする。
デッドタイム状態を終了して、デジタル電力増幅器240が出力するACOMがHの状態になると、図6を用いて前述したように、初めのうちはコイルにマイナス方向(コイルからデジタル電力増幅器240に逆流する方向)の電流が流れているが、途中で電流の向きが逆転して、プラス方向(デジタル電力増幅器240からコイルに向かう方向)に電流が流れるようになる。ACOMが電圧Vddで、コイルにマイナス方向の電流が流れている状態を、状態[C]と呼び、コイルの電流が逆転してプラス方向の電流が流れるようになった状態を、状態[D]と呼ぶことにする。
その後、ACOMがHの状態から、スイッチ素子S1をOFFに切り換えてデッドタイム状態に移行すると、図10(b)を用いて前述したように、コイルの逆起電力によって還流ダイオードD2の寄生容量C2の電荷が回生され、還流ダイオードD1の寄生容量C1に電荷が充電されて、それに伴ってACOMが低下する。そして、デッドタイム状態が終了する時に、ちょうど電圧0まで低下する。コイルの逆起電力によって還流ダイオードD2の寄生容量C2から電荷が回生されて、ACOMが低下している状態を、状態[E]と呼ぶことにする。
デッドタイム状態を終了して、ACOMがLの状態になると、図6を用いて前述したように、初めのうちはコイルにプラス方向の電流が流れているが、途中で電流の向きが逆転して、マイナス方向に電流が流れるようになる。ACOMが電圧0で、コイルにプラス方向の電流が流れている状態を、状態[F]と呼ぶことにする。また、コイルにマイナス方向の電流が流れている状態は、前述した状態[A]である。
以上では、デッドタイム状態の期間内で、寄生容量C1,C2での電荷の回生と充電とがちょうど完了した場合に、デジタル電力増幅器240の動作が切り換わる様子について説明した。これに対して、デッドタイム状態の期間内で、寄生容量C1,C2での電荷の回生と充電とが余裕を持って完了する場合には、デジタル電力増幅器240の動作は図11(a)に示すように切り換わる。
先ず、デジタル電力増幅器240が出力するACOMがLの状態の時は、前述した状態[A]となっており、デッドタイム状態に切り換わると状態[B](すなわち、コイルの逆起電力によって還流ダイオードD2の寄生容量C2が充電されて、ACOMが上昇していく状態)となる。そして、コイルで十二分な大きさの逆起電力が発生している場合は、デッドタイム状態が終了する前に、還流ダイオードD2の寄生容量C2への充電が完了し(すなわち、寄生容量のハイ側の端子電圧が電圧Vddに達し)て、それ以降は、還流ダイオードD1を通って、電荷が電源Vddに逆流する状態となる。このような状態を、状態[G]と呼ぶ。状態[G]では、デジタル電力増幅器240が出力するACOMは、還流ダイオードD1の電圧降下分だけ、電圧Vddよりも高くなる。
その後、ACOMがHの状態では、前述した状態[C](ACOMが電圧Vddで、コイルの電流がマイナスの状態)から、前述した状態[D](ACOMが電圧Vddで、コイルの電流がプラスの状態)へと推移した後、デッドタイム状態になると、前述した状態[E](コイルの逆起電力によって還流ダイオードD2の寄生容量C2の電荷が回生されて、ACOMが低下していく状態)となる。そして、この場合も、コイルで十二分な大きさの逆起電力が発生している場合は、デッドタイム状態が終了する前に、還流ダイオードD2の寄生容量C2からの電荷の回生が完了し(すなわち、寄生容量のハイ側の端子電圧が電圧0まで低下し)て、それ以降は、還流ダイオードD2を介してグランド側から電荷を吸い出す状態となる。このような状態を、状態[H]と呼ぶ。状態[H]では、ACOMは、還流ダイオードD2の電圧降下分だけ、電圧0よりも低くなる。
これに対して、コイルで発生する逆起電力が不足しているために、デッドタイム状態の期間内では、寄生容量C1,C2での電荷の回生と充電とが完了しない場合には、デジタル電力増幅器240の動作は図11(c)に示すように切り換わる。ACOMがLの状態からデッドタイム状態に切り換わって、デッドタイム状態が終了するまでの動作は、図11(a)あるいは図11(b)を用いて前述した動作と同様である。すなわち、状態[A]から状態[B]へと切り換わる。
しかし、コイルで発生する逆起電力の大きさが不足していると、デッドタイム状態が終了しても、還流ダイオードD2の寄生容量C2への充電が完了しない(すなわち、寄生容量C2のハイ側の端子電圧が電圧Vddに達しない)。同様に、還流ダイオードD1の寄生容量C1からの電荷の回生も完了しない。このため、図5(a)の状態から図5(d)の状態に切り換えた場合と同様に、スイッチ素子S1で抵抗による電力損失が発生する。また、デッドタイム状態が終了してもデジタル電力増幅器240の出力するACOMが電圧Vddに達していないから、スイッチ素子S1がONに切り換わることで、ACOMが電圧Vddまで上昇するようになる。このような状態を、状態[I]と呼ぶ。
また、コイルで発生する逆起電力の大きさが不足していると、ACOMをHからLに切り換える時にも同様な現象が発生する。すなわち、ACOMがHの状態からデッドタイム状態に切り換えることに伴って、状態[D]から状態[E]に切り換わる。しかし、コイルで発生する逆起電力の大きさが不足していると、デッドタイム状態が終了しても、還流ダイオードD2の寄生容量C2からの電荷の回生が完了しない(すなわち、寄生容量C2のハイ側の端子電圧が電圧0まで低下しない)。このため、図5(d)の状態から図5(a)の状態に切り換えた場合と同様に、スイッチ素子S2で抵抗による電力損失が発生する。また、デッドタイム状態が終了してもACOMが電圧0まで低下していないから、スイッチ素子S2がONに切り換わった後に、ACOM圧が電圧0まで低下するようになる。このような状態を、状態[J]と呼ぶ。
以上に説明したように、デジタル電力増幅器240が状態[I]あるいは状態[J]になると電力損失が発生する。そして、これらの状態は、ACOMがLからHに、あるいはHからLに切り換わる度に(従って、パルス変調のキャリア周波数fcに対応する非常に高い頻度で)発生するから、結果的に、たいへんに大きな電力損失を発生させる。従って、このようなデジタル電力増幅器240での電力損失を回避するためには、状態[I]および状態[J]が発生しないようにすればよい。そこで、これらの状態が発生しないための条件について検討する。
図12(a)は、状態[I]および状態[J]が発生しない条件を説明した図である。状態[I]は、状態[B]でのデッドタイム状態が経過した時に、デジタル電力増幅器240の出力(ACOM)が電圧Vddに達していない場合に発生する。換言すれば、状態[I]が発生しないための条件は、デッドタイム状態内に、ACOMが電圧0から電圧Vdd以上に上昇することである。ここで、還流ダイオードD1の寄生容量C1のキャパシタンスをCd(H)、還流ダイオードD2の寄生容量C2のキャパシタンスをCd(L)とすると、状態[B]でのACOMの電圧Vの上昇は、図12(a)中に示した(8)式で表示される。尚、(8)式中のIAは、デッドタイム状態に切り換わった瞬間にコイルに流れていた電流の大きさであり、図8中の(7)式によって与えられる。従って、ACOMがLからHに切り換わる際のデッドタイム状態をTd1とすると、状態[I]が発生しないための条件は、Td1が、図12(b)中に示した(10)式を満足することとなる。
同様に、状態[J]は、状態[E]でのデッドタイム状態が経過した時に、ACOMが電圧Vddから電圧0まで低下していない場合に発生する。状態[E]でのACOMの電圧Vの低下は、図12(a)中に示した(9)式で表示される。従って、ACOMがHからLに切り換わる際のデッドタイム状態をTd2として、図8中の(7)式を代入して整理すると、状態[J]が発生しないための条件は、Td2が、図12(c)中に示した(11)式を満足することとなる。
ここで、Cd(H)、Cd(L)は、還流ダイオードD1,D2の特性値として予め求めておくことができる。Lは、平滑フィルター250のコイルのインダクタンスであり、Vddは、電源Vddが発生する電圧であり、fcは変調回路230がパルス変調する際のキャリア周波数である。従って、WCOMに対応するデューティー比Dが分かれば、(10)式および(11)式を満足させるTd1,Td2を容易に決定することができる。そして、このようにして決定したデッドタイム状態でスイッチ素子S1,S2を駆動すれば、たとえデューティー比が上限付近や下限付近の値となっても、デジタル電力増幅器240での電力損失を増加させないようにすることが可能となる。本実施例の圧電素子駆動回路200は、このような原理に基づいて、デジタル電力増幅器240での電力損失が増加することを回避する。
A−5.圧電素子駆動回路の詳細 :
図13は、本実施例の圧電素子駆動回路200で、デジタル電力増幅器240での電力損失の増加を回避する方法を示した説明図である。図2を用いて前述したように、駆動波形信号発生回路210は、COM(駆動信号)の元となるWCOM(駆動波形信号)を出力しており、内蔵する波形メモリー212にWCOMのデータを記憶している。
図13(b)は、波形メモリー212にWCOMのデータが記憶されている様子を示した説明図である。図示されるようにWCOMのデータは、WCOMの出力を開始してからの経過時間と、そのときに出力する電圧値と、デッドタイムTdとが記憶されている。また、WCOMとして出力する電圧値と、デューティー比Dとは一対一の関係となる。尚、図12では、ACOMがLからHに切り換わるときのデッドタイム状態と、ACOMがHからLに切り換わるときのデッドタイム状態とを区別していたが、図12中に示した(10)式と(11)式とを比べれば明らかなように、どちらの場合も必要なデッドタイムTd1,Td2は同じ値となる。そこで、図13(b)では、ACOMがLからHに切り換わる場合と、HからLに切り換わる場合とを区別することなく、単にデッドタイムTdが記憶されている。
駆動波形信号発生回路210は、波形メモリー212から読み出した電圧値をWCOMとして演算回路220に出力し、また、その電圧値に対応付けて記憶されていたデッドタイムTdを、デジタル電力増幅器240に出力する。すると、デジタル電力増幅器240は、変調回路230からのMCOMに従ってスイッチ素子S1,S2を駆動する際に、デッドタイム状態の継続時間がデッドタイムTdとなるように、以下のような処理を行う。
A−6.スイッチ駆動方法 :
図14は、デジタル電力増幅器240内のゲートドライバー242がスイッチ素子S1,S2を駆動するための行うスイッチ駆動処理のフローチャートである。スイッチ駆動処理では、先ず始めに、変調回路230から受け取ったMCOMが「H」であるか否かを判断する(ステップS100)。その結果、MCOMが「H」であると判断した場合は(ステップS100:yes)、デッドタイム状態が終了したか否かに拘わらずスイッチ素子S2はOFFにすればよいので、駆動信号Vg2の出力を「L」とする(ステップS102)。
続いて、駆動信号Vg1が既に「H」になっているか否か、換言すれば、スイッチ素子S1が既にONに切り換わっているか否かを判断する(ステップS104)。駆動信号Vg1が「H」でなかった場合は(ステップS104:no)、MCOMは「H」になっているがスイッチ素子S1は未だONに切り換わっていないことになるので、駆動波形信号発生回路210から指定されたデッドタイムTdの計時を開始する(ステップS106)。そして、デッドタイムTdが経過したか否かを判断し(ステップS108)、デッドタイムTdが経過していない場合は(ステップS108:no)、そのまま計時を継続する。その結果、デッドタイムTdが経過したと判断したら(ステップS108:yes)、駆動信号Vg1を「H」にする(ステップS110)。その結果、スイッチ素子S1がONに切り換わって、デッドタイム状態が終了する。これに対して駆動信号Vg1が既に「H」になっていた場合は(ステップS104:yes)、既にデッドタイム状態が終了して、ACOMが「H」の状態に切り換わっていると考えられるので、そのまま先頭に戻って、MCOMが「H」であるか否かを判断して(ステップS100)、上述した続く一連の処理を行う。
この結果、MCOMが「L」に切り換わると、ステップS100では「no」と判断する。そしてこの場合は、デッドタイム状態が終了したか否かに拘わらずスイッチ素子S1はOFFにすればよいので、駆動信号Vg1の出力を「L」とする(ステップS112)。続いて、駆動信号Vg2が既に「H」になっているか否か、換言すれば、スイッチ素子S2が既にONに切り換わっているか否かを判断する(ステップS114)。その結果、駆動信号Vg2が既に「H」になっていた場合は(ステップS114:yes)、MCOMが「L」になっていることに対応して、既にスイッチ素子S2がONに切り換わっていることになるので、そのまま先頭に戻って、MCOMが「H」であるか否かの判断を行い(ステップS100)、上述した続く一連の処理を行う。
これに対して、駆動信号Vg2が「H」でなかった場合は(ステップS114:no)、MCOMは「L」になっているがスイッチ素子S2は未だONに切り換わっていないことになるので、駆動波形信号発生回路210から指定されたデッドタイムTdの計時を開始する(ステップS116)。そして、デッドタイムTdが経過したか否かを判断し(ステップS118)、デッドタイムTdが経過していない場合は(ステップS118:no)、そのまま計時を継続する。その結果、デッドタイムTdが経過したと判断したら(ステップS118:yes)、駆動信号Vg2を「H」にする(ステップS120)。その結果、スイッチ素子S2がONに切り換わって、デッドタイム状態が終了する。
図15は、上述したスイッチ駆動処理によってスイッチ素子S1,S2が切り換わる様子を示した説明図である。図中に示されるように、MCOMがLからHに切り換わると、駆動信号Vg2がHからLに切り換わってスイッチ素子S2がOFFになる。スイッチ素子S2がOFFに切り換わった直後は、未だスイッチ素子S1はOFFのままなので、デッドタイム状態が開始される。
デッドタイム状態では、平滑フィルター250のコイルの逆起電力によって、還流ダイオードD1の寄生容量C1の回生と共に、還流ダイオードD2の寄生容量C2への充電が行われ、その結果、ACOMが上昇していく。そして、駆動波形信号発生回路210から指定されたデッドタイムTdが経過すると、駆動信号Vg1をLからHに切り換えることによってスイッチ素子S1をONにする。デッドタイムTdは、図12中に示した(10)式あるいは(11)式に従って決定されている。このため、デッドタイム状態が開始されてからデッドタイムTdが経過すると、寄生容量C1,C2での電荷の回生および充電がちょうど完了して、ACOMがちょうど電圧Vddに達した時点で、スイッチ素子S1がONに切り換わる。
その結果、寄生容量C1に貯まっていた電荷がスイッチ素子S1を流れて電力が損失されることを回避することができる。また、寄生容量C1,C2での電荷の回生および充電が完了してから、スイッチ素子S1がONに切り換わるまでに時間がかかると、図11(a)を用いて前述したように還流ダイオードD1を電流が流れるが、この時にも還流ダイオードD1の順方向効果電圧に、流れる電流を乗算した分の電力損失が発生する。本実施例の圧電素子駆動回路200では、寄生容量C1,C2での電荷の回生および充電がちょうど完了したタイミングで、スイッチ素子S1をONに切り換えることができるので、余分な還流ダイオードD1の電力損失も回避することが可能となる。
MCOMがHからLに切り換わる場合も、ほぼ同様なことが当て嵌まる。すなわち、MCOMがLに切り換わったことに伴って、駆動信号Vg1がHからLに切り換わってスイッチ素子S1がOFFになる。スイッチ素子S1がOFFになっただけでは、スイッチ素子S2がOFFのままなので、デッドタイム状態が開始される。
デッドタイム状態では、平滑フィルター250のコイルの逆起電力によって、還流ダイオードD2の寄生容量C2の回生と共に、還流ダイオードD1の寄生容量C1への充電が行われ、その結果、ACOMが低下していく。そして、駆動波形信号発生回路210から指定されたデッドタイムTdが経過すると、寄生容量C1,C2での電荷の回生および充電がちょうど完了して、ACOMがちょうど電圧0まで低下するので、このタイミングで、駆動信号Vg2をLからHに切り換えることによってスイッチ素子S2をONにする。その結果、寄生容量C2に貯まっていた電荷がスイッチ素子S2を流れて電力が損失されることを回避することができる。また、圧電素子駆動回路200では、寄生容量C1,C2での電荷の回生および充電がちょうど完了したタイミングで、スイッチ素子S2をONに切り換えることができるので、余分な還流ダイオードD2の電力損失も回避することが可能となる。
尚、上述した実施例では、駆動信号Vg1あるいは駆動信号Vg2を「L」から「H」に切り換える際には、タイマーを用いてデッドタイムTdを計時してから切り換えることとしていた。しかし、必ずしもタイマーを用いてデッドタイムTdを計時しなくてもよい。例えば、遅延時間がデッドタイムTdとなるように抵抗値Rあるいはコンデンサー容量Cを調整したRC遅延回路を用いて、駆動信号Vg1あるいは駆動信号Vg2が「L」から「H」に切り換わるタイミングを、デッドタイムTdだけ遅らせるようにしても良い。また、デッドタイムTdを変更する際には、抵抗値Rあるいはコンデンサー容量Cを連続的に可変できるようにして任意のデッドタイムTdを実現可能としても良いが、複数種類の抵抗値R(あるいはコンデンサー容量C)を設定しておき、これらの中から適切な抵抗値R(あるいはコンデンサー容量C)を選択するようにしても良い。また、スイッチ素子S1,S2は、駆動信号Vg1あるいは駆動信号Vg2が「H」になってゲート端子に電流(ゲート電流)が流れることによってONになる。従って、駆動信号Vg1,Vg2が抵抗(ゲート抵抗)を介してゲート端子に接続されるようにしておき、このゲート抵抗の抵抗値Rを変更する(あるいは抵抗値Rを切り換える)ことで、ゲート電流の電流値を調整することによって、デッドタイムTdを調整するようにしても良い。
B.変形例 :
上述した本実施例の圧電素子駆動回路200には幾つかの変形例が存在している。以下ではこれらの変形例について簡単に説明する。尚、これら変形例を説明するにあたって、上述した本実施例の圧電素子駆動回路200と異なる構成についてのみ説明し、本実施例と同様な構成については、同じ番号を付すことによって説明を省略する。
B−1.第1変形例 :
上述した実施例では、駆動波形信号発生回路210の波形メモリー212にデッドタイムTdが記憶されており、駆動波形信号発生回路210が演算回路220に向かってWCOMを出力することに合わせて、そのWCOMに対応するデッドタイムTdが、駆動波形信号発生回路210からデジタル電力増幅器240に出力されるものとして説明した。しかし、WCOMに応じたデッドタイムTdをデジタル電力増幅器240に出力することができるのであれば、必ずしも駆動波形信号発生回路210からデッドタイムTdを出力しなくても良い。
図16は、第1変形例の圧電素子駆動回路200が、デジタル電力増幅器240での電力損失の増加を回避する方法を示した説明図である。図示されるように、第1変形例の圧電素子駆動回路200では、駆動波形信号発生回路210の外部にデッドタイム情報記憶メモリー270が設けられており、このデッドタイム情報記憶メモリー270に、WCOMの電圧値と、デッドタイムTdとが対応付けられたテーブル(デッドタイム情報)が記憶されている。そして、駆動波形信号発生回路210は、デジタル電力増幅器240に向かってWCOMを出力するとともに、デッドタイム情報記憶メモリー270を参照して、WCOMに対応するデッドタイムTdをデジタル電力増幅器240に出力するようにしても良い。
尚、上述した第1変形例では、デッドタイム情報記憶メモリー270には、WCOMとデッドタイムTdとを対応付けたデッドタイム情報が記憶されているものとして説明したが、これに限らず、dWCOMとデッドタイムTdとを対応付けたテーブルや、MCOMのデューティー比とデッドタイムTdとを対応付けたテーブルを、デッドタイム情報記憶メモリー270に記憶しておいても良い。そして、例えばdWCOMとデッドタイムTdとを対応付けたデッドタイム情報が記憶されている場合には、演算回路220がdWCOMを出力する際、あるいは変調回路230がdWCOMを受け取った際に、デッドタイム情報記憶メモリー270のデッドタイム情報を参照して、デッドタイムTdをデジタル電力増幅器240に出力するようにしても良い。また、MCOMのデューティー比とデッドタイムTdとを対応付けたデッドタイム情報が記憶されている場合には、変調回路230がMCOMを出力する際にMCOMのデューティー比を検出して、デューティー比に対応付けられたデッドタイムTdをデジタル電力増幅器240に出力しても良い。あるいは、MCOMを受け取ったデジタル電力増幅器240がMCOMのデューティー比を検出して、デューティー比に対応付けられたデッドタイムTdを読み出すようにしても良い。
B−2.第2変形例 :
上述した実施例あるいは変形例では、デッドタイムTdが予め記憶されており、WCOMや、dWCOM、MCOMのデューティー比などに応じて適切なデッドタイムTdを読み出してデジタル電力増幅器240に出力されるものとして説明した。しかし、デッドタイムTdは、図12中に示した(10)式あるいは(11)式を用いて簡単に算出することができるから、WCOMからデッドタイムTdを算出するようにしてもよい。
図17は、WCOMからデッドタイムTdを算出する第2変形例の圧電素子駆動回路200の詳細な構成を示した説明図である。図示されるように、第2変形例の圧電素子駆動回路200では、駆動波形信号発生回路210がデジタル電力増幅器240に向けてWCOMを出力すると、そのWCOMがデッドタイム決定回路280にも入力される。デッドタイム決定回路280は、受け取ったWCOMをデューティー比Dに変換し、デューティー比Dから図12中の(10)式あるいは(11)式に従ってデッドタイムTdを算出する。そして、得られたデッドタイムTdをデジタル電力増幅器240に出力する。このようにしても、寄生容量C1,C2での電荷の回生および充電がちょうど完了したタイミングで、スイッチ素子S1,S2を切り換えることができるので、還流ダイオードD1,D2での電力損失を回避することができ、電力効率よく圧電素子116を駆動することが可能となる。尚、デッドタイム決定回路280が、本発明における「デッドタイム決定手段」に対応する。
B−3.第3変形例 :
上述した第2変形例では、WCOMからデューティー比Dを求めて、デッドタイムTdを算出するものとして説明した。しかし、WCOMからではなく、dWCOMからデューティー比Dを求めてデッドタイムTdを算出するようにしてもよい。
図18は、dWCOMからデッドタイムTdを算出する第3変形例の圧電素子駆動回路200の詳細な構成を示した説明図である。図示されるように、第3変形例の圧電素子駆動回路200では、演算回路220から変調回路230に向かって出力されたdWCOMが、デッドタイム決定回路280にも入力される。デッドタイム決定回路280は、受け取ったdWCOMをデューティー比Dに変換して、図12中の(10)式あるいは(11)式に従ってデッドタイムTdを算出し、デジタル電力増幅器240に出力する。
駆動波形信号発生回路210が出力したWCOMは、dCOMが負帰還されてdWCOMに変換され、そのdWCOMがパルス変調されたMCOMがデジタル電力増幅器240に供給される。従って、駆動波形信号発生回路210がデジタル電力増幅器240に向けて出力するWCOMと、デジタル電力増幅器240が受け取るMCOMとは、厳密には対応していない。このことから、dWCOMからデューティー比Dを求めてデッドタイムTdを算出した方が、適切なタイミングでスイッチ素子S1,S2を切り換えることが可能となり、その結果、より電力効率よく圧電素子116を駆動することが可能となる。
B−4.第4変形例 :
また、WCOMやdWCOMから求めたデューティー比Dではなく、MCOMから計測したデューティー比Dを用いてデッドタイムTdを算出するようにしてもよい。
図19は、dWCOMからデッドタイムTdを算出する第4変形例の圧電素子駆動回路200の詳細な構成を示した説明図である。図示されるように、第4変形例の圧電素子駆動回路200では、変調回路230からデジタル電力増幅器240に向かって出力されたMCOMが、デッドタイム決定回路280にも入力される。デッドタイム決定回路280は、MCOMを受け取ると、そのMCOMのデューティー比Dを計測し、図12中の(10)式あるいは(11)式に従ってデッドタイムTdを算出する。そして得られたデッドタイムTdをデジタル電力増幅器240に出力する。
変調回路230では、dWCOMを三角波と比較することによってMCOMを生成するが、三角波が歪んだり、ドリフトしたりしていると、dWCOMから推定されるMCOMのデューティー比Dと、実際に変調回路230で得られるMCOMのデューティー比Dとが一致しなくなる。そして、デジタル電力増幅器240には変調回路230で得られたMCOMが供給される。従って、MCOMのデューティー比DをdWCOMから推定するのではなく、MCOMから計測した方が、適切なタイミングでスイッチ素子S1,S2を切り換えることが可能となり、その結果、より電力効率よく圧電素子116を駆動することが可能となる。
B−5.第5変形例 :
上述した変形例のように、WCOMからデッドタイムTdを算出するには、ある程度の時間が必要となる。このため、WCOMの電圧値に対応するデッドタイムTdを算出した時点では、その電圧値に対応するACOMが既にデジタル電力増幅器240から出力されている場合も起こり得る。そこで、駆動波形信号発生回路210からデジタル電力増幅器240までの間の何れかの位置に遅延回路290を挿入することによって、ACOMを出力するタイミングを調整しても良い。
図20は、遅延回路290を備えた第5変形例の圧電素子駆動回路200の詳細な構成を示した説明図である。図示した例では、変調回路230とデジタル電力増幅器240との間に遅延回路290が設けられている。このため、デッドタイム決定回路280がWCOMからデッドタイムTdを算出するまでの間に、そのWCOMに対応するACOMがデジタル電力増幅器240から出力されないようになっている。こうすれば、デジタル電力増幅器240は、デッドタイム決定回路280から出力されるデッドタイムTdに基づいて、適切なタイミングでスイッチ素子S1,S2を切り換えることができるので、電力効率よく圧電素子116を駆動することが可能となる。
また、駆動波形信号発生回路がWCOMを出力してから変調回路がMCOMに変換するために掛かる時間が、デッドタイムTdを算出する時間よりも長い場合、その電圧値に対応するMCOMが未だ変調回路230から出力されていない場合も起こり得る。そこで、駆動波形信号発生回路210とデッドタイム決定回路280までの間か、デッドタイム決定回路280とデジタル電力増幅回路240の間の何れかの位置に遅延回路を挿入することによって、デッドタイムが挿入されるタイミングを調整しても良い。
尚、上述した第5変形例では、デッドタイム決定回路280はWCOMに基づいてデッドタイムTdを算出するものとして説明したが、dWCOMや、MCOMに基づいてデッドタイムTdを算出するようにしても構わない。
B−6.第6変形例 :
上述した本実施例あるいは各種の変形例では、圧電素子駆動回路200が液体噴射装置100の圧電素子116を駆動するものとして説明した。しかし、インクジェットプリンターでインクを噴射する噴射ノズルは、アクチュエーターとして圧電素子を利用しているので、噴射ノズルの圧電素子を駆動する圧電素子駆動回路200としても好適に適用することができる。
図21は、インクジェットプリンターに搭載された噴射ヘッド400の大まかな内部構造を示した説明図である。噴射ヘッド400の底面(印刷媒体2に向いている面)には、インクを噴射する複数の噴射ノズル402が設けられている。噴射ノズル402はそれぞれインク室404に接続されており、インク室404には、図示しないインクカートリッジから供給されたインクが満たされている。インク室404の上には圧電素子406が設けられており、圧電素子406にCOM(駆動信号)を印加すると、圧電素子406が変形してインク室404を加圧することによって、噴射ノズル402からインクが噴射される。
COM(駆動信号)は、インクジェットプリンターに搭載された制御回路450の制御の下で圧電素子駆動回路200によって生成される。また、生成されたCOMは、ゲートユニット460を介して圧電素子406に供給される。ゲートユニット460は、複数のゲート素子462が並列に接続された回路ユニットであり、ゲート素子462は、制御回路450からの制御の下で、個別に導通状態または切断状態とすることが可能である。従って、圧電素子駆動回路200から出力されたCOMは、制御回路450によって予め導通状態に設定されたゲート素子462だけを通過して、対応する圧電素子406に印加され、その噴射ノズル402からインクが噴射される。
ここで、圧電素子406に印加されるCOMは、図22に示すような波形の信号が用いられる。すなわち、インクを噴射する前には、圧電素子406を初期状態から一旦収縮させるために、COMの電圧が上昇し、その後、圧電素子406を大きく伸張させるために、COMが大きく低下する。その結果、初期状態の電圧(初期電圧)よりも低くなった後、再び上昇して、初期電圧に戻る波形となっている。このような波形となっている関係上、噴射ヘッド400がインクを噴射していない待機状態でも、圧電素子406には比較的低い初期電圧(すなわち、制御信号Vcのデューティー比が小さな値となる電圧)のCOMが印加されている。従って、このようなCOMを出力する圧電素子駆動回路200に、上述した本実施例あるいは各種の変形例の圧電素子駆動回路200を適用すれば、待機状態中にも電力損失が発生することを回避することが可能となる。
以上、各種の圧電素子駆動回路200について説明したが、本発明は上記すべての実施例や各種の変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば、薬剤や栄養剤を内包するマイクロカプセルを形成することに用いる液体噴射装置など、医療機器を含む様々な電子機器を駆動するための圧電素子駆動回路に対しても、本発明の圧電素子駆動回路200を好適に適用することができる。
尚、上述した実施例および各種の変形例では、スイッチS1と還流ダイオードD1、スイッチS2と還流ダイオードD2はそれぞれ異なる素子の場合の説明をしたが、ひとつの素子がスイッチと還流ダイオードを含んでいる場合においても適用することができる。例えば、スイッチとしてMOSFETを用いた場合には、MOSFETに内蔵される寄生ダイオードが還流ダイオードの役割を果たす。この場合は、本発明におけるスイッチS1と還流ダイオードD1、スイッチS2と還流ダイオードD2が同一素子内に存在していることになる。本発明は、MOSFETのように1つの素子でスイッチと還流ダイオードの役割を果たす素子においても適用することができる。