JP5845598B2 - 負荷駆動回路および流体噴射装置 - Google Patents

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Description

本発明は、駆動信号を出力することによって電気的な負荷を駆動する技術に関する。
いわゆるD級増幅器では、電源とグランドとの間で、二つのスイッチ素子をプッシュ・
プル接続しておき、二つのスイッチ素子の間の電圧を引き出して平滑フィルターに入力し
た後、駆動信号として外部に出力する技術が用いられている。電源側のスイッチ素子をO
N(導通状態)として、グランド側のスイッチ素子をOFF(切断状態)とすれば、平滑
フィルターには電源の電圧が入力され、逆に、電源側のスイッチ素子をOFFとして、グ
ランド側のスイッチ素子をONとすれば、平滑フィルターにはグランドの電圧が入力され
る。従って、出力しようとする駆動信号の基準となる駆動波形信号をパルス変調して、得
られた変調信号に基づいてスイッチ素子を駆動すれば、変調信号を電力増幅した電力増幅
変調信号を生成することができる。そして、この電力増幅変調信号を平滑フィルターで平
滑化すれば、駆動波形信号に対応する駆動信号を出力することができる。また、この技術
を利用して容量成分を有する電気負荷(容量性負荷)を駆動する技術も提案されている(
特許文献1)。
ここで、プッシュ・プル接続されている二つのスイッチ素子が何れもONになってしま
うと、その瞬間に電源からグランドに向けて大きな突入電流が流れてスイッチ素子に損傷
を与える。そこで、こうした事態を避けるため、一方のスイッチ素子がONで他方のスイ
ッチ素子がOFFの状態から、一方のスイッチ素子がOFFで他方のスイッチ素子がON
の状態に切り換える場合には、両方のスイッチ素子がOFFの状態を経由して切り換える
ことが行われる。尚、両方のスイッチ素子がOFFになっている期間は、デッドタイム期
間と呼ばれている。
また、平滑フィルターに入力される電圧が切り換わる際には、平滑フィルターを構成す
る誘導成分によって逆起電力が発生する。そこで、デッドタイム期間中にスイッチ素子に
過大な逆起電力が掛かることの無いように、電流をバイパスさせるダイオード(還流ダイ
オードと呼ばれる)が、それぞれのスイッチ素子に対して並列に設けられている。
特開2007−96364号公報
しかし、二つのスイッチ素子のON/OFFを切り換える際に、還流ダイオードの寄生
容量で充放電が発生することや、デッドタイム期間中に平滑フィルター側で生じた逆起電
力によって還流ダイオードに電流が流れることなどに起因して、大きな電力損失が発生す
ることがあるという問題があった。
この発明は、従来の技術が有する上述した課題の少なくとも一部を解決するためになさ
れたものであり、二つのスイッチ素子のON/OFFを切り換えることにともなう電力損
失の発生を抑制しながら、駆動信号を出力することが可能な技術の提供を目的とする。
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の負荷駆動回路は次の構成を
採用した。すなわち、
駆動信号を印加することによって電気的な負荷を駆動する負荷駆動回路であって、
前記駆動信号の基準となる駆動波形信号を発生する駆動波形信号発生回路と、
前記駆動波形信号をパルス変調して変調信号を生成する変調回路と、
該変調信号を電力増幅して電力増幅変調信号を生成するデジタル電力増幅器と、
前記電力増幅変調信号を平滑化することによって前記駆動信号を生成する平滑フィルタ
ーと、
を備え、
前記デジタル電力増幅器は、
第1の第1の電圧発生源と、
前記第1の電圧発生源と直列接続される第1のスイッチ素子と、
前記第1のスイッチ素子と直列接続される第2のスイッチ素子と、
前記第2のスイッチ素子と直列接続され、前記第1の電圧発生源よりも低い電圧を発
生させる第2の電圧発生源と、
前記第1のスイッチ素子に対して並列に接続されて、該第1のスイッチ素子を逆流す
る電流をバイパスさせる向きに設けられた第1のダイオードと、
前記第2のスイッチ素子に対して並列に接続されて、該第2のスイッチ素子を逆流す
る電流をバイパスさせる向きに設けられた第2のダイオードと
を備え、
前記デジタル電力増幅器は、前記第1のスイッチ素子がONで前記第2のスイッチ素子
がOFFの状態である第1の状態と、該第1のスイッチ素子がOFFで該第2のスイッチ
素子がONの状態である第2の状態とを前記変調信号に応じて切り換え、且つ、該第1の
状態と該第2の状態とを切り換える際には、該第1のスイッチ素子および該第2のスイッ
チ素子が何れもOFFの状態である第3の状態を、前記駆動波形信号の電圧に応じた継続
時間、継続させた後に、該第1の状態または該第2の状態に切り換えることを要旨とする
こうした本発明の負荷駆動回路においては、第1のスイッチ素子および第2のスイッチ
素子のON/OFFを切り換えることによって、デジタル電力増幅器に第1の電圧発生源
の電圧が印加される状態(第1の状態に相当)と、平滑フィルターに第2の電圧発生源の
電圧が印加される状態(第2の状態に相当)とを切り換えることができる。このとき第1
のダイオードおよび第2のダイオードに存在する寄生容量では電荷の充放電が行われる。
詳細には後述するが、この電荷の充放電に伴ってスイッチ素子を流れる電流が電力損失を
発生させる。また、第1の状態と第2の状態とを切り換える際には、第1のスイッチ素子
および第2のスイッチ素子が何れもOFFの状態となる切断状態を経由させて切り換える
。そして、詳細には後述するが、切断状態の期間では、平滑フィルターのコイルに生じる
逆起電力によって、ダイオードの寄生容量での電荷の回生や充電が行われる。電荷の回生
や充電が完了すると、ONにしようとしている方のスイッチ素子に並列に接続されたダイ
オードの寄生容量に蓄えられていた電荷が、他方のダイオードの寄生容量に移し換えられ
たような状態となる。そして、このような状態から第1のスイッチ素子あるいは第2のス
イッチ素子をONに切り換えれば、寄生容量に蓄えられていた電荷が、ONになったスイ
ッチ素子を流れることがないので、電力損失の発生を回避することができる。また、寄生
容量での電荷の回生および充電が完了するまでに要する時間は、変調信号のデューティー
比(変調信号が高電圧状態となる時間比率)に依存し、デューティー比は駆動波形信号の
電圧に依存する。そこで、第1のスイッチ素子および第2のスイッチ素子のON/OFF
を切り換える際には、何れのスイッチもOFFにして切断状態にした後、駆動波形信号の
電圧に応じた時間が経過したら、第1のスイッチ素子あるいは第2のスイッチ素子をON
にする。
こうすれば、第1のダイオードおよび第2のダイオードの寄生容量での電荷の回生およ
び充電が完了したタイミングで、第1のスイッチ素子あるいは第2のスイッチ素子をON
に切り換えることができる。このため、寄生容量に蓄えられていた電荷が、ONにしたス
イッチ素子を流れることによる電力損失を回避することが可能となる。
また、上述した本発明の負荷駆動回路においては、次のようにしても良い。先ず、駆動
波形信号と、その駆動波形信号に対応する切断状態の継続時間とを、駆動波形信号発生回
路に記憶しておく。そして、駆動波形信号を変調回路に出力する際には、その駆動波形信
号に対応する継続時間をデジタル電力増幅器に出力する。変調回路は、駆動波形信号を変
調信号に変換してデジタル電力増幅器に出力し、デジタル電力増幅器は、その変調信号に
従って第1の状態と第2の状態とを切り換える。そして、このときの切断状態の継続時間
は、駆動波形信号発生回路から受け取った継続時間だけ継続する。
こうすれば、デジタル電力増幅器が、変調信号に従って第1のスイッチ素子および第2
のスイッチ素子のON/OFFを切り換えるに際して、寄生容量での電荷の回生および充
電が完了したタイミングで、第1のスイッチ素子あるいは第2のスイッチ素子をONに切
り換えることができる。このため、寄生容量に蓄えられていた電荷が、ONにしたスイッ
チ素子を流れることによる電力損失を回避することが可能となる。
また、上述した本発明の負荷駆動回路においては、デジタル電力増幅器が、駆動波形信
号発生回路から駆動波形信号を受け取って、切断状態の継続時間を決定し、その継続時間
だけ切断状態が継続されるように、第1のスイッチ素子および第2のスイッチ素子を切り
換えるようにしてもよい。
詳細には後述するが、第1のダイオードおよび第2のダイオードの寄生容量での電荷の
回生および充電に要する時間は、駆動波形信号の電圧から容易に決定することができる。
従って、寄生容量での電荷の回生および充電に要する時間を、デジタル電力増幅器が駆動
波形信号に基づいて決定し、この時間だけ切断状態を継続したら、第1の状態あるいは第
2の状態に切り換えるようにすれば、寄生容量に蓄えられていた電荷による電力損失を回
避することが可能となる。
また、上述した本発明の負荷駆動回路では、電力損失を抑制しながら、駆動信号を出力
することができる。従って、上述した本発明の負荷駆動回路は、以下のような流体噴射装
置、すなわち、液体を供給する供給ポンプと、該供給ポンプから供給された液体が流入す
る流体室と、容量性負荷であるアクチュエーターと、該流体室に流入された液体を噴射す
る噴射ノズルとを有する脈動発生部とを備え、負荷駆動回路が出力した電圧をアクチュエ
ーターに印加することによって、該流体室に流入した液体を該噴射ノズルからパルス状に
噴射する流体噴射装置で、駆動信号を発生する駆動回路として好適に適用することができ
る。
本実施例の負荷駆動回路を搭載した流体噴射装置の構成を示した説明図である。 本実施例の負荷駆動回路の回路構成を示した説明図である。 一定電圧出力時のデジタル電力増幅器での消費電力がデューティー比に応じて増加する様子を示した説明図である。 デジタル電力増幅器の詳細な構成を示した回路図である。 デジタル電力増幅器での電力増幅時に電力損失が発生する理由を示した説明図である。 一定電圧の出力時に平滑フィルターのコイルに流れる電流がほぼ直線的に変化する様子を示した説明図である。 一定電圧の出力時に平滑フィルターのコイルに流れる電流がほぼ直線的に変化する理由を示した説明図である。 一定電圧の出力時に平滑フィルターのコイルに流れる電流の振幅が、デューティー比に応じて変化する様子を示した説明図である。 一定電圧の出力時に平滑フィルターのコイルに大きな電流が流れる条件では、電力増幅時の電力損失が低下する理由を示した説明図である。 一定電圧の出力時に平滑フィルターのコイルに大きな電流が流れる条件では、電力増幅時の電力損失が低下する理由を示した説明図である。 一定電圧の出力時のデジタル電力増幅器の動作を、平滑フィルターのコイルに流れる電流の大きさに応じて示した説明図である。 一定電圧の出力時にデジタル電力増幅器で電力損失が発生しない条件を示した説明図である。 本実施例の負荷駆動回路の一部を示した説明図である。 本実施例のデジタル電力増幅器が二つのスイッチを駆動するために行うスイッチ駆動処理のフローチャートである。 スイッチ駆動処理でスイッチを駆動したときに電圧が切り換わる様子を示した説明図である。 変形例の負荷駆動回路の詳細な構成を示した説明図である。 負荷駆動回路を用いて駆動される印刷装置の噴射ヘッドを例示した説明図である。 噴射ヘッドを駆動するために出力される駆動信号の電圧波形を例示した説明図である。
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施
例を説明する。
A.装置構成:
A−1.全体構成:
A−2.負荷駆動回路の概要:
A−3.デジタル電力増幅器で電力損失が発生するメカニズム:
A−4.デジタル電力増幅器での電力損失を回避するメカニズム:
A−5.負荷駆動回路の詳細:
A−6.スイッチ駆動方法:
B.変形例:
B−1.第1変形例:
B−2.第2変形例:
A.装置構成 :
A−1.全体構成 :
図1は、本実施例の負荷駆動回路200を搭載した流体噴射装置100の構成を示した
説明図である。図示されているように流体噴射装置100は、大きく分けると、液体を噴
射するための脈動発生部110と、脈動発生部110に向けて流体を供給する流体供給手
段120と、脈動発生部110および流体供給手段120の動作を制御する制御部130
などから構成されている。流体噴射装置100は、パルス状の液体を脈動発生部110か
ら噴射することによって、生体組織を切除または切開することに使用する手術具としての
ウォータージェットメスの一例である。
脈動発生部110は、金属製の第2ケース113に、同じく金属製の第1ケース114
を重ねてネジ止めした構造となっており、第2ケース113の前面には円管形状の流体噴
射管112が立設され、流体噴射管112の先端にはノズル111が挿着されている。第
2ケース113と第1ケース114との合わせ面には、薄い円板形状の流体室115が形
成されており、流体室115は、流体噴射管112を介してノズル111に接続されてい
る。また、第1ケース114の内部には、積層型の圧電素子116が設けられている。脈
動発生部110と制御部130とは配線ケーブル150によって接続されており、制御部
130内の負荷駆動回路200からは、配線ケーブル150を介して駆動信号が圧電素子
116に供給される。また、配線ケーブル150はコネクターによって脈動発生部110
に取り付けられている。このため、配線ケーブル150は、長さや特性の異なる種々の配
線ケーブル150に取り替えることが可能となっている。
流体供給手段120は、噴射しようとする液体(水、生理食塩水、薬液など)が貯めら
れた流体容器123から、第1接続チューブ121を介して液体を吸い上げた後、第2接
続チューブ122を介して脈動発生部110の流体室115内に供給する。このため、流
体室115は液体で満たされた状態となっている。そして、制御部130から駆動信号を
圧電素子116に印加すると、圧電素子116が伸張して流体室115が押し縮められ、
その結果、流体室115内に充満していた液体が、ノズル111からパルス状に噴射され
る。圧電素子116の伸張量は、駆動信号として印加される電圧に依存する。また、駆動
信号は、制御部130内に搭載された負荷駆動回路200によって生成されている。
A−2.負荷駆動回路構成の概要 :
図2は、制御部130に搭載された負荷駆動回路200の回路構成を示した説明図であ
る。図示されているように負荷駆動回路200は、駆動信号の基準となる駆動波形信号(
以下、WCOM)を出力する駆動波形信号発生回路210と、駆動波形信号発生回路21
0から受け取ったWCOMと後述する帰還信号(以下、dCOM)とに基づいて誤差信号
(以下、dWCOM)を出力する演算回路220と、演算回路220からのdWCOMを
パルス変調して変調信号(以下、MCOM)に変換する変調回路230と、変調回路23
0からのMCOMをデジタル的に電力増幅して電力増幅変調信号(以下、ACOM)を生
成するデジタル電力増幅器240と、デジタル電力増幅器240からACOMを受け取っ
て変調成分を取り除いた後、駆動信号(以下、COM)として脈動発生部110の圧電素
子116に供給する平滑フィルター250と、平滑フィルター250から出力されたCO
Mに対して位相を進ませる補償(位相進み補償)を加えてdCOM(帰還信号)を生成す
る位相進み補償回路260とを備えている。尚、第1実施例の負荷駆動回路200には、
COMに対して位相進み補償を加えたdCOMを負帰還させているが、負帰還させない構
成とすることも可能である。この場合は、演算回路220や位相進み補償回路260が不
要となる。その結果、変調回路230は、dWCOMではなく、WCOMに対してパルス
変調を行う。
このうち、駆動波形信号発生回路210は、WCOMのデータを記憶した波形メモリー
や、D/A変換器を備えており、波形メモリーから読み出したデータをD/A変換器でア
ナログ信号に変換することによって、WCOM(駆動波形信号)を生成する。演算回路2
20では、こうして出力されたWCOMからdCOMを減算した信号を、dWCOM(誤
差信号)として出力する。
変調回路230では、dWCOMを一定周期(変調周期)の三角波と比較することによ
って、パルス波状のMCOM(変調信号)を生成(パルス変調)する。たとえばdWCO
Mの方が三角波よりも大きい期間では高電圧状態(出力が「H」)となり、dWCOMの
方が三角波よりも小さい期間では低電圧状態(出力が「L」)となるようなMCOMが出
力される。尚、MCOMが「H」となる時間比率は、「デューティー比(あるいはオンデ
ューティー比)」と呼ばれる。変調回路230によって得られたMCOMは、デジタル電
力増幅器240に入力される。詳細な構成については後述するが、デジタル電力増幅器2
40は、電源と、プッシュ・プル接続された2つのスイッチ素子(MOSFETなど)と
、グランドGNDとが、この順序で直列に接続されている。MCOMの出力がONの場合
は、電源側のスイッチ素子がONになり、グランドGND側のスイッチ素子がOFFにな
って、電源の電圧VddがACOMとして出力される。また、MCOMの出力がOFFの
場合は、電源側のスイッチ素子がOFFになり、グランドGND側のスイッチ素子がON
になってグランドGNDの電圧0がACOMとして出力される。その結果、変調回路23
0の動作電圧とグランドGNDとの間でパルス波状に変化するMCOMが、電源の電圧V
ddとグランドGNDの電圧0との間でパルス波状に変化するACOMに電力増幅される
。この増幅では、プッシュ・プル接続された2つのスイッチ素子のON/OFFを切り換
えているだけなので、アナログ波形を増幅する場合に比べれば、電力損失を抑制すること
が可能である。
こうして電力増幅されたACOM(電力増幅変調信号)は、LC回路によって構成され
る平滑フィルター250を通すことによってCOM(駆動信号)に変換され、圧電素子1
16に印加される。また、COMは演算回路220に負帰還されるが、平滑フィルター2
50を通過することによって、COMはWCOMに対して位相が遅れている。そこで、C
OMを単純に負帰還させるのではなく、コンデンサーと抵抗とによって構成された位相進
み補償回路260を通して位相を進ませる補償(位相進み補償)を行い、得られた信号を
dCOMとして演算回路220に負帰還させるようになっている。
A−3.デジタル電力増幅器で電力損失が発生するメカニズム :
上述したように、デジタル電力増幅器240は、大きな電力損失を伴うことなく、変調
信号(MCOM)を電力増幅してACOMを生成することが可能である。しかし、デジタ
ル電力増幅器240でも、ある条件が成立すると電力増幅時に大きな電力損失が発生する
ことがある。
図3は、デジタル電力増幅器240で電力損失が発生する様子を示した説明図である。
図示されるように、たとえば負荷に対して一定電圧を出力する場合には、変調信号のデュ
ーティー比が上限付近になると急激に電力損失が増加する。変調信号のデューティー比が
下限付近になった場合にも急激に電力損失が増加する。このような現象が生じると、WC
OMを変調してMCOMに変換してから増幅している意味が無くなってしまうので対策が
必要となる。そのためには、このような現象が生じるメカニズムを明らかにしなければな
らない。
図4は、デジタル電力増幅器240の内部構成を示した回路図である。図示されるよう
に、デジタル電力増幅器240は、プッシュ・プル接続された2つのスイッチ素子S1,
S2を中心として構成されており、一方のスイッチ素子S1には電源Vddが接続され、
他方のスイッチ素子S2にはグランドGNDが接続されている。尚、電源Vddが本発明
の「第1の電圧発生源」に対応し、グランドGNDが本発明の「第2の電圧発生源」に対
応する。また、スイッチ素子S1が本発明の「第1のスイッチ素子」に対応し、スイッチ
素子S2が本発明の「第2のスイッチ素子」に対応する。
更に、スイッチ素子S1には、グランドGND側から電源Vdd側に向かって電流が流
れることを許容する向きの還流ダイオードD1が並列に接続され、スイッチ素子S2にも
、グランドGND側から電源Vdd側に向かって電流が流れることを許容する向きの還流
ダイオードD2が並列に接続されている。従って、還流ダイオードD1が本発明の「第1
のダイオード」に対応し、還流ダイオードD2が本発明の「第2のダイオード」に対応す
る。また、還流ダイオードD1,D2には、端子間に寄生容量が存在する。図4では、還
流ダイオードD1に存在する寄生容量を寄生容量C1と表し、還流ダイオードD2に存在
する寄生容量を寄生容量C2と表している。尚、スイッチ素子S1,S2としては、MO
SFETやIGBTなどの素子を用いることができる。
ゲートドライバー242は、変調回路230から供給されるMCOMに基づいて、スイ
ッチ素子S1を駆動するための駆動信号Vg1、およびスイッチ素子S2を駆動するため
の駆動信号Vg2を出力する。そして、高電圧状態(以下では、「H」と表記する)の駆
動信号Vg1が出力されるとスイッチ素子S1がON(導通状態)となり、低電圧状態(
以下では、「L」と表記する)の駆動信号Vg1が出力されるとスイッチ素子S1がOF
F(非導通状態)となる。スイッチ素子S2についても同様に、駆動信号Vg2が「H」
になるとスイッチ素子S2がONになり、駆動信号Vg2が「L」になるとスイッチ素子
S2がOFFになる。ゲートドライバー242が駆動信号Vg1,Vg2を出力する処理
の詳細については後述する。
図5は、デジタル電力増幅器240が電力増幅する動作を示した説明図である。図5(
a)は、スイッチ素子S1がOFFでスイッチ素子S2がONであるから、ACOMとし
て電圧0が出力されている状態を表している。尚、この状態(ACOMが電圧0である状
態)が、本発明の「第2の状態」に対応する。また、図5(d)は、スイッチ素子S1が
ONでスイッチ素子S2がOFFであるから、ACOMとして電圧Vddが出力されてい
る状態を表している。尚、この状態(ACOMが電圧Vddである状態)が、本発明の「
第1の状態」に対応する。デジタル電力増幅器240が平滑フィルター250に対してA
COMを出力する際には、これら2つの状態が交互に切り換わる。尚、以下では、スイッ
チ素子S1がOFFでスイッチ素子S2がONの状態(ACOMとして電圧0が出力され
ている状態)を、「ACOMがLの状態」と称し、逆に、スイッチ素子S1がONでスイ
ッチ素子S2がOFFの状態(ACOMとして電圧Vddが出力されている状態)を、「
ACOMがHの状態」と称することがあるものとする。
また、2つのスイッチ素子S1,S2が同時にONになると、電源Vddからグランド
GNDに向かって大きな突入電流が流れてスイッチ素子S1,S2に損傷を与える。そこ
で、こうしたことを回避するために、ACOMが「H」の状態と「L」の状態とを切り換
える際には、スイッチ素子S1およびスイッチ素子S2が何れもOFFとなる期間(デッ
ドタイム期間)を経由して切り換えるようになっている。図5(b)は、ACOMがLか
らHに切り換わる際のデッドタイム期間の状態を示しており、図5(e)は、ACOMが
LからHに切り換わる際のデッドタイム期間の状態を示している。尚、デッドタイム期間
の状態が、本発明の「第3の状態」に対応する。
ここで、図5(a)に示した状態(ACOMがLの状態)に着目すると、この状態では
、還流ダイオードD1の一方の端子は電圧Vddに接続され、他方の端子はグランドGN
Dに接続されている。従って、還流ダイオードD1の寄生容量C1には電荷が蓄積(充電
)される。また、還流ダイオードD2の寄生容量C2については、何れの端子もグランド
GNDに接続されているので、電荷が蓄積されることはない。この状態からデッドタイム
期間になると、図5(b)に示すように、スイッチ素子S2がOFFになる。
そしてデッドタイム期間が経過すると、今度はスイッチ素子S1がONになる。ここで
、還流ダイオードD2の寄生容量C2のハイ側(電源Vddに近い側)の端子に着目する
と、図5(a)に示した状態では、還流ダイオードD2の寄生容量C2のハイ側の端子は
グランドGNDに接続されており、図5(b)の状態でもグランドGNDの電圧に保たれ
ている。一方、還流ダイオードD1の寄生容量C1には電荷が蓄えられているから、スイ
ッチ素子S1をONにした瞬間に、寄生容量C1に蓄えられていた電荷が還流ダイオード
D2の寄生容量C2に流入する。図5(d)には、寄生容量C1から寄生容量C2に向か
って流れる電流を、破線の矢印で表している。このときの電流がスイッチ素子S1で抵抗
損失を発生させる。また、還流ダイオードD1の寄生容量C1に蓄えられていた電荷だけ
では、還流ダイオードD2の寄生容量C2のハイ側の端子電圧をVddまで上昇させるこ
とができなかった場合は、電源Vddから電荷が供給される。このときの電流もスイッチ
素子S1で抵抗損失を発生させる。
このようにして還流ダイオードD2の寄生容量C2に電荷が流れ込むと、最終的には図
5(d)に示した状態(ACOMがHの状態)となる。この状態では、還流ダイオードD
2の寄生容量C2のハイ側の端子は電源Vddに接続され、ロー側(ハイ側とは反対側)
の端子はグランドGNDに接続されているので電荷が蓄積(充電)されている。また、還
流ダイオードD1の寄生容量C1の端子は何れも電源Vddに接続されているので電荷が
蓄積されることはない。
以上では、図5(a)の状態(ACOMがLの状態)から図5(d)の状態(ACOM
がHの状態)に切り換える場合について説明したが、今度は逆に、図5(d)の状態(A
COMがHの状態)から図5(a)の状態(ACOMがLの状態)に切り換える場合につ
いて説明する。図5(d)の状態からデッドタイム期間になると、図5(e)に示すよう
に、スイッチ素子S1をOFFにする。この状態では、還流ダイオードD2の寄生容量C
2には電荷が蓄えられて、ハイ側の端子電圧がVddとなっている。そしてデッドタイム
期間が経過するとスイッチ素子S2がONになる。すると、還流ダイオードD2の寄生容
量C2のハイ側の端子がグランドGNDに接続された状態となるので、寄生容量C2に貯
まっていた電荷がグランドGNDに排出される。図5(d)には、寄生容量C2からグラ
ンドGNDに向かって流れる電流を、破線の矢印で表している。このときの電流がスイッ
チ素子S2で抵抗損失を発生させる。
また、還流ダイオードD1の寄生容量C1のハイ側の端子は電源Vddに接続されてい
るので、還流ダイオードD2の寄生容量C2に貯まっていた電荷がグランドGNDに排出
されて、寄生容量C2のハイ側端子の電圧が低下するに従って、還流ダイオードD1の寄
生容量C1には電荷が蓄積(充電)されていき、最終的には、図5(a)に示した状態と
なる。
以上は、デジタル電力増幅器240に平滑フィルター250が接続されていないものと
して説明した。しかし、図1に示したようにデジタル電力増幅器240には平滑フィルタ
ー250が接続されているので、このことによる影響も考慮する必要がある。そこで、先
ず始めに、一般的な平滑フィルターに一定電圧を急に印加したときの挙動や、平滑フィル
ターに印加されている電圧を急に0に落としたときの挙動について検討する。
図6は、コイルとコンデンサーとによって構成される一般的な平滑フィルターに、一定
周期Tで電圧Eと電圧0とに切り換わる電圧を印加した時に、一般的な平滑フィルターの
コイルに流れる電流を示している。本実施例のデジタル電力増幅器240の出力(ACO
M)は、電圧VddとグランドGNDの電圧とを繰り返すから、図5の電圧Eを電圧Vd
dと読み替えれば、本実施例の平滑フィルター250に適用することができる。
一定周期Tの中で電圧E(電圧Vddに対応)を印加している時間をtonとすると、
デューティー比Dは、ton/T(パーセント表示の場合は100×ton/T)となる
。また、平滑フィルター250から出力される出力電圧Vout(COMに相当)は、ほ
ぼ、D×Eによって決まる電圧となる。そして、このときにコイルには、電圧Eが印加さ
れている期間では、電流がマイナス(電源側に逆流している状態)からほぼ直線的に増加
してプラス(グランドGNDに向けて流れる状態)に転じ、印加される電圧が電圧0にな
っている期間では、プラスからほぼ直線的に減少してマイナスに転じるようなノコギリ刃
状の電流が流れる。
また、負荷駆動回路200によって駆動される対象が、圧電素子やコンデンサーのよう
な容量性負荷であった場合には、平滑フィルター250の出力電圧(COM)が一定の条
件では、一周期の間でコンデンサーに出入りする電荷が等しいから、プラス側への振幅の
最大値とマイナス側への振幅の最大値とは等しくなる。
図7には、平滑フィルター250のコイルに流れる電流Iの算出式が示されている。図
7(a)は、電圧E(電圧Vddに対応)を印加している期間について示したものであり
、図7(b)は、印加する電圧を電圧0に落としている期間について示したものである。
電圧Eを印加している期間にコイルに流れる電流Iは、図7(a)中の回路図で示される
。平滑フィルター250を構成するコイルのインダクタンスをL、コンデンサーのキャパ
シタンスをC、コイルに流れる初期電流(電圧E印加時に流れていた電流)をI、コン
デンサーの初期電圧(電圧Eの印加時でのコンデンサーの端子間電圧)をEとすると、
電圧Eと、電流Iとの間には、(1)式で示した微分方程式が成立し、この方程式を解く
と電流Iは(2)式によって求められる。ここで、ωは、平滑フィルター250の共振
周波数(=1/√(LC))である。そして、電圧Eが印加されている時間tonは平滑
フィルター250の共振周期に比べると十分に短いから、cosωtはほぼ1とみなす
ことができ、sinωtはほぼωtとみなすことができる。すると(2)式は、(3
)式で近似することができ、電流Iは時間tの経過とともに直線的に増加することが分か
る。
平滑フィルター250に印加する電圧が電圧0に落とされている期間についても同様で
ある。すなわち、印加する電圧を電圧0に落としている期間にコイルに流れる電流Iは、
図7(b)中の回路図で示すことができ、印加する電圧は0であるから、電流Iは(4)
式で示した微分方程式が成立する。そしてこの方程式を解くと、印加する電圧が電圧0の
期間に流れる電流Iは(5)式によって求められる。また、sinωtをωtとみな
して、cosωtを1とみなすと、電流Iは(6)式で近似することができる。従って
、印加する電圧が電圧0に落とされている期間では、電流Iは時間tの経過とともに直線
的に減少することが分かる。
また、図6に示したように、電圧Eを印加した瞬間(t=0)では、電流I=−IAで
あるから、(3)式より、I=−IAとなる。更に、初期電圧Eは、図6の出力電圧
Vout(=D×E。負荷駆動回路200のCOMに相当)に等しいから、これらを(3
)式に代入して整理すると、コイルに流れる電流の振幅IAは、図8(a)に示した(7
)式によって示される。(7)式に示されるように、電流の振幅IAはデューティー比D
の二次関数であり、図8(b)に示すように、D=0.5(デューティー比Dが50%)
の時に最大値となる。
以上のことから次のようなことが分かる。デジタル電力増幅器240のACOMを平滑
フィルター250で平滑化して、一定のCOMを負荷に印加する場合(デューティー比が
一定の場合)、平滑フィルター250のコイルには、図6に示したようなノコギリ刃状の
電流が流れる。電流の振幅がプラス側に最大となるのは、デジタル電力増幅器240のA
COMが「H」から「L」の状態に切り換わる瞬間であり、マイナス側に最大となるのは
、ACOMが「L」から「H」の状態に切り換わる瞬間である。また、電流Iの絶対値(
すなわち振幅IA)は、デューティー比Dが50%の時に最大となり、デューティー比D
が50%から小さくなるにつれて、あるいは50%から大きくなるにつれて、振幅IAは
小さくなる。
デジタル電力増幅器240に平滑フィルター250を接続すると、平滑フィルター25
0のコイルに流れる電流Iがこのような挙動をすることを踏まえた上で、平滑フィルター
250が接続された状態でのデジタル電力増幅器240の動作について考える。
図9は、図5(a)の状態(ACOMがLの状態)から、図5(d)の状態(ACOM
がHの状態)に切り換わる際のデッドタイム期間中に発生する現象を示した説明図である
。図9(a)に示されるように、ACOMがLの状態(スイッチ素子S1がOFFで、ス
イッチ素子S2がONの状態)では、還流ダイオードD1の寄生容量C1には電荷が蓄え
られている。また、図8を用いて前述したように、ACOMがLからHに切り換わる直前
には、平滑フィルター250のコイルからデジタル電力増幅器240に向かって大きさI
Aの電流が流れている。図9(a)では、コイルからの電流が流れる様子が、破線の矢印
によって表されている。
この状態から、デッドタイム期間ではスイッチ素子S1,S2を何れもOFFの状態に
する。すると、平滑フィルター250のコイルには、自己誘導現象によって電流をそのま
ま流し続けようとする方向に起電力が発生する。しかし、スイッチ素子S2はOFFに切
り換わっているので、こちらを流れることはできない。その一方で、還流ダイオードD2
の寄生容量C2には電荷が全く蓄えられていないので、この寄生容量C2がコイルの逆起
電力によって充電される。また、還流ダイオードD1の寄生容量C1については、コイル
の逆起電力が発生する結果、寄生容量C1のロー側(電源Vddの反対側)の端子電圧が
上昇するので、ハイ側の端子との端子間電圧が小さくなる。その結果、還流ダイオードD
1の寄生容量C1に蓄えられていた電荷が電源Vddに回生される。図9(b)に示した
破線の矢印は、還流ダイオードD2の寄生容量C2に電荷が充電され、還流ダイオードD
1の寄生容量C1に蓄えられていた電荷が回生される様子を表している。
そして、図9(c)に示すように、還流ダイオードD1の寄生容量C1に蓄えられてい
た電荷を全て回生し、スイッチ素子S2のハイ側の端子電圧が電圧Vddに達するまで寄
生容量C2に電荷を蓄えた後に、スイッチ素子S1をONにしてやる。こうすれば、図5
を用いて前述したように、ACOMの出力をLからHの状態に切り換える際に生じる電力
損失は全く生じない。すなわち、図9(a)の状態を、デッドタイム期間の間に図9(c
)の状態まで持って行くことができれば、電力損失の発生を回避することができる。AC
OMの出力をHからLの状態に切り換える場合にも、同様なことが当て嵌まる。
図10は、図5(d)の状態(ACOMがHの状態)から、図5(a)の状態(ACO
MがLの状態)に切り換わる際のデッドタイム期間中に発生する現象を示した説明図であ
る。図10(a)に示されるように、ACOMがHの状態(スイッチ素子S1がONで、
スイッチ素子S2がOFFの状態)では、還流ダイオードD2の寄生容量C2に電荷が蓄
えられる。また、図6を用いて前述したように、ACOMの出力がHからLの状態に切り
換わる直前には、デジタル電力増幅器240から平滑フィルター250のコイルに向かっ
て大きさがIAの電流が流れている。図10(a)では、デジタル電力増幅器240の電
源Vddからコイルに向かって電流が流れる様子が、破線の矢印によって表されている。
この状態から、デッドタイム期間ではスイッチ素子S1,S2を何れもOFFの状態に
する。すると、平滑フィルター250のコイルには自己誘導現象によって、電流をそのま
ま流し続けようとする方向に逆起電力が発生する。しかし、スイッチ素子S1はOFFに
切り換わっているので、電源Vddから電荷を供給することができず、その一方で、還流
ダイオードD2の寄生容量C2には端子間電圧がVddの電荷が蓄えられているので、こ
の電荷がコイルに向かって供給される。また、これに伴ってスイッチ素子S2のハイ側の
端子電圧が低下するので、還流ダイオードD1の寄生容量C1の端子間電圧が増加し、そ
の結果として寄生容量C1に電荷が蓄えられることになる。図10(b)に示した破線の
矢印は、還流ダイオードD2の寄生容量C2に電荷が蓄えられていた電荷が回生され、還
流ダイオードD1の寄生容量C1に電荷が充電される様子を表している。
そして、図10(c)に示すように、還流ダイオードD2の寄生容量C2に蓄えられて
いた電荷を全て回生し、スイッチ素子S1の端子間電圧が電圧Vddに達するまで寄生容
量C1に電荷を蓄えた後に、スイッチ素子S2をONにしてやる。こうすれば、図5を用
いて前述したように、ACOMをHからLに切り換える際に生じる電力損失は全く生じな
い。すなわち、図10(a)の状態を、デッドタイム期間の間に図10(c)の状態まで
持って行くことができれば、電力損失の発生を回避することができる。
このように、ACOMの出力を切り換えたときに、平滑フィルター250のコイルで大
きな逆起電力が発生して、デッドタイム期間中に寄生容量C1,C2での電荷の回生およ
び充電が完了していれば、デジタル電力増幅器240で発生する電力損失を大幅に抑制す
ることができる。図3に示した現象、すなわちデューティー比が下限付近の場合や逆に上
限付近の場合に、負荷駆動回路200での電力損失が急激に増加する現象は、コイルで十
分な大きさの逆起電力を発生させることができなくなったため、デッドタイム期間内に寄
生容量での電荷の回生および充電が完了できなかったことが原因で生じたものと考えられ
る。
A−4.デジタル電力増幅器での電力損失を回避するメカニズム :
図11には、デッドタイム期間内に寄生容量での電荷の回生および充電が完了できた場
合と、完了できなかった場合とについて、デジタル電力増幅器240の動作が切り換わる
様子が示されている。図11(a)はデッドタイム期間内に余裕を持って電荷の回生およ
び充電が完了した場合を示し、図11(b)はデッドタイム期間内ちょうどで電荷の回生
および充電が間に合った場合を示し、図11(c)はデッドタイム期間内に電荷の回生お
よび充電が完了しなかった場合を示している。
先ず始めに、最も単純な場合である図11(b)の場合について説明する。デジタル電
力増幅器240から出力されるMCOMがLの状態からデッドタイム期間に切り換わる直
前では、図6に示したようにコイルの電流Iはマイナス方向(デジタル電力増幅器240
に向かって逆流する方向)に流れている。また、デジタル電力増幅器240が出力するA
COMの電圧は0である。この状態を、状態[A]と呼ぶことにする。続いて、スイッチ
素子S2をOFFに切り換えてデッドタイム期間に移行すると、図9(b)を用いて前述
したように、コイルの逆起電力によって還流ダイオードD2の寄生容量C2が充電され、
それに伴って、デジタル電力増幅器240が出力するACOMが上昇し、デッドタイム期
間が終了する時に、ちょうど電圧Vddに達する。コイルの逆起電力によって還流ダイオ
ードD2の寄生容量C2が充電されて、ACOMが上昇している状態を、状態[B]と呼
ぶことにする。
デッドタイム期間を終了して、デジタル電力増幅器240が出力するACOMがHの状
態になると、図6を用いて前述したように、初めのうちはコイルにマイナス方向(コイル
からデジタル電力増幅器240に逆流する方向)の電流が流れているが、途中で電流の向
きが逆転して、プラス方向(デジタル電力増幅器240からコイルに向かう方向)に電流
が流れるようになる。ACOMが電圧Vddで、コイルにマイナス方向の電流が流れてい
る状態を、状態[C]と呼び、コイルの電流が逆転してプラス方向の電流が流れるように
なった状態を、状態[D]と呼ぶことにする。
その後、ACOMがHの状態から、スイッチ素子S1をOFFに切り換えてデッドタイ
ム期間に移行すると、図10(b)を用いて前述したように、コイルの逆起電力によって
還流ダイオードD2の寄生容量C2の電荷が回生され、還流ダイオードD1の寄生容量C
1に電荷が充電されて、それに伴ってACOMが低下する。そして、デッドタイム期間が
終了する時に、ちょうど電圧0まで低下する。コイルの逆起電力によって還流ダイオード
D2の寄生容量C2から電荷が回生されて、ACOMが低下している状態を、状態[E]
と呼ぶことにする。
デッドタイム期間を終了して、ACOMがLの状態になると、図6を用いて前述したよ
うに、初めのうちはコイルにプラス方向の電流が流れているが、途中で電流の向きが逆転
して、マイナス方向に電流が流れるようになる。ACOMが電圧0で、コイルにプラス方
向の電流が流れている状態を、状態[F]と呼ぶことにする。また、コイルにマイナス方
向の電流が流れている状態は、前述した状態[A]である。
以上では、デッドタイム期間内で、寄生容量C1,C2での電荷の回生と充電とがちょ
うど完了した場合に、デジタル電力増幅器240の動作が切り換わる様子について説明し
た。これに対して、デッドタイム期間内で、寄生容量C1,C2での電荷の回生と充電と
が余裕を持って完了する場合には、デジタル電力増幅器240の動作は図11(a)に示
すように切り換わる。
先ず、デジタル電力増幅器240が出力するACOMがLの状態の時は、前述した状態
[A]となっており、デッドタイム期間に切り換わると状態[B]、すなわち、コイルの
逆起電力によって還流ダイオードD2の寄生容量C2が充電されて、ACOMが上昇して
いく状態となる。そして、コイルで十二分な大きさの逆起電力が発生している場合は、デ
ッドタイム期間が終了する前に、還流ダイオードD2の寄生容量C2への充電が完了し(
すなわち、寄生容量のハイ側の端子電圧が電圧Vddに達し)て、それ以降は、還流ダイ
オードD1を通って、電荷が電源Vddに逆流する状態となる。このような状態を、状態
[G]と呼ぶ。状態[G]では、デジタル電力増幅器240が出力するACOMは、還流
ダイオードD1の電圧降下分だけ、電圧Vddよりも高くなる。
その後、ACOMがHの状態では、前述した状態[C](ACOMが電圧Vddで、コ
イルの電流がマイナスの状態)から、前述した状態[D](ACOMが電圧Vddで、コ
イルの電流がプラスの状態)へと推移した後、デッドタイム期間になると、前述した状態
[E](コイルの逆起電力によって還流ダイオードD2の寄生容量C2の電荷が回生され
て、ACOMが低下していく状態)となる。そして、この場合も、コイルで十二分な大き
さの逆起電力が発生している場合は、デッドタイム期間が終了する前に、還流ダイオード
D2の寄生容量C2からの電荷の回生が完了し(すなわち、寄生容量のハイ側の端子電圧
が電圧0まで低下し)て、それ以降は、還流ダイオードD2を介してグランド側から電荷
を吸い出す状態となる。このような状態を、状態[H]と呼ぶ。状態[H]では、ACO
Mは、還流ダイオードD2の電圧降下分だけ、電圧0よりも低くなる。
これに対して、コイルで発生する逆起電力が不足しているために、デッドタイム期間内
では、寄生容量C1,C2での電荷の回生と充電とが完了しない場合には、デジタル電力
増幅器240の動作は図11(c)に示すように切り換わる。ACOMがLの状態からデ
ッドタイム期間に切り換わって、デッドタイム期間が終了するまでの動作は、図11(a
)あるいは図11(b)を用いて前述した動作と同様である。すなわち、状態[A]から
状態[B]へと切り換わる。
しかし、コイルで発生する逆起電力の大きさが不足していると、デッドタイム期間が終
了しても、還流ダイオードD2の寄生容量C2への充電が完了しない(すなわち、寄生容
量C2のハイ側の端子電圧が電圧Vddに達しない)。同様に、還流ダイオードD1の寄
生容量C1からの電荷の回生も完了しない。このため、図5(a)の状態から図5(d)
の状態に切り換えた場合と同様に、スイッチ素子S1で抵抗による電力損失が発生する。
また、デッドタイム期間が終了してもデジタル電力増幅器240の出力するACOMが電
圧Vddに達していないから、スイッチ素子S1がONに切り換わることで、ACOMが
電圧Vddまで上昇するようになる。このような状態を、状態[I]と呼ぶ。
また、コイルで発生する逆起電力の大きさが不足していると、ACOMをHからLに切
り換える時にも同様な現象が発生する。すなわち、ACOMがHの状態からデッドタイム
期間に切り換えることに伴って、状態[D]から状態[E]に切り換わる。しかし、コイ
ルで発生する逆起電力の大きさが不足していると、デッドタイム期間が終了しても、還流
ダイオードD2の寄生容量C2からの電荷の回生が完了しない(すなわち、寄生容量C2
のハイ側の端子電圧が電圧0まで低下しない)。このため、図5(d)の状態から図5(
a)の状態に切り換えた場合と同様に、スイッチ素子S2で抵抗による電力損失が発生す
る。また、デッドタイム期間が終了してもACOMが電圧0まで低下していないから、ス
イッチ素子S2がONに切り換わった後に、ACOM圧が電圧0まで低下するようになる
。このような状態を、状態[J]と呼ぶ。
以上に説明したように、デジタル電力増幅器240が状態[I]あるいは状態[J]に
なると電力損失が発生する。そして、これらの状態は、ACOMがLからHに、あるいは
HからLに切り換わる度に(従って、パルス変調のキャリア周波数fcに対応する非常に
高い頻度で)発生するから、結果的に、たいへんに大きな電力損失を発生させることにな
る。従って、このようなデジタル電力増幅器240での電力損失を回避するためには、状
態[I]および状態[J]が発生しないようにすればよい。そこで、これらの状態が発生
しないための条件について検討する。
図12(a)は、状態[I]および状態[J]が発生しない条件を説明した図である。
状態[I]は、状態[B]でのデッドタイム期間が経過した時に、デジタル電力増幅器2
40の出力(ACOM)が電圧Vddに達していない場合に発生する。換言すれば、状態
[I]が発生しないための条件は、デッドタイム期間内に、ACOMが電圧0から電圧V
dd以上に上昇することである。ここで、還流ダイオードD1の寄生容量C1のキャパシ
タンスをCd(H)、還流ダイオードD2の寄生容量C2のキャパシタンスをCd(L)
とすると、状態[B]でのACOMの電圧Vの上昇は、図12(a)中に示した(8)式
で表示される。尚、(8)式中のIAは、デッドタイム期間に切り換わった瞬間にコイル
に流れていた電流の大きさであり、図8中の(7)式によって与えられる。従って、AC
OMがLからHに切り換わる際のデッドタイム期間をTd1とすると、状態[I]が発生
しないための条件は、Td1が、図12(b)中に示した(10)式を満足することとな
る。
同様に、状態[J]は、状態[E]でのデッドタイム期間が経過した時に、ACOMが
電圧Vddから電圧0まで低下していない場合に発生する。状態[E]でのACOMの電
圧Vの低下は、図12(a)中に示した(9)式で表示される。従って、ACOMがHか
らLに切り換わる際のデッドタイム期間をTd2として、図8中の(7)式を代入して整
理すると、状態[J]が発生しないための条件は、Td2が、図12(c)中に示した(
11)式を満足することとなる。
ここで、Cd(H)、Cd(L)は、還流ダイオードD1,D2の特性値として予め求
めておくことができる。Lは、平滑フィルター250のコイルのインダクタンスであり、
Vddは、電源Vddが発生する電圧であり、fcは変調回路230がパルス変調する際
のキャリア周波数である。従って、WCOMに対応するデューティー比Dが分かれば、(
10)式および(11)式を満足させるTd1,Td2を容易に決定することができる。
そして、このようにして決定したデッドタイム期間でスイッチ素子S1,S2を駆動すれ
ば、たとえデューティー比が上限付近や下限付近の値となっても、デジタル電力増幅器2
40での電力損失を増加させないようにすることが可能となる。本実施例の負荷駆動回路
200は、このような原理に基づいて、デジタル電力増幅器240での電力損失が増加す
ることを回避している。
A−5.負荷駆動回路の詳細 :
図13は、本実施例の負荷駆動回路200で、デジタル電力増幅器240での電力損失
の増加を回避する方法を示した説明図である。図2を用いて前述したように、駆動波形信
号発生回路210は、COM(駆動信号)の元となるWCOM(駆動波形信号)を出力し
ており、内蔵する波形メモリー212にWCOMのデータを記憶している。
図13(b)は、波形メモリー212にWCOMのデータが記憶されている様子を示し
た説明図である。図示されるようにWCOMのデータは、WCOMの出力を開始してから
の経過時間と、そのときに出力する電圧値と、デッドタイム期間の時間Tdとが記憶され
ている。また、WCOMとして出力する電圧値と、デューティー比Dとは一対一の関係と
なる。尚、図12では、ACOMがLからHに切り換わるときのデッドタイム期間と、A
COMがHからLに切り換わるときのデッドタイム期間とを区別していたが、図12中に
示した(10)式と(11)式とを比べれば明らかなように、どちらの場合も必要なデッ
ドタイム期間の時間Td1,Td2は同じ値となる。そこで、図13(b)では、ACO
MがLからHに切り換わる場合と、HからLに切り換わる場合とを区別することなく、単
にデッドタイム期間の時間Tdが記憶されている。尚、この波形メモリー212が、本発
明の「駆動波形情報記憶手段」に対応する。
駆動波形信号発生回路210は、波形メモリー212から読み出した電圧値をWCOM
として演算回路220に出力し、また、その電圧値に対応付けて記憶されていたTdを、
デジタル電力増幅器240に出力する。すると、デジタル電力増幅器240は、変調回路
230からのMCOMに従ってスイッチ素子S1,S2を駆動する際に、デッドタイム期
間の継続時間が時間Tdとなるように、以下のような処理を行う。
A−6.スイッチ駆動方法 :
図14は、デジタル電力増幅器240内のゲートドライバー242がスイッチ素子S1
,S2を駆動するための行うスイッチ駆動処理のフローチャートである。スイッチ駆動処
理では、先ず始めに、変調回路230から受け取ったMCOMが「H」であるか否かを判
断する(ステップS100)。その結果、MCOMが「H」であると判断した場合は(ス
テップS100:yes)、デッドタイム期間が経過したか否かに拘わらずスイッチ素子
S2はOFFにすればよいので、駆動信号Vg2の出力を「L」とする(ステップS10
2)。
続いて、駆動信号Vg1が既に「H」になっているか否か、換言すれば、スイッチ素子
S1が既にONに切り換わっているか否かを判断する(ステップS104)。駆動信号V
g1が「H」でなかった場合は(ステップS104:no)、MCOMは「H」になって
いるがスイッチ素子S1は未だONに切り換わっていないことになるので、駆動波形信号
発生回路210から指定されたデッドタイム期間の時間Tdの計時を開始する(ステップ
S106)。そして、時間Tdが経過したか否かを判断し(ステップS108)、時間T
dが経過していない場合は(ステップS108:no)、そのまま計時を継続する。その
結果、時間Tdが経過したと判断したら(ステップS108:yes)、駆動信号Vg1
を「H」にする(ステップS110)。その結果、スイッチ素子S1がONに切り換わっ
て、デッドタイム期間が終了する。これに対して駆動信号Vg1が既に「H」になってい
た場合は(ステップS104:yes)、既にデッドタイム期間が終了して、ACOMが
「H」の状態に切り換わっていると考えられるので、そのまま先頭に戻って、MCOMが
「H」であるか否かを判断して(ステップS100)、上述した続く一連の処理を行う。
この結果、MCOMが「L」に切り換わると、ステップS100では「no」と判断す
る。そしてこの場合は、デッドタイム期間が経過したか否かに拘わらずスイッチ素子S1
はOFFにすればよいので、駆動信号Vg1の出力を「L」とする(ステップS112)
。続いて、駆動信号Vg2が既に「H」になっているか否か、換言すれば、スイッチ素子
S2が既にONに切り換わっているか否かを判断する(ステップS114)。その結果、
駆動信号Vg2が既に「H」になっていた場合は(ステップS114:yes)、MCO
Mが「L」になっていることに対応して、既にスイッチ素子S2がONに切り換わってい
ることになるので、そのまま先頭に戻って、MCOMが「H」であるか否かの判断を行い
(ステップS100)、上述した続く一連の処理を行う。
これに対して、駆動信号Vg2が「H」でなかった場合は(ステップS114:no)
、MCOMは「L」になっているがスイッチ素子S2は未だONに切り換わっていないこ
とになるので、駆動波形信号発生回路210から指定されたデッドタイム期間の時間Td
の計時を開始する(ステップS116)。そして、時間Tdが経過したか否かを判断し(
ステップS118)、時間Tdが経過していない場合は(ステップS118:no)、そ
のまま計時を継続する。その結果、時間Tdが経過したと判断したら(ステップS118
:yes)、駆動信号Vg2を「H」にする(ステップS120)。その結果、スイッチ
素子S2がONに切り換わって、デッドタイム期間が終了する。
図15は、上述したスイッチ駆動処理によってスイッチ素子S1,S2が切り換わる様
子を示した説明図である。図中に示されるように、MCOMがLからHに切り換わると、
駆動信号Vg2がHからLに切り換わってスイッチ素子S2がOFFになる。スイッチ素
子S2がOFFに切り換わった直後は、未だスイッチ素子S1はOFFのままなので、デ
ッドタイム期間が開始される。
デッドタイム期間では、平滑フィルター250のコイルの逆起電力によって、還流ダイ
オードD1の寄生容量C1の回生と共に、還流ダイオードD2の寄生容量C2への充電が
行われ、その結果、ACOMが上昇していく。そして、駆動波形信号発生回路210から
指定された時間Tdが経過すると、駆動信号Vg1をLからHに切り換えることによって
スイッチ素子S1をONにする。時間Tdは、図12中に示した(10)式あるいは(1
1)式に従って決定されている。このため、デッドタイム期間が開始されてから時間Td
が経過すると、寄生容量C1,C2での電荷の回生および充電がちょうど完了して、AC
OMがちょうど電圧Vddに達した時点で、スイッチ素子S1がONに切り換わる。
その結果、寄生容量C1に貯まっていた電荷がスイッチ素子S1を流れて電力が損失さ
れることを回避することができる。また、寄生容量C1,C2での電荷の回生および充電
が完了してから、スイッチ素子S1がONに切り換わるまでに時間がかかると、図11(
a)を用いて前述したように還流ダイオードD1を電流が流れるが、この時にも還流ダイ
オードD1の順方向効果電圧に、流れる電流を乗算した分の電力損失が発生する。本実施
例の負荷駆動回路200では、寄生容量C1,C2での電荷の回生および充電がちょうど
完了したタイミングで、スイッチ素子S1をONに切り換えることができるので、余分な
還流ダイオードD1の電力損失も回避することが可能となる。
MCOMがHからLに切り換わる場合も、ほぼ同様なことが当て嵌まる。すなわち、M
COMがLに切り換わったことに伴って、駆動信号Vg1がHからLに切り換わってスイ
ッチ素子S1がOFFになる。スイッチ素子S1がOFFになっただけでは、スイッチ素
子S2がOFFのままなので、デッドタイム期間が開始される。
デッドタイム期間では、平滑フィルター250のコイルの逆起電力によって、還流ダイ
オードD2の寄生容量C2の回生と共に、還流ダイオードD1の寄生容量C1への充電が
行われ、その結果、ACOMが低下していく。そして、駆動波形信号発生回路210から
指定された時間Tdが経過すると、寄生容量C1,C2での電荷の回生および充電がちょ
うど完了して、ACOMがちょうど電圧0まで低下するので、このタイミングで、駆動信
号Vg2をLからHに切り換えることによってスイッチ素子S2をONにする。その結果
、寄生容量C2に貯まっていた電荷がスイッチ素子S2を流れて電力が損失されることを
回避することができる。また、負荷駆動回路200では、寄生容量C1,C2での電荷の
回生および充電がちょうど完了したタイミングで、スイッチ素子S2をONに切り換える
ことができるので、余分な還流ダイオードD2の電力損失も回避することが可能となる。
B.変形例 :
上述した本実施例の負荷駆動回路200には幾つかの変形例が存在している。以下では
これらの変形例について簡単に説明する。尚、これら変形例を説明するにあたって、上述
した本実施例の負荷駆動回路200と異なる構成についてのみ説明し、本実施例と同様な
構成については、同じ番号を付すことによって説明を省略する。
B−1.第1変形例 :
上述した実施例では、駆動波形信号発生回路210の波形メモリー212に時間Tdが
記憶されており、駆動波形信号発生回路210が演算回路220に向かってWCOMを出
力することに合わせて、そのWCOMに対応する時間Tdが、駆動波形信号発生回路21
0からデジタル電力増幅器240に出力されるものとして説明した。しかし、時間Tdは
、図12中に示した(10)式あるいは(11)式を用いて簡単に算出することができる
から、駆動波形信号発生回路210からデジタル電力増幅器240にWCOMを出力し、
デジタル電力増幅器240がWCOMから時間Tdを算出するようにしてもよい。
図16は、第1変形例の負荷駆動回路200が、デジタル電力増幅器240での電力損
失の増加を回避する方法を示した説明図である。図示されるように、第1変形例の負荷駆
動回路200では、駆動波形信号発生回路210がデジタル電力増幅器240に向かって
WCOMを出力する。デジタル電力増幅器240は、受け取ったWCOMをデューティー
比Dに変換し、デューティー比Dから図12中の(10)式あるいは(11)式に従って
時間Tdを算出する。そして、ACOMをLからH、あるいはHからLに切り換える際に
は、デッドタイム期間が時間Tdとなるように、スイッチ素子S1,S2を切り換えるよ
うにしてもよい。
B−2.第2変形例 :
上述した本実施例あるいは第1変形例では、負荷駆動回路200が流体噴射装置100
の圧電素子116を駆動するものとして説明した。しかし、インクジェットプリンターで
インクを噴射する噴射ノズルは、アクチュエーターとして圧電素子を利用しているので、
噴射ノズルの圧電素子を駆動する負荷駆動回路200としても好適に適用することができ
る。
図17は、インクジェットプリンターに搭載された噴射ヘッド400の大まかな内部構
造を示した説明図である。噴射ヘッド400の底面(印刷媒体2に向いている面)には、
インクを噴射する複数の噴射ノズル402が設けられている。噴射ノズル402はそれぞ
れインク室404に接続されており、インク室404には、図示しないインクカートリッ
ジから供給されたインクが満たされている。インク室404の上には圧電素子406が設
けられており、圧電素子406にCOM(駆動信号)を印加すると、圧電素子406が変
形してインク室404を加圧することによって、噴射ノズル402からインクが噴射され
る。
COM(駆動信号)は、インクジェットプリンターに搭載された制御回路450の制御
の下で負荷駆動回路200によって生成される。また、生成されたCOMは、ゲートユニ
ット460を介して圧電素子406に供給される。ゲートユニット460は、複数のゲー
ト素子462が並列に接続された回路ユニットであり、ゲート素子462は、制御回路4
50からの制御の下で、個別に導通状態または切断状態とすることが可能である。従って
、負荷駆動回路200から出力されたCOMは、制御回路450によって予め導通状態に
設定されたゲート素子462だけを通過して、対応する圧電素子406に印加され、その
噴射ノズル402からインクが噴射される。
ここで、圧電素子406に印加されるCOMは、図18に示すような波形の信号が用い
られる。すなわち、インクを噴射する前には、圧電素子406を初期状態から一旦収縮さ
せるために、COMの電圧が上昇し、その後、圧電素子406を大きく伸張させるために
、COMが大きく低下する。その結果、初期状態の電圧(初期電圧)よりも低くなった後
、再び上昇して、初期電圧に戻る波形となっている。このような波形となっている関係上
、噴射ヘッド400がインクを噴射していない待機状態でも、圧電素子406には比較的
低い初期電圧(すなわち、制御信号Vcのデューティー比が小さな値となる電圧)のCO
Mが印加されている。従って、このようなCOMを出力する負荷駆動回路200に、上述
した本実施例あるいは第1変形例の負荷駆動回路200を適用すれば、待機状態中にも電
力損失が発生することを回避することが可能となる。
以上、各種の負荷駆動回路200について説明したが、本発明は上記すべての実施例や
適用例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施す
ることが可能である。例えば、薬剤や栄養剤を内包するマイクロカプセルを形成すること
に用いる流体噴射装置など、医療機器を含む様々な電子機器を駆動するための負荷駆動回
路に対しても、本発明の負荷駆動回路200を好適に適用することができる。
尚、上述した実施例では、スイッチS1と還流ダイオードD1、スイッチS2と還流ダ
イオードD2はそれぞれ異なる素子の場合の説明をしたが、ひとつの素子がスイッチと還
流ダイオードを含んでいる場合においても適用することができる。例えば、スイッチとし
てMOSFETを用いた場合には、MOSFETに内蔵される寄生ダイオードが還流ダイ
オードの役割を果たす。この場合は、本発明におけるスイッチS1と還流ダイオードD1
、スイッチS2と還流ダイオードD2が同一素子内に存在していることになる。本発明は
、MOSFETのように1つの素子でスイッチと還流ダイオードの役割を果たす素子にお
いても適用することができる。
100…流体噴射装置、 110…脈動発生部、 111…ノズル、
112…流体噴射管、 113…第2ケース、 114…第1ケース、
115…流体室、 116…圧電素子、 120…流体供給手段、
121…第1接続チューブ、 122…第2接続チューブ、 123…流体容器、
130…制御部、 150…配線ケーブル、 200…負荷駆動回路、
210…駆動波形信号発生回路、 212…波形メモリー、 220…演算回路、
230…変調回路、 240…デジタル電力増幅器、 242…ゲートドライバー、
250…平滑フィルター、 260…補償回路、 400…噴射ヘッド、
402…噴射ノズル、 404…インク室、 406…圧電素子、
450…制御回路、 460…ゲートユニット、 462…ゲート素子、
S1…スイッチ素子、 C1…寄生容量、 D1…還流ダイオード、
S2…スイッチ素子、 C2…寄生容量、 D2…還流ダイオード

Claims (4)

  1. 駆動信号を印加することによって電気的な負荷を駆動する負荷駆動回路であって、
    前記駆動信号の基準となる駆動波形信号を発生する駆動波形信号発生回路と、
    前記駆動波形信号をパルス変調して変調信号を生成する変調回路と、
    該変調信号を電力増幅して電力増幅変調信号を生成するデジタル電力増幅器と、
    前記電力増幅変調信号を平滑化することによって前記駆動信号を生成する平滑フィルターと、を備え、
    前記デジタル電力増幅器は、
    第1の電圧発生源と、
    前記第1の電圧発生源と直列接続される第1のスイッチ素子と、
    前記第1のスイッチ素子と直列接続される第2のスイッチ素子と、
    前記第2のスイッチ素子と直列接続され、前記第1の電圧発生源よりも低い電圧を発生させる第2の電圧発生源と、
    前記第1のスイッチ素子に対して並列に接続されて、該第1のスイッチ素子を逆流する電流をバイパスさせる向きに設けられた第1のダイオードと、
    前記第2のスイッチ素子に対して並列に接続されて、該第2のスイッチ素子を逆流する電流をバイパスさせる向きに設けられた第2のダイオードと、を備え、
    前記デジタル電力増幅器は、前記第1のスイッチ素子がONで前記第2のスイッチ素子がOFFの状態である第1の状態と、該第1のスイッチ素子がOFFで該第2のスイッチ素子がONの状態である第2の状態とを前記変調信号に応じて切り換え、且つ、該第1の状態と該第2の状態とを切り換える際には、該第1のスイッチ素子および該第2のスイッチ素子が何れもOFFの状態である第3の状態を、前記変調信号のデューティ比に応じた継続時間、継続させた後に、該第1の状態または該第2の状態に切り換え、
    前記デューティ比が上限及び下限に近付くにつれて、前記継続時間を長くする、
    負荷駆動回路。
  2. 請求項1に記載の負荷駆動回路であって、
    前記継続時間をT、前記デューティ比をD、前記平滑フィルターのコイルのインダクタンスをL、前記第1の電圧発生源が発生する電圧をVdd、前記変調回路がパルス変調する際のキャリア周波数をfc、前記第1のダイオードの寄生容量のキャパシタンスをC(1)、前記第2のダイオードの寄生容量のキャパシタンスをC(2)とすると、前記継続時間Tが、
    T≧(2L・fc(C(1)+(C(2)))/(D・(1−D))
    との条件式を満たす、負荷駆動回路。
  3. 請求項1に記載の負荷駆動回路であって、
    前記駆動波形信号発生回路は、前記デジタル電力増幅器に前記駆動波形信号を出力し、
    前記デジタル電力増幅器は、受け取った前記駆動波形信号を前記デューティ比に変換し、前記デューティ比に基づいて前記継続時間を決定する
    負荷駆動回路。
  4. 請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の負荷駆動回路と、
    液体を供給する流体供給手段と、
    前記流体供給手段から供給された液体が流入する流体室と、前記電気的な負荷であるアクチュエーターと、前記流体室に流入された液体を噴射する噴射ノズルとを有する脈動発生部と
    を備え、
    前記負荷駆動回路から出力される電圧が前記アクチュエーターに印加されることによって、前記流体室に流入された液体が前記噴射ノズルからパルス状に噴射される流体噴射装置。
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