JP2013061853A - プロセス監視・診断・支援装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 対象プロセスに依存しない形で、異常時の対策支援情報を提供する。
【解決手段】 実施形態のプロセス監視・診断支援装置は、異常検出手段、異常要因変数分離手段および異常対策支援情報提供手段を備えている。前記異常検出手段は、所定時刻の前記n個のプロセス変数の時系列データ、および定義に従って当該所定時刻の時系列データに対応する異常検出用データを生成し、当該所定時刻のデータの異常の有無を診断する。前記異常要因変数分離手段は、前記診断の結果、異常有りの場合には当該所定時刻の時系列データの寄与量を計算し、前記計算した寄与量および前記第1ルールに基づいて当該所定時刻の時系列データから異常要因候補変数を分離抽出する。前記異常対策支援情報提供手段は、前記分離抽出された異常要因候補変数と、前記相関情報と、前記第2および前記第3ルールとに基づいて、前記対策支援情報を提供する。
【選択図】図1
【解決手段】 実施形態のプロセス監視・診断支援装置は、異常検出手段、異常要因変数分離手段および異常対策支援情報提供手段を備えている。前記異常検出手段は、所定時刻の前記n個のプロセス変数の時系列データ、および定義に従って当該所定時刻の時系列データに対応する異常検出用データを生成し、当該所定時刻のデータの異常の有無を診断する。前記異常要因変数分離手段は、前記診断の結果、異常有りの場合には当該所定時刻の時系列データの寄与量を計算し、前記計算した寄与量および前記第1ルールに基づいて当該所定時刻の時系列データから異常要因候補変数を分離抽出する。前記異常対策支援情報提供手段は、前記分離抽出された異常要因候補変数と、前記相関情報と、前記第2および前記第3ルールとに基づいて、前記対策支援情報を提供する。
【選択図】図1
Description
本発明の実施形態は、下水処理プロセス、排水処理プロセス、汚泥消化プロセス、浄水プロセス、給配水プロセス、化学プロセス、鉄鋼プロセスなどのプロセス系の監視において、異常時などの非定常時にプラントオペレータを支援し得るプロセス監視・診断・支援装置に関する。
下水処理プロセス、汚泥消化プロセス、浄水プロセス、給配水プロセスなどの水処理/水運用プロセスや石油化学プロセス、鉄鋼プロセス、あるいは半導体製造プロセスなどのプロセス系のプラントでは、複数のプロセス状態を測定する複数のオンラインセンサが設置されている。プロセス監視装置(SCADA: Supervisory Control And Data Acquisition)は、通常プロセス系に設置されたセンサ群の計測により得られるプロセスデータ(流量、温度、水質、操作量など)を時系列データ(トレンドグラフ)に変換する。これをプラント管理者(マネージャー)や運転員(オペレータ)が監視することにより、プロセスの状態を把握し、プロセスの運転変更や制御を行っている。各々のプロセスデータの時系列データには、通常、管理限界等と呼ばれる上下限値が設定されており、この管理限界を超えた場合にアラームが発報される。このアラームに基づいてプラントマネージャーやオペレータはプラント運用の確認・見直しを行う。この様なアラーム発報に基づく運転管理はプラント運用の基本である。
さらに一歩進んだプラントの運転管理では、単純なプロセス非定常時の対応だけでなく、プロセスの所定目標性能を達成した上で省エネルギ・省コストに繋がる運用が求められる。ここで所定目標とは、例えば下水処理であれば放流水質規制の遵守などに対応し、浄水処理であれば、浄水中の残留塩素濃度が所定上限以下であることやクリプトスポリジウムに代表される様な病原性微生物が存在しないことなどが所定目標となる。また、化学プロセスや鉄鋼プロセスにおいては、製品(石油精製品や鉄鋼)の品質(例えば純度や強度など)を所定の範囲に維持することが所定目標に対応する。この際、所定目標の未達状態に陥らない様に目標性能に関するプロセスの状態を監視し、所定目標の達成を阻害する様な状態変化や異常状態を素早く検知し事前に対策をとることが運転管理上の重要なポイントとなる。さらに、所定目標達成を制約とした上で省エネ・省コストにつながる運用を行うためには、目標性能や省エネ・省コストに関するプロセス状態を常に良好な状態に保ち、良好な状態から逸脱しそうなプロセス状態変化を素早く検知する必要がある。
このようなプロセスの状態変化や異常を診断する方法として、石油化学プロセスや鉄鋼プラントの分野で利用されてきた「多変量統計解析手法」を用いた多変量統計的プロセス監視(MSPC:Multi-Variate Statistical Process Control)と呼ばれる方法が知られている。
MSPCの中で最も良く利用される手法として、主成分分析(PCA:Principal Component Analysis)と潜在変数射影法/部分最小二乗法(PLS:Projection to Latent Structure/Partial Least Square)が知られている。
MSPCでは、PCAやPLSなどの多変量解析を用いて、(1)プラントの異常兆候の検出(Fault Detection)と、(2)異常要因となるプロセス変数(データ)の推定(Fault Isolation)、を行うことを主な目的としている。
上記(1)については、複数のプロセス変数の相関情報を利用することにより、一つの変数では検出できない軽微な異常の兆候を検出することが可能になる。
上記(2)については、複数のプロセス変数から合成した異常検出用データ(Q統計量やホテリング(Hotelling)のT2統計量と呼ばれる)で異常を検出した後に、この異常検出用データに対する各プロセスデータの寄与度を表す寄与量というものを利用することにより、異常要因の候補となるプロセス変数(データ)を推定する。
この様に、MSPCを用いると、従来の個別のプロセス変数に対する単純な管理限界による監視(生産ライン等の監視では、MPSCと対比してSPC(Statistical Process Control)と呼ばれることもある)と比較して、よりプラントマネージャーやオペレータにとって有用なアドバンストな監視・診断を行うことができる。
一方、プラントマネージャーやオペレータなどユーザ側からは、上記の(1)異常兆候の検出や(2)異常要因変数推定だけでなく、プロセスで何らかの異常が生じた場合に彼らがどういう対策をとれば良いかという対策支援情報に対する更に進んだ強い潜在的なニーズがある。このニーズは、特にプラントオペレータが非熟練の場合に強く、単に「異常の兆候が認められる。」という情報や「異常を示しているプロセス変数は○○と△△である。」という診断情報では不十分であり、「異常兆候が認められ、その要因となる変数は○○と△△であると考えられるので、□□という対策をとることを推奨する。」という形の支援情報を求めている。
このような支援情報のニーズと上記(1)(2)のFDIとの間には大きなギャップがある。その理由は、FDIは「多変量解析などの統計的な手法」を利用して対象プロセスに依存せずにある程度機械的に(≒エンジニアリングを介さずに自動的に)診断を行うことができるのに対し、対策支援情報の提供では一般に対象プロセスに対する知識とそれを用いたエンジニアリングが必要であると考えられている点にある。
対策支援情報を出すための異常原因推定方法は、[1]経験的方法(デシジョンツリー、パターン学習など)、[2]論理的方法(物理モデル、フォルトツリー等利用)、[3]知識工学的方法(エキスパートシステム、ノウハウ抽出)などに分類されることが多いが、いずれの方法を用いる際にも、何らかの形で対象プロセスに関する知識、あるいは対象プロセスを運用しているオペレータの知識などを必要とする。これにより、プロセスの非定常状態(異常状態)の真因究明と対策支援を行おうとすると、対象プロセス毎に診断システムの作りこみを行うための多大なエンジニアリングが必要となる。このような対象プロセスの特徴に依存した開発を必要とすることが、非定常時の対策支援システム開発の進展を妨げる一つの重要な阻害要因となっていると考えられる。
本発明が解決しようとする課題は、対象プロセスに依存しない形で、異常時の対策支援情報を提供し得るプロセス監視・診断・支援装置を提供することである。
実施形態のプロセス監視・診断支援装置は、データ収集保存手段、プロセス変数分類手段、プロセス変数相関定義手段、異常検出用データ定義手段、異常検出用データ寄与量定義手段、異常時対策支援情報定義手段、異常検出手段、異常要因変数分離手段および異常対策支援情報提供手段を備えている。
前記データ収集保存手段は、対象プロセスの状態量又は操作量を計測するn個(但し、n≧2)のセンサから計測結果を示すn個のプロセス変数の時系列データを収集して保存する。
前記プロセス変数分類手段は、前記n個のプロセス変数を、前記状態量であって性能指標を表すp個(但し、1≦p<n)の出力変数Yと、前記操作量を表すL個(但し、1≦L<n)の入力変数Uと、前記状態量であって管理・監視値を表すm個(但し、0≦m<n)の中間変数Zとに分類した結果を示す分類情報を記憶する。
前記プロセス変数相関定義手段は、前記分類情報および前記n個のプロセス変数の所定期間に亘る時系列データから、前記分類した結果を含んで当該n個のプロセス変数相互間の相関を示す相関情報を定義する。
前記異常検出用データ定義手段は、前記n個のプロセス変数の所定期間に亘る時系列データから、前記n個よりも少ないq個(但し、1≦q≪n)の異常検出用データを生成する式と、前記異常検出用データに基づいて異常の有無又は異常強度の判断を行う判断基準とを定義する。
前記異常検出用データ寄与量定義手段は、前記異常検出用データに対する前記n個のプロセス変数の時系列データの各々の寄与量を定義する。
前記異常時対策支援情報定義手段は、異常時の異常要因候補となるプロセス変数である異常要因候補変数のうちの所定の上位の異常要因候補変数を抽出する第1ルールと、前記抽出した異常要因候補変数を前記相関情報に基づいて前記出力変数Yと前記入力変数Uと前記中間変数Zとに分類する第2ルールと、当該分類した結果に応じて異常時の対策を支援するメッセージを含む対策支援情報を提供する第3ルールとを定義する。
前記異常検出手段は、前記保存された所定時刻の前記n個のプロセス変数の時系列データ、および前記異常検出用データ定義手段の定義に従って当該所定時刻の時系列データに対応する異常検出用データを生成し、この異常検出用データに基づいて、当該所定時刻のデータの異常の有無を診断する。
前記異常要因変数分離手段は、前記診断の結果、異常有りの場合には前記寄与量の定義に基づいて当該所定時刻の時系列データの寄与量を計算し、前記計算した寄与量および前記第1ルールに基づいて当該所定時刻の時系列データから異常要因候補変数を分離抽出する。
前記異常対策支援情報提供手段は、前記分離抽出された異常要因候補変数と、前記相関情報と、前記第2ルールおよび前記第3ルールとに基づいて、前記対策支援情報を提供する。
以下、図面を参照して各実施形態を説明する。なお、以下のプロセス監視・診断・支援装置は、ハードウェア構成、又はハードウェア資源とソフトウェアとの組合せ構成のいずれでも実施可能となっている。組合せ構成のソフトウェアとしては、予めネットワーク又は記憶媒体からプロセス監視・診断・支援装置となるコンピュータにインストールされ、プロセス監視・診断・支援装置の機能を実現させるためのプログラムが用いられる。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係るプロセス監視・診断・支援装置が適用されたプロセス監視システムの基本的な構成を示す模式図である。
図1は、第1の実施形態に係るプロセス監視・診断・支援装置が適用されたプロセス監視システムの基本的な構成を示す模式図である。
このプロセス監視システムは、例えば、窒素およびリン除去を目的とした下水高度処理プロセス1を対象プロセスとし、当該対象プロセスの状態量又は操作量を計測するn個(但し、n≧2)のセンサから計測結果を示すn個のプロセス変数の時系列データを収集して保存するプロセス計測データ収集・保存部2を含むプロセス監視・診断・支援装置を有している。本実施形態は、その目的から、対象プロセスに依存しないものであるが、実施イメージをより明確にするために、下水処理プロセスを対象として説明する。即ち、下水処理プロセスを対象とした実施は本質的な制約ではない。
下水高度処理プロセス1は、最初沈澱池101、嫌気槽102、無酸素槽103、好気槽104および最終沈澱池105を有する。また、下水高度処理プロセス1は、最初沈澱池余剰汚泥引きぬきポンプおよびその引き抜き流量センサ111、好気槽104に酸素を供給するブロワおよびその供給空気流量センサ112、循環ポンプおよびその循環流量センサ113、返送汚泥ポンプおよびその返送流量センサ114、および最終沈澱池余剰汚泥引きぬきポンプおよびその引き抜き流量センサ115のそれぞれを、アクチュエータおよびその操作量センサとして有する。
さらに、下水高度処理システム1は、雨量センサ121、流入下水量を計測する下水流入量センサ122、流入下水に含まれる全窒素量を計測する流入TNセンサ123、流入下水に含まれる全リン量を計測する流入TPセンサ124、流入下水に含まれる有機物量を計測する流入UVセンサあるいは流入CODセンサ125、嫌気槽102のORPを計測する嫌気槽ORPセンサ126、嫌気槽102のpHを計測する嫌気槽PHセンサ127、無酸素槽103のORPを計測する無酸素槽ORPセンサ128、無酸素槽103のpHを計測する無酸素槽pHセンサ129、好気槽104のリン酸濃度を計測するリン酸センサ1210、好気槽104の溶存酸素濃度を計測するDOセンサ1211、好気槽104のアンモニア濃度を計測するアンモニアセンサ1212、反応槽102〜104の少なくとも1ヶ所の槽で活性汚泥量を計測するMLSSセンサ1213、反応槽102〜104の少なくとも1ヶ所の槽で水温を計測する水温センサ1214、最終沈澱池105から引きぬかれる汚泥量の固形物濃度を計測する余剰汚泥SSセンサ1215、最終沈澱池105から放流される放流水のSS濃度を計測する放流SSセンサ1216、最終沈澱池105の汚泥界面レベルを計測する汚泥界面センサ1217、放流下水量を計測する下水放流量センサ1218、放流下水に含まれる全窒素量を計測する放流TNセンサ1219、放流下水に含まれる全リン量を計測する放流TPセンサ1220、および放流下水に含まれる有機物量を計測する放流UVセンサあるいは放流CODセンサ1221のそれぞれを、プロセスセンサとして有する。
ここで、前述の各種アクチュエータ111〜115は、所定の周期で動作している。また、各種アクチュエータ111〜115の操作量センサ群、および各種プロセスセンサ121〜1221は所定の周期で計測を行っている。
プロセス監視・診断・支援装置は、各種アクチュエータ111〜115の操作量センサ群、および各種プロセスセンサ121〜1221から所定の周期で得られるプロセス変数の時系列データ(プロセスデータ)を収集してメモリに保持するプロセス計測データ収集・保存部2を有する。
さらに、プロセス監視・診断・支援装置は、プロセス変数登録部3、プロセス変数分類ユーザインターフェイス部4、異常診断モデル構築部5、プロセス変数相関定義インターフェイス部6、異常監視・診断・対策支援部7、異常対策記録保持部8およびユーザインターフェイス部9を備えている。
プロセス変数登録部3は、各種アクチュエータ111〜115の操作量センサ群、および各種プロセスセンサ121〜1221で計測している各プロセス変数の中から、本実施形態のプロセス監視・診断・支援装置を構築するために必要なプロセス変数の名称を登録する。
プロセス変数分類ユーザインターフェイス部4は、プロセス変数登録部3で登録されたプロセス変数の一覧を表示し、その中のプロセス変数を入力変数Uと出力変数Yと中間変数Xに分類するためのユーザインターフェイスである。補足すると、プロセス変数分類ユーザインターフェイス部4は、n個のプロセス変数の名称を表示し、この表示中に、ユーザの操作に応じて、プロセス変数分類部51における入力変数と出力変数と中間変数を選択する。
異常診断モデル構築部5は、各種アクチュエータ111〜115の操作量センサ群、および各種プロセスセンサ121〜1221で計測するプロセス変数の中で、プロセス変数登録部3で登録したプロセス変数の過去の時系列データを、プロセス計測データ収集・保存部2でから抽出し、異常診断モデルを構築する。
プロセス変数相関定義インターフェイス部6は、異常診断モデル構築部5で定義されるプロセス変数間の相関情報をユーザに提示し、ユーザがその情報を修正することができるユーザインターフェイスである。
異常監視・診断・対策支援部7は、各種アクチュエータ111〜115の操作量センサ群、および各種プロセスセンサ121〜1221で計測するプロセス変数の中で、プロセス変数登録部3で登録したプロセス変数の現在の時系列データを、プロセス計測データ収集・保存部2から抽出し、異常診断モデル構築部5で定義した機能を用いて異常兆候の検出とその要因変数候補の抽出と異常対策の支援情報を提供する。
異常対策記録保持部8は、異常監視・診断・対策支援部7からの情報に基づいて実際に行った対策結果を保持する。補足すると、異常対策記録保持部8は、異常対策支援情報提供部74により提供された対策支援情報を提示した後、ユーザが行った操作を記録する。ここで、異常対策記録保持部8は、対策支援情報が提供されると、時系列データおよび分類情報に基づいて、現在時刻以前の入力変数Uの値、出力変数Yの値および中間変数Zの値と、当該対策支援情報とを提示する。また、異常対策記録保持部8は、対策支援情報を提示した後、ユーザが行った操作としての入力変数Uの操作記録と、出力変数Yの値と、中間変数Zの値とを継続的に記録する。
ユーザインターフェイス部9は、プロセス変数登録部3とプロセス変数分類ユーザインターフェイス部4とプロセス変数相関定義インターフェイス部6とを含み、異常監視・診断・対策支援部7からの情報をプラントマネージャーやオペレータに通知し、対策支援情報に基づいた対策の指示をプラントに指令信号として送り、さらに異常対策記録保持部8に記録操作の指示を送ることを可能としている。
異常診断モデル構築部5は、プロセス変数分類部51、過去(オフライン)データ抽出部52、プロセス変数相関定義部53、異常検出用データ定義部54、異常検出用データ寄与量定義部55および異常時対策支援情報定義部56を備えている。
プロセス変数分類部51は、図2に示すように、プロセス変数分類ユーザインターフェイス部4の入力に従って、プロセス変数を入力変数と出力変数と中間変数に分類し、その情報を異常対策時に供給する。補足すると、プロセス変数分類部51は、n個のプロセス変数を、状態量であって性能指標を表すp個(但し、1≦p<n)の出力変数Yと、操作量を表すL個(但し、1≦L<n)の入力変数Uと、状態量であって管理・監視値を表すm個(但し、0≦m<n)の中間変数Zとに分類した結果を示す分類情報を記憶する機能をもっている。
過去(オフライン)データ抽出部52は、プロセス計測データ収集・保存部2からプロセス変数登録部3で登録された変数の過去のオフラインデータを抽出する。
プロセス変数相関定義部53は、過去(オフライン)データ抽出部52で抽出されたオフラインデータを用いて、プロセス変数登録部3で定義されたプロセス変数間の相関情報を定義する。補足すると、プロセス変数相関定義部53は、分類情報およびn個のプロセス変数の所定期間に亘る時系列データから、図3〜図6に示すように、当該分類情報が示す分類した結果を含んで当該n個のプロセス変数相互間の相関を示す相関情報を定義する。なお、プロセス変数相関定義部53は、n個のプロセス変数の所定期間に亘る時系列データの相関行列又は主成分負荷行列に基づいて、相関情報を定義してもよい。また、プロセス変数相関定義部53は、n個のプロセス変数相互間の相関の有無あるいは強度を表すn行n列のテーブルを相関情報として備えてもよい。この場合、プロセス変数相関定義インターフェイス部6は、ユーザの操作に応じて、この相関情報のテーブルを表示すると共に、当該テーブルの内容を修正する。
異常検出用データ定義部54は、過去(オフライン)データ抽出部52で抽出されたオフラインデータを用いて、異常検出用データの合成方法を定義する。補足すると、異常検出用データ定義部54は、n個のプロセス変数の所定期間に亘る時系列データから、n個よりも少ないq個(但し、1≦q≪n)の異常検出用データを生成する式と、異常検出用データに基づいて異常の有無又は異常強度の判断を行う判断基準とを定義する。
ここで、異常検出用データ定義部54は、主成分分析(PCA)、潜在変数射影法(PLS)、主成分回帰(PCR)、正準相関解析(CVA)、マハラノビス距離、ロバスト主成分分析(Robust PCA)、カーネル主成分分析(Kernel PCA)、判別分析、ファジィC-meansクラスタリング、K-meansクラスタリング、サポートベクトルマシン(SVM)、リレバンスベクトルマシン(RVM)および部分空間法のうちの少なくとも一つ以上の方法を用いて異常検出用データを生成する式を定義してもよい。
異常検出用データ寄与量定義部55は、異常検出用データ定義部54で定義された異常検出用データに対するプロセス変数登録部3で登録されたプロセス変数の寄与量(n個のプロセス変数の時系列データの各々の寄与量)を定義する。なお、異常検出用データ寄与量定義部55は、n個のプロセス変数の中の着目するプロセス変数kの寄与量(但し、k=1,2,…,n)を、以下の[a]〜[c]のいずれかにより定義してもよい。
[a]異常検出用データ定義部54により定義された異常検出用データからプロセス変数kが張る空間へ射影することによって定義する。
[b]異常検出用データをn個の成分の和に分解し、プロセス変数kのみが影響を与えるk番目の成分として定義する。
[c]独立性成分分析を用いて定義する。
[b]異常検出用データをn個の成分の和に分解し、プロセス変数kのみが影響を与えるk番目の成分として定義する。
[c]独立性成分分析を用いて定義する。
異常時対策支援情報定義部56は、プロセス変数分類部51からの入力変数と出力変数と中間変数の分類情報と、プロセス変数相関定義部53で定義されたプロセス変数間の相関情報と、異常検出用データ寄与量定義部55で定義された寄与量に関する情報から、異常時における対策方法をアドバイスするための支援情報を出すためのルールを定義する。
補足すると、異常時対策支援情報定義部56は、異常時の異常要因候補となるプロセス変数である異常要因候補変数のうちの所定の上位の異常要因候補変数を抽出する第1ルールと、図7に示すように、抽出した異常要因候補変数を相関情報に基づいて出力変数Yと入力変数Uと中間変数Zとに分類する第2ルールと、図8および図9に示すように、当該分類した結果に応じて異常時の対策を支援するメッセージを含む対策支援情報を提供する第3ルールとを定義する。
ここで、第2ルールとしては、抽出された異常要因候補変数を、分類情報に基づいて、入力変数Uに属する入力要因変数FU、出力変数Yに属する出力要因変数FY、中間変数Zに属する中間要因変数FZに分類するルールを含んでもよい。
第3ルールとしては、第4ルールA、第5ルールBおよび第6ルールCを含んでもよい。
第4ルールAは、異常要因候補変数に出力要因変数FYを含む場合には、当該出力要因変数FYが悪化していることを通知すると共に、相関情報により当該出力要因変数FYと相関があると定義された入力変数Uの値を確認し見直す様促すメッセージを含む対策支援情報を提供する旨を規定している。
また、第4ルールAとしては、当該入力変数Uに入力要因変数FUが含まれる場合には、当該入力要因変数FUを重点的に見直す様に促すメッセージを含む対策支援情報を提供する旨を規定することが好ましい。
また、第4ルールAとしては、相関情報により当該出力要因変数FYと相関があると定義された中間変数Z(一般には複数個)を管理し、中間変数Zに中間要因変数FZが含まれる場合には、当該中間要因変数FZの値の管理を正常値に戻す様に促すメッセージを含む対策支援情報を提供する旨を規定することが更に好ましい。
第5ルールBは、異常要因候補変数に出力要因変数FYを含まないが入力要因変数FUを含む場合には、当該入力要因変数FUが通常時から逸脱した異常状態であり、この入力要因変数FUで表される操作量を見直す様促すと共に、相関情報により当該入力要因変数FUと相関があると定義された出力変数Yが今後悪化する可能性があることを通知するメッセージを含む対策支援情報を提供する旨を規定している。
また、第5ルールBとしては、この規定に加え、相関情報により当該入力要因変数FUと相関があると定義された中間変数Zについても今後悪化する可能性があることと、中間変数Zの中に中間要因変数FZが含まれる場合には、この悪化要因が当該入力要因変数FUによって引き起こされた可能性があることとを通知するメッセージを含む対策支援情報を提供する旨を規定することが更に好ましい。
第6ルールCは、異常要因変数が中間要因変数FZのみである場合には、当該中間要因変数FZが悪化していることを通知すると共に、相関情報により当該中間要因変数FZと相関があると定義された出力変数Yが今後悪化する可能性があることを通知するメッセージを含む対策支援情報を提供する旨を規定している。
また、第6ルールCとしては、この規定に加え、相関情報により当該中間要因変数FZと相関があると定義された入力変数Uの値を確認し、操作変更の必要性を検討することを促すメッセージを含む旨を規定することが更に好ましい。
一方、異常監視・診断・対策支援部7は、現在(オンライン)データ抽出部71、異常検出部72、異常要因変数分離部73および異常対策支援情報提供部74を備えている。
現在(オンライン)データ抽出部71は、プロセス計測データ収集・保存部2に保存された各種時系列データの中から、プロセス変数登録部3で登録された変数の現在のオンラインデータを抽出する。
異常検出部72は、現在(オンライン)データ抽出部71で抽出されたオンラインデータを、異常検出用データ定義部54で定義された異常検出用データの演算式に入力して異常検出用データを生成することにより現在の異常度を調べ、予め設定した異常・正常の判断基準に従って、異常の有無を検出する。補足すると、異常検出部72は、保存された所定時刻のn個のプロセス変数の時系列データ、および異常検出用データ定義手段の定義に従って当該所定時刻の時系列データに対応する異常検出用データを生成し、この異常検出用データに基づいて、当該所定時刻のデータの異常の有無を検出(診断)する。
異常要因変数分離部73は、異常検出部72において異常が検出された場合、異常検出用データ寄与量定義部55で定義された各プロセス変数の異常に対する寄与度を計算する。補足すると、異常要因変数分離部73は、異常検出部72による検出(診断)の結果、異常有りの場合には寄与量の定義に基づいて当該所定時刻の時系列データの寄与量を計算し、当該計算した寄与量および異常時対策支援情報定義部56の第1ルールに基づいて当該所定時刻の時系列データから異常要因候補変数を分離抽出する。
異常対策支援情報提供部74は、図10および図11に示すように、異常要因変数分離部73で抽出された所定の上位の異常要因候補となるプロセス変数の情報と、相関情報と、異常時対策支援情報定義部56で定義した第2ルールおよび第3ルールに従って、異常時の対策支援情報をユーザインターフェイス部9を通してオペレータに提供する。
次に、以上のように構成されたプロセス監視システムの作用を説明する。
まず、下水高度処理プロセス1では、各種アクチュエータ111〜115の操作量センサ群、および各種プロセスセンサ121〜1221によって、所定の周期でプロセスの情報が計測されている。これらの計測情報は、プロセス計測データ収集・保存部2によって、予め決められたフォーマットに従って、時系列データとして保存されている。
プロセス監視・診断・支援装置を構築する際、まず、プロセス変数登録部3では、プロセス計測データ収集・保存部2に保存されており、各種アクチュエータ111〜115の操作量センサ群、および各種プロセスセンサ121〜1221で計測されている項目の中で、どの変数をプロセス監視・診断・支援装置を構成する際に利用するかを定義する。
例えば、好気槽104に酸素を供給するブロワおよびその供給空気流量センサ112に対応する“[1]空気供給量”、循環ポンプおよびその循環流量センサ113に対応する“[2]循環流量”、返送汚泥ポンプおよびその返送流量センサ114に対応する“[3]返送流量”、最終沈澱池余剰汚泥引きぬきポンプおよびその引き抜き流量センサ115に対応する“[4]余剰流量”、雨量センサ121に対応する“[5]雨量”、流入下水量を計測する下水流入量センサ122に対応する“[6]下水流入量”、流入下水に含まれる全窒素量を計測する流入TNセンサ123に対応する“[7]流入TN”、流入下水に含まれる全リン量を計測する流入TPセンサ124に対応する“[8]流入TP”、流入下水に含まれる有機物量を計測する流入UVセンサあるいは流入CODセンサ125に対応する“[9]流入UV”、嫌気槽102のORPを計測する嫌気槽ORPセンサ126に対応する“[10]嫌気槽ORP”、嫌気槽102のpHを計測する嫌気槽PHセンサ127に対応する“[11]嫌気槽pH”、無酸素槽103のORPを計測する無酸素槽ORPセンサ128に対応する“[12]無酸素槽ORP”、無酸素槽103のpHを計測する無酸素槽pHセンサ129に対応する“[13]無酸素槽pH”、好気槽104のリン酸濃度を計測するリン酸センサ1210に対応する“[14]好気PO4−P”、好気槽104の溶存酸素濃度を計測するDOセンサ1211に対応する“[15]好気槽DO”、好気槽104のアンモニア濃度を計測するアンモニアセンサ1212に対応する“[16]好気槽NH4−N”、反応槽102〜104の少なくとも1ヶ所の槽で活性汚泥量を計測するMLSSセンサ1213に対応する“[17]好気槽MLSS”、反応槽102〜104の少なくとも1ヶ所の槽で水温を計測する水温センサ1214に対応する“[18]反応槽水温”、放流下水に含まれる全窒素量を計測する放流TNセンサ1219に対応する“[19]放流TN”、放流下水に含まれる全リン量を計測する放流TPセンサ1220に対応する“[20]放流TP”を利用する変数として登録する。この登録をユーザが容易に実施できるように監視画面上などのGUIとして登録画面を構築しておくことが好ましい。
このようなプロセス変数を登録する機能が、プロセス変数登録部3の作用である。
次にプロセス変数分類ユーザインターフェイス部4では、図2に示す様な登録されたプロセス変数の一覧表を監視画面上のGUIとして表示し、その中で、入力変数と出力変数と中間変数を選択できるようにしておく。図2では、入力変数、出力変数、中間変数の欄に○を付けて示しているが、実際の監視画面(GUI)構築時には、チェックボックスの様なものでチェックするようにしておく。また、デフォルト状態を中間変数としておいて、その中から、入力変数と出力変数だけを選択できるようにしておく方がチェックする労力を省略でき、効率的である。このようなGUIが請求項2に対応するプロセス分類ユーザインターフェイスの例であり、プロセス変数分類ユーザインターフェイス部4の作用の例である。
次に、プロセス変数分類部51では、プロセス変数登録部3で登録された変数をプロセス変数分類ユーザインターフェイス部4でチェックした基準に従って、登録したプロセス変数を、プロセスの操作量を表す入力変数と、プロセスの性能指標を表す出力変数と、プロセスの管理値などに対応する中間変数の3つに分類する。
上記の例の場合は例えば下記の様に分類する。
入力変数:[1]空気供給量、[2]循環流量、[3]返送流量、[4]余剰流量。
出力変数:[19]放流TN、[20]放流TP。
中間変数:[5]雨量、[6]下水流入量、[7]流入TN、[8]流入TP、[9]流入UV、[10]、嫌気槽ORP、[11]嫌気槽pH、[12]無酸素槽ORP、[13]無酸素槽pH、[14]好気槽PO4−P、[15]好気槽DO、[16]好気槽NH4−N、[17]好気槽MLSS、[18]反応槽水温。
入力変数は、ブロワ(送風機)やポンプを操作させることによって直接変化させることのできる変数であり、このようなもの以外には、薬品類の注入量や下水処理プロセスに水をくみ上げる揚水量(揚水ポンプ)なども入力変数となり得る。
出力変数は、下水処理の直接的な目的が放流水質を規制値範囲内に維持することであるので、上記の様な放流水質が出力変数となる。上記以外にも監視すべき放流水質があれば、それも出力変数となり得る。さらに、放流水質に放流水量を掛けた放流水質負荷量なども出力変数となり得る。さらには、電力量などを監視している場合には消費電力量やそれを処理量で割ったエネルギ原単位なども出力変数となり得る。
中間変数は、上記に示した通り、プロセスの状態やプロセスへの入力される外乱要素を表すものであり、上記の様な直接的な管理・監視値だけでなく、これらを用いて変換される管理値を中間変数として定義してもよい。典型的な例としては、HRT(水理学的滞留時間)、SRT(汚泥滞留時間)、A−SRT(好気槽汚泥滞留時間)、あるいはBOS−SS負荷、など下水処理プロセス特有の管理値である。これらの値を予め計算する式を組み込むことにより、これらを中間変数として含めても良い。
なお、中間変数と出力変数の分類の客観的な基準はなくやや主観的であるが、このプロセス監視・診断・支援装置を構築する当事者の判断で、適宜定義してよい。
これが、プロセス変数分類部51の作用である。
次に、過去(オフライン)データ抽出部52では、プロセス計測データ収集・保存部2に保存されている過去のプロセスデータの中から、プロセス変数登録部3で登録された変数の所定の期間にわたる過去のデータを抽出する。この際、「所定の期間」はユーザが適宜選択しやすいように、プロセス変数登録部3と共に監視画面上などのGUIとして実装しておくことが好ましい。以下、ここで抽出した過去の時系列データをXと記載することにする。このXは行方向に変数(上記の場合[1]〜[20]の変数)、列方向に上記で定義した「所定の期間」にわたる時系列サンプル(時系列データ)を持つ行列であり、以下、説明に際しては変数の数をn、時系列データ数をmとする。従って、Xはm×nの時系列データである。これが、過去(オフライン)データ抽出部52の作用である。
次に、プロセス変数相関定義部53では、過去(オフライン)データ抽出部52で抽出したXから欠測データやアウトライアの除去や、物理的な次元の異なる複数の監視項目(監視モデル構成変数)の正規化(=平均値を引いて分散で割る)などを適切に行った上でXの相関行列を求める。この際、必要に応じてデシメーション(時系列サンプルを所定の周期で間引くこと)なども行っても良く、この場合は時系列データ数mが変化することになるが、以下では、このように適切に処理されたデータを改めてXと記述する。Xの相関行列は、各変数が正規化されている場合には分散共分散行列と一致し、単純に以下の式で計算できる。
相関行列 S=XT X (1)
(1)式はプロセス変数の数n×nの行列を表し、その各要素は−1から1までの相関係数を表す実数となる。また相関係数の定義より、対角要素は全て1(自分自身との相関係数は1)な対称行列(aとbの相関とbとaの相関は同じ)となる。この(1)式の相関係数に対して適当な基準を設けて、相関の有無や強度を定義しておく。最も単純な定義は、相関の有無を基準とするものであり、例えば、図3に示すように、相関判定ルール(例1)を定義できる。
(1)式はプロセス変数の数n×nの行列を表し、その各要素は−1から1までの相関係数を表す実数となる。また相関係数の定義より、対角要素は全て1(自分自身との相関係数は1)な対称行列(aとbの相関とbとaの相関は同じ)となる。この(1)式の相関係数に対して適当な基準を設けて、相関の有無や強度を定義しておく。最も単純な定義は、相関の有無を基準とするものであり、例えば、図3に示すように、相関判定ルール(例1)を定義できる。
ここで、Thは相関の有無を判断する基準で、例えば、Th=0.5やTh=0.7(Th2≒0.5)などとすれば良い。また、相関有=1、相関無=0や相関有=○、相関無=×という様に適当な表現形式を用いる。また、SSは、相関の有無を表す行列であり、これがプロセス変数相関定義部53で定義される行列の例である。
他の例としては、相関の強度を何段階かにわけて判断するものであり、例えば、3段階に分ける場合には、図4に示すように、相関判定ルール(例2)を設定してもよい。
ここで、Th1とTh2は、0<Th2<Th1<1を満たす閾値であり、例えばTh1=0.7、Th2=0.5などとして設定すれば良い。また、強相関=2、弱相関=1、相関無=0や強相関=◎、弱相関=○、相関無=×という様に適当な表現形式を用いることができる。
さらに、単純に各変数同士の相関という観点からだけでなく、後述する主成分分析のローディング行列を用いて各変数間の関係の有無(あるいは強さ)を定義することもできる。全変数を考慮したサイズn×n主成分ローディングをPaとし、そのk行j列をPa(k,j)と記載することにする。
Pa(k,j)は、ローディング行列Paが正規直交行列になるという性質から、その要素は−1から1までの範囲の値をとり、また、Paのk行で定義される第i主成分(以下、Pa(k,:)と記述)の2乗和Σ_{j=1}^{15}Pa(k,j)2は、1となる。これは、Pa(k,j)2の平均値が1/nであることを意味する。この性質を利用すると、各々の変数の関係の有無を図5に示すような相関判定ルール(例3)で決定することができる。
上記では、主成分ローディング行列(主成分負荷行列)の第k行に示される第k主成分の平均値よりも大きいもの同士は互いに関連しているという基準で関係性を規定しているものである。もちろん、平均値1/nを適宜修正して異なる閾値とすることもできるし、相関判定ルールの例2の様に複数の閾値で関係の強さを定義することもできる。
この様にしてプロセス変数間の関係(あるいは相関)の強さを定義した例を図6に示す。プロセス変数相関定義部53では、何らかの機械的な手段で結果的に図6に示す様にプロセス変数間の相関が定義される。この際、注意すべきことは、プロセス変数分類部51で分類した入力変数と中間変数と出力変数を図6に示すように分類して保持しておくことであり、このことが後述の異常時対策支援を行う際のポイントとなる。
上記の実施形態は、請求項5に対応するプロセス変数定義手段の例となっている。以上がプロセス変数相関定義部53の作用である。
この際、図6に示す様なプロセス変数間の相関を表す表が監視画面上のGUIを通してユーザに提示されていることが望ましい。この場合、プロセス変数相関定義インターフェイス部6によって、この表の中の相関の有無や強さをユーザが適宜書き換えられる様にしておく。そうすると、上記の様に機械的に決定された相関関係に対して、ユーザが疑問を感じて適宜修正したい場合に、容易にユーザの要求をシステムの中に反映させることができる。この際、予めユーザに相関の有無を定義することを要求するのではなく、あくまでも機械的に定義された相関に対してユーザがカスタマイズしたい場合に、それを可能にするように構成されている点が本実施形態のポイントである。
この作用が請求項6に対応するユーザインターフェイスの例であり、プロセス変数相関定義インターフェイス部6の作用例である。
次に、異常検出用データ定義部54では、多変量解析や機械学習の様々な方法を過去(オフライン)データ抽出部52で抽出したXに適用することによって、少数の異常検出用データを生成する。ここで重要なことはこの異常検出用データがXから生成されており、従ってn個のプロセス変数の情報を含んでいることと、異常検出用データがnよりもずっと少ない1〜2個程度の少数になっていることである。
このような方法として、プロセス診断技術として良く使われている方法は、MSPC(多変量統計的プロセス管理)と呼ばれ、通常主成分分析(PCA)や潜在変数射影法(PLS)を利用してQ統計量やT2統計量と呼ばれる異常検出用データを合成している。
PCAはn個全ての変数を同等の変数として扱うのに対し、PLSはn個の変数を入力変数と出力変数に分離して扱う点が異なっている。
本実施形態では、プロセス変数を入力変数と出力変数と中間変数に分類しているが、これは、診断後の異常対策支援に用いるために分類しているものであり、この分類とは関係なくPCAあるいはPLSのいずれの方法を用いることもできる。PCAを適用する場合には、既に定義した入力変数と出力変数と中間変数を全く区別することなく適用すれば良い。PLSを用いる場合には、分類済の中間変数を入力変数か出力変数に再度振り分けることによって適用する。PLSの代わりに、PCAと重回帰分析を組み合わせたPCRを利用することもできる。その他にも、複数のプロセス変数が繰り返し異なる場所で計測されている場合などには、正準相関解析(CVA)を用いることもできる。このような例としては、例えば、水温、pH、導電率、硝酸、濁度、という5つの変数が水処理プロセスの複数の箇所で繰り返し測定されている様な場合が挙げられる。
また、データの中にアウトライアなどが多量に含まれることが想定される場合には、例えば非特許文献1「Mia Hubert , Peter J. Rousseeuw , Karlien V , “ROBPCA: a New Approach to Robust Principal Component Analysis (2005) ”Technometrics」および非特許文献2「C Croux, A Ruiz-Gazen 、High breakdown estimators for principal components: the projection-pursuit approach revisited ,Journal of Multivariate Analysis」などのアウトライアに対するロバスト性を考慮した様々なロバストPCAアルゴリズムを用いてもよい。あるいは、これを拡張してロバストPLSとして用いても良い。
さらに、データ間に強い非線形の相関が想定される様な場合には、例えば、非特許文献3「K.-R. Muller, S. Mika, G. Ratsch, K. Tsuda, and B. Scholkopf, An introduction to kernel-based learning algorithms. IEEE Trans. Pattern Anal. Machine Intell. ,12(2):181.201, March 2001.」および非特許文献4「B. Scholkopf, A.J. Smola, and K.-R. Muller, Nonlinear component analysis as a kernel eigenvalue problem. Neural Computation, 10(5):1299.1319, 1998.」などに記載されているカーネルPCAなどの非線形性を考慮したPCAやこれを拡張してカーネルPLSとして用いても良い。さらに、非線形性とアウトライアの問題が両方存在している場合には、ロバストPCAとカーネルPCAを組み合わせた方法を用いることも可能である。
また、MSPCと類似の技術として、品質工学の分野で用いられるタグチ法などマハラノビス距離を用いて検出用データを生成することもできる。なお、マハラノビス距離を用いた検出用データは後述するPCAを用いたホテリングのT2統計量と本質的に同等のものであり、PCAを用いた方法では、PCAにより次元を低次元に落としている点が異なる。ただし、マハラノビス距離を用いた方法でも数値的安定化のために低次元化する場合があるので、本質的にはT2統計量とほぼ同一のものである。
また、異常検出をあるデータを正常クラスと異常クラスに識別する2クラスのクラスタリング問題としてとらえることにより、機械学習の分野で利用される各種のクラスタリングの技術を用いることができる。このようなものとして、判別分析、K-meansクラスタリング、ファジィC-meansクラスタリングの様なクラスタリングを用いてもよいし、サポートベクトルマシン(SVM)やベイズ推論を利用したリレバンスベクトルマシン(RVM)を2クラスのクラスタリングとして適用しても良い。これらのクラスタリングを利用する場合には、異常検出用データを適切に定義する必要があるが、最も単純な方法として、クラスタリングによって分離した正常クラスの中心からの距離を異常検出用データとして定義することができる。
その他の機械学習分野の技術としては、画像認識の分野で良く用いられる部分空間法の技術を適用することもできる。この際、部分空間法で定義される「類似度」という概念を異常検出用データとして用いることができる。すなわち、正常データと類似度が遠いデータを異常データとして定義して利用することができる。ただし、類似度の概念は、後述するPCAによるQ統計量というものと非常に近い概念であり、Q統計量が診断対象のあるデータから低次元の空間への距離を示す「異常度」を表すのに対し、類似度は、診断対象のあるデータを低次元空間への射影した量であり、あるデータが低次元空間とどの程度近いかを表す「正常度」となっている。これらは、互いに直交する補空間の量となっており、互いに変換可能であるので、原理的にはほぼ同じことである。
その他にも、上記の手法を様々な形で組み合わせて異常検出用データを合成することができる。例えば、PCAと重回帰分析を組み合わせたPCRの重回帰分析の部分をサポートベクトルマシンを回帰分析に拡張したサポートベクトル回帰(SVR)に置換する、もしくは回帰問題に適用したRVMに置換するなどの組み合わせを行ってもよい。
いずれにしろ、異常検出用データ定義部54では、少数の異常検出用データがXから生成されていることが重要であり、その方法としては、どのような方法を用いても良い。
Ta∈Rm×nは、m個のサンプル(あるいは時系列データ)と、n個の主成分数からなるスコア行列と呼ばれる行列であり、Pa∈Rn×nは、n個の構成変数と、n個の主成分との関係を示すローディング行列と呼ばれる行列である。T∈Rm×pは、p≪n個の主成分で打ち切ったTaの部分行列であり通常はスコア行列と呼んでいる。同様に、P∈Rn×pは、n個の変量に対してp≪n個で打ち切った主成分との関係を表すPaの部分行列であり、通常はこのPをローディング行列と呼んでいる。また、E∈Rm×nはm個のサンプル(あるいは時系列データ)とn個の変量からなる誤差行列であり、p≪nで主成分を打ち切った場合の誤差を表す。
以下では、TaとT、PaとPを明確に区別し、TaとPaを各々スコア行列、ローディング行列と呼び、TとPをそれぞれ主要スコア行列、主要ローディング行列と呼ぶことにする。これらを用いて異常検出用データとして以下のQ統計量とホテリング(Hotelling)のT2統計量を定義する。
Q統計量:
Q(x(t))=xT(t)(I−PPT)x(t) (3)
ホテリングのT2統計量:
T2(x(t))=xT(t)PTΛ-1Px(t) (4)
ここで、Λは主成分の分散を対角要素として持つ行列であり、分散を正規化していることを意味する。また、Iは適当なサイズの単位行列である。また、x(t)は、行列Xのt番目の要素である。後述する異常監視・診断の際には、このx(t)がオンラインで計測されてくるプロセスデータに置き換わって計算される。(3)式と(4)式が、異常検出用データ定義部54で定義される異常検出用データの例であり、ここでは、2つの異常検出用データを用いることになる。
Q(x(t))=xT(t)(I−PPT)x(t) (3)
ホテリングのT2統計量:
T2(x(t))=xT(t)PTΛ-1Px(t) (4)
ここで、Λは主成分の分散を対角要素として持つ行列であり、分散を正規化していることを意味する。また、Iは適当なサイズの単位行列である。また、x(t)は、行列Xのt番目の要素である。後述する異常監視・診断の際には、このx(t)がオンラインで計測されてくるプロセスデータに置き換わって計算される。(3)式と(4)式が、異常検出用データ定義部54で定義される異常検出用データの例であり、ここでは、2つの異常検出用データを用いることになる。
さらに、これらの統計量に対して異常と正常を識別する判断基準としてのしきい値を設定しておく。このしきい値の設定値は状態変化や異常兆候の検出に大きく関わるため、その設定方法は重要であるが、本実施形態のアイデアとは関係しないため、典型的な設定方法のみを記載しておく。
もし、過去のオフラインデータに対して何ら事前情報が無い場合には、デフォルトの設定法として、Q統計量の統計的信頼限界値とホテリングのT2統計量に関する統計的信頼限界値を用いることができる(非特許文献5:C.Rosen “Monitoring Wastewater Treatment Systems", Lic.Thesis, Dept. of Industrial Electrical Engineering and Automation, Lund University, Lund, Sweden (1998))。
ここで、pはモデルの中に残された変数の数である。cαは、信頼区間の限界が1−αである場合の標準正規分布の標準偏差のずれ(例:α=0.01の場合、2.53,α=0.05の場合、1.96)である。また、λiはΛの対角要素である(つまり、Θiは、誤差項に含まれる各成分のi乗和である。)。
ここで、pは選択した(=モデルの中に残された)変数の数であり、mは全変数の数である。F(p, m−p, α)は、自由度が(p, m−p)であり、信頼限界をα(=0.01あるいは0.05とすることが多い)とした場合のF分布である。
以上が、異常検出用データ定義部54の作用の例であり、請求項3に対応するものである。
次に、異常検出用データ寄与量定義部55では、(3)式や(4)式で定義された統計量(異常検出用データ)に対する各診断モデルの入力変数の寄与量の定義式を設定する。
寄与量の定義方法も複数あるが、例えば、以下の様に定義することができる。
Q統計量の寄与量:
Qcont(n,t)=xT(t,n)F(:,n)TF(:,n)x(t,n) (7)
F=(I−PPT)
ホテリングのT2統計量の寄与量:
T2cont(n,t)=xT(t)PTΛ-1P(:,n)x(t,n) (8)
ここで、nはn番目変数という意味であり、tはある時刻を表す変数である。(7)式と(8)式を用いると、プロセス変数各々が異常検出用データの値に対してどの程度寄与しているかを計算することができる。(7)式はQ統計量のn番目のプロセス変数の軸への射影になっており、(8)式は単純な射影ではないが、T2統計量をn個の各変数成分の和に巧みに分解したものになっている。
Qcont(n,t)=xT(t,n)F(:,n)TF(:,n)x(t,n) (7)
F=(I−PPT)
ホテリングのT2統計量の寄与量:
T2cont(n,t)=xT(t)PTΛ-1P(:,n)x(t,n) (8)
ここで、nはn番目変数という意味であり、tはある時刻を表す変数である。(7)式と(8)式を用いると、プロセス変数各々が異常検出用データの値に対してどの程度寄与しているかを計算することができる。(7)式はQ統計量のn番目のプロセス変数の軸への射影になっており、(8)式は単純な射影ではないが、T2統計量をn個の各変数成分の和に巧みに分解したものになっている。
異常検出用データとして、Q統計量やT2統計量でないものを用いる場合には、(7)式や(8)式に類似する考え方で寄与量を適切に定義する必要がある。
品質工学で用いられるマハラノビス距離を用いる場合には、タグチ法で用いられている感度解析的な方法を用いて寄与量を定義することができる。
クラスタリング手法を適用する場合には、前述のとおり異常検出用データを正常クラスの中心からの距離として定義しておけば、この距離に対する各プロセス変数が貢献する成分を寄与量として定義することができる。例えば、ユークリッド距離で定義する場合には、正常クラスの中心から診断データまでの距離をDとすると、D2=D1 2+D2 2+D3 2+…+Dn 2、Di 2、i=1,2,…,nは診断データの各成分の距離、と分解して、Di 2を寄与量として定義することができる。
その他には、異常検出後に独立性成分分析(ICA)を利用してどのデータが異常を引き起こしている可能性が高いかを分析し、寄与量を陽に定義しなくても結果的にいくつかの異常要因候補となるプロセス変数を抽出できるようにしておいても良い。
どのような方法を用いるにせよ、異常検出用データ寄与量定義部55では、ある診断データに対して、異常検出用データ定義部54で定義した方法に従って計算されたその診断データの異常検出用データを入力すれば、どのプロセス変数が異常要因となる可能性が高いかを順位づけして出力できるような仕組みを有している必要があり、それが実現できればどのような方法であってもかまわない。
上記の作用が請求項4に対応するものであり、異常検出用データ寄与量定義部55の作用例である。
次に異常時対策支援情報定義部56では、異常検出用データ寄与量定義部55の出力として供給される異常要因の可能性が高い順に順位づけされたプロセス変数の情報と、プロセス変数相関定義部53からの情報に基づいて異常対策の支援となる情報を提供するためのルールを構築しておく。
はじめに、順位づけされた異常要因の候補変数の中から、ある所定のルールに従って上位の要因候補を抽出する。最も単純なルールは、上位数個(例えば3個)の異常要因候補を上位要因候補として抽出するルールとしておく。この方法では、異常要因候補の順位情報だけを用いており、どの程度異常度が強いかということが考慮されていないので、異常度の高いものを抽出するようにする方法の方がより好ましい。例えば、寄与量の平均値μと標準偏差σを計算しておき、平均μからの距離がkσ(例えばk=3)を超える変数を異常要因候補とするなどのルールを設定しておけば良い。この際μとσは異常検出時の診断対象データに対して計算してもよいし、ある所定の期間の寄与量データから予め計算しておいてもよい。前者の場合には、異常データを必ず含む(∵異常検出時だから)ため、いくつかのデータを捨てて計算するトリム平均やトリム分散などの何らかのロバスト化処理を施しておくことが好ましい。また、上記2つを組み合わせて異常度の高いものの中から最大3個までを候補として挙げるというルールにしておいてもかまわない。いずれにしろ、まずいくつかの上位異常要因候補を抽出することが異常時対策支援情報定義部56で定義する1番目のルールである。
次に抽出された異常要因候補変数を図6に示す入力変数と出力変数と中間変数に分類するというルールを設定する。例えば、1番目のルールで上位3つの変数を抽出するという定義を採用した場合、この3つの変数が入力変数と出力変数と中間変数のどれに属するかを図6の表と対応させることにより分類する。これは、容易に実現でき、異常要因候補変数(ベクトル)をFX、この中の入力変数(ベクトル)をFU、中間変数(ベクトル)をFZ、出力変数(ベクトル)をFYとすると、単純に図7に示す如き、異常要因候補分類ルールを適用すればよい。
ここで、[ ]は空ベクトル、[A B]はベクトルAとベクトルBをつなげたベクトルを表す。
このように2つ目のルールでは、異常要因候補変数FXを入力変数FU、出力変数FY、中間変数FZに分類する。
次に、これらの入力変数FU、出力変数FY、中間変数FZを用いて対策を支援する情報を提供するためのテンプレートを作成する。これが3つめのルールである。ここでのポイントは、入力変数FU、出力変数FY、中間変数FZを図6の相関行列と対応させて、支援メッセージを出す仕組みを持つことであり、特に、オペレータがどのような対策をすればよいかという支援メッセージを組み込むことである。オペレータにとっては、異常時に今自分がどのような操作を行うべきなのかという情報と、オペレータが重要視している性能指標がどのような状態でありどのように変化する可能性があるのか、という情報が重要な情報であると考えられるため、例えば、図8および図9に示すような異常対策支援メッセージ生成ルールのテンプレートを作成する。
このようなメッセージテンプレートは、対象プラントに関する特別な知識を全く必要とせず、単にプロセス変数を入力変数と出力変数と中間変数に分類するということと、各プロセス変数間の関係の有無を表すテーブルを用いるだけで作成できることがポイントである。また、前述した通り、プロセス変数間の関係の有無を表すテーブル作成も相関行列や主成分ローディング行列などから自動的に生成できる。従って、このようなメッセージテンプレートを作っておけば、このテンプレートに従って、異常時の対策支援情報を自動的に提供できることになる。
以上の実施形態が請求項7に対応するものであり、異常時対策支援情報定義部56の作用例である。
上記の手順に従って、異常診断モデル構築部5での異常監視・診断・対策支援モデルの構築が完了する。次に、異常監視・診断・対策支援部7では、異常診断モデル構築部5で構築した異常監視・診断・対策支援モデルを供給してもらい、このモデルを用いて異常の検出・要因変数推定および対策支援情報の提供を行う。
まずプロセス計測データ収集・保存部2で収集している診断を行いたい時点(以下現時点あるいは現在という)のオンラインデータを現在データ(オンラインデータ)抽出部71で抽出する。この現在(オンライン)データ抽出部71で抽出した現在データを用いて、異常監視・診断・対策支援部7ではプロセス状態の監視を行い、状態に変化があったり異常の兆候が認められた場合にはそれを検出する。
次に異常検出部72では、まず、プロセス変数登録部3で登録した変数に対応する現時点のデータを取り出し、各変数の平均や分散などを用いて適当に正規化しておく。また、必要に応じて、アウトライアの除去を行っておく。そして、(3)式と(4)式で定義したQ統計量とT2統計量のX(t)に代入することによって現時点のQ統計量とT2統計量を監視する。この統計量は時間の経過と共に時々刻々と変化するので、時系列グラフ(トレンドグラフ)の様な形で監視してもよい。そして、現時点のQ統計量あるいはT2統計量が(5)式と(6)式で定義したしきい値を超えた場合に、プロセスに状態変化が生じたと判断する。これが、異常検出部72の作用例である。
次に、異常要因変数分離部73では、異常検出部72でプロセスの異常を検出した場合、その時刻における異常検出用データ、すなわち、その時刻の(3)式と(4)式のQ統計量とT2統計量を入力し、(7)式と(8)式の寄与量を計算する。そして、各プロセス変数について、どの変数の寄与量が大きいかを順位づけておく。これが異常要因変数分離部73の作用の例である。
異常検出部72の作用と異常要因変数分離部73の作用は、通常のPCAを用いたMSPCの作用そのものである。
次に、異常対策支援情報提供部74では、異常要因変数分離部73で順位づけられたプロセス変数のデータと異常時対策支援情報定義部56で定義された異常時の対策支援メッセージテンプレートを用いた異常時の対策支援情報を提供する。
具体的な実施イメージを示すため、図10を用いて、簡単化した場合のメッセージが生成される作用を述べる。図10においては、説明を簡単にするため、図6のプロセス変数相関図を簡単化したものを用いている。
まず、上位の異常要因候補FXとして、放流TPと風量と溶存酸素濃度DOが抽出されたとする。放流TPは出力変数FYに分類され、風量は入力変数FUに分類され、溶存酸素濃度DOは中間変数FZに分類される。すると、異常時対策支援情報定義部56で定義された異常時の対策支援メッセージテンプレートを用いて図11に示すように、対策支援メッセージが生成される。
本実施形態では、異常要因候補変数FXが出力変数FY、中間変数FZ、入力変数FUに一つずつ分類され、かつそれらが全て関連している最も簡単な例を示したが、そうでない場合にも、異常時対策支援情報定義部56で定義された異常時の対策支援メッセージテンプレートに従って、支援メッセージが自動的にユーザインターフェイス部9を通してオペレータなどのユーザに提供される。このようなメッセージを提供する作用が異常対策支援情報提供部74の実施形態の作用である。これにより、異常監視・診断・対策支援部7の作用が完了する。
次に、異常対策支援情報を提供されたユーザは、支援情報に基づいて何らかの操作を行うが、その操作記録などの対策記録を保存しておくとさらに好ましい。これが異常対策記録保持部8の作用である。例えば、上記メッセージに従って、風量を調整した場合、風量と調整したという記録を自動的に保存する。さらに、オペレータが入力できるような欄をユーザインターフェイス部9上に設け、風量をどのように調整し、その結果放流TPの改善がどの程度認められたのかの記録や風量を調整したことに伴う弊害(副作用)等の記録を記録できるようにしておく。この異常対策記録保持部8では、どの操作量が調整されたかという記録と、どの性能指標の対策であったかの記録と、どの管理項目の対策であったかの記録を残せるようにしておき、操作量や性能指標や管理項目で検索を掛けられる様な機能を持つとなお好ましい。また、オペレータの記録に対してキーワードで検索できる機能を持っているとなお良い。これが、異常対策記録保持部8の実施形態の作用例である。
また、この機能がついている場合、異常対策支援情報提供部74では、この機能に対して自動検索をかけ、ある操作量や性能指標や管理指標の過去の記録一覧を表示できるようにしておけるとよい。例えば、放流リン濃度時の過去の異常対策リスト、風量異常時の過去の異常対策リスト、溶存酸素濃度DO異常時の過去の異常対策リストの一覧が提示できるようになっているとなお良い。これが、請求項8に対応する作用例である。
以上によって、異常の監視・診断・対策支援の作用が完了する。
上述したように本実施形態によれば、プロセス監視・診断・支援装置が異常診断モデル構築部5および異常監視・診断・対策支援部7を備えた構成により、対象プロセスに依存しない形で、異常時の対策支援情報を提供することができる。
補足すると、今までの監視・診断手法では、異常兆候の検出と要因変数の分離だけしか行えない、あるいは、対策支援情報を提供しようとすると多大なエンジニアリングを要していたのに対し、本実施形態の手法を用いると、殆どエンジニアリングを発生させることなく、異常検出・要因変数分離に加えて異常時の対策支援情報をほぼ機械的に提供することができる。
すなわち、本実施形態によれば、診断システムに入力するプロセス変数を定義し、このプロセス変数を入力変数と出力変数と中間変数に分類すること以外のエンジニアリングをほとんど介在させずに、SCADAなどで収集されているプラントの監視データのみから機械的(≒エンジニアリングを介在させず自動的に)にデータ処理を通すだけの処理により、対象プロセスに依存しない形で、プロセスの異常時・非定常時にプラントオペレータやプラントマネージャー等のユーザに対して対策支援情報を提供することができる。
また、n個のプロセス変数の名称を表示し、この表示中に、ユーザの操作に応じて、プロセス変数分類部51における入力変数と出力変数と中間変数を選択するプロセス変数分類ユーザインタフェイス部4を備えた場合に、プロセス変数の分類をユーザがGUI上で容易に実施することができる。
さらに、異常検出用データ定義部54としては、主成分分析(PCA)、潜在変数射影法(PLS)、主成分回帰(PCR)、正準相関解析(CVA)、マハラノビス距離、ロバスト主成分分析(Robust PCA)、カーネル主成分分析(Kernel PCA)、判別分析、ファジィC-meansクラスタリング、K-meansクラスタリング、サポートベクトルマシン(SVM)、リレバンスベクトルマシン(RVM)および部分空間法のうちの少なくとも一つ以上の方法を用いて異常検出用データを生成する式を定義する場合に、対象プロセスに依存しない形で、非定常時の対策支援情報を提供する旨の前述した効果を、既存の多変量解析や機械学習の技術を援用して、システマティックに提供することができる。また、対象プロセスに関連する知識を必要としない統計的なFDI手法であるMSPCをベースとして、プロセスの非定常時・異常時に、オペレータやマネージャーに対してどのような対策をとればよいかを示す具体的な対策支援情報を提供することができる。
また、異常検出用データ寄与量定義部55としては、n個のプロセス変数の中の着目するプロセス変数kの寄与量(但し、k=1,2,…,n)を、[a]異常検出用データ定義部54により定義された異常検出用データから当該プロセス変数kが張る空間へ射影することによって定義するか、[b]異常検出用データをn個の成分の和に分解し、当該プロセス変数kのみが影響を与えるk番目の成分として定義するか、又は[c]独立性成分分析を用いて定義する場合に、対象プロセスに依存しない形で、非定常時の対策支援情報を提供する旨の前述した効果を、さらにシステマティックに提供することができる。
また、プロセス変数相関定義部53としては、n個のプロセス変数の所定期間に亘る時系列データの相関行列又は主成分負荷行列に基づいて、相関情報を定義する場合に、プロセス変数間の関係の有無あるいは強さを、データから機械的かつシステマティックに容易に定義することができる。また、異常検出用データ定義部54における多変量解析などの手法の多くは、異常検出用データ作成時に分散共分散行列や主成分負荷行列を作成する操作を行うため、診断モデル構築時に、若干の修正を加えるだけで機械的にプロセス変数間の関係を定義することができる。
また、プロセス変数相関定義部53がn個のプロセス変数相互間の相関の有無あるいは強度を表すn行n列のテーブルを相関情報として有し、プロセス変数相関定義インターフェイス部6が、ユーザの操作に応じて、このテーブルを表示すると共に、当該テーブルの内容を修正する場合には、データドリブンによって構築したプロセス監視・診断・支援装置の前述した効果がプラントマネージャーやオペレータなどのユーザにとって満足できないものである場合や、ユーザが修正を行いたい場合にプロセス変数相関定義ユーザインターフェイス部6を通して容易に修正することができる。
また、異常時対策支援情報定義部56に第2〜第6ルールが定義された場合に、前述した効果のより具体的な形として、異常時にユーザがどの操作量を確認し必要に応じて調整すればよいかという支援情報を与えることができ、さらに、この操作量によってどのようなプロセス監視データが影響を受けやすいか(例、放流水質などの性能指標が今後どうなっていく可能性があるのか)という情報をユーザに提供することができる。
また、異常対策記録保持部8を備えた場合には、支援情報が提供された時、過去の類似事例において、どのような対策がなされたかを、プラントオペレータ・マネージャが参照することができ、具体的な対策を容易に行うことが出来るようになる。
<その他の実施形態の構成>
図12〜図14は、それぞれ、第1の実施形態に述べた図1の下水高度処理プロセス1を対象とする監視システムを、インターネットや電話などの公衆回線あるいは専用回線などの通信回線を通して実現するシステム構成の一例を示している。通信回線は有線あるいは無線であるが、主に無線回線で実現されていることを想定している。図12〜図14の実施形態の構成における構成要素は、図1の構成の構成要素とほぼ同じであるが、通信回線を介して機能が分割されている点が異なり、これに伴い、図13および図14においては、遠隔監視操作端末10を新たに有している。
図12〜図14は、それぞれ、第1の実施形態に述べた図1の下水高度処理プロセス1を対象とする監視システムを、インターネットや電話などの公衆回線あるいは専用回線などの通信回線を通して実現するシステム構成の一例を示している。通信回線は有線あるいは無線であるが、主に無線回線で実現されていることを想定している。図12〜図14の実施形態の構成における構成要素は、図1の構成の構成要素とほぼ同じであるが、通信回線を介して機能が分割されている点が異なり、これに伴い、図13および図14においては、遠隔監視操作端末10を新たに有している。
図12に示す構成では、下水高度処理プロセス1で計測しているデータの収集と下水高度処理プロセス1の各種アクチュエータ111〜115による各操作量の操作は、当該処理場で実施されるが、その他は通信回線を通して物理的に離れた場所に存在するセンタ装置11で実施される。
すなわち、図12に示す構成は、プロセス計測データ収集・保存部2に有線又は無線の通信回線を通して接続されたセンタ装置11を更に備えている。各部3,4,5,6,7,9は、センタ装置11に実装されている。センタ装置11は、プロセス計測データ収集・保存部2に保存されたn個のプロセス変数の時系列データを通信回線を通して収集してユーザに提示し、ユーザの操作に応じて入力変数Uを操作する場合には、当該入力変数Uの操作信号を通信回線を通して下水高度処理プロセス1に送信する。
図13に示す構成は、図12とは異なり、通信回線を通して異常時の対策支援情報の受信とこの情報に基づいて判断した結果を再び通信回線を通して下水高度処理プロセス1に送信する遠隔監視操作端末10を有する構成となっている。この遠隔監視操作端末10は複数存在してよく、下水高度処理プロセス1の運転管理を行う複数人のプラントマネージャーやオペレータがこの端末を保有することができる。
すなわち、図13に示す構成は、異常対策支援情報提供部74および下水高度処理プロセス1に有線又は無線の通信回線を通して接続された遠隔監視操作端末10を更に備えている。監視操作端末10は、異常対策支援情報提供部74から通信回線を通して提供された対策支援情報をユーザに提示し、ユーザの操作に応じて入力変数Uを操作する場合には、当該入力変数Uの操作信号を通信回線を通して下水高度処理プロセス1に送信する。
図14に示す構成は、図12と図13を合成して発展させた構成となっており、下水高度処理プロセス1では、データの収集と操作量の操作が行われ、通信回線を通してセンタで診断が行われる。このセンタでは、複数の処理プロセスに対する診断を行う。さらに、遠隔監視操作端末10を有しており、センタで診断され対策支援情報を通信回線をとおしてこの遠隔監視操作端末10に送信し、遠隔監視操作端末10から再び通信回線を通して、いずれかの処理プロセスに対する操作指令を行うことができる。
すなわち、図14に示す構成は、下水高度処理プロセス1がw箇所ある場合(但し、w=1,2,…w)、プロセス計測データ収集・保存部2をw個設け、当該w個のプロセス計測データ収集・保存部2を個別にw箇所の下水高度処理プロセス1に配置している。また、各プロセス計測データ収集・保存部2に有線又は無線の通信回線を通して接続されたセンタ装置11と、異常対策支援情報提供部74および各下水高度処理プロセス1に有線又は無線の通信回線を通して個別に接続されたw個以上の遠隔監視操作端末10とを更に備えている。センタ装置11は、各プロセス計測データ収集・保存部2に保存されたn個のプロセス変数の時系列データを通信回線を通して収集して第1ユーザ(センタ装置11のユーザ)に提示し、第1ユーザの操作に応じて入力変数Uを操作する場合には、当該入力変数Uの操作信号を通信回線を通して下水高度処理プロセス1に送信する。各遠隔監視操作端末11は、異常対策支援情報提供部74から通信回線を通して提供された対策支援情報を第2ユーザ(遠隔監視操作端末11のユーザ)に提示し、当該第2ユーザの操作に応じて入力変数Uを操作する場合には、当該入力変数Uの操作信号を通信回線を通して下水高度処理プロセス1に送信する。
次に、以上のように構成されたその他の実施形態の作用について説明する。
なお、その他の実施形態の基本的な作用は、第1の実施形態の作用と同一であるため、異なる部分を中心に述べる。
はじめに図12に示す構成の実施形態の作用を説明する。センタ装置11では、予めプロセス変数登録部3において、異常診断モデル構築に必要となるプロセス変数を登録しておき、この登録情報を処理場に送っておく。処理場ではこの登録されたプロセス変数の情報を保持しており、適宜参照できるようになっている。また、異常診断モデル構築部5の過去(オフライン)データ抽出部52と異常監視・診断・対策支援部7の現在(オンライン)データ抽出部71は、下水高度処理プロセス1側のプロセス計測データ収集・保存部2に付随する形で保有している。
次に異常診断モデル構築を行うが、過去(オフライン)データ抽出部52で抽出した所定期間にわたる登録変数の時系列データが通信回線を通してセンタ装置11に送信され、センタ装置11において、第1の実施形態の作用に示した手順に従って異常診断モデルが構築される。
次に異常監視・診断・対策支援部7において、診断を行う時刻(以下、「現在」という)で診断が行われる。ここでは、まず処理場において現在(オンライン)データ抽出部71で現在の登録変数のデータが抽出され、これが通信回線を通してセンタ装置11に送られる。センタ装置11では、第1の実施形態の作用に示した手順に従って、異常の検出・要因分離・支援情報の生成が実施され、それがユーザインターフェイス部9を通してオペレータなどのユーザに提示される。
次に、対策支援情報に基づいてオペレータは、対象プロセスの性能指標や管理値を確認すると同時に、操作量を変更する必要がある場合には、操作量の変更指令を決定し、この情報を通信回線を通して下水高度処理プロセス1に伝える。
下水高度処理プロセス1では、受信した指令情報に基づいて自動あるいは手動で操作量の変更が行われる。処理場が無人の場合には自動で操作量の変更が行われ、有人の場合には、処理場のオペレータが指令情報を確認した上で手動で変更するかあるいは自動で変更される。
なお、センタ装置は、処理場とは物理的に離れた場所に設置されている監視室に配置されたコンピュータを想定しているが、センタ装置11で実施する機能を有してさえいれば、例えば携帯電話や携帯PCの様な移動端末に各部3〜7,9が実装されていても良い。
これが図12に示す構成の実施形態の作用である。
次に図13に示す構成の実施形態の作用を説明する。
まず、下水高度処理プロセス1のある処理場において、第1の実施形態の作用に示した手順に従って異常診断モデルが構築され、続いて、同じく下水高度処理プロセス1のある処理場において、第1の実施形態の作用に示した手順に従って、異常の検出・要因分離・支援情報の生成が実施される。ここまでは、第1の実施形態の作用と全く同じである。
次に、生成された対策支援情報のみが、通信回線を通して遠隔監視操作端末10を保有するプラントオペレータやマネージャーに送信される。この際、複数人のオペレータやマネージャーが遠隔監視操作端末10を保有していてもよく、この場合には、ブロードキャスト方式で対策支援情報が提供される。
次に、この情報を受信したオペレータやプラントマネージャーは、操作量の変更の必要性の有無を判断し、必要がある場合は操作量の変更指令を決定し、この情報を通信回線を通して下水高度処理プロセス1に伝える。この際、複数人が遠隔監視操作端末10を保有する場合には、どの端末からの指令を優先するかという操作量指令に対する優先順位を有していることが望ましい。また、この方式では、対策支援情報のみを受信するため、対象プロセスの性能指標や管理値を確認することができないが、異常対策支援情報受信時にのみ遠隔監視操作端末10を通してオペレータが確認したい性能指標や管理値のデータの送信要求を処理場に対して行う機能を有していることが望ましい。
最後に、下水高度処理プロセス1では、受信した指令情報に基づいて自動あるいは手動で操作量の変更が行われる。処理場が無人の場合には自動で操作量の変更が行われ、有人の場合には、処理場のオペレータが指令情報を確認した上で手動で変更するかあるいは自動で変更される。
なお、この実施形態では遠隔監視操作端末10は主に携帯電話や携帯PCなどのモバイル端末を想定しているが、上記の仕組みを持つ物理的に固定された場所に存在する監視室などのセンタに存在する固定端末でも良く、図12の実施形態との本質的な相違点は、機能分担の切り分け方である。
これが図13に示す構成の実施形態の作用である。
次に図14に示す構成の実施形態の作用を説明する。
センタ装置11では、予めプロセス変数登録部3において、異常診断モデル構築に必要となるプロセス変数を登録しておき、この登録情報を処理場に送っておく。図12の実施形態との相違点は、処理場が複数存在することであり、センタ装置11は複数の処理場を一括して遠隔で監視している。従ってプロセス変数の登録は処理場数分行うが、これは各々の処理場毎に定義してもよく、また共通のプロセス変数を登録しても良い。各処理場では、この登録されたプロセス変数の情報を保持しており、適宜参照できるようになっている。また、異常診断モデル構築部5の過去(オフライン)データ抽出部52と異常監視・診断・対策支援部7の現在(オンライン)データ抽出部71は、下水高度処理プロセス1側のプロセス計測データ収集・保存部2に付随する形で保有している。
次に異常診断モデル構築を行うが、各処理場から、過去(オフライン)データ抽出部52で抽出した所定期間にわたる登録変数の時系列データが通信回線を通してセンタ装置11に送信され、センタ装置11において、第1の実施形態の作用に示した手順に従って、各々の処理場毎の異常診断モデルが構築される。
次に異常監視・診断・対策支援部7において、診断を行う時刻(以下、「現在」という)で診断が行われる。ここでは、まず各々の処理場において現在(オンライン)データ抽出部71で現在の登録変数のデータが抽出され、これが通信回線を通してセンタ装置11に送られる。センタ装置11では、第1の実施形態の作用に示した手順に従って、異常の検出・要因分離・支援情報の生成が実施される。この際、参照すべき異常診断モデルは処理場毎に切り替える必要があるが、検出・診断・対策支援の操作は診断モデルの切り替え以外は一つのアルゴリズムとして実装することができる。
対策支援情報が生成されると、この生成された情報はユーザインターフェイス部9を通してオペレータなどのユーザに提示される。この際、センタ装置11が配置された監視室以外の場所にいるオペレータやマネージャーが遠隔監視操作端末10を保有していてもよく、この場合は同時に生成された対策支援情報が、通信回線を通して遠隔監視操作端末10を保有するプラントオペレータやマネージャーにも送信される。この際、複数人のオペレータやマネージャーが遠隔監視操作端末10を保有していてもよく、この場合には、ブロードキャスト方式で対策支援情報が提供される。
次に、対策支援情報に基づいてオペレータは、対象プロセスの性能指標や管理値を確認すると同時に、操作量を変更する必要がある場合には、操作量の変更指令を決定し、この情報を通信回線を通して下水高度処理プロセス1に伝える。遠隔監視操作端末10を保有するオペレータやマネージャーがいる場合には、センタあるいは遠隔端末のいずれの指令を優先するか、あるいは、遠隔端末を保有者が複数人いる場合には、どの指令を優先するかという操作量指令に対する優先順位を有していることが望ましい。
最後に、下水高度処理プロセス1では、受信した指令情報に基づいて自動あるいは手動で操作量の変更が行われる。処理場が無人の場合には自動で操作量の変更が行われ、有人の場合には、処理場のオペレータが指令情報を確認した上で手動で変更するかあるいは自動で変更される。
以上が図14に示す構成の実施形態の作用である。
図12〜図14に示す構成の実施形態の効果は以下のとおりである。
図12に示す構成によれば、下水処理プラントとこれを運用管理するプラントオペレータやプラントマネージャーとが物理的に離れている場所にいる場合にも、第1の実施形態の効果と同様の効果を得ることができる。
図13に示す構成によれば、図12の仕組みにおいてセンタ側の計算負荷低減を指向したものであり、第1の実施形態の効果に加え、大きな計算負荷をかけることが難しい携帯型の簡易端末でも、プロセス監視で最も必要な異常時の情報とその対策の遠隔での実施が可能になる。また、異常時にのみ通信回線を利用するため、通信回線の負荷の低減も同時にでき、通信回線のトラフィックの混雑を回避することに貢献でき、また、トラフィックが混雑している場合でも重要な情報(異常時の情報)の通信の確保をしやすくなる。
補足すると、図13に示す構成によれば、プラントオペレータやプラントマネージャーが対象プラントから物理的に離れている場合で、かつ、通信回線のトラフィックの混雑が予想される様な場合にても、対象プロセスで生じる重要な異常を検出し、それに対する対処を行うことができる(ただし、その代償として、計測しているプロセス変数全ての時系列データの監視を行うことは諦める。)。
図14に示す構成によれば、図12と図13の構成をさらに機能分割し、また、複数の処理場の監視を一括して行うことを指向したものであるが、この様な構成を採用することにより、遠隔サービス(クラウドサービス)として、第1の実施形態の作用効果を提供することができる。
すなわち、図14に示す構成によれば、複数箇所のプラントの監視・診断・支援を1か所あるいは少数箇所の監視室に配置されたセンタ装置11において実施することができ、クラウドサービスなどとして第1の実施形態の効果を実現することができる。また、プラントオペレータやプラントマネージャーが対象プラントから物理的に離れている場合にも、プラントの監視・診断・対策支援を行うことができる。
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、プロセス監視・診断・支援装置が異常診断モデル構築部5および異常監視・診断・対策支援部7を備えた構成により、対象プロセスに依存しない形で、異常時の対策支援情報を提供することができる。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…下水高度処理プロセス、101…最初沈澱池、102…嫌気槽、103…無酸素槽、104…好気槽、105…最終沈澱池、2…プロセス計測データ収集・保存部、3…プロセス変数登録部、4…プロセス変数分類ユーザインターフェイス部、5…異常診断モデル構築部、51…プロセス変数分類部、52…過去(オフライン)データ抽出部、53…プロセス変数相関定義部、54…異常検出用データ定義部、55…異常検出用データ寄与量定義部、56…異常時対策支援情報定義部、6…プロセス変数相関定義インターフェイス部、7…異常監視・診断・対策支援部、71…現在(オンライン)データ抽出部、72…異常検出部、73…異常要因変数分離部、74…異常対策支援情報提供部、8…異常対策記録保持部、9…ユーザインターフェイス部、10…遠隔監視操作端末、111〜115…アクチュエータおよび操作量センサ群、121〜1221…プロセスセンサ。
Claims (12)
- 対象プロセスの状態量又は操作量を計測するn個(但し、n≧2)のセンサから計測結果を示すn個のプロセス変数の時系列データを収集して保存するデータ収集保存手段と、
前記n個のプロセス変数を、前記状態量であって性能指標を表すp個(但し、1≦p<n)の出力変数Yと、前記操作量を表すL個(但し、1≦L<n)の入力変数Uと、前記状態量であって管理・監視値を表すm個(但し、0≦m<n)の中間変数Zとに分類した結果を示す分類情報を記憶するプロセス変数分類手段と、
前記分類情報および前記n個のプロセス変数の所定期間に亘る時系列データから、前記分類した結果を含んで当該n個のプロセス変数相互間の相関を示す相関情報を定義するプロセス変数相関定義手段と、
前記n個のプロセス変数の所定期間に亘る時系列データから、前記n個よりも少ないq個(但し、1≦q≪n)の異常検出用データを生成する式と、前記異常検出用データに基づいて異常の有無又は異常強度の判断を行う判断基準とを定義する異常検出用データ定義手段と、
前記異常検出用データに対する前記n個のプロセス変数の時系列データの各々の寄与量を定義する異常検出用データ寄与量定義手段と、
異常時の異常要因候補となるプロセス変数である異常要因候補変数のうちの所定の上位の異常要因候補変数を抽出する第1ルールと、前記抽出した異常要因候補変数を前記相関情報に基づいて前記出力変数Yと前記入力変数Uと前記中間変数Zとに分類する第2ルールと、当該分類した結果に応じて異常時の対策を支援するメッセージを含む対策支援情報を提供する第3ルールとを定義する異常時対策支援情報定義手段と、
前記保存された所定時刻の前記n個のプロセス変数の時系列データ、および前記異常検出用データ定義手段の定義に従って当該所定時刻の時系列データに対応する異常検出用データを生成し、この異常検出用データに基づいて、当該所定時刻のデータの異常の有無を診断する異常検出手段と、
前記診断の結果、異常有りの場合には前記寄与量の定義に基づいて当該所定時刻の時系列データの寄与量を計算し、前記計算した寄与量および前記第1ルールに基づいて当該所定時刻の時系列データから異常要因候補変数を分離抽出する異常要因変数分離手段と、
前記分離抽出された異常要因候補変数と、前記相関情報と、前記第2ルールおよび前記第3ルールとに基づいて、前記対策支援情報を提供する異常対策支援情報提供手段と、
を備えたことを特徴とするプロセス監視・診断・支援装置。 - 請求項1に記載のプロセス監視・診断・支援装置において、
前記n個のプロセス変数の名称を表示し、この表示中に、ユーザの操作に応じて、前記プロセス変数分類手段における入力変数と出力変数と中間変数を選択するプロセス変数分類ユーザインターフェイス手段を更に備えたことを特徴とするプロセス監視・診断・支援装置。 - 請求項1に記載のプロセス監視・診断・支援装置において、
前記異常検出用データ定義手段は、主成分分析(PCA)、潜在変数射影法(PLS)、主成分回帰(PCR)、正準相関解析(CVA)、マハラノビス距離、ロバスト主成分分析(Robust PCA)、カーネル主成分分析(Kernel PCA)、判別分析、ファジィC-meansクラスタリング、K-meansクラスタリング、サポートベクトルマシン(SVM)、リレバンスベクトルマシン(RVM)および部分空間法のうちの少なくとも一つ以上の方法を用いて前記異常検出用データを生成する式を定義することを特徴とするプロセス監視・診断・支援装置。 - 請求項3に記載のプロセス監視・診断・支援装置において、
前記異常検出用データ寄与量定義手段は、前記n個のプロセス変数の中の着目するプロセス変数kの寄与量(但し、k=1,2,…,n)を、[a]前記異常検出用データ定義手段により定義された異常検出用データから前記プロセス変数kが張る空間へ射影することによって定義するか、[b]異常検出用データをn個の成分の和に分解し、前記プロセス変数kのみが影響を与えるk番目の成分として定義するか、又は[c]独立性成分分析を用いて定義することを特徴とするプロセス監視・診断・支援装置。 - 請求項1に記載のプロセス監視・診断・支援装置において、
前記プロセス変数相関定義手段は、前記n個のプロセス変数の所定期間に亘る時系列データの相関行列又は主成分負荷行列に基づいて、前記相関情報を定義することを特徴とするプロセス監視・診断・支援装置。 - 請求項1に記載のプロセス監視・診断・支援装置において、
前記プロセス変数相関定義手段は、前記n個のプロセス変数相互間の相関の有無あるいは強度を表すn行n列のテーブルを前記相関情報として備えており、
前記ユーザの操作に応じて、このテーブルを表示すると共に、前記テーブルの内容を修正するプロセス変数相関定義インターフェイス手段(6)を更に備えたことを特徴とするプロセス監視・診断・支援装置。 - 請求項1に記載のプロセス監視・診断・支援装置において、
前記第2ルールは、前記抽出された異常要因候補変数を、前記分類情報に基づいて、前記入力変数Uに属する入力要因変数FU、前記出力変数Yに属する出力要因変数FY、前記中間変数Zに属する中間要因変数FZに分類するルールを含み、
前記第3ルールは、
前記異常要因候補変数に前記出力要因変数FYを含む場合には、当該出力要因変数FYが悪化していることを通知すると共に、前記相関情報により当該出力要因変数FYと相関があると定義された入力変数Uの値を確認し見直す様促すメッセージを含む対策支援情報を提供する第4ルールAと、
前記異常要因候補変数に前記出力要因変数FYを含まないが前記入力要因変数FUを含む場合には、当該入力要因変数FUが通常時から逸脱した異常状態であり、この入力要因変数FUで表される操作量を見直す様促すと共に、前記相関情報により当該入力要因変数FUと相関があると定義された出力変数Yが今後悪化する可能性があることを通知するメッセージを含む対策支援情報を提供する第5ルールBと、
前記異常要因変数が前記中間要因変数FZのみである場合には、当該中間要因変数FZが悪化していることを通知すると共に、前記相関情報により当該中間要因変数FZと相関があると定義された出力変数Yが今後悪化する可能性があることを通知するメッセージを含む対策支援情報を提供する第6ルールCと、
を含んでいることを特徴とするプロセス監視・診断・支援装置。 - 請求項1に記載のプロセス監視・診断・支援装置において、
前記異常対策支援情報提供手段により提供された対策支援情報を提示した後、前記ユーザが行った操作を記録する異常対策記録保持手段を更に備えており、
前記異常対策記録保持手段は、
前記対策支援情報が提供されると、前記時系列データおよび前記分類情報に基づいて、現在時刻以前の入力変数Uの値、出力変数Yの値および中間変数Zの値と、当該対策支援情報とを提示する手段と、
前記対策支援情報を提示した後、前記ユーザが行った操作としての入力変数Uの操作記録と、出力変数Yの値と、中間変数Zの値とを継続的に記録することを特徴とするプロセス監視・診断・支援装置。 - 請求項1に記載のプロセス監視・診断・支援装置において、
前記データ収集保存手段に有線又は無線の通信回線を通して接続されたセンタ装置を更に備え、
前記プロセス変数分類手段、前記プロセス変数相関定義手段、前記異常検出用データ定義手段、前記異常検出用データ定義手段、前記異常検出用データ寄与量定義手段、前記異常検出手段、前記異常要因変数分離手段および前記異常対策支援情報提供手段は、前記センタ装置に実装されており、
前記センタ装置は、前記データ収集保存手段に保存されたn個のプロセス変数の時系列データを前記通信回線を通して収集してユーザに提示し、前記ユーザの操作に応じて前記入力変数Uを操作する場合には、当該入力変数Uの操作信号を前記通信回線を通して前記対象プロセスに送信することを特徴とするプロセス監視・診断・支援装置。 - 請求項1に記載のプロセス監視・診断・支援装置において、
前記異常対策支援情報提供手段および前記対象プロセスに有線又は無線の通信回線を通して接続された監視操作端末を更に備え、
前記監視操作端末は、前記異常対策支援情報提供手段から前記通信回線を通して提供された対策支援情報をユーザに提示し、前記ユーザの操作に応じて前記入力変数Uを操作する場合には、当該入力変数Uの操作信号を前記通信回線を通して前記対象プロセスに送信することを特徴とするプロセス監視・診断・支援装置。 - 請求項1に記載のプロセス監視・診断・支援装置において、
前記対象プロセスがw箇所ある場合(但し、w=1,2,…w)、前記データ収集保存手段をw個設け、当該w個のデータ収集保存手段を個別に前記w箇所の対象プロセスに配置し、
前記各データ収集保存手段に有線又は無線の通信回線を通して接続されたセンタ装置と、
前記異常対策支援情報提供手段および前記各対象プロセスに有線又は無線の通信回線を通して個別に接続されたw個以上の監視操作端末とを更に備え、
前記センタ装置は、前記各データ収集保存手段に保存されたn個のプロセス変数の時系列データを前記通信回線を通して収集して第1ユーザに提示し、前記第1ユーザの操作に応じて前記入力変数Uを操作する場合には、当該入力変数Uの操作信号を前記通信回線を通して前記対象プロセスに送信し、
前記各監視操作端末は、前記異常対策支援情報提供手段から前記通信回線を通して提供された対策支援情報を第2ユーザに提示し、前記第2ユーザの操作に応じて前記入力変数Uを操作する場合には、当該入力変数Uの操作信号を前記通信回線を通して前記対象プロセスに送信することを特徴とするプロセス監視・診断・支援装置。 - メモリを備えたプロセス監視・診断・支援装置に用いられるプログラムであって、
前記プロセス監視・診断・支援装置を、
対象プロセスの状態量又は操作量を計測するn個(但し、n≧2)のセンサから計測結果を示すn個のプロセス変数の時系列データを収集して前記メモリに保存するデータ収集保存手段、
前記n個のプロセス変数を、前記状態量であって性能指標を表すp個(但し、1≦p<n)の出力変数Yと、前記操作量を表すL個(但し、1≦L<n)の入力変数Uと、前記状態量であって管理・監視値を表すm個(但し、0≦m<n)の中間変数Zとに分類した結果を示す分類情報を記憶するプロセス変数分類手段、
前記分類情報および前記n個のプロセス変数の所定期間に亘る時系列データから、前記分類した結果を含んで当該n個のプロセス変数相互間の相関を示す相関情報を定義するプロセス変数相関定義手段、
前記n個のプロセス変数の所定期間に亘る時系列データから、前記n個よりも少ないq個(但し、1≦q≪n)の異常検出用データを生成する式と、前記異常検出用データに基づいて異常の有無又は異常強度の判断を行う判断基準とを定義する異常検出用データ定義手段、
前記異常検出用データに対する前記n個のプロセス変数の時系列データの寄与量を定義する異常検出用データ寄与量定義手段、
異常時の異常要因候補となるプロセス変数である異常要因候補変数のうちの所定の上位の異常要因候補変数を抽出する第1ルールと、前記抽出した異常要因候補変数を前記相関情報に基づいて前記出力変数Yと前記入力変数Uと前記中間変数Zとに分類する第2ルールと、当該分類した結果に応じて異常時の対策を支援するメッセージを含む対策支援情報を提供する第3ルールとを定義する異常時対策支援情報定義手段、
前記保存された所定時刻の前記n個のプロセス変数の時系列データ、および前記異常検出用データ定義手段の定義に従って当該所定時刻の時系列データに対応する異常検出用データを生成し、この異常検出用データに基づいて、当該所定時刻のデータの異常の有無を診断する異常検出手段、
前記診断の結果、異常有りの場合には前記寄与量の定義に基づいて当該所定時刻の時系列データの寄与量を計算し、前記計算した寄与量および前記第1ルールに基づいて当該所定時刻の時系列データから異常要因候補変数を分離抽出する異常要因変数分離手段、
前記分離抽出された異常要因候補変数と、前記相関情報と、前記第2ルールおよび前記第3ルールとに基づいて、前記対策支援情報を提供する異常対策支援情報提供手段、
として機能させるためのプログラム。
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