JP2013060512A - 撥水性微粒子、これを用いた超撥水表面を有する材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】超撥水性の付与が可能な撥水性微粒子、および、この撥水性微粒子の基材表面への散布および/または塗布、あるいは撥水性微粒子を用いた転写フィルムによる基材表面への転写によって得られる超撥水表面を有する材料の提供。
【解決手段】フッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルを50〜99モル%、水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルを1〜50モル%の割合で含んでなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル混合物を重合することによって得られる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーを用いた微粒子を形成する。
【選択図】なし
【解決手段】フッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルを50〜99モル%、水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルを1〜50モル%の割合で含んでなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル混合物を重合することによって得られる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーを用いた微粒子を形成する。
【選択図】なし
Description
本発明はフッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル混合物を重合することによって得られる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーを微粒子化した撥水性微粒子、さらに撥水性微粒子の基材表面への散布および/または塗布、あるいは撥水性微粒子を用いた転写フィルムによる基材表面への転写によって得られる超撥水表面を有する材料に関する。
例えば、自動車用窓などの車両用透明部材の撥水性向上には、無機ガラス表面へのフッ素含有化合物分散液の塗布による撥水膜形成技術がある。例えば特開2000−86293号公報には下地処理した無機ガラス表面にフッ素含有オルガノシロキサンを塗布、乾燥させて撥水膜を形成させることにより車両用透明部材の撥水性が向上すると記載されている。しかしながら、この技術によって得られる撥水膜は超撥水性ではないため、ワイパーとの併用が不可欠である。その結果、ワイパーとの摩擦によって撥水膜が剥ぎ取られ、効果の持続性に乏しい恐れがある。
また、特開2009−108123号公報にはフッ素系シランカップリング剤を用いて表面処理した金属酸化物粒子の添加によって透明部材の表面保護層、いわゆるハードコート層への撥水性付与が可能であると記載されている。しかしながら、シランカップリング剤による表面処理は金属酸化物の種類によっては粒子表面の反応性官能基の数が乏しいために表面処理反応が困難な場合がある。また、金属酸化物粒子の添加によって部材の透明性や耐擦傷性の低下を招く恐れがある。
本発明は、上述した各従来技術の問題点を解決すべくなされたものであり、高い撥水効果、即ち、超撥水性の付与が可能な撥水性微粒子、および、この撥水性微粒子の基材表面への散布および/または塗布、あるいは撥水性微粒子を用いた転写フィルムによる基材表面への転写によって得られる超撥水表面を有する材料の提供を目的とする。
本発明者らは、上述の課題を解決すべく鋭意検討した結果、フッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルを50〜99モル%、水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルを1〜50モル%の割合で含んでなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル混合物を重合することによって得られる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーを用いた微粒子が非常に優れた効果を奏することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、炭素数6〜19のパーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルを50〜99モル%、炭素数2〜5のアルキル基を有する水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルを1〜50モル%の割合で含んでなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル混合物を重合することによって得られる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーであり、得られた(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマーを微粒子化して得られた撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子である。
すなわち、本発明は、炭素数6〜19のパーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルを50〜99モル%、炭素数2〜5のアルキル基を有する水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルを1〜50モル%の割合で含んでなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル混合物を重合することによって得られる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーであり、得られた(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマーを微粒子化して得られた撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子である。
さらに本発明は、撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子を基材表面に散布および/または塗布して得られる超撥水性表面を有する材料である。
本発明において「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
本発明の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーを用いると樹脂等の様々な基材上に超撥水機能を有する表面を形成することができる。
本発明の撥水性微粒子に用いる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーは、炭素数6〜19のパーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルを50〜99モル%、炭素数2〜5のアルキル基を有する水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルを1〜50モル%の割合で含んでなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル混合物を重合することによって得られるものである。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーは、炭素数6〜19のパーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、炭素数2〜5のアルキル基を有する水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体であり、共重合体の形式にはランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体による共重合体等が挙げられるが、ランダム共重合体が特に好ましく用いられる。
これらの共重合体の重合方法は、例えばラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の既に公知の方法により可能である。
上記一般式(1)中、R1は水素原子またはメチル基、xは1〜4の整数、yは5〜15の整数である。
上記一般式(1)で示される炭素数6〜19のパーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては以下の物が挙げられるが、本発明はこれに限るものではない。また、これらは単独でまたは2種類以上を併用して用いることができる。
炭素数2〜5のアルキル基を有する水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどが挙げられる。アルキル基は直鎖状でも分岐状でも良い。これらは単独でまたは2種類以上を併用して用いることができる。
また、本発明の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーを調製する際には、炭素数6〜19のパーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび炭素数2〜5のアルキル基を有する水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他の単量体を本発明の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーの効果を損なわない範囲で用いることができる。
他の単量体は、炭素数6〜19のパーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび炭素数2〜5のアルキル基を有する水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルの合計100モル%に対して、外割りで30モル%以下の範囲で用いることができる。この他の単量体としては、炭素数6〜19のパーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび炭素数2〜5のアルキル基を有する水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルを除く(メタ)アクリル酸アルキルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン系単量体;ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン等のジエン系単量体;等が挙げられる。
前記一般式(1)で示されるパーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルと水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、生成する撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子の粒度調整、撥水性付与の観点から、パーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜99モル%、水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル1〜50モル%であることが好ましい。
パーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルが99モル%より多くなると、撥水性はより向上するが、撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーと基材との密着性が低下する。
また、パーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルが50モル%より少なくなると、所望とする撥水性が得られない。
また、パーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルが50モル%より少なくなると、所望とする撥水性が得られない。
前記一般式(1)で示されるパーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるCH2基の数xは1〜4が好ましいが、特に1〜2が好ましい。xが5以上になると超臨界二酸化炭素への溶解性が低下する。
また、CF2基の数yは5〜15の整数が適当であるが、好ましくはCF2基の数yは7〜10である。CF2基の数yが5より小さいと充分な粒子形成が行われず、CF2基の数yが15より大きいと共重合体を重合によって作る際、前記一般式(1)で示されるパーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルの溶媒への溶解性が低下するので共重合体の重合が正常に進まない恐れがある。
また、CF2基の数yは5〜15の整数が適当であるが、好ましくはCF2基の数yは7〜10である。CF2基の数yが5より小さいと充分な粒子形成が行われず、CF2基の数yが15より大きいと共重合体を重合によって作る際、前記一般式(1)で示されるパーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルの溶媒への溶解性が低下するので共重合体の重合が正常に進まない恐れがある。
本発明の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーは結晶融点を有していることが特徴であり、結晶融点は60℃以上であることが好ましい。結晶融点が60℃未満の場合、撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子を散布および/または塗布したのちの基材が加熱処理される事例では撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子の変形を生じる恐れがあり、その結果として基材表面の超撥水性が損なわれる恐れがある。
本発明の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーより得られる撥水性微粒子は平均粒子径が300μm以下であることが好ましい。平均粒子径が300μmを超えてしまうと、撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子によって超撥水処理を施した基材の表面外観が大きく損なわれる恐れがある。
さらに、本発明の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子は微粒子表面に微細な凹凸形状を有していることが望ましい。微粒子表面に微細な凹凸形状が形成されていないと撥水性能が大きく低下する恐れがある。
本発明の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーは、炭素数6〜19のパーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜99モル%、炭素数2〜5のアルキル基を有する水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルを1〜50モル%の割合で含んでなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル混合物を重合することによって得られる共重合体であるが、この共重合体の重合は有機溶媒の存在下において実施される。
上記共重合体の重合において使用される有機溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミドおよび/またはN,N−ジメチルアセトアミドが好適である。
また、一般公知の有機溶媒であれば、パーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合を阻害しない範囲内であれば、N,N−ジメチルホルムアミドおよび/またはN,N−ジメチルアセトアミドと併用しても構わない。
また、一般公知の有機溶媒であれば、パーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合を阻害しない範囲内であれば、N,N−ジメチルホルムアミドおよび/またはN,N−ジメチルアセトアミドと併用しても構わない。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合に使用する重合開始剤としては、例えば、水溶性開始剤、もしくは油溶性開始剤の単独系、もしくはレドックス系のものが挙げられる。水溶性開始剤の具体例としては、過硫酸塩等の無機開始剤が挙げられる。油溶性開始剤の具体例としては、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の有機過酸化物;アゾ化合物等が挙げられる。レドックス系開始剤の具体例としては、上述の無機開始剤を亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩等と組み合わせたもの、上述の有機過酸化物やアゾ化合物をナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート等と組み合わせたもの等が挙げられる。但し、これら具体例に限定されるものではない。
本発明の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子は、有機溶媒の存在下において、炭素数6〜19のパーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜99モル%、炭素数2〜5のアルキル基を有する水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルを1〜50モル%の割合で含んでなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル混合物を重合することによって得られる撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーを超臨界もしくは液体二酸化炭素に投入して、前記撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーの粒子形成を行うことによって得られる。
図1は、超臨界もしくは液体二酸化炭素による前記撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーの粒子形成のための装置の一例である。
前記撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーを、温度制御装置5のついた高圧体積可変セル6に入れて蓋8をしたのち、ボンベ1に詰められた二酸化炭素を加圧用ポンプ2を経由して高圧体積可変セル6に供給する。高圧体積可変セル6内を所定の温度(20〜65℃、好ましくは35〜45℃)および所定の圧力(5〜25MPa、好ましくは10〜20MPa)に保つ。温度制御は温度制御装置5を使って行う。また、圧力は圧力計3を参照しながら加圧用ポンプ2、バルブ9を操作して所定値に保つ。この際、高圧体積可変セル6内は撹拌器(撹拌子)7等により撹拌されるのが好ましい。所定の温度、圧力に1時間保ったのち、ハンドル10を回転させて高圧体積可変セル6内の容量を増加させ、圧力を1〜3MPa、好ましくは2MPa下げる。バルブ11を開放して減圧するとともに、二酸化炭素とともに噴射される撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子を捕集する。なお、4は高圧体積可変セル6の温度を計測する温度計である。
但し、図1は本発明に基づいて構成された設備の一例であり、本発明に基づく撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子の製造設備は、これら具体例に限定されるものではない。
本発明の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子による超撥水表面は、基材表面に撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子を散布することによって得られるものである。具体的に本発明の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子の基材表面への散布は、基材表面に接着層を塗布して基材上に接着層を積層形成したのちに、一般公知の粉体散布技術を用いて撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子を接着層表面に散布することによって得られる。また、必要に応じて、撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子を接着層上に散布して超撥水層を積層形成させたのちに、加熱処理を経て超撥水表面を得ることもできる。
また、本発明の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子による超撥水表面は、基材表面に撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子を塗布することによって得られるものである。具体的には本発明の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子を基材表面と撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子との接着層を構成する塗工液に分散させたのち、ディップコート、フローコート、スプレーコート、スピンコート、バーコート等の一般公知の塗布技術を用いて基材表面に撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子を含む塗工液を塗布することによって、基材上に超撥水層を積層形成して超撥水表面を得ることができる。また、必要に応じて、撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子を含む塗工液を基材上に塗布して超撥水層を積層形成させたのちに、加熱処理を経て超撥水表面を得ることもできる。
あるいは、本発明の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子による超撥水表面は、転写フィルムを用いて基材上に接着層に撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーを含む接着層を積層形成したのち、基材の上に接着層を転写させることによって基材上に超撥水層を積層形成して得られるものである。具体的にはベースフィルムの上に本発明の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子を散布したのちに接着層を積層形成することによってベースフィルムと接着層との間に超撥水微粒子が偏在した転写フィルムを作製し、この転写フィルムを超撥水微粒子が偏在しない接着層側が基材表面側となるように、基材表面に重ねて得られるものである。また、必要に応じて基材上に転写フィルムによって超撥水層を積層形成させたのち、加熱処理を経て、超撥水表面を得ることもできる。
上記の基材上への超撥水表面の積層形成方法は、本発明に基づいて構成された超撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーを用いた超撥水表面の積層形成方法の一部であり、本発明に基づく超撥水表面の積層形成方法は、上記の具体例に限定されるものではない。
本発明の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子を含む超撥水表面を基材表面上に形成する際に用いられる接着層としては、有機系接着層、無機系接着層のいずれか単独、あるいは有機系接着層および無機系接着層の併用からなるものであり、有機系接着層としてはウレタン系、アクリル系、ポリビニルアルコール系、酢酸ビニル系などが挙げられ、これらの有機系接着層は熱可塑性、熱硬化性のいずれでも構わない。
また無機系接着層としてはポリジメチルシロキサン等を主成分とするシリコーン等が挙げられる。
また無機系接着層としてはポリジメチルシロキサン等を主成分とするシリコーン等が挙げられる。
さらに接着層は本発明の効果を損なう恐れがなければ、必要に応じて1層もしくは2層以上を基材表面上に積層形成しても構わない。
本発明の超撥水表面を積層形成させるために用いられる基材としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、無機ガラス、金属、セラミックス等が挙げられる。本発明の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーを用いた超撥水表面による超撥水効果が得られる基材であれば、上記の具体例に限定されるものではない。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。各記載中、「%」はモル%を示す。また、諸物性の測定は以下の方法により実施した。
(1)数平均分子量測定:
ゲルパーミェーションクロマトグラフィー(東ソー社製 GPC−8020)において、カラム(東ソー社製 G2000HXL、G4000HXL、G6000HXL)を用いて数平均分子量(Mn)の測定を行った。
(2)融点測定:
示差走査熱量測定法(島津製作所社製 DSC−60)において、昇温速度20℃/分もしくは10℃/分の条件にて測定した。
(3)微粒子の表面形状観察:
走査型電子顕微鏡(日本電子社製 JSM−6300)を用いて微粒子の表面形状を観察した。
(4)水接触角測定:
表面処理した基材上に水滴量10マイクロリットルの水滴を滴下したのち、黒い画用紙を背景として水滴を撮影した。撮影された水滴の高さおよび半径より、次式によって水接触角を求めた。
水接触角θ(°)=2×tan−1(水滴高さ/水滴半径)
求められた接触角の評価は、接触角150°以上を超撥水性とした。
(1)数平均分子量測定:
ゲルパーミェーションクロマトグラフィー(東ソー社製 GPC−8020)において、カラム(東ソー社製 G2000HXL、G4000HXL、G6000HXL)を用いて数平均分子量(Mn)の測定を行った。
(2)融点測定:
示差走査熱量測定法(島津製作所社製 DSC−60)において、昇温速度20℃/分もしくは10℃/分の条件にて測定した。
(3)微粒子の表面形状観察:
走査型電子顕微鏡(日本電子社製 JSM−6300)を用いて微粒子の表面形状を観察した。
(4)水接触角測定:
表面処理した基材上に水滴量10マイクロリットルの水滴を滴下したのち、黒い画用紙を背景として水滴を撮影した。撮影された水滴の高さおよび半径より、次式によって水接触角を求めた。
水接触角θ(°)=2×tan−1(水滴高さ/水滴半径)
求められた接触角の評価は、接触角150°以上を超撥水性とした。
(実施例1)
前記一般式(1)で示される炭素数6〜19のパーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおいて、R1が水素原子、xが2、yが8の化合物、即ち、前記化合物No.7であるアクリル酸2−(パーフルオロオクチル)エチル2.47グラム、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル69ミリグラムを反応管にあらかじめ計りとってあった有機溶媒としてのN,N−ジメチルホルムアミド5ミリリットルに溶解させた。仕込んだアクリル酸2−(パーフルオロオクチル)エチルとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとの割合は、アクリル酸2−(パーフルオロオクチル)エチルが90モル%、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルが10モル%である。次に重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル26ミリグラムを添加して脱気封管後、60℃で43時間重合を行った。生成物をn−ヘキサンに沈殿させ、さらに水に再沈殿を繰り返すと、本発明の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーが得られた。
得られた撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーのMnは530,000であった。また、融点は73.4℃であった。
前記一般式(1)で示される炭素数6〜19のパーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおいて、R1が水素原子、xが2、yが8の化合物、即ち、前記化合物No.7であるアクリル酸2−(パーフルオロオクチル)エチル2.47グラム、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル69ミリグラムを反応管にあらかじめ計りとってあった有機溶媒としてのN,N−ジメチルホルムアミド5ミリリットルに溶解させた。仕込んだアクリル酸2−(パーフルオロオクチル)エチルとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとの割合は、アクリル酸2−(パーフルオロオクチル)エチルが90モル%、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルが10モル%である。次に重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル26ミリグラムを添加して脱気封管後、60℃で43時間重合を行った。生成物をn−ヘキサンに沈殿させ、さらに水に再沈殿を繰り返すと、本発明の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーが得られた。
得られた撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーのMnは530,000であった。また、融点は73.4℃であった。
得られた撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー30ミリグラムおよび撹拌器(撹拌子)7を、図1に示すのと同型の内容量3.75ミリリットルに合わせた高圧体積可変セルに仕込み、冷却した二酸化炭素を封入した。続いて温度を35℃、圧力を15〜25MPa程度に上げて、1時間撹拌した。その後、ハンドル10を回転させて高圧体積可変セル内の容積を増加させることによって圧力を2.2MPa下げ、バルブ11からガスを抜いて圧力を下げるとともに生成物を捕集した。
得られた生成物を走査型電子顕微鏡で観察した結果を図2に示す。撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーは微粒子化されており、得られた撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子の表面には微細な凹凸形状の形成が確認した。
基板の一例としてポリカーボネート樹脂を適用した。ポリカーボネート樹脂基板に熱硬化性アクリル系樹脂をディップコーティング法によって塗布して、有機系接着層を積層形成したのちに室温乾燥を実施した。次いで120℃、75分間大気中で加熱硬化させた。
さらに熱硬化性シリコーン樹脂をディップコーティング法によって有機系接着層の上に塗布して、無機系接着層を積層形成した。これを室温乾燥したのち、上述の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子を60メッシュの篩(目開き0.250ミリメートル)に通して、60メッシュ通過分の微粒子を無機系接着層の上に散布した。次いで60℃、160分間大気中で加熱硬化させた。
得られた撥水機能を付与した表面処理済みポリカーボネート樹脂基材上にマイクロシリンジを用いた10マイクロリットルの水を滴下して、水滴を形成させた。その水滴を黒い画用紙を背景として水滴の撮影を行い、撮影された水滴の高さおよび半径より求めた接触角は151.3°であった。
図3は、実施例1の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーを用いた表面処理済みポリカーボネート樹脂基材上に形成した水滴写真である。
(実施例2)
前記一般式(1)で示される炭素数6〜19のパーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおいて、R1が水素原子、xが2、yが8の化合物、即ち、前記化合物No.7であるアクリル酸2−(パーフルオロオクチル)エチルを2.47グラム、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを1.47グラムとした以外は、実施例1と同様に行った。仕込んだアクリル酸2−(パーフルオロオクチル)エチルとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとの割合は、アクリル酸2−(パーフルオロオクチル)エチルが70モル%、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルが30モル%である。得られた撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーのMnは410,000であった。また、融点は74.0℃であった。
前記一般式(1)で示される炭素数6〜19のパーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおいて、R1が水素原子、xが2、yが8の化合物、即ち、前記化合物No.7であるアクリル酸2−(パーフルオロオクチル)エチルを2.47グラム、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを1.47グラムとした以外は、実施例1と同様に行った。仕込んだアクリル酸2−(パーフルオロオクチル)エチルとメタクリル酸2−ヒドロキシエチルとの割合は、アクリル酸2−(パーフルオロオクチル)エチルが70モル%、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルが30モル%である。得られた撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーのMnは410,000であった。また、融点は74.0℃であった。
得られた撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子の走査型電子顕微鏡写真を図4に示す。
基材の表面処理による撥水機能付与、水接触角の測定は実施例1と同様の手順にて行った。得られた水接触角は151.2°であった。
図5は、実施例2の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーを用いた表面処理済みポリカーボネート樹脂基材上に形成した水滴写真である。
(比較例1)
本発明の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーを用いない以外は、実施例1と同様の手順にて基材の表面処理を行い、水接触角を測定した。撥水機能を付与していない表面処理済みポリカーボネート樹脂基材上に形成した水滴写真を図6に示す。
この時の水接触角は113.6°であった。
本発明の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーを用いない以外は、実施例1と同様の手順にて基材の表面処理を行い、水接触角を測定した。撥水機能を付与していない表面処理済みポリカーボネート樹脂基材上に形成した水滴写真を図6に示す。
この時の水接触角は113.6°であった。
2 加圧用ポンプ
3 圧力計
4 温度計
5 温度制御装置
6 圧力体積可変セル
7 攪拌器
3 圧力計
4 温度計
5 温度制御装置
6 圧力体積可変セル
7 攪拌器
Claims (8)
- 下記一般式(1)で表わされる炭素数6〜19のパーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルを50〜99モル%、炭素数2〜5のアルキル基を有する水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルを1〜50モル%の割合で含んでなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル混合物を重合することによって得られる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーであり、得られた(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマーを微粒子化して得られた撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子。
- (メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーを微粒子化する際に、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーを超臨界もしくは液体二酸化炭素に投入して粒子形成を行うことによって得られることを特徴とする請求項1記載の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子。
- 有機溶媒の存在下において、炭素数6〜15のパーフルオロアルキル基を有するフッ素含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルを50〜99モル%、炭素数2〜5のアルキル基を有する水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステルを1〜50モル%の割合で含んでなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル混合物を重合することによって得られる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマーを超臨界もしくは液体二酸化炭素に投入して粒子形成を行うことによって得られることを特徴とする請求項1記載の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子。
- 請求項3記載の有機溶媒がN,N−ジメチルホルムアミドおよび/またはN,N−ジメチルアセトアミドであることを特徴とする請求項1記載の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子を基材表面に散布および/または塗布、あるいは転写フィルムを用いた転写によって得られる超撥水表面を有する材料。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子を基材表面に接着層を塗布して接着層を積層形成したのち、撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子を接着層表面に散布することによって得られる請求項5記載の超撥水表面を有する材料。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子を接着層に混合、分散させたのち、基材表面に撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子を含む接着層を塗布することによって得られる請求項5記載の超撥水表面を有する材料。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の撥水性(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ポリマー微粒子をベースフィルムの上に散布したのちに接着層を積層形成することによってベースフィルムと接着層との間に超撥水微粒子が偏在した転写フィルムを作製し、この転写フィルムを超撥水微粒子が偏在しない接着層側が基材表面側となるように、基材表面に重ねることによって得られる請求項5記載の超撥水表面を有する材料。
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JP2011199098A JP2013060512A (ja) | 2011-09-13 | 2011-09-13 | 撥水性微粒子、これを用いた超撥水表面を有する材料 |
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JP2011199098A Withdrawn JP2013060512A (ja) | 2011-09-13 | 2011-09-13 | 撥水性微粒子、これを用いた超撥水表面を有する材料 |
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