JP2013057002A - 非イオン性水溶性セルロースエーテルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】シート状パルプをシート状のまま又はチップ状とした後に乾燥する工程と、乾燥したパルプをアルカリ金属水酸化物溶液と接触させてアルカリセルロースを得る接触工程と、上記アルカリセルロースを脱液する脱液工程と、脱液されアルカリセルロースとエーテル化剤と反応させる工程とを少なくとも含む非イオン性水溶性セルロースエーテルの製造方法を提供する。
【選択図】なし
Description
特許文献2では、ジクロロメタン抽出分が0.07質量%以下のパルプに水酸化ナトリウムを含浸させた後、圧搾してアルカリセルロースを得た後エーテル化する方法が提示されている。
非特許文献1には、シート密度0.47〜1.17g/mlのシート状パルプをアルカリ溶液が入ったバスに0.5〜4.5秒間浸漬させアルカリセルロースを得る方法が記載されている。
特許文献4では、パルプを水酸化ナトリウム水溶液に2時間浸漬した後圧搾している。
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、透明で水不溶性部分が少ない非イオン性水溶性セルロースエーテルの製造方法を提供することを目的とする。
本発明で用いるシート状パルプは、木材パルプ、コットンリンターパルプである。未溶
解繊維分の少ない非イオン性水溶性セルロースエーテルを得るためには木材由来パルプが特に好ましい。木材の樹種は、マツ、トウヒ、ツガ等の針葉樹及びユーカリ、カエデ等の広葉樹を用いることができる。
チップの形状は、通常一辺が好ましくは2〜100mm、より好ましくは3〜50mmである。2mmより小さいとセルロース繊維がダメージを受け繊維内部にアルカリ金属水酸化物溶液が浸入しづらくなり均質なアルカリセルロースを得られなくなる場合がある。逆に100mmより大きいと、取り扱い特に浸漬装置への投入、装置内部の送り、分離機への投入が困難になる場合がある。
乾燥した気体を通気する方法においては同様にパルプの平衡吸湿量が5質量%未満となる相対湿度の気体を用いる。通気する気体の気温が常温の場合、相対湿度は好ましくは50%未満、より好ましくは30%未満である。乾燥した気体として窒素、空気等を用いることができる。
ここで、含水率とは、JIS P8203:1998 パルプ−絶乾率の試験方法により求められた絶乾率より、下記の式によって計算される値である。
含水率(%)=100 − 絶乾率(%)
上式中、絶乾率(dry matter content)は、試料を105±2℃で乾燥し、恒量に達したときの質量と乾燥前の質量の比率であり、%で表示する。
パルプの含水率は、通常6.5〜12質量%であるが、パルプの含水率を5質量%以下にすることにより、セルロースエーテルの未溶解繊維分の数が減少する。その理由は推測ではあるが、後のパルプとアルカリ水酸化物溶液を接触させてアルカリセルロースを得る工程において、パルプの含水率が高いとパルプの内部に浸入したアルカリ水酸化物溶液がパルプに含まれる水分により希釈されるため、その希釈熱によりセルロース分子が変質すると考えられる。従って、パルプの含水率を低下させることにより、希釈熱を減少させ、変質の度合いを低下させることが可能であると考えられる。一方、パルプの含水率が高いと、アルカリセルロースの中に高濃度のアルカリ水酸化物溶液でアルカリ化された部分及び低濃度のアルカリ水酸化物溶液でアルカリ化された部分が混在し、結果的にエーテル化が不均一となるため、置換度が高い部分と低い部分が混在し、主に置換度が低い部分が未溶解繊維分になると考えられる。
接触させるための容器は、バス型、ベルト型、ロータリーフィーダー型、スクリューコンベア型、バケットコンベア型、パイプ型などを用いることができる。
なお、アルカリ金属水酸化物ではなくアルカリ金属水酸化物溶液の質量を用いるのは、物理的にパルプがムラなくアルカリ金属水酸化物溶液に接触している(漬かっている)ことが重要であり、アルカリ金属水酸化物溶液が少なすぎて接触していない(濡れていない)パルプが存在するような状況を避けるためである。
本発明によれば、脱液工程で得られたアルカリセルロースに中和滴定法を用いて得られたアルカリ金属水酸化物成分の質量と上記パルプ中の固体成分の質量の比(アルカリ金属水酸化物成分/パルプ中の固体成分)が、好ましくは0.3〜1.5、より好ましくは0.65〜1.30、更に好ましくは0.90〜1.30の範囲となるように、接触工程に用いるアルカリ金属水酸化物溶液の量が選択される。
出発原料のパルプは、通常、セルロースと水からなるため、パルプ中の固体成分はセルロースである。上記質量比が0.3〜1.5の場合、得られる非イオン性水溶性セルロースエーテルの透明性が高くなる。
なお、パルプ中の固体成分には、主成分のセルロースの他、ヘミセルロース、リグニン、樹脂分等の有機物、Si分、Fe分等の無機物が含まれる。
脱液工程で得られたアルカリセルロースのケーキ全量の質量を測定する。脱液工程で得られたアルカリセルロースのケーキ4.00gを採取し、中和滴定によりケーキ中のアルカリ金属水酸化物質量%を求める(0.5mol/L H2SO4、指示薬:フェノールフタレイン)。同様の方法で空試験を行う。
アルカリ金属水酸化物質量%
=規定度係数×(H2SO4滴下量(ml)−空試験でのH2SO4滴下量(ml))
なお、上式は、水酸化ナトリウムの分子量を40としている。
上記アルカリ金属水酸化物質量%で算出できれば、脱液工程で得られたアルカリセルロースのケーキ全量中の「アルカリ金属水酸化物成分」を算出できる。
「パルプ中の固体成分」は、例えば、パルプ約2gを採取し105℃で4時間乾燥させた後の質量が、採取した質量に占める割合(質量%)を求めて算出することができる。
得られたケーキ中のアルカリ金属水酸化物質量%を用いて、次式に従いアルカリ金属水酸化物成分/狭義のアルカリセルロース成分を求めることができる。
(アルカリ金属水酸化物の質量)/(狭義のアルカリセルロース成分の質量)
=(アルカリ金属水酸化物質量%)÷[{100−(アルカリ金属水酸化物質量%)
/(B/100)}×(S/100)]
ここで、Bは用いたアルカリ金属水酸化物溶液の濃度(質量%)であり、Sはパルプ中の固体成分の濃度(質量%)である。式中、100−(アルカリ金属水酸化物質量%)/(B/100)は、ケーキ中のアルカリ金属水酸化物溶液以外の質量%であるが、これにはパルプ中の固体成分の質量%と同じ割合で狭義のアルカリセルロースが存在するとしてS/100をかけてアルカリセルロースの質量%としたものである。
狭義のアルカリセルロースは、脱液工程で得られたアルカリ金属水酸化物を含むアルカリセルロースよりも狭い概念であり、脱液工程で得られたアルカリ金属水酸化物を含むアルカリセルロースからアルカリ金属水酸化物溶液を除いたアルカリセルロース自体を意味する。
パルプとアルカリ金属水酸化物とが接触した後、均一化及びマーセル化反応が進行し熟成が進行するが、短時間では熟成が不十分となりこれをエーテル化して得られるセルロースエーテルの未溶解繊維分が増加する。このためエーテル化剤と反応させるアルカリセルロースのうち、パルプと過剰のアルカリ金属水酸化物との接触がなされてからの経過時間が60分以下のものの割合が、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。60分以下のものの割合がこれより多いアルカリセルロースは、熟成が不十分なものの比率が高くなり非イオン性水溶性セルロースエーテルの未溶解繊維分が増加する場合がある。
アルキルセルロースとしては、メトキシ基(DS)が1.0〜2.2のメチルセルロース、エトキシ基(DS)が2.0〜2.6のエチルセルロース等が挙げられる。
ヒドロキシアルキルセルロースとしては、ヒドロキシエトキシ基(MS)が0.05〜3.0のヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロポキシ基(MS)が0.05〜3.3のヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースの例としては、メトキシ基 (DS)が1.0〜2.2、ヒドロキシエトキシ基(MS)が0.1〜0.6のヒドロキシエチルメチルセルロース、メトキシ基(DS)が1.0〜2.2、ヒドロキシプロポキシ基(MS)が0.1〜0.6のヒドロキシプロピルメチルセルロース、エトキシ基(DS)が1.0〜2.2、ヒドロキシエトキシ基(MS)が0.1〜0.6のヒドロキシエチルエチルセルロースが挙げられる。
なお、通常、アルキル置換にはDSを用い、ヒドロキシアルキル置換にはMSを用い、それぞれグルコース単位に結合したエーテル化剤の平均モル数であり、日本薬局方の測定方法を用いて測定された結果から算出できる。
塩化メチル等のハロゲン化アルキルがセルロースと反応する際に等モルの水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物が消費される。アルカリ金属水酸化物の反応率をほぼ100%としたいため、通常アルカリ金属水酸化物に対して過剰のハロゲン化アルキルを反応機に仕込む。ハロゲン化アルキルの利用率はアルカリ金属水酸化物量を基準に計算される。
ハロゲン化アルキルの利用率(%)
={DS/(セルロースに対するアルカリ金属水酸化物の仕込みモル比)}×100
また、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドがセルロースと反応する際のアルキレンオキサイドの利用率も同様に水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物量を基準に計算される。
アルキレンオキサイドの利用率(%)
={MS/(セルロースに対するアルカリ金属水酸化物の仕込みモル比)}×100
得られた非イオン性水溶性セルロースエーテルの2質量%水溶液の20℃における粘度は、好ましくは2〜30000mPa・s、更に好ましくは300〜30000mPa・sである。
未溶解繊維数の測定方法は、0.1質量%水溶液となるようにコールターカウンター用電解質水溶液ISOTON II(コールター社製)に25℃の恒温槽内で溶解し、この溶液2ml中に存在する16μm以上200μm以下の未溶解繊維数を径400μmのアパーチャーチューブを用いてコールター社製のコールターカウンターTA II型又はマルチサイザー機により測定することができる。なお、非イオン性水溶性セルロースエーテルの濃度が希薄で測定できない場合は、適宜高濃度溶液で測定し、0.1質量%換算数値として測定できる。
また、本発明の非イオン性水溶性セルロースエーテルの30℃における2質量%水溶液の透光度は、光電比色計PC−50型、セル長20mm、可視光線を用いて測定した場合、96%以上、特に97%以上が好ましい。
例に限定されるものではない。
[実施例1]
含水率が8.0質量%で20cm×30cmの大きさのシート状パルプを80℃送風オーブンで30分乾燥し、含水率を5.0質量%とした。直ちにこのシート状パルプを40℃の49質量%NaOH水溶液に30秒間浸漬した後にプレスすることにより、余剰の49質量%NaOH水溶液を除去し、アルカリセルロースを得た。浸漬工程の49質量%NaOH水溶液/パルプ中の固体成分質量比は100だった。得られたアルカリセルロースのNaOH成分/パルプ中の固体成分質量比は1.23だった。
得られたアルカリセルロースをセルロース分として5.5kgを内部撹拌型耐圧反応器に仕込み、真空引き後、塩化メチル9.4kg、プロピレンオキサイド2.90kgを加えて反応させ、洗浄、乾燥、粉砕を経てヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。
得られたヒドロキシプロピルメチルセルロースの置換度はメトキシ基(DS)が1.90、ヒドロキシプロポキシ基(MS)が0.24だった。また、16μm以上200μm以下の未溶解繊維数は40個だった。結果を表1に示す。
含水率が8.0質量%で10mm×10mmの大きさのチップ状パルプに25℃の乾燥した窒素ガスを20分間通気し、含水率を4.0質量%とした。直ちにこのチップ状パルプを40℃の49質量%NaOH水溶液に28秒間浸漬した後に遠心分離することにより余剰の49質量%NaOH水溶液を除去し、アルカリセルロースを得た。浸漬工程の49質量%NaOH水溶液/パルプ中の固体成分質量比は30だった。得られたアルカリセルロースのNaOH成分/パルプ中の固体成分質量比は1.21だった。得られたアルカリセルロースをセルロース分として5.5kgを内部撹拌型耐圧反応器に仕込み、真空引き後、塩化メチル9.2kg、プロピレンオキサイド2.86kgを加えて反応させ、実施例1と同様に洗浄、乾燥、粉砕を経てヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。
結果を表1に示す。
含水率が8.0質量%で10mm×10mmの大きさのチップ状パルプに25℃の乾燥した窒素ガスを30分間通気し、含水率を2.0質量%とした。直ちにこのチップ状パルプを40℃の49質量%NaOH水溶液に27秒間浸漬した後に遠心分離することにより余剰の49質量%NaOH水溶液を除去し、アルカリセルロースを得た。浸漬工程の49質量%NaOH水溶液/パルプ中の固体成分質量比は30だった。得られたアルカリセルロースのNaOH成分/パルプ中の固体成分質量比は1.205だった。得られたアルカリセルロースをセルロース分として5.5kgを内部撹拌型耐圧反応器に仕込み、真空引き後、塩化メチル9.17kg、プロピレンオキサイド2.81kgを加えて反応させ、実施例1と同様に洗浄、乾燥、粉砕を経てヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。結果を表1に示す。
含水率が8.0質量%で10mm×10mmの大きさのチップ状パルプに100℃の空気と60秒間接触させ、含水率を0.5質量%とした。直ちにこのチップ状パルプを40℃の49質量%NaOH水溶液に25秒間浸漬した後に遠心分離することにより余剰の49質量%NaOH水溶液を除去し、アルカリセルロースを得た。浸漬工程の49質量%NaOH水溶液/パルプ中の固体成分質量比は30だった。得られたアルカリセルロースのNaOH成分/パルプ中の固体成分質量比は1.20だった。得られたアルカリセルロースをセルロース分として5.5kgを内部撹拌型耐圧反応器に仕込み、真空引き後、塩化メチル9.1kg、プロピレンオキサイド2.76kgを加えて反応させ、実施例1と同様に洗浄、乾燥、粉砕を経てヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。
結果を表1に示す。
シート状パルプを20℃の49質量%NaOH水溶液に10秒間浸漬した後にプレスする以外は、実施例1と同様の方法でアルカリセルロースを得た。得られたアルカリセルロースのNaOH成分/パルプ中の固体成分質量比は0.670だった。
得られたアルカリセルロースをセルロース分として5.5kgを内部撹拌型耐圧反応器に仕込み、真空引き後、塩化メチル5.10kg、プロピレンオキサイド1.22kgを加えて反応させ、洗浄、乾燥、粉砕を経てヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。
得られたヒドロキシプロピルメチルセルロースの置換度はメトキシ基(DS)が1.
50、ヒドロキシプロポキシ基(MS)が0.20だった。
含水率が8.0質量%で20cm×30cmの大きさのシート状パルプを乾燥させず、40℃の49質量%NaOH水溶液に32秒間浸漬した後にプレスする以外は、実施例1と同様の方法でアルカリセルロースを得た。得られたアルカリセルロースのNaOH成分/パルプ中の固体成分質量比は1.24だった。
得られたアルカリセルロースをセルロース分として5.5kgを内部撹拌型耐圧反応器に仕込み、真空引き後、塩化メチル9.5kg、プロピレンオキサイド3.03kgを加えて反応させ、実施例1と同様に洗浄、乾燥、粉砕を経てヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。評価結果を表1に示す。
含水率が8.0質量%で20cm×30cmの大きさのシート状パルプを乾燥させず、20℃の49質量%NaOH水溶液に10秒間浸漬した後にプレスする以外は、実施例1と同様の方法でアルカリセルロースを得た。得られたアルカリセルロースのNaOH成分/パルプ中の固体成分質量比は0.673だった。
得られたアルカリセルロースをセルロース分として5.5kgを内部撹拌型耐圧反応器に仕込み、真空引き後、塩化メチル5.14kg、プロピレンオキサイド1.23kgを加えて反応させ、実施例1と同様に洗浄、乾燥、粉砕を経てヒドロキシプロピルメチルセルロースを得た。評価結果を表1に示す。
Claims (3)
- シート状パルプをシート状のまま又はチップ状とした後に乾燥する工程と、
乾燥したパルプをアルカリ金属水酸化物溶液と接触させてアルカリセルロースを得る接触工程と、
上記アルカリセルロースを脱液する脱液工程と、
脱液されたアルカリセルロースとエーテル化剤と反応させる工程と
を少なくとも含む非イオン性水溶性セルロースエーテルの製造方法。 - 上記乾燥が、上記シート状パルプ又はチップ状パルプの含水率を5質量%以下とする請求項1に記載の非イオン性水溶性セルロースエーテルの製造方法。
- 上記非イオン性水溶性セルロースエーテルが、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、又はヒドロキシアルキルアルキルセルロースである請求項1又は請求項2に記載の非イオン性水溶性セルロースエーテルの製造方法。
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