JP2013052527A - 樹脂部材、複合部材及び複合部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】成形上の取り扱いが容易で、強度層と柔軟層とが剥離し難い樹脂部材、複合部材及び複合部材の製造方法を提供する。
【解決手段】加熱工程前の金属パネル2に溶着される長尺状の樹脂部材3は、熱可塑性樹脂にGFが含有されるガラス繊維強化樹脂からなる強度層4と、強度層4に積層接合され、かつ強度層4よりも柔軟性が高い熱可塑性エラストマーからなり、金属パネル2への溶着時に金属パネル2に接触する柔軟層5と、を有する。これにより、熱硬化性樹脂を用いていないので、成形上の取り扱いが容易である。また、樹脂部材3を金属パネル2に溶着した後に加熱工程を行う場合に、強度層4及び柔軟層5が共に加熱に伴い軟化膨張し冷却に伴い硬化収縮し、強度層4と柔軟層5との接合界面に負荷(引張)が生じ難く、強度層4と柔軟層5とが剥離し難い。
【選択図】図1
【解決手段】加熱工程前の金属パネル2に溶着される長尺状の樹脂部材3は、熱可塑性樹脂にGFが含有されるガラス繊維強化樹脂からなる強度層4と、強度層4に積層接合され、かつ強度層4よりも柔軟性が高い熱可塑性エラストマーからなり、金属パネル2への溶着時に金属パネル2に接触する柔軟層5と、を有する。これにより、熱硬化性樹脂を用いていないので、成形上の取り扱いが容易である。また、樹脂部材3を金属パネル2に溶着した後に加熱工程を行う場合に、強度層4及び柔軟層5が共に加熱に伴い軟化膨張し冷却に伴い硬化収縮し、強度層4と柔軟層5との接合界面に負荷(引張)が生じ難く、強度層4と柔軟層5とが剥離し難い。
【選択図】図1
Description
本発明は、樹脂部材、複合部材及び複合部材の製造方法に関する。詳しくは、金属パネルを補強する樹脂部材、金属パネルと金属パネルを補強する樹脂部材とを含む複合部材及び複合部材を製造する複合部材の製造方法に関する。
従来、車両のドアパネルやクォータパネル等を構成する金属パネルは、成形性の向上及び軽量化の観点から、薄板状に形成されている。このような薄板状の金属パネルは曲げ剛性が低いため、通常、その裏面に補強部材が接合される。補強部材としては、例えば樹脂部材が用いられ、この樹脂部材は、溶着によって金属パネルの裏面に接合される。
ところが、溶着によって金属パネルの裏面に樹脂部材を接合した場合には、加熱により膨張した樹脂部材が冷却時に収縮することによって、金属パネルの表面にデフォームが生じるという問題がある。デフォームが生じると、金属パネルの外観品質が大きく低下することから、デフォームの抑制が強く求められる。
そこで、金属パネルの裏面に、熱可塑性のウレタン系樹脂を基材とする柔軟層(保護層)を設け、この柔軟層上に、熱硬化性樹脂を基材とする長尺状の複数の強度層(補強層)を所定間隔毎に設ける技術が開示されている(特許文献1参照)。この技術によれば、柔軟性を有する柔軟層によって、強度層の収縮に起因する金属パネルのデフォームを抑制できるとされている。
また、金属パネルを補強する樹脂部材として、金属パネルに装着される特定の熱可塑性ポリマーを基材とする柔軟層と、熱硬化性樹脂を基材とする強度層とを、金属パネルに装着する前に予め一体化しておく技術が開示されている(特許文献2参照)。この技術によっても、柔軟性を有する柔軟層によって、強度層の収縮に起因する金属パネルのデフォームを抑制できるとされている。
しかしながら、特許文献1、2の技術では、強度層に熱硬化性樹脂を用いており、成形上の取り扱いが困難であった。
また、金属パネルが車両のドアパネルやクォータパネル等を構成する場合には、金属パネルの塗装工程で塗装の焼付けが必須なため、金属パネルを樹脂部材で補強した後に加熱工程が伴う。特許文献1、2の技術では、金属パネルを樹脂部材で補強した後に加熱工程を行うと、加熱に伴い強度層は硬化するが柔軟層が軟化するので、強度層と柔軟層との接合界面に負荷(引張)が発生し、強度層と柔軟層とが剥離し易くなる問題があった。
また、金属パネルが車両のドアパネルやクォータパネル等を構成する場合には、金属パネルの塗装工程で塗装の焼付けが必須なため、金属パネルを樹脂部材で補強した後に加熱工程が伴う。特許文献1、2の技術では、金属パネルを樹脂部材で補強した後に加熱工程を行うと、加熱に伴い強度層は硬化するが柔軟層が軟化するので、強度層と柔軟層との接合界面に負荷(引張)が発生し、強度層と柔軟層とが剥離し易くなる問題があった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、成形上の取り扱いが容易で、強度層と柔軟層とが剥離し難い樹脂部材、複合部材及び複合部材の製造方法を提供することにある。
本発明に係る樹脂部材(例えば、後述の樹脂部材3,31)は、加熱工程前の金属パネル(例えば、後述の金属パネル2)に溶着される長尺状の樹脂部材であって、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂と強化材とを混合してなる強化樹脂からなる強度層(例えば、後述の強度層4)と、前記強度層に積層接合され、かつ前記強度層よりも柔軟性が高い熱可塑性樹脂からなり、前記金属パネルへの溶着時に前記金属パネルに接触する柔軟層(例えば、後述の柔軟層5)と、を有することを特徴とする。
本発明によると、樹脂部材の強度層と柔軟層とが両方とも熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂を混合した強化樹脂からなり、熱硬化性樹脂を用いていないので、成形上の取り扱いが容易である。
また、樹脂部材を金属パネルに溶着した後に加熱工程を行う場合に、樹脂部材の強度層と柔軟層とが両方とも熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂を混合した強化樹脂からなるので、強度層及び柔軟層が共に加熱に伴い軟化膨張し冷却に伴い硬化収縮し、強度層と柔軟層との接合界面に負荷(引張)が生じ難く、強度層と柔軟層とが剥離し難い。
また、樹脂部材を金属パネルに溶着した後に加熱工程を行う場合に、樹脂部材の強度層と柔軟層とが両方とも熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂を混合した強化樹脂からなるので、強度層及び柔軟層が共に加熱に伴い軟化膨張し冷却に伴い硬化収縮し、強度層と柔軟層との接合界面に負荷(引張)が生じ難く、強度層と柔軟層とが剥離し難い。
前記柔軟層は、前記樹脂部材の長手方向に直交する断面視において、前記強度層内に食い込んでいることが好ましい。
本発明によると、柔軟層が強度層内に食い込んでいることで、加熱工程後の冷却に伴う柔軟層が食い込んだ強度層と柔軟層との硬化収縮時の収縮差が減少すると共に、強度層と柔軟層との接触面積が増加し、強度層と柔軟層とがより剥離し難い。
前記柔軟層の前記強度層内に食い込んでいる部分(例えば、後述の食い込み部5a)は、前記樹脂部材の長手方向に直交する断面視において、アンカー形状であることが好ましい。
本発明によると、柔軟層の食い込んでいる部分がアンカー形状であり、食い込むと抜け難い機械的結合であるので、強度層と柔軟層とがより剥離し難い。
前記柔軟層は、前記強度層よりも熱伝導率が高いことが好ましい。
本発明によると、柔軟層の強度層内に食い込んでいる部分の熱伝導率が高いので、加熱工程後の冷却に伴い強度層の内部が冷却され易く、強度層の外側だけが冷却されて強度層の外側と内部との硬化収縮時の収縮差が大きい場合に生じる樹脂部材の反りを抑制することができ、強度層と柔軟層との間や樹脂部材と金属パネルとの間の接合強度を高く保持することができる。
前記強度層の内部に、前記樹脂部材の長手方向に直交する断面視において、前記柔軟層に接触し前記強度層よりも熱伝導率が高い第3の層(例えば、後述の第2柔軟層6)を有することが好ましい。
本発明によると、強度層の内部に柔軟層に接触し強度層よりも熱伝導率が高い第3の層を有するので、加熱工程後の冷却に伴い第3の層とその外側に設けられる強度層とが一体的に冷却され易く、強度層の外側だけが冷却されて強度層の外側と内部との硬化収縮時の収縮差が大きい場合に生じる樹脂部材の反りを抑制することができ、強度層と柔軟層との間や樹脂部材と金属パネルとの間の接合強度を高く保持することができる。
本発明に係る複合部材(例えば、後述の複合部材1,11)は、金属パネルと、上記の樹脂部材であって加熱工程前の前記金属パネルに溶着された樹脂部材と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る複合部材の製造方法は、金属パネルと、上記の樹脂部材であって加熱工程前の前記金属パネルに溶着された樹脂部材と、を備える複合部材の製造方法であって、前記強度層と、前記柔軟層と、を結合して前記樹脂部材を形成する第1工程と、前記第1工程で形成された前記樹脂部材の前記柔軟層を加熱工程前の前記金属パネルに溶着する第2工程と、を含むことを特徴とする。
本発明に係る複合部材及び複合部材の製造方法にあっても、上記と同様の効果が奏される。
本発明によれば、成形上の取り扱いが容易で、強度層と柔軟層とが剥離し難い樹脂部材、複合部材及び複合部材製造方法を提供することができる。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
[実施形態1]
[複合部材]
本実施形態に係る複合部材1の構成について、図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る複合部材1の構成を示す図である。
図1に示す複合部材1は、金属パネル2と、金属パネル2に溶着された複数の長尺状の樹脂部材3と、から構成される。この複合部材1は、形成後に加熱工程を経る。
[実施形態1]
[複合部材]
本実施形態に係る複合部材1の構成について、図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る複合部材1の構成を示す図である。
図1に示す複合部材1は、金属パネル2と、金属パネル2に溶着された複数の長尺状の樹脂部材3と、から構成される。この複合部材1は、形成後に加熱工程を経る。
金属パネル2は、図1に示すように、裏面に複数の樹脂部材3が溶着される平板状部材であり、その表面は車両のドアパネルやクォータパネル等のサイドパネルの外観を形成する意匠面に構成される。金属パネル2は、鉄鋼板が用いられ、成形性の向上及び軽量化の観点から、薄板状に形成されており、曲げ剛性が低いので補強のため裏面に複数の長尺状の樹脂部材3が溶着される。
樹脂部材3は、図1に示すように、長尺状をしており、金属パネル2の裏面に複数所定間隔毎に並列に配置される。
樹脂部材3は、図1に示すように、その長手方向に直交する断面視において、補強のための強度層4と、強度層4に積層接合されかつ金属パネル2への溶着時に金属パネル2に接触する柔軟層5と、を有する。
樹脂部材3は、図1に示すように、その長手方向に直交する断面視において、補強のための強度層4と、強度層4に積層接合されかつ金属パネル2への溶着時に金属パネル2に接触する柔軟層5と、を有する。
樹脂部材3の強度層4は、高強度のPA6(ナイロン6)を例に挙げる熱可塑性樹脂を基材として用い、その中にGF(ガラス繊維)が含有されるガラス繊維強化樹脂からなる。強度層4におけるGFの含有量は、20質量%とすることができる。なお、樹脂部材3の強度層4は、上記のガラス繊維強化樹脂以外の炭素繊維等が含有される強化樹脂からなってもよく、また熱可塑性樹脂のみからなるものでもよい。
強度層4は、主に金属パネル2を補強する機能を発揮する。これにより、金属パネル2に樹脂部材3を溶着した複合部材1は、高い曲げ剛性を有することになる。
強度層4は、主に金属パネル2を補強する機能を発揮する。これにより、金属パネル2に樹脂部材3を溶着した複合部材1は、高い曲げ剛性を有することになる。
樹脂部材3の柔軟層5は、熱可塑性エラストマーを例に挙げる基材を用い、強度層4よりも柔軟性が高く、熱伝導率が高い熱可塑性樹脂を基材として用いる。
柔軟層5は、柔軟性を有し、主に強度層4の収縮(反り)による金属パネル2のデフォームを抑制する機能を発揮する。
柔軟層5は、図1に示すように、樹脂部材3の長手方向に直交する断面視において、中央部が強度層4内に食い込んでおり、その食い込み部5aは食い込むと抜け難いアンカー形状に形成される。柔軟層5の食い込み部5aのアンカー形状は、強度層4の内部に食い込むように突出した部位が細い首部を介して強度層4の内部で大きく広がった頭部となっている。このため、柔軟層5を強度層4から剥離しようとすると、そのアンカー形状の大きく広がった頭部が楔となって物理的に剥離を阻害するように機械的結合する形状である。なお、柔軟層5は、強度層4内に食い込んで抜け難ければアンカー形状でなくてもよい。
柔軟層5は、柔軟性を有し、主に強度層4の収縮(反り)による金属パネル2のデフォームを抑制する機能を発揮する。
柔軟層5は、図1に示すように、樹脂部材3の長手方向に直交する断面視において、中央部が強度層4内に食い込んでおり、その食い込み部5aは食い込むと抜け難いアンカー形状に形成される。柔軟層5の食い込み部5aのアンカー形状は、強度層4の内部に食い込むように突出した部位が細い首部を介して強度層4の内部で大きく広がった頭部となっている。このため、柔軟層5を強度層4から剥離しようとすると、そのアンカー形状の大きく広がった頭部が楔となって物理的に剥離を阻害するように機械的結合する形状である。なお、柔軟層5は、強度層4内に食い込んで抜け難ければアンカー形状でなくてもよい。
以上の構成を備える複合部材1に対し、従来においては、金属パネルの裏面に接合された熱可塑性樹脂を基材とする柔軟層上に熱硬化性樹脂を基材とする強度層を設けるようにしていた。
しかしながら、上記従来技術では、強度層に熱硬化性樹脂を用いており、成形時の加工が容易でなかったので成形上の取り扱いが困難であった。
また、金属パネルが車両のドアパネルやクォータパネル等を構成する場合には、金属パネルの塗装工程で塗装の焼付けが必須なため、金属パネルを樹脂部材で補強した後に加熱工程が伴う。上記従来技術では、金属パネルを樹脂部材で補強した後に加熱工程を行うと、加熱に伴い強度層は熱硬化性樹脂を基材とするので硬化するが、柔軟層が熱可塑性樹脂を基材とするので軟化するため、強度層と柔軟層との接合界面に負荷(引張)が発生し、強度層と柔軟層とが剥離し易くなる問題があった。
しかしながら、上記従来技術では、強度層に熱硬化性樹脂を用いており、成形時の加工が容易でなかったので成形上の取り扱いが困難であった。
また、金属パネルが車両のドアパネルやクォータパネル等を構成する場合には、金属パネルの塗装工程で塗装の焼付けが必須なため、金属パネルを樹脂部材で補強した後に加熱工程が伴う。上記従来技術では、金属パネルを樹脂部材で補強した後に加熱工程を行うと、加熱に伴い強度層は熱硬化性樹脂を基材とするので硬化するが、柔軟層が熱可塑性樹脂を基材とするので軟化するため、強度層と柔軟層との接合界面に負荷(引張)が発生し、強度層と柔軟層とが剥離し易くなる問題があった。
ここで、強度層と柔軟層との接合界面に負荷(引張)が発生し、強度層と柔軟層とが剥離し易くなる問題を解決するため、強度層と柔軟層とを共に熱硬化性樹脂を基材として用いることも考えられる。この場合には、樹脂部材を金属パネルに溶着した後に加熱工程を行う場合に、樹脂部材の強度層と柔軟層とが両方とも熱硬化性樹脂からなるので、強度層及び柔軟層が共に加熱及び冷却に伴う変化が同じになり、強度層と柔軟層との接合界面に負荷(引張)が生じ難く、強度層と柔軟層とが剥離し難い。しかしながら、この場合には、熱硬化性樹脂が直接金属パネルに接合されるので、金属パネルの補強部材として樹脂部材を用いた場合にもともと問題であった、後の加熱工程による加熱によって膨張した樹脂部材が冷却時に収縮することによって、金属パネルの表面にデフォームが生じるという問題が解決できない。
そこで本実施形態では、複合部材1に用いる加熱工程前の金属パネル2に溶着される長尺状の樹脂部材3は、熱可塑性樹脂を混合したガラス繊維強化樹脂からなる強度層4と、強度層4に積層接合され、強度層4よりも柔軟性が高い熱可塑性樹脂からなり、金属パネル2への溶着時に金属パネル2に接触する柔軟層5と、を有するようにした。
そこで本実施形態では、複合部材1に用いる加熱工程前の金属パネル2に溶着される長尺状の樹脂部材3は、熱可塑性樹脂を混合したガラス繊維強化樹脂からなる強度層4と、強度層4に積層接合され、強度層4よりも柔軟性が高い熱可塑性樹脂からなり、金属パネル2への溶着時に金属パネル2に接触する柔軟層5と、を有するようにした。
本実施形態に係る複合部材1によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態によると、樹脂部材3の強度層4と柔軟層5とが両方とも熱可塑性樹脂を混合したガラス繊維強化樹脂や熱可塑性エラストマーからなり、熱硬化性樹脂を用いていないので、成形上の取り扱いが容易である。
また、樹脂部材3を金属パネル2に溶着した後に加熱工程を行う場合に、樹脂部材3の強度層4と柔軟層5とが両方とも熱可塑性樹脂を混合したガラス繊維強化樹脂や熱可塑性エラストマーからなるので、強度層4及び柔軟層5が共に加熱に伴い軟化膨張し冷却に伴い硬化収縮し、強度層4と柔軟層5との接合界面に負荷(引張)が生じ難く、強度層4と柔軟層5とが剥離し難い。
本実施形態によると、樹脂部材3の強度層4と柔軟層5とが両方とも熱可塑性樹脂を混合したガラス繊維強化樹脂や熱可塑性エラストマーからなり、熱硬化性樹脂を用いていないので、成形上の取り扱いが容易である。
また、樹脂部材3を金属パネル2に溶着した後に加熱工程を行う場合に、樹脂部材3の強度層4と柔軟層5とが両方とも熱可塑性樹脂を混合したガラス繊維強化樹脂や熱可塑性エラストマーからなるので、強度層4及び柔軟層5が共に加熱に伴い軟化膨張し冷却に伴い硬化収縮し、強度層4と柔軟層5との接合界面に負荷(引張)が生じ難く、強度層4と柔軟層5とが剥離し難い。
樹脂部材3の柔軟層5は、強度層4内に食い込んだ食い込み部5aを有するので、柔軟層5が強度層4内に食い込んでいることで、加熱工程後の冷却に伴う柔軟層5が食い込んだ強度層4と柔軟層5との硬化収縮時の収縮差が減少すると共に、強度層4と柔軟層5との接触面積が増加し、強度層4と柔軟層5とがより剥離し難い。
特に柔軟層5の強度層4内に食い込んでいる食い込み部5aがアンカー形状であり、食い込むと抜け難い機械的結合であるので、強度層4と柔軟層5とがより剥離し難い。
本発明者らは、柔軟層5の強度層4内に食い込んでいる食い込み部5aがアンカー形状であることで、強度層4と柔軟層5とがより剥離し難くなる効果を確認する評価を行った。
図2(a)は、本実施形態(実施形態1)に係る樹脂部材3の断面図であり、図2(b)は、本発明に包含される変形例に係る樹脂部材の断面図である。図2(b)に示すように、変形例は、樹脂部材の長手方向に直交する断面視において、本実施形態の食い込み部が無く強度層と柔軟層とが平坦面で接合されている。樹脂部材のその他の材料等は変形例と本実施形態とで同一である。
(試験方法)
図3は、ピール試験(JISK6854に準ずる)方法を示す図である。本発明者らは、図3に示すように、強度層4と柔軟層5との一部を引き剥がし、強度層4と柔軟層5とを反対方向に引っ張った時に更に引き剥がれるまでの引張力を測定した。
(結果)
この結果、本実施形態に係る樹脂部材3の方が、変形例に比して2.5倍の接合強度を得ていることが判明した。つまり、柔軟層5の強度層4内に食い込んでいる食い込み部5aをアンカー形状として機械的結合を有すると、強度層4と柔軟層5とがより剥離し難いことが明らかとなった。
特に柔軟層5の強度層4内に食い込んでいる食い込み部5aがアンカー形状であり、食い込むと抜け難い機械的結合であるので、強度層4と柔軟層5とがより剥離し難い。
本発明者らは、柔軟層5の強度層4内に食い込んでいる食い込み部5aがアンカー形状であることで、強度層4と柔軟層5とがより剥離し難くなる効果を確認する評価を行った。
図2(a)は、本実施形態(実施形態1)に係る樹脂部材3の断面図であり、図2(b)は、本発明に包含される変形例に係る樹脂部材の断面図である。図2(b)に示すように、変形例は、樹脂部材の長手方向に直交する断面視において、本実施形態の食い込み部が無く強度層と柔軟層とが平坦面で接合されている。樹脂部材のその他の材料等は変形例と本実施形態とで同一である。
(試験方法)
図3は、ピール試験(JISK6854に準ずる)方法を示す図である。本発明者らは、図3に示すように、強度層4と柔軟層5との一部を引き剥がし、強度層4と柔軟層5とを反対方向に引っ張った時に更に引き剥がれるまでの引張力を測定した。
(結果)
この結果、本実施形態に係る樹脂部材3の方が、変形例に比して2.5倍の接合強度を得ていることが判明した。つまり、柔軟層5の強度層4内に食い込んでいる食い込み部5aをアンカー形状として機械的結合を有すると、強度層4と柔軟層5とがより剥離し難いことが明らかとなった。
また本実施形態では、樹脂部材3の柔軟層5の強度層4内に食い込んでいる食い込み部5aの熱伝導率が高いので、加熱工程後の冷却に伴い強度層4の内部が冷却され易く、強度層4の外側だけが冷却されて強度層4の外側と内部との硬化収縮時の収縮差が大きい場合に生じる樹脂部材3の反りを抑制することができ、強度層4と柔軟層5との間や樹脂部材3と金属パネル2との間の接合強度を高く保持することができる。
[複合部材の製造方法]
本実施形態に係る複合部材の製造方法は、樹脂部材3を得る工程(以下、第1工程という)と、樹脂部材3を金属パネル2に接合する工程(以下、第2工程という)と、を含む。
(第1工程)
第1工程では、強度層4の材料となる強化樹脂と、柔軟層5の材料となる熱可塑性エラストマーと、の2種類の樹脂を不図示の押出成形機に供給して長尺状に一体成形するように高温で押出成形する。これにより、強度層4と柔軟層5とを結合して樹脂部材3を一体的に形成する。このとき、樹脂部材3の長手方向に直交する断面視において、柔軟層5の強度層4内に食い込んでいる食い込み部5aがアンカー形状に形成される。
(第2工程)
第2工程では、第1工程で得た樹脂部材3を加熱して金属パネル2に溶着により接合する。具体的には、長尺状の樹脂部材3を、加熱工程前の金属パネル2の裏面に所定間隔毎に複数溶着して接合する。これにより、複合部材1を得る。
本実施形態に係る複合部材1の製造方法によると、成形上の取り扱いが容易で、強度層4と柔軟層5とが剥離し難い複合部材1を製造することができる。
本実施形態に係る複合部材の製造方法は、樹脂部材3を得る工程(以下、第1工程という)と、樹脂部材3を金属パネル2に接合する工程(以下、第2工程という)と、を含む。
(第1工程)
第1工程では、強度層4の材料となる強化樹脂と、柔軟層5の材料となる熱可塑性エラストマーと、の2種類の樹脂を不図示の押出成形機に供給して長尺状に一体成形するように高温で押出成形する。これにより、強度層4と柔軟層5とを結合して樹脂部材3を一体的に形成する。このとき、樹脂部材3の長手方向に直交する断面視において、柔軟層5の強度層4内に食い込んでいる食い込み部5aがアンカー形状に形成される。
(第2工程)
第2工程では、第1工程で得た樹脂部材3を加熱して金属パネル2に溶着により接合する。具体的には、長尺状の樹脂部材3を、加熱工程前の金属パネル2の裏面に所定間隔毎に複数溶着して接合する。これにより、複合部材1を得る。
本実施形態に係る複合部材1の製造方法によると、成形上の取り扱いが容易で、強度層4と柔軟層5とが剥離し難い複合部材1を製造することができる。
[実施形態2]
[複合部材]
本実施形態に係る複合部材11の構成について、図4を参照して説明する。なお、本実施形態では、その特徴部分を説明するものとし、上記実施形態で説明した事項については、説明を省略する。
図4は、本実施形態に係る複合部材11の断面図である。
樹脂部材31は、図4に示すように、その長手方向に直交する断面視において、強度層4と、金属パネル2への溶着時に金属パネル2に接触する柔軟層5と、強度層4の内部で柔軟層5に接触する第3の層としての第2柔軟層6と、を有する。
樹脂部材31の第2柔軟層6は、熱可塑性エラストマーを例に挙げる基材を用い、強度層4よりも柔軟性が高く熱伝導率が高い熱可塑性樹脂を基材として用いる。第2柔軟層6の熱伝導率は、柔軟層5の熱伝導率よりも高いものでもよい。
なお、樹脂部材31の第3の層としては、本実施形態の第2柔軟層6に限られない。例えば、空気層等であってもよい。
[複合部材]
本実施形態に係る複合部材11の構成について、図4を参照して説明する。なお、本実施形態では、その特徴部分を説明するものとし、上記実施形態で説明した事項については、説明を省略する。
図4は、本実施形態に係る複合部材11の断面図である。
樹脂部材31は、図4に示すように、その長手方向に直交する断面視において、強度層4と、金属パネル2への溶着時に金属パネル2に接触する柔軟層5と、強度層4の内部で柔軟層5に接触する第3の層としての第2柔軟層6と、を有する。
樹脂部材31の第2柔軟層6は、熱可塑性エラストマーを例に挙げる基材を用い、強度層4よりも柔軟性が高く熱伝導率が高い熱可塑性樹脂を基材として用いる。第2柔軟層6の熱伝導率は、柔軟層5の熱伝導率よりも高いものでもよい。
なお、樹脂部材31の第3の層としては、本実施形態の第2柔軟層6に限られない。例えば、空気層等であってもよい。
本実施形態に係る複合部材11によれば、以下の効果が奏される。
強度層4は、その内部に柔軟層5に接触し強度層よりも熱伝導率が高い第2柔軟層6を有するので、加熱工程後の冷却に伴い第2柔軟層6とその外側に設けられる強度層4とが一体的に冷却され易く、強度層4の外側だけが冷却されて強度層4の外側と内部との硬化収縮時の収縮差が大きい場合に生じる樹脂部材31の反りを抑制することができ、強度層4と柔軟層5との間や樹脂部材31と金属パネル2との間の接合強度を高く保持することができる。
強度層4は、その内部に柔軟層5に接触し強度層よりも熱伝導率が高い第2柔軟層6を有するので、加熱工程後の冷却に伴い第2柔軟層6とその外側に設けられる強度層4とが一体的に冷却され易く、強度層4の外側だけが冷却されて強度層4の外側と内部との硬化収縮時の収縮差が大きい場合に生じる樹脂部材31の反りを抑制することができ、強度層4と柔軟層5との間や樹脂部材31と金属パネル2との間の接合強度を高く保持することができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成することができる範囲で変形、改良等を行っても、本発明の範囲に包含されるものである。
1…複合部材
2…金属パネル
3,31…樹脂部材
4…強度層
5…柔軟層
5a…食い込み部
6…第2柔軟層
2…金属パネル
3,31…樹脂部材
4…強度層
5…柔軟層
5a…食い込み部
6…第2柔軟層
Claims (7)
- 加熱工程前の金属パネルに溶着される長尺状の樹脂部材であって、
熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂と強化材とを混合してなる強化樹脂からなる強度層と、
前記強度層に積層接合され、かつ前記強度層よりも柔軟性が高い熱可塑性樹脂からなり、前記金属パネルへの溶着時に前記金属パネルに接触する柔軟層と、を有することを特徴とする樹脂部材。 - 前記柔軟層は、前記樹脂部材の長手方向に直交する断面視において、前記強度層内に食い込んでいることを特徴とする請求項1に記載の樹脂部材。
- 前記柔軟層の前記強度層内に食い込んでいる部分は、前記樹脂部材の長手方向に直交する断面視において、アンカー形状であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂部材。
- 前記柔軟層は、前記強度層よりも熱伝導率が高いことを特徴とする請求項2又は3に記載の樹脂部材。
- 前記強度層の内部に、前記樹脂部材の長手方向に直交する断面視において、前記柔軟層に接触し前記強度層よりも熱伝導率が高い第3の層を有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂部材。
- 金属パネルと、
請求項1から5のいずれか1項に記載の樹脂部材であって加熱工程前の前記金属パネルに溶着された樹脂部材と、を備えることを特徴とする複合部材。 - 金属パネルと、請求項1から5のいずれか1項に記載の樹脂部材であって加熱工程前の前記金属パネルに溶着された樹脂部材と、を備える複合部材の製造方法であって、
前記強度層と、前記柔軟層と、を結合して前記樹脂部材を形成する第1工程と、
前記第1工程で形成された前記樹脂部材の前記柔軟層を加熱工程前の前記金属パネルに溶着する第2工程と、を含むことを特徴とする複合部材の製造方法。
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2011
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