JP2013040138A - 活性化型リコンビナント花粉アレルゲンの作製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】アレルゲン活性を有するリコンビナント花粉アレルゲンを、簡便に、大量かつ高濃度で、しかも低コストで得ることができる、活性化型リコンビナント花粉アレルゲンの作製方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る活性化型リコンビナント花粉アレルゲンの作製方法は、植物を用いた活性化型リコンビナント花粉アレルゲンの作製方法であって、該植物体内に花粉アレルゲン遺伝子を導入し、得られた形質転換植物から活性化型リコンビナント花粉アレルゲンを回収することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、アレルゲン活性のあるリコンビナント花粉アレルゲンの作製方法、及び当該方法により得られる活性化型リコンビナント花粉アレルゲンに関する。また本発明は、当該活性化型リコンビナント花粉アレルゲンを用いたアレルゲンワクチンに関する。
花粉症を含むアレルギー性鼻炎は、働き盛りである20〜50歳までの罹患率が40%に達し、日本における国民病と位置づけられているが、その殆どは抗ヒスタミン薬などの対処療法にとどまり、日常生活に大きな支障をきたしている。
従来、スギ花粉症の治療として、スギ花粉から抽出したアレルゲンワクチンを用いた抗原特異的免疫療法が行われており、唯一根治が期待できる治療法として注目されている。しかしながら、大量のワクチン精製と主要なスギアレルゲンであるCry j1及びCry j2の濃度を高めることができないことが難点とされている。
これまでに、コメに、アレルゲンであるCry j1及びCryj2の遺伝子を導入し、摂取しようとする試みがなされている。(非特許文献1,2)。米を使用する方法ではペプチドを使用していており、アレルゲン活性は認められてはいるが、ペプチド以外の部分がアレルゲンとして働かないという科学的データはない。また、米を使用する方法では穂をつけさせる必要があるため、夏場の太陽のような強い光強度が必要となるため、現状では組換え温室で栽培せざるを得ない。段組みで育てることもできないため、広大なスペースが必要になるという欠点も存在する。穂をつけさせるためにも約4−6か月かかることから、収穫は通常1年に1回となり時間的な制約も考慮する必要がある。さらに米を炊くという過程で、加熱による抗原性の変性という問題もあった。
他方、乳酸菌または組み換えCry j 1/Cry j 2結合タンパク質を使用したリコンビナントCry j 1の調製についても報告されているが(特許文献1)、植物の複雑な糖鎖修飾が行えず、高次構造的な抗原性のみ強調されているとともに、その効果についてはいまだ確定的な結果は得られていない。また大腸菌を使用した場合にはエンドトキシンの除去を要するという問題があった。
スギ以外の花粉症に対しては、そもそも大量の花粉を大量に採取することができないため、アレルゲンワクチンの作製自体が極めて困難であった。
特開2006-280210号公報
Takagi H, Hiroi T, Yang L, Proc Natl Acad Sci USA 102(48):17525-17530, 2005 Yang L, Suzuki K, Hirose S, et al.: Plant Biotechnol J 6:815-826, 2007
このような状況下において、アレルゲン活性を有するリコンビナント花粉アレルゲンを、簡便に、大量かつ高濃度で得ることができ、スギ花粉症以外の花粉症に対するリコンビナント花粉アレルゲンも得ることができる、活性化型リコンビナント花粉アレルゲンの作製方法の開発が望まれていた。
本発明は、上記状況を考慮してなされたもので、以下に示す、活性化型リコンビナント花粉・植物アレルゲンの作製方法等を提供するものである。
(1) 植物を用いた活性化型リコンビナント花粉アレルゲンの作製方法であって、該植物体内に花粉アレルゲン遺伝子を導入し、得られた形質転換植物から活性化型リコンビナント花粉アレルゲンを回収することを特徴とする、前記方法。
上記作製方法において、前記植物は、例えば、シロイヌナズナ又はトマトである。また、前記花粉は、例えば、スギ、ヒノキ、ブタクサ又はカモガヤの花粉であり、花粉アレルゲン遺伝子は、例えば、Cry j 1遺伝子又はCry j 2遺伝子である。
(2) 上記(1)に記載の作製方法により得られる活性化型リコンビナント花粉アレルゲン。
上記活性化型リコンビナント花粉アレルゲンは、例えば、活性化型リコンビナントスギ花粉アレルゲンである。
(3) 上記(2)に記載の活性化型リコンビナント花粉アレルゲンを含む、花粉症ワクチン。
上記花粉症ワクチンは、例えば、スギ花粉症ワクチンである。
本発明によれば、簡便に、大量かつ高濃度で、活性化型リコンビナント花粉アレルゲンを得ることができ、さらにスギ花粉症以外の花粉症に対するリコンビナント花粉アレルゲンも容易に得ることができる、活性化型リコンビナント花粉アレルゲンの作製方法を提供することができる。
本発明の方法により得られる活性化型リコンビナント花粉アレルゲン(例えば、活性化型リコンビナントCry j 1等)は、アレルゲン活性、すなわちヒト細胞におけるヒスタミン遊離能及びIL-5産生作用を有するものであり、しかも、大量かつ高濃度で得られるものであるため、スギ花粉症等の各種花粉症に対するアレルゲンワクチンの調製が可能であり、抗原特異的免疫療法が可能な十分な量及び濃度のアレルゲンワクチンを得ることができる。また、いなかる植物の花粉であっても活性化型リコンビナント花粉アレルゲンの作製が可能であり、上記免疫療法が可能となる。さらに、上記アレルゲンワクチンは、舌下免疫療法や経口免疫療法への応用、特異IgE抗体測定への利用、及び病態解析用のモデル動物(モデルマウス等)作製への利用等も行うことができる。このような点で、本発明の方法は極めて有用なものである。
抗Cry j 1抗体によるウェスタンブロットの結果を示す図である。各レーンはそれぞれ異なるリコンビナントナズナから抽出したタンパク質を電気泳動したものであり、矢印部分がCry j 1タンパク質を示すバンドである。 (A)は、スギ花粉症患者の抹消リンパ球における、活性化型リコンビナントCry j 1刺激によるインターロイキン-5(IL-5)産生量を示す図であり、(B)は、スギ花粉症患者の好塩基球における、活性化型リコンビナントCry j 1刺激によるヒスタミン遊離能を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。なお、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。

1.本発明の概要
スギ花粉症等の花粉症を含むアレルギー性鼻炎に対する治療及び予防方法としては、その殆どが抗ヒスタミン薬などの対処療法にとどまり、日常生活に大きな支障をきたしている。そこで、従来より、花粉から抽出したアレルゲンワクチンを用いた抗原特異的免疫療法が、唯一根治が期待できる治療法として注目されている。
しかしながら、上記ワクチン製造に用いるためのアレルゲン活性を有するリコンビナント花粉アレルゲンを、簡便に、大量かつ高濃度で作製する方法は、これまで無かった。
本発明者らは、鋭意検討及び実験を行い、植物を利用した花粉アレルゲンの作製方法、なかでもアブラナ科の植物、特にナズナ(シロイヌナズナ等)を利用した作製方法であれば、所望のリコンビナント花粉アレルゲンを活性化型のものとして得ることができ、しかも菌体を利用した場合のエンドトキシン含有等の問題もなく、大量に高濃度のものを得ることができることを発見し、本発明の活性化型リコンビナント花粉アレルゲンの作製方法等を見出した。

2.活性化型リコンビナント花粉アレルゲンの作製方法
本発明に係る活性化型リコンビナント花粉アレルゲンの作製方法(以下、本発明の方法ということがある)は、前述した通り、植物を用いた活性化型リコンビナント花粉アレルゲンの作製方法であって、該植物体内に花粉アレルゲン遺伝子を導入し、得られた形質転換植物から活性化型リコンビナント花粉アレルゲンを回収することを含む方法である。
本発明の方法に用いる植物、すなわち花粉アレルゲン遺伝子の導入による形質転換植物の作製に用いる植物としては、限定はされないが、省スペースで大量に培養が可能(室内光で栽培ができるため、段組みが可能なもの)であるアブラナ科(ナズナ、白菜等)、ナス科(トマト等)、キク科(レタス等)が好ましく、特に遺伝情報が詳細に解明されており、栽培しやすいというシロイヌナズナがより好ましい。
本発明の方法に用いる各種植物は、その形態は特に限定はされず、具体的には、植物体として通常の成長過程を経て十分に成長したものであってもよいし、再分化後のものであってもよいし、培養細胞であってもよい。すなわち、本発明の方法に用い得る植物(形質転換の対象となる植物)は、植物体全体、植物器官(例えば葉、花弁、茎、根、種子など)、植物組織(例えば表皮、師部、柔組織、木部、維管束、柵状組織、海綿状組織など)又は植物培養細胞、あるいは種々の形態の植物細胞(例えば、懸濁培養細胞)、プロトプラスト、葉の切片、カルスなどのいずれをも含む。
また、本発明の方法でいう花粉としては、特に限定はされないが、例えば、スギ、ヒノキ、ブタクサ、カモガヤ、シラカンバ、ヨモギ、カナムグラ、イネ科及びカバノキ科等の花粉が好ましく、より好ましくはスギ、ヒノキ、ブタクサ及びカモガヤの花粉、さらに好ましくはスギ及びヒノキの花粉、特に好ましくはスギの花粉である。
ここで、スギ花粉のアレルゲン遺伝子としては、例えば、Cry j 1遺伝子及びCry j 2遺伝子等が好ましく挙げられ、Cry j 1遺伝子がより好ましい。
Cry j 1遺伝子のcDNA塩基配列(配列番号1)及びアミノ酸配列(配列番号2)は、それぞれ、EMBL-EBIのデータベースにアクセッション番号:D34639(塩基配列)及びP18632(アミノ酸配列)として公表されている。
Cry j 2遺伝子のcDNA塩基配列(配列番号3)及びアミノ酸配列(配列番号4)は、それぞれ、EMBL-EBIのデータベースにアクセッション番号:D37765(塩基配列)及びP43212(アミノ酸配列)として公表されている。
ヒノキ花粉のアレルゲン遺伝子としては、例えば、Chao1遺伝子等が好ましく挙げられる。Chao1遺伝子のcDNA塩基配列(配列番号5)及びアミノ酸配列(配列番号6)は、それぞれ、NCBIのGenBankデータベースにアクセッション番号:D45404(塩基配列)及びBAA08246(アミノ酸配列)として公表されている。
ブタクサ花粉のアレルゲン遺伝子としては、例えば、Amb1遺伝子等が好ましく挙げられる。Amb1遺伝子のcDNA塩基配列(配列番号7)及びアミノ酸配列(配列番号8)は、それぞれ、NCBIのGenBankデータベースに、アクセッション番号:M62981(塩基配列)及びAAA32666(アミノ酸配列)としてに公表されている。
カモガヤ花粉のアレルゲン遺伝子としては、例えば、Dac g遺伝子等が好ましく挙げられる。Dac g遺伝子のcDNA塩基配列(配列番号9)及びアミノ酸配列(配列番号10)は、それぞれEMBL-EBIのデータベースにアクセッション番号:U25343(塩基配列)及びP93124(アミノ酸配列)として公表されている。
シラカンバ花粉のアレルゲン遺伝子としては、例えば、Bet V1遺伝子等が好ましく挙げられる。Bet V1遺伝子のcDNA塩基配列(配列番号11)及びアミノ酸配列(配列番号12)は、それぞれ、NCBIのGenBankデータベースにアクセッション番号:AB046540(塩基配列)及びBAB21489(アミノ酸配列)として公表されている。
食物アレルギーとしては、たとえばピーナッツアレルゲンのArahl遺伝子が好ましく上げられ、Arahl遺伝子のcDNA塩基配列(配列番号13)及びアミノ酸配列(配列番号14)は、それぞれ、NCBIのGenBankデータベースにアクセッション番号:L38853(塩基配列)及びAAA60336(アミノ酸配列)として公表されている。
また、本発明においては、上記配列番号1、3、5、7、9、11、及び13の塩基配列等と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつアレルゲン活性を有するタンパク質をコードするDNAも、本発明の方法でいう花粉アレルゲン遺伝子として用いることができる。

上記「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA」とは、例えば、前記配列番号1等の塩基配列等と相補的な塩基配列からなるDNAの全部又は一部をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法又はサザンハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるDNAをいう。ハイブリダイゼーションの方法としては、例えば、“Sambrook & Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual Vol. 3, Cold Spring Harbor, Laboratory Press 2001”、“Ausubel, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons 1987-1997”などに記載されている方法を利用することができる。
上記「ストリンジェントな条件」とは、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃の条件である。
これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有するDNAが効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間及び塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
なお、ハイブリダイゼーションに市販のキットを用いる場合は、例えばAlkphos Direct Labelling Reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いることができる。この場合は、キットに添付のプロトコルにしたがい、標識したプローブとのインキュベーションを一晩行った後、メンブレンを例えば55℃の条件下で1次洗浄バッファー(0.1% (w/v) SDSを含有)で洗浄後、ハイブリダイズしたDNAを検出することができる。
上述した以外にハイブリダイズ可能なDNAとしては、FASTA、BLASTなどの相同性検索ソフトウェアにより、デフォルトのパラメーターを用いて計算したときに、前記配列番号1等の塩基配列等のDNAと、約60%以上、約70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上又は99.9%以上の相同性を有するDNAを挙げることができる。
なお、塩基配列の相同性は、カーリン及びアルチュールによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol. 87, p. 2264-2268, 1990; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, vol. 90, p. 5873, 1993)を用いて決定することができる。BLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul SF, et al., J. Mol. Biol., vol. 215, p. 403, 1990)。
上述した植物体に導入する各種花粉アレルゲン遺伝子は、公知の遺伝子工学的手法又は公知の合成手法によっても取得することも可能である。
以上のように、植物体内に花粉アレルゲン遺伝子を導入することにより形質転換植物を作製することにより、当該形質転換植物体内においては、活性化型リコンビナント花粉アレルゲンの産生が亢進される。
また、本発明においては、植物体内で構成的に発現させるタンパク質としては、上記活性化型リコンビナント花粉アレルゲンに限らず、当該アレルゲンと機能的に同等なタンパク質を選択することもできる。
機能的に同等なタンパク質としては、例えば、以下の(a)及び(b)のタンパク質が好ましく挙げられる。
(a) 配列番号2、4、6、8又は10に示されるアミノ酸配列において1〜15個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつアレルゲン活性を有するタンパク質。
(b) 配列番号2、4、6、8又は10に示されるアミノ酸配列に対して、80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつアレルゲン活性を有するタンパク質。
上記(a)のタンパク質としては、配列番号2、4、6、8又は10に示されるアミノ酸配列において、例えば、1〜15個、1〜14個、1〜13個、1〜12個、1〜11個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個(1〜数個)、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、1個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつアレルゲン活性を有するタンパク質が挙げられる。
ここで、アミノ酸残基が欠失、置換、挿入及び/又は付加されたとは、同一配列中の任意かつ1若しくは複数のアミノ酸配列中の位置において、1又は複数のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/又は付加があることを意味する。当該欠失、置換、挿入及び付加は、これらのうち2種以上が同時に生じてもよいが、当該欠失、置換、挿入及び/又は付加の数は、一般的には小さい程好ましい。
以下に、相互に置換可能なアミノ酸残基の例を示す。同一群に含まれるアミノ酸残基は相互に置換することができるものである。I群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2-アミノブタン酸、メチオニン、o-メチルセリン、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン;II群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2-アミノアジピン酸、2-アミノスベリン酸;III群:アスパラギン、グルタミン;IV群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4-ジアミノブタン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸;V群:プロリン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン;VI群:セリン、スレオニン、ホモセリン;VII群:フェニルアラニン、チロシン。
上記(b)のタンパク質としては、配列番号2、4、6、8又は10に示されるアミノ酸配列に対して、約80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつアレルゲン活性を有するタンパク質が挙げられる。上記相同性の数値は一般的に大きい程好ましい。
上記(a)及び(b)のタンパク質において、「アレルゲン活性」とは、ヒト細胞におけるヒスタミン遊離能及びIL-5産生作用を有する活性を意味する。当該活性は、例えば、末梢血単核球をアレルゲンにより刺激し、その培養上清のヒスタミン濃度またはIL-5などのTh2タイプのサイトカインを測定することにより測定可能である。
上記(a)及び(b)のタンパク質は、例えば、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)及びtBoc法(t-ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法により製造することもできる。また、例えばファルマシア社製、プロテインテクノロジーインストゥルメント社製、及び島津製作所等のペプチド合成機を利用して化学合成することもできる。
本発明の方法において、花粉アレルゲン遺伝子の植物体内への導入は、特に限定はされず、後述する実施例に記載の方法など、各種組換え発現ベクター等を用いた遺伝子組換え技術の常法に基づいて適宜行うことができる。
使用する組換え発現ベクターとしては、所望の花粉アレルゲン遺伝子(例えば、Cry j 1遺伝子及びCry j 2遺伝子等)DNAを含む組換え発現ベクターが挙げられる。当該発現ベクターは、通常、(i) 宿主細胞内で転写可能なプロモーター;(ii) 該プロモーターに結合した所望の遺伝子等及び精製の指標とすべく、6x ヒスチジンタグ、及びDYKDDDDKタグ(例えば3x DYKDDDDK(配列番号21))をコードする配列;及び (iii) RNA分子の転写終結及びポリアデニル化に関し、宿主細胞内で機能するシグナルを構成要素として含む発現カセットを含むように構成される。このように構築されるベクターは、宿主細胞に導入される。発現ベクターの作製方法としては、プラスミド、ファージ又はコスミドなどを用いる方法が挙げられるが、特に限定されない。
発現ベクターの具体的な種類は、特に限定はされず、宿主となる植物体内で発現可能なベクターが適宜選択され得る。すなわち、宿主細胞の種類に応じて、確実に所望の遺伝子等を発現させるために適宜プロモーター配列を選択し、これと所望の遺伝子等を各種プラスミド等に組み込んだベクターを、発現ベクターとして用いればよい。
発現ベクターは、導入されるべき宿主の種類に依存して、発現制御領域(例えば、プロモーター、ターミネーター及び/又は複製起点等)を含有する。具体的には、植物体の形質転換に用いられる組換え発現ベクターとしては、例えば、植物細胞内でポリヌクレオチドを構成的に発現させるプロモーター(例えば、、カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター、キャッサバベインモザイクウィルスのプロモーター、ユビキチンプロモーター)を有するベクター、又は外的な刺激によって誘導性に活性化されるプロモーターを有するベクターが挙げられる。
発現ベクターは、少なくとも1つの選択マーカーを含むことが好ましい。このようなマーカーとしては、栄養要求性マーカー、薬剤耐性マーカーなどが利用可能である。
上述した組換え発現ベクターを宿主となる植物体内に導入して形質転換することにより、所望の花粉アレルゲン遺伝子が導入された形質転換体(形質転換植物)を作製することができる。
上記組換え発現ベクターを用いた植物への遺伝子等の導入には、当業者に公知の形質転換方法(例えば、アグロバクテリウム法、遺伝子銃、PEG法、エレクトロポレーション法など)が用いられる。例えば、アグロバクテリウムを介する方法と直接植物細胞に導入する方法が周知である。アグロバクテリウム法を用いる場合は、構築した植物用組換え発現ベクターを適当なアグロバクテリウム(例えば、アグロバクテリウム・チュメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens))に導入し、この株をリーフディスク法(内宮博文著、植物遺伝子操作マニュアル(1990)27〜31頁、講談社サイエンティフィック、東京)などに従って無菌培養葉片に感染させ、形質転換植物を得ることができる。また、Nagelらの方法(Micribiol.Lett., 67, 325 (1990))が用いられ得る。この方法は、まず前述した組換え発現ベクターをアグロバクテリウムに導入し、次いで、形質転換されたアグロバクテリウムをPlant Molecular Biology Manual(S.B.Gelvinら、Academic Press Publishers)に記載の方法で植物細胞又は植物組織に導入する方法である。ここで、「植物組織」とは、植物細胞の培養によって得られるカルスを含む。又は、シロイヌナズナの場合、Clough and Bent (Plant Journal 16, 735-743 (1998))で報告されたfloral dip法により形質転換体が得られる。アグロバクテリウム法を用いて形質転換を行う場合には、バイナリーベクターを使用することができる。
また、エレクトロポレーション法や遺伝子銃法を用いる場合は、植物体、植物器官、植物組織自体をそのまま使用してもよく、切片を調製した後に使用してもよく、プロトプラストを調製して使用してもよい。このように調製した試料を遺伝子導入装置(例えばPDS-1000(BIO-RAD社)等)を用いて処理することができる。処理条件は植物又は試料によって適宜設定することができる。
遺伝子等が導入された細胞又は植物組織は、まず薬剤耐性(例えば、カナマイシン耐性、除草剤ビアラフォス(L-2-アミノ-4-[(ヒドロキシ)(メチル)ホスフィノイル]ブチリル-L-アラニル-L-アラニン)耐性、ハイグロマイシン耐性等)で選択され、次いで常法により植物体に再生される。形質転換細胞から植物体の再生は、植物細胞の種類に応じて当業者に公知の方法で行うことが可能である。
植物培養細胞を宿主として用いる場合は、形質転換は、組換えベクターを遺伝子銃法やエレクトロポレーション法などで培養細胞に導入する。形質転換の結果得られるカルスやシュート、毛状根などは、そのまま細胞培養、組織培養又は器官培養に用いることが可能であり、また従来知られている植物組織培養法を用い、適当な濃度の植物ホルモン(オーキシン、サイトカイニン、ジベレリン、アブシジン酸、エチレン、ブラシノライドなど)の投与などによって植物体に再生させることができる。
遺伝子が植物に導入されたか否かの確認は、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法などによって行うことができる。例えば、形質転換植物からDNAを調製し、DNA特異的プライマーを設計してPCRを行う。PCRは、前記プラスミドを調製するために使用した条件と同様の条件で行うことができる。その後は、増幅産物についてアガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又はキャピラリー電気泳動などを行うことにより、形質転換されたことを確認できる。また、予め蛍光色素などによって標識したプライマーを用いてPCRを行い、増幅産物を検出することもできる。さらに、マイクロプレートなどの固相に増幅産物を結合させ、蛍光又は酵素反応などによって増幅産物を確認する方法も採用することができる。
所望の花粉アレルゲン遺伝子が導入された形質転換植物が一旦取得されれば、当該植物体の有性生殖又は無性生殖によって子孫を得ることができる。また、当該植物体又はその子孫、あるいはこれらのクローンから、例えば、種子、果実、切穂、塊茎、塊根、株、カルス、プロトプラストなどを得て、それらを基に当該植物体を量産することができる。従って、本発明には、所望の花粉アレルゲン遺伝子がゲノム中に発現可能に導入された植物体、若しくは当該植物体と同一の性質を有する当該植物体の子孫、又はこれら由来の組織も含まれる。
本発明の方法において、上記遺伝子導入により得られた形質転換植物からの活性化型リコンビナント花粉アレルゲンの回収は、当該形質転換植物の育種体又は培養物から、所望の活性化型リコンビナント花粉アレルゲンを分離、回収及び精製することにより行うことができる。ここで、育種体及び培養物とは、育種した植物体(再分化させたものも含む)又はその破砕物、及び、細胞培養液若しくは培養細胞又は培養細胞の破砕物のいずれをも意味する。発現させた活性化型リコンビナント花粉アレルゲンの分離、回収及び精製は、通常の方法に従って行うことができる。具体的には、所望の活性化型リコンビナント花粉アレルゲンが、育種した植物体内や培養細胞内に蓄積される場合には、上記育種又は培養後、超音波、リゾチーム及び凍結融解などの通常の破砕方法で植物体や細胞を破砕した後、遠心分離及びろ過などにより所望の活性化型リコンビナント花粉アレルゲンの粗抽出液を得ることができる。この抽出液に対しては、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー、順層クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、透析法及び限外ろ過法等の通常の分離及び精製方法を、単独で又は適宜組み合わせて適用することができる。
本発明の方法においては、上述した遺伝子導入や、回収の工程以外に、他の工程を含んでいてもよく、限定はされない。
3.花粉症ワクチン
本発明に係る花粉症ワクチンは、前述した本発明の方法により得られた活性化型リコンビナント花粉アレルゲンを含むことを特徴とするものである。
また本発明は、前述した本発明の方法により得られた活性化型リコンビナント花粉アレルゲンを含む、花粉症の治療及び/又は予防用医薬組成物(予防薬及び/又は治療薬)も提供することができる。さらに本発明は、上記花粉症ワクチン(又は上記医薬組成物)を患者(被験者)に投与することを含む、花粉症の予防及び/又は治療方法(すなわち抗原特異的免疫療法)や、花粉症の予防及び/又は治療のための上記花粉症ワクチン(又は上記医薬組成物)の使用や、上記花粉症の予防薬及び/又は治療薬を製造するための上記花粉症ワクチン(又は上記医薬組成物)の使用等も提供することができる。
本発明の花粉症ワクチンは、公知のあらゆる方法により患者の生体内に導入することができる。例えば、舌下投与又は経口投与のほか、場合により、筋肉、腹腔内、皮内又は皮下等の注射、あるいは鼻腔、口腔又は肺からの吸入により生体に導入することができるが、舌下投与がより好ましい。
本発明の花粉症ワクチンは、活性化型リコンビナント花粉アレルゲンと、賦形剤、増量剤、結合剤、滑沢剤等公知の薬学的に許容される担体、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等と混合することができる。
本発明の花粉症ワクチンは、錠剤(口腔内崩壊錠を含む)、カプセル剤、散剤、顆粒剤、丸剤、液剤、シロップ剤等の経口投与剤、注射剤、外用剤、坐剤、点眼剤等の非経口投与剤などの形態に応じて、経口投与又は非経口投与することができる。
本発明の花粉症ワクチンの投与量は、有効成分となる活性化型リコンビナント花粉アレルゲンの濃度、当該アレルゲンの種類、投与経路、投与対象、患者の年齢、体重、性別、症状その他の条件により適宜選択及び設定することができるが、一日の投与量としては、例えば舌下投与の場合は、2〜6000 Japanese Allergy Unit (JAU)/ml (6000 JAU は45μgのCry j 1タンパク質量に相当する)の濃度のアレルゲンエキス(アレルゲンタンパク質の希釈液)を1〜20滴投与することが好ましい。
当該舌下投与の具体例としては、2 JAU 1滴から始め、初めの1ヵ月間は増量しながら連日投与し、その後、6000 JAU 20適で維持して、週1回の舌下投与を行い、(例えば花粉飛散終了までの)計約6ヵ月間投与を継続する。その後、6ヵ月間投与しないか、又は1ヵ月に1度の投与を6ヵ月間継続した後、再度、上記と同様の週1回の投与を約6ヵ月間行う。この繰り返しを最低3年間行う。
本発明者らが作製した花粉症ワクチンは、花粉症に対して唯一根治が期待できる治療法、すなわち抗原特異的免疫療法に有効に利用することができるものである。

以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例において用いる分子生物学的手法は、他で詳述しない限り、Molecular Cloning(Sambrook et al., Cold Spring Harbour Laboratory Press, 2001)に記載の方法に従った。
<植物を利用した活性化型リコンビナントCry j 1アレルゲンの作製>
スギ花粉由来のCry j 1タンパク質を、シロイヌナズナにおいて構成的に発現させるためのコンストラクトを、以下の通り作製した。
まず、Cry j 1タンパク質をコードするcDNAの塩基配列情報(EMBLヌクレオチドデータベース(EMBL-Bank)のアクセッション番号: D34639;配列番号1)に基づいて、後述するPCR用プライマー(配列番号15,16)を作製した。
次いで、公知の手法(Noguchi et al., (2008) Plant J.54, 415-427)により、スギ花粉からCry j 1タンパク質をコードするcDNAを調製した。その後、Cry j 1遺伝子を増幅するため、当該cDNAを鋳型とし、下記Fw及びRvプライマー(配列番号15,16)を用いて、PCRを以下の反応液組成及び反応条件で行った。PCR反応液(50μl)は、上記合成したcDNA 1μl、5x PrimeSTAR buffer (TakaRaBio)、 0.2mM dNTPs、Fw及びRvプライマー 各0.4 pmol/μl、及びPrimeSTAR polymerase 2.5 Uからなるものを用いた。PCR反応条件については、94℃で2分間反応させた後、「94℃で1分、55℃で1分及び72℃で2分」の反応を1サイクルとして計30サイクル行い、その後72℃で7分間処理した。
<プライマー>
Fwプライマー (配列番号15):
5’-GATCCATATGGATTCCCCTTGCTTAGTAGC -3’
Rvプライマー (配列番号16):
5’-GAACTTCCAGACAACGTTTAGAGAGAGAGC-3’
また、プロテアーゼ認識部位及び標識タグ(6x ヒスチジンタグ、3x DYKDDDDK (配列番号21))をCry j 1タンパク質のC末端に連結するため、PCRを以下の条件で行った。プロテアーゼ認識部位に関しては、テンプレートとしてpCold ProS2 (TaKaRaBio) 1μl、5x PrimeSTAR buffer (TakaRaBio)、0.2mM dNTPs、Fw及びRvプライマー(配列番号17、18) 各0.4 pmol/μl、及びPrimeSTAR polymerase 2.5 Uの反応液を用いた。また標識タグ配列の増幅として、テンプレートとしてpF3PZPY122 (Feng et al., (2003) Plant Cell 15, 1083-1094)の3x DYKDDDDK配列をBamHIとKpnIサイトでpRSET-A (Invitrogen)に導入したプラスミドpRSET-A-3xDYKDDDDKをテンプレート1μlとして、5x PrimeSTAR buffer (TakaRaBio)、0.2mM dNTPs、Fw及びRvプライマー(配列番号19、20) 各0.4 pmol/μl、及びPrimeSTAR polymerase 2.5 Uの反応液を用いた。PCR反応条件については、94℃で2分間反応させた後、「94℃で1分、55℃で1分及び72℃で2分」の反応を1サイクルとして計30サイクル行い、その後72℃で7分間処理した。
Fwプライマー (配列番号17):
5’-TAAACGTTGTCTGGAAGTTCTGTTCCAGGG-3’
Rvプライマー (配列番号18):
5’- AACCCCGCATCCTACCTTCGAGACCACCAC-3’
Fwプライマー (配列番号19):
5’- CGAAGGTAGGATGCGGGGTTCTCATCATCA-3’
Rvプライマー (配列番号20):
5’- AGACATGTCGACTTAGGGCCCCCCCTCGAC-3’
上記3つのPCR産物をテンプレートに、5x PrimeSTAR buffer (TakaRaBio)、0.2mM dNTPs、Fw及びRvプライマー(配列番号15、20) 各0.4 pmol/μl、及びPrimeSTAR polymerase 2.5 Uの反応液を用いて、PCRを行いCry j 1-プロテアーゼ認識部位-標識タグを増幅した。PCR反応条件については、94℃で2分間反応させた後、「94℃で1分、55℃で1分及び72℃で2分」の反応を1サイクルとして計30サイクル行い、その後72℃で7分間処理した。
増幅されたCry j 1-プロテアーゼ認識部位-標識タグのPCR産物を、前記プライマー(配列番号15,20)に付加しておいたNdeIサイト及びSalIサイトで制限酵素処理を行い、切り出されたCry j 1-プロテアーゼ認識部位-標識タグ断片を、植物形質転換用バイナリーベクターpRI101-ANベクターのNdeIサイト及びSalIサイトとの間に挿入した。シークエンスにPCRエラーがないことを確認して、植物形質転換用ベクターとした。
上記バイナリーベクターを、常法(Clough and Bent (1998) Plant J. 16, 735-743)に従ってアグロバクテリウム(strain: GV3101)に形質転換した。
上記アグロバクテリウムをLB培地200mL(終濃度50μg/mlのカナマイシン、30μg/mlのゲンタマイシン、30μg/mlリファンピシンを含む)にて28℃で終夜培養したものを、遠心分離により回収し、200mLの5%スクロース(0.05% Silwet L-77を含む)溶液に懸濁した。このアグロバクテリウム懸濁スクロース溶液に6週間目のシロイヌナズナの花芽を5秒間浸した。そのまま生育させ、形質転換後約4週間後に水の供給を止め、種を成熟させた。その後、種子を選抜培地にて選抜して、Cry j 1-プロテアーゼ認識部位-標識タグが挿入された形質転換植物(Cry j 1遺伝子組換えシロイヌナズナ)を得た。なお、上記選抜培地は、ムラシゲスクーグ培地(日本製薬株式会社)、1%スクロース、50μg/mlのカナマイシン、0.8%寒天末(ナカライテスク)の組成のものを用いた。
<ウェスタンブロット解析によるCry j 1の発現確認>
上記で得られたCry j 1遺伝子組換えシロイヌナズナを、人工気象器を用いて栽培し、播種後3週間目(抽苔しておらず葉のみの状態)の葉から、Murtas et al. (Plant Cell 15, 2308-2319 (2003))に記載の粗タンパク質の調製方法と同様の方法を用いて、リコンビナントCry j 1の粗タンパク質を調製した。当該粗タンパク質から6x ヒスチジンタグを指標としてニッケルカラムにより、リコンビナントCry j 1タンパク質(活性化型リコンビナントCry j 1タンパク質)を精製した。精製後のリコンビナントCry j 1タンパク質は、溶出後、限外ろ過により濃縮した。
次いで、精製・濃縮後に得られたタンパク質がリコンビナントCry j 1タンパク質であるかどうかを確認するため、ウエスタンブロッティングを行った。その結果を図1に示した。図1より、リコンビナントCry j 1タンパク質であることが確認された。
<活性化型リコンビナントCry j 1アレルゲンを用いたスギ花粉症ワクチンの調製>
実施例1で得られた活性化型リコンビナントCry j 1タンパク質(50%グリセリン溶液で1μg/ml又は10μg/mlに希釈した)による、スギ花粉症患者の末梢血中のリンパ球及び好塩基球に対する刺激効果を確認した。
その結果を図2(A)及び図2(B)に示した。図2(A)は、スギ花粉症患者の抹消リンパ球における、活性化型リコンビナントCry j 1タンパク質の刺激によるインターロイキン-5(IL-5)産生量の結果を示す図である。また、図2(B)は、スギ花粉症患者の好塩基球における、活性化型リコンビナントCry j 1タンパク質の刺激によるヒスタミン遊離能の結果を示す図である。なお、図2(A)及び図2(B)においては、非投与の場合をコントロールとし、図2(A)においては、50%グリセリン溶液のみを投与した結果も併せて示した。
図1(A) 及び図1(B)の結果から、活性化型リコンビナントCry j 1タンパク質の刺激により、抹消リンパ球からはIL-5の生産が有意に亢進し、好塩基球からはヒスタミンの遊離が有意に亢進され、本実施例で得られた活性化型リコンビナントCry j 1タンパク質は、花粉症ワクチンに利用できるアレルゲンとして有用なものであることが分かった。
配列番号15:合成DNA
配列番号16:合成DNA
配列番号17:合成DNA
配列番号18:合成DNA
配列番号19:合成DNA
配列番号20:合成DNA
配列番号21:合成ペプチド

Claims (8)

  1. 植物を用いた活性化型リコンビナント花粉アレルゲンの作製方法であって、該植物体内に花粉アレルゲン遺伝子を導入し、得られた形質転換植物から活性化型リコンビナント花粉アレルゲンを回収することを特徴とする、前記方法。
  2. 前記植物がシロイヌナズナ又はトマトである、請求項1記載の方法。
  3. 前記花粉が、スギ、ヒノキ、ブタクサ又はカモガヤの花粉である、請求項1又は2記載の方法。
  4. 花粉アレルゲン遺伝子が、Cry j 1遺伝子又はCry j 2遺伝子である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法により得られる活性化型リコンビナント花粉アレルゲン。
  6. 活性化型リコンビナントスギ花粉アレルゲンである、請求項5記載のアレルゲン。
  7. 請求項5又は6記載のアレルゲンを含む、花粉症ワクチン。
  8. スギ花粉症ワクチンである、請求項7記載のワクチン。
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