JP2013032828A - 液封入式防振装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】微振幅入力時における低動ばね特性を発揮しつつ、大振幅入力時におけるオリフィス流路での液流動効果による高減衰特性を発揮しかつ異音を大幅に低減する。
【解決手段】主液室34Aと副液室34Bとの間を液体流通させることなく仕切る弾性仕切り膜44と、その周縁部を両面から挟持する一対の挟持部材46,48とを仕切り体38に設ける。一対の挟持部材には、弾性仕切り膜44の可撓部52の変位量を、当該弾性仕切り膜の両側から規制する一対の変位規制部58,62を設ける。そして、弾性仕切り膜44の可撓部52に、変位規制部58,62に向かって膜面から突出する薄肉筒状の緩衝部68を見設ける。
【選択図】図1

Description

本発明は、液封入式防振装置に関するものである。
自動車エンジン等の振動源の振動を車体側に伝達しないように支承するエンジンマウント等の防振装置として、振動源側に取り付けられる第1取付具と、支持側に取り付けられる第2取付具と、これら取付具の間に介設されたゴム状弾性体からなる防振基体と、防振基体が室壁の一部をなす主液室と、ダイヤフラムが室壁の一部をなす副液室と、これら液室間を連通させるオリフィス流路とを備えてなり、前記オリフィス流路による液流動効果や防振基体の制振効果により、振動減衰機能と振動絶縁機能を果たすように構成された液封入式防振装置が知られている。
この種の液封入式防振装置においては、高周波数域での微振幅振動に対する動ばね定数を低減するために、主液室と副液室とを仕切る仕切り体に弾性仕切り膜を組み込み、両液室間の液圧変動を弾性仕切り膜の変位(変形)により吸収するように構成されることがある。
例えば、下記特許文献1では、仕切り体に可動ゴム板を配設した上で、該可動ゴム板の中央部分を剛性の高い可動板部とするとともに、外周部分を剛性の小さい可動膜部とし、両者の特性を併せ持たせた構造が開示されている。しかしながら、この構造では、中央部分の可動板部が上下の変位規制部に接触する際に、衝突による衝撃が異音となって車室内に伝わることがあり、即ち異音が発生するという問題がある。
下記特許文献2には、可動板と変位規制部との衝突に起因する異音を防止するために、変位規制部に粘弾性を有する薄膜状の緩衝膜材を貼り付けることが開示されているが、このような方策では、コストが大幅に増加してしまう。
下記特許文献3には、仕切り体に弾性仕切り膜を組み込んだ上で、弾性仕切り膜には、変位規制部の形状に対応させて当該変位規制部の位置に変位規制突起を設け、該変位規制突起と変位規制部を当接させて両者の間隙をなくすことにより、異音を低減することが開示されている。また、大振幅時に、変位規制突起が圧縮されることによる反力により、弾性仕切り膜の剛性を大きくし、これにより減衰性能を向上することが開示されている。しかしながら、変位規制突起は、単に環状に形成されたものであって突出高さが小さいため、大振幅時、変位規制部に接触した後に変形量が小さく、そのためエネルギー吸収量が小さいので、仕切り体本体への伝達エネルギーを十分に緩和させることはできない。
下記特許文献4には、仕切り体に組み込んだ可動板に、凹溝と凸条による凹凸を同心円状に配置し肉厚を変化させた構成が開示されている。しかしながら、断面略三角形状の凸条では、凸条自体のバネ定数が高く、大振幅時、凸条が変位規制部に衝突したときのエネルギー吸収量が小さいので、仕切り体本体への伝達エネルギーを十分に緩和させることはできない。
特開2003−074617号公報 特開2006−038017号公報 特開2006−057727号公報 特開2006−258217号公報
本発明は、上記の点に鑑み、微振幅入力時における低動ばね特性を発揮しつつ、大振幅入力時におけるオリフィス流路での液流動効果による高減衰特性を発揮し、しかも弾性仕切り膜と変位規制部との衝突による異音を大幅に低減することができる液封入式防振装置を提供することを目的とする。
本発明に係る液封入式防振装置は、振動源側と支持側の一方に取り付けられる第1取付具と、振動源側と支持側の他方に取り付けられる第2取付具と、前記第1取付具と前記第2取付具との間に介設されたゴム状弾性体からなる防振基体と、前記防振基体が室壁の一部をなす液体が封入された主液室と、ゴム状弾性体からなるダイヤフラムが室壁の一部をなす液体が封入された副液室と、前記主液室と前記副液室とを仕切る仕切り体と、前記主液室と前記副液室とを連通させるオリフィス流路と、を備えたものである。前記仕切り体は、前記主液室と前記副液室との間を液体流通させることなく仕切る弾性仕切り膜と、前記弾性仕切り膜の周縁部を両面から挟持する一対の挟持部材とを備えてなる。前記一対の挟持部材は、前記弾性仕切り膜の前記周縁部よりも内側の可撓部の変位量を、当該弾性仕切り膜の両側から規制する一対の変位規制部を備える。そして、前記弾性仕切り膜の前記可撓部に、前記変位規制部に向かって膜面から突出する薄肉筒状の緩衝部が設けられている。
本発明の好ましい態様において、前記緩衝部を除いた弾性仕切り膜本体の膜面と前記変位規制部との間隙が、前記変位規制部の径方向における内方側ほど大きく設定されてもよい。また、前記緩衝部は、前記可撓部の軸心に対して同心状に設けられ、前記軸心を中心として前記可撓部の径の50%の範囲内に少なくとも1つ設けられてもよい。また、前記緩衝部は、前記可撓部の軸心に対して同心円状に複数設けられ、内側の緩衝部ほど膜面からの突出高さが大きく形成されてもよい。前記変位規制部には、複数の前記緩衝部の間の径方向位置に各緩衝部の径方向における動きを制限する突起が設けられてもよい。
本発明に係る液封入式防振装置であると、弾性仕切り膜の可撓部に薄肉筒状の緩衝部を設けたことにより、微振幅入力時における低動ばね特性を発揮しつつ、大振幅入力時には、膜剛性を高くしてオリフィス流路での液流動効果による高減衰特性を発揮することが可能となり、更に、薄肉筒状の緩衝部によりエネルギー吸収量を大きくとれるため、弾性仕切り膜と変位規制部との衝突による異音を大幅に低減することが可能となる。
第1実施形態に係る液封入式防振装置の縦断面図である。 同実施形態における仕切り体の平面図である。 図2のIII−III線断面図である。 (a)は同実施形態における第1挟持部材の平面図、(b)はそのIVb−IVb線断面図、(c)は底面図である。 (a)は同実施形態における弾性仕切り膜の平面図、(b)は側面図、(c)はVc−Vc線断面図である。 同弾性仕切り膜の要部拡大断面図である。 第2実施形態における仕切り体の平面図である。 図7のVIII−VIII線断面図である。 (a)は第2実施形態における第1挟持部材の平面図、(b)はそのIXb−IXb線断面図、(c)は底面図である。 (a)は第3実施形態における弾性仕切り膜の平面図、(b)は側面図、(c)は底面図、(d)はXd−Xd線断面図である。 (a)は第4実施形態における弾性仕切り膜の平面図、(b)は側面図、(c)は底面図、(d)はXId−XId線断面図である。 第5実施形態における仕切り体の要部拡大断面図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1に示された本実施形態に係る液封入式防振装置10は、自動車のエンジンを支承するエンジンマウントであり、振動源であるエンジン側に取り付けられる上側の第1取付具12と、支持側の車体に取り付けられる筒状をなす下側の第2取付具14と、これら両取付具12,14の間に介設されて両者を連結するゴム弾性体からなる防振基体16とを備えてなる。なお、図1は無負荷状態を示している。
第1取付具12は、第2取付具14の軸芯部上方に配されたボス金具であり、径方向外方に向けてフランジ状に突出するストッパ部18が形成されている。また、上端部にはボルト穴20が設けられ、不図示のボルトを介してエンジン側に取り付けられるよう構成されている。
第2取付具14は、防振基体16が加硫成形される筒状胴部22と、その下端部に連結される有底筒状部24とからなる本体金具であり、有底筒状部24の底面に下向きのボルト26が突設され、このボルト26を介して車体側に取り付けられるように構成されている。筒状胴部22は、その下端部が有底筒状部24の上端開口部に対し、かしめ部28によりかしめ固定されている。符号30は、筒状胴部22の上端部にかしめ固定されたストッパ金具であり、第1取付具12のストッパ部18との間でストッパ作用を発揮する。
防振基体16は、略傘状に形成され、その上部に第1取付具12が埋設された状態に加硫接着され、下端外周部が筒状胴部22の上端開口部に加硫接着されている。防振基体16の下端部には、筒状胴部22の内周面を覆うゴム膜状のシール壁部32が連なっている。
第2取付具14には、防振基体16の下面に対して軸方向Xに対向配置されて防振基体16との間に液体封入室34を形成する可撓性ゴム膜からなるダイヤフラム36が取り付けられ、液体封入室34に液体が封入されている。ダイヤフラム36は、外周部に環状の補強金具36Aを備え、該補強金具36Aを介して上記かしめ部28に固定されている。
液体封入室34は、第2取付具14(詳細には、筒状胴部22)の内側において、防振基体16の下面とダイヤフラム36との間に形成されており、仕切り体38によって、防振基体16側、即ち防振基体16が室壁の一部をなす上側の主液室34Aと、ダイヤフラム36側、即ちダイヤフラム36が室壁の一部をなす下側の副液室34Bとに仕切られている。主液室34Aと副液室34Bは、単一のオリフィス流路40により互いに連通されている。
仕切り体38は、筒状胴部22の内側にシール壁部32を介して嵌着されており、その下面側に当接配置された仕切受け板42を用いて保持されている。仕切受け板42は、中央部に開口部を持つ環状金具であり、周縁部をダイヤフラム36の補強金具36Aとともに、上記かしめ部28で固定することにより、仕切り体38が、シール壁部32に設けられた段部32Aと仕切り受板42との間で軸方向Xに挟まれた状態に保持されている。
仕切り体38は、主液室34Aと副液室34Bとを仕切るゴム弾性体からなる弾性仕切り膜44と、該弾性仕切り膜44を内周面側に収容する第1挟持部材46と、第1挟持部材46との間で弾性仕切り膜44の周縁部を挟持する第2挟持部材48とを備えてなる(図2,3参照)。
弾性仕切り膜44は、図5に示すように円板状のゴム膜である。弾性仕切り膜44は、周縁部が厚肉状をなす外周厚肉部50に形成されるとともに、該外周厚肉部50よりも内側が薄肉円板状をなす可撓部52として形成されている。
外周厚肉部50は、第1及び第2挟持部材46,48によって両面側から挟圧保持される部位であり、第1及び第2挟持部材46,48が密着することで、外周厚肉部50は液密に保持されている。外周厚肉部50は、第1及び第2挟持部材46,48によって軸方向Xに圧縮された状態で保持されてもよく、これにより液体のリークを確実に防止することができる。
可撓部52は、その一方面に主液室34Aの圧力が及ぼされるように当該一方面が主液室34Aに面するとともに、他方面に副液室34Bの圧力が及ぼされるように当該他方面が副液室34Bに面している。これにより、可撓部52は、主液室34A及び副液室34Bの液圧変動により軸方向Xに撓み変形(変位)可能に構成されている。また、可撓部52には貫通孔は設けられておらず、そのため、可撓部52は、主液室34Aと副液室34Bとの間を液体流通させることなく仕切っている。
第1挟持部材46は、アルミニウムや樹脂等の剛性材料からなる環状部材であり、図3に示すように外周面には外向きに開かれたオリフィス形成溝54が設けられ、シール壁部32を介して筒状胴部22の内周面に嵌合されることで、当該内周面との間に、周方向に沿って延びる上記オリフィス流路40を形成する(図1参照)。従って、第1挟持部材46は、外周部にオリフィス流路40を形成するオリフィス形成部を備えている。図2に示すように、第1挟持部材46は、オリフィス形成溝54の周方向Cの一端に主液室34Aに対して開口する切り欠き状の主液室側開口40Aを備えるとともに、周方向Cの他端に副液室34Bに対して開口する副液室側開口(不図示)を備え、これら開口を介してオリフィス流路40は主液室34Aと副液室34Bの間を連通している。なお、オリフィス流路40は、この例では、車両走行時のシェイク振動を減衰するために、シェイク振動に対応した低周波数域(例えば、5〜15Hz程度)にチューニングされている。すなわち、オリフィス流路40を通じて流動する液体の共振作用に基づく減衰効果がシェイク振動の入力時に有効に発揮されるように、流路の断面積及び長さを調整することによってチューニングされている。但し、これに限定されるものではない。
第1挟持部材46は、弾性仕切り膜44に関して副液室34B側で外周厚肉部50を支持する円形リング状の第1外周挟持部56と、第1外周挟持部56の内側において上記可撓部52の軸方向Xにおける変位量を規制する第1変位規制部58とを備える。
第2挟持部材48は、第1挟持部材46の上面側に設けられた平面視円形状の凹所に内嵌固定される円板状部材であり、アルミニウムや樹脂等の剛性材料より形成されている。第2挟持部材48は、弾性仕切り膜44に関して主液室34A側に位置して、上記第1挟持部材46とともに弾性仕切り膜44の外周厚肉部50を挟持する。そのため、第2挟持部材48は、上記第1外周挟持部56とともに外周厚肉部50を挟持する円形リング状の第2外周挟持部60を備える。また、第2外周挟持部60の内側において上記可撓部52の軸方向Xにおける変位量を規制する第2変位規制部62を備える。これにより、上記第1変位規制部58と第2変位規制部62とによって、可撓部52の軸方向Xにおける変位量が、弾性仕切り膜44の両側から規制するよう構成されている。
図4に示すように、第2変位規制部62には、主液室34Aの液圧変動を弾性仕切り膜44に伝達するために複数の開口部64が貫通形成されている。この例では、開口部64は、円形状をなす第2変位規制部62の中心部に設けられるとともに、外周部における周上複数箇所(図では4箇所)に等間隔に設けられている。同様に、第1変位規制部58にも、副液室34Bの液圧変動を弾性仕切り膜44に伝達するために複数の開口部66が貫通形成されている。この例では、開口部66は、第2変位規制部62の開口部64と軸方向Xからみて重なり合うように、円形状をなす第1変位規制部58の中心部と、外周部における周上等間隔での複数箇所に設けられている。なお、図4中の符号67は、第2外周挟持部60の内周縁に沿って設けられた係止突条であり、外周厚肉部50を係止してその内方への変位を制限する。同様の係止突条67は、図3に示すように第1外周挟持部56にも設けられている。
図3に示すように、第1変位規制部58の上面(即ち、可撓部52との対向面)は、その外周側から中心に向かって副液室34B側に傾斜した傾斜面状(テーパ面状)に形成されている。また、第2変位規制部62の下面(即ち、可撓部52との対向面)は、その外周側から中心に向かって主液室34A側に傾斜した傾斜面状(テーパ面状)に形成されている。これにより、一対の変位規制部58,62の間隙は、径方向Kにおける内方側ほど漸次大きくなるよう形成されている。上記のように弾性仕切り膜44の可撓部52は薄肉円板状であるため、後述する緩衝部68を除いた弾性仕切り膜本体(即ち、可撓部52)の膜面と変位規制部58,62との間隙Gは、変位規制部58,62の径方向Kにおける内方側ほど漸次大きくなるように設定されている。
弾性仕切り膜44の可撓部52には、第1及び第2変位規制部58,62に向かって膜面から突出する薄肉円筒状の緩衝部68が、可撓部52の軸心(中心)O(図5参照)に対して同心状に設けられている。緩衝部68は、可撓部52の表裏両側の膜面からそれぞれ突出して設けられており、表裏両側で対称に形成されている。緩衝部68は、大振幅入力時に変位規制部58,62との当接により弾性仕切り膜44の膜剛性を高めるとともに、変位規制部58,62との当接による衝撃を和らげる円筒状のゴム部分である。緩衝部68は、微振幅入力時には可撓部52の剛性を低くして低動ばね特性を発揮し、かつ大振幅入力時には変位規制部58,62との当接後も緩衝部68の変形を許容して仕切り体38への伝達エネルギーを緩和させるために、薄肉円筒状に形成されている。すなわち、緩衝部68は、図6に示すように、膜面からの突出高さQが肉厚(軸方向Xでの平均肉厚)Pの2倍以上(Q≧2P)となるように薄肉かつ高く設定されており、これにより、大振幅入力時に変位規制部58,62との当接後にも軸方向Xにおいて緩衝部68が容易に変形できるよう構成されている。より好ましくは、突出高さQが肉厚Pの3倍以上(Q≧3P)である。また、緩衝部68は、その両側面の傾斜角度(軸方向Xに対する角度)θが0°≦θ≦30°であることが好ましい。
図5に示すように、緩衝部68は、可撓部52の軸心Oに対して同心円状に複数設けられており、この例では、径方向Kに一定の間隔をおいて、内側緩衝部68Aと中間緩衝部68Bと外側緩衝部68Cとの三重に設けられている。緩衝部68は、上記軸心Oを中心として可撓部52の径の50%の範囲内に少なくとも1つ設けられていることが好ましい。すなわち、少なくとも1つの緩衝部68は、可撓部52の直径をDとしたとき、上記軸心Oを中心としてD/2の範囲内に配置されている(図3参照)。一例として、図示したものでは、可撓部52の直径D=40mmに対し、内側緩衝部68Aの直径が10mm、中間緩衝部68Bの直径が20mm、外側緩衝部68Cの直径が30mmであり、従って、内側の緩衝部68Aと中間緩衝部68Bの2つの緩衝部が、上記D/2の範囲内に配置されている。
図6に示されるように、上記3つの緩衝部68A,68B,68Cは、可撓膜52の膜面と変位規制部58,62との上記間隙Gの大きさに従って、内側の緩衝部ほど膜面からの突出高さQが大きく設定されている。一例として、図示したものでは、内側緩衝部68Aは、突出高さQ=4mm、肉厚P=1mm、傾斜角度θ=5°であり、中間緩衝部68Bは、突出高さQ=3mm、肉厚P=0.9mm、傾斜角度θ=5°であり、外側緩衝部68Cは、突出高さQ=2mm、肉厚P=0.7mm、傾斜角度θ=5°である。なお、各緩衝部68の高さは、この例では、対向する変位規制部58,62に対してクリアランスなし(クリアランス:0mm)で当接するように設定しているが、緩衝部68と変位規制部58,62との間にクリアランスが設定されてもよく、又は、緩衝部68が変位規制部58,62に対して予備圧縮された状態に設けられてもよい。
なお、図4において符号70は、変位規制部58,62に設けられた液逃がし孔であり、変位規制部58,62を軸方向Xに貫通して設けられている。上記のように複数の緩衝部68を同心円状に設けた場合、可撓部52と変位規制部58,62との間の液室が緩衝部68によって径方向Kに区切られ(図3参照)、可撓部52が撓み変形しづらくなる。そこで、可撓部52が撓み変形する際に、各緩衝部68間の液室部分からそれぞれ主液室34Aや副液室34Bに液体を逃がすように液逃がし孔70が設け、これにより撓み変形しやすくしている。この例では、液逃がし孔70は、各緩衝部68の間に相当する位置において、周上4箇所に設けられている。
以上よりなる液封入式防振装置10であると、弾性仕切り膜44には、可撓部52を変位規制するための緩衝部68が設けられているが、該緩衝部68が薄肉円筒状であるため、膜剛性が小さい。そのため、微振幅入力時、即ち停車したアイドル時のように比較的微振幅で高周波数側の振動が入力した時に、弾性仕切り膜44が主液室34Aと副液室34Bの液圧差を効果的に緩和して動ばね定数の低減を図ることができる。
一方、大振幅入力時、例えば車両走行時におけるシェイク振動のような比較的大振幅で低周波数側の振動が入力した時には、撓み変形した緩衝部68が上下の変位規制部58,62に当接し圧縮されることで、膜剛性を高くすることができるので、オリフィス流路40での液流動効果による高減衰特性を実現することができる。また、その際、本実施形態であると、緩衝部68が薄肉筒状であるので、変位規制部58,62との当接後も、緩衝部68の軸方向Xにおける弾性変形が可能である。そのため、仕切り体38(即ち、第1及び第2挟持部材46,48)への伝達エネルギーを緩和させることができる。すなわち、この場合、仕切り体38への伝達エネルギーEは、緩衝部68の運動エネルギーをE1とし、緩衝部68の変形による消費エネルギーをE2として、E=E1−E2で表されるので、緩衝部68の変形による消費エネルギーの分だけ、仕切り体38への伝達エネルギーを低減することができ、異音の発生を抑えることができる。
また、緩衝部68が薄肉筒状であることにより、変位規制部58,62への衝突による荷重変化が滑らかとなり、衝突によるショック感を低減することができる。これらのことから、弾性仕切り膜44と変位規制部58,62との衝突による異音を大幅に低減することが可能となる。
本実施形態によれば、また、緩衝部68を同心円状に複数設けたので、緩衝部68の変形による消費エネルギーが増加して、仕切り体38への伝達エネルギーをより一層低減することができる。また、径方向Kの複数箇所で変位規制することにより、可撓部52をその全体にわたって変位規制することができるので、変位規制されない部分が膨れることによる体積ロスを低減して、より高減衰特性を実現することが可能となる。
また、弾性仕切り膜44本体の膜面と変位規制部58,62との間隙Gを径方向Kにおける内方側ほど大きく設定した上で、当該内方側にも緩衝部(内側緩衝部)68Aを設け、かつ、内側の緩衝部68ほど膜面からの突出高さQが大きくなるように設定したので、次の作用効果が奏される。すなわち、上記消費エネルギーを増大させるためには、緩衝部68の突出高さQを大きくして、緩衝部68の軸方向Xでの変位ストロークを大きく確保することが効果的である。その際、周縁部が固定された弾性仕切り膜44では中央部寄りほど軸方向Xへの撓み変形が大きいので、中央部に近いほど、エネルギー吸収のための変位ストロークを大きく確保することができる。一方で、上記間隙Gを径方向Kの全体で大きく設定すると、可撓部52の上下に変形を許容する空間体積が大きくなって、高減衰特性に悪影響を与える体積ロスが増大するおそれがある。これに対し、上記間隙Gを径方向Kにおける内方側ほど大きく設定し、即ち外方側では小さくすることにより、可撓部52の変形許容体積の増大を抑えながら、上記エネルギー吸収のための変位ストロークを大きくすることができる。そのため、エネルギー吸収による異音低減効果と、体積ロスの低減による高減衰特性とをより高度に両立することができる。
[第2実施形態]
図7〜9は第2実施形態に係る図面であり、この例では、上記一対の挟持部材46,48において変位規制部58,62に突起72を設けた点で上記第1実施形態とは異なる。
すなわち、第2実施形態では、第1変位規制部58と第2変位規制部62の可撓部52と対向する各面において、同心円状に形成された複数の緩衝部68の間の径方向位置にそれぞれ突起72が設けられている。突起72は、内外の緩衝部68の間を周方向に延びる筋状をなしており、図9(c)に示されるように同心円状に形成されている。この例では、突起72は、緩衝部68間だけでなく、内側緩衝部68Aの内周側と、外側緩衝部68Cの外周側にも形成されている。このような突起72を設けることにより、可撓部52の撓み変形時に、変位規制部58,62に当接して変形する緩衝部68が変位規制部58,62の表面上で径方向Kにずれるように動く、いわゆる横滑りを防止することができる。緩衝部68が横滑りを起こすと、緩衝部68の軸方向Xにおける変形による消費エネルギーが小さくなるだけでなく、可撓部52の変位が大きくなって体積ロスも増加するが、上記突起72により横滑りを防止することで、緩衝部68の変形による消費エネルギーを効果的に確保し、また体積ロスを抑制することができる。
なお、このように突起72を設けた場合、図9(c)に示すように、該突起72が設けられた位置に上記液逃がし孔70を設けることができる。
その他の構成及び作用効果については第1実施形態と同様であるので、説明は省略する。なお、この実施形態では突起72が設けられているが、この突起72自体は可撓部52の変位量を規制するものではないので、当該変位量を規制する変位規制部58,62本体と弾性仕切り膜本体の膜面との間隙Gは、径方向Kにおける内方側ほど大きく設定されており、従って、第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
[第3実施形態]
図10は第3実施形態に係る図面であり、この例では、弾性仕切り膜44に補強リブ74を設けた点が上記第1実施形態とは異なる。
すなわち、第3実施形態では、弾性仕切り膜44における緩衝部68の内側の膜部分に緩衝部68を補強するための補強リブ74が設けられている。補強リブ74は、可撓部52の軸心Oから複数本(この例では4本)が放射状に延びて内側緩衝部68Aの内周面に連結された形状をなし、図10(d)に示すように中心から径方向K外方に向かって漸次高くなるように上面が傾斜して形成されており、これにより内側緩衝部68Aの根元部を補強している。内側緩衝部68Aと中間緩衝部68Bとの間及び中間緩衝部68Bと外側緩衝部68Cとの間にも、内側緩衝部68Aの内側と同様に、かつこれと同位相に複数本(この例では4本)の補強リブ74が放射状に延びて形成されている。従って、この例では、図10(a)に示すように、補強リブ74は平面視で十字状に形成されている。補強リブ74は、表裏両側の緩衝部68に対してそれぞれ設けられており、表裏で45度位相をずらして配置されている。
本実施形態によれば、緩衝部68間に径方向Kに延びる補強リブ74を設けたことにより、緩衝部68の繰り返し変形によるヘタリを大幅に改善することができる。また、このような緩衝部68の付け根部を補強するリブ74であれば、緩衝部68全体としての剛性変化は小さいので、異音性能への影響を抑えることができる。その他の構成及び作用効果については第1実施形態と同様であるので、説明は省略する。
[第4実施形態]
図11は第4実施形態に係る図面であり、この例では、補強リブ74の配置構成が上記第3実施形態とは異なる。
すなわち、第4実施形態では、各緩衝部68の内外で周方向Cに位相をずらして補強リブ74を配置している点が第3実施形態とは異なる。詳細には、内側緩衝部68Aの内側の補強リブ74と、内側緩衝部68Aと中間緩衝部68Bとの間の補強リブ74とは、45度位相をずらして配置されており、内側緩衝部68Aと中間緩衝部68Bとの間の補強リブ74と、中間緩衝部68Bと外側緩衝部68Cとの間の補強リブ74とは、45度位相をずらして配置されている。補強リブ74は、表裏両側の緩衝部68に対してそれぞれ設けられており、表裏で45度位相をずらして配置されている。
第3実施形態の態様では、補強リブ74を設けていない場合に比べればヘタリを大幅に改善することができるが、補強リブ74が設定されていない方向では変形が大きくヘタリやすい。これに対し、第4実施形態のように、各緩衝部68の内外で周方向Cに位相をずらして補強リブ74を配置することにより、補強リブ74による補強効果の方向性を低減することができ、多方向からの入力に対して変形しづらくして、よりヘタリにくくすることができる。その他の構成及び作用効果については第3実施形態と同様であるので、説明は省略する。
[第5実施形態]
図12は第5実施形態に係る図面である。この例では、弾性仕切り膜44本体の膜面と変位規制部58,62との間隙Gを、径方向Kにおける内方側ほど大きく設定するための構成が上記第1実施形態とは異なる。
すなわち、この例では、変位規制部58,62をテーパ面状に形成する代わりに、弾性仕切り膜44の可撓部52をテーパ面状に形成している。詳細には、変位規制部58,62の対向面は、軸方向Xに垂直な平面状に形成されている。一方、可撓部52には、径方向K外方側ほど厚肉に形成された断面略三角形状の厚肉部76が設けられており、この厚肉部76により、可撓部52の下面(即ち、第1変位規制部58との対向面)は径方向K外方側ほど第1変位規制部58側に傾斜した傾斜面状に形成され、可撓部52の上面(即ち、第2変位規制部62との対向面)は、径方向K外方側ほど第2変位規制部62側に傾斜した傾斜面状に形成されている。これにより、緩衝部68を除いた弾性仕切り膜本体(即ち、可撓部52)の膜面と変位規制部58,62との間隙Gは、変位規制部58,62の径方向Kにおける内方側ほど漸次大きくなるように設定されている。すなわち、外周側の間隙Goに対して内周側の間隙Giが大きく設定されている(Go<Gi)。
また、この例では、緩衝部68は表裏にそれぞれ1つずつ設けられており、該緩衝部68は、可撓部52の軸心Oを中心として可撓部52の径の50%の範囲内に設けられている。すなわち、上記間隙GがGiとして大きく設定された内周側に、緩衝部68が1つ設けられている。なお、緩衝部68の形状自体は第1実施形態と同様である。
本実施形態のように、変位規制部58,62の形状ではなく、弾性仕切り膜44の可撓部52の形状により、上記間隙Gの寸法を設定した場合にも、可撓部52の変形許容体積の増大を抑えながら、緩衝部68でのエネルギー吸収のための変位ストロークを大きくすることができ、エネルギー吸収による異音低減効果と、体積ロスの低減による高減衰特性とを両立することができる。但し、可撓部52の形状による場合、可撓部52が厚肉化されることで剛性がその分大きくなるので、低動ばね特性という点では第1実施形態の方が有利である。また、第5実施形態では、緩衝部68の数が1つであるため、異音低減効果という点でも第1実施形態の方が有利である。その他の構成及び作用効果については第1実施形態と同様であるので、説明は省略する。
[その他の実施形態]
上記実施形態では、緩衝部68を全周にわたって完全な筒状とした場合について説明したが、緩衝部68には、その高さ方向(軸方向X)に延びるスリットを設けてもよい。スリットは、緩衝部68の周方向における1箇所以上に設けることができる。このようなスリットを設けることで、膜剛性をコントロールすることができる。
また、上記実施形態では、単一のオリフィス通路を持つシングルオリフィス構造の防振装置について説明したが、複数の液室間をオリフィス通路にて連通させる液封入式防振装置であれば、ダブルオリフィス構造の防振装置など、種々の液封入式防振装置に適用可能である。また、上記液封入式防振装置10は、上下反転させて車両に組み付けられるものであってもよく、更には、エンジンマウント以外にも、ボディマウント、デフマウントなど、種々の防振装置に適用可能である。その他、一々列挙しないが、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の変更が可能である。
10…液封入式防振装置 12…第1取付具 14…第2取付具
16…防振基体 34A…主液室 34B…副液室
36…ダイヤフラム 38…仕切り体 40…オリフィス流路
44…弾性仕切り膜 46…第1挟持部材 48…第2挟持部材
52…可撓部 58…第1変位規制部 62…第2変位規制部
68,68A,68B,68C…緩衝部 72…突起
74…補強リブ X…軸方向 C…周方向
K…径方向 G…弾性仕切り膜本体の膜面と変位規制部との間隙
O…可撓部の軸心 P…緩衝部の肉厚 Q…緩衝部の突出高さ

Claims (8)

  1. 振動源側と支持側の一方に取り付けられる第1取付具と、振動源側と支持側の他方に取り付けられる第2取付具と、前記第1取付具と前記第2取付具との間に介設されたゴム状弾性体からなる防振基体と、前記防振基体が室壁の一部をなす液体が封入された主液室と、ゴム状弾性体からなるダイヤフラムが室壁の一部をなす液体が封入された副液室と、前記主液室と前記副液室とを仕切る仕切り体と、前記主液室と前記副液室とを連通させるオリフィス流路と、を備えた液封入式防振装置において、
    前記仕切り体は、前記主液室と前記副液室との間を液体流通させることなく仕切る弾性仕切り膜と、前記弾性仕切り膜の周縁部を両面から挟持する一対の挟持部材とを備えてなり、
    前記一対の挟持部材は、前記弾性仕切り膜の前記周縁部よりも内側の可撓部の変位量を、当該弾性仕切り膜の両側から規制する一対の変位規制部を備え、
    前記弾性仕切り膜の前記可撓部に、前記変位規制部に向かって膜面から突出する薄肉筒状の緩衝部が設けられた
    ことを特徴とする液封入式防振装置。
  2. 前記緩衝部を除いた弾性仕切り膜本体の膜面と前記変位規制部との間隙が、前記変位規制部の径方向における内方側ほど大きく設定されたことを特徴とする請求項1記載の液封入式防振装置。
  3. 前記緩衝部は、前記可撓部の軸心に対して同心状に設けられ、前記軸心を中心として前記可撓部の径の50%の範囲内に少なくとも1つ設けられたことを特徴とする請求項2記載の液封入式防振装置。
  4. 前記緩衝部は、膜面からの突出高さが肉厚の2倍以上である薄肉筒状に形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液封入式防振装置。
  5. 前記緩衝部は、前記可撓部の軸心に対して同心円状に複数設けられたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液封入式防振装置。
  6. 前記緩衝部は、前記可撓部の軸心に対して同心円状に複数設けられ、内側の緩衝部ほど膜面からの突出高さが大きく形成されたことを特徴とする請求項2記載の液封入式防振装置。
  7. 前記変位規制部には、複数の前記緩衝部の間の径方向位置に各緩衝部の径方向における動きを制限する突起が設けられたことを特徴とする請求項6記載の液封入式防振装置。
  8. 前記緩衝部の内側の膜部分に補強リブが設けられたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の液封入式防振装置。
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