JP2013028099A - 積層微多孔性フィルム及びその製造方法、並びに電池用セパレータ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】第1の樹脂組成物から構成される第1の微多孔性フィルムと、前記第1の樹脂組成物よりも低い融点を有する第2の樹脂組成物から構成される第2の微多孔性フィルムとを備える積層微多孔性フィルムであって、気孔率が50〜70%である、積層微多孔性フィルム。
【選択図】なし
Description
また、特許文献2には、ポリプロピレンフィルムとポリエチレンフィルムを別々に成形した後、積層し、アニールしてから延伸することで透気性の良好な積層微多孔性フィルムを製造する方法が開示されている。
その一方で、安全性の観点から、耐電圧性に優れたセパレータも望まれている。耐電圧性とは、セパレータがどの程度の電圧まで短絡を抑制し、電極間で絶縁体として存在しうるかという、セパレータの絶縁性能を示している。
特に、セパレータをハイブリッド電気自動車の二次電池等に用いる場合、これらの相反する特性をバランス良く満足する必要がある。
ところが、特許文献1の方法によって得られる積層微多孔性フィルムは、高融点樹脂及び低融点樹脂の成形温度等の諸特性をある程度合わせる必要があるところ、それぞれに最適な条件で成形することが困難である。その結果、低い電気抵抗と高い耐電圧性とのバランス、すなわち電気抵抗と耐電圧性とのバランスに優れた積層微多孔性フィルムを得ることが困難である。また、特許文献2に開示された方法で製造された積層微多孔性フィルムも、電気抵抗と耐電圧性とのバランスの観点からは十分でない。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、電気抵抗と耐電圧性とのバランスに優れた積層微多孔性フィルム及びその製造方法、並びにそれを用いた電池用セパレータを提供することを課題とする。
[1]第1の樹脂組成物から構成される第1の微多孔性フィルムと、前記第1の樹脂組成物よりも低い融点を有する第2の樹脂組成物から構成される第2の微多孔性フィルムと、を備える積層微多孔性フィルムであって、気孔率が50〜70%である、積層微多孔性フィルム。
[2]前記第2の微多孔性フィルムの平均孔径が0.30〜0.60μmである、[1]の積層微多孔性フィルム。
[3]前記第1の樹脂組成物が、ポリプロピレン樹脂と、前記ポリプロピレン樹脂100質量部に対して1〜90質量部のポリフェニレンエーテル樹脂とを含有する熱可塑性樹脂組成物であり、前記第1の微多孔性フィルムが、前記ポリプロピレン樹脂を含む相である海部と、前記ポリフェニレンエーテル樹脂を含む相である島部とからなる海島構造を有する、[1]又は[2]の積層微多孔性フィルム。
[4]前記島部の粒径が0.01μm〜10μmである、[3]の積層微多孔性フィルム。
[5][1]〜[4]のいずれか1つの積層微多孔性フィルムを含む電池用セパレータ。
なお、本明細書において特に明記されていない限り、「主成分として含む」、「主体とする」とは、特定成分が、該特定成分を含む組成物(マトリックス成分)中に含まれる割合として好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上含まれ、100質量%含まれてもよいことを意味する。
なお、本明細書において「樹脂フィルム」とは、樹脂組成物をフィルム状に成形したものを示し、これを延伸して多孔化することにより微多孔性フィルムを得ることができる。
高融点樹脂フィルムの場合、その樹脂フィルムを、大気中、130℃で1時間アニールした後、幅10mm、長さ50mmの短冊状に切り出して試験片を得る。その試験片を引張試験機(例えば、株式会社エー・アンド・デイ製、製品名「テンシロン」、以下同様。)の所定位置にセットし、25°C、65%相対湿度の条件下、50mm/分の速度で長さ方向に100%まで(すなわち、100mmの長さになるまで)伸長する。その後、直ちに同速度(50mm/分)で試験片を弛緩させて荷重がゼロになった時の試験片の長さを測定する。そして、下記式(1)に基づいて、高融点樹脂フィルムの「熱処理後の弾性回復率」を導出する。
熱処理後の弾性回復率(%)=((100%伸張時の試験片の長さ)−(弛緩させて荷重がゼロになった時の試験片の長さ))/(伸張前の試験片の長さ)×100 (1)
熱処理後の弾性回復率(%)=((50%伸張時の試験片の長さ)−(弛緩させて荷重がゼロになった時の試験片の長さ))/((50%伸張時の試験片の長さ)−(伸張前の試験片の長さ))×100 (2)
(A)積層フィルム、低融点樹脂フィルム及び高融点樹脂フィルムの少なくとも1つを、少なくとも一方向に1.05倍〜2.0倍に冷延伸する冷延伸工程。
(B)冷延伸工程の後の上記フィルムを少なくとも一方向に1.05倍〜5.0倍に熱延伸する熱延伸工程。
上記例示した積層微多孔性フィルムの製造方法における(a)及び(b)の方法のように、予め高融点樹脂フィルムと低融点樹脂フィルムとを積層した積層フィルムを形成する場合、その積層フィルムに対して第1の延伸を施して延伸積層フィルムを得る冷延伸工程を含むことが好ましい。また、上記(c)の方法のように、低融点樹脂フィルムと高融点樹脂フィルムとを、別々に多孔化した後にそれらを積層する場合、各樹脂フィルムに対して第1の延伸を施して延伸積層フィルムを得る冷延伸工程を含むことが好ましい。
高融点樹脂フィルムと低融点樹脂フィルムとを積層した積層フィルムに対して冷延伸を施す場合、冷延伸の延伸温度は、破断を防ぐ観点から−20℃以上、気孔率及び透気度の観点から(TmB−60)℃以下が好ましい。より好ましくは0℃以上50℃以下の温度である。ここで、冷延伸の延伸温度は冷延伸工程におけるフィルムの表面温度を意味する。フィルムの表面温度は、接触式温度計により測定することができる(以下同様)。
本実施形態における第1の微多孔性フィルムは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン及びエチレン−プロピレン共重合体のようなポリオレフィン、並びに、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等のオレフィン炭化水素を単量体成分として含む重合体を主成分とした第1の樹脂組成物を、延伸して多孔化することにより得られるものであると好ましい。
[ポリプロピレン樹脂]
本実施形態におけるポリプロピレン樹脂(以下、「PP」と略す場合がある。)とは、ポリプロピレンを単量体成分として含む重合体であり、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。コポリマーである場合、ランダムコポリマーであってもよいし、ブロックコポリマーであってもよい。また、コポリマーである場合、共重合成分に限定はなく、例えば、エチレン、ブテン及びヘキセンが挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。ポリプロピレン樹脂がコポリマーである場合、プロピレンの共重合割合は50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよい。
また、ポリプロピレン樹脂の立体規則性に関しても特に制限はなく、アイソタクチック又はシンジオタクチックのポリプロピレン樹脂が用いられる。
本実施形態におけるポリフェニレンエーテル樹脂(以下、「PPE」ともいう。)としては、例えば、下記一般式(3)で表される繰り返し単位を有するものが挙げられる。
PPEとしては、上述のPPEとスチレン系モノマー及び/又はα,β−不飽和カルボン酸若しくはその誘導体(例えば、エステル化合物、酸無水物化合物)とを、ラジカル発生剤の存在下又は非存在下、溶融状態、溶液状態又はスラリー状態で80〜350℃の温度で反応させることによって得られる公知の変性PPEを用いることも可能である。さらに、上述のPPEと該変性PPEとの任意の割合の混合物であってもよい。本実施形態で用いるPPEの還元粘度は、0.15〜2.5であることが好ましく、0.30〜2.00であることがより好ましい。ここで、PPEの還元粘度は、30℃において0.5g/dlの濃度のクロロホルム溶液の条件下で、ウベローデ粘度管を用いて測定した値である。
本実施形態に係る高融点樹脂フィルムは、ポリプロピレン樹脂を含む相である海部と、ポリフェニレンエーテル樹脂を含む相である島部とからなる海島構造を有することが好ましい。本実施形態において「海島構造」とは、ポリフェニレンエーテル樹脂を含む相の粒子からなる島成分間に、海部であるポリプロピレン樹脂を含む相の骨格が形成した構造のことである。換言すると、ポリプロピレン樹脂からなる母体(マトリックス)中にポリフェニレンエーテル樹脂が複数の島状に分散している構造をいう。
なお、上記のような海島構造(分散状態)は、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡などを用いて容易に測定、観察することが可能である。例えば、測定対象となる高融点樹脂フィルムを試料台に積載後、その高融点樹脂フィルムに対して約3nm厚みのオスミウムコーティングを施し、加速電圧を1kVに設定した走査型電子顕微鏡(HITACHI S−4700)を用いて観察することができる。
まず、測定対象となる高融点樹脂フィルム又は第1の微多孔性フィルムについて海島構造の観察時の測定方法と同様にして透過型電子顕微鏡写真(倍率:5000倍)を得る。次に、その写真から、マトリックス(海部)であるポリプロピレン樹脂を含む相中に分散したポリフェニレンエーテル樹脂を含む相(島部)の粒子100個を任意に選定する。そして、選定した各粒子の最大長を長軸径、最小長を短軸径として測定する。上記粒径は、当該長軸径として定義されるものである。この粒径は、上記粒子100個についての相加平均値が上述の範囲にあることが好ましく、粒子100個全てについて上述の範囲にあることがより好ましい。
なお、用いるポリプロピレン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、及び混和剤を適宜選択することで、上述のような粒径、長軸径と短軸径との比を有するポリフェニレンエーテル樹脂を含む相の粒子(島部)をマトリックス(海部)であるポリプロピレン樹脂を含む相中に分散させることができる。ここで、混和剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂の分散性の観点から、水添ブロック共重合体が挙げられる。この水添ブロック共重合体とは、例えばスチレンなどのビニル芳香族化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックと、例えば1,3−ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックとからなるブロック共重合体を水素添加反応して得られるブロック共重合体である。
本実施形態における第2の微多孔性フィルムは、上記第1の樹脂組成物よりも低い融点を有する第2の樹脂組成物から構成される低融点樹脂フィルムを延伸して多孔化することにより得られるものであると好ましい。第2の樹脂組成物としては、例えば、ポリエチレン樹脂組成物が挙げられ、微多孔性フィルムの透気度の観点から、そのポリエチレン樹脂組成物(以下、「ポリエチレン樹脂組成物Ac」と表記する。)が好ましい。
低融点樹脂フィルムを構成するポリエチレン樹脂組成物Acは、その融点が100℃〜150℃であると、積層微多孔性フィルムを電池用セパレータとして用いた際に、電池の安全性が向上する傾向にあるため好ましい。上記融点を有するポリエチレン樹脂組成物Acを得るためには、融点が100℃〜150℃のポリエチレン樹脂を樹脂組成物中に含有させればよい。融点が100℃〜150℃のポリエチレン樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、及び低密度ポリエチレンが挙げられる。中でも、微多孔性フィルムの透気度の観点から、高密度ポリエチレン樹脂が好適に用いられる。
本実施形態の積層微多孔性フィルムの気孔率は、50%〜70%であり、好ましくは53%〜65%、より好ましくは56%〜60%である。気孔率が50%以上であると、積層微多孔性フィルムを電池用セパレータとして用いた場合により十分なイオン透過性を確保し得る。一方、気孔率が70%以下であると、積層微多孔性フィルムがより十分な機械強度を確保し得る。
気孔率(%)=(体積(cm3)−質量(g)/樹脂組成物の密度(g/cm3))/体積(cm3)×100
実施例及び比較例における各種特性の評価方法は以下のとおりである。
融点をJIS K−7121に準拠した方法により測定した。この測定を少なくとも3回実施し、その平均値を融点の値とした。
JIS K7210に準拠して、ポリプロピレン樹脂については210℃、2.16kgの条件で、ポリエチレン樹脂については190℃、2.16kgの条件でMFR(単位:g/10分)を測定した。この測定を少なくとも3回実施し、その平均値をMFRの値とした。
ポリエチレン樹脂組成物の密度(単位:kg/m3)をJIS K7112に準拠して測定した。この測定を少なくとも3回実施し、その平均値を密度の値とした。
ダイヤルゲージ(尾崎製作所社製、商品名「PEACOCK No.25」)にて膜厚を測定した。この測定を少なくとも5回実施し、その平均値を密度の値とした。
フィルムから10cm×10cm角のサンプルを切り出し、そのサンプルの体積と質量とから下記式を用いて気孔率を算出した。
気孔率(%)=(体積(cm3)−質量(g)/フィルムを構成する樹脂組成物の密度(g/cm3))/体積(cm3)×100
この測定を少なくとも5回実施し、その平均値を気孔率の値とした。
JIS P−8117に準拠したガーレー式透気度計にて透気度を測定した。なお、透気度は、膜厚の測定値に基づいて、膜厚20μm当たりに換算し、上記測定を少なくとも5回実施して、その平均値を透気度の値とした。
図1に示すSUS製のセルを準備した。ここで、図1中の符号1はセル本体、符号2はポリテトラフルオロエチレンシール、符号3はばね、符号4は電解液を含浸したフィルムを示す。
円形状に切り出したフィルムサンプルに電解液を含浸させ、図1に示すセル1内に設置して、このセル1を−30℃に設定したオーブン内に収容し、十分に時間が経過してオーブン内の温度が−30℃で安定した後、まず、フィルムサンプル1枚当たりの電気抵抗(Rs1)を測定した。
次いでオーブンからセル1を取り出し、電解液を含浸させたフィルムサンプルをセル内にさらに5枚、図1の下から上に向かって積層させて収容し、このセルを−30℃のオーブン内に収容し、十分に時間が経過してオーブン内の温度が−30℃で安定した後、フィルムサンプル計6枚当たりの電気抵抗(Rs6)を測定した。
フィルムサンプルの電気抵抗は、上記のRs1、Rs6から次式により算出した。
電気抵抗(Ω・cm2)={[Rs6(Ω)−Rs1(Ω)]/5}×2.00(cm2)
この測定を少なくとも5回実施し、その平均値を電気抵抗の値とした。なお、電解液には、富山薬品工業株式会社製LIPASTE−EP2BL/FSI1T(商品名)を用いた。電気抵抗は日置電機株式会社製HIOKI3532−80ケミカルインピーダンスメータ(商品名)を用いて測定し、100kHzにおけるインピーダンスの実数部分(レジスタンス)を電気抵抗の値とした。また、図1に示した電極の有効面積は2.00cm2とした。
図2に破膜温度の測定装置の概略図を示す。図2の(A)はその全体図であり、図2の(B)、図2の(C)はその測定装置におけるサンプルを概略的に示す平面図である。まず、図2の(B)に示すように、厚さ10μmのニッケル箔6A上にフィルム5を積層し、フィルム1の縦方向(MD)両端部の上からポリテトラフルオロエチレンテープ(図中斜線で示す。以下同様。)を貼り付けて、フィルム5をニッケル箔6A上に固定したサンプルを準備した。ここで、フィルム5は、予め電解液として1mol/Lのホウフッ化リチウム溶液(溶媒:プロピレンカーボネート/エチレンカーボネート/γ−ブチルラクトン=1/1/2(質量比))を含浸したものを用いた。一方、図2の(C)に示すように、厚さ10μmのニッケル箔6B上にポリテトラフルオロエチレンテテープを貼り合わせてマスキングしたサンプルを準備した。ただし、ニッケル箔6Bの中央部に15mm×10mmの窓(開口)の部分を残した。
低融点樹脂フィルムの孔径を水銀ポロシメータ(島津製作所製、商品名「オートポア9520型」)により測定した。
フィルムから、低融点樹脂フィルムを剥離し、25mm幅に裁断した後、水銀ポロシメータを用いて、初期圧3.0psiaより測定した。得られた細孔分布データから、20μm以下で圧入体積の最も大きい点(モード径)を平均孔径とした。この測定を少なくとも3回実施し、その平均値を平均孔径の値とした。なお、低融点樹脂フィルムを備えない微多孔性フィルムについて、この孔径は測定しなかった。
(株)カトーテック社製のハンディー圧縮試験器「KES−G5型」に、直径1mm、先端の曲率半径0.5mmの針を装着し、温度23±2℃、針の移動速度0.2cm/secでフィルムの突刺試験を行った。なお、膜厚の測定値に基づいて、膜厚20μm当たりに換算したものを突刺強度とした。すなわち、下記式に基づいて、突刺強度を求めた。
突刺強度(N)=測定した突刺強度×20/膜厚
この測定を、少なくとも5回実施し、その平均値を突刺強度の値とした。
表面を清浄にしたΦ35mmの電極に、50mm×50mmのフィルムサンプルを挟み、電極に電圧を印加して徐々にその電圧を上昇させていき、0.5mAの電流が流れてスパークする際の電圧値を測定した。この測定を、同じフィルムサンプルの面内において、少なくとも20点の異なるポイントで測定し、その平均値を記録した。この際、耐電圧性について、2.3kV以上を◎、1.7kV以上を○、1.7kV未満を×と評価した。
フィルムから12cm×12cm角のサンプルを切り出し、そのサンプルのMD、TDにそれぞれ10cm間隔で2つずつ(計4つ)の印を付け、サンプルを紙で挟んだ状態で、100℃のオーブン中に60分間静置した。オーブンからサンプルを取り出し冷却した後、MD、TDの印間の長さ(cm)を測定し、下記式にてMD及びTDの熱収縮率を算出した。
MDの熱収縮率(%)=(10−加熱後のMDの長さ(cm))/10×100
TDの熱収縮率(%)=(10−加熱後のTDの長さ(cm))/10×100
この測定を、少なくとも5回実施し、その平均値を熱収縮率の値とした。
ポリプロピレン樹脂(a−1)を、口径20mm、L/D=30、260℃の条件に設定した単軸押出機にフィーダーを介して投入し、押出機先端に設置したリップ厚3.0mmのTダイから押し出した。その後直ちに、溶融した樹脂(a−1)に25℃の冷風を当て、95℃に冷却したキャストロールを用い、ドロー比250倍、巻き取り速度10m/分の条件で巻き取り、ポリプロピレン樹脂フィルム(A−1)を成形した。なお、ポリプロピレン樹脂(a−1)としては、融点が165℃、MFRが0.4g/10分であるポリプロピレン樹脂を用いた。このポリプロピレン樹脂フィルム(A−1)の熱処理後の弾性回復率は90%であった。
ポリプロピレン樹脂(a−1)と、ポリプロピレン樹脂(a−1)100質量部に対してポリフェニレンエーテル樹脂(b−1)11質量部と、混和剤(c−1)3質量部とを準備した。また、第一原料供給口及び第二原料供給口を有する二軸押出機を準備した。上記各原料口は、押出機内での樹脂の流れ方向についてほぼ中央に位置していた。温度260〜320℃、スクリュー回転数300rpmの条件に設定した上記二軸押出機に、上記樹脂(a−1)、樹脂(b−1)及び混和剤(c−1)成分を供給して、それらを溶融混練し、熱可塑性樹脂組成物をペレットとして得た。得られた熱可塑性樹脂組成物の融点は、165℃であった。なお、ポリフェニレンエーテル樹脂(b−1)としては、2,6−キシレノールを酸化重合して得た還元粘度0.54のポリフェニレンエーテルを、混和剤(c−1)としては、(ポリスチレン(1))−(水素添加されたポリブタジエン)−(ポリスチレン(2))の構造を有し、結合スチレン量43%、数平均分子量95000、水素添加前のポリブタジエンの1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合との合計量80%、ポリスチレン(1)の数平均分子量30000、ポリスチレン(2)の数平均分子量10000、ポリブタジエン部分の水素添加率99.9%の、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加物を用いた。
ポリエチレン樹脂(Ac−1)を、口径20mm、L/D=30、180℃の条件に設定した単軸押出機にフィーダーを介して投入し、押出機先端に設置したリップ厚3.0mmのTダイから押し出した。その後直ちに、溶融した樹脂組成物(Ac−1)に25℃の冷風を当て、95℃に冷却したキャストロールを用い、ドロー比300倍、巻き取り速度10m/分の条件で巻き取り、低融点樹脂フィルム(C−1)を成形した。なお、ポリエチレン樹脂(Ac−1)としては、融点が133℃、MFRが1.3g/10分、密度が964kg/m3であるポリエチレン樹脂を用いた。この低融点樹脂フィルム(C−1)の熱処理後の弾性回復率は70%であった。
[製造例4]
ポリエチレン樹脂(Ac−1)に代えてポリエチレン樹脂(Ac−2)を用いたこと以外は製造例3と同様にして、低融点樹脂フィルム(D−1)を成形した。なお、ポリエチレン樹脂(Ac−2)としては、融点が133℃、MFRが0.8g/10分、密度が959kg/m3であるポリエチレン樹脂を用いた。この低融点樹脂フィルム(D−1)の熱処理後の弾性回復率は69%であった。
[製造例5]
製造例2で得られた熱可塑性樹脂組成物を、口径20mm、L/D=30、260℃の条件に設定した単軸押出機にフィーダーを介して投入し、押出機先端に設置したリップ厚3.0mmのTダイから押し出した。その後直ちに、溶融した上記樹脂組成物に25℃の冷風を当て、95℃に冷却したキャストロールを用い、ドロー比100倍、巻き取り速度10m/分の条件で巻き取り、高融点樹脂フィルム(B−2)を成形した。この高融点樹脂フィルム(B−2)の熱処理後の弾性回復率は85%であった。
低融点樹脂フィルム(C−1)の両側をポリプロピレン樹脂フィルム(A−1)で挟み込み、外層がポリプロピレン樹脂フィルム(A−1)、内層が低融点樹脂フィルム(C−1)の構造を有する3層積層フィルムを、次のようにして製造した。まず、ポリプロピレン樹脂フィルム(A−1)と低融点樹脂フィルム(C−1)とをそれぞれ巻き出し速度4.0m/分で巻き出し、加熱ロールに導き、そこで熱圧着温度130℃、線圧2.0kg/cmで熱圧着した。熱圧着後のフィルムを、上記巻き出し速度と同速度で25℃の冷却ロールに導いて巻き取って積層フィルム(Af−1)を得た。この積層フィルム(Af−1)に対して130℃に加熱された熱風循環オ−ブン中で1時間アニールを施した。
実施例1のポリプロピレン樹脂フィルム(A−1)に代えて高融点樹脂フィルム(B−1)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、積層フィルム(Af−2)を得た。次いで、積層フィルム(Af−1)に代えて積層フィルム(Af−2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、積層微多孔性フィルムを得た。得られた熱固定後の積層微多孔性フィルムについて、膜厚、気孔率、透気度、破膜温度(耐破膜性)、電気抵抗、孔径、突刺強度及び熱収縮率を測定し、耐電圧性を評価した。その結果を表1に示す。
実施例2の積層フィルム(Af−2)に対して130℃に加熱された熱風循環オ−ブン中で1時間アニールを施した。
次に、アニール後の積層フィルムを25℃の温度で縦方向に1.2倍で一軸延伸して、延伸積層フィルムを得た(冷延伸工程)。次いで、延伸積層フィルムを125℃の温度で縦方向に3.0倍で一軸延伸して積層微多孔性フィルムを得た(熱延伸工程)。その後、積層微多孔性フィルムに対して125℃の温度で0.8倍に緩和させて熱固定を施した。得られた熱固定後の積層微多孔性フィルムについて、膜厚、気孔率、透気度、破膜温度(耐破膜性)、電気抵抗、孔径、突刺強度及び熱収縮率を測定し、耐電圧性を評価した。その結果を表1に示す。
実施例2の積層フィルム(Af−2)に対して130℃に加熱された熱風循環オ−ブン中で1時間アニールを施した。
次に、アニール後の積層フィルムを25℃の温度で縦方向に1.5倍で一軸延伸して、延伸積層フィルムを得た(冷延伸工程)。次いで、延伸積層フィルムを125℃の温度で縦方向に3.0倍で一軸延伸して積層微多孔性フィルムを得た(熱延伸工程)。その後、積層微多孔性フィルムに対して125℃の温度で0.8倍に緩和させて熱固定を施した。得られた熱固定後の積層微多孔性フィルムについて、膜厚、気孔率、透気度、破膜温度(耐破膜性)、電気抵抗、孔径、突刺強度及び熱収縮率を測定し、耐電圧性を評価した。その結果を表1に示す。
実施例3の低融点樹脂フィルム(C−1)に代えて低融点樹脂フィルム(D−1)を用いたこと以外は実施例3と同様にして、積層フィルム(Af−3)を得た。次いで、積層フィルム(Af−2)に代えて積層フィルム(Af−3)を用いたこと以外は実施例3と同様にして、積層微多孔性フィルムを得た。得られた熱固定後の積層微多孔性フィルムについて、膜厚、気孔率、透気度、破膜温度(耐破膜性)、電気抵抗、孔径、突刺強度及び熱収縮率を測定し、耐電圧性を評価した。その結果を表1に示す。
実施例5の積層フィルム(Af−3)に対して130℃に加熱された熱風循環オ−ブン中で1時間アニールを施した。
次に、アニール後の積層フィルムを25℃の温度で縦方向に1.2倍で一軸延伸して、延伸積層フィルムを得た(冷延伸工程)。次いで、延伸積層フィルムを110℃の温度で縦方向に1.8倍で一軸延伸した後、125℃の温度で縦方向に1.7倍で一軸延伸して積層微多孔性フィルムを得た(熱延伸工程)。その後、積層微多孔性フィルムに対して125℃の温度で0.8倍に緩和させて熱固定を施した。得られた熱固定後の積層微多孔性フィルムについて、膜厚、気孔率、透気度、破膜温度(耐破膜性)、電気抵抗、孔径、突刺強度及び熱収縮率を測定し、耐電圧性を評価した。その結果を表1に示す。
実施例5の積層フィルム(Af−3)に対して130℃に加熱された熱風循環オ−ブン中で1時間アニールを施した。
次に、アニール後の積層フィルムを25℃の温度で縦方向に1.3倍で一軸延伸して、延伸積層フィルムを得た(冷延伸工程)。次いで、延伸積層フィルムを125℃の温度で縦方向に3.0倍で一軸延伸して積層微多孔性フィルムを得た(熱延伸工程)。その後、積層微多孔性フィルムに対して125℃の温度で0.8倍に緩和させて熱固定を施した。得られた熱固定後の積層微多孔性フィルムについて、膜厚、気孔率、透気度、破膜温度(耐破膜性)、電気抵抗、孔径、突刺強度及び熱収縮率を測定し、耐電圧性を評価した。その結果を表1に示す。
実施例2の積層フィルム(Af−2)に対して130℃に加熱された熱風循環オ−ブン中で1時間アニールを施した。
次に、アニール後の積層フィルムを25℃の温度で縦方向に1.25倍で一軸延伸して、延伸積層フィルムを得た(冷延伸工程)。次いで、延伸積層フィルムを125℃の温度で縦方向に3.8倍で一軸延伸して積層微多孔性フィルムを得た(熱延伸工程)。その後、積層微多孔性フィルムに対して125℃の温度で0.8倍に緩和させて熱固定を施した。得られた熱固定後の積層微多孔性フィルムについて、膜厚、気孔率、透気度、破膜温度(耐破膜性)、電気抵抗、孔径、突刺強度及び熱収縮率を測定し、耐電圧性を評価した。その結果を表1に示す。
実施例2の積層フィルム(Af−2)に対して130℃に加熱された熱風循環オ−ブン中で1時間アニールを施した。
次に、アニール後の積層フィルムを25℃の温度で縦方向に1.35倍で一軸延伸して、延伸積層フィルムを得た(冷延伸工程)。次いで、延伸積層フィルムを125℃の温度で縦方向に3.5倍で一軸延伸して積層微多孔性フィルムを得た(熱延伸工程)。その後、積層微多孔性フィルムに対して125℃の温度で0.8倍に緩和させて熱固定を施した。得られた熱固定後の積層微多孔性フィルムについて、膜厚、気孔率、透気度、破膜温度(耐破膜性)、電気抵抗、孔径、突刺強度及び熱収縮率を測定し、耐電圧性を評価した。その結果を表1に示す。
実施例2の積層フィルム(Af−2)に対して130℃に加熱された熱風循環オ−ブン中で1時間アニールを施した。
次に、アニール後の積層フィルムを25℃の温度で縦方向に1.2倍で一軸延伸して、延伸積層フィルムを得た。次いで、延伸積層フィルムを125℃の温度で縦方向に1.9倍で一軸延伸して積層微多孔性フィルムを得た。その後、積層微多孔性フィルムに対して125℃の温度で0.8倍に緩和させて熱固定を施した。得られた熱固定後の積層微多孔性フィルムについて、膜厚、気孔率、透気度、破膜温度(耐破膜性)、電気抵抗、孔径、突刺強度及び熱収縮率を測定し、耐電圧性を評価した。その結果を表1に示す。
実施例2の積層フィルム(Af−2)に対して130℃に加熱された熱風循環オ−ブン中で1時間アニールを施した。
次に、アニール後の積層フィルムを25℃の温度で縦方向に1.2倍で一軸延伸して、延伸積層フィルムを得た。次いで、延伸積層フィルムを125℃の温度で縦方向に4.0倍で一軸延伸して積層微多孔性フィルムを得た。その後、積層微多孔性フィルムに対して125℃の温度で0.8倍に緩和させて熱固定を施した。得られた熱固定後の積層微多孔性フィルムについて、膜厚、気孔率、透気度、破膜温度(耐破膜性)、電気抵抗、孔径、突刺強度及び熱収縮率を測定し、耐電圧性を評価した。その結果を表1に示す。
高融点樹脂フィルム(B−2)に対して130℃に加熱された熱風循環オ−ブン中で1時間アニールを施した。
次に、アニール後のフィルムを25℃の温度で縦方向に1.2倍で一軸延伸して、延伸フィルムを得た。次いで、延伸フィルムを125℃の温度で縦方向に3.0倍で一軸延伸して単層微多孔性フィルムを得た。その後、単層微多孔性フィルムに対して125℃の温度で0.8倍に緩和させて熱固定を施した。得られた熱固定後の単層微多孔性フィルムについて、膜厚、気孔率、透気度、破膜温度(耐破膜性)、電気抵抗、突刺強度及び熱収縮率を測定し、耐電圧性を評価した。その結果を表1に示す。
これに対し、気孔率が低い積層微多孔性フィルムを用いた比較例1の積層微多孔性フィルムは、高い電気抵抗を示し、気孔率が高い比較例2の積層微多孔性フィルムは、低い耐電圧を示した。また、比較例3の単層微多孔性フィルムは高い熱収縮率を示した。
Claims (5)
- 第1の樹脂組成物から構成される第1の微多孔性フィルムと、
前記第1の樹脂組成物よりも低い融点を有する第2の樹脂組成物から構成される第2の微多孔性フィルムと、
を備える積層微多孔性フィルムであって、
気孔率が50〜70%である、積層微多孔性フィルム。 - 前記第2の微多孔性フィルムの平均孔径が0.30〜0.60μmである、請求項1記載の積層微多孔性フィルム。
- 前記第1の樹脂組成物が、ポリプロピレン樹脂と、前記ポリプロピレン樹脂100質量部に対して1〜90質量部のポリフェニレンエーテル樹脂とを含有する熱可塑性樹脂組成物であり、
前記第1の微多孔性フィルムが、前記ポリプロピレン樹脂を含む相である海部と、前記ポリフェニレンエーテル樹脂を含む相である島部とからなる海島構造を有する、請求項1又は2記載の積層微多孔性フィルム。 - 前記島部の粒径が0.01μm〜10μmである、請求項3記載の積層微多孔性フィルム。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載の積層微多孔性フィルムを含む電池用セパレータ。
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