本発明の万能ICタグその製造方法及び通信システムの具体例を示す図面によって説明する。
図1に通常のダイポールアンテナと、スロットアンテナとの比較を示す。
図1(a)は半波長ダイポールアンテナの例を示し、図1(b)はスロットアンテナの例を示し、図中のEは電界、Hは磁界を表わす。ダイポールアンテナとスロットアンテナとは相補的な関係にあり、電界Eと磁界Hが相補の関係にある。
スロットアンテナにおいて、金属箔や金属板等の金属体である金属面MSに直接スロット部2を切り、金属面MSに切られたスロット部2は中空となる。また、スロット部2のスロット幅ωはダイポールの直径2ρの2倍と等価、即ちω=4ρ(半径ρの4倍)の関係にある。ダイポール長と、スロット長lは同じ関係にある。
ダイポールアンテナのインピーダンス特性はハレンやキング氏等により詳しく計算されているので、それを参考にすればよい。
図1(c)には、無限に細い線 半径ρ=0、長さlが半波長λ/2のダイポールアンテナと、良く知られている入力インピーダンスZD=73+j42.5Ωの関係を示す。
これに対し、相補関係にあるスロットアンテナを図1(d)に示す。同図1(c)により無限に細いスロット幅ω=4ρ=0となり、この場合の入力インピーダンスはZS=364−j212Ωとなる。
スロットアンテナとダイポールアンテナの入力インピーダンスの関係は、相補の定理により次のように表わされる。
ここでZCは光または電波の自由空間の特性インピーダンスで次のように表わされる。
従って、
となり、スロットアンテナの場合は入力インピーダンスZ
Sの方が、放射抵抗成分が364Ωと高くなり、またリアクタンス成分はキャパシティブになり、かつ212Ωと高いリアクタンス成分を示すことになる。
スロット中心部では放射抵抗成分が高すぎるため、インピーダンス変換を行うようなトランスフォーマ部を用いるかあるいは、後に述べるスロット部2の端にIC3の取付位置を定めるか、整合回路を設けたり、線路の構造やそのインピーダンスやIC3の取付位置を考慮しなければならない。
つぎに、半波長より少し短め(l=0.475λ)のダイポールアンテナとした場合を図1(e)に示す。この場合の入力インピーダンスはZD=67+j0Ωとなり、アンテナ自体は放射抵抗成分のみとなり共振状態となる。ダイポールアンテナの直径2ρとすると2ρ=1/100λ=0.01λで、ρ=1/200λ=0.005λとしている。
つぎに、このダイポールアンテナと相補的な関係にあるスロットアンテナの場合を図1(f)に示す。リアクタンス成分は零であるので抵抗成分のみとなり、ZS=530Ωと高い抵抗値となる。スロットアンテナの場合は高いインピーダンス特性となるので、IC3との整合は10:1に近いインピーダンス整合を考えなければならない。
スロット幅ωはω=4ρとなり、4ρ=4/200λ=0.02λでスロット幅ωはダイポールアンテナの半径ρの4倍となっている。
以上のように周囲と同じ状況のため、周囲の影響を受け難い金属板で構成されたスロットアンテナと周囲の影響(とくに金属面や水の影響)を受け易いダイポールアンテナとの電界、磁界、インピーダンス関係の違いや、動作モードの違いを説明した。更に図1(g)はモノポールアンテナに対しZ相補的関係にあるハーフサイズスロットについて示してある。スロットアンテナの場合はハーフサイズのものはスロット部2が平列となるので、インピーダンスZShは半波長スロットの2倍のインピーダンス ZSh=240π/ZD=2ZS (約1000Ω)と考えられる。そのため伝送線路の線路幅wを更に小さくすることができる。
後に述べるように、次に使用周波数については多種の応用があるが、現在最もよく使用されている周波数は、UHF帯の920μHz帯(波長約326mm)、2.45GHz帯(波長122.4mm)、5.7GHz帯(波長52.6mm)、430MHz帯(波長697mm)のアンテナで用いられている周波数や更にVHF帯等があり、使用周波数により波長が短くなったり長くなったりする。従って文中では寸法の基準は空間波長や電気長で現してあり、短縮率(約0.66倍)により、先に述べたように大きさも小さくなる。
然し乍ら、大きさが分かり易くするためにf=920MHz、波長326mmの場合を例にとって図を説明することにする。
スロット長lやスロット幅ω、並びに後述する整合回路、またスロット長lにより影響を受ける伝送線路長や、周波数による線路長の構成は波長の函数となり、アンテナの大きさや厚み等も変わってくる。厚みhについては、後に述べるように伝送線路の特性インピーダンスZOと関係する周波数とは無関係となるようにみえるが、スロット長lの制御、伝送線路の線路幅w等とも関係するため、実際の構成としては小形化、薄形化のための重要なファクターとなる。
一般的には周波数が高くなり、波長λが小さくなると、これに比例して小形化が進むと考えられるし、後述する伝送線路の特性インピーダンスを定める平行板線路の線路幅w(金属面の幅)や、伝送線路の高さである厚みh(誘電体の厚さ)との比T=w/hが主要ファクターとなる。例えば、特性インピーダンスZOが同じなら伝送路の線路幅wが1/2となれば伝送線路の厚みhも1/2となり薄くすることが可能で特性インピーダンスZOは一定とすることができ、波長λによる相補の定理がなりたつことが分かる。
また、後述する磁性体による伝送線路の特性インピーダンスZOの増大により、伝送線路が更に薄く線路幅も狭く、かつ1/√μrもかかって短縮することができる。
つぎに、金属面M1に万能ICタグのIDやセキュリティーを定めるIC3を、スロット部2に直接、あるいは間接に搭載することにより万能ICタグ1となることを図2で説明する。万能ICタグ用のIC3は、一般的なICカードに装着されるIC3やICタグと考えてよい。
図2(a)は万能ICタグ1の斜視図で、金属面MSにスロット長l、スロット幅ωのスロット部2が形成され、その一端にIC3がIC両端を直接あるいは間接的に両側の金属面M1の給電部に接続されるように取付けられている。
スロット部2を切ってある金属面M1の大きさを次のようにする。スロット長lに沿った金属面M1の幅を線路幅wとする。また、スロット部2と直角方向の金属面MSの一辺の長さを2Xとし、長さ2Xのほぼ中心、即ち長さXの所にスロット部2を配置する。X軸方向に電流が流れ、放射電界やスロット部2を励振する電界Eにより電圧Vを誘起する電流となる。従って、この長さもスロット部2の誘起電圧を高くしたり、放射電界を励振するのに重要である。受信の場合は到来電界Eにより、金属面M1に2×Eの電圧を誘起させたり、電流を流すためにはX軸方向の所定の長さが必要となる。後に述べる伝送線路PTLの長さもこの長さ2Xと関係する。
920MHz近辺ではスキンデプスが2μ程度であるので、これ以上であれば金属面M1の厚みhはそれ程大きくは影響しないが、通常厚みhが0.001〜0.1mm程度で用いることができる。実際に本実施例で用いたものは、厚みhが0.01〜0.1mmのアルミニウムや銅箔であるが、箔でなくても蒸着やコーティングや塗料でも良く、もっと厚めの板材や他の金属板、例えば黄銅、ステンレス、鉄等も用いることができる。スロット幅ωは先にも述べたように、ω=2ρとしている。蒸着の場合は0.001mm等、可成り薄く構成できる。スキンデプスより薄くした場合には、多少抵抗やロスは増えるが使えない訳ではない。IC3がスロット部2に取付けられる位置は、スロット長lの1/2〜1/20程度である。先にも説明したように、インピーダンスが高い中心部に取付けるときは、トランスフォーマ部のようなインピーダンス変換が必要で、端部に取付ける場合は、抵抗成分の整合がされていても、リアクタンス成分を零にする共振状態にするための整合も必要となる場合がある。
整合を取るためには、IC3の内部容量の大きさや抵抗の大きさとも関係するので、整合について述べる。IC3の内部容量との共振を取るためにスロット長l、スロット部2にIC3を取付ける位置、短絡線路長等の調整が必要である。スロット長lは共振状態とするために、ほぼl=0.475λとするが、実際にはIC3の内部容量が並列に入るために、この内部容量の大きさに応じた長さとするか、整合回路の付加インダクタンスや容量により整合がとれるように適切に定める必要がある。スロット長lは短縮率がかかったり、後に述べるようにローディングを行ったりスロット部2を曲げたりして、Y軸方向のスロット部2の長さを1/2〜1/3程度に短縮を行うこともできる。図中では説明のために、スロット長l≒λ/2=0.5λとしている。
図2(c)は金属面MSに切られたスロット部2からの放射が、上下の両方に対称的な放射P1,P2が行われることを示すもので、受信についても同じである。従って、この金属面MSの上方または下方、表面または裏面、どちらの方向にでもスロット部2からの放射や受信が行われることで、スロット部2に接続されたIC3に電圧が供給されてIC3に電流が流れ、IC3の信号がまたスロット部2を励振し、金属面MSの上下方向に電力が放射P1,P2されることを示している。これらのIC付スロットは、どんな金属面MSに切られた場合でも原理的に動作するが、先の説明のように薄いフィルム状のIC3を取付けたスロットアンテナの場合は、何にでも取付けられるようにしておくと良い。
図2(d)には1/2波長スロット2の下方に1/4波長のトラップ平行板線路を設けることにより下方には無限大の線路を構成し、上方のみの放射P1を行う場合を示している。上下方向に放射されていた電力が上方のみに放射されるので、上方の放射電力は2倍になる。従って、この場合にはアンテナ利得は2倍、3dBのゲインを得ることができるようになる。このようなダイポールアンテナを構成することにより、更に3dB高い利得が得られ、金属面Mでアンテナ利得が落ちるとされていた従来のダイポールアンテナの特性からすると、著しく改善された特性を示しており、マイナスファクターがプラスファクターになっていることが分かる。また下方に金属面Mがあるとないとに拘らず、放射面である金属面MSが両側にあり、全体で1/2波長あるために充分な放射が得られる。
つぎに、金属面MSにスロット部2が切られている場合、IC3を取りつける方法と整合を取る方法の実施例を図3に述べる。またインダクタンスやキャパシタンスの補正については図6、図7等で後述する。
図3(a)には金属面MSにスロット部2が切られている断面に、スロット部2の給電部の切り欠きの一部を立ち上げた給電ピン11,11′、基板4の給電部5,5′と接触させてかしまって抜けないような突起にカギをつけた構造で、スロット部2とIC3を乗せた基板4の給電部5,5′との接続する方法を示す。基板4の給電部5,5′との接続は給電ピン11,11′としてリベット等で止めることも可能である。但し、異種金属の接触は、金属電位差による電触が発生し、接触不良を発生しないような金属を使わなければならない。例えば、真鍮は鉄、アルミニウムに対しても比較的安定である。鉄板を用いてスロット2を切る場合は、切った後にメッキ等の処理をし、防錆処理をほどこす方が長期利用に耐える。
図3(b)は基板4を上から見た図である。金属面MSに設けられた給電部、即ち給電ピン11と11′に基板4の給電部5,5′とが、かしめ圧着や半田付けや導電塗料により接続され、基板4の給電部5,5′とIC3が取付けられたIC接続端子7,7′を接続する線路6,6′がインピーダンス変換回路(トランスフォーマ部)として働くようにλ/4波長(920MHzでは約82mm短縮率がかかると約54mmになる)では、
であるので、両端の線路に分けて考え、半分の特性インピーダンス81.4Ωの線路を介して接続するとスロット部2の入力インピーダンスZS=530Ω(ZSh1060Ω)が50Ω(片側の線路では25Ω)に変換されてインピーダンス整合することができる。
これはフルサイズのスロット部2で説明したが、ハーフサイズのスロット部2、即ち約1/4波長のスロット部2の場合には、先に述べたように2倍のインピーダンスZSh=2ZSとなるので、このインピーダンスの変換については、
で、共振状態で純抵抗成分が530Ωの場合、インピーダンスZShは1060Ωであるので、ZT=230Ω、ZTh=115Ωとなる。
即ち、1/4波長トランスフォーマの場合、一方のインピーダンスが530Ωで他方が50Ωのときは、トランスフォーマ部6の特性インピーダンスZTは
となり、線路を2分割しているので、更に半分ずつ、即ち81Ωのストリップラインで構成すればIC3とスロット部2が整合される。
IC3のインピーダンスが50Ωでなければ、この値に合わせた幾何平均のトランスフォーマ部6の特性インピーダンスZTにすればよい。
図3(b)はコ字形の弯曲回路を示しているが、Zig−Zag形でも任意の形状で1/4波長1段や1/2波長2段の変換回路を構成すればよい。トランスフォーマ部6は、平衡な回路によっているが、片方のみで不平衡線路構成としても良い。通常の技術であるので省略する。
また、キャパシティを内蔵する場合には、スロット長で調整することができる。スロット長を短くするとインダクティブとなる。また、基板にインダクタンスやキャパシタンスを追加することができる。
図3(c)(d)は、IC3を載せたインレットのリード端子8,8′をスロット部2の切り欠きの一部を折り曲げ、給電ピン11,11′を挟み込むようにしてリード端子8,8′と接続させる場合を示す。直接接触させる場合を示すが、図3(a)(b)のように、給電部5,5′を挟み込むような構造としても良い。
図3(e)(f)はボタンをホックで止めるように、金属面MSから突き出した凸起の給電ピン12,12′,13,13′に基板4上のIC3を取付けたリード端子8,8′にくい込むように押さえて取付ける方法を示す。これも図3(a)(b)のように基板4の給電部5,5′に接続し、IC3を取付ける接続端子7,7′にトランスフォーマ部6を介して接続する方法でもよい。図3(g)(h)は図(e)(f)の丸穴を短形穴や楕円穴で構成した場合で原理は同じである。
つぎにもう一つの発明のスロットアンテナの裏の一面を伝送線路で覆い、放射を一方向のみにし、かつ他の側は金属面や水や妨害物があっても影響を受けない構造のタグとする場合を実施例で述べる。
図4にはスロット部2を構成する金属面M1に平衡してもう一つの金属面M2を儲け、この金属面がスロット面と極く近づいていても、スロット部2の電界を零にしないような定在波の伝送線路の構成を作り、機能的にもスロット部2からの放射を妨害せず、また放射が一方向になるためにアンテナ利得が一般のダイポールアンテナを用いた場合より、3〜4dB上昇したり、かつ金属面上に置いてもこの金属面により放射電磁界が零となったり、人体、動物、水等の影響により放射電磁界が零となったり、影響を受けたりしない特別な構成を作る場合を示す。かつ、スロット部2の両側に平衡(均差)に電界を励振するための金属面を振り分けている。
上面の金属面M1の長さ2Xと幅Wの金属面のほぼ中心に約半波長スロット部2がスロット長lの長さに切られており、この下面に絶縁体シート10、例えばポリエチレンやPETやテフロン(登録商標)等の誘電体やセラミックや磁性体シートがあり、これを挟むように、更に同大のもう一枚の金属面M2が平行に配置される。絶縁体シート10の厚みhは0.1〜10mm程度であるが、平行板線路の特性インピーダンスZOに関係するので、あまり薄くすることはできない。実際には0.1〜3mmの厚みのPE(ポリエチレン)やテフロン(登録商標)を用いた。
平行板線路が形成された金属面M1,M2の両端は金属面M3,M4で短絡されており、従って電界や磁界は端部が開放形と異なり、外に漏れることはないし、外部の状況に影響もされることはなく、次に述べるようにスロット放射点における下方インピーダンスを理想的に無限大にすることができる。両端の短路は金属面M3,M4による接触が望ましいが、ラミネート等によるキャパシティブショートでも実施できる。平行板線路の端部を開放することも考えられるが、一般に電界の漏れが発生するため、完全な開放点とはならないし、他の金属体等による外部からの影響も受ける。
また、若し無限大インピーダンスの開放点が出来たとしても、この現象を放射点であるスロット部2に変換するためには、半波長λ/2の長さが必要なので、線路長、即ち金属面長を倍の長さに長くする必要があり、大きなものになってしまい、特別な用途にのみ使用ができなくなる。金属面としてはアルミニウム、銅等、薄い箔が適切であるが、ステンレスSUSや薄い鉄板等も使用することができる。
図4(b)には図4(a)の平行板線路のX軸方向に切った断面図による電圧電流(磁界)分布を示す。中心部であるので、スロット部2に加わる電圧の最大値をVSとすると、平行板線路の電圧ETは、左,右に分けてVA=VT=VS/2となる。
平行板線路の厚みをhとし線路幅をwとすると、スロット部2の電界を右向きにするとスロット部2を中心として電界は左では下方に向き、右では上方に向いている。磁界Hは同方向であるので、ポインティング電力Pは左側では左方に向き、右側では右方向に向いている。線路電圧と線路電界の関係はVT=E1hであり、またVS=2VA=ES4ρである。但し電界ESは正弦波分布(余弦波分布)であるので実効値が有効成分となる。
平行板線路内の電圧電流は図4(b)のようになり、中心のスロット部2で線路電圧は最大で、短絡部で電圧は零、またスロット部2で線路電流は最小で、短絡部で線路電流は最大となり、従って、線路内の磁界Hは最大となる。従って線路内には定在波が立ち、電流はほぼ零になり無限大インピーダンス線路を構成することができる。
平行板線路の特性インピーダンスOは次のように示される。
ここで、次のような定数の値がある。
ポリエチレンやテフロン(登録商標)等の場合、比誘電率はεr≒2.3である。
磁性体を用いた場合には、一般的にμr即ち実効比透磁率は4〜10程度で、損失を含むので、使用に至っては注意しなくてはならない。
以上により、ポリエチレンやテフロン(登録商標)等の特性インピーダンスZOは
仮に、h=0.3mm、w=50mmとするとZO≒1.5Ωとなり、h=10mm、w=50mmとするとZO≒50Ωとなる。
つぎに、図4(c)には平行板線路の短部インピーダンスがZSの時に右側ないしは左側をみた線路インピーダンスがどうなるかを検討する。
図4(c)のように、線路の特性インピーダンスがZOに線路長がXであるときには給電点Aで右側を見たインピーダンスZAは次式で表わされる。
ZA=ZO・(ZB+jZOtanβX)/(ZO+jZBtanβX)
ここで端部のインピーダンスZB=0とするとZAは次のようになる。
ZA=jZOtanβX
またβは伝播定数でつぎのように表わされる。
つぎに、図4(d)にはZAの絶対値(ZA)の値を線路の特性インピーダンスZOをパラメータXの変化に対して示す。
これを見て分かるようにZOが0.5以下となるとλ/4近くでは急激なインピーダンス変化となる。即ち、ZAは無限大となるが、厚みhや線路幅wや誘電率等並びに線路長Xで無限大インピーダンスとなる幅が狭くなり調整が安定しなくなることを意味する。この方式によると0.1mm程度にかなり薄くしてもポイントでは必ず無限大インピーダンスを作ることができる。
従って、
の値を2〜50Ωとすることが線路を安定に設計できる。
絶縁体シート10の厚みhを0.1〜5近くにしたときは、式からも線路幅wもできるだけ小さくし、比誘電率の低い発泡体等の材料を用いるか、比透磁率の高いものを用いる方がよい。即ち絶縁体シート10の厚みhはh>0.1とすることが望ましい、その時920MHz帯のUHFでは実際に線路幅w=30〜50mmとしてh=0.2〜0.3mmとし、絶縁体に比誘電率εr=2.3のポリエチレンやテフロン(登録商標)を用いたもので、線路長をλe/4、920MHzで約53mmとしてZAは大きなインピーダンスとなり、スロット部2が金属面の影響を殆ど受けずに動作する結果が得られた。この近くの値を用いて特性インピーダンスZOはZO=1〜3Ω程度が得られた。
また、図4(e)に示すようにスロット部2の共振特性を組込まれたことにより、スロット部2の共振特性の右肩下がりの特性と、伝送線路の右肩上がりの特性とを利用して広帯域特性を持たせることができる。
2.45GHz帯では、スロット長lも短くなるので、スロット幅ω=10〜25mm程度に狭くすることができる。
従って、精度や周波数特性を考慮すると、良好な特性を保って使用できるのは、誘電体、磁性体材料、厚み、線路幅の適正値を選び、特性インピーダンスZOはできるだけ大きくして使うようにすることが望ましい。また製造に当たっては、端部の金属面M3,M4を完全に路端方向でよいが、UHF以上の周波数では充分に高くする程度の面積SがあればC=εS/dとなるためキャパシタンスCも大きくとれ、1/2πfC 即ちリアクタンス成分はほぼ零となるキャパシティブショートを実現できる。
つぎに、図5には2種類の平行板伝送線路の断面図の例と、絶縁体や磁性体が詰った平行板線路の例を示す。
図5(a)は金属面M1の裏側に、図中では右側のみに伝送線路が形成されない場合で、図2(d)のトラップ平行線路を右へ折り曲げた場合と等価となっている。下方の金属板M2はスロット部2の切り口にほぼ接するように接続されてスロット部2に対してλe/4波長による無限大インピーダンスを呈するように接続されている。
図5(b)は平行板線路がほぼ対称に放射面を形成する金属面M1,M1′の下方に構成されており、下方の金属面M2によって左右両側に平行板線路が構成されている。基本的には図4(a),(b)の構成と同じものである。
図5(a)の場合にはスロット部2の電圧Vsがそのまま電線路の電圧として印加されているが、図5(b)の場合には左右の伝送線路に1/2づつ分けられて印加されるので、スロット部2の電圧の1/2が搬送線路に印加される。
図4で説明たように、伝送インピーダンスは低すぎると、帯域が狭くなったり寸法精度を高くしなければならないため、インピーダンスを高くし、例えば50Ωに近い方が良いので、電圧が半分になるだけでもインピーダンスは2倍となったようにみえる。従って、伝送線路を左右に分けて電圧を両方に分散した方が有利である。
また、同一の厚みで左右対称に作った方が作り易くなる。放射面の電界や電流を励振するためにも、誘起電圧V=E・2Xを得るためにもスロット部2の両側の金属面M3,M4は必要である。Eは到来波の電界である。
また図5(c)には伝送路の誘電体εや磁性体μの絶縁体100の凹み21にIC3をスロット部2の切り口に接続されるようにして収納する場合の例を示している。
図4の説明のように、比誘電率εr=2.3の絶縁体シート10のみならず、比透磁率μrの高い磁性体100を用いれば特性インピーダンスZOは√μr倍大きくなり、絶縁層が薄くても図4(d)からも分かるとおり1/4波長の高いインピーダンス線路を構築することができる。
スロット部2の両側の金属面M1,M1′と下方の金属面M2により構成される平行板線路により、無限大のインピーダンスが構成され、スロット部2が単独で浮いているように見えるし、またこの1/4波長短絡回路の無限インピーダンスを与えるとともに多少ずらすことにより、スロット部2のインダクタンス、キャパシタンス,IC3のキャパシタンスの補正も同時に行うこともできる。
図6には、スロット部2とIC3のキャパシタンスとのリアクタンス成分を取除くもう一つの方法を示す。図1でも示したようにスロット長lを調整し、共振状態にすることは可能であることを示した。
万能ICタグのIC3には数拾ピコファラット(pF)のコンデンサが付いているので、このキャパシタンスと共振をとる必要がある。このために伝送線路の短絡部の位置を1/4波長より少しずらすことにより補正することも可能であるが、無限大インピーダンスを与えることを優先した方が優れた特性が得られるので、スロット部2のインダクタンスと補正インダクタンスは別に加えた方が有利である。
先に説明したように、スロット部2の中心部より端部のほうが、抵抗成分が低くなるのでIC3の抵抗成分との整合が取り易くなるが、スロット部2のインダクタンスがIC3のキャパシタンスと丁度共振がとれるとは限らない。
従って、インダクタンスを加えたり微調整用のキャパシタンスを加えたりして、インピーダンス整合を取ることが必要である。
スロット部2の抵抗成分と整合する位置に、基板PCBにスルーホールによりスロット部2の給電点5,5′が設けられてスロット部2に給電される。この給電点5,5′を介してインダクタンスや基板4上に構成されるキャパシタンスや固定コンデンサ等により微調整することで、IC3のキャパシタンスと共振を行い乍ら、インピーダンス整合を行う。また図3で述べたインダクタンス変換回路と組み合わせて用いてもよい。
しかし、このような回路を用いることは手間がかかるため、スロット部2上でインダクタンスを構成した方が、コストが安くなるので、図6(b)(c)のようにスリット部2による放射しないリアクタンス成分を追加してもよい。
また、図6(d)に示すスロット2のスロット幅ωを急激に狭くするアンダーカットを施すことによりキャパシタンスが増加させる方法もあり、逆に図6(e)に示す反対にスロット幅ωを広げるオーバーカットを施すことにより抵抗とインダクタンスを増やす方法もある。
上述まではスロット部2のインピーダンスとIC3とのインピーダンス整合について述べたが、つぎに平行板線路による伝送線路について述べる。
図7(a)は上下同じ大きさの金属面M1,M2による理想的な電界分布と磁界分布の平行板線路の断面図を示す。即ち、平行板線路の幅に沿って、一様な電界ETの場合を図示している。線路内は、平面波(TEM波)の姿態と同じ電磁界姿態となる。この場合には端部には電界ETSが少し漏れる。後でこの漏れ電界ETSを利用してIC3のIDを読むことを説明する。
図7(b)には金属面M1に、線路幅wより小さめのスロット長lで切られたスロット部2により励振された電界は図1の説明によってもほぼ正弦波であるので、この電界により平行板線路が励振されるので、線路内の断面の電界は図7(b)のように中心部が強い正弦波(余弦波)形の電界分布となり、端部では電界が零に近い低い値となる。
更に、図7(d)や後述の図10(b),(c)等に述べるY軸方向にスロット長l11の直線的な長さを短縮するためにX軸方向に折り曲げ、全体長(l11+2x)の長さで1/2波長の共振長による共振電流を励振でき、主要な中心部の放射部を電界の腹の部分で励振できるので伝送線路の断面の電界分布は電界の強い部分のみが伝送線路に伝送され、かつスロット部2の放射電界ESも、強い部分のみが励振され、あまり損なわれないで励振されるためスロット部2の放射を劣化させないで放射面のスロット幅ωの狭い放射面と伝送路を構築することができる。
上面の金属面M1は放射面と伝送路の両方を受け持っているため、狭くしたり小さくすると、放射電界の励振が弱くなったりするので、ある程度の大きさが必要である。一方、下方の金属面M2は伝送線路の役割のみであるので、上方のスロット部2に対して無限大のインピーダンスを提供すればよいだけであるので、このような電界分布の状態を作り出せるようにすればよい。但し、スロット長yやlの長さより小さくすると電界が漏れるようになり、下方の金属の影響を受けやすくなる。
即ち、図7(d)のように上部金属面M1に切られたスロット部2の電界が中心部のみに集中する形になっているので、この電界のみが伝送線路を励振しているので、この部分の電界に対してのみ無限大インピーダンスとなり、即ち、Y軸方向の直接スロット部2のみで電界を最大にしてやるように構成すればよい。下方金属面M2の幅w″は、従って狭くしても電界の漏れも少なく、無限大となるインピーダンスを構成もでき、更に下方に金属面が更に加わって来ても漏洩電界は殆んどないので、無限大インピーダンスの状態は変われることがなく、周囲の金属面等からの影響を受けることはない。
この場合、金属面の幅w,w″と実効的スロット長l11との関係はつぎのようになる。
w>w″>l11
また、電界分布はほぼスロット部2の構造で定まるので、万一下方の金属板M2が狭すぎて漏洩電界が発生したとしても、下方の金属面M2の上に乗せられたときにもそれ程電界が影響を受けることはない。
むしろ、上の金属面M1の表面に流れる電流が側面の金属面M3,M4を伝って下部の金属面M2との連続電流が発生することにより、スロット部2を励振する電界が励振され易くなることである。これについては図8(a)で述べる。
つぎに図7(d)には、上下の金属面M1,M2の幅wとw″が同じ場合と、異なる場合でもスロット部2のY軸方向の長さl11が短くなることによって、電界が外に漏れないようにする場合の例を斜視図で説明する。
図7(d)は図7(c)の場合の例で、スロット長lのY軸方向の長さl11を短くし、その分X軸方向に折り曲げた長さl12を左右対称に分けて、H形に構成した場合を示す。スロット部2の共振長lはほぼl=l11+l12となっており、共振状態を作り出すことができ、かつY軸方向の長さl11を短くすることができる。X軸方向の長さl12は放射に寄与せずリアクタンス成分となる。この部分の放射ベクトルは打ち消される方向となる。
下方の伝送路M2の左右の端部は上面の金属面M1と短絡されており、スロット部2により励振される電界は図7(c)の如くであるから、この電界ETは上下の金属面M1,M2の間を伝送されて端部の金属面M3,M4で短絡されて定在波となり、スロット部2に無限大のインピーダンスを作る。
スロット部2の電界ESは、スロット部2を中心に外に広がり放射電界ESrとなる。伝送線路内の電流ITは、端部で最大でスロット部2で最小となり、逆に伝送線路内の電界ETはスロット部2で最大、端部で最小となるが故にスロット部2の伝送線路の電圧VTSは最大となり、電流ITSは最小(零)となる。
従って、図4(c)述べたように、
ZA=VTS/ITS≒∞ (ITS=0) となる。
伝送線路内の横方向(Y軸方向)の電界分布は正弦波(余弦波)分布の両サイドを削ったような分布となることは図7(c),(d)で説明したとおりである。
X軸方向に切られたスロット部2からの放射は電界の振幅が低いので、基々電界が弱い上に電界のベクトルが反対方向で打ち消される方向に働くため、このスロット部2からの放射は無視できる。
図7(e)はスロット部2に発生する電界ESと、この電界ESによって励振される手前左側の平行板線路の電界ET、及び向こう側の平行板線路の反対向きの伝送線路の電界の分布を示す。スロットの電界ESは伝送線路の電界では半分の値ES/2なって2方向の電界ETとなり、伝送線路の一方は右上に一方は左下に下る。
電界と磁界の向きは矢印の如くで、従って伝送線路のポインティング電力Pは図のようになり、また放射電力Prはスロット部2から上方に放射される。等価回路を右に小さく示す。スロット部2の電界分布は正弦(余弦分布)となっている。
図7(f)にはH形のスロット部2についてスロット部2の電界分布と線路の電界分布を示す。Y軸方向に切られているスロット部2に発生する電界Exは放射に寄与しているが、X軸方向に沿って切られているスロット部2に発生する電界Eyは互いに打ち消し合って放射はしない。また伝送線路内の電界ETも互いに打消し合ってあまり漏れて来ない。Y軸方向に切られている直線スロット部2には電界の振幅の中心部が来ているので、短くても電界Exの電束数が多い。
図7(g)には上下にスロット部2が切ってあるが伝送線路インピーダンスは並列共振のためインピーダンスが高く結合しない。しかしスロット同士の結合が多々あるため、ある程度の結合が行われることを示す。後にも述べるが上のスロット部2の電力が分かれ下方に伝わると電力は半分になり、従って放射電力は半分以下となる。
つぎに図8にはスロット励振電流とスロット放射電界の分布について説明する。
図8(a)は金属面M1のほぼ中心に切られた半波長スロットと下方金属面M2とによる伝送線路による本発明の万能ICタグの動作の実施例を示すものである。
図4(a)(b),図5(b)でも説明したように、伝送線路は左右対称に配置され、放射スロット部2を囲んで、左右対称に金属面M,M1′が配置され、放射電界ESの電流誘導路を備えている。一方スロット部2の電界や電界の基となる金属面励振電流ISもスロット部2を囲むように左右対称に流れており、スロット部2の切れ目に誘起電界Vsを発生させている。到来波Eにより金属面M1に誘起される電圧VoはVo=E・2Xであり、この間に位相が変わらなければ、スロット部2にはこれだけの電圧が誘起されるので、スロット部2を励振する電界のX軸方向の長さが短いと充分な誘起電圧が得られないので、半波長程度以上の長さが必要である。然しスロットアンテナは一応無限大の金属面の一部にスロット部2を切ってあることが理想であるので、これに近い状況であれば、理論値に近づくことができる。後述するようにX軸方向の長さが短い場合もあるので、この場合には実効上長くする工夫が必要である。
伝送路の内部については、図7でも説明しているので、図8(a)では金属面M3の外側の電流ISと電界ESのみについて述べる。これらの励振電流ISは、若し金属面Mの上に乗せられているならば、例え金属面Mに薄いプラスチックコーティングやフィルムで被覆がされていてもキャパシティブショートで励振電流の一部となって金属面Mにも流れ、むしろ放射の助けとなる。勿論、プラスチックコーティング等がない裸の金属面M2と金属面Mが接触するならば直接電流は導通される。従って金属面Mに本発明の万能タグが載せられると返って、金属面全体がアンテナとなって性能が上昇する場合がある。
30mm幅で長さ10mm〜120mmプラスチックフィルム厚10μの場合には、数百〜数千pFのキャパシタとなり1/jωCは0.02〜0.3Ω程度の低いインピーダンスとなりキャパシティブショートとなる。
図8(b)は本発明の万能ICタグの側方からみた断面図で、スロット部2の切れ目で発生する電界ESと、該電界ESが電流ISと共に金属面Mに流れる様子を示す。この電界ESの殆んどが放射電界Erとなる。
今迄の説明では下面の金属面M2には切り欠きやスロット等が存在しない場合について説明して来た。
つぎに、下面の金属面M2にもスロット部S2が切られたり、開放端が切られている場合の例を図8(c)に示す。図8(b)の下方の金属面M2の中心にスロット部S2があろうがなかろうが左右をみたインピーダンスは無限大であるので、下方のインピーダンスは無限大であり、スロットや切り欠きや開放端OEがあろうがなかろうが表面のスロット部S1には影響がない。即ち、中心部にスロット部S2を設けても開放端を設けても、金属面で閉じていても関係ないことになる。
従って下方を開けておく場合、これによって後述の別の万能ICタグが重ねられたとき、別のスロット部S1を塞ぐ心配がなくなる。これにより重ね積みが可能な場合がある。
図8(d)には上面の金属面M1にスロット部S1が切られ、下面の金属面M2にもスロットS2が切られ、上下のスロットの縁の一方が上下の金属面M1,M2に金属面M12で接続するように短絡されている場合を示す。
この短絡面により、上下のスロット部S1,S2は同等に接続され、上面にも下面にも放射が行われるようになり、かつ下面に金属面Mが来た場合には図5(a)の片側トラップの場合と同じになるので、下方は放射せず上方は放射が行われるので、金属面Mがないときは両面放射で、金属面Mがあるときは金属面対応のスロットアンテナとして早変わりするような、自在のスロットアンテナになる万能ICタグとして利用できる。一般には片面放射で利得を高く取る方が有利であるが、カード等のように両面の放射が欲しい場合もあり、かつ金属面上でも動作させたいと欲張った使い方に適する構成である。
図8(e)には上面金属面M1にスロット部が切られ、下面の金属面M2の中央部は金属面のままでスロット部の切り口近くで上下の金属面M1,M2が短絡され片側のみの伝送路となり、この伝送路の端絡部より適当な位置x1の所に上下の金属面にまたがってIC3が接続され、IC3と伝送線路とスロット部が整合を取る通信を行うようにしている。
図8(f)には上面金属面M1と下面金属面M2の中央部にスロット部S1,S2を切り、このスロット部の片方の切り口の近くに上下を接続する金属面が取付けられ、図中央の左側のみが伝送路となり、この伝送線路の端部よりxの距離の適当な位置に上下の金属面にまたがってIC3が接続され、IC3とこの間の伝送線路とスロット部とが整合し、IC3の信号が上下のスロットS1,S2より得られるようにしている。空間に置かれた場合には両面からの放射が得られ、金属面にどちら側でも置かれた場合には、その反対側との通信が行われ、如何なる場合でも通信できる特徴がある。
図8(g)には、金属面M1,M2の間にIC3を接続し、金属面の上下面の電界ETと電圧VTの励振によりIC3を動作させる場合で上下のスロット部に別々にIC3を接続するより、上下金属に平等に接続されるIC3により、上面のスロット部にも下面のスロット部にも平等に接続されるIC3の信号が伝送される。また、伝送線路でIC3が守られることもあるし、伝送線路を介して、個別のスロット部に電力を分配することもできる特徴がある。
図8(h)には斜視図を示す。IC3の接続される位置はX軸方向のみならずY軸方向でもインピーダンスの合う位置に接続すればよい。
図8(i)ではスロット部近くで平行板線路の縁に近い所にICを上下金属に接続している場合を示す。IC3の端子は図3で説明したスロットに接続する場合と異なり、上下の金属面に挟まれるような構造で接触するため基板にIC3を載せ上下の金属面に接続されるような接点ないしは電極を構成する場合を示す。
図8(j)には、Y軸方向の線路断面からX軸方向を見た場合のIC3の位置を示している。このように接続すると図8(k)のように放射状の電流が流れ易くなるので、線路を線路に沿って切り込みを入れた場合を図8(l),(m)にしめす。中心部にIC3を置くと対称となるために左右の電流は打ち消されX軸方向の電流のみとなる。いわばX軸方向のみの電流を構成することができる。
つぎに図9にはY軸方向のスロット長lを小さくし、放射面の線路幅wを小さくする方法について説明する。
図9(a)は今迄述べて来た通常のスロット部2を真直ぐな一本金属面M1に切った場合を示す。このスロットアンテナの場合、X軸方向,Y軸方向に充分な大きさや厚みhが取れる場合には、このような構成でもよい。
UHF 920MHz帯の場合は半波長λ/2で16cm(160mm)、λe/2で10.7cm(107mm)、λe/4で5.4cm(54mm)となることは先にも説明した。2.45GHzの場合は、λ/2で6cm(60mm)、λe/2で4cm(40mm)、λe/4で2cm(20mm)となる。430MHzであるとλ/2で35cm(350mm)、λe/2で23cm(230mm)、λe/4で11.5cm(115mm)となる。このように大きなスロット部や金属板を用いて万能ICタグを構成しなければならない。従って、2.45GHzの場合には全体として小さく構成できるが、920MHz帯や430MHz帯:VHF帯の場合にはアンテナ長を短縮するように検討しなければならない。
図9(b)は、スロット部のY軸方向の長さl11を短くするためにX軸方向の両側+xと−x方向に対称にスロット部の切り欠きをX軸方向の長さl12だけ延ばし、H形に作った場合を示す。スロット部の中心部が最大となるcosine(余弦)分布で、途中でスロット部がX軸方向に分かれて電圧(電界)が分配された形となり、この長さを加えて全体でスロット部の共振長λe/2になるように構成している。誘電体や絶縁体材料がスロット部の切り欠き部にも影響を与え、短縮率は誘電体が充填されている場合とほぼ同じように短縮率はほぼ66%程度の影響を受ける。磁性体の絶縁体を線路やスロット部に用いたときは更に短縮率がかかり、スロット長が短くなる。スロット長の全長lはl≒l11+2l12となる。
つぎに、更に小形のサイズの万能ICタグを作りたい場合には図9(c)のように、X軸方向の長さを縮めるため、真直ぐなスロット部ではなく、図9(c)や(d)のようにZig−Zag形かコ字又は波形のような迂回路を用い、スロット長の短縮を行うことができる。
Y軸方向のスロット中心部は、直線でないところで励振される線路の電界ETの波足がそろわないと両端の短絡部で短絡を行ってもスロット部に対して完全にλ/4波長の無限大線路とはならないため、スロット部の波源も波足を捉える反射をさせる両端の金属面、M3,M4も平面でないと平面波に対して波足が捉われず、完全なλe/4の短絡面を実現することはできない。特性インピーダンスZDが高く取れる場合には、端部とみたインピーダンスZAが無限大となる幅が大きくなるので、この場面でY軸方向もZig−Zag形にすることもできるがこの場合は直線で切る方が望ましい。
つぎに、図9(e)のようなレエントラント形のような構造のスロットと、図9(f)に蝶形(ボータイの形)のようなスロット部の構造を示す。スロット形状が斜めとなるため、短絡板M3,M4が直線であると、スロット部の電界ESとこれによる線路の電界ET全体に対して完全な無限大インピーダンス線路を構成することは難しい。スロット中心部に電界が集中するためこの先よりλe/4の距離とするか、平均的な線路長となるが、仮にスロット部の周波数特性が広く得られたとしても、短絡線路による無限大インピーダンスの線路の構成はZDを大きくしない限り難しくなる。
図9(g)にはX軸方向のスロット部の切り欠きの長さを更にUターンさせ、半分にする方法を示している。このように迂回路を設けて、X軸方向の長さを短くすることができる。勿論もY軸方向のスロット部は実用上の長さを確保するようにした後のX軸方向のスロット長の長さの短縮方法である。図9(h)にはX軸方向に折り曲げる場合、片方の+xの方向のみにした場合である。多少対称性を失うが、実質的にはほぼ同様な性能が得られる。
つぎに、このようなスロット部の電界ESと平板線路の電界ETとの関係をもう少し分かり易く図7(Ee)を使って説明する。
図7(e)は本発明の一般的な直線スロットによる場合のスロット部に発生するX軸方向の電界分布EX=ESと、このスロット部の電界ESにより平行板伝送線路に誘起されるZ軸方向の電界ETの分布をスロット部と伝送線路内で示したものである。スロット電界ESは図7(b),(e)のようにスロット内に正弦的(余弦的)分布で発生する。この電界ESは平行な金属面M1,M2により伝送線路内にZ軸方向に+と−の電界ETを発生させる。この電界の強さETはES/2であるから、当然乍らこの電界もY軸方向に正弦(余弦)分布となる。
スロット部を中心としてX軸方向には左右電界の向きが逆であるから、右上側に向う線路には右上側に向かってポインティング電力PTFが進むことになる。然るに端部で100%反射して来るので同大の反射板PTrが給電部のスロット部の方向に進んで来て定在波を作る。左下に沿って同様にポインティング電力PTFが線路内で進んで来るが、同様に端部で100%反射し、また給電部のスロット部に向かって進んで来て、スロット部で電圧最大となるような定右波を作る。内部に損失を生ずるものがなければリアクタンス回路となり、純粋リアクタンスによる無限大インピーダンスを提供するだけである。
スロット部の電界ESの一部は広がって行き、放射電界ESrとなり、Z軸方向に放射を行う電力となる。この電力のみが損失抵抗あるいは純抵抗の放射抵抗となる。この放射抵抗のスロット部の或る位置の部分で備えられたIC3の抵抗成分と整合がとれればIC3に電力が供給され、IC3により変調された信号を取り出すことができる。
例え一番抵抗値の高いスロット中心部の数百オームの位置においても、トランスフォーマを用いればIC3とインピーダンス整合をとることができ、最大のエネルギーをIC3に供給でき、従って最大の通信距離を得ることができる。
図7(e)には図9(b)や(c)で述べたH形のスロット部の場合の電界分布を示してする。スロット部の両端部がX軸方向に+側と−側に対称に折れ曲がっている場合を示す。
スロットの励振電界ESはX軸方向のEx成分で構成され、Y軸方向に沿って正弦(余弦)波状に分布し、途中でスロット部はX軸方向に曲げたり、電界もY軸方向のEy成分となり、端で零となる正弦(余弦)の分布となっている。
スロット部の折れ曲がり部Rでは電界の大きさは連続しており、従って、電圧の大きさは連続している。一方電流は左右に分配されるため、1/2なる。スロット中心部のX軸方向の電界ESは、一方向であるため、この電界ESは放射に寄与する。
一方X軸方向に曲がり曲がったスロット部の端部に発生するY軸方向の電界ESYは、X軸方向,Y軸方向ともに打ち消し合って放射もない、また伝送線路内の電界ETEも左右で打ち消し合って近傍以外に出て来ない。
平行板線路の側面は開放されているので、漏れ電界や磁界が僅かにあれば、この電界や磁界を拾って近傍でのみIC3により励振された信号を拾うこともできる。これにより積み重ねられた万能ICタグのIDを拾い、何の万能ICタグが重ねられているか知ることができる。
つぎに金属面上でも動作し、かつ金属面がないときは表、裏両面で動作するスロットアンテナの例を図10に示す。
金属面M1,M2共にスロット部が切ってあり、中空に下げて使用する場合には、両面の金属面から放射を行い、金属面の上に裏の金属板M2が乗せられるときは、M2の面のスロット部は金属で塞がれ放射インピーダンスは1スロット分の半分以下となるが、表面からの放射が行われる。この反対の調整も可能である。即ち、金属面上で正常に動作し、金属面から離すと平衡となるように動作させる方法である。
図10(a)は上面の金属面のスロット部S2にIC3が取付けられ、下方金属板M2にも奇性(パラシティック)で共振するスロット部S2が切られている場合の断面図である。この場合I3はスロット部ではなく破線のように伝送線路の間の比較的電圧の高いインピーダンス整合が取り易い位置に取付けることもできる。
図10(b)は図10(a)の斜視図である。上部の金属面M1にスロット部S1が切られ、このスロット部S1にIC3が接続されている。下方の金属面M2にはスロット部による共振回路が構成されている。表面ではスロット部S1による放射とこれに結合する裏面ではスロット部S2による放射が行われる。IC3の取付け場所も伝送線路間に取付けて、両スロット部を励振することができる。
図10(c)はモノポールアンテナに対する相補的スロットアンテナで、図1(g)で述べたように、1/4波長スロットのインピーダンスは1000Ω以上と非常に高いので、整合(抵抗分とリアクタンス分)が難しい。整合については、既に説明しているのでここでは省略する。
この平行板線路の構造のスロット部は上下のみならず、一部は側方にも電界の漏れがあるので、側方でも漏洩電界が僅かに受信することができる。然し乍ら単層の伝送線路では表面の金属面M1側を金属面等で閉がれると万能ICタグとしては動作しなくなるし、重ねた場合でも上下の万能ICタグで閉がれたり妨害されたりするので使用に限度がある。インピーダンスが高く使い難い。下方の金属面の影響を避けるように開放端部は1/4波長のスロット部を切ってある。
そこで、本発明のもう一つの実施例について説明する。
図10(d),(e)には上下のスロット部S1,S2に、別々のIC3を夫々接続した場合を示す。
図10(d)は、上下のスロット部S1,S2が無限大線路によって分離されていることを利用したものである。図10(d)には上下面のスロット部S1,S2に別々のIC3を取付け、表と裏で別々のIDを得ることのより表裏の判別を行ったり、使い分けたりすることができる。
図10(e)は伝送線路とスロット部を2つに分けて合わせたもので、夫々の伝送線路のスペースを有効に利用している。図10(e)には両面スロット部に並列にIC3を取付け、片側構造線路による組み合わせを行い、表裏別々の万能ICタグとして用いる場合を示す。
図11は2層以上の多層の伝送線路を用いた本発明の万能ICタグの実施例である。
図11(a)は今迄述べた実施例の万能ICタグに更に下方にスロット部の代わりに平行板線路M5を加え、その平行板線路M5に開放部OE(Open End)を設けた構造のものである。これにより、#1の万能ICタグの下に#2の万能ICタグが来た場合でも#2のスロット部S1の上方が短絡され、#2のスロット部S12が動作しなくなることを防止できる。#2のスロット部S12から上方をみた場合、#1のλe/4線路により上方は無限大となり、#2のスロット部S12は短絡されず、IC3が接続され、生きたままとなる。
若し、この線路を側方等から励振するならIC3とスロット部S1,S12は動作し、信号を出すことができるので、万能ICタグを重ね合わせる場合等に役立つ。電界ET1,ET2…ETnを受信するアンテナは側方の電界の強い部分に取付ければよい。また磁界を利用する場合は端部電流の大きい所がよい。
図11(b)には図11(a)の斜視図を示す。一層目の平行板線路No.1Lはスロット部S1に対して無限大のインピーダンスを提供し、2層目の平行板線路No.2Lは下方の#2万能ICタグのスロット部S12のIC3から放射される信号を無限大インピーダンス線路で受けとめるので、#2万能ICタグは上の#1万能ICタグの裏面によって無効にされたり、塞がれたりすることはない。多数の万能ICタグを重ねた場合も同様である。斜視図(d)は複雑になるので#2万能ICタグ以降を省略してある。
つぎに図11(e)には上面金属面M1,下面金属面M2の両金属面にスロット部を切り、上面金属面M1のスロット部S1にIC3を乗せ下面のスロット部は寄生のスロット部S2のみとする場合である。このスロット部S2は使い方によって共振を行われたり、使用途によっては単なる結合穴として用いたりすることができる。
更に下方に金属板M5を設け、この金属面はスロット部の代わりに開放部とする。即ち、下方の#2以下の万能ICタグに対してほぼ無限大に近いインピーダンスを提供し、スロット部S2に対しては非共振の開放端であるため、殆どが影響を与えない平衝線路となる。
図11(d)には、この2層線路と2重スロット部S1,S2と開放端OE部が金属面M1,M2,M5によって構成されている斜視図を示す。IC3は上面金属面M1のスロット部S1に取付けられている。
図11(e)には#1万能ICタグと#2万能ICタグとの結合を示し、金属面M2に明けられた共振または非共振形スロット部S2により、IC3が取付けられたスロット部S1の信号が結合され、更に下層に伝送されて下方の金属板M5の開放端を介して放射または伝送されることを示す。伝送線路間にIC3が取付けられた場合、スロット部の片側が短絡されている。上下放射形スロットについても同様である。
#2万能ICタグ以下の万能ICタグを重ねた場合でも相互結合m1,m2,m3…によって#1万能ICタグのIC信号は伝えられる。また下方の万能ICタグの信号も同様に結合を介して上方に伝えられるので、上方または下方に検出用のアンテナDAあるいは側方に検出用アンテナDAsを備えれば多数重ね合わせた万能ICタグも読み取ることができる。
裏側の開放があまり不要な場合にはM2に切られたスロット部S2は非共振とし、相互結合m1やm2,m3を弱めたほうがスロット部S1の共振を妨害する割合が少なくて済む。ここまでは約半波長共振スロットについて述べて来た。
図11(f)(g)では約1/4波長λe/4スロットの場合について述べる。図11(f)は図11(c)の場合と同じように重なった場合で1/4波長スロットによる2層スロットタグを構成し、この場合の放射と結合を図示している。図11(f)は断面図で図11(g)はこの斜視図である。1/4波長スロットの場合にはスロットが半分になっているので、片側のスロットが開放されており、この方向には電界が漏洩するので、この方向でも検出アンテナDAを置けば万能ICタグやIC3の信号を受信することができる。従って側方でも万能ICタグの信号を拾い易いので、積み重ねの万能ICタグの信号を側方で検出するには、この万能ICタグの方が小形で、信号がとり易い。然し乍ら放射インピーダンスが高く小形になり過ぎて放射効率が悪くなったり、側方の放射があったりして、指向性利得も落ちる場合がある。IC3が接続されているスロット部はIC3のキャパシタとスロット部のインダクタンスが共振するので問題ないが、IC3が接続されてない金属面M2のスロット部にはキャパシタCを接続し共振をとる必要がある。このように下方の金属面にスロット部や開放端OEを設定することにより、重ね合わせを可能にする。
図11(h)は#1万能ICタグと#2万能ICタグ,…と多段に万能ICタグを重ねた場合のスロット部の結合を示す。金属面M2に切られたスロット部S2,S22は共振状態となって、IC3を乗せているスロット部S1と干渉するので、スロット部S1を生かしてスロット部S2,S22は下方スロット部との結合用に用いることもできる。
図11(i)(j)は金属面M2のスロット部S2にIC3を接続し、金属面M1には共振形スロットを用い、放射を行わせる場合である。下方の金属板M5はスロットを切ってある場合はIC3が中間に挟まれる構造となり、上下に対称にスロット部S1,S3により放射が行われる。IC3は中間に置かれ保護される構造となり、上のスロット部S1または下のスロット部S3が塞がれた場合でも塞がれない側で放射が行われるので、このような目的の万能ICタグには好都合である。
また、下方の金属面M5にスロット部ではなく、開放端OEとなっている場合には、重ねた場合でも下方に重なるスロット部を塞ぐことはない。従って、金属面M5の切り口はスロット部Sとするか開放端OEとするかは、目的によって使い分けることができる。図11(j)には金属面M5にスロットを切った場合を示す。この場合には対称に上下(表裏)に放射が行われる。
図11(i)は重ねた場合でも上下の検出アンテナDAに放射電界ESが受信されることを示す。図11(j)は斜視図で、万能ICタグの上下に電界が放射され、これを検出アンテナDAが受信する場合を示す。
図11(k)(l)は1/4波長アンテナの場合を示す。構成は1/2波長スロットの場合と同様である。金属面M1の1/4波長スロットの寄生共振を行うときはキャパシタを接続し、共振状態を作る必要がある。
図11(m)(n)には単波長スロットを用いた3層及び4層平行板線路構造の万能ICタグ断面を示す。
3層の構造にしたのは、図11(i)(j)の構造の万能ICタグで、特に上面,下面ともにスロット部S1,S3が取付けられている場合で、万能ICタグを重ねた場合、上の#1万能ICタグの下面のスロット部により、下に重なった#2万能ICタグのスロット部S1が塞がれないように開放端OEの平行板線路の層を追加したものである。これにより#2万能ICタグが上に重なった#1万能ICタグにより塞がれる等の妨害を受けることはなくなる。
従って、万能ICタグを何枚も重ねてもスロット面が他の重なって来る万能ICタグによって塞がれることがなく、上方または下方からスロット面を励振した場合でも上から下へまたは下から上へスロットが結合をしながら励振をし、スロット部に接続されたIC3の信号を読みとることができる。一般にIC3にはアンティコリジョンの機能が付いているので、100個程度積み重ねてもIDを読み取り選別することができる。
然し、万能ICタグ同士の結合を強くし過ぎると干渉を起こし、共振周波数がずれて、返って読みづらくなるので、この相互結合は小さくしておいた方が干渉は発生し難い。図11ではIC3はスロット部に載せる側で説明して来たが、図8、図10で説明したように伝送線路間の電界や電圧、電流を利用して重ね積みができるようにすることもできる。
つぎに、万能ICタグを名刺サイズやカードサイズに小さくする場合の実施例について図12に示す。
カードの標準サイズは55×85×0.84(0.76±10%)[mm]であるので、カードサイズに収める場合、これにより小さく構成しなければならない。半波長スロットによるスロット長は図1,図2等で説明したように半波長に短縮率を乗じた値で920MHz帯の場合、スロット長lは約107mmとなった。このスロット長l≒107mmを更に短くするためにスロット部をH形に構成し、更にZig−Zag線路を主スロットの両翼のスロットに用いることで短縮を加えるようにし、Y軸方向のスロット長を50mm以下に押えることができる。
更に、今度はスロット部を励振する電界方向、即ち、X軸方向をカードの長辺85mm程度に短くしなければならないので、半波長の107〜160mm以下に構成しなければならない。カード長の85mmは1/4波長程度であり、スロット長は短くスロット部に誘起させる電圧は電界強度に長さを乗じたもので、E×0.085ボルトと小さい値となる。従って、カードサイズの万能ICタグは通信距離が短くなる。金属面Mの上に載せて、直接導電電流を連続させ、放射電界や受信電界を誘導させたり、キャパシティブショートにより、ほぼ短絡に近い大きなキャパシティ状態を作ることにより、1/ωCを1Ω以下にし、導通状態と同じ環境を作り、劣化がなくなるようにすることができる。
スロットの下方の平行板線路のインピーダンスを無限大にさせることはスロット部から短絡端部までλe/4が必要なので、平行板線路を折り曲げ2重(2層)にすることによって達成することができる。
この実施例を図12に示す。カードのほぼ中心部のICが接続されているY座標において、X軸方向のカードの長辺方向に切った断面図を図12(a)に示す。スロット中心部から短絡部迄の電気長はλe/4であるので、約54mmである85mmの1/2はx1=42.5mmで実効1/4波長は54mmの長さでなければ動作しないにも拘らず、伝送距離x1が42.5mmしかないので、54−42.5≒11.3mmの長さが足りない。従って、x2=11.3mmの長さを折り曲げて線路長を補充しなければならない。即ち1/4波長の線路を両側に得るためには、1層のx1の伝送距離と2層のx2の伝送距離の合計x1+x2=53.8mmで構成する。カード厚は0.76±10%で約8mmであるので、折り曲げによる2層構造の場合には、絶縁体の厚み、即ちスペーサの厚みは0.2〜0.3mm程度で作らなければならない。金属板の厚みを通常流通する0.01〜0.03mmとすると、3枚で0.03〜0.09mmとなり、0.2tの厚さの絶縁体の場合、全体の厚みは0.4+0.09〜0.6+0.03tの厚さの絶縁体の場合、全体の厚みは0.5〜0.6+0.09≒0.7±となり、カード厚の長に納めることができる。実際に製造するときは通常のサイズの長辺方向が107mm程度カードを、全長が約85mmの所で図のように両端を折り曲げるようにしてもよいし、m2を最初から短く切って絶縁体のみ折り曲げる構造としてもよい。
920MHzの場合、アルミや銅のスキンデプスは2μ(0.002mm)であるので、多少のロスがあっても動作するのは1〜10μ(0.001〜0.01mm)程度の金属箔や金属コーディングがプラスチックフィルムに金属コーディングされている程度で充分の厚みが得られる。金属面同士を接触させたり、全体の薄いプラスチックフィルムで覆うなり、薄いプラスチック板を貼り付けて仕上げてもよい。
つぎに、図12(b)には下方の金属面M2にスロット部S2を切り、下方からも放射が行われるように構成した場合を示す。
図12(c)にはカードを積み重ねた場合にも下方のカードや隣接のカードのスロットが塞がれないようにもう一層の伝送線路を増やし、2層とし、加えた金属板M5は開放端OEとする方式を示す。カード長にあわせるために、カードを折曲げ4層となるようにしている。折曲げ部の作り方については、図12(b)の場合と同じ方法によればよい。斜線の部分はプラスチックP等で充填平面にする。
図12(d)はICを一番上の金属板M1に接続せず、中間の金属面M2に接続し、金属板M1のスロット部S1が受信したエネルギーを受けて中間の金属面M2に切られたスロット部S2を励振し、ここに接続されたICを励振する方式で図11(i)(h)(m)(n)で説明する方式によってカード形に組み上げた場合の構成を示す。
図12(e)は更に下方に金属面M6を加え、この間にもう一層の絶縁層を加える層とし、下方の金属板の中心を開放端OEとした場合を示す。長さをカードサイズとするためと、伝送路の1/4波長の電気長を確保するため端部を折り曲げ、6層になるように構成している。
図12(f)はカード形万能ICタグの実施例の斜視図である。長辺が85mm、短辺が55mmであるので、このサイズの中にスロット長を納め、共振特性、放射特性、線路の伝送特性を納めなければならない。
スロット長を確保するためにY軸方向にスロット長が半分程度しかないので、X軸方向にスロットを延ばすH形のスロット部として構成しなければならず、先のスロット部の形状で説明したH形のスロット部を示してある。
寸法構成例としては、図に示すように、Y軸方向に連続スロット40mm、X軸方向に67mm(±33.5mm)として全長で約107mmのスロット長として約半波長共振長を構成している。
線路長も1/4波長53.5mmを構成しなければならないので、線路の一部を折り曲げる構造としている。カードの全長が85mmであり、線路長が107.5mm程度なければならないので、この差107.5−85=22.5mmが折り曲がる部分の長さとなる。従って、この半分1/2の長11.3mmが両端の折り曲げ部分となる。カード厚は0.8mm〜1mm程度であるので、絶縁体厚が0.2〜0.3tで2層となり、0.4〜0.6tとなり金属面とカード表面のプラスチックフィルムあるいはプラスチック板を含め0.8mm厚程度に仕上げなければならない。
実際の構造では、この上下に仕上げる印刷を行うためのプラスチック面PFが接着またはラミネートされる。
図12(g)は図12(f)のカードに更にもう一層追加した場合とX軸方向のスロット長をX軸方向に切る長さを短くするため、Zig−Zagに切ってスロット部の共振長を確保する場合の両方の選択の違いの実施例を示す。組み合わせはいくつもあるので、ここではその中から代表的な実施例として挙げている。
図12(h)に示すように、X軸方向のスロット長は40〜65mmと短くなり、また伝送線路の端部の折り曲げにより4層の厚みとなっており、例えば0.2tの絶縁シートを用いた場合は4×0.2=0.8tこれにアルミ蒸着膜の厚さ0.001tが5〜6層加わったとして0.006t全体で0.81t、更に上下のカバーが貼られると1mm厚程度となる。
若し、0.15tの絶縁シートを用いる場合には4×0.15=0.6tでアルミを0.001tの厚さでシートに蒸着したとして00606≒0.61t、この上下に0.1tのプラスチックフィルムを貼り合わせると0.61+0.2=0.81tとなり、カード厚に納めることができる。
図12(h)は、図12(g)の一番下方の金属面M5にもスロット部が切られて、中心の金属面M2に切られたスロット部にIC3が接続され、対称に上下に寄生スロット部が切られており、上下対称にスロット部からの放射がある場合を示す。
この万能ICタグの特徴は金属面の上に乗せても他方のスロット部が動作し、また中心の金属面M2に接続されたICは下方が無限大インピーダンスとなることから動作し、中空状態(真空状態)でも金属面上でも動作することである。
図12(i)には1/4波長スロットをカードに乗せた場合の例を示す。1/4波長であるため小形に作れるが、無給電共振をおこさせるためにはキャパシタが必要である。
IC3が取付けられているスロット部はIC3にキャパシタが付随しているので、微調整を行う以外は不要である。つぎの図13でも述べるようにX軸方向の長さを短くすることは、スロット部に誘起される電界が少なくなるので単体で動作させたときには、感度が悪くなるが金属面上で動作させるときは、この金属面に流れる電流による電圧とカードの表面電流ISがつながり、返って誘起電圧も増え放射効率が良くなる。
図13には更に小形化する場合の構成を示す。X軸方向の長辺を短くするために、折り曲げによる重ね合わせ部を長くし、片側の伝送路が2層で全長λe/4となるように、構成,即ちλe/8とする長さでタグ全長が約λe/4(920MHz帯で約54mm、1000MHz帯で約49.5mm)となる長さにした場合を示す。単体で動作させた場合にはスロット部に発生する電圧は920MHzの場合には、更に低くなり、放射効率は下がるが、小形化には役立つ。Y軸方向のスロット長もZig−Zag方式等により短縮し、20〜40mmとし、線路幅wも30〜50mmと縮小している。
更に、3層になるように折り曲げると更に小形化を進めることができる。先に述べたように磁性体シートによると、更に短縮を行うことができる。金属面に置くと図8(a)で説明したように金属面との電流が連続し、誘導電流が加算され、小形化して失った誘導電流や誘導電界を補うこともできる。直接金属面に接する場合もあるが、薄いプラスチィクフィルムを介してキャパシティブショートさせ、高周波的な短絡も可能である。
C=εS/dであり、d=0.01〜0.1×10−3m、S=50×30×10−6m2とし、比誘電率εr=2.3とすると、Cは数百pFで1/ωCΩは非常に小さい値となり小数点以下の短絡に近い値となる。
図14には本発明の万能ICタグの外観の実施例を3例挙げている。PETシート(PF1)にアルミが蒸着あるいは箔がラミネートされた金属面M1にエッチングされたスロット部SにIC3が接続され、中央部にIC3を収納する窪みをもつ0.2〜0.3mm厚のポリエチレン(PE)あるいは磁性体シート(μ)によって上部より接着され、更に下から囲むようにアルミ蒸着またはラミネートされたPETシート(PF2)を接着し、線路端部で上下面のアルミ面が圧着や融着等の手段によって短絡(cont)された構造を示す。絶縁シートの窪みはIC3が下方の金属面M2に直接接触しないように薄く残し、上下金属面が絶縁されるように構成している。ラミネートの端は接着による耳を安定にするように丸めて、端部に接着させてある。これにより全体で0.3〜0.5t厚の万能ICタグを構成できる。
図14(b)は図14(a)とほぼ同じ構成であるが、下方の面に万能ICタグの接着が容易となるように糊(paste)をつけ、シリコン紙SiPでカバーした場合を示す。
図14(c)は本発明のスロットアンテナタグ1本体を薄いプラスチック板あるいはプラスチックシートPCで囲んだり、全体をモールドPCとした場合の仕上がりの斜視図を示す。カード形万能ICタグや、少し厚めの万能ICタグの場合の例となる。
図14(d)には0.3〜1mm厚程度の可撓性(フレキシブル)な万能ICタグの性質をいかして、曲面になるように丸めて用いる場合の実施例を示す。
万能ICタグを取付ける物体の曲面に合わせて、本発明の万能ICタグ(USAT)を取付けられるように、万能ICタグの両端Ed1とEd2にはバンド(Band)が取付くような加工が施されており、本発明の万能ICタグ(USAT)を巻きつけるように構成する場合を示す。スロット部Sは、曲面の周に沿う方向に切られている場合を示し、従って電界Eは円筒形の軸方向(タグの座標で言えばY軸方向)に励振され磁界Hは円周方向に励振され、放射電力は円筒の径方向に進むことになり、スロット部が円筒の周囲にほぼ一様になるように放射をするのでそのような目的の場合に適している。金属体や人や動物等に巻きつけて用いる用途に適している。
図14(d)、図14(e)は、取付け金具と、取付けバンドの構成を示す。
図14(f)には、図14(g)の場合と比較し電界と磁界が入れ換わるようにスロット部の方向が直角となって場合を示す。即ち電界の方向は円筒の周方向で磁界の方向が円筒の軸方向となり、円筒の半径方向に放射が行われる構造となる。
両側とも筒の軸方向の長さを短くしているが、充分な長さを持つように構成すれば、図14(e)のスロット部の電界や電流の励振距離も充分に得られるし、キャパシティブショートのような金属体に流れる電流を利用すれば、性能を落となく高性能な放射を行なうバンド形の万能ICタグを構成できる。
図14(f)についても円筒軸長が電界や電流の励振長となるので、この距離を充分に取る方がよい。円筒の軸長は、スロット長にも関係するのである程度の長さ、例えば30〜50mm程度あった方がよい。
図14(h),(i),(j),(k)以下には、円、楕円、平柱、6角柱等の金属棒の例を示し、これらの形の金属柱に本発明の万能ICタグ(USAT)が巻きつけられる例を示す。即ち、どのような断面の金属棒でも、動物、水を含む構造体でも応用できることを示す。
図15は屋外や汚れのある環境の悪い場所で使用する場合を示し、カバー(Cov.)に万能ICタグ1を収納したあと封印モールドで封入し、耐候性を持たせる場合を示す。金属体Mへの取付けはカバーの耳Rの部分でボルトB等で止める。防水のためOリングやガスケットを当てた方がよい。
図15(b)は金属面Mと面一にし、万能ICタグ本体1の突起により破損が生じたり、余分な抵抗が発生しないように万能ICタグ1を埋め込むための窪みを金属面Mに設け、万能ICタグ1を埋めた後にモールドあるいはプラスチック板カバー(Cov.)で保護するようにした場合を示す。このように作ることで金属体と一体で構成できる。
図16(a)には金属面M1の表面に2個のスロット部を切り、左側の一方のスロット部にのみIC3を接続している。右側のスロット部はICが接続されていないスロットである。特性インピーダンスZOの伝送線路が下方にあるときはこの伝送線路を伝ってスロット部のエネルギーが伝送される。先にも述べたように伝送線路の特性インピーダンスは、薄く構成することで低く、スロット部のインピーダンスは高くなり、整合がとり難く隣の右スロット部に給電することは難しい。
しかし、特性インピーダンスZOが大きかろうが小さかろうが、線路長λe/2,λe,3λe/2,…2λeとλe/2の整数倍の長さでは、同一のインピーダンスが並列に接続される構成になるので、この原理を使って、図16(b)に示すように実効線路長1が波長λe離れた所にNo.2スロット部に配置し、スロット部が2個平列に接続されたインピーダンスを持つ、即ちZS/2で整合をとれれば#1スロット部と#2スロット部は同一の効果を持つスロット部として動作し、かつ正面Z軸方向には同相のスロット部として励振されるので、単体スロットの時の指向性より3dB近くのアンテナ利得を稼ぐことができるため、VSWRの反射による劣化はこの場合小さい。整合インピーダンスはスロット一個の場合とそれ程変わらないので調整は不要である。更にスロット部を同じ条件で追加しても並列にスロット部が接続されるだけである。これが伝送線路を用いる大きな利点の一つである。
#1スロット部と#2スロット部が同相に給電され、かつ実効し波長の間隔で配置されているので、図16(e)に示すようにZ軸方向のみでなくX軸方向の放射も多少伴うようになる。
つぎにスロット部ではなく、給電線路の間にIC3を接続し、電力を給電線内に集めてIC3に電力を供給する場合の例を図16(c)に示す。この場合には伝送線路のインピーダンスZOを適度な値に選び、充分にスロット部に電力が供給できるようにインピーダンス整合が取れるように構成するとよい。
例えばスロット部のインピーダンスZSを100Ωとすると、ZO=100ΩになるIC3の取付け位置は100/2=50Ωとなるので整合がとれる。インピーダンス整合のためλ/4波長線路でZic・Zs/2=ZO 2として給電線路を構成しても良い。
また、スロット部の幅、長さ、及び給電線路長xl、端部の線路長X、IC周辺の整合回路によって、目的が達せられる。
図16(c)では、仮に#1,#2スロット部S1,S2の空間長をλとしている。
図16(d)は3個のスロットが並列に接続されている場合を示す。3個のスロットの真中のスロット部S2、左から2番目のスロット部S2にIC3を取付けた場合は、左右のスロット、即ち1番目と3番目のスロットS1,S3は、平行板線路による伝送線路を介して給電され、前述のスロット配置と同じように実効長で一波長離れた距離に1番目のスロット部も2番目のスロット部も接続されているのでICに対してはスロット部が3個並列に接続されているのと同じ効果となり、スロット部1個のインピーダンスをZsとすると3個の並列スロット部により1/3のインピーダンスとなり、IC3はZs/3で整合を取れば3個のスロット部には平等にIC3の信号が分けられ、この信号が図16(d)や図16(i)に示すように同相となる方向に強い指向性を持つことになり、特性インピーダンスが低い薄い伝送線路による電力伝送にも拘らず、伝送線路との整合のことをあまり考慮しなくとも簡単にアンテナ利得(gain)の高い万能ICタグを構成することができる。
図16(e)には同相の一波長が励振されるスロット部のZx面内の指向性である。スロット部の両側の金属面が有限長であるので多少X軸方向、即ち正面Z軸方向から90°方向にも放射があり、かつ一波長で同相のスロット部の励振があるので放射が発生する。Z軸方向の放射は、スロットが同相で励振されればスロット数に応じた係数となるが、一波長毎に同相のスロットが配列されるとX軸方向にも放射が多少加算される。
図16(f)には、1/2波長スロットが1個の場合で、金属面内のX軸方向の全長、即ち2xが1/2波長から一波長長い場合のZ,X軸面内の指向性でZ軸方向に最大の放射を行う。−Z軸方向と±X軸方向には金属面が有限長であるためスピルオーバーする放射が行われる。
図16(g)には4個のスロット部が配列されている場合を示す。IC3はZ02の特性インピーダンスを持つ2番目の伝送線路で線路のほぼ中央部にM2とM5の金属面の間に接続されている。金属面M2には左右に一つずつ窓となる開放部OEがあり、この部分が1番目の伝送線路の給電点FPとなっている。
この4個のスロット部が同相に励振され、この受信エネルギーが伝送線路を介してIC3に同相に供給される場合の例を示す。即ち、#1スロット、#2スロット、#3、#4スロットで受信された電力は第一層目のZo1伝送線路を介して伝送され、更に第2層目のZo2の伝送線で同相に集められ、Zo2の線路間に接続されたIC3に印加、供給されるように構成する。図16(h),(k)にはその伝送線路の断面図を示す。第2層目から第1層目への給電部Fは開放端OEでもスリット等の切り欠きでもよい。図16(a)の場合のように単に並列に接続されるようにスロット部の配列を行っても良い。
図16(h)や(k)にはIC3は線路間に接続されたが、後述のように線路のスロット部Sや開口端部OEに接続してもよい。図16(h)には4個のスロット部が同相で励振された場合、かなりの指向性が得られ、単体のスロット部の場合より、指向性利得が5〜6dB高く得られる場合を示す。本発明の万能ICタグの利得はダイポールに比べ3〜5dB高いので全体で10dB近く利得が上がり、製品や場所の管理が容易にできるようになる。
図16(k)にはスロット部からの放射指向性を、正面のZ軸方向ではなく斜方向、Z軸方向よりθ1方向に傾いて放射させたり受信させたりする位相差給電の場合を示す。
これにより、垂直な平面に万能タグを取付けても斜め上方と通信ができたりするので、固定アンテナが真横になくても天井や斜め上方からタグUSATと通信することが可能となる。図16(d)の場合も上方との通信が可能である。指向性の組み合わせについてはアンテナの組み方であるので、ここでは一例にとどめる。
図16(k)の放射指向性の場合、例えば#1スロット部を中心として#2スロット部はδだけ遅れ、給電を行い#3スロット部は2δ、#4スロット部は3δだけ遅れ、給電を行ったとする。夫々のスロット部のX軸方向の空間の間隔を同じにする。
スロット部の配列間隔が異なった場合には、それだけの位相補償を行えばよい。スロット部やIC3のインピーダンス整合についてはインピーダンス整合回路や端部条件を考慮して行うと良い。
図16(i)には、図16(g),(h)の配列のスロットによるZX面内の指向性でZ軸方向に対し強い利得を持つアンテナを示している。スロット部とIC3のインピーダンス整合については、スロットの特性インピーダンスZ01,Z02の大きさや線路長等を考慮して設計を行わなければならない。
線路の特性インピーダンスZ01やZ02と関係なく、即ち線路インピーダンスが低い場合でも、図16(j)のような線路長でスロット同士を接続すると、第1線路の特性インピーダンスZ01や第2線路の特性インピーダンスZ02とに関係なく、つぎのようなインピーダンス関係が成立し、IC3が接続される給電点がスロット部1個のインピーダンスZsとなることを示している。即ち、スロット部1個に対するICの抵抗ZICとの整合を行ったと同じ方法により整合を行えば良いことを示している。
これを説明すると、#1スロット部S1と#2スロット部S2を線路の電波長で1/4波長、即ちλe/4の距離をはなして接続し、この中心部のインピーダンスZFP1は両側のスロットに接続されているので1/2となり、ZFP1 = Z01 2/2Zsとなる。
また、#3スロット部S3と#4スロット部S4についても同様の電波長で構成されているため、ZFP2 = Z01 2/2Zsとなる。
更に、電波長で1/4波長離れた第2線路の左側の給電部FP3については、つぎの式が成立する。
ZFP3 = Z02 2/ZFP1 = 2Zs・Z02 2/Z01 2
尚、特性インピーダンスZ01とZ02が同じ構造であればZ02 2/Z01 2 = 1となり給電点FP3のインピーダンスは、ZFP3 = 2Zsとなる。
同様に第2線路の右側の給電部FP4においても、つぎのような式が成立する。
ZFP4 = Z02 2/ZFP2 = 2Zs・Z02 2/Z01 2
同様にZ02 = Z01とすると、給電点FP4のインピーダンスも、ZFP4 = 2Zsとなる。
第2線路内の左側の第3給電点FP3と右側の給電点FP4におけるインピーダンスZFP3とZFP4が求まった。この各給電部より電波長で1/2波長、即ちλe/2離れた中心部の第5給電点FP5では左側のインピーダンスは1/2波長の線路のインピーダンスであるので、同一のインピーダンスが得られるので左側を足したインピーダンスは2Zsとなり、同給電点に対して右側をみたインピーダンスも同様に2Zsとなるので、この給電点FP5では、左右並列に2Zsのインピーダンスが接続されているのと同じとなるので、ZFP5 = 2Zs/2 = Zs となる。
即ち、先に説明したように同じ特性インピーダンスZ01とZ02が同一であれば、その大きさに限らず線路長を合わせるだけでインピーダンス整合を簡単に行い、4段配列のスロットアレイを組むことができる。
Z02/Z01 の比あるいは Z02 2/Z01 2 の比を用いることにより更にスロット部の抵抗成分ZsとI3Cの抵抗成分ZICの整合を取ることもできる。
つぎに、X軸方向のスロットアレイ配列の直角方向のZ軸方向の放射を最大にするのではなく、図16(k),(l)で述べたようにスロット部を励振する電界や電流に位相差をつけZ軸方向より図16(m)のような指向性のθ1方向に斜めの放射を最大にする方法について述べる。
万能ICタグが並列に取付けられたり、水平に取付けられたりするとき、これを送受信するアンテナが真横にあったり、真上にあったりするとは限らない。即ち、アンテナの指向性が斜めを向いていた方が好都合な場合があり、またこの一定の方向に放射があるように構成した方が便利な場合がある。
図16(k)には給電部FP1に対して#1スロット部S1と#2スロット部S2は等距離にはなく、#1スロット部S1より#2スロット部S2の方が距離xが長く、遅れて給電されることになる。即ち、IC3から発せられた信号は給電部FP1より左右に分かれて伝播するとき、#1スロット部S1に早く到達し、#1スロット部S1の方を早く励振する。#2スロット部S2の方が δ=βXssinθ1 だけ遅れて励振されるとする。すると#1スロット部S1からの放射電波は先に進むので、#2スロットル部S2から放射される電波は後から放射されるので同相となる電波は右側にずれた所で同相となる。
給電点FPは、左側では#1スロット部S1と#2スロット部S2とのほほ中央にあり、右側では#3スロット部S3と#4スロット部S4のほぼ中央にあり、左右に分かれて同じ距離に位置するので各スロット部には同相で励振されることになる。受信で考えると同相で入って来た信号や電波は同相で給電点FPに集まり、この給電点FPを介して第二層に取付けられたIC3に同相で電力を供給することができる。
#1スロット部S1の左側、#2スロット部S2の右側は、ほぼλe/4で短絡されている。#3スロット部S3、#4スロット部S4についても同様である。夫々の端部は無限大インピーダンスとなり、それ以上電波は伝播せずスロット部に全電力が給電される。
#1スロット部S1と#2スロット部S2とがθ1方向で位相が合うと同時に#3スロット部S3と#4スロット部S4はθ1方向で位相が合わなければならない。そして#1スロット部S1、#2スロット部S2、#3スロット部S3、#4スロット部S4から放射された電波が総てθ方向で位相がそろわなければならないので、等間隔にスロットが配置されていたとすれば各スロットを励振する電圧や電流の位相はδだけずれていかなければならず、図16(k)に示すように、IC即ち信号発生部を基準にして、左X11の距離に第1給電部があり、右にX11+2δの距離に第2給電部があるように構成しておけば、#1スロット部S1に対し#2スロット部S2はδの位相差で給電され、#3スロット部S3は2δの位相差でされ、#4スロット部S4は3δの位相差で給電されることは、図をみて理解できる。即ち伝送線路による電波の伝送距離をうまく使い、位相差給電を行う場合を示す。受信の場合も各スロットにδづつずれた位相の電波が到着した場合でも電波の伝送距離の違いを利用してIC3の接続点では同相になるように伝送路の内部で位相調整を行えることを示している。これにより図16(m)のように右側にθ1°傾いた指向性とするためスロット配列間隔Xsの正弦長sinθ1、即ち Xs・Sinθ1 によって生ずる位相差 δ=βXs・sinθ1 の位相を内部の伝送線路で補償すれば良い。
放射指向性の簡単なベクトル計算行うとつぎのようになる。
この式から、θがθ
1に近い所では、sin(θ−θ
1)/2=(θ−θ
1)/2となり
となり、 θ=θ
1 で最大値を示すことが分かる。
図16(l)には線路間にIC3を接続するのではなく、金属面間にIC3を接続する第3金属面M5にスロットSを切るか開放部OEも切り、ここにIC3を接続する場合を示す。この場合には更に下方に金属面M6を要する。前述の図16(c)においても同様な方式が可能である。
図17は万能ICタグを量産する場合の実施例を示す。図17(a)はプラスチックフィルムにアルミ箔あるいは銅箔を積層したラミネートシート、あるいは金属を蒸着した幅1〜1.2m程度、長さ100m程度の長尺のラミネート金属箔シートを巻いた#1Rollから、該ラミネート金属箔シートを引き出してシルク印刷とエッチング工程にかけ、金属箔面にスロット部が所定の形状に溶かされて中空構造が形成される。金属箔面に形成された中空のスロット部2にはIC3を直に接続するか、あるいはIC3のリードが接続される接合部分が接続を容易にする形状で金属箔面を残し乾燥させ、所定の中空構造の金属箔が残ったスロット付ラミネートシートを右側の#2Rollに巻き取られる。即ち、この工程は印刷とエッチングと乾燥工程により連続して金属箔面に中空のスロット部をエッチングで形成してスロット付ラミネートシートとして巻取用#2Rollに巻き取られる工程を示す。
図17(b)はIC3のパッドにまたはIC3にリードが付いたインレットあるいは整合回路付基板を取付ける工程を示す。図17(a)に示す工程で作った#2Rollに巻かれたスロット付ラミネートシートの中空のスロット部に、IC3のパッドにまたはIC3にリードが付いたインレットあるいは整合回路付基板を接着、超音波圧着、融着、印刷、ボンディング等により、導電物を接続する工程でIC3が接続されたスロット付ラミネートシートが巻取用#3Rollに巻き取られる。
スロット付ラミネートシートが巻取用#3Rollに巻き取られる際、IC3を取付けた後に回路保護のため薄いプラスチックシートを追加するか、プラスチックフィルムでカバーされるようにスプレーで被膜をつけてもよい。巻取用#3Rollの巻き取りは、中空のスロット部に接続されたIC3を保護するためにIC3が内側に来るように巻き取っている。これはIC3が保護されていれば表面に巻き取っても良く、この構成は後の工程に関係する。
図17(c)は、前述の工程でIC3が中空のスロット部に接続された金属箔面を有するスロット付ラミネートシートを巻いた#3Rollを上方に備え、IC3を収容する窪みをもつ中間の絶縁体となる0.15〜3t厚程度のプラスチックシート、(可撓性の薄いシート形万能ICタグを作る場合には、0.2〜0.3t厚とする)のPEシートまたはPEF(発泡ポリエチレン)シートでX軸方向の線路長を与える個別の長さに加工され、0.05〜0.1mm程で後に熱で切り離され易くした厚みで、連続にあるいは断続的なPEシートを供給する#10Rollが備えられる。更に下方には金属箔がラミネートあるいは蒸着あるいは印刷等で形成された#1Rollが備えられる。一番上には中空のスロット部にIC3を載せた放射シートを保護するプラスチックフィルムまたは紙シートを配置し、一斉にこれらのフィルムを貼り合わせると同時に切断し、図14に例示したような万能ICタグを製造する。
更に、糊付けを行う場合には、下方に糊付とシリコン紙を追加し、同時に製造することも可能で、あるいは後の工程でシリコン紙の上に糊付タグを載せて、ロール状とすることもできる。
尚、図17では作成例として平列に2個の万能ICタグを同時に作る例を示しているが、幅1mや1.2mのシートを用いれば、幅50mmのタグの場合は横に20〜24個の平列に同時に製造することが可能であり、また幅100mmのタグの場合は10〜12個平列に同時に製造することができるため、本実施例の製造法を制限するものではない。
図17(b)に示す工程の場合、チップマウントと融着や圧着は同じ工程あるいは別途の工程の中で行なっても良い。
図17(c)の各シートの貼り合わせは糊や加熱等で行い、端部の両面金属M1,M2の接続は加熱によるプラスチック溶融と超音波圧着等で行い、後工程で夫々の万能ICタグに切断するようにしている。金属面M1,M2の端部の短絡は、先に述べたようにキャパシティブショートによる短絡でも充分で、キャパシタンスCは100〜1000F程度になり1/jωCの値はf=920Mhzの場合、pΩ単位の小さい値となる。
並列に接続される万能ICタグについては、製造工程の途中で刃で切り離されようになっており、同時に10〜20個の万能ICタグが製造される。シート幅を2mとするときは、更に倍の数の万能ICタグを同時に生産することができる。ここまでは万能ICタグの性能や外観、製造について述べて来た。
つぎに、本発明の万能ICタグを用いた通信管理システムについて述べる。
図18には本発明の万能ICタグを種々の物に取付けた場合に同定アンテナや固定リーダ、ハンディターミナル、無線LAN端末機能を備えたアンテナやリーダによって読み込まれ、記録されたり制御されたり、管理されたり、データ伝送管理されたりする場合を示している。
図18(a)は管理を必要とする機器本体に直接取付けるもので、金属シャーシに取付ける場合、本発明の万能ICタグを直接糊付けする方法で被取付機器には何もしないで取付ける方法と、点線で示すように機器に同じ大きさ以上のスロット穴を切り、本発明の万能ICタグをこのスロット穴に合わせて取付ける方法を示す。
被取付機器に同じ大きさのスロット穴を形成する場合には、できるだけIC3の取付けている金属面と接触している方がよい。そうでないと、被取付機器のスロット穴は無給電共振器として動作し、逆に本体のIC3が接続されているスロット部に対して放射を阻止する働きをする。またスロット穴が同じ大きさでないと、今度は本体スロット部に対してインダクタンスを与えて共振を崩す働きをする。若し、本体の万能ICタグと絶縁されているならばスロット穴のインピーダンスは大きくなって共振状態(同調状態)から離れ、万能ICタグに妨害を与えないで済む。金属面設置の万能ICタグを用いる時は、このような注意が必要である。
上述の条件で取付けられている万能ICタグを例として、この万能ICタグに対し固定円偏波アンテナ(C.Ant)と通信を行い、リーダライタ(R/W)で読み書きを行い、PC(パーソナルコンピュータ)で記録、制御する通信管理システム(USATS)を示す。この通信管理システム(USATS)の場合、PCに接続されたインターネットや専用回線のネットワークでデータを伝送し、ネットワーク上のサーバでその記録管理をすることができる。
円偏波アンテナ(C.Ant)は、ダイポールを十字に組み90度位相を加えた偏波アンテナや、ヘリカル面リングアンテナ、パッチアンテナ方式としてハ字スロットによる円偏波アンテナであっても良いので種類を特定しない。
また、通信管理システム(USATS)において専用の制御を行ったり、ローカルエリアネットワーク(LAN)等を構築するための制御器(Cont)が必要な場合には、破線で示す制御器とPCを設置して専用のネットワークを構築することができる。ターミナルとの通信は無線LANを使い、移動しながら読み取ったデータを直にホストコンピュータに送るように制御すれば良い。
また万能ICタグのデータは、ハンディターミナルやリーダ機能の備わった携帯電話端末(MPh)でデータの読み取ることで、データの収録を行うことができる。
図18(b)は車輌やトロッコに万能ICタグ(USAT)を取付けた場合を示す。金属面を持つあらゆる機器や物体Mに本発明の種々の万能ICタグ(USAT)を取付け、このIC3の信号を円偏波アンテナ(C.Ant)と通信し、リーダライタ(R/W)を介して万能ICタグと読み書きを行い、PCで記録や管理を行う通信管理システム(USATS)を示している。
左側に示す破線の部分は別に制御器(Cont)を備え、記録や制御を行う場合を示している。この場合はLANを組んだり、他の機器を制御したりする場合にも用いることができる。また無線LANによるネットワークを利用しても良い。
制御器のプログラムはPCにより制御でき、またデータの転送も行うことができる。万能ICタグ(USAT)のデータは、直接ハンディ端末(HT)や読取機能を持つ携帯電話端末(MPh)に等によって収録することも可能で、また制御器(Cont)やPCに備えられたリーダライタによってもデータの交換が可能である。PCはLANやインターネットに接続されているので、特定のサーバとの通信や記録、制御等の対応が可能となる。
以上のように本発明の万能ICタグ(USAT)を用いることによって、あらゆる物や人がネットワークのもとに管理することが可能となる。
つぎに、具体的に何がこの通信管理システム(USATS)の制御の対象となるかを、いくつかの実施例で説明する。
図19には、主に工場で制御される製品について説明する。図19(a)はベルトコンベアで流れて来る製品の場合で、工場の製品は殆どが金属であり、金属部品が入った籠、例えばプラスチックや木やダンボールや金属で作られた箱であっても、この箱に通常のタグを貼り付けるとタグとの通信ができなくなる。
しかし、本発明の万能ICタグ(USAT)を用いると、このような金属部品が入った箱に貼り付けた場合でも問題なくデータの通信をすることが可能で、ベルトコンベアで流れて来る製品や部品を認識し、制御、加工、選別を行うことができる通信管理システム(USATS)を構築できる。
図19(e)には鉄板等の加工を行う場合の例を示す。
鉄板に本発明の万能ICタグ(USAT)を取りつけ、この識別を行うと同時に読み取ったIDを基に、鉄板を自動的に加工し組立、塗装を行う場合の制御を示している。
図19(b)には水分や入ったびんや缶等に本発明の万能ICタグ(USAT)を取付けた場合を示す。一般に水分を含む物体は、電波が吸収、あるいは反射されてしまう特性と誘電率の影響で、通常のタグは動作しなくなるが、本発明の万能ICタグ(USAT)は後方の物質の影響を全く受けない。
図19(c)には金型の管理を行う場合の通信管理システム(USATS)を示す。
金型は総て鉄でできており、重量がありかさばるため容易には移動ができない。このような金型に万能ICタグを取付け、棚に並べて管理しておくと、その前面を円偏波アンテナ(C.Ant)とリーダライタ(R/W)及び無線LANの端末を積んだトロッコや棚車が通ると万能ICタグからIDや必要なデータを読み取り、工場の無線LAN回線を通じてPCやサーバに送られ金型の在庫管理をすることができる通信管理システム(USATS)である。
図19(d)には工場で製造し梱包された製品をパレットに積み上げ、当該製品やパレット等に貼り付けられた万能ICタグ(USAT)を、フォークリフトの円偏波アンテナ(C.Ant)とリーダライタ(R/W)で識別し、製品やパレット等のIDやデータの読み取りを行うことで、これらの製品やパレット等を選別運搬する場合の例を示す。
フォークリフトの運転手は、前方の伸縮アームの先端に取付けられた円偏波アンテナ(C.Ant)と車体に固定されたリーダライタ(R/W)で製品やパレット等のIDとデータを読み取り、無線LANを介して送信することにより何の製品かが分かり、更に無線LANを介して製品やパレット等の置き場所や運び出しの指示を受けることが可能となる通信管理システム(USATS)である。
図19(e)には工場の完成品や半製品が積まれている棚車の管理を行う場合で、天井や側面に取付けられている固定用の円偏波アンテナ(C.Ant)で棚車が通る時、あるいは置かれている場所を認識するため使用される。万能ICタグは上面あるいは側面あるいは斜めに取付けることで安易に円偏波アンテナ(C.Ant)との通信を行うことができる。これにより棚車やフォークリフト、トラック等に置かれた製品、及び当該製品の管理が容易になり、在庫や輸送を含めた一貫した管理が可能となる通信管理システム(USATS)を構築できる。
つぎに、保管場所等の広大なヤードに置かれている製品の識別や管理を行うために、本発明の万能ICタグを用いた場合の例を図20に示す。
図20(a)はコイル状の鋼板をドラムに巻かれたコイルの管理である。実際の保管場所は人が一人位通れる細い通路の両側に、このようなコイルが並べられており、必要なコイルが何処にあるかの不明であったり、数が多いため盗難にあっても分からない。
しかし、通信距離がある程度取れ、かつ金属対応の適宜なタグがないのが現状である。
本発明の万能ICタグを用いることで、ハンディターミナルや移動式の円偏波アンテナ(C.Ant)やリーダライタ(R/W)でスキャニングすることにより、万能ICタグの信号を受信してコイルの種類や位置及び在庫を管理することができれば、大量に置かれたコイルの置き場所や在庫も管理でき、直ぐに置き場所と在庫状況が分かることで盗難も防止できる通信管理システム(USATS)を構築できる。
図20(b)はLPガスボンベや酸素ガスボンベ等の家庭用/産業用ボンベの管理を行うものである。トラックの荷台に乗せられたボンベのIDと内容物の種類と量が一度に読み取り管理できれば、ボンベの管理が大変省力化できる。
また、一本一本のボンベの内容物の充填、及び消費量をバーコードで行っていた運用管理を、RFIDタグに変えたいという要望が兼ねてよりあったが、一般のRFIDタグは金属に弱くことごとく失敗しており、RFIDタグによる管理は行われていないのが現状である。
本発明の万能ICタグを用いることで、金属面に影響されることなく50cm〜4mの通信距離が得られれば、夫々のボンベの内容物の充填、及び消費量の運用管理を簡単に行うことができる。また石油を入れているドラム缶についても同様である。
図20(c)にはコンテナに本発明の万能ICタグ(USAT)を取付けて、コンテナの運用管理を行う場合を示す。コンテナの管理にはVHF帯を使用するので、少し大きめの万能ICタグとなるが、伝送線路を折曲げる等の小形に形成する方式を用いれば、λe/4の長さ以下に短縮でき、金属面の影響を受けず、通信距離も先述の説明により損われず波長や周波数の相似性から10倍の距離が得られ10〜30mの通信距離が得られる通信管理システム(USATS)を構築できる。
図20(d)は、電気自動車等に用いる電池(バッテリ)の運用管理に用いる場合を示し、電池の上面か側面に本発明の万能ICタグ(USAT)を取付け、個々の電池の管理を行なうことができる。
図20(e)は、一体に組込まれた電池を一括して管理する場合を示す。
つぎに車や飛行機のような移動物や部品の管理に本発明の万能ICタグ(USAT)を用い管理を行う場合を図21に示す。
図21(a)には車両のボンネット、屋根、側面等に本発明の万能ICタグを貼り付けて管理を行う場合を示す。車の部品の管理も行うことができる。
ブルドーザ、クレーン等の特殊車輌も車庫や、レンタル置き場からの出入、レンタル等の管理をするには最適である。更に駐車場の管理にも無論用いられ、今迄距離が得られ難かったために使えなかったRFID等が、一挙に使用できることになる。
図21(b)には、飛行機本体や飛行機の部品の管理に用いる場合を示している。飛行機の部品のメンテナンスは厳重に行われなければならず、外部の空気抵抗を受けたりしないように軽くて薄いものでなければならない。その目的のものには適切である。温度の高い所で用いる場合には絶縁体等や表面をセラミックで熱の遮断を行うこともできる。
つぎに人間や動物の移動管理やロケーション管理に、本発明の万能ICタグを用いた場合を図22に示す。動物には万能ICタグ(USAT)をバンド等で取付け、人間は万能ICタグを首からぶら下げるようにして移動を管理する通信管理システム(USATS)を構築する。
図22(a1),(a2),(a3),(a4)には牛、鶏、豚等の家畜、犬、猫、鳥等のペット等の動物の体や首巻にきつけて万能ICタグを取付ける場合を示す。
図22(b)にはゲートを通る際、両面万能ICタグ(H.Tag)を首からぶら下げて使用する。ゲートでの人間の動行管理や出入り管理を、人間が近くを通った時に固定の円偏波アンテナ(C.Ant)が人間のIDやデータを捕捉するので、所在管理や導線、動行管理、所在管理を自動的に行うことができる。
図23にはカメラのボディに万能ICタグ(USAT)やアンテナを取付けた場合を示す。これにより自動的に存在管理を行なったり、カメラの出入り管理を行なうことができる。
図24は薬等の比較的高価で、薄いアルミ箔を利用した封装品に万能ICタグ(USAT)を貼り付けて、薬の管理を行う場合を示している。図24(a),(b),(c)は一枚のラミネート箔に万能ICタグを貼り付けて管理を行う場合と、図24(d)は両側にペットフィルムで囲まれた薬等に万能ICタグ(USAT)を取付けて管理を行う場合を示す。図24(e),(f)は上下の金属面に絶縁体を挟み、スロット部にIC3を取付けた薄板状の万能ICタグ(USAT)を示す。両端は圧力を或る程度加えて、接触封止しこの金属面M1,M2とを接触させることができる。