JP2013019428A - 油圧制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】油圧の切換過渡時にベース油圧の変化に拘らず所定の応答性で適切に油圧を切り換えることができるようにする。
【解決手段】ロックアップクラッチ32のフレックス制御に関して、増圧補正後指示圧Paから減圧補正後指示圧Pbへ切り換える際に、切換前の補正量aと切換後の補正量bとの差分(a−b)がベース指示圧Pbaseの変化に拘らず予め定められた変化率で減少するように、切換過渡時指示圧Psweep(i)がベース指示圧Pbaseの変化に応じて制御される。これにより、切換過渡時(t2〜t3)に破線で示すようにベース指示圧Pbaseが上昇または低下しても、常に所定の応答性で適切に油圧を切り換えることができるようになる。
【選択図】図7
【解決手段】ロックアップクラッチ32のフレックス制御に関して、増圧補正後指示圧Paから減圧補正後指示圧Pbへ切り換える際に、切換前の補正量aと切換後の補正量bとの差分(a−b)がベース指示圧Pbaseの変化に拘らず予め定められた変化率で減少するように、切換過渡時指示圧Psweep(i)がベース指示圧Pbaseの変化に応じて制御される。これにより、切換過渡時(t2〜t3)に破線で示すようにベース指示圧Pbaseが上昇または低下しても、常に所定の応答性で適切に油圧を切り換えることができるようになる。
【選択図】図7
Description
本発明は油圧制御装置に係り、特に、予め定められた補正条件に従ってベース油圧を補正する場合にその補正後油圧の相互間、或いは補正後油圧とベース油圧との間で油圧を切り換える際の切換過渡時の油圧制御に関するものである。
ベース油圧に従って油圧を制御するとともに、予め定められた補正条件に従ってそのベース油圧を補正する油圧制御装置が知られている。特許文献1に記載の装置はその一例で、シフトレンジ信号やスロットル弁開度等に応じてライン圧に関するベース油圧を算出するとともに、低温時には作動流体の粘度が高くなることを考慮してそのベース油圧を増圧補正する一方、その増圧補正を解除する際には、予め定められた一定の変化率で減圧するようになっている。
しかしながら、このように補正の有無等による油圧の切換時に一定の変化率で油圧を変化させると、ベース油圧の変化によって切換応答性がばらつくという問題があった。例えば、図7はロックアップクラッチのフレックス制御(スリップ制御ともいう)開始時の差圧ΔP(=Pon−Poff )の油圧制御に関するもので、ソレノイド弁に対するスリップ制御圧指令値SPslu の一例であり、(a) に示すように時間t2で増圧補正の補正後指示圧Paから減圧補正の補正後指示圧Pbへ切り換える際に、矢印Y1で示すように一定の変化率で指示圧を低下させた場合、破線で示すベース指示圧Pbaseが上昇すると、短時間で補正後指示圧Pbまで変化するため、差圧ΔPが小さくなる方へオーバーシュートしたり油圧抜けによりスリップ量が大きくなってエンジン吹き等のショックが発生したり、不自然なエンジン回転速度の変動により違和感を生じさせたりすることがある。また、図7の(b) に示すようにベース指示圧Pbaseが低下すると、矢印Y2で示すように指示圧を低下させても、なかなか補正後指示圧Pbに到達せず、油圧切換の応答性が著しく損なわれるとともに、差圧ΔPが相対的に高くなってロックアップクラッチが完全係合する恐れがある。上記ベース指示圧Pbaseは、油圧の応答遅れによって多少異なる場合があるが基本的にベース油圧に対応し、補正後指示圧Pa、Pbは、油圧の応答遅れによって多少異なる場合があるが基本的に補正後油圧に対応する。
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、油圧の切換過渡時にベース油圧の変化に拘らず所定の応答性で適切に油圧を切り換えることができるようにすることにある。
かかる目的を達成するために、第1発明は、ベース油圧に従って油圧を制御するとともに、予め定められた補正条件に従ってそのベース油圧を補正する油圧制御装置において、前記ベース油圧と前記補正後の補正後油圧との間、またはそのベース油圧に対して複数種類の補正が行われる場合にその複数種類の補正後油圧の相互間で油圧を切り換える際に、その切換前の補正量aと切換後の補正量bとの差分(a−b)が前記ベース油圧の変化に拘らず予め定められた変化率で減少するように、切換過渡時の油圧をそのベース油圧の変化に応じて制御することを特徴とする。
なお、切換前がベース油圧の場合は切換前の補正量a=0で、切換後がベース油圧の場合は切換後の補正量b=0である。
なお、切換前がベース油圧の場合は切換前の補正量a=0で、切換後がベース油圧の場合は切換後の補正量b=0である。
第2発明は、第1発明の油圧制御装置において、前記ベース油圧に対応するベース指示圧をPbase、予め定められた変化量をeとした時、一定の制御サイクルで出力する切換過渡時指示圧Psweep(i)が次式(1) に従って算出され、その切換過渡時指示圧Psweep(i)に従って前記切換過渡時の油圧が制御されることを特徴とする。
Psweep(i)=Pb(i) +d(i) 〔 i=1、2、3、・・・で、
制御サイクル毎に1ずつ加算〕 ・・・(1)
但し、Pb(i) =Pbase+b
d(i) =d(i-1) +e
d(0) =a−b
a−b>0→e<0、a−b<0→e>0
Psweep(i)=Pb(i) +d(i) 〔 i=1、2、3、・・・で、
制御サイクル毎に1ずつ加算〕 ・・・(1)
但し、Pb(i) =Pbase+b
d(i) =d(i-1) +e
d(0) =a−b
a−b>0→e<0、a−b<0→e>0
第3発明は、第1発明の油圧制御装置において、前記ベース油圧に対応するベース指示圧をPbase、予め定められた切換時間をTabとした時、一定の制御サイクルで出力する切換過渡時指示圧Psweep(i)が次式(2) に従って算出され、その切換過渡時指示圧Psweep(i)に従って前記切換過渡時の油圧が制御されることを特徴とする。
Psweep(i)=Pb(i) +d(i) 〔 i=1、2、3、・・・で、
制御サイクル毎に1ずつ加算〕 ・・・(2)
但し、Pb(i) =Pbase+b
d(i) =d(i-1) −f
d(0) =a−b
f=(a−b)/Tab
Psweep(i)=Pb(i) +d(i) 〔 i=1、2、3、・・・で、
制御サイクル毎に1ずつ加算〕 ・・・(2)
但し、Pb(i) =Pbase+b
d(i) =d(i-1) −f
d(0) =a−b
f=(a−b)/Tab
このような油圧制御装置においては、ベース油圧と補正後油圧との間、または補正後油圧の相互間で油圧を切り換える際に、その切換前の補正量aと切換後の補正量bとの差分(a−b)がベース油圧の変化に拘らず予め定められた変化率で減少するように、切換過渡時の油圧がベース油圧の変化に応じて制御されるため、切換過渡時にベース油圧が変化しても常に所定の応答性で適切に油圧を切り換えることができる。
第2発明は、制御サイクル毎に予め定められた変化量eだけ差分(a−b)が少なくなるように切換過渡時指示圧Psweep(i)を変化させる場合で、第3発明は、予め定められた切換時間Tabで差分(a−b)が0になって油圧が切り換わるように切換過渡時指示圧Psweep(i)を変化させる場合であり、このような切換過渡時指示圧Psweep(i)に従って切換過渡時の油圧が制御されることにより、ベース指示圧Pbaseの変化に拘らず所定の応答性で適切に油圧を切り換えることができる。
本発明は、例えばトルクコンバータに配設されるロックアップクラッチのフレックス制御を開始する際に、ベース油圧を予め定められた変化パターンで変化させて所定のスリップ状態(スリップ量)とする場合の油圧制御に好適に適用される。具体的には、摩擦材が略接触するようになるまでの第1制御フェーズと、摩擦材が略接触するようになった後の第2制御フェーズとに区分し、第1制御フェーズでは、低温時に作動流体の粘性が大きくなって応答性が悪くなることを防止するため、上記ベース油圧を増圧補正する一方、第2制御フェーズでは、低温時に摩擦材の摩擦係数μが大きくなって完全係合することを防止するため、上記ベース油圧を減圧補正する場合に、第1制御フェーズから第2制御フェーズへの移行時に増圧補正から減圧補正へ切り換える場合に好適に適用される。なお、第1制御フェーズではベース油圧のままで第2制御フェーズで減圧補正する場合のベース油圧から減圧補正への切換や、第1制御フェーズでは増圧補正するが第2制御フェーズではベース油圧のままの場合の増圧補正からベース油圧への切換、或いは第2制御フェーズで温度上昇により減圧補正からベース油圧へ切り換える場合などにも本発明は適用され得る。第1制御フェーズで減圧補正し、第2制御フェーズで増圧補正する場合にも適用できる。
また、上記ロックアップクラッチ以外の油圧式摩擦係合装置、例えば自動変速機のクラッチやブレーキ、或いは発進クラッチなど車両用の他の種々の油圧式摩擦係合装置をスリップ制御手段によりスリップ制御する場合、またはライン油圧などの油圧を調圧する場合に、所定の補正条件に従って増圧補正や減圧補正を補正手段によって行う時にも、本発明は同様に適用され得る。増圧補正および減圧補正の何れか一方だけが行われる場合や、複数種類の増圧補正を択一的或いは重複して実行したり、複数種類の減圧補正を択一的或いは重複して実行したりする場合にも適用できる。車両用以外の油圧制御装置にも適用され得る。
第1発明は油圧そのものに関するもので、結果的に差分(a−b)がベース油圧の変化に拘らず所定の変化率で減少するように切換過渡時の油圧がベース油圧の変化に応じて制御されれば良い。第2発明、第3発明は、その油圧制御の指示圧(油圧指令値)に関するもので、ベース指示圧はベース油圧に対応し、切換過渡時指示圧Psweep(i)は切換過渡時の油圧に対応する。ベース油圧は、例えば予め定められた制御パターンに従って変化したり、所定のスリップ状態になるようにフィードバック制御されたり、運転者の出力要求量(アクセル操作量など)やスロットル弁開度、車速等の運転状態に応じて増減制御されるなど、逐次変化する場合に本発明が適用されることにより、そのベース油圧の変化に拘らず油圧を適切に切り換えることができる。
切換前の補正量aおよび切換後の補正量bは、何れも正または負であっても良いし、何れか一方が正で他方が負であっても良く、補正量aおよびbの何れかが0すなわちベース油圧であっても良い。これ等の補正量a、bは予め一定値が定められても良いが、油温や目標スリップ量(差回転)、運転者の出力要求量等の車両状態をパラメータとして変化させても良い。
差分(a−b)を減少させる変化率は、第2発明の変化量eや第3発明の変化量fに対応し、第3発明の変化量fは(a−b)/Tabで、補正量a、bが一定であれば変化量fすなわち変化率も一定になる。切換開始時の補正量a、bに基づいて一定の変化量fが定められても良い。切換時間Tabは、予め一定値が定められても良いし、油温等の車両状態をパラメータとして変化させても良い。第2発明の変化量eは、予め一定値が定められても良いが、オーバーシュートを防止しつつできるだけ速やかに油圧を切り換えるために、最初は大きな変化率で変化させるとともに徐々に変化率が小さくなるように、演算式やマップ等により制御サイクル毎に変化させることもできる。
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された車両用駆動装置8の骨子図であり、図2は、その駆動装置8に備えられた有段の自動変速機10において複数のギヤ段を成立させる際の係合要素の作動状態を説明する作動表である。この自動変速機10は、車両の左右方向(横置き)に搭載するFF車両等に好適に用いられるものであって、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置12を主体として構成されている第1変速部14と、ダブルピニオン型の第2遊星歯車装置16およびシングルピニオン型の第3遊星歯車装置18を主体としてラビニヨ型に構成されている第2変速部20とを同軸線上に有し、入力軸22の回転を変速して出力回転部材24から出力する。上記入力軸22は入力部材に相当するものであり、エンジン28によって回転駆動されるトルクコンバータ30のタービン軸である。また、上記出力回転部材24は自動変速機10の出力部材に相当するもので、図示しないカウンタシャフトに設けられたカウンタドリブンギヤと噛み合わされており、そのカウンタシャフトに設けられたデフドライブギヤを介して差動歯車装置のデフドリブンギヤ(大径歯車)が回転駆動される。上記エンジン28の出力は、トルクコンバータ30、自動変速機10、差動歯車装置、および駆動軸としての一対のドライブシャフト(D/S)を介して一対の駆動輪(前輪)へ伝達されるようになっている。なお、この自動変速機10は中心線に対して略対称的に構成されており、図1ではその中心線の下半分が省略されている。
図1は、本発明が適用された車両用駆動装置8の骨子図であり、図2は、その駆動装置8に備えられた有段の自動変速機10において複数のギヤ段を成立させる際の係合要素の作動状態を説明する作動表である。この自動変速機10は、車両の左右方向(横置き)に搭載するFF車両等に好適に用いられるものであって、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置12を主体として構成されている第1変速部14と、ダブルピニオン型の第2遊星歯車装置16およびシングルピニオン型の第3遊星歯車装置18を主体としてラビニヨ型に構成されている第2変速部20とを同軸線上に有し、入力軸22の回転を変速して出力回転部材24から出力する。上記入力軸22は入力部材に相当するものであり、エンジン28によって回転駆動されるトルクコンバータ30のタービン軸である。また、上記出力回転部材24は自動変速機10の出力部材に相当するもので、図示しないカウンタシャフトに設けられたカウンタドリブンギヤと噛み合わされており、そのカウンタシャフトに設けられたデフドライブギヤを介して差動歯車装置のデフドリブンギヤ(大径歯車)が回転駆動される。上記エンジン28の出力は、トルクコンバータ30、自動変速機10、差動歯車装置、および駆動軸としての一対のドライブシャフト(D/S)を介して一対の駆動輪(前輪)へ伝達されるようになっている。なお、この自動変速機10は中心線に対して略対称的に構成されており、図1ではその中心線の下半分が省略されている。
上記エンジン28は、本実施例の車両用駆動装置8の動力源であり、例えば燃料の燃焼によって車両の駆動力を発生させるガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関である。また、上記トルクコンバータ30は、エンジン28のクランク軸に連結されたポンプ翼車30pと、自動変速機10の入力軸22に連結されたタービン翼車30tと、一方向クラッチを介して上記自動変速機10のハウジング(変速機ケース)26に連結されたステータ翼車30sとを備えており、エンジン28により発生させられた動力を自動変速機10へ流体を介して伝達する流体式動力伝達装置である。また、上記ポンプ翼車30pおよびタービン翼車30tの間には、直結クラッチであるロックアップクラッチ32が設けられており、油圧制御等により係合状態、スリップ状態(弱係合状態)、或いは解放状態とされるようになっている。なお、このロックアップクラッチ32が完全係合状態とされることにより、上記ポンプ翼車30pおよびタービン翼車30tが一体回転させられる。
自動変速機10は、複数の摩擦係合要素すなわち第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3(以下、特に区別しない場合は単にクラッチC、ブレーキBという)を有し、それら複数の摩擦係合要素の選択的な係合により複数のギヤ段の何れかを成立させる。すなわち、自動変速機10に備えられたクラッチCおよびブレーキBは、好適には、多板式のクラッチやブレーキなど油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式摩擦係合装置であり、車両用駆動装置8に備えられた油圧制御回路40(図4、図5参照)のソレノイド弁の励磁、非励磁や電流制御により、係合、解放状態が切り換えられるとともに係合、解放時の過渡油圧などが制御されるようになっている。図2の作動表は、自動変速機10の各ギヤ段とクラッチCおよびブレーキBの作動状態との関係をまとめたもので、「○」は係合、「◎」はエンジンブレーキ時のみ係合、空欄は解放をそれぞれ表している。
また、上記自動変速機10には、前記第2遊星歯車装置16のリングギヤR2(第3遊星歯車装置18のリングギヤR3)と非回転部材であるハウジング26との間に、一方向の回転に関して係合状態とされて動力を伝達するが逆方向の回転に関して空転状態とされる一方向クラッチF1が設けられている。この一方向クラッチF1は、図2に示すように自動変速機10の第1速ギヤ段「1st」を成立させる際に係合状態とされるもので、車両用駆動装置8の駆動時、例えば車両発進時やキックダウン時等にのみ係合させられる一方、非駆動時には空転状態とされる。
自動変速機10は、前記第1変速部14および第2変速部20の各回転要素(サンギヤS1〜S3、キャリアCA1〜CA3、リングギヤR1〜R3)の連結状態の組み合わせに応じて第1速ギヤ段「1st」〜第6速ギヤ段「6th」の6つの前進ギヤ段が選択的に成立させられるとともに、1つの後進ギヤ段「R」が成立させられる。図2に示すように、前進ギヤ段では、前記第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合により第1速ギヤ段「1st」が成立させられる。また、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合により第2速ギヤ段「2nd」が成立させられる。第1クラッチC1および第3ブレーキB3の係合により第3速ギヤ段「3rd」が成立させられる。第1クラッチC1および第2クラッチC2の係合により第4速ギヤ段「4th」が成立させられる。第2クラッチC2および第3ブレーキB3の係合により第5速ギヤ段「5th」が成立させられる。第2クラッチC2および第1ブレーキB1の係合により第6速ギヤ段「6th」が成立させられる。また、第2ブレーキB2および第3ブレーキB3の係合により後進ギヤ段「R」が成立させられ、クラッチCおよびブレーキBの何れもが解放されることによりニュートラル状態となるように構成されている。なお、第1速ギヤ段「1st」を成立させる前記第2ブレーキB2には並列に一方向クラッチF1が設けられているため、発進時や加速時などの駆動時には必ずしもその第2ブレーキB2を係合させる必要は無い。また、各ギヤ段の変速比は、前記第1遊星歯車装置12、第2遊星歯車装置16、および第3遊星歯車装置18の各ギヤ比(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)ρ1、ρ2、ρ3によって適宜定められる。
図3は、車両用駆動装置8を制御するためにその車両用駆動装置8に備えられた電子制御装置34に入力される信号およびその電子制御装置34から出力される信号を例示している。この電子制御装置34は、CPU、ROM、RAM、および入出力インターフェース等から成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、前記エンジン28の駆動制御、自動変速機10における有段変速制御、およびトルクコンバータ30のロックアップクラッチ圧制御等の各種制御を実行するものである。なお、エンジン28の駆動を制御するための制御装置と、自動変速機10の変速制御等を行うための制御装置とが個別に設けられても良い。
図3に示すように、電子制御装置34には、各種のセンサやスイッチ等から前記車両用駆動装置8に関する各種信号が供給されるようになっている。例えば、エンジン水温を表す信号、シフトレバーのP、R、N、D等のシフトポジションを表す信号、エンジン回転速度センサ36により検出されるエンジン回転速度NE(=ポンプ翼車30pの回転速度NP)を表す信号、タービン回転速度センサ37により検出されるタービン回転速度NTを表す信号、駆動輪の回転速度である車輪速を表す信号、Mモード(手動変速走行モード)スイッチのオン・オフを表す信号、エアコンの作動を表す信号、車速V(前記出力回転部材24の回転速度に対応)を表す信号、ATF温度センサ38によって検出される自動変速機10の作動油の温度であるATF温度Toを表す信号、ECTスイッチのオン・オフを表す信号、サイドブレーキ操作を表す信号、フットブレーキ操作を表す信号、そのフットブレーキに対応するブレーキマスタシリンダ圧を表す信号、触媒温度を表す信号、アクセル操作量センサ39により検出される図示しないアクセルペダルの操作量(アクセル開度)に対応するアクセル操作量Accを表す信号、カム角を表す信号、スノーモード設定を表す信号、車両の前後加速度Gを表す信号、オートクルーズ走行の設定信号、車両の重量(車重)を表す信号等がそれぞれ供給される。
また、前記車両用駆動装置8の駆動を制御するために、前記電子制御装置34から各種制御信号が出力されるようになっている。例えば、前記エンジン28の吸気管に備えられた電子スロットル弁のスロットル弁開度θTHを操作するスロットルアクチュエータへの駆動信号、過給圧を調整するための過給圧調整信号、前記エンジン28への燃料噴射を制御するための燃料噴射装置によるエンジン28の筒内への燃料供給量の制御信号、点火装置による前記エンジン28の点火時期を指令する点火信号、電動エアコンを作動させるための電動エアコン駆動信号、シフトインジケータを作動させるためのシフトポジション(操作位置)表示信号、ギヤ比インジケータにギヤ比を表示させるためのギヤ比表示信号、スノーモードインジケータにスノーモードであることを表示させるためのスノーモード表示信号、前記油圧制御回路40に備えられたレギュレータバルブ(調圧弁)によりライン圧を調圧するための信号、前記自動変速機10等に備えられた油圧式摩擦係合装置(クラッチCおよびブレーキB)の油圧アクチュエータを制御するために前記油圧制御回路40に含まれるATソレノイド弁を作動させるバルブ指令信号、前記ロックアップクラッチ32の係合解放状態を切り換えるための切換用ソレノイド弁66を作動させるロックアップ切換指令信号、同じくロックアップクラッチ32のスリップ状態を制御するスリップ制御用ソレノイド弁70を作動させるスリップ制御指令信号(スリップ制御圧指令値SPslu )、制動時の車輪のスリップを防止するABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号、Mモードが選択されていることを表示させるMモード表示信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号等がそれぞれ出力される。
図4は、車両用駆動装置8に備えられた油圧制御回路40の一部を示す図であり、特に、前記トルクコンバータ30に備えられたロックアップクラッチ32の係合圧(ロックアップクラッチ係合圧)を制御する回路を例示する図である。なお、図4の油圧制御回路40において、前記自動変速機10の変速を行うための油圧式摩擦係合装置(クラッチCおよびブレーキB)の作動を制御するための回路等、他の制御に用いられる回路は省略されている。
上記油圧制御回路40は、前記エンジン28の駆動により元圧を発生させる機械式オイルポンプ44を備えており、オイルパン42に環流した作動油がそのオイルポンプ44により吸引されて圧送されるとともに、その圧送された作動油はリリーフ式の第1調圧弁46により第1ライン圧PL1に調圧されるようになっている。この第1調圧弁46は、図示しないスロットル弁開度センサによって検出されるスロットル弁開度に対応して大きくなる第1ライン圧PL1を発生させて第1ライン油路48へ出力する。また、第2調圧弁50も同様にリリーフ形式の調圧弁であって、上記第1調圧弁46から調圧のために排出(リリーフ)された作動油を上記スロットル弁開度に基づいて調圧することにより、前記エンジン28の出力トルクに応じた第2ライン圧PL2を発生させる。また、第3調圧弁52は、上記第1ライン圧PL1を元圧とする減圧弁であって、予め設定された大きさの一定のモジュレータ圧PMを発生させる。なお、上記第1ライン圧PL1は、自動変速機10のギヤ段を制御するための図示しない変速制御用油圧回路の元圧等として供給される。また、本実施例においては、エンジン28の駆動により元圧を発生させる機械式オイルポンプ44により元圧を発生させる形式の油圧制御回路について説明するが、電動機によって駆動される電動式オイルポンプを備えたものであってもよい。
また、図4に示すように、前記ロックアップクラッチ32は、係合側油路54を介して作動油が供給される係合側油室56内の油圧Ponと解放側油路58を介して作動油が供給される解放側油室60内の油圧Poff との差圧ΔP(Pon−Poff )に応じてフロントカバー62に摩擦係合させられる油圧式摩擦係合装置である。そして、このロックアップクラッチ32は、(a) 差圧ΔPが負とされて解放状態とされる所謂ロックアップオフ状態、(b) 差圧ΔPが零以上とされて半係合状態とされる所謂スリップ状態、および(c) 差圧ΔPが最大値とされて完全に係合させられる所謂ロックアップオン状態の3つの状態に制御される。
油圧制御回路40は、ソレノイド64によりオン・オフ作動させられて切換用信号圧Pswを出力する切換用ソレノイド弁66と、その切換用信号圧Pswに従って、前記ロックアップクラッチ32を解放状態とするオフ側位置(OFF)および係合状態とするオン側位置(ON)の何れか一方に切り換えられるクラッチ切換弁68と、前記電子制御装置34から供給される駆動電流に応じて油圧が連続的に変化するスリップ制御圧Pslu を出力するスリップ制御用ソレノイド弁70と、上記クラッチ切換弁68により前記ロックアップクラッチ32が係合状態とされている時にスリップ制御圧Pslu に応じてロックアップクラッチ32の作動状態をスリップ状態乃至ロックアップオンの範囲で切り換えるロックアップコントロール弁72と、を備えている。
上記クラッチ切換弁68は、ロックアップクラッチ32を係合状態および解放状態の何れか一方に切り換えるためものであり、前記解放側油室60に連通する解放側ポート74と、前記係合側油室56に連通する係合側ポート76と、第2ライン圧PL2が供給される入力ポート78と、前記ロックアップクラッチ32の解放時に係合側油室56から係合側油路54を経て係合側ポート76に供給された作動油を排出する排出ポート80と、前記ロックアップクラッチ32の係合時に前記解放側油室60に解放側油路58を介して連通させられる解放側ポート74と連通させられる迂回ポート82と、前記第2調圧弁50から調圧のために排出された作動油が供給されるリリーフポート84と、それら複数のポートの状態を切り換えるためのスプール弁子86と、そのスプール弁子86をオフ側位置に向かって付勢するスプリング88と、スプール弁子86の端部に前記切換用ソレノイド弁66からの切換用信号圧Pswを作用させてオン側位置へ向かう推力を発生させるためにその切換用信号圧Pswを受け入れる油室90と、を備えている。上記排出ポート80は、ロックアップクラッチ32の係合時にはリリーフポート84と連通させられ、第2調圧弁50から調圧のためにリリーフポート84に供給された作動油を排出する。なお、図4に示すクラッチ切換弁68の中心線より左側半分は、ロックアップクラッチ32を解放するオフ側位置(OFF)にスプール弁子86が位置させられた状態で、中心線より右側半分は、ロックアップクラッチ32を係合(スリップ状態を含む)させるオン側位置(ON)にスプール弁子86が位置させられた状態である。
前記ロックアップコントロール弁72は、その弁の状態を切り換えるスプール弁子92と、そのスプール弁子92をスリップ側位置(SLIP)へ向かって付勢するスプリング94と、前記トルクコンバータ30の係合側油室56内の油圧Ponを受け入れてスプール弁子92にスリップ側位置へ向かう方向の推力を作用させる油室96と、前記トルクコンバータ30の解放側油室60内の油圧Poff を受け入れてスプール弁子92に完全係合側位置(ON)へ向かう方向の推力を作用させる油室98と、前記スリップ制御用ソレノイド弁70から出力されるスリップ制御圧Pslu を受け入れてスプール弁子92にオン側位置へ向かう方向の推力を作用させる油室100と、前記第2調圧弁50によって調圧された第2ライン圧PL2が供給される入力ポート102と、上記スプール弁子92がスリップ側位置に位置させられた時に上記入力ポート102と連通する制御ポート104と、ドレンポート106とを、備えている。なお、図4に示すロックアップコントロール弁72の中心線より左側半分は、スプール弁子92がスリップ側位置(SLIP)に位置させられた状態で、中心線より右側半分は、スプール弁子92が完全係合側位置(ON)に位置させられた状態である。
前記スリップ制御用ソレノイド弁70は、前記電子制御装置34からの指令に基づいて、前記ロックアップクラッチ32の係合時にそのロックアップクラッチ32の係合圧を制御するためのスリップ制御圧Pslu を出力する。換言すれば、前記第3調圧弁52により発生させられる一定のモジュレータ圧PMを元圧とし、そのモジュレータ圧PMを減圧してスリップ制御圧Pslu を発生させる。
前記切換用ソレノイド弁66は、非励磁状態(オフ状態)では切換用信号圧Pswをドレン圧とするが、励磁状態(オン状態)では切換用信号圧Pswをモジュレータ圧PMとし、前記クラッチ切換弁68の油室90に作用させる。この油室90にモジュレータ圧PMが供給されると前記クラッチ切換弁68のスプール弁子86は、スプリング88の付勢力に抗してオン側位置(ON)に移動させられる。一方、前記油室90にドレン圧が供給されると、スプール弁子86はスプリング88の付勢力に従ってオフ側位置(OFF)に移動させられる。なお、以下の説明では、切換用信号圧Pswがモジュレータ圧PMの場合に切換用信号圧Pswが供給されると表現し、切換用信号圧Pswがドレン圧の場合は切換用信号圧Pswが供給されないと表現する。
前記クラッチ切換弁68において、切換用ソレノイド弁66が励磁され、切換用信号圧Pswが油室90に供給されてスプール弁子86がオン側位置に位置させられると、入力ポート78に供給された第2ライン圧PL2が係合側ポート76から係合側油路54を通って係合側油室56に供給される。この係合側油室56に供給される第2ライン圧PL2が油圧Ponとなる。同時に、前記解放側油室60は、解放側油路58から解放側ポート74、迂回ポート82を経て前記ロックアップコントロール弁72の制御ポート104に連通させられる。そして、その解放側油室60内の油圧Poff がロックアップコントロール弁72によって調圧されることにより、ロックアップクラッチ32の作動状態がスリップ状態乃至ロックアップオンの範囲で切り換えられる。
具体的には、クラッチ切換弁68のスプール弁子86がオン側位置に位置させられているとき、すなわち前記ロックアップクラッチ32が係合状態に切り換えられているときに、ロックアップコントロール弁72の油室100に供給されるスリップ制御圧Pslu が、スプール弁子92を完全係合側位置(ON)へ移動させる最大圧よりも低く、そのスリップ制御圧Pslu とスプリング94の付勢力との釣り合いによってスプール弁子92が完全係合側位置(ON)とスリップ側位置(SLIP)との間の中間位置に保持されると、制御ポート104と入力ポート102およびドレンポート106との連通状態が、そのスリップ制御圧Pslu に応じて連続的に変化させられ、制御ポート104に連通させられている解放側油室60内の油圧Poff も連続的に変化させられる。これにより、係合側油室56内の油圧Pon(=PL2)と解放側油室60内の油圧Poff との差圧ΔPが、スリップ制御用ソレノイド弁70のスリップ制御圧Pslu に応じて連続的に制御され、ロックアップクラッチ32のスリップ量すなわちエンジン回転速度NEとタービン回転速度NTとの差回転ΔN(=NE−NT)が連続的に制御される。
また、クラッチ切換弁68のスプール弁子86がオン側位置(ON)へ付勢されているとき、ロックアップコントロール弁72の油室100に供給されるスリップ制御圧Pslu が最大圧とされ、スプール弁子92が完全係合側位置(ON)へ移動させられると、入力ポート102と制御ポート104との連通が遮断され、解放側油室60への第2ライン圧PL2の供給が停止されるとともに、制御ポート104とドレンポート106とが連通させられることにより、解放側油室60内の作動油が制御ポート104からドレンポート106を経て排出される。これにより、差圧ΔPが最大とされてロックアップクラッチ32が完全係合状態(ロックアップオン)となる。
ロックアップクラッチ32が、上記のようにスリップ状態もしくは完全係合状態とされている場合、クラッチ切換弁68のスプール弁子86はオン側位置に位置させられるため、リリーフポート84と排出ポート80とが連通させられる。これにより、前記第2調圧弁50から排出された作動油は、クラッチ切換弁68を介して図示しない潤滑油供給油路へ排出される。
一方、クラッチ切換弁68において、切換用信号圧Pswが油室90に供給されず、スプール弁子86がスプリング88の付勢力によってオフ側位置(OFF)に位置させられると、入力ポート78に供給された第2ライン圧PL2が解放側ポート74から解放側油路58を通って解放側油室60へ供給される。また、係合側油室56内の作動油は、係合側油路54を通り係合側ポート76へ供給され、排出ポート80から図示しない潤滑油供給油路へ排出される。これにより、ロックアップクラッチ32が解放状態(ロックアップオフ)とされる。
図5は、前記電子制御装置34が備えている制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。この図5において、変速制御手段108は自動変速機10の変速動作を制御するもので、予め定められた変速条件(変速マップ等)に従って、図示しないシフトレバーのレバーポジション、アクセル操作量(アクセル開度)Acc、および車速V等に基づいて、第1速ギヤ段「1st」〜第6速ギヤ段「6th」或いは後進ギヤ段「R」のうち何れのギヤ段を成立させるべきかを判断し、そのギヤ段を成立させるように前記油圧制御回路40を介して前記クラッチCおよびブレーキBの係合解放状態を制御する。
ロックアップクラッチ制御手段110は、前記油圧制御回路40を介して前記トルクコンバータ30に備えられたロックアップクラッチ32の係合圧(ロックアップクラッチ圧)を制御する。具体的には、切換用ソレノイド弁66の切換用信号圧Pswおよびスリップ制御用ソレノイド弁70のスリップ制御圧Pslu を制御し、ロックアップクラッチ32の係合側油室56および解放側油室60の差圧ΔPを制御することで、そのロックアップクラッチ32の係合、解放、およびスリップ状態を制御する。このロックアップクラッチ32の係合解放制御は、基本的には予め定められたロックアップ係合解放マップに従って行われ、例えば車速Vが60km/h程度の所定車速以上の係合領域でロックアップクラッチ32をロックアップオン(完全係合状態)とし、その所定車速付近に設定されたスリップ領域でスリップ状態とし、それ以外の解放領域でロックアップオフ(解放状態)とする。減速時にも、フューエルカットが実施された場合にエンジン回転速度NEの低下を防止するため、一定の条件下でロックアップクラッチ32をスリップ状態とするフレックス制御が実行される。
上記ロックアップクラッチ制御手段110は、ロックアップクラッチ32のスリップ制御に関してフレックス制御手段120を機能的に備えている。フレックス制御手段120は、ロックアップクラッチ32が所定のスリップ量となるように、具体的にはエンジン回転速度NEとタービン回転速度NTとの差回転ΔN(=NE−NT)が所定の目標差回転ΔNtとなるように、前記差圧ΔPに対応するスリップ制御圧Pslu をフィードバック制御するものである。フレックス制御手段120はまた、フレックス制御の開始当初にスリップ制御圧Pslu に関するベース指示圧Pbaseを予め定められた変化パターンで変化させて所定のスリップ状態(スリップ量)にする際に、ロックアップクラッチ32の摩擦材が略接触するようになるまでの第1制御フェーズと、摩擦材が略接触するようになった後の第2制御フェーズとに区分し、第1制御フェーズでは、ATF温度Toが低い時に作動油の粘性が大きくなって応答性が悪くなることを防止するため、上記ベース指示圧Pbaseを増圧補正する一方、第2制御フェーズでは、ATF温度Toが低い時に摩擦材の摩擦係数μが大きくなって完全係合することを防止するため、上記ベース指示圧Pbaseを減圧補正する機能を備えている。すなわち、第1制御フェーズで増圧補正する増圧補正手段122、第2制御フェーズで減圧補正する減圧補正手段124、および油圧を切り換える際の切換過渡時制御手段126を備えており、図6のフローチャートに従って信号処理を実行する。図6のステップS3、S4は増圧補正手段122に相当し、ステップS6〜S10は切換過渡時制御手段126に相当し、ステップS12、S13は減圧補正手段124に相当する。
図6のステップS1では、前記ロックアップ係合解放マップ等に従ってフレックス制御(スリップ制御)を開始するか否かを判断し、フレックス制御開始条件を満たした場合はステップS2以下を実行する。ステップS2では、予め定められた変化パターンに従ってベース指示圧Pbaseをフィードフォワード制御等により算出する。このベース指示圧Pbaseの変化パターンは、例えば図7の(a) や(b) に破線で示すように定められており、フレックス制御の開始時間t1からフェーズ切換時間t2までの第1制御フェーズでは、最大指示圧となるファーストフィルに続いてスリップ制御圧Pslu を所定の変化率で上昇させるように定められている。また、フェーズ切換時間t2以後の第2制御フェーズでは、例えば差回転ΔNが所定の変化率で目標差回転ΔNtに近付くように実際の差回転ΔNを考慮して求められる。なお、図7のスリップ制御圧指令値SPslu は、前記スリップ制御用ソレノイド弁70に対する指令値で、そのスリップ制御用ソレノイド弁70から出力されるスリップ制御圧Pslu に対応し、更には差圧ΔPに対応する。
ステップS3は、ATF温度Toが所定値以下の場合にベース指示圧Pbaseを増圧補正するもので、ATF温度Toに応じて補正量aを算出する。補正量aは正(+)の値で、ATF温度Toが所定値以上で補正が必要ない場合は補正量a=0である。本実施例ではATF温度Toをパラメータとする演算式やマップなどで補正量aが定められているが、一定値であっても良い。ステップS4では、ベース指示圧Pbaseに補正量aを加算して増圧補正後指示圧Pa(=Pbase+a)を算出し、前記スリップ制御圧Pslu が増圧補正後指示圧Paとなるようにスリップ制御用ソレノイド弁70を制御するスリップ制御圧指令値SPslu を、そのスリップ制御用ソレノイド弁70に出力する。ステップS5では、第1制御フェーズから第2制御フェーズへ切り換えるか否か、具体的にはフレックス制御の開始時間t1から予め定められた一定時間が経過したか否かを判断し、一定時間が経過するまでステップS2〜S4を繰り返すことにより、ロックアップクラッチ32の摩擦材が略接触する係合直前の状態まで速やかに差圧ΔPが上昇させられる。図7の(a) 、(b) における時間t2以前の実線は、何れも補正量aだけ増圧補正された場合で、時間t2は第1制御フェーズから第2制御フェーズへ切り換えるフェーズ切換時間である。本実施例では一定時間で第1制御フェーズから第2制御フェーズへ切り換えるが、ATF温度Toや加速時か減速時か等の車両状態をパラメータとして切換時間を変化させるようにしても良い。
フレックス制御の開始から一定時間が経過してステップS5の判断がYES(肯定)になると、ステップS6を実行する。ステップS6では、実際の差回転ΔN(=NE−NT)が所定の変化率で目標差回転ΔNtに近付くようにするベース指示圧Pbaseをフィードバック制御等により算出する。目標差回転ΔNtは、予め一定値が定められても良いが、アクセル操作量Accや車速V等の車両状態をパラメータとして変化させるようにしても良い。ステップS7は、ATF温度Toが所定値以下の場合にベース指示圧Pbaseを減圧補正するもので、ATF温度Toおよび目標差回転ΔNtに応じて補正量bを算出する。この補正量bは負(−)の値で、ATF温度Toが所定値以上で補正が必要ない場合は補正量b=0である。本実施例ではATF温度Toおよび目標差回転ΔNtをパラメータとする演算式やマップなどで補正量bが定められているが、一定値であっても良い。ステップS8では、ベース指示圧Pbaseに補正量bを加算して減圧補正後指示圧Pb(=Pbase+b)を算出する。図7の(a) 、(b) における一点鎖線は、この減圧補正後指示圧Pbである。
次のステップS9では、前記増圧補正後指示圧Paから減圧補正後指示圧Pbへ切り換える際の切換過渡時指示圧Psweep(i)を次式(1) に従って算出し、前記スリップ制御圧Pslu が切換過渡時指示圧Psweep(i)となるようにスリップ制御用ソレノイド弁70を制御するスリップ制御圧指令値SPslu を、そのスリップ制御用ソレノイド弁70に出力する。すなわち、切換前の補正量aと切換後の補正量bとの差分(a−b)が切換過渡時のベース指示圧Pbaseの変化に拘らず予め定められた変化率で減少するように、切換過渡時指示圧Psweep(i)をベース指示圧Pbaseの変化に応じて徐変させるのである。(1) 式において、eは制御サイクル毎すなわち一定のサイクルタイム毎の変化量で変化率に相当し、予め一定値が定められても良いが、本実施例では図8に示すように最初は比較的大きく、徐々に小さくなるように定められたマップ等に従って設定される。図8の横軸の時間は、制御サイクルの実行回数すなわち(1) 式における「i」に対応する。これにより、オーバーシュートを防止しつつできるだけ速やかに油圧を切り換えることができる。なお、本実施例では補正量aが正(+)で補正量bが負(−)であるため、a−bは正となり、変化量eは負の値が定められる。
Psweep(i)=Pb(i) +d(i) 〔 i=1、2、3、・・・で、
制御サイクル毎に1ずつ加算〕 ・・・(1)
但し、Pb(i) =Pbase+b
d(i) =d(i-1) +e
d(0) =a−b
a−b>0→e<0、a−b<0→e>0
Psweep(i)=Pb(i) +d(i) 〔 i=1、2、3、・・・で、
制御サイクル毎に1ずつ加算〕 ・・・(1)
但し、Pb(i) =Pbase+b
d(i) =d(i-1) +e
d(0) =a−b
a−b>0→e<0、a−b<0→e>0
次のステップS10では、上記切換過渡時指示圧Psweep(i)が切換後の指示圧である減圧補正後指示圧Pbに達したか否かを判断し、Psweep(i)=PbになるまでステップS6〜S9を一定の制御サイクルで繰り返し実行する。これにより、差分(a−b)が制御サイクル毎に変化量eずつ減少させられ、切換過渡時指示圧Psweep(i)が減圧補正後指示圧Pbに滑らかに接近させられる。ベース指示圧Pbaseおよび補正量bは、制御サイクルが繰り返される毎に最新の値に更新され、補正量aは制御フェーズが切り換えられた時間t2の時の値が用いられる。図7の(a) 、(b) の時間t3は、Psweep(i)=Pbになって油圧の切換過渡時の制御が終了した時間、すなわちステップS10の判断がYESになった時間で、時間t2〜t3は切換過渡時であり、本実施例では実線で示すように切換過渡時指示圧Psweep(i)がベース指示圧Pbaseの変化に応じて滑らかに変化させられ、常に所定の応答性で適切に増圧補正後指示圧Paから減圧補正後指示圧Pbへ切り換えられる。例えば図7の(a) に示すように、時間t2〜t3の切換過渡時にベース指示圧Pbaseが上昇した場合に、矢印Y1で示すようにベース指示圧Pbaseの変化と関係無く一定の変化率で指示圧を低下させると、短時間で減圧補正後指示圧Pbまで変化するため、差圧ΔPが低圧側へオーバーシュートしたり油圧抜けにより差回転ΔNが大きくなってエンジン吹き等のショックが発生したり、不自然なエンジン回転速度NEの変動により違和感を生じさせたりする可能性があるが、本実施例では切換過渡時指示圧Psweep(i)がベース指示圧Pbaseの変化に応じて滑らかに変化するため、差圧ΔPがオーバーシュートしたり差回転ΔNが大きくなってショックが発生したりすることが防止される。また、図7の(b) に示すように、時間t2〜t3の切換過渡時にベース指示圧Pbaseが低下した場合に、矢印Y2で示すようにベース指示圧Pbaseの変化と関係無く一定の変化率で指示圧を低下させると、なかなか減圧補正後指示圧Pbに到達せず、油圧切換の応答性が著しく損なわれるとともに、差圧ΔPが相対的に高くなってロックアップクラッチ32が完全係合する恐れがあるが、本実施例では切換過渡時指示圧Psweep(i)がベース指示圧Pbaseの変化に応じて制御されるため、所定の応答性で減圧補正後指示圧Pbまで変化させることができるとともに、差圧ΔPが適切に制御されてロックアップクラッチ32の完全係合が抑制される。
切換過渡時指示圧Psweep(i)が切換後の指示圧である減圧補正後指示圧Pbに達してステップS10の判断がYESになると、ステップS11以下を実行する。ステップS11では、実際の差回転ΔNが目標差回転ΔNtに近付くように、或いは目標差回転ΔNtと略一致するように、フィードバック制御等によりベース指示圧Pbaseを算出する。ステップS12では、前記ステップS7と同様にATF温度Toおよび目標差回転ΔNtに応じて補正量bを算出する。ステップS13では、ベース指示圧Pbaseに補正量bを加算して減圧補正後指示圧Pb(=Pbase+b)を算出するとともに、前記スリップ制御圧Pslu が減圧補正後指示圧Pbとなるようにスリップ制御用ソレノイド弁70を制御するスリップ制御圧指令値SPslu を、そのスリップ制御用ソレノイド弁70に出力する。ステップS14では、前記ロックアップ係合解放マップ等に従ってフレックス制御(スリップ制御)を終了するか否かを判断し、フレックス制御終了条件を満たすまでステップS11〜S13を繰り返してフレックス制御を実行するが、フレックス制御終了条件を満たした場合はステップS15でフレックス制御を終了する。
このように本実施例の車両用駆動装置8においては、ロックアップクラッチ32のフレックス制御に関して、第1制御フェーズから第2制御フェーズへの移行に伴って増圧補正後指示圧Paから減圧補正後指示圧Pbへ切り換える際に、その切換前の補正量aと切換後の補正量bとの差分(a−b)がベース指示圧Pbaseの変化に拘らず予め定められた変化率で減少するように、切換過渡時指示圧Psweep(i)が(1) 式に従ってベース指示圧Pbaseの変化に応じて制御されるため、切換過渡時にベース指示圧Pbaseが変化しても常に所定の応答性で適切に増圧補正後指示圧Paから減圧補正後指示圧Pbへ切り換えることができる。すなわち、スリップ制御圧Pslu を増圧補正後油圧(Paに相当)から減圧補正後油圧(Pbに相当)へ切り換える際に、その切換前の補正量aと切換後の補正量bとの差分(a−b)がベース油圧(Pbaseに相当) の変化に拘らず予め定められた変化率で減少するように、切換過渡時の油圧がベース油圧の変化に応じて制御されるため、切換過渡時にベース油圧が変化しても常に所定の応答性で適切に油圧を切り換えることができる。
これにより、例えば図7の(a) に示すようにベース指示圧Pbaseが上昇した場合に、差圧ΔPが減圧側へオーバーシュートしたり油圧抜けにより差回転ΔNが大きくなってエンジン吹き等のショックが発生したり、不自然なエンジン回転速度NEの変動により違和感を生じさせたりすることが抑制されるとともに、図7の(b) に示すようにベース指示圧Pbaseが低下した場合に、油圧切換の応答性が著しく損なわれたり差圧ΔPが相対的に高くなってロックアップクラッチ32が完全係合したりすることが抑制される。
すなわち、本実施例によればATF温度Toが低い場合でも、ロックアップクラッチ32のフレックス制御を適切に実施できるようになるのであり、このフレックス制御の実施により燃費を一層改善することができる。例えば、加速時のフレックス制御では、トルクコンバータ30による動力損失を低減して燃費を改善できる一方、減速時のフレックス制御では、フューエルカット時のエンジン回転速度NEの低下を抑制してフューエルカットの継続実施により燃費を改善することができる。
また、本実施例では変化量eが図8に示すように最初は比較的大きく、徐々に小さくなるように定められたマップ等に従って設定されるため、差圧ΔPのオーバーシュートを防止しつつできるだけ速やかに油圧を切り換えることができる。
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前記実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
図9は前記図6の代わりに前記フレックス制御手段120によって実行されるフローチャートで、ステップR3、R4は増圧補正手段122に相当し、ステップR6〜R10は切換過渡時制御手段126に相当し、ステップR12、R13は減圧補正手段124に相当する。また、ステップR1〜R8、R11〜R14はそれぞれ前記ステップS1〜S8、S11〜S14と同じで、ステップR9およびR10のみが相違する。
ステップR9では、増圧補正後指示圧Paから減圧補正後指示圧Pbへ切り換える際の切換過渡時指示圧Psweep(i)を次式(2) に従って算出し、前記スリップ制御圧Pslu が切換過渡時指示圧Psweep(i)となるようにスリップ制御用ソレノイド弁70を制御するスリップ制御圧指令値SPslu を、そのスリップ制御用ソレノイド弁70に出力する。すなわち、切換前の補正量aと切換後の補正量bとの差分(a−b)が切換過渡時のベース指示圧Pbaseの変化に拘らず予め定められた変化率で減少するように、切換過渡時指示圧Psweep(i)をベース指示圧Pbaseの変化に応じて制御する。(2) 式において、fは制御サイクル毎の変化量で変化率に相当し、この実施例では差分(a−b)を予め定められた切換時間Tabにで割り算することよって求められる。切換時間Tabは一定値でも良いが、ATF温度To等に応じて変化させても良い。
Psweep(i)=Pb(i) +d(i) 〔 i=1、2、3、・・・で、
制御サイクル毎に1ずつ加算〕 ・・・(2)
但し、Pb(i) =Pbase+b
d(i) =d(i-1) −f
d(0) =a−b
f=(a−b)/Tab
Psweep(i)=Pb(i) +d(i) 〔 i=1、2、3、・・・で、
制御サイクル毎に1ずつ加算〕 ・・・(2)
但し、Pb(i) =Pbase+b
d(i) =d(i-1) −f
d(0) =a−b
f=(a−b)/Tab
また、次のステップR10では、上記切換過渡時指示圧Psweep(i)に従ってスリップ制御圧指令値SPslu を制御する切換制御実施時間が前記切換時間Tabに達したか否かを判断し、切換制御実施時間が切換時間Tabに達するまでステップR6〜R9を一定の制御サイクルで繰り返し実行する。これにより、差分(a−b)が制御サイクル毎に変化量fずつ減少させられ、切換過渡時指示圧Psweep(i)が減圧補正後指示圧Pbに滑らかに接近させられる。ベース指示圧Pbaseおよび補正量bは、制御サイクルが繰り返される毎に最新の値に更新され、変化量aは制御フェーズが切り換えられた時(図10の時間t2)の値がそのまま用いられる。図10の(a) 、(b) の時間t3は、切換制御実施時間すなわちフェーズ切換判断が為されてステップR5の判断がYESになったフェーズ切換時間t2からの経過時間が切換時間Tabに達した時間であり、この時間t3になると、切換過渡時指示圧Psweep(i)は切換後の減圧補正後指示圧Pbに到達するとともに、ステップR10の判断がYESになってステップR11以下を実行する。なお、ステップR10では、前記ステップS10と同様に切換過渡時指示圧Psweep(i)が切換後の指示圧である減圧補正後指示圧Pbに達したか否かを判断するようにしても良い。
本実施例においては、切換過渡時指示圧Psweep(i)が(2) 式に従って制御されることにより、図10の(a) 、(b) に示すように、ベース指示圧Pbaseの変化に拘らず常に切換時間Tabで増圧補正後指示圧Paから減圧補正後指示圧Pbまで変化させられる。これにより、切換過渡
に所定の応答性で適切に油圧が切り換えられるようになり、前記実施例と同様の作用効果が得られる。
に所定の応答性で適切に油圧が切り換えられるようになり、前記実施例と同様の作用効果が得られる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
32:ロックアップクラッチ 34:電子制御装置 120:フレックス制御手段 122:増圧補正手段 124:減圧補正手段 126:切換過渡時制御手段 Pbase:ベース指示圧(ベース油圧) Pa:増圧補正後指示圧(補正後油圧) Pb:減圧補正後指示圧(補正後油圧) Psweep(i):切換過渡時指示圧 Tab:切換時間 e、f:変化量(変化率)
Claims (3)
- ベース油圧に従って油圧を制御するとともに、予め定められた補正条件に従って該ベース油圧を補正する油圧制御装置において、
前記ベース油圧と前記補正後の補正後油圧との間、または該ベース油圧に対して複数種類の補正が行われる場合に該複数種類の補正後油圧の相互間で油圧を切り換える際に、該切換前の補正量aと該切換後の補正量bとの差分(a−b)が前記ベース油圧の変化に拘らず予め定められた変化率で減少するように、切換過渡時の油圧を該ベース油圧の変化に応じて制御する
ことを特徴とする油圧制御装置。 - 前記ベース油圧に対応するベース指示圧をPbase、予め定められた変化量をeとした時、一定の制御サイクルで出力する切換過渡時指示圧Psweep(i)が次式(1) に従って算出され、該切換過渡時指示圧Psweep(i)に従って前記切換過渡時の油圧が制御される
Psweep(i)=Pb(i) +d(i) 〔 i=1、2、3、・・・で、
制御サイクル毎に1ずつ加算〕 ・・・(1)
但し、Pb(i) =Pbase+b
d(i) =d(i-1) +e
d(0) =a−b
a−b>0→e<0、a−b<0→e>0
ことを特徴とする請求項1に記載の油圧制御装置。 - 前記ベース油圧に対応するベース指示圧をPbase、予め定められた切換時間をTabとした時、一定の制御サイクルで出力する切換過渡時指示圧Psweep(i)が次式(2) に従って算出され、該切換過渡時指示圧Psweep(i)に従って前記切換過渡時の油圧が制御される
Psweep(i)=Pb(i) +d(i) 〔 i=1、2、3、・・・で、
制御サイクル毎に1ずつ加算〕 ・・・(2)
但し、Pb(i) =Pbase+b
d(i) =d(i-1) −f
d(0) =a−b
f=(a−b)/Tab
ことを特徴とする請求項1に記載の油圧制御装置。
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