JP2013017321A - 車両の電源装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】車両ボデーへの絶縁劣化に対しても安全性が高められた車両の電源装置を提供する。
【解決手段】車両の電源装置は、高圧バッテリB1と、車両ボデーと高圧バッテリB1によって電源が供給される部分との間の絶縁抵抗を検出する絶縁抵抗検出部70と、高圧バッテリB1の電圧を変換して車両負荷に供給する電圧コンバータ11と、電圧コンバータ11の電圧を制御する制御装置30とを含む。制御装置30は、絶縁抵抗検出部70の検出する絶縁抵抗の変化に基づいて電圧コンバータ11の電圧上限値を変更する。好ましくは、制御装置30は、絶縁抵抗が低下した場合には電圧上限値を低下させ、絶縁抵抗が低下した状態から絶縁抵抗の変化が増加方向に転じても電圧上限値を低下させた状態を維持する。
【選択図】図1

Description

この発明は、車両の電源装置に関し、特に蓄電装置の電圧を変換する電圧コンバータを備えた車両の電源装置に関する。
ハイブリッドカーや電気自動車等の電動車両では、動作中の絶縁抵抗を正確に検出することが漏電防止に重要であり、モータを駆動する電源装置の絶縁抵抗を正確に検出する検出装置を備えている。
特開2005−176449号公報(特許文献1)には、絶縁抵抗の劣化時にも安全性を確保可能なように動作条件を修正して、動作を継続可能な電力変換装置が開示されている。
この電圧変換回路は、電源からの入力電圧を電気負荷の駆動に用いられる動作電圧へ変換する。制御回路は、検出回路によって検出された電圧変換回路の出力側の絶縁抵抗値Rに応じて、電圧変換回路における、入力電圧V1に対する動作電圧V2の比で示される電圧変換比K(K=V2/V1)を制御する。制御回路は、絶縁抵抗の劣化時において、動作電圧V2が絶縁抵抗の正常時よりも低くなるように電圧変換比Kを設定する。
特開2005−176449号公報 特開2006−226763号公報 特開2000−092830号公報 特開2008−167617号公報
上記特開2005−176449号公報には、電源装置と車両ボデー間の絶縁劣化については言及されておらず、その点に改良の余地がある。また、絶縁抵抗は気候などによって急に変化する場合も考えられるので、この点にも改良の余地がある。
この発明の目的は、車両ボデーへの絶縁劣化に対しても安全性が高められた車両の電源装置を提供することである。
この発明は、要約すると、車両の電源装置であって、蓄電装置と、車両ボデーと蓄電装置によって電源が供給される部分との間の絶縁抵抗を検出する抵抗検出部と、蓄電装置の電圧を変換して車両負荷に供給する電圧コンバータと、電圧コンバータの電圧を制御する制御装置とを含む。制御装置は、抵抗検出部の検出する絶縁抵抗の変化に基づいて電圧コンバータの電圧上限値を変更する。
好ましくは、制御装置は、絶縁抵抗が低下した場合には電圧上限値も低下させる。
好ましくは、制御装置は、絶縁抵抗が低下した場合には電圧上限値を低下させ、絶縁抵抗が低下した状態から絶縁抵抗の変化が増加方向に転じても電圧上限値を低下させた状態を維持する。
好ましくは、車両負荷は、車両を駆動するモータ用のインバータを含む。
本発明によれば、高電圧系と車両ボデーとの間の絶縁劣化時おいても安全性が高められる。
本実施の形態による車両の構成を示す回路図である。 図1の絶縁抵抗検出部70のより詳細な構成を示した回路図である。 高圧系の絶縁抵抗の低下を検出する簡易モデルを示した回路図である。 実施の形態1で実行される電圧コンバータの制御を説明するためのフローチャートである。 システム電圧上限値Vmaxを算出するためのマップの一例を示した図である。 実施の形態2で実行される電圧コンバータの制御を説明するためのフローチャートである。
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
[実施の形態に共通する車両構成]
図1は、本実施の形態による車両の構成を示す回路図である。図1に示す車両100は、高圧バッテリを搭載するものであれば、電気自動車でもハイブリッド自動車でも燃料電池自動車でもよい。
図1を参照して、車両100は、共に直流電源の一種である高圧バッテリB1および補機バッテリB2と、システムメインリレーSR1,SR2と、電圧センサー10,16と、電圧コンバータ11と、正極母線PLと、負極母線NLと、コンデンサ12と、DC/DCコンバータ13と、エアコン14と、電流センサー17,24と、インバータ20と、制御装置30と、絶縁抵抗検出部70とを含む。
電圧コンバータ11は、リアクトルL1と、IGBT素子Q1,Q2と、ダイオードD1,D2とを含む。リアクトルL1は、その一方端が高圧バッテリB1の正極に接続され、他方端がIGBT素子Q1のエミッタとIGBT素子Q2のコレクタの接続ノードに接続される。
IGBT素子Q1,Q2は、正極母線PLと負極母線NLとの間に直列に接続される。IGBT素子Q1は、コレクタが正極母線PLに接続され、エミッタがIGBT素子Q2のコレクタに接続される。IGBT素子Q2は、エミッタが負極母線NLに接続される。
また、各IGBT素子Q1,Q2のコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側へ電流を流すダイオードD1,D2がそれぞれ接続されている。
インバータ20は、U相アーム21と、V相アーム22と、W相アーム23とを含む。U相アーム21、V相アーム22、およびW相アーム23は、正極母線PLと負極母線NLとの間に並列に設けられる。
U相アーム21は、正極母線PLと負極母線NLとの間に直列に接続されたIGBT素子Q3,Q4を含む。V相アーム22は、正極母線PLと負極母線NLとの間に直列に接続されたIGBT素子Q5,Q6を含む。W相アーム23は、正極母線PLと負極母線NLとの間に直列に接続されたIGBT素子Q7,Q8を含む。また、各IGBT素子Q3〜Q8のコレクタ−エミッタ間には、エミッタ側からコレクタ側へ電流を流すダイオードD3〜D8がそれぞれ接続されている。
交流モータM1は、3相の永久磁石モータであり、U,V,W相コイルを含む。U,V,W相アームの中間点は、それぞれ、交流モータM1のU,V,W相コイルの一方端に接続されている。U相コイルの他端はIGBT素子Q3,Q4の中間点に接続される。V相コイルの他端はIGBT素子Q5,Q6の中間点に接続される。W相コイルの他端はIGBT素子Q7,Q8の中間点に接続される。U,V,W相の3つのコイルの各他方端は中性点に共通に接続される。
絶縁抵抗検出部70は、カップリングコンデンサ15と、発振回路40と、抵抗50と、インピーダンス判定回路60とを含む。カップリングコンデンサ15は、高圧バッテリB1の負極端子とノードN1との間に接続される。抵抗50は、ノードN1と発振回路40との間に接続される。
DC/DCコンバータ13およびエアコン14は、システムメインリレーSR1,SR2と電圧コンバータ11との間のノードN2,N3に並列に接続される。補機バッテリB2は、DC/DCコンバータ13に接続される。補機バッテリB2の負極はシャーシグラウンドGND(車両のボデー)に結合されている。なお、補機バッテリB2は、図示しない補機負荷にも電力を供給している。補機バッテリB2は、鉛蓄電池等の二次電池または電気二重層コンデンサ等の蓄電素子を含んで構成することができる。
高圧バッテリB1は、ニッケル水素あるいはリチウムイオン等の二次電池または電気二重層コンデンサ等の蓄電素子を含んで構成することができる。そして、高圧バッテリB1は、直流電圧VBをシステムメインリレーSR1,SR2を介して電圧コンバータ11、DC/DCコンバータ13およびエアコン14へ供給する。
システムメインリレーSR1,SR2は、制御装置30からの信号SEによってオン/オフされる。より具体的には、システムメインリレーSR1,SR2は、制御装置30からのH(論理ハイ)レベルの信号SEによりオンされ、制御装置30からのL(論理ロー)レベルの信号SEによりオフされる。
電圧センサー10は、高圧バッテリB1から出力される直流電圧VBを検出し、直流電圧VBの検出値を制御装置30へ出力する。
電流センサー17は、高圧バッテリB1に入出力する直流電流BCRTを検出し、直流電流BCRTの検出値を制御装置30へ出力する。
電圧コンバータ11は、制御装置30からの信号PWMUに基づいて、高圧バッテリB1からの直流電圧VHを昇圧してコンデンサ12に供給する。また、電圧コンバータ11は、制御装置30からの信号PWMDまたはPWMLに基づいて、インバータ20から供給された直流電圧を降圧して高圧バッテリB1またはDC/DCコンバータ13およびエアコン14へ供給する。
コンデンサ12は、電圧コンバータ11から供給された直流電圧を平滑化してインバータ20に供給する。
DC/DCコンバータ13は、高圧バッテリB1または電圧コンバータ11から受けた直流電圧の電圧レベルを変換して補機バッテリB2に供給する。エアコン14は、高圧バッテリB1または電圧コンバータ11から受ける直流電圧により駆動される。
電圧センサー16は、コンデンサ12の両端の電圧VHを検出し、その検出した電圧VHを制御装置30へ出力する。
インバータ20は、制御装置30からの信号PWMIに基づいて、コンデンサ12を介して電圧コンバータ11から供給された直流電圧を交流電圧に変換して交流モータM1を駆動する。また、インバータ20は、制御装置30からの信号PWMCに基づいて、交流モータM1が発電した交流電圧を直流電圧に変換し、その変換した直流電圧をコンデンサ12を介して電圧コンバータ11へ供給する。
電流センサー24は、交流モータM1に流れるモータ電流MCRTを検出し、その検出したモータ電流MCRTを制御装置30へ出力する。
制御装置30は、電圧センサー10からの直流電圧VB、電圧センサー16からの電圧VH、車両100の外部に設けられたECU(Electrical Control Unit)からのモータ回転数MRNおよびトルク指令値TRに基づいて、信号PWMUまたは信号PWMDを生成し、その生成した信号PWMUまたは信号PWMDを電圧コンバータ11へ出力する。
さらに、制御装置30は、電圧センサー16からの電圧VH、電流センサー24からのモータ電流MCRTおよび外部ECUからのトルク指令値TRに基づいて、信号PWMIまたは信号PWMCを生成し、その生成した信号PWMIまたは信号PWMCをインバータ20へ出力する。
発振回路40は、所定周波数の交流信号Eoを発振し、その発振した交流信号Eoを抵抗50を介してノードN1へ出力する。インピーダンス判定回路60は、ノードN1から交流信号Eを受け、その受けた交流信号Eの波高値を検出する。
高圧システムからの漏電経路は、抵抗成分27,28で示すような、高圧バッテリB1や負極母線NLのような直流部からシャーシグラウンドGNDへの漏電経路と、抵抗成分25およびキャパシタンス成分26で示すような交流部からシャーシグラウンドGNDへの漏電経路とが考えられる。
直流部については、車両が起動されると、システムメインリレーSR1,SR2を導通させる前に、抵抗成分28による絶縁劣化の有無を判定し、さらにシステムメインリレーSR1,SR2を導通させた後にも抵抗成分27および抵抗成分28による絶縁劣化の有無を繰り返し判定している。
交流部については、システムメインリレーSR1,SR2を導通させた後に抵抗成分25およびキャパシタンス成分26による絶縁劣化の有無を繰り返し判定している。
図2は、図1の絶縁抵抗検出部70のより詳細な構成を示した回路図である。
図2を参照して、回路系200は図1に示す車両システムの高圧回路系を1つの機能ブロックにより示したものである。また、図2に示す接地ノードは車両においてはボデーアース(車体)に対応する。
絶縁抵抗検出部70は、信号発生部である発振回路40と、絶縁劣化検出用の抵抗50と、カップリングコンデンサ15と、インピーダンス判定回路60とを含む。インピーダンス判定回路60は、バンドパスフィルタ(BPF)84と、オフセット回路および増幅回路からなる回路ブロック85と、過電圧保護用ダイオード87と、抵抗86と、コンデンサ88と、制御回路110とを含む。
発振回路40は、ノードNAに所定周波数(所定周期Tp)で変化するパルス信号SIGを印加する。抵抗50は、ノードNAおよびノードN1の間に接続される。カップリングコンデンサ15は、絶縁劣化検出対象となる高圧バッテリB1とノードN1との間に接続される。バンドパスフィルタ84は、ノードN1に入力端子が接続され、ノードN2に出力端子が接続される。バンドパスフィルタ84の通過帯域周波数は、パルス信号SIGの周波数に合わせて設計される。
回路ブロック85は、ノードN2とノードN3との間に接続される。回路ブロック85は、バンドパスフィルタ84を通過したパルス信号のうち、絶縁抵抗検出時に設定されるしきい値電圧付近の電圧変化を増幅する。過電圧保護用ダイオード87は、定電圧ノードにカソードが接続され、ノードNBにアノードが接続されて、サージ電圧(高電圧,負電圧)を除去する。抵抗86はノードN3とノードNBとの間に接続される。コンデンサ88はノードNBと接地ノードとの間に接続される。抵抗86およびコンデンサ88は、回路ブロック85から出力される信号のノイズを除去するフィルタとして機能する。
制御回路110は、発振回路40を制御する。また制御回路110は、ノードNBの電圧を検出して、検出電圧Vrefに基づいて絶縁抵抗Riの低下を検出する。制御回路110は、発振指令部111と、A/D変換部112と、判定部113とを含む。
発振指令部111は、発振回路40に対してパルス信号SIGを発生するよう指示を与えるとともに、パルス信号SIGのデューティ比を変更するよう指示する。A/D変換部112は所定のサンプリング周期Tsにより検出したノードNBの電圧(検出電圧)をA/D変換する。サンプリング周期Tsはパルス信号SIGの周期Tpよりも十分短いのでノードNBの最大電圧(ピーク電圧Vp)および最小電圧を検出できる。判定部113は、A/D変換部112から取得したピーク電圧Vpの値と、しきい値とを比較する。これにより、制御回路110は、絶縁抵抗Riの低下の有無を検出する。
絶縁抵抗Riは、図1のシステムメインリレーSR1,SR2がオフ状態の場合には、図1の抵抗成分28に対応し、システムメインリレーSR1,SR2がオン状態の場合には、抵抗成分25,27,28のいずれかに対応する。
次に、絶縁抵抗Riの低下を検出する動作について説明する。発振回路40によって発生されたパルス信号SIGは、抵抗50、カップリングコンデンサ15、絶縁抵抗Ri、およびバンドパスフィルタ84を含んで構成された直列回路に印加される。これにより、抵抗50およびカップリングコンデンサ15の接続点に相当するノードN1には、絶縁抵抗Riおよび抵抗50(抵抗値Rd)の分圧比:Ri/(Rd+Ri)とパルス信号SIGの振幅(電源電圧である電圧+B)との積に関連する値を波高値とするパルス電圧が発生する。なお電圧+Bは、たとえば補機バッテリの電圧としてもよいが、これに限定されるものではない。
ノードN1に発生したパルス電圧は、バンドパスフィルタ84によってパルス信号SIGの周波数以外の成分が減衰される。バンドパスフィルタ84を通過したパルス信号SIGのうち、しきい値電圧付近の電圧変化のみが回路ブロック85によって増幅される。回路ブロック85から出力される信号はノードNBに伝達される。ノードN3からノードNBに信号が伝達されるに際して、過電圧保護用ダイオード87によりサージ電圧が除去されるとともに、抵抗86およびコンデンサ88によってノイズが除去される。
絶縁抵抗Riが正常である時には、Ri>>Rdである。Riが高くなるに従って、ピーク電圧Vpは電圧+Bにほぼ等しくなる。一方、絶縁抵抗Riの低下時には、分圧比:Ri/(Rd+Ri)が低下するので、ピーク電圧Vpが低下する。ピーク電圧Vpの低下を検出することにより、絶縁劣化の発生を検出することができる。そして、検出抵抗値Rdは固定値であるので、ピーク電圧Vpを観測すれば、絶縁抵抗Riの値を算出することも可能である。
図3は、高圧系の絶縁抵抗の低下を検出する簡易モデルを示した回路図である。
図3を参照して、絶縁抵抗低下検出器201は、アース203を基準電位として振幅V0で発振波形を出力する発振電源204と、発振電源204から一方端に発振信号を受ける検出抵抗206と、検出抵抗206の他方端に一方電極が接続されたカップリングコンデンサ210とを含む。
高圧簡易モデル202は、カップリングコンデンサ210の他方電極とアース216との間に並列に接続された高圧絶縁抵抗212およびコモンモードコンデンサ214を含む。
高電圧バッテリや駆動回路は、高圧簡易モデル202のように表すことができる。高圧簡易モデル202のインピーダンスが大きい場合には、検出抵抗206(抵抗値Rd)にはほとんど電流が流れない。したがって電圧検出器208が検出する電圧波形は発振電源204の信号振幅電圧V0と同じ振幅となる(Vd=V0)。
高圧簡易モデル202のインピーダンスが小さいときには、検出抵抗206に電流が流れるため、その分電圧ドロップした波形が電圧検出器208によって計測でき、これによって異常が判定できる。
人体が触れても違和感を覚えない電流レベルの上限は5mAと言われている。したがって、たとえば5mAの電流が流れる可能性のある抵抗値を絶縁抵抗低下の異常判定のしきい値とすることができる。システム電圧VHの最大値を仮に750Vとすると、絶縁抵抗低下の異常判定のしきい値とする抵抗値はR=750V/5mA=150kΩとすることができる。
通常は、高電圧系から車両ボデーへの1箇所の絶縁抵抗低下では、人体が触れても電流の帰路が無いので漏電電流は流れない。したがって、1箇所の絶縁抵抗低下を検出しても直ちにシステムをシャットダウン(Ready−OFF)とすることは行なわず、退避走行を認めている。このような場合には、一定時間経過後または一旦ユーザがシステムを停止させた後(Ready−OFF後)に再起動禁止としている。
さらに二重の漏電対策として、車両ボデーの等電位化によって2点で車両ボデーに接触しても電流が流れなくしたり、また車両ボデーとは電位が異なる高圧バッテリB1周辺の高電圧部をインターロックによって接触から保護したりする対策が講じられている。
しかし、たとえば、液体漏れなどにより検出しきい値よりも絶縁抵抗値がわずかに低くなっている場合には、電圧コンバータ11の昇圧電圧をある程度制限することで、さらに絶縁抵抗低下箇所が増えたり、車両ボデーの等電位化に問題が生じたり、高圧バッテリB1周辺の接触保護(インターロック)に問題が生じたりすることが重なった場合であっても、流れる電流を人体が触れても違和感を覚えない電流レベル(たとえば5mA)よりも小さくすることも可能である。
このため、絶縁抵抗低下時には、電圧コンバータの昇圧電圧を低下した絶縁抵抗に対応した値に制限すると良い。
[実施の形態1]
図4は、実施の形態1で実行される電圧コンバータの制御を説明するためのフローチャートである。このフローチャートの処理は、一定時間ごとまたは所定の条件が成立するごとにメインルーチンから呼び出されて実行される。
図1、図4を参照して、まず処理が開始されると、制御装置30は、ステップS1において絶縁異常検出が有るか否かを判断する。この絶縁異常の判断は、システム電圧VHの最大値と人体が触れても違和感を覚えない電流レベルの上限値(たとえば5mA)とに基づいて算出された抵抗値Rxと図2の絶縁抵抗検出部70で検出された抵抗値Riとを比較することによって行なわれる。Rx>Riの場合には、絶縁異常有りと判定され、Rx<Riの場合には絶縁異常なしと判定される。
ステップS1において絶縁異常検出が有ると判断された場合には、ステップS2に処理が進む。一方ステップS1において絶縁異常検出が無いと判断された場合には通常通りの昇圧動作が実行される。すなわち、電圧コンバータ11は、通常設定されている上限値までの昇圧が許可される。
ステップS2では、制御装置30は、高電圧部と車両ボデー間の絶縁抵抗値Riをあらためて算出する。ステップS1で使用した値をステップS2でそのまま使用しても良い。そして、ステップS3において電圧コンバータ11の昇圧制限用のシステム電圧上限値Vmaxを算出する。
図5は、システム電圧上限値Vmaxを算出するためのマップの一例を示した図である。
図5を参照して、横軸には検出された絶縁抵抗値Rが示され、縦軸には絶縁抵抗値Rに対応して設定される電圧コンバータ11の昇圧制限用のシステム電圧上限値Vmaxが示される。システム電圧上限値Vmaxは、Vmax>VBの範囲では、電圧コンバータ11の昇圧上限値として使用される。そして、絶縁抵抗値Rが増加するに従って、システム電圧上限値Vmaxも増加する。
ただし、電圧コンバータ11で昇圧が禁止された場合にはシステム電圧VH=VBとなるので、システム電圧VHの最小値はバッテリ電圧VBとなる。したがって、図4のステップS4では、算出したシステム電圧上限値Vmaxがバッテリ電圧VB以下か否かが判断される。
図4のステップS4の処理において、システム電圧上限値Vmaxがバッテリ電圧VB以下であった場合には、ステップS5に処理が進み、電圧コンバータ11の昇圧が禁止される。この場合には、図1のIGBT素子Q1をオン固定とし、IGBT素子Q2をオフ固定とした「上アームオン」状態でインバータ20に電源電流が供給される。なお、回生制動を行なわないようにして逆方向の電流を発生させないようにすれば、IGBT素子Q1、Q2をオフ固定しダイオードD1のみによってインバータ20に電源電流が供給されるように制御しても良い。
一方、ステップS4の処理において、システム電圧上限値Vmaxがバッテリ電圧VB以下ではなかった場合には、ステップS6に処理が進む。ステップS6では、電圧コンバータ11の昇圧は許可されるが、昇圧電圧の上限値は通常時よりも制限される。すなわち、ステップS6においては、ステップS3で算出されたシステム電圧上限値Vmax以下に昇圧後のシステム電圧VHを制限するように電圧コンバータ11が制御される。システム電圧VHが制限されることにより、仮に漏電が発生したとしても人体が違和感を覚えない程度の電流しか流れない。
ステップS5またはステップS6の処理が終了すると、ステップS7に処理が進み、制御はメインルーチンに移される。
以上説明したように、実施の形態1に示した車両の電源装置によれば、車両ボデーと高電圧部との間の絶縁抵抗が低下した場合において、絶縁抵抗の低下の度合いに応じて電圧コンバータ11による昇圧を制限する。これにより、仮に漏電が発生したとしても人体が違和感を覚えない程度の電流しか流れない場合が多くなる。
[実施の形態2]
実施の形態1では、現在の絶縁劣化の状況に応じて昇圧電圧の上限値を決定した。しかし、車両の置かれた状況によって絶縁劣化の状態も急変する場合もある。たとえば、雨天時に絶縁劣化するが、晴天になると絶縁性が回復する場合などでは、急な降雨や水はねなどで再び絶縁劣化することも考えられる。そこで、実施の形態2では、絶縁劣化の検出履歴を保持しておき、その履歴に基づいて昇圧電圧の上限値を決定する。
図6は、実施の形態2で実行される電圧コンバータの制御を説明するためのフローチャートである。このフローチャートの処理は、一定時間ごとまたは所定の条件が成立するごとにメインルーチンから呼び出されて実行される。
図1、図6を参照して、まず処理が開始されると、制御装置30は、ステップS11において絶縁異常検出が有るか否かを判断する。この絶縁異常の判断は、システム電圧VHの最大値と人体が触れても違和感を覚えない電流レベルの上限値(たとえば5mA)とに基づいて算出された抵抗値Rxと、図2の絶縁抵抗検出部70で検出された抵抗値Riとを比較することによって行なわれる。Rx>Riの場合には、絶縁異常有りと判定され、Rx<Riの場合には絶縁異常なしと判定される。
ステップS11において絶縁異常検出が有ると判断された場合には、ステップS12に処理が進む。一方ステップS11において絶縁異常検出が無いと判断された場合には、ステップS18に処理が進む。
ステップS18においては、制御装置30は、車両が絶縁異常を検出した履歴があるか否かを判断する。制御装置30は、ステップS11を実行した際に絶縁異常を検出した場合にはその履歴を不揮発性メモリなどに記憶させておく。この記憶させた検出履歴は、絶縁異常部分を修理した場合には、初期化される。
ステップS18において絶縁異常検出履歴が無いと判断された場合には、ステップS21に処理が進み制御はメインルーチンに戻される。ステップS18からステップS21に処理が進んだ場合には、通常通りの昇圧動作が実行される。すなわち、電圧コンバータ11は、通常設定されている上限値までの昇圧が許可される。一方、ステップS18において絶縁異常検出履歴が有ると判断された場合にはステップS19に処理が進む。
ステップS12では、制御装置30は、高電圧部と車両ボデー間の絶縁抵抗値Riをあらためて算出する。ステップS11で使用した値をステップS12でそのまま使用しても良い。そして、ステップS13において電圧コンバータ11の昇圧制限用のシステム電圧Vmaxtを算出する。システム電圧Vmaxtについては、図5で説明したシステム電圧上限値Vmaxと同様な方法で決定される。
ステップS14において、制御装置30は、ステップS13で算出されたシステム電圧Vmaxtが過去に算出したシステム電圧上限値Vmaxの最小値以下であるか否かを判断する。過去に算出したシステム電圧上限値Vmaxの最小値については、ステップS18で照会した絶縁異常検出履歴の有無を示す情報とともに不揮発性メモリなどに記憶しておく。そしてステップS14においては、制御装置30は、記憶しておいた最小値を読み出して、今回算出されたシステム電圧Vmaxtと比較し、大小関係の判断を行なう。
ステップS14において、システム電圧Vmaxtが過去に算出したシステム電圧上限値Vmaxの最小値以下であった場合には、ステップS15に処理が進み、今回算出したシステム電圧Vmaxtをシステム電圧上限値Vmaxとして設定する。
一方、ステップS14において、システム電圧Vmaxtが過去に算出したシステム電圧上限値Vmaxの最小値以下ではなかった場合には、ステップS19に処理が進む。
ステップS19では、過去の制限電圧最小値、つまり現在設定されているシステム電圧上限値Vmaxをそのままシステム電圧上限値Vmaxとして設定する。
ステップS15またはステップS19の処理によってシステム電圧上限値Vmaxが決定された後には、ステップS16に処理が進む。ステップS16では、決定されたシステム電圧上限値Vmaxがバッテリ電圧VB以下か否かが判断される。
ステップS16の処理において、システム電圧上限値Vmaxがバッテリ電圧VB以下であった場合には、ステップS17に処理が進み、電圧コンバータ11の昇圧が禁止される。この場合には、図1のIGBT素子Q1をオン固定とし、IGBT素子Q2をオフ固定とした「上アームオン」状態でインバータ20に電源電流が供給される。なお、回生制動を行なわないようにして逆方向の電流を発生させないようにすれば、IGBT素子Q1、Q2をオフ固定しダイオードD1のみによってインバータ20に電源電流が供給されるように制御しても良い。
一方、ステップS16の処理において、システム電圧上限値Vmaxがバッテリ電圧VB以下ではなかった場合には、ステップS20に処理が進む。ステップS20では、電圧コンバータ11の昇圧は許可されるが、昇圧電圧の上限値は通常時よりも制限される。すなわち、ステップS20においては、ステップS15またはステップS19で決定されたシステム電圧上限値Vmax以下に昇圧後のシステム電圧VHを制限するように電圧コンバータ11が制御される。システム電圧VHが制限されることにより、仮に漏電が発生したとしても人体が違和感を覚えない程度の電流しか流れない。
ステップS17またはステップS18の処理が終了すると、ステップS21に処理が進み、制御はメインルーチンに移される。
実施の形態2に示した車両の電源装置は、実施の形態1の車両の電源装置が奏する効果に加えてさらに安全性が向上する。
最後に、実施の形態1,2について、再び図1等を参照しながら総括する。実施の形態1,2に示される車両の電源装置は、高圧バッテリB1と、車両ボデー(GND)と高圧バッテリB1によって電源が供給される部分との間の絶縁抵抗を検出する絶縁抵抗検出部70と、高圧バッテリB1の電圧を変換して車両負荷に供給する電圧コンバータ11と、電圧コンバータ11の電圧を制御する制御装置30とを含む。制御装置30は、絶縁抵抗検出部70の検出する絶縁抵抗の変化に基づいて電圧コンバータ11の電圧上限値Vmaxを変更する。
好ましくは、図4、図5に示すように、制御装置30は、絶縁抵抗が低下した場合には電圧上限値Vmaxも低下させる。
好ましくは、図5、図6に示すように、制御装置30は、絶縁抵抗が低下した場合には電圧上限値Vmaxを低下させ、絶縁抵抗が低下した状態から絶縁抵抗の変化が増加方向に転じても電圧上限値Vmaxを低下させた状態を維持する。なお、修理等によって絶縁抵抗が正常である状態に戻された場合には、電圧上限値Vmaxを低下させた状態はクリアされる。
好ましくは、車両負荷は、車両を駆動するモータM1用のインバータ20を含む。図1に示す車両100は、高圧バッテリを搭載するものであれば、電気自動車でもハイブリッド自動車でも燃料電池自動車でもよい。
今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10,16 電圧センサー、11 電圧コンバータ、12,88 コンデンサ、13 DC/DCコンバータ、14 エアコン、15,210 カップリングコンデンサ、17,24 電流センサー、20 インバータ、25,27,28 抵抗成分、26 キャパシタンス成分、30 制御装置、40 発振回路、50,86 抵抗、60 インピーダンス判定回路、70 絶縁抵抗検出部、84 バンドパスフィルタ、85 回路ブロック、87 過電圧保護用ダイオード、100 車両、110 制御回路、111 発振指令部、112 A/D変換部、113 判定部、200 回路系、201 絶縁抵抗低下検出器、202 高圧簡易モデル、203,216 アース、204 発振電源、206 検出抵抗、208 電圧検出器、212 高圧絶縁抵抗、214 コモンモードコンデンサ、B1 高圧バッテリ、B2 補機バッテリ、D1〜D8 ダイオード、L1 リアクトル、M1 交流モータ、NL 負極母線、PL 正極母線、Q1〜Q8 IGBT素子、SR1,SR2 システムメインリレー。

Claims (4)

  1. 蓄電装置と、
    車両ボデーと前記蓄電装置によって電源が供給される部分との間の絶縁抵抗を検出する抵抗検出部と、
    前記蓄電装置の電圧を変換して車両負荷に供給する電圧コンバータと、
    前記電圧コンバータの電圧を制御する制御装置とを備え、
    前記制御装置は、前記抵抗検出部の検出する前記絶縁抵抗の変化に基づいて前記電圧コンバータの電圧上限値を変更する、車両の電源装置。
  2. 前記制御装置は、前記絶縁抵抗が低下した場合には前記電圧上限値も低下させる、請求項1に記載の車両の電源装置。
  3. 前記制御装置は、前記絶縁抵抗が低下した場合には前記電圧上限値を低下させ、前記絶縁抵抗が低下した状態から前記絶縁抵抗の変化が増加方向に転じても前記電圧上限値を低下させた状態を維持する、請求項1または2に記載の車両の電源装置。
  4. 前記車両負荷は、前記車両を駆動するモータ用のインバータを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両の電源装置。
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