JP2013015182A - 車両用変速機の潤滑構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】複数箇所の潤滑対象部位に同時に十分な量の潤滑油を供給でき、車両の走行状況に依存せずに潤滑油を安定供給でき、従来よりも低コストで省スペースを実現した車両用変速機の潤滑構造を提供する。
【解決手段】潤滑油が封入されたケースと、一部分がケースの底部に滞留する潤滑油に浸漬され、回転することにより潤滑油を掻き上げて飛散させる変速機構部と、ケースの内側上部に配置されて潤滑油を捕集し潤滑対象部位に向けて流下させるオイルレシーバ4と、を備える車両用変速機の潤滑構造1であって、オイルレシーバ4は、頂点位置41から複数の方向にそれぞれ斜め下向きに延在するとともに上方に開口する皿状または溝状の複数個の傾斜レシーバ部42,43、及び各前記傾斜レシーバ部42、43の下側位置421、431からそれぞれ異なる潤滑対象部位に向かう複数個のオイル供給部44、45を一体に有する。
【選択図】図2
【解決手段】潤滑油が封入されたケースと、一部分がケースの底部に滞留する潤滑油に浸漬され、回転することにより潤滑油を掻き上げて飛散させる変速機構部と、ケースの内側上部に配置されて潤滑油を捕集し潤滑対象部位に向けて流下させるオイルレシーバ4と、を備える車両用変速機の潤滑構造1であって、オイルレシーバ4は、頂点位置41から複数の方向にそれぞれ斜め下向きに延在するとともに上方に開口する皿状または溝状の複数個の傾斜レシーバ部42,43、及び各前記傾斜レシーバ部42、43の下側位置421、431からそれぞれ異なる潤滑対象部位に向かう複数個のオイル供給部44、45を一体に有する。
【選択図】図2
Description
本発明は、車両用変速機の潤滑構造に関し、より詳細には、掻き上げられて飛散する潤滑油を捕集し潤滑対象部位に向けて流下させるオイルレシーバを用いた潤滑構造の改良に関する。
車両に搭載される変速機として、平行する2つの回転軸に複数の変速ギヤ対を備え、同期装置により一つの変速ギヤ対を選択的に噛合させて所定の変速比を得る常時噛合歯車式変速機がある。この変速機では、軸受部や同期装置などの動作を円滑化し、また摩擦熱による温度上昇を低減して摩耗による機能低下を抑制するために、ケース内に潤滑油を封入して循環させる潤滑構造が採用されている。さらに、特許文献1に例示されるように、変速ギヤが回転して掻き上げ飛散させた潤滑油をオイルレシーバで捕集し、潤滑対象部位に流下させる構造が広く用いられている。
特許文献1に開示される変速機の潤滑構造は、変速軸に設けられた軸方向穴と径方向穴とからなる潤滑油路と、傾斜させた溝形のオイルレシーバとを備え、ケーシングの上部壁にオイルレシーバに向けて突出する突条を形成している。これにより、ケーシングの上部壁に沿って流れ落ちる潤滑油を突条により効率よくオイルレシーバに送ることができる、とされている。この種の潤滑構造は、狭義の車両用変速機だけでなく、副変速部を有するトランスファ装置や、ハイブリッド車両の走行用モータの出力側に設けられる減速機などにも応用されている。
ところで、特許文献1を始めとする従来の潤滑構造におけるオイルレシーバは、設けられた傾斜が一方向であるので、潤滑油を供給できるのは1箇所のみとなってしまう。このため、複数箇所、例えば回転軸を軸承する2箇所の軸受部に潤滑油を供給しようとすると複数個のオイルレシーバが必要となり、材料コスト及び組み付け作業コストが増加する。また、狭隘な変速機内に複数のオイルレシーバを設けるスペースの確保が難しく、オイルレシーバの形状も制約を受ける。
また、当然ながら潤滑油を効率よく捕集できる位置に大きなオイルレシーバを配設することが望ましいが、配設スペースの制約や潤滑対象部位との位置関係によっては問題が生じる。例えば、オイルレシーバを配設する適当な位置が無い場合や、潤滑油を捕集する開口面積を大きくできない場合などでは、十分な潤滑油量を確保できなくなる。また、オイルレシーバと潤滑対象部位との間に十分な傾斜角度を設けられないと、車両の登降坂、加減速、旋回などの走行状況において、一時的に潤滑油を流下させられなくなる。
本発明は上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、複数箇所の潤滑対象部位に同時に十分な量の潤滑油を供給でき、車両の走行状況に依存せずに潤滑油を安定供給でき、従来よりも低コストで省スペースを実現した車両用変速機の潤滑構造を提供することを課題とする。
本発明の車両用変速機の潤滑構造は、潤滑油が封入されたケースと、前記ケースに軸承されて回転することにより変速機能を発揮するとともに、一部分が前記ケースの底部に滞留する潤滑油に浸漬され、回転することにより前記潤滑油を掻き上げて飛散させる変速機構部と、前記ケースの内側上部に配置されて上方に開口し、飛散する潤滑油を捕集し、前記変速機構部内の潤滑対象部位に向けて流下させるオイルレシーバと、を備える車両用変速機の潤滑構造であって、前記オイルレシーバは、頂点位置から複数の方向にそれぞれ斜め下向きに延在するとともに上方に開口する皿状または溝状の複数個の傾斜レシーバ部、及び各前記傾斜レシーバ部の下側位置からそれぞれ異なる潤滑対象部位に向かう複数個のオイル供給部を一体に有することを特徴とする。
また、前記オイルレシーバの上方に配置されて前記飛散する潤滑油を捕捉し、重力により滴下させるオイル滴下部材をさらに備える、ようにしてもよい。
さらに、前記オイル滴下部材は、捕捉した潤滑油が重力により離れる滴下位置を前記オイルレシーバの前記頂点位置の真上に有することが好ましい。
さらに、前記傾斜レシーバ部の傾斜角度は、車両の最大登坂角度以上とされていることが好ましい。
さらに、前記オイルレシーバは、前記頂点位置に配置されて各前記傾斜レシーバ部の間を仕切る仕切り板を有することが好ましい。
本発明の車両用変速機の潤滑構造では、オイルレシーバは、複数個の傾斜レシーバ部及び複数個のオイル供給部を一体に有している。したがって、1個のオイルレシーバで複数箇所の潤滑対象部位に同時に潤滑油を供給できる。また、オイルレシーバの頂点位置を変更して各傾斜レシーバ部の長さを調整することにより、それぞれの潤滑対象部位への潤滑油の分配比率を自在に設定することができる。また、複数のオイルレシーバを備える従来技術と比較して構成部品点数が削減されるので、材料コスト及び組み付け作業コストを低減できる。さらに、従来よりも少ない設置スペースで済むので、変速機ケース内への設置が容易となる。
また、オイルレシーバの上方にオイル滴下部材をさらに備える態様では、オイルレシーバが直接捕集する潤滑油にオイル滴下部材から滴下される潤滑油が加算されるので、十分な量の潤滑油を供給できる。
さらに、オイル滴下部材の滴下位置がオイルレシーバの頂点位置の真上となる態様では、オイル滴下部材から滴下される潤滑油が各傾斜レシーバ部に分配されるので、複数箇所の潤滑対象部位に確実に十分な量の潤滑油を供給できる。また、オイル滴下部材の滴下位置を変更し、あるいは滴下位置の設定箇所数を変更することで、滴下する潤滑油の各傾斜レシーバ部への分配比率を調整でき、それぞれの潤滑対象部位に所望する分配比率で潤滑油を供給できる。
さらに、傾斜レシーバ部の傾斜角度が車両の最大登坂角度以上とされている態様では、車両の登降坂、加減速、旋回などで潤滑油が傾斜レシーバ部から漏出することがない。したがって、走行状況に依存せずに、安定して良好に潤滑油を供給できる。
さらに、オイルレシーバの頂点位置に仕切り板を有する態様では、車両の急峻な坂道の登降坂や急激な加減速及び旋回により傾斜レシーバ部内で潤滑油が揺動しても、仕切り板を越えて他の傾斜レシーバ部に移動することがない。したがって、それぞれの潤滑対象部位に安定して潤滑油を供給できる。
本発明を実施するための実施形態を、図1〜図4を参考にして説明する。図1は、本発明の実施形態の車両用変速機の潤滑構造1を示す平面断面図である。また、図2は図1の矢印A方向の変速機側方から見た潤滑構造1の側面図であり、図3は図1の矢印B方向の変速機前側から見た潤滑構造1の正面図である。図示されるように、車両用変速機の潤滑構造1は、変速機ケース2、変速機構部を構成する駆動軸3、オイルレシーバ4、及びオイル滴下部材5などにより構成されており、駆動軸3を軸承する2箇所の軸受部31、32に潤滑油を供給するものである。
変速機ケース2は、変速機の外箱であり、前側(図1の右側)に配置されている原動機ケース91と締結ボルト92によって結合され、内部空間を区画している。変速機ケース2の内部空間には所定量の潤滑油が封入されている。原動機ケース91の内部には図略の原動機が配設されており、原動機の出力軸93は、変速機ケース2の内部空間に突出している。出力軸93の後端部付近の外周には外スプライン溝94が形成され、その前側の拡径部95の外周には周方向にシール溝96が刻設されている。拡径部95は、原動機ケース91の内周のシール面97とわずかな距離を有して対向している。シール溝96には環状のシール部材98が圧入されている。シール部材98は、シール溝96底面とシール面97に圧接しており、これによって油密構造が構成されている。
変速機構部は、駆動軸3及び図略の駆動ギヤ、図略の従動軸及び従動ギヤなどにより構成されている。駆動軸3は中空の円筒軸であり、外周面の両端寄りの2箇所に配設された軸受部31、32によって軸承されている。前側の軸受部31は原動機ケース91の内周面に配設され、後側の軸受部32は変速機ケース92の内周面に配設されている。この2つの軸受部31、32が潤滑対象部位である。駆動軸3の前端部付近の内周には内スプライン溝33が形成され、内スプライン溝33は原動機出力軸93の外スプライン溝94に外嵌している。これにより、駆動軸3は原動機に回転連結されて回転駆動される。駆動軸3の外周には、図略の駆動ギヤが一体回転するように設けられている。
図略の従動軸は、駆動軸3の下側(図1の紙面裏側)に配設されて軸承されている。従動軸の外周に一体回転するように設けられた従動ギヤは、駆動軸3の駆動ギヤと噛合して所定の変速比を実現している。駆動ギヤ及び従動ギヤからなる変速ギヤ対の構成には、従来の各種技術を適用できる。また、従動軸の出力側に、別の駆動ギヤ及び従動ギヤからなる別の変速機構部をさらに備えていてもよい。従動ギヤあるいは別の駆動ギヤ及び従動ギヤの少なくとも一部分は、変速機ケース2の底部に滞留する潤滑油中に浸漬されている。したがって、潤滑油中に浸漬された変速機構部の一部分は、回転することによって潤滑油を変速機ケース2の内部空間に掻き上げ飛散させる。
オイルレシーバ4は、変速機ケース2の内部空間の上部に配置されている。図2に示されるように、オイルレシーバ4は、頂点位置から前後方向にそれぞれ斜め下向きに延在する2個の傾斜レシーバ部42、43を有している。各傾斜レシーバ部42、43の傾斜角度θ1、θ2(図2参照)は、車両の最大登坂角度以上とされている。2個の傾斜レシーバ部42、43は、上方に開口する溝形状であり、開口幅W1が底幅W2よりも広くなって上方で拡がっており、潤滑油の捕集に好適な形状となっている(図1及び図3参照)。また、オイルレシーバ4の頂点位置には、2個の傾斜レシーバ部42、43の間を仕切る仕切り板41が立設されている。
前側の傾斜レシーバ部42の下側位置421から直角に折れ曲がって前側の軸受部31に向かうオイル供給部44が設けられている。前側のオイル供給部44は、断面矩形の上方に開いた溝形状となっている。一方、後側の傾斜レシーバ部43の下側位置431から2回直角に折れ曲がって後側の軸受部32に向かうオイル供給部45が設けられている。後側のオイル供給部45は、断面円弧の上方に開いた溝形状となっている。また、前側の傾斜レシーバ部42の下側位置421のオイル供給部44と反対側に、取付部46が突設されている。取り付け部46には割り付きブッシュ47が設けられており、割り付きブッシュ47は変速機ケース2の取り付け穴21に圧入される。これにより、オイルレシーバ4が変速機ケース2に固定取り付けされる。
オイルレシーバ4は、例えば樹脂製として複数の成形型を組み合わせた成型加工により製作することができ、これに限定されない。樹脂成型加工を採用することで、オイルレシーバ4を構成する2つの傾斜レシーバ部42、43、仕切り板41、2つのオイル供給部44、45、取り付け部46、及び割り付きブッシュ47を一体で製作することができる。
オイル滴下部材5は、図2及び図3に示されるように、変速機ケース2内のオイルレシーバ4の上方に配置されている。オイル滴下部材5は、断面が下方に尖った三角形状で、駆動軸3と平行する方向に延在している。詳述すると、オイル滴下部材5の断面の三角形状は、後端51で最も小さく、前方に至るにつれて徐々に大きくなり、途中で急激に大きくなる段差52があり、前端53で最も大きくなっている。段差52よりも後側の後半部54の下縁55は、後端51側で高く、段差52に近い前側で低く、傾斜している。段差51よりも前側の前半部56の下縁57は、段差52に近い後側で高く、前端53側で低く、傾斜している。2つの下縁55、57の傾斜は同程度であり、段差52の真下で不連続になっている。すなわち、段差52の真下で、後半部54の下縁55の前端から前半部56の下縁57の後端に急峻に落ち込んでおり、この位置が重力により潤滑油を滴下させる第1滴下位置58となる。また、前半部56の下縁57の前端が第2滴下位置59となる。
図2に示されるように、オイル滴下部材5の後半部54は後側の傾斜レシーバ部43の上方に配置され、オイル滴下部材5の前半部56は前側の傾斜レシーバ部42の上方に配置されている。また、第1滴下位置58は仕切り板41の真上に配置され、第2滴下位置59は前側の傾斜レシーバ部42の下側位置421の真上に配置されている。
オイル滴下部材5は、例えば樹脂製とすることができる。オイル滴下部材5は、後端51から前端53に向かって断面形状が単調に大きくなっているので、単一の成形型を用いた鋳抜き成型加工により製作することができ、廉価である。ただし、これに限定されず、変速機の内部構造に適した形状、材質、及び製作方法を選択できる。
次に、上述のように構成された実施形態の車両用変速機の潤滑構造1の作用について説明する。図4は、実施形態の変速機の潤滑構造の作用を説明する図であり、(1)は潤滑油の捕捉および捕集作用、(2)は潤滑油の流下および滴下作用、(3)(4)は潤滑油の供給作用、をそれぞれ示している。
原動機が始動されて駆動軸3が回転すると変速機構部が変速機能を発揮し、変速機構部のうち潤滑油中に浸漬された一部分が回転して潤滑油を変速機ケース2の内部空間に掻き上げ飛散させる。図4の(1)に示されるように、潤滑油の一部F1はオイル滴下部材5に飛来し、粘度によって付着し捕捉される。また、潤滑油の別の一部F2はオイルレシーバ4に飛来し、2つの傾斜レシーバ部42、43によって捕集される。
オイル滴下部材5に飛来する潤滑油の量は変速機の内部構造に依存し、図4(2)に示される実施形態では、後半部54に飛来する潤滑油F1Aが頻繁で、前半部56に飛来する潤滑油F1Bは相対的に疎らになっている。オイル滴下部材5の後半部54で捕捉された潤滑油F1Aは、後半部54の側面を流下しつつ下縁55に沿って流下する。そして、矢印F3で示されるように、潤滑油F1Aは第1滴下位置58から仕切り板41に向かって滴下され、仕切り板41を境界として2つの傾斜レシーバ部42、43に分配される。
また、下縁55の途中で滴下された潤滑油F1Aは、後側の傾斜レシーバ部43によって捕集される。オイル滴下部材5の前半部56に飛来して捕捉された潤滑油F1Bは、前半部56の側面を流下しつつ、下縁57に沿って流下する。そして、潤滑油F1Bは、下縁57の途中または第2滴下位置から滴下され(矢印F4参照)、前方の傾斜レシーバ部42によって捕集される。
オイルレシーバ4に飛来する潤滑油量もオイル滴下部材5と同様であり、図4(2)に示されるように、後側の傾斜レシーバ部43に飛来する潤滑油F2Aが頻繁で、前側の傾斜レシーバ部42に飛来する潤滑油F2Bは相対的に疎らになっている。
ここで、後側の傾斜レシーバ部43は最終的には、直接飛来した潤滑油F2A、オイル滴下部材5の後半部54で捕捉されて下縁55の途中で滴下された潤滑油F1A、および第1滴下位置58から滴下されて仕切り板41によって分配された潤滑油F1Aを加算しただけ捕集する。また、前側の傾斜レシーバ部43は最終的には、直接飛来した潤滑油F2B、オイル滴下部材5の前半部56で捕捉されて滴下された潤滑油F1B、および第1滴下位置58から滴下されて仕切り板41によって分配された潤滑油F1Aを加算しただけ捕集する。
後側の傾斜レシーバ部43が捕集した潤滑油は、図4の(3)の後側から見た図に矢印F5で示されるように、傾斜に沿って下側位置431に流下する。その後、潤滑油は、矢印F6で示されるように、オイル供給部45を経由して軸受部32に供給される。前側の傾斜レシーバ部42においても同様で、図4の(4)に矢印F7で示されるように、潤滑油は傾斜に沿って下側位置421に流下し、矢印F8で示されるように、オイル供給部44を経由して軸受部31に供給される。
本実施形態では、2箇所の軸受部31、32に略等量の潤滑油を供給することが好ましい。このため、オイルレシーバ4の頂点位置を中間よりも後側に寄せて、潤滑油が頻繁に飛来する後側の傾斜レシーバ部43を前側の傾斜レシーバ部42よりも短くしている。これにより、潤滑油の前後の分配比率を適正化できる。また、第1滴下位置58を仕切り板41からずらすことによっても、分配比率を調整できるようになっている。したがって、複数箇所の潤滑対象部位に必要とされる潤滑油の量が異なる場合にも、適宜分配比率を適正化できる。
次に、実施形態の車両用変速機の潤滑構造1の効果について、従来構成と比較して説明する。図5は、従来の潤滑構造で用いるオイルレシーバ8の一例であり、(1)は正面図、(2)は側面図である。従来のオイルレシーバ8は、傾斜レシーバ部81が一つで傾斜が一方向であり、オイル供給部82も一つ設けられているだけであり、潤滑油を供給できるのは1箇所のみであった。このため、2箇所の軸受部31、32に潤滑油を供給しようとすると2個のオイルレシーバ8が必要となり、材料コスト及び組み付け作業コストが増加していた。
これに対し、本実施形態では、1個のオイルレシーバ4で2箇所の軸受部31、32に同時に潤滑油を供給できる。また、オイルレシーバ4の頂点位置を変更して前後の傾斜レシーバ部42、43の長さを調整することにより、それぞれの軸受部31、32への潤滑油の分配比率を自在に設定することができる。また、図5に例示された従来構成と比較して部品点数が削減されるので、材料コスト及び組み付け作業コストを低減できる。さらに、従来よりも少ない設置スペースで済むので、変速機ケース2内への設置が容易となる。
また、オイルレシーバ4の上方にオイル滴下部材5をさらに備えており、第1滴下位置58がオイルレシーバ4の頂点位置の真上となっている。したがって、オイルレシーバ4が直接捕集する潤滑油にオイル滴下部材5から滴下される潤滑油が加算され、十分な量の潤滑油を2箇所の軸受部31、32に供給できる。加えて、オイル滴下部材5の滴下位置58、59を変更し、あるいは滴下位置58、59の設定箇所数を変更することで、前後の傾斜レシーバ部42、43への分配比率を調整でき、2箇所の軸受部31、32に所望する分配比率で潤滑油を供給できる。
さらに、傾斜レシーバ部42、43の傾斜角度θ1、θ2が車両の最大登坂角度以上とされているので、車両の登降坂、加減速、旋回などで潤滑油が傾斜レシーバ部42、43から漏出することが生じない。したがって、走行状況に依存せずに、安定して良好に潤滑油を供給できる。なお、登降坂よりも加減速による影響の方が大きいと想定される場合には、加減速を考慮して傾斜角度θ1、θを設定すれば同じ効果が生じる。また、傾斜レシーバ部42、43が車両の前後方向でなく車幅方向に延在する場合には、転回時の遠心力の作用を考慮して傾斜角度θ1、θ2を設定することができ、同じ効果が生じる。
さらに、オイルレシーバ4の頂点位置に傾斜レシーバ部42、43の間を仕切る仕切り板41を有するので、車両の急峻な坂道の登降坂や急激な加減速及び旋回により傾斜レシーバ部42、43内で潤滑油が揺動しても、仕切り板41を越えて逆側の傾斜レシーバ部に移動することがない。したがって、それぞれの軸受部31、32に安定して潤滑油を供給できる。
なお、実施形態で傾斜レシーバ部42、43は2つとしたが、3つ以上とすることもできる。また、本発明は、手動変速機および自動変速機のどちらでも実施でき、さらに、副変速部を有するトランスファ装置や走行用モータの出力側の減速機などの類似の機器、装置に応用することもできる。その他、本発明は様々な応用や変形が可能である。
1:車両用変速機の潤滑構造
2:変速機ケース
3:駆動軸 31、32:軸受部(潤滑対象部位) 33:内スプライン溝
4:オイルレシーバ
41:仕切り板 42、43:傾斜レシーバ部
44、45:オイル供給部 46:取付部 47:割り付きブッシュ
5:オイル滴下部材
52:段差 54:後半部 55:下縁 56:前半部 57:下縁
58:第1滴下位置 59:第2滴下位置
91:原動機ケース 93:出力軸 94:外スプライン溝
W1:開口幅 W2:底幅 θ1、θ2:傾斜角度
F1、F1A、F1B、F2、F2A、F2B:潤滑油
2:変速機ケース
3:駆動軸 31、32:軸受部(潤滑対象部位) 33:内スプライン溝
4:オイルレシーバ
41:仕切り板 42、43:傾斜レシーバ部
44、45:オイル供給部 46:取付部 47:割り付きブッシュ
5:オイル滴下部材
52:段差 54:後半部 55:下縁 56:前半部 57:下縁
58:第1滴下位置 59:第2滴下位置
91:原動機ケース 93:出力軸 94:外スプライン溝
W1:開口幅 W2:底幅 θ1、θ2:傾斜角度
F1、F1A、F1B、F2、F2A、F2B:潤滑油
Claims (5)
- 潤滑油が封入されたケースと、
前記ケースに軸承されて回転することにより変速機能を発揮するとともに、一部分が前記ケースの底部に滞留する潤滑油に浸漬され、回転することにより前記潤滑油を掻き上げて飛散させる変速機構部と、
前記ケースの内側上部に配置されて上方に開口し、飛散する潤滑油を捕集し、前記変速機構部内の潤滑対象部位に向けて流下させるオイルレシーバと、を備える車両用変速機の潤滑構造であって、
前記オイルレシーバは、頂点位置から複数の方向にそれぞれ斜め下向きに延在するとともに上方に開口する皿状または溝状の複数個の傾斜レシーバ部、及び各前記傾斜レシーバ部の下側位置からそれぞれ異なる潤滑対象部位に向かう複数個のオイル供給部を一体に有することを特徴とする車両用変速機の潤滑構造。 - 前記オイルレシーバの上方に配置されて前記飛散する潤滑油を捕捉し、重力により滴下させるオイル滴下部材をさらに備える請求項1に記載の車両用変速機の潤滑構造。
- 前記オイル滴下部材は、捕捉した潤滑油が重力により離れる滴下位置を前記オイルレシーバの前記頂点位置の真上に有する請求項2に記載の車両用変速機の潤滑構造。
- 前記傾斜レシーバ部の傾斜角度は、車両の最大登坂角度以上とされている請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用変速機の潤滑構造。
- 前記オイルレシーバは、前記頂点位置に配置されて各前記傾斜レシーバ部の間を仕切る仕切り板を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用変速機の潤滑構造。
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