JP2013010715A - う蝕予防剤、歯周病予防剤及び口腔用組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】マスリン酸、コロソリン酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含む抗う蝕剤;マスリン酸、コロソリン酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含む抗歯周病剤;マスリン酸、コロソリン酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含むグルコシルトランスフェラーゼ阻害剤;マスリン酸、コロソリン酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種を含む口腔用組成物。
【選択図】なし
Description
例えば特許文献1は、所定の式にて示される五環性産生トリテルペン化合物又はその塩を含むう蝕予防用の口腔用組成物を提案している。また、特許文献2は、トルメンチン酸(Tormentic acid)又はその塩を含むう蝕予防用の口腔用組成物を提案している。しかしながら、これらの化合物は、例えばオレアノール酸はナツメに含まれ、及びトルメンチン酸はシソ科のテンニンソウ属植物に含まれるなど、一部の植物に含まれていることが知られているが、限られた植物にしか存在しない。また、これらの化合物を含む植物は、日本での生産量が少なかったり、食品としての利用が難しかったりするため、これらの化合物を主体としたう蝕予防食品素材は現在ほとんど出回っていない。従って、実際、それらの化合物を食品や口腔用組成物の成分として使用するには困難が伴う。よって、優れた抗う蝕効果又は抗歯周病効果を発揮する化合物であって、実際に利用しやすい化合物が、強く望まれている。
式1
本発明者らはまた、マスリン酸及びコロソリン酸が、S.mutansの菌体外酵素として知られていてショ糖(スクロース)から不溶性グルカンを作る際に働く酵素であるグルコシルトランスフェラーゼ(Glucosyltransferase:GTase)を阻害する作用を有することを見出した。よって、本発明はさらに、マスリン酸、コロソリン酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含むグルコシルトランスフェラーゼ阻害剤である。
本発明の抗う蝕剤、抗歯周病剤及びグルコシルトランスフェラーゼ阻害剤は、口腔用組成物の成分とすることができる。
従って本発明はまた、マスリン酸、コロソリン酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種を含む口腔用組成物である。本発明の口腔用組成物は、う蝕・歯周病予防用の口腔用組成物として使用することができる。
本発明で使用するマスリン酸及びコロソリン酸は、優れた抗う蝕効果、抗歯周病効果及びグルコシルトランスフェラーゼ阻害効果を示し、また、毒性が極めて低く安全性が高い物質であって、口腔用組成物の成分として適している。本発明によって、う蝕・歯周病予防に有用な口腔用組成物を提供することができる。
それらの抽出方法としては、植物からのトリテルペン類化合物の抽出操作に準じて操作を行うことができる。例えば抽出に用いる溶媒は水、有機溶媒、または有機溶媒と水との混合物が挙げられる。有機溶媒の例としてヘキサン、メタノール、エタノール、アセトン、ベンゼン、エチルエーテル、プロピレングリコール、1、3-ブチレングリコール及び酢酸エチルなどが挙げられる。抽出溶媒として、有機溶媒と水との混合物が好ましく、特に水を10〜50質量%程度含む含水エタノール、含水メタノール、又は含水アセトンが好ましく用いられる。
抽出温度は一般に70℃以上、好ましくは80〜120℃、特に好ましくは80℃〜100℃である。抽出する際の原料(無水物換算)に対する抽出溶媒の量は、特に限定されるものではないが、通常2〜20倍量(V/W)が適当であり、好ましくは3〜10倍量(V/W)である。使用する抽出装置としては、例えば回分式、半連続式、連続式など何れの型式の抽出装置を用いてもよいが、好ましくは何れの型式でも密閉型の装置である。そしてまた必要により耐圧性の装置が用いられる。なお抽出に際しては、所望により内容物を攪拌してもよい。
抽出時間は、通常10分〜4時間が適当であり、好ましくは1時間〜2時間程度である。
このようにして得られた抽出物は、状況に応じて、得られた抽出液のまま用いることができるし、あるいは公知の手段で濃縮し、精製してもよい。例えば、得られた抽出液に濃縮、希釈、ろ過などの処理、活性炭等による脱色、脱臭処理などを施してもよい。さらに、該抽出液を濃縮乾固、噴霧乾燥、凍結乾燥などの処理を行い、乾燥物としてもよい。また、得られた抽出物から適宜の手段によって精製したマスリン酸又はコロソリン酸、又はそれらの混合物を得ることができる。
マスリン酸又はコロソリン酸の塩類としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等の無機塩、あるいはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン 、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン等の有機塩などが挙げられる。
本発明の抗う蝕剤、抗歯周病剤及びグルコシルトランスフェラーゼ阻害剤は、口腔内への適用に適した形態に製剤化してもよく、例えばカプセル剤、錠剤、顆粒、細粒剤、散剤、液剤、ゲル、ペーストなどにすることができる。本発明の抗う蝕剤、抗歯周病剤及びグルコシルトランスフェラーゼ阻害剤は、上記有効成分の他に添加剤を含んでもよい。上記有効成分を適当な助剤とともに任意の剤形、例えばカプセル剤、錠剤、顆粒、細粒剤、散剤、液剤、ゲル、ペーストなどに製剤化することができる。
従って本発明は、マスリン酸、コロソリン酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種を含む口腔用組成物にも向けられている。本発明の口腔用組成物の具体的な形態として、例えば粉歯磨剤、練歯磨剤、液状歯磨剤、潤製歯磨剤、液体歯磨剤などの歯磨剤、洗口液(マウスウォッシュ)、水ハミガキ、口中清涼剤、含嗽剤、うがい用錠剤、軟膏状製剤、クリーム状製剤、貼付剤、チューインガム、トローチ剤、キャンディなどが挙げられる。口腔用組成物の剤形は、固形、ペースト状、ジェル状、ゼリー状、液状などのいずれでもよい。
研磨剤:結晶質シリカ、非晶質シリカ、その他の無水ケイ酸、含水ケイ酸といったシリカ系研磨剤、アルミノシリケート、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、不溶性メタリン酸カリウム、酸化チタン、第2リン酸カルシウム・2水和物、第2リン酸カルシウム・無水和物、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム等。研磨剤は一般的に配合量10〜50質量%で使用される。
う蝕原因菌増殖抑制試験
マスリン酸(Cayman Chemical社製)及びコロソリン酸(常磐植物化学研究所社製)を検体として、DMSOに溶解して試験した。また、コントロールにもDMSOを用いた。
(方法)BHI培地(DIFCO社)でS.mutansのc67-1株とMT403R株、およびS.sobrinusのOMZ65株、OMZ 176a株を37℃にて24時間培養後、培地を107cells/mlに希釈し、検体をそれぞれ2分の1希釈系列にして希釈したマイクロタイタープレートに接種し、37℃にて48時間後に判定を行い、最小発育阻止濃度(MIC)(単位:μg/ml)を求めた。
(結果)マスリン酸、コロソリン酸ともにう蝕原因菌のS.mutans c67-1株とMT403R株、およびS.sobrinus OMZ65株とOMZ176a株に対して10 μg/ml以下の濃度で菌の増殖阻害効果を示した(表1)。また、コントロールとして用いたDMSOは、増殖阻害活性を示さなかった。
歯周病菌増殖抑制試験
マスリン酸(Cayman Chemical社製)及びコロソリン酸(常磐植物化学研究所社製)を検体として、試験した。コントロールにはDMSOを用いた。
(方法)BHI培地(DIFCO社)にhemin、Vitamin Kをそれぞれ 5 μg/ml、50 μg/mlの濃度で添加した培地でP.gingivalisを37℃にて24時間培養後、培地を107cells/mlに希釈し、検体をそれぞれ2分の1希釈系列にして希釈したマイクロタイタープレートに接種し、37℃にて48時間後、72時間後に判定を行い、MIC(単位:μg/ml)を求めた。
(結果)マスリン酸は48時間後、72時間後ともに50 μg/mlの濃度で、コロソリン酸は48時間後は25 μg/ml 、72時間後は12.5 μg/mlの濃度でそれぞれP.gingivalisの増殖阻害が確認できた(表2)。
酵素阻害試験
糖から不溶性グルカンをつくる際に働く酵素(Glucosyltransferase:GTase)をS.mutans C67-1株から精製し、マスリン酸およびコロソリン酸が酵素の働きを阻害するかどうかを調べた。
サンプルとして、マスリン酸(Cayman Chemical社製)及びコロソリン酸(常磐植物化学研究所社製)を用い、コントロールにはDMSOを用いた。
(方法)
材料
20%スクロース溶液 75μl
S.mutans C67-1由来粗酵素液 100μl
0.1M リン酸緩衝液 750μl
サンプル(終濃度50 μg/ml) 100μl
デキストランt-10溶液 10μl
上記を混合し、24時間、37℃で反応させた後、0.5ml 0.5N NaOHで沈殿を可溶化した。各反応液20μlについて、フェノール硫酸法にて糖の定量をおこなった。
<結果>
マスリン酸、コロソリン酸ともに50 μg/ml の濃度で、30%以上の酵素阻害を示した。コントロールのDMSO添加群では酵素阻害を示さなかった(表3)。
<実施例1>
下記の組成により、常法に従ってキャンディを製造した(1粒当たり3.8 g)。
配合量(質量%)
マスリン酸又はコロソリン酸 0.5
ガムベース 20.0
水飴 11.5
パラチノース 10.0
キシリトール 10.0
香料 1.0
砂糖 15.0
イソマルトース 20.0
コーンシロップ 12.0
下記の処方により、歯磨剤製造の常法に従って練歯磨剤を調製した。
配合量(質量%)
マスリン酸又はコロソリン酸 0.1
炭酸カルシウム 35.0
ソルビトール 20.0
カルボキシメチルセルロース 1.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
香料 1.0
塩酸クロルヘキシジン 0.01
アラントイン 0.01
グリチルリチン酸ジカリウム 0.01
精製水 41.77
下記の処方により、常法に従って含嗽剤を製造した。
配合量(質量%)
エタノール(90%) 20.0
マスリン酸又はコロソリン酸 1.5
ソジウムアシルタウレート 0.5
ゼラチン 0.4
香料 0.5
精製水 残量
合計 100
下記の処方により、常法に従ってトローチ剤を製造した。
配合量(質量%)
アラビアゴム 7.0
マスリン酸又はコロソリン酸 0.5
乳糖 88.0
香料 1.5
ステアリン酸マグネシウム 適量
合計 100
Claims (4)
- マスリン酸、コロソリン酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含む抗う蝕剤。
- マスリン酸、コロソリン酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含む抗歯周病剤。
- マスリン酸、コロソリン酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含むグルコシルトランスフェラーゼ阻害剤。
- マスリン酸、コロソリン酸及びそれらの塩から選ばれる少なくとも1種を含む口腔用組成物。
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