JP2013001940A - 軸受材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】転動疲労寿命の長い軸受材料を提供することを課題とする。
【解決手段】[マグネシウムの濃度]/[酸素の濃度]≦0.2なる式を満足し、被検面積が3000mmである場合に、(長さ×幅)1/2で算出される介在物平均径が3μm以上である酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物の合計の個数が、1000mmあたり100個以下、介在物平均径が10μm以上の酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物の合計の個数が、1000mmあたり2個以下で、且つ、前記介在物平均径が10μm以上、幅が3μm以上、長さが20μm以上である酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物の組成が、[マグネシウムの濃度]/([アルミニウム濃度]+[カルシウム濃度])≦0.1の式を満足する軸受材料は、B10寿命が優れている。
【選択図】なし

Description

本発明は、軸受材料に関する。
転がり軸受などに用いられる軸受材料には、転動疲労寿命の向上が求められている。軸受の転動疲労寿命は、材料中に存在する硬質の酸化物系非金属介在物に影響されることが広く知られている。そこで、従来、主として材料中の酸素量を低減することによって、酸化物系非金属介在物量の低減を図り、もって転動疲労寿命の向上を図る努力がなされてきた。その結果、精錬技術の進歩とも相まって、現在では材料中の酸素量を質量比にして10ppm以下にまで低減することができるようになってきた。しかし、こうした低酸素化による転動疲労寿命の向上方法はすでに限界に達しているのが実情である。
こうした実情に鑑み最近では、転動疲労寿命のより一層の向上を目指す提案がなされている。例えば、特許文献1には、単位面積あるいは単位体積中の酸化物系非金属介在物の個数により、また、特許文献2には、極値統計によって推定される酸化物系非金属介在物の予測最大径により、それぞれ長寿命を実現する軸受材料が開示されている。しかし、10ppm以下という極低値まで酸素量を下げた超清浄鋼においては、酸化物系非金属介在物のサイズと個数の関係が必ずしも明瞭ではなかった。
さらに、特許文献3には、鋼中の硫化物系非金属介在物の厚さ及び個数、並びに、酸化物系非金属介在物の予測最大径に着目し、被検面積が320mmである場合に厚さ1μm以上の硫化物系非金属介在物の個数を1200個以下、且つ/又は、被検面積が320mmである場合に酸化物系非金属介在物の予測最大径を10μm以下に制御することにより、長寿命を実現する軸受用鋼が開示されている。しかし、酸化物系非金属介在物の予測最大径を規定しても、酸化物系非金属介在物の組成が異なり硬度が変わると、寿命への影響も異なってくる。特に、MgOAl系介在物は硬質なため、介在物の周囲に応力集中が発生しやすく、MgO濃度の高いMgOAl系介在物は疲労寿命に対して有害である。
特開平3−126389号公報 特開平5−25587号公報 特開平9−291340号公報
以上のような従来の技術は、酸化物の個数又は最大径を極低値まで低減することを基幹技術として実現されうるものである。しかしながら、さらなる長寿命化の向上が望まれるなか、酸化物の減少、最大径の減少はもちろんのこと、硬質なMgOAl系介在物の減少が重要になってきており、その制御が必要となっている。
本発明は、転動疲労寿命の長い軸受材料を提供することを課題とする。
以上の課題を解決するため、本発明の一態様に係る軸受材料は、濃度0.80質量%以上1.20質量%以下の炭素、濃度0.15質量%以上0.70質量%以下のケイ素、濃度0.80質量%以下のマンガン、濃度0.50質量%以上2.00質量%以下のクロム、濃度0.020質量%以下のリン、濃度0.0040質量%以下のイオウ、濃度0.005質量%以上0.040質量%以下のアルミニウム、濃度10.0ppm以下の酸素、濃度0.0040質量%以下の窒素、及び濃度0.4ppm以上1.2ppm以下のマグネシウムを含有し、残部が鉄及び不可避的不純物であるとともに、含有するマグネシウムの濃度及び酸素の濃度が、[マグネシウムの濃度]/[酸素の濃度]≦0.2なる式を満足することを特徴とする。
また、上記軸受材料は、被検面積が3000mmである場合に、(長さ×幅)1/2で算出される介在物平均径が3μm以上である酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物の合計の個数が、1000mmあたり100個以下、前記介在物平均径が10μm以上の酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物の合計の個数が、1000mmあたり2個以下で、且つ、前記介在物平均径が10μm以上、幅が3μm以上、長さが20μm以上である酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物が含有するマグネシウムの濃度、アルミニウムの濃度及びカルシウムの濃度が、[マグネシウムの濃度]/([アルミニウム濃度]+[カルシウム濃度])≦0.1なる式を満足することが好ましい。
さらに、上記軸受材料は、濃度0.10質量%以下のモリブデン、濃度0.5質量%以下のニッケル、濃度0.5質量%以下の銅、濃度0.20質量%以下のバナジウム、及び濃度0.20質量%以下のニオブのうち少なくとも1つをさらに含有することが好ましい。
本発明の軸受材料は、濃度0.80質量%以上1.20質量%以下の炭素、濃度0.15質量%以上0.70質量%以下のケイ素、濃度0.80質量%以下のマンガン、濃度0.50質量%以上2.00質量%以下のクロム、濃度0.020質量%以下のリン、濃度0.0040質量%以下のイオウ、濃度0.005質量%以上0.040質量%以下のアルミニウム、濃度10.0ppm以下の酸素、濃度0.0040質量%以下の窒素、及び濃度0.4ppm以上1.2ppm以下のマグネシウムを含有し、残部が鉄及び不可避的不純物であるとともに、含有するマグネシウムの濃度及び酸素の濃度が、[マグネシウムの濃度]/[酸素の濃度]≦0.2なる式を満足するため、転動疲労寿命が優れている。
本発明の軸受材料の一実施形態について、以下に詳細に説明する。本実施形態の軸受材料は、下記の成分組成を有する。
[炭素濃度について]
炭素(C)は、基地に固溶してマルテンサイトの強化に有効に作用する元素であり、焼入れ焼もどし後の強度確保と、それによる転動疲労寿命の向上のために必要な元素である。その含有量が0.80質量%未満では上記の効果が十分に得られず、一方、1.20質量%超過では鋳造時に巨大炭化物が生成し、加工性並びに転動疲労寿命が低下するので、0.80質量%以上1.20質量%以下の範囲に限定した。
[ケイ素濃度について]
ケイ素(Si)は、鋼中に固溶して焼もどし軟化抵抗の増大により焼入れ、焼もどし後の強度を高めて転動疲労寿命を向上させる元素として有効である。こうした目的の下に添加されるSiの含有量は0.15質量%以上0.70質量%以下の範囲とする。その含有量が0.15質量%未満では、上記の効果が十分に得られず、一方0.70質量%超過では過剰であり、脱スケール性が悪化するためである。
[マンガン濃度について]
マンガン(Mn)は、鋼の焼入れ性を向上させることにより基地マルテンサイトの靭性、硬度を向上させ、転動疲労寿命を向上させる元素として有効である。こうした目的のためには0.80質量%以下の添加であれば十分である。
[クロム濃度について]
クロム(Cr)は、焼入れ性の向上と安定した炭化物の形成を通じて、強度の向上並びに耐摩耗性を向上させ、ひいては転動疲労寿命を向上させる成分である。こうした効果を得るためには、0.50質量%以上2.00質量%以下の添加が必要である。その含有量が0.50質量%未満では上記の効果が十分に得られず、一方2.00質量%超過では、その添加効果は向上せず、鋼材硬さを低下させ転動疲労寿命に悪影響を与える恐れがある。
[リン濃度について]
リン(P)は、鋼の靱性並びに転動疲労寿命を低下させることから可能な限り低いことが望ましく、その許容上限は0.020質量%としなければならない。望ましくは0.015質量%以下である。
[イオウ濃度について]
イオウ(S)は、凝固時、熱処理時にMnと結合してMnSを形成し、また、CaOAl系介在物のCaOと反応しCaSを形成する。特に、CaOAl系介在物の周囲にはMnSやCaSを形成しやすく、酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物の径が増大する。また、酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物の周囲のMnSは主にビレット圧延時の冷却過程において酸化物を核として生成するが、その際に酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物の周囲にMn欠乏層が生成するため、酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物の周囲は脆弱になる。その結果、鋼球の圧砕時において強度が低下する。したがって、酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物の周囲へのMnSの析出は極力抑制することが重要である。S濃度が高いと疲労寿命や圧砕強度が低下することから、0.004質量%を上限とする。望ましくは0.002質量%以下である。
[酸素濃度について]
酸素(O)は、硬質の酸化物系非金属介在物を生成して、転動疲労寿命を低下させることから、低いほど望ましいが、その含有量は10.0ppmまでは許容される。よって、その上限の含有量を10.0ppmとする。望ましくは8.0ppm以下である。
[窒素濃度について]
窒素(N)は、硬質なTiN、AlNを形成して転動疲労寿命を低下させることから低いことが望ましいが、その含有量は0.0040質量%までは許容される。よって、その上限の含有量を0.0040質量%とする。
[アルミニウム濃度について]
アルミニウム(Al)は、脱酸元素であり、酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物を低減するためには重要な元素である。こうした目的を達成するためには、Alの含有量は0.005質量%以上とする必要がある。ただし、0.040質量%を超えて添加しても酸素濃度は大きく低減せず、むしろ、AlNの生成が転動疲労寿命を低下させることから、その上限の含有量は0.040質量%とする。
[マグネシウム濃度について]
マグネシウム(Mg)は、酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物を低減するためには重要な元素である。その含有量が高いと、硬質なMgOAl系介在物が増加すると共に、粗大なAl系介在物が増加し、転動疲労寿命が低下する。そこで、転動疲労寿命とマグネシウム濃度との関係を調査した結果、マグネシウム濃度が1.2ppm超過では、粗大で圧延方向に連なったMgOAl系介在物が増加して転動疲労寿命が低下することがわかった。また、マグネシウム濃度が0.4ppm未満であると、介在物平均径が10μm以上のAl系介在物が増加して転動疲労寿命が低下することがわかった。こうした結果から、マグネシウムの含有量は0.4ppm以上1.2ppm以下の範囲とする。
なお、マグネシウム濃度の分析は、塩酸、硝酸、フッ化水素酸の混酸でマイクロ波加圧分解した後、メチルイソブチルケトン(MIBK)抽出法で鉄を除去し、誘導結合プラズマ(ICP)質量分析法で定量を行う、マイクロ波加圧分解−MIBK除鉄−ICP質量分析法にて行った。また、空試験値の繰り返し精度から得られた本分析方法の定量下限(空試験値の標準偏差に10を乗じて求めた値)は0.2ppmである。
[[マグネシウムの濃度]/[酸素の濃度]≦0.2について]
転動疲労寿命とマグネシウム濃度との関係の上記調査結果により、[マグネシウムの濃度]/[酸素の濃度]の値が0.2超過では、粗大で圧延方向に連なったMgOAl系介在物が増加して転動疲労寿命が低下することがわかった。こうした結果から、[マグネシウムの濃度]/[酸素の濃度]≦0.2の式を満たす必要がある。
[モリブデン濃度について]
モリブデン(Mo)は、焼入れ性を向上させるのに有効な元素であり、必要に応じて添加する。ただし、高価な元素であるため、焼入れ性のより一層の向上が必要な場合にのみ添加する。こうした目的の下に添加されるMoの含有量は、0.10質量%以下の範囲での添加で十分である。
[ニッケル濃度について]
ニッケル(Ni)は、焼入れ性を向上させるのに有効な元素であり、鋼材の靭性を向上させるため、必要に応じて添加する。しかしながら、0.5質量%超過ではその効果は飽和し、また、高価な元素であるため、0.5質量%を上限とする。
[銅濃度について]
銅(Cu)は、焼入れ性を向上させるのに有効な元素であり、必要に応じて添加する。こうした目的のもとに添加されるCuの上限の量は0.5質量%とする。0.5質量%超過では鋼材の表面に割れが発生するおそれがあるので、上限は0.5質量%とすることが好ましい。より好ましくは0.2質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下である。
[バナジウム濃度について]
バナジウム(V)は、鋼中でC、Nと結合し析出強化元素として作用する。また、焼もどし軟化抵抗性を向上させる元素でもあり、これらの効果により疲労強度を向上させるため、必要に応じて添加する。しかしながら、0.20質量%を超えて含有させてもその効果は飽和し、また、高価な元素でもあるため、添加量の上限は0.20質量%とする。
[ニオブ濃度について]
ニオブ(Nb)は、焼入れ性の向上効果があるだけでなく、鋼中でC、Nと結合し析出強化元素として作用する。また、焼もどし軟化抵抗性を向上させる元素でもあり、これらの効果によって疲労強度を向上させるため、必要に応じて添加する。しかしながら、0.20質量%を超えて含有させてもその効果は飽和し、また、高価な元素でもあるため、0.20質量%を上限とする。
次に、この軸受材料の転動疲労寿命や圧砕強度のより一層の向上のためには、さらに鋼中に不可避に生成する酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物の存在形態及び組成について、以下の条件を採用することが有効であることがわかった。
即ち、鋼中の酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物の形態に関しては、熱間圧延後の製品丸棒の圧延方向縦断面を顕微鏡観察したとき、以下のような介在物形態、組成を有することが転動疲労寿命、圧砕強度の向上に有効である。
まず、酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物の最大径については、直径60mmの丸棒の1/4厚部で圧延方向に平行な断面から検鏡サンプルを作製し、被検面積が3000mmである場合に、(長さ×幅)1/2で算出される介在物平均径が3μm以上である酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物の合計の個数が、1000mmあたり100個以下、前記介在物平均径が10μm以上の酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物の合計の個数が、1000mmあたり2個以下である必要がある。介在物平均径が3μm以上である酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物の合計の個数が、1000mmあたり100個超過であること、及び、前記介在物平均径が10μm以上の酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物の合計の個数が、1000mmあたり2個超過であることのうち少なくとも1つを満たした場合、転動疲労寿命は低下する。
さらに、マグネシウム濃度が1.2ppm超過であり、且つ、[マグネシウムの濃度]/[酸素の濃度]の値が0.2超過である場合には、上記検鏡サンプル中において、前記介在物平均径が10μm以上、幅が3μm以上、長さが20μm以上である酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物が含有するマグネシウムの濃度、アルミニウムの濃度及びカルシウムの濃度が、[マグネシウムの濃度]/([アルミニウム濃度]+[カルシウム濃度])≦0.1なる式を満たさなくなり、[マグネシウムの濃度]/([アルミニウム濃度]+[カルシウム濃度])の値が0.1超過となり、硬質なMgOAl系介在物が連なって存在することとなった。その結果、転動疲労寿命が低下することが明らかとなった。なお、酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物が含有するマグネシウムの濃度、アルミニウムの濃度及びカルシウムの濃度については、EPMA(電子線マイクロ分析法)、SEM(走査型電子顕微鏡)及びEDX(エネルギー分散型X線分光法)により、上記介在物の組成を定量することによって求めた。
したがって、マグネシウム濃度を1.2ppm以下とし、且つ、[マグネシウムの濃度]/[酸素の濃度]の値を0.2以下とする必要がある。また、前記介在物平均径が10μm以上、幅が3μm以上、長さが20μm以上である酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物が含有するマグネシウムの濃度、アルミニウムの濃度及びカルシウムの濃度が、[マグネシウムの濃度]/([アルミニウム濃度]+[カルシウム濃度])≦0.1なる式を満たすことが好ましい。
なお、転動疲労寿命の試験方法は、以下の通りである。直径60mmの製品丸棒を輪切りにし、それに通常の焼入れ及び低温焼戻しの熱処理を施した後に、表面を機械加工して円盤状試験片とする。そして、この円盤状試験片をスラスト型転動疲労試験機に装着して、剥離が発生するまでの負荷回数を測定し、試験片数の10%が疲労破壊し、剥離する寿命をワイブル確率紙により求めた。
以上説明したように、鋼組成と、酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物の形態、個数、並びに組成とを制御すると、優れた転動疲労寿命を有する軸受材料を得ることができる。特に、MgOAl系介在物の生成抑止と、酸化物系非金属介在物の周囲への硫化物の生成抑止が重要である。このような軸受材料は、玉軸受等の転がり軸受の材料として好適であり、本実施形態の軸受材料を用いれば、優れた転動疲労寿命を有する転がり軸受を製造することができる。
以下に、本実施形態の実施条件と得られた効果について具体的に示す。本実施形態の鋼材成分に基づいて高炭素クロム軸受鋼を製造した。本実施例においては、高炉出銑工程、溶銑予備処理工程、転炉における一次精錬工程、加熱撹拌精錬処理(LF)工程、RH真空脱ガス処理工程、連続鋳造工程という順序で高炭素クロム軸受鋼を製造した。
表1,2に示す鋼組成(Fe以外の主要組成のみ示す)からなる軸受材料を上記の順序により溶製し、連続鋳造によりブルーム鋳片(300×400mm断面)を製造した。このブルーム鋳片に対して所定の加熱、均熱拡散処理を施した後に、直径215mmのビレットに圧延した。このビレットをさらに熱間圧延により直径60mmの棒鋼とし、次に炭化物を球状化するために焼鈍し処理を行い、製品丸棒とした。この製品丸棒の1/4厚部の位置より分析試料を採取し、各成分濃度についてICP分析を行うと共に、マグネシウム濃度については、前述のマイクロ波加圧分解−MIBK除鉄−ICP質量分析法を用いて分析を行った。
この製品丸棒の1/4厚部における圧延方向の縦断面を、検鏡法により観察した。被検面積は3000mmである。そして、(長さ×幅)1/2で算出される介在物平均径が3μm以上である酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物の合計の個数、及び、介在物平均径が10μm以上である酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物の合計の個数をそれぞれ測定した。また、幅が3μm以上、長さが20μm以上である酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物をランダムに20個以上抽出し、SEM(走査型電子顕微鏡)及びEDX(エネルギー分散型X線分光法)により平均組成を定量した。そして、酸化物及び硫化物に換算して、酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物中のマグネシウム濃度、カルシウム濃度、及び、アルミニウム濃度を測定した。
また、転動疲労寿命の試験は、上記製品丸棒を輪切りにして円盤に粗加工し、通常の焼入れ及び低温焼戻しの熱処理を施した後に、表面を機械仕上げ加工して試験片を製作した。この試験片を用いて転動疲労寿命試験を行った。この転動疲労寿命試験には森式スラスト型転動疲労試験機を用い、ヘルツ最大接触応力は5260MPa、繰り返し応力数は30Hz、♯68タービン油による潤滑という条件で行った。試験は、試験片が剥離するまでの負荷回数を測定し、その試験結果がワイブル分布に従うものとして、試験片数の10%が疲労破壊する寿命(B10寿命)をワイブル確率紙により求めた。
表1及び表2に、本実施例及び比較例の高炭素クロム軸受鋼の鋼材成分、マグネシウムの濃度及び酸素の濃度の、[マグネシウムの濃度]/[酸素の濃度]の値、高炭素クロム軸受鋼に含まれる酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物の合計の個数、前記介在物平均径が10μm以上、幅が3μm以上、長さが20μm以上である酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物が含有するマグネシウムの濃度、アルミニウムの濃度及びカルシウムの濃度の、[マグネシウムの濃度]/([アルミニウム濃度]+[カルシウム濃度])の値、並びに、B10寿命を示す。なお、B10寿命については、5×10回以上であった場合はB10寿命が長寿命であると評価し、5×10回未満であった場合はB10寿命が不十分であると評価した。
Figure 2013001940
Figure 2013001940
本実施例の高炭素クロム軸受鋼は、[マグネシウムの濃度]/[酸素の濃度]≦0.2なる式を満足し、被検面積が3000mmである場合に、(長さ×幅)1/2で算出される介在物平均径が3μm以上である酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物の合計の個数が、1000mmあたり100個以下、介在物平均径が10μm以上の酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物の合計の個数が、1000mmあたり2個以下で、且つ、前記介在物平均径が10μm以上、幅が3μm以上、長さが20μm以上である酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物の組成が、[マグネシウムの濃度]/([アルミニウム濃度]+[カルシウム濃度])≦0.1の式を満足するため、上記条件を満たしていない比較例に比べてB10寿命が優れている。
なお、表1及び2において「T.O」とは、鋼中の全酸素濃度を示し、「T.Mg」とは、鋼中の全マグネシウム濃度を示している。また、表1及び2において「酸化物及び硫化物含有酸化物」とは、酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物を示している。

Claims (3)

  1. 濃度0.80質量%以上1.20質量%以下の炭素、濃度0.15質量%以上0.70質量%以下のケイ素、濃度0.80質量%以下のマンガン、濃度0.50質量%以上2.00質量%以下のクロム、濃度0.020質量%以下のリン、濃度0.0040質量%以下のイオウ、濃度0.005質量%以上0.040質量%以下のアルミニウム、濃度10.0ppm以下の酸素、濃度0.0040質量%以下の窒素、及び濃度0.4ppm以上1.2ppm以下のマグネシウムを含有し、残部が鉄及び不可避的不純物であるとともに、含有するマグネシウムの濃度及び酸素の濃度が、[マグネシウムの濃度]/[酸素の濃度]≦0.2なる式を満足することを特徴とする軸受材料。
  2. 被検面積が3000mmである場合に、(長さ×幅)1/2で算出される介在物平均径が3μm以上である酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物の合計の個数が、1000mmあたり100個以下、前記介在物平均径が10μm以上の酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物の合計の個数が、1000mmあたり2個以下で、且つ、前記介在物平均径が10μm以上、幅が3μm以上、長さが20μm以上である酸化物系非金属介在物及び硫化物含有酸化物系非金属介在物が含有するマグネシウムの濃度、アルミニウムの濃度及びカルシウムの濃度が、[マグネシウムの濃度]/([アルミニウム濃度]+[カルシウム濃度])≦0.1なる式を満足することを特徴とする請求項1に記載の軸受材料。
  3. 濃度0.10質量%以下のモリブデン、濃度0.5質量%以下のニッケル、濃度0.5質量%以下の銅、濃度0.20質量%以下のバナジウム、及び濃度0.20質量%以下のニオブのうち少なくとも1つをさらに含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の軸受材料。
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