JP2013001851A - カーボンナノチューブ含有樹脂組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】CNTと、CNTと分子間相互作用を発現する官能基又は骨格を有する樹脂(例えば、ポリビニルブチラール樹脂)と、樹脂に対するアルコール系溶媒(例えば、メタノール)と、を含む混合液であって、アルコール系溶媒を100質量部とした場合に樹脂が1〜35質量部であり、カーボンナノチューブが0.005〜0.1質量部である、混合液に超音波を課してカーボンナノチューブをアルコール系溶媒内で分散させる工程と、この工程を経た混合液からアルコール系溶媒を除去する工程と、を備える。この方法により得られる組成物は、CNTと樹脂とを含み、樹脂100質量部に対して、CNTが0.5〜10質量部含まれる。
【選択図】図1
Description
また、界面活性剤のような分散剤を用いてCNTの分散を図ることもできるが、界面活性剤等が第三成分として混入し、最終製品であるCNT樹脂複合材の特性においてこれらの異物による耐熱性低下及び剛性低下などの影響が危惧されるという問題がある。
前記分散工程を経た混合液から前記アルコール系溶媒を除去する溶媒除去工程と、を備えることを要旨とする。
前記樹脂100質量部に対して、前記カーボンナノチューブが0.01〜10質量部含まれることを要旨とする。
上記樹脂が有する官能基又は骨格が、炭素五員環構造、炭素六員環構造、複素五員環構造、及び複素六員環構造のうちのいずれかの環構造を有する場合には、CNTに対する親和性がより優れた樹脂とすることができ、短繊維化を抑制しつつ樹脂中へのCNTの分散性を向上させることができる。
上記樹脂が有する官能基又は骨格が、上記式(1)に示される複素六員環構造を有する骨格である場合には、CNTに対する親和性が更に優れた樹脂とすることができ、短繊維化を抑制しつつ樹脂中へのCNTの分散性をより向上させることができる。
上記式(1)に含まれるRが、−C3H7である場合には、CNTに対する親和性がとりわけ優れた樹脂とすることができ、短繊維化を抑制しつつ樹脂中へのCNTの分散性を更に向上させることができる。
上記樹脂が有する官能基又は骨格が、炭素五員環構造、炭素六員環構造、複素五員環構造、及び複素六員環構造のうちのいずれかの環構造を有する場合には、CNTに対する親和性がより優れた樹脂とすることができ、短繊維化を抑制しつつ樹脂中へのCNTの分散性を向上させることができる。
上記樹脂が有する官能基又は骨格が、上記式(1)に示される複素六員環構造を有する骨格である場合には、CNTに対する親和性が更に優れた樹脂とすることができ、短繊維化を抑制しつつ樹脂中へのCNTの分散性をより向上させることができる。
上記式(1)に含まれるRが、−C3H7である場合には、CNTに対する親和性がよりわけ優れた樹脂とすることができ、短繊維化を抑制しつつ樹脂中へのCNTの分散性を更に向上させることができる。
本方法は、分散工程と、溶媒除去工程と、を備える。
上記「分散工程」は、CNTと、CNTと分子間相互作用を発現する官能基又は骨格を有する樹脂と、樹脂に対するアルコール系溶媒と、を含む混合液であって、アルコール系溶媒を100質量部とした場合に樹脂が1〜35質量部であり、CNTが0.005〜0.1質量部である、混合液に超音波を課して前記カーボンナノチューブを前記アルコール系溶媒内で分散させる分散工程である。
上記のうちπ−π相互作用としては、CNTを構成する炭素六員環のπ電子と、樹脂が備えた炭素六員環構造(フェニル基など)によるπ電子と、の相互作用が挙げられる。樹脂が有する炭素六員環構造は、樹脂の主骨格に含まれても良く、側鎖に含まれても良く、官能基として含まれてもよい。このような樹脂としては、ポリスチレン、ポリブチレンテレフタレート、各種芳香族ナイロン等が挙げられる。
また、上記その他の相互作用としては、CNTを構成する炭素六員環のπ電子と、樹脂が備えたS、O及びN等の原子を含む複素環構造による相互作用が挙げられる。樹脂が有する複素環構造は、樹脂の主骨格に含まれても良く、側鎖に含まれても良く、官能基として含まれてもよい。このような複素環構造としては、ピロリシン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール等の複素五員環化合物が有する複素五員環構造、及びピペリジン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオピラン、ピラシン、モルホリン、チアジン等の複素六員環化合物が有する複素六員環構造などが挙げられる。
本発明では、このPVBのような分子間相互作用を発揮できる樹脂が、CNTに対して、マトリックス樹脂として機能するとともに、界面活性剤としても機能することができる。このため、界面活性剤を配合しなくとも、CNT粒状物の解繊を行うことができ、界面活性剤を配合することにより特性低下を生じないという優れた利点を有する。
上記アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロピルアルコ−ル、ブチルアルコ−ル、ノニルアルコ−ル、デシルアルコ−ル、ラウリルアルコ−ル、ステアリルアルコ−ル、ベンジルアルコ−ル、トリフェニルカルビノ−ル、エチレングリコ−ル、1,2−プロパンジオ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、クレゾール、フェノール、キシレノール等の各種モノアルコール系溶媒、多価アルコール系溶媒、芳香族アルコール系溶媒が挙げられる。これらのなかでも、モノアルコール系溶媒が好ましく、更には、メタノール及びエタノールが好ましい。
一方、CNTの含有量が0.005〜0.1質量部の範囲では、得られるCNT含有樹脂組成物の機械的強度を向上させる効果に特に優れている。また、CNTを0.1質量部以上含有してもよいが、コスト的な観点からこれ以上の高配合を行うメリットが小さい。CNTの含有量は、更に0.005〜0.05質量部とすることができ、特に0.008〜0.02質量部とすることができる。
また、混合液に含まれるアルコール系溶媒の含有量は特に限定されないが、通常、100〜100000質量部であり、更に500〜50000質量部とすることができ、特に5000〜20000質量部とすることができる。
このような第2の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリル樹脂などのビニル化合物等が挙げられる。これらの第2の樹脂は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
更に、超音波処理における出力も特に限定されないが、50〜200Wとすることができ、50〜100Wが好ましく、80〜100Wがより好ましい。
また、超音波による分散を行う際の温度も特に限定されず、常温で行うことができるが、30〜80℃程度に加温して行うこともできる。
本発明のCNT含有樹脂組成物は、CNTと、CNTと分子間相互作用を発現する官能基又は骨格を有する樹脂と、を含むカーボンナノチューブ含有樹脂組成物であって、
樹脂100質量部に対して、カーボンナノチューブが0.01〜10質量部(好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.5〜3質量部)含まれることを特徴とする。この樹脂組成物は、上記本発明の製造方法により得ることができる。
本発明の組成物によれば、樹脂中にCNTが解繊された状態であって且つ短繊維化が抑制されて含有されているために、マトリックスとなる上記樹脂の機械的特性を著しく向上させることができる。
また、上記製造方法において前述したように、上記樹脂を第1の樹脂とした場合に、他の樹脂である第2の樹脂を含有できる。
この他、本発明の組成物には、他の成分としては、充填剤、帯電防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、難燃剤、老化防止剤、可塑剤、抗菌剤、滑剤、着色剤等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これら他の成分を含む場合は、他の成分は、通常、0.05〜1質量部である。
[1]実施例1
下記に示すCNT、樹脂及びアルコール溶媒を用意した。
CNT;多層カーボンナノチューブ(保土谷化学製、MWNT−7)
樹脂;ポリビニルブチラール樹脂(和光純薬工業株式会社製、平均重合度2400)
アルコール系溶媒;メタノール(アルコール溶媒)
その後、分散工程を行った混合液を、PFA製シャーレ(株式会社フロンケミカル製、製品名「テフロン(登録商標)PFAペトリ−皿」)へ滴下した後、三日間開放放置して、アルコール系溶媒であるメタノールを留去した。更に、真空乾燥機内に5時間置いてメタノールを完全除去して、PFA製シャーレの底に、厚さ0.3μmのCNT含有樹脂組成物からなる膜を得た。
分散工程において、超音波を混合液に課す時間を表1に示す値に各々変化させたこと以外は、上記[1]と同様にして、厚さ0.3μmのCNT含有樹脂組成物からなる膜を得た。
上記[1]及び[2]で得られた各膜から、幅4mm×長さ37mmの試験片を切り出し、この試験片を用いて、プラスチックの動的機械特性の試験方法JIS K7244−4(引張振動)に準拠して、動的粘弾性測定装置(Triton Technology.Ltd社製、型式「Tritec 2000 DMA」)を用いて温度40℃における動的粘弾性測定を行った。そして、得られたデータから貯蔵弾性率を算出し、その値を表1に併記した。更に、この貯蔵弾性率と分散工程における超音波分散時間との相関をグラフにして図1に示した。
同様に、実施例2(超音波分散30分)の試験片の表面を光学顕微鏡で100倍に拡大した画像を図4に、実施例2(超音波分散30分)の試験片の表面を電子顕微鏡で2000倍に拡大した画像を図5に示した。
更に、実施例4(超音波分散120分)の試験片の表面を光学顕微鏡で100倍に拡大した画像を図6に、実施例4(超音波分散120分)の試験片の表面を電子顕微鏡で2000倍に拡大した画像を図7に示した。
尚、図2、図4及び図6における黒色部分はCNTであり、灰色部分はPVB樹脂である。また、図3、図5及び図7における繊維状に映しだされている白色部分はCNTである。
上記[3]の結果から、CNTに対して分子間相互作用を発現できる樹脂を用いることにより、周波数20kHzの汎用的なバス式超音波処理装置を用いた簡便な分散処理だけでCNT粒状物を解繊し、混合液内に分散させることが可能であることが分かる。そして、その効果は、比較例1の貯蔵弾性率0.91GPaに対して実施例2の貯蔵弾性率1.67GPaは1.84倍に相当し、比較例1に対して実施例2の貯蔵弾性率は85%もの伸びを示していることからも、著しく大きなものであることが分かる(図1参照)。
20;樹脂、21;環構造。
Claims (8)
- カーボンナノチューブと、前記カーボンナノチューブと分子間相互作用を発現する官能基又は骨格を有する樹脂と、前記樹脂に対するアルコール系溶媒と、を含む混合液であって、前記アルコール系溶媒を100質量部とした場合に前記樹脂が1〜35質量部であり、前記カーボンナノチューブが0.005〜0.1質量部である、混合液に超音波を課して前記カーボンナノチューブを前記アルコール系溶媒内で分散させる分散工程と、
前記分散工程を経た混合液から前記アルコール系溶媒を除去する溶媒除去工程と、を備えることを特徴とするカーボンナノチューブ含有樹脂組成物の製造方法。 - 前記樹脂が有する前記官能基又は骨格は、炭素五員環構造、炭素六員環構造、複素五員環構造、及び複素六員環構造のうちのいずれかの環構造を有する請求項1に記載のカーボンナノチューブ含有樹脂組成物の製造方法。
- 前記樹脂が有する前記骨格は、下記式(1)に示される複素六員環構造を有する請求項2に記載のカーボンナノチューブ含有樹脂組成物の製造方法。
- 前記式(1)に含まれる前記Rは、−C3H7である請求項3に記載のカーボンナノチューブ含有樹脂組成物の製造方法。
- カーボンナノチューブと、前記カーボンナノチューブと分子間相互作用を発現する官能基又は骨格を有する樹脂と、を含むカーボンナノチューブ含有樹脂組成物であって、
前記樹脂100質量部に対して、前記カーボンナノチューブが0.01〜10質量部含まれることを特徴とするカーボンナノチューブ含有樹脂組成物。 - 前記樹脂が有する前記官能基又は骨格は、炭素五員環構造、炭素六員環構造、複素五員環構造、及び複素六員環構造のうちのいずれかの環構造を有する請求項5に記載のカーボンナノチューブ含有樹脂組成物。
- 前記樹脂が有する前記骨格は、下記式(1)に示される複素六員環構造を有する請求項6に記載のカーボンナノチューブ含有樹脂組成物。
- 前記式(1)に含まれる前記Rは、−C3H7である請求項7に記載のカーボンナノチューブ含有樹脂組成物。
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