多くの投与では、患者に入る液剤またはフォーミュラの量を正確に制御することが必要である。この場合には、患者へ補給される液剤の流量を制御するために、注入セットと共に注入ポンプなどの制御装置が配置される。ポンプなどを使用する投与では、流れを調節するために用いられるクランプは、一般に、ポンプの適切な機能を妨げないように最大限に開放される。クランプは、経腸補給ポンプまたは注入ポンプが経腸セットまたは注入セットを通じた液体の流れを制御することを見込んで開放される。しかし、緊急事態または他の注意散漫によって、医療従事者が経腸補給ポンプまたは注入ポンプに経腸または注入セットを適切に装着することが妨げられる場合がある。また、ポンプの運転中に経腸または注入セットがポンプから不注意に取り外される場合がある。
経腸または注入セットがポンプに適切に装着されていなくてクランプを開放してしまうと、フリーフローとして知られる状態がしばしば生じる。重力は、ポンプまたは他の調節装置により抑制されずに液剤またはフォーミュラを患者へ自由に流入させる。フリーフロー状態では、所望量の数倍に及ぶ多量の液剤またはフォーミュラを比較的短期間に患者へ供給してしまう。これは、液剤が強い薬剤を含んでいたり、患者の体が液剤またはフォーミュラの大量の流入に適応するのに十分なほど体力的に強くなかったりする場合、特に危険を及ぼす場合がある。よって、経腸または注入セットがポンプまたは他の調節手段に適当に装着されていない場合に、フリーフロー状態を防止する装置が必要である。また、フリーフロー状態の発生に関して耐タンパー性を有する(tamper−resistant)ことが重要である。このような経腸補給または注入セットは、数年に及ぶ長期間の保管をさらに要求される。このため、使用中の一様な流れ特性からの逸脱をもたらしうるシリコンチューブの付着変形および連続変形を回避するべきである。
前述したフリーフロー状態を回避するためにいくつかのアプローチがとられている。そのうちの一つは、国際公開第96/030679A1号パンフレットに開示されている。そこでは、ピンチクリップ閉塞体は、少なくとも部分的に筐体内に組み込まれた1以上のアームを伴うクランプ機構を用いている。クランプ機構は、アームが注入セットを通じた流れを閉塞する位置と、アームが注入セットを通じたフリーフローを可能にする位置との間でアームを移動することにより、調節機構として働く。これに関連する一つの問題は、圧迫具、締結具または同等品など他の外部要素によりばね力に抵抗する方法でピンチクリップ閉塞体を操作することができる点にある。また、国際公開第96/030679A1号パンフレットに係るピンチクリップ閉塞体内の金属ばねがプラスチック材料で作られておらず、従って他のプラスチック構成要素と共に再生利用する可能性を妨げる。これは、注入セットの再生利用工程を煩雑にし、従ってより高コストにする。ピンチクリップ閉塞体を含む注入セットの他の欠点は、注入または経腸補給ポンプへの装着がかなり複雑である点にある。つまり、そのために形成されて回転ユニットなどを包む穴にシリコンチューブを正確に配置しなければならない。さらに、この既知のピンチクリップ閉塞体の主要な欠点は、カニューレ(prone)を伴うキャップをピンチクリップ閉塞体内に残してチューブを開放するときには、注入セットをポンプへ取り付けていなくてもフリーフロー状態が生じる点にある。
米国特許第4689043号明細書は、蠕動IV注入ポンプと共に使用されるIVチューブアクティベータを説明している。IVチューブアクティベータは、IVチューブをポンプに係合する際、続いてIVチューブの係合を解く際に、チューブに関連付けられたクランプを閉鎖するための手段を備える。このIVチューブアクティベータも、かなり複雑な構造を有しており、クランプされたシリコンチューブをその使用前に注入ポンプ内に保管する問題を解決していない。また。IVチューブアクティベータと共に注入セットを設定することは、多くの様々な構成要素に起因して煩雑であり、かつ間違いを生じ易い。
このため、本発明の課題は、患者へ栄養を補給しまたは医療液剤を注入するように構成された経腸補給または注入ポンプにチューブを係合するためのピンチクランプ組立体を提供することにある。ピンチクランプ組立体は、比較的簡素な構造を備え、いつでも機能するフリーフロー防止機構を確保し、シリコンチューブの長期保管を可能にし、再生利用を容易に可能とするように使用済み材料に関して一様である。
この課題は、請求項1の特徴により解決される。本発明の有利な実施形態は、従属項の主題である。
本発明によれば、患者へ栄養を補給しまたは医療液剤を注入するように構成された経腸補給または注入ポンプにチューブを係合するためのピンチクランプ組立体は、ベースに動作可能に係合した状態でチューブの圧送部を保持するための保持手段、およびコネクタを支持するための支持手段を有するベースと、クランプ面およびロック手段を有するクランプ要素であって、クランプ面が、圧送部に係合可能であると共に、圧送部を通じた液体の流れを可能にする開放位置と、クランプ要素により圧送部を閉塞する閉鎖位置との間を移動可能であり、ロック手段が、閉鎖位置で互いに係合するように構成されると共に、クランプ要素を閉鎖位置から開放位置へ持ってくるためにピンチクランプ組立体の外部の解放手段と相互作用するように構成されたクランプ要素と、患者のポート(port)にチューブを接続するためのコネクタであって、ピンチクランプ組立体から取り外し可能なコネクタと、クランプ要素およびコネクタにスライド係合するためのカバー要素であって、ピンチクランプ組立体から取り外し可能なカバー要素とを備える。ピンチクランプ組立体は、クランプ要素が閉鎖位置にあるときにのみ、クランプ要素およびコネクタに対してカバー要素を装着可能または離脱可能であり、カバー要素の装着位置では、クランプ要素を開放位置へもってくることができると共に、コネクタを組立体から取り外すことができず、クランプ要素が、ピンチクランプ組立体を経腸補給または注入ポンプへ装着してカバー要素およびコネクタを取り外すときに、クランプ要素を開放位置へ解放するための解放手段に係合するように構成されたことを特徴とする。
これにより、ピンチクランプ組立体がその出荷状態にあるときには、患者のポートへ接続されるべきコネクタがまだピンチクランプ組立体の一部であるため、フリーフロー状態が防止される。利用者は、組立体からコネクタを取り外し可能にするために、カバー要素を組立体から取り外さなければならない。そして、これは、クランプ要素をその閉鎖位置へ向かわせ、シリコンチューブの圧送部を通じた流れを防止する。これにより、フリーフロー状態は、各コネクタが一端でポートへ接続され、他端で液剤またはフォーミュラ容器へ接続されるときに再び防止される。この状態では、つまりカバー要素とコネクタを取り外した後には、ピンチクランプ組立体を経腸補給または注入ポンプへ挿入することができる。ポンプを挿入するときに、クランプ要素は、解放要素との相互作用により開放される。しかし、シリコンチューブの圧送部が経腸補給または注入ポンプの圧送機構(回転ユニット)の周りに緊密に巻かれており、シリコンチューブを通じた液剤の流れが防止されるので、フリーフロー状態が生じない。よって、本発明に係るピンチクランプ組立体を備える注入セットのフリーフロー状態は、いつも特にその最初の使用前に回避される。
本発明に係るピンチクランプ組立体の他の利点は、クランプ要素がその開放位置にあるので、組立体をその出荷状態で5年などの長期間に亘って保管することができる点にある。また、フリーフロー防止機構は、ピンチクランプ組立体の一体部であり、他の構成要素が回避される。
ピンチクランプ組立体を、単一のポリエステルパウチまたはブリスターパッケージに通常包まれた注入または経腸補給セットの全体として、出荷状態にするために、ピンチクランプ組立体の各構成要素を適宜に組立てなければならず、それにより、シリコンチューブを閉塞するその閉鎖位置へ持ってこられるクランプ要素の上方にカバー要素がスライドされる。しかし、解放手段が直ちにカバー要素に接触し、それによりクランプ要素をその開放位置へ解放するので、流れが閉塞される期間は、最小限に留まる。
また、本発明に係るピンチクランプ組立体は、耐タンパー性を有する。これは、通常の利用者にとって、カバー要素が取り外されているときに、手でクランプ要素を開放することができないためである。適切な工具(経腸補給または注入ポンプを設定する医療従事者が通常入手不能な工具)を用いて組立体を不正操作しようとしない限り、クランプ要素は開放しない。
好ましくは、ベースとクランプ要素は、一体に形成される。これは、ピンチクランプ組立体の小型化を可能にし、製造に関与する部品の数を低減する。
有利な実施形態では、コネクタは、経腸スパイク、IV(intravenous:静脈)スパイク、経腸補給アダプタ、IVルアーロックアダプタまたは他の経腸もしくはIV構成要素である。経腸補給または注入の分野で既知の利用可能な全てのコネクタを使用することができる。
好適な実施形態では、ベースは、ピンチクランプ組立体を経腸補給または注入ポンプに一体に装着可能なカセットとして形成される。カセットは、嵩張らず、しかも小型の構成を備える平坦な構造をもたらす。
カバー要素は、少なくとも部分的にカセットの上方に延びることが好ましい。例えば、カバー要素をクランプ要素と同じ幅にして材料の使用を最小化することができる。しかし、圧送部および他の構成要素に最大の保護をもたらすために、カバー要素がカセット全体を覆うこともできる。
好適な実施形態では、ピンチクランプ組立体は、熱可塑性プラスチックなどの再生利用可能なプラスチック材料で作られ、チューブの圧送部は、シリコンで作られる。これは、この使い捨て装置の再生利用作業を簡素化し煩雑な分別作業を回避することを可能にする。
有利な実施形態では、クランプ要素は、チューブ閉塞部を伴う第1の脚部と、平坦面を伴う第2の脚部と、ばね要素として働く屈曲部と、第1の脚部の自由端にある第1のロック手段と、第2の脚部の自由端にある第2のロック手段とを有し、チューブ閉塞部と平坦面を互いに押し付けてそれらの間でチューブを圧迫可能であり、第1および第2のロック手段は、開放位置または閉鎖位置で互いに係合可能である。
好適な実施形態では、クランプ面が凹凸を有し、波形を付けられ、またはフィンを有する。シリコン配管の特定の要件に応じて、クランプ面の異なる構成を使用することができる。第1の脚部と第2の脚部の機能を変更することもできる。
好ましくは、カバー要素は、下脚部、上脚部および底部を伴うほぼU字形の形状を有する。より好適な実施形態では、カバー要素の下脚部は、クランプ要素の第2の脚部に係合可能な穴(recess)を有し、カバー要素の上脚部の内面は、クランプ要素の開放位置でクランプ要素の第1の脚部の上面に隣接する。これは、クランプ機構の良好な保護と操作性の向上をもたらす安定した構造を可能にする。より高い安定をもたらすために、補強リンクを設けることができる点に留意されたい。
好適な実施形態では、カバー要素の底部は、ハンドルと、解放手段との係合のための2つの穴を有する。2つの穴は、開放機構の不正使用を防止するために、非常に細いピンによってのみアクセス可能な2つの孔とすることができる。ハンドルは、カバー要素を取り外すための直感的な方向性をもたらす。
好ましくは、支持手段は、コネクタを収容するための第1の穴と、コネクタに関連付けられたチューブを収容するための第2の穴とを有する。このようにして、コネクタとそれに関連付けられたチューブを組立体(またはカセット)内に緊密に保持することができる。これは、医療従事者にとって注入セットの使用を容易にする、組立体のすっきりした簡素なデザインを可能にする。
本発明の他の実施形態によれば、経腸補給または注入ポンプは、前述したピンチクランプ組立体と、クランプ要素に係合するように構成された解放手段とを備える。
好ましくは、圧送部を通じた流れは、ピンチクランプ組立体が圧送部に装着されているときにのみ可能となる。これは、ピンチクランプ組立体が注入ポンプへ完全に装着されているときにのみ、フリーフロー防止機構が動作しないことを確実にする。
本発明の上記課題、特徴および利点は、添付の図面に関連して提示された以下の詳細な説明の考察から明らかにされる。
図1は、本発明に係るピンチクランプ組立体の好適な実施形態の主要な構成要素を示す斜視図である。主要な構成要素は、組立体のベースを形成するカセット1からなる。カセット1は、ほぼ矩形の比較的平らな構造に形成される。カセット1は、シリコンチューブ(図1では不図示)の圧送部を支持する保持手段3を両端に備える。カセット1には、カセット1の側壁に形成されたほぼ円形の穴と、カセット1の基板に別途に形成されたほぼ矩形の穴との形で支持手段5が設けられる。支持手段5は、詳細を後述するコネクタを支持するために設けられる。本発明に係るピンチクランプ組立体の中心の要素は、図示された好適な実施形態ではカセット1に一体化されている、クランプ要素7である。クランプ要素7の詳細については、図2Dおよび図2Eを参照して説明する。支持手段5に対向する側壁には、コネクタに関連付けられたチューブを支持するためのチューブ穴11が設けられる。本発明にとって本質的ではない構成要素により図を必要以上に複雑にしないために、現時点ではチューブが省略されている。また、カセット1の側壁の外面は、経腸補給または注入ポンプへ装着されるときにピンチクランプ組立体のスライドを助けるサイドフィン13を備える。カセット1の底部は、ほぼ半円形の回転ユニット用穴9を備える。本発明に係るピンチクランプ組立体を経腸補給または注入ポンプへ装着するとき、蠕動回転ユニットのピンは、回転ユニット穴により解放された空間に嵌る。
図2A、図2Bおよび図2Cは、図1のピンチクランプ組立体の構成要素の前面図、平面図および後面図である。ここで、同一の符号は、同じ要素を意味している。
図2Dおよび図2Eは、クランプ要素7が閉鎖位置(図2D)および開放位置(図2E)にある、図1に係るカセット1の拡大側断面図である。クランプ要素7は、チューブ閉塞部17を伴う第1の脚部15を一般に備える。チューブ閉塞部は、ほぼ矩形の板の形で第1の脚部15にほぼ直角に取り付けられる。図示された実施形態では、クランプ要素7の第2の脚部19は、カセット1の装着板と一体に形成されている。クランプ要素7の第1の脚部15と第2の脚部19の間を連結する要素は、クランプ要素7を張力を受けていない開放位置から閉鎖位置へ移動可能にするばね要素として働く屈曲部21である。第1の脚部15の自由端には、カセット1の基板へ向けてほぼ直角に延びる第1のロック手段23が設けられる。第1のロック手段23は、ほぼ屈曲部21へ向けて延びる2つの突起を備える。第1のロック手段23の対応部は、第2の脚部19の自由端に配置された第2のロック手段25である。第1のロック手段23と第2のロック手段25は、閉鎖位置(図2Dに示す)または開放位置(図2Eに示す)のいずれでも互いに係合するように構成される。
開放位置から閉鎖位置へのクランプ要素7の移動は簡単である。つまり、第1の脚部15の上面を押すことにより第1のロック手段23をさらに下に持ってきて、最終的に屈曲部21のばね力に抗してその上突起で第2のロック手段25に形成された突起に係合させることにより、クランプ要素7の安定した閉鎖状態が得られる。第1のロック手段23と第2のロック手段25の係合をすばやく解くことにより、クランプ要素7を閉鎖位置から開放位置へ持ってくることができる。これは、第1のロック手段23から屈曲部21の方向へ離すように、つまり第2の脚部19の平面とほぼ並行に、第2のロック手段25を曲げることにより達成される。第2のロック手段25の外側からのアクセスが第1のロック手段23により妨げられるので、第1および第2のロック手段23、25の係合を解くことを助けるために特殊な工具を使用しなければならない。
ケーブルストラップ/タイラップ、磁石式の閉鎖機構またはVelcro(登録商標)ロックに用いられる機構など、他の形式のロック手段をクランプ要素7に用いることもできる点に留意されたい。
図2Dおよび図2Eから分かるように、チューブ閉塞部17は、閉鎖位置で、第2の脚部19の内面にほぼ接触してシリコンチューブの圧送部を圧迫し、それによりシリコンチューブ(不図示)を通じた流れを閉塞する。図示された実施形態では、チューブ閉塞部17のクランプ面と第2の脚部19のクランプ面は、平坦である。しかし、クランプ面は、シリコンチューブの特性に応じて、クランプ要素7の圧迫機能を助けるために、凹凸を有し、波形を付けられ、またはフィンを有してもよい。
図3は、本発明に係るピンチクランプ組立体の一部としてのカバー要素8の好適な実施形態を示す斜視図である。カバー要素8は、ほぼU字形であり、上脚部31、底部33および下脚部29を備える。下脚部29には、カセット1上のクランプ要素7へのカバー要素8の装着を助ける2つの穴35が形成される。それは、クランプ要素7の両側へのカバー要素8の脱落を防止し、それによりクランプ要素7の閉鎖を確実にし、従ってフリーフロー状態を回避する。上脚部31のうち底部33に近い部分は、下脚部29の方向へ向けて反対に曲げられ、上脚部31の自由端は、下脚部29とほぼ並行となる。底部33の外面には、ほぼ半円形のハンドル27が設けられる。ハンドル27は、下脚部29と上脚部31の平面に垂直な平面にほぼ配置される。図3に示したカバー要素の前面図、平面図、後面図および側面図である図4A、図4B、図4Cおよび図4Dからも分かるように、底部33には、ハンドル27の両側に孔37が設けられる。これらの孔37の機能については後述する。
図5Aおよび図5Bは、シリコンチューブの圧送部を保持し、ピンチクランプ組立体のカセット1(図1参照)に設けられた保持手段3へ取り付けられるように構成されるチューブ取り付け要素39の斜視図である。良好な取り付けをもたらすために、チューブ取り付け要素は、カセット1の保持手段3に形成された穴に係合するフランジ40を備える。
図6は、本発明に係るピンチクランプ組立体に配置される圧送部またはシリコンチューブ10を示している。圧送部またはシリコンチューブは、第1の脚部15と第2の脚部19のクランプ面同士の間に配置され、その両端がチューブ取り付け要素39の各端部に緊密に配置される。通常、注入セット全体の配管部のうち圧送部のみがシリコンで作られる一方で、チューブの残りの部分がPVC(ポリ塩化ビニル)で作られる点に留意されたい。
図7および図8は、本発明に係るピンチクランプ組立体の一部としてのコネクタ6の好適な2つの実施形態を示している。図7の実施形態は、多くの経腸補給装置で使用可能なユニバーサルスパイクを示し、図8の実施形態は、雌ルアーロックまたはテーパーフィットを一端に備える経腸アダプタを示している。図7では、ユニバーサルスパイクが、溶剤結合(solvent bonding)などを介して、その短い方の端部でチューブに直接接続される点に留意されたい。
図9A〜9C、図10A〜10C、図11および図12を参照して、本発明に係るピンチクランプ組立体の機能について詳細に説明する。
図9Aは、本発明に係るピンチクランプ組立体の好適な実施形態を組立てるときの第1の工程を示す斜視図である。カセット1をポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンまたはアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)などの熱可塑性材料から射出成形により製造する場合を想定する。なお、他の適当な熱可塑性プラスチックを用いてもよい。シリコンチューブの圧送部10は、2つのチューブ取り付け要素39に関連付けられた上でカセット1へ入れられる。チューブ取り付け要素39をカセット1の保持手段3へ係合する前に、クランプ要素7の第1の脚部15と第2の脚部19の間にシリコンチューブ10を配置しなければならない。このため、第1のロック手段23と第2のロック手段25の係合を解き、第1の脚部15を大きく開放してシリコンチューブ10を受ける。あるいは、クランプ要素7をその開放位置に保ち、シリコンチューブ10をクランプ要素7のクランプ面同士の間に滑り込ませ、保持手段3に係合されているチューブ取り付け要素39に関連付けることもできる。カセット1へシリコンチューブ10を挿入した後の状態では、圧送部は、もちろん閉塞されない。しかし。この状態は、本発明のピンチクランプ組立体を組立てる間の途中状態にすぎない点に留意されたい。
図9Bおよび図9Cは、組立ての次の工程を示している。図9Bと図9Cでは、コネクタ6が2つの異なる形式で実施される点のみが異なっている。図9Bには、図7のユニバーサルスパイクが示され、図9Cには、図8の経腸アダプタが示されている。2つの矢印は、ピンチクランプ組立体の2つの要素に対する能動的な動作を示している。つまり、まず、第1の脚部15の外面を押すことによりクランプ要素7が閉鎖位置へ持ってこられ、それによりシリコンチューブ10の圧送部を閉塞する。第2の動作は、カセット1の支持手段5内でのコネクタ6の位置決めを示している。前述したように、図9Bは、コネクタ6としてのユニバーサルスパイクを示し、図9Cは、カセット1内に支持されたコネクタ6としての経腸アダプタを示している。
図9Bおよび図9Cに示した状態は、本発明に係るピンチクランプ組立体の組立ての途中状態である。この状態は、ピンチクランプ組立体の既存の構成要素へカバー要素8を装着する、組立ての次の工程のために必要となる。カバー要素は、支持手段5内でその位置にコネクタ6を保持するために、上脚部31の開放端がコネクタ6の外面で止まるまで、閉鎖位置にあるクランプ要素7の上方でカバー要素8をスライドさせることにより装着される。この工程が図10に示されている。
図11Aおよび図11Bは、本発明に係るピンチクランプ組立体の好適な2つの実施形態を示す斜視図である。ピンチクランプ組立体は、組立体にカバー要素8が装着され、さらに重要なことには、クランプ要素7が開放位置へ持ってこられた後の出荷状態にある。クランプ要素7の開放は、クランプ面同士の間の領域を開放し、それによりシリコンチューブ10の断面が張力を受けていない状態へ戻ることができるように、クランプ要素7の第1のロック手段23と第2のロック手段25の間の係合を解くことにより達成される。本発明に係るピンチクランプ組立体のこの出荷状態では、シリコンチューブ10の圧送部が変形していない点に留意することが重要である。しかし、この出荷状態では、コネクタ6が組立体内に緊密に固定されるので、本発明に係るピンチクランプ組立体のフリーフロー状態が生じない。これにより、医療従事者が患者のポートへコネクタ6を取り付けることができず、結果としてフリーフロー状態が生じない。本発明の主要な原理は、キーロックとして機能するカバー要素8が組立体に装着されている間、フリーフロー状態を生じえない点にある。これは、コネクタ6が組立体内に緊密に保持されており、組立体からカバー要素8を取り外すと、クランプ要素がその閉鎖位置へ自動的に持ってこられ、それによりシリコンチューブ10の圧送部を通じた流れを閉塞するためである。
図11Cは、開放位置にあるクランプ要素を伴う、図11Bのピンチクランプ組立体を示す側面図である。図10の状態から図11Aから図11Cの状態への移動には、第2のロック手段25に対する第1のロック手段23の係合を解くことが要求される。これは、本発明に係るピンチクランプ組立体の組立工程の一部として外部工具により達成することができる。この特殊工具は、ロック手段のフック形式の係合を解くように、クランプ要素7の屈曲部21へ向けて第2のロック手段25を押す。もちろん、例えば指だけで、クランプ要素7の解放を容易に達成することはできない。図11Cは、開放位置にあるクランプ要素7の張力を受けていない第1の脚部15のために十分な間隔を空けるように、カバー要素8がカセット1さらにクランプ要素7の上方に非常に上手く取り付けられていることを示している。一方、カバー要素の上脚部31は、コネクタ6の表面の大半の上方に延びて、この状態で組立体からコネクタ6を取り出せなくしている。
図11Aから図11Cに示したピンチクランプ組立体を経腸補給または注入ポンプへそのまま装着することができない点に留意されたい。装着が可能となる前に、カバー要素8を取り外し、それによりクランプ要素7を閉鎖位置へ持ってこなければならない。図11Cからも分かるように、カバー要素の取り外しは、カバー要素8の上脚部31を第1の脚部15の上面の上方でスライドさせ、最終的に閉鎖位置で第1のロック手段23と第2のロック手段25が互いに係合するように第1の脚部15をさらに下へ持ってくる。この実施形態では、カバー要素8を組立体から一方向でのみ取り外すことができる点が重要である。カバー要素8の取り外しは、ハンドル27をピンチクランプ組立体から引き離すことにより開始される。カバー要素の取り外しは、組立体から取り出し可能であり、かつ経腸補給または注入セットを設定するためにポートを接続可能なコネクタ6への自由なアクセスももたらす点は明らかである。カバー要素8とコネクタ6を取り外した状態で経腸補給または注入ポンプへピンチクランプ組立体を装着するとき、クランプ要素7は、その閉鎖位置にあり、それによりシリコンチューブ10の圧送部を通じた液体の流れを閉塞する。フリーフロー状態は、従って回避される。しかし、シリコンチューブ10の圧送部の閉塞状態は、ピンチクランプ組立体の他の構成要素を伴うカセット1が経腸補給または注入ポンプに装着されるとすぐに解消されなければならない。ピンチクランプ組立体のベースのカセット形状は、ポンプへの組立体の装着および取り扱いを容易にする。
図12は、経腸補給または注入ポンプの一部である外部解放器具41を示している。外部解放器具41は、カバー要素8と同様にほぼU字形である。
図13は、外部解放器具41に係合している、本発明に係るピンチクランプ組立体の好適な実施形態を示している。カセット1が経腸補給または注入ポンプ内で完全に装着位置にあるとき、ロック手段23、25は、ピン43の付近で外部解放装置の底部に隣接することが分かる。第2のロック手段25の幅が第1のロック手段23の幅よりも大きいので、第1のロック手段23の両側では、ピン43が第2のロック手段25に接触し、第1および第2のロック手段23、25の間の係合を解くようにクランプ要素7の屈曲部へ向けて第2のロック手段25を実際に押すことができる領域がある。
以上、ロック解放機構の好適な実施形態について説明した。磁石式の解決策、固定手段を伴う解決策など、他のロック解放機構も考えられる点に留意されたい。全ての代替解決策は、しかし、手または医療従事者が容易に入手可能な工具によりクランプ要素7を容易に開放できないような耐タンパー性を有する、という中心的な要件を満たすべきである。
図14Aおよび図14Bは、前述した図に示す好適な実施形態の代替案を示している。代替案は、互いに並行に配置されてほぼ半円形の穴を囲む保持手段3と、その半円形にほぼ従う圧送部とを伴うカセット構造1を提供する。この代替構成では、クランプ要素7をカセット1の側部に配置可能であり、図14Aに示すように、圧送部の平面と並行に横たわるクランプ要素7の開放および閉鎖動作によって、図14Bに示すように、カセット1の側部から閉鎖位置へクランプ要素を移動させなければならない。これにより、ピンチクランプ組立体をさらに小型に形成することができる。
本発明の主題によって、患者へ栄養を補給しまたは医療液剤を注入するように構成された経腸補給または注入ポンプにチューブを係合するためのピンチクランプ組立体が提供される。ピンチクランプ組立体は、比較的簡素な構造を備え、いつでも機能するフリーフロー防止機構を確保し、シリコンチューブの長期保管を可能にし、再生利用を容易に可能とするように使用済み材料に関して一様である。