JP2012530132A - 多発性硬化症の治療のための組成物および方法 - Google Patents

多発性硬化症の治療のための組成物および方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、多発性硬化症(“MS”: multiple sclerosis)の治療のための新規な組成物および方法に関し、特に、MSの治療におけるムラミルジペプチドの微小粒子を包含する免疫賦活性組成物に関する。

Description

発明の詳細な説明
〔技術分野〕
本発明は、多発性硬化症(“MS”: multiple sclerosis)の治療のための新規な組成物および方法に関し、特に、MSの治療におけるムラミルジペプチド微小粒子を包含する免疫賦活性組成物に関する。
〔背景技術〕
多発性硬化症(MSと略記する)は、免疫系が中枢神経系を攻撃し、脱髄を引き起こす自己免疫性症状である。疾患発症は通常若年成人において起こり、女性において多く見られる。MSの有病率は、100,000人当たり2人〜150人の範囲である。
MSは、脳および脊髄における神経細胞の、相互情報交換能力に影響する。神経細胞は、ミエリンと呼ばれる絶縁性物質に包まれた軸索と呼ばれる長い繊維にそって活動電位と呼ばれる電気信号を送ることによって、情報を交換する。MSでは、身体自身の免疫系がミエリンを攻撃して損傷させる。ミエリンが失われると、軸索はシグナルを効果的に伝えられなくなる。多発性硬化症という名称は、主にミエリンで構成された、脳および脊髄の白質における瘢痕(つま硬化症、プラークまたは病斑という名称の方がよく知られている)を指している。疾患の過程に関与するメカニズムについては非常によく知られているが、原因については依然知られていない。理論上の原因としては、遺伝および/または感染があげられる。種々の環境的な危険因子も発見されている。
本疾患には、ほとんどすべての神経症状が見られ、神経症状が進行して物理的障害および認知障害に到ることが多い。MSはいくつかの形態を取り、新しい症状が、離散的な複数回の発作(再発性形態)またはゆっくりとした経時的蓄積(進行性形態)のいずれかで発生する。発作と発作との間には症状が完全に消えることがあるが、恒久的な神経上の問題が、特に疾患が進行するにつれて、発生することが多い。時には、他の理由で実施される神経学的診察の際に、MSが偶然特定されることもある。
MSの治癒法は知られていない。治療では発作後の機能回復、新たな発作の防止、および、障害の防止が試みられる。MSに対する薬物療法は有害な作用が発生する、あるいは、許容度が非常に低い可能性があり、多数の患者が、代替治療を支持する科学的な研究が欠如しているのにもかかわらず、代替治療を選択する。予後は予測することが困難であり、疾患のサブタイプ、個々の患者の疾患の特徴、初期症状、および、時間の進行とともに患者が経験する障害の程度に依存する。
MSに患う人の平均余命は、少なくとも若年期には、影響されない人の平均余命とほとんど同じである。患者のほぼ40%が少なくとも60歳までは生存する。しかしながら、MSに患う人の死亡の半分は疾患の結果に直接関連し、15%以上は自殺による死亡である。この自殺による死亡率は健康な人に比べて非常に高い。
ほとんどの患者が死亡する前に歩行能力を喪失するが、90%は発症から10年が経過しても、また、75%は15年が経過してもまだ一人で歩行可能である。
MSによってミエリンは菲薄化または完全に消失し、疾患が進行するにつれて、ニューロンの延長部、つまり軸索は切れてしまう(切断される)。ミエリンが失われると、ニューロンは効果的に電気信号を伝えることができなくなる。再ミエリン化と呼ばれる修復プロセスが疾患の初期に起こるが、オリゴデンドロサイトでは細胞の髄鞘を完全に再建することはできない。発作が繰り返し起こると効果的な再ミエリン化が徐々に減少し、終には、瘢痕状プラークが、損傷した軸索の周囲に蓄積する。
脱髄はT細胞によって引き起こされ、この脱髄を除けば、本疾患の病理的な顕著な特徴は炎症である。進行型多発性硬化症では様々な炎症性メディエーターが中心的に関与していることが、十分に確認されている。これらの因子は、T細胞の中枢神経系(“CNS”: central nervous system)への遊走の促進、血液脳関門の破壊、ならびに、疾患の初期におけるミエリンの破壊および軸索の変性の促進を含めた、複数の役割を果たす。後期には、脱髄したプラークにおいて裸の軸索が剥き出しになる結果、圧倒的に神経軸索の損傷が発生する。
〔治療法〕
多発性硬化症の治癒法は知られていないが、有用性が証明された治療法はいくつか存在する。治療の主要な目的は、発作後の機能回復、新たな発作の防止、および、障害の防止である。いかなる治療法においても同様であるが、MSの管理において使用される薬物療法にはいくつかの有害作用がある。一部の患者は、代替治療を支持し追試験を実施する比較可能な科学的研究が不足しているのにもかかわらず、代替治療を実施する。
現在の治療方針には、免疫調節と、炎症期の抑制を目的とする免疫抑制とがともに関与する。症候性発作時には、高用量の副腎皮質ステロイド薬(例えばメチルプレドニゾロン)の静脈投与が、急性の再発に対する通例の治療法である。この種類の治療法の目的は、発作をより早く終了させること、および、患者に残る欠陥を減らすことである。副腎皮質ステロイド薬を用いた治療法は、一般に短期的には症状の軽減に効果的であるが、長期的な回復に対しては有意な影響がないようである。潜在的な副作用としては、骨粗鬆症や(可逆的ではあるが)記憶障害があげられる。
疾患修飾治療法は費用が高く、その大半が頻繁な(毎日またはそれ以下の頻度)注射を必要とする。また、1ヶ月〜3ヶ月ごとにIV注入を必要とする疾患修飾治療法もある。インターフェロンなどの非特異的な薬剤は長期的な効力が限られ、許容度があまり高くない。
2007年の時点で、MSについて6つの疾患修飾治療法が複数の国の規制当局によって認可された。3つはインターフェロンであり、具体的には、インターフェロンβ−1a(商品名;Avonex、CinnoVex、ReciGen、および、Rebif)の2つの処方物と、インターフェロンβ−1b(米国の商品名;Betaseron、ヨーロッパおよび日本ではベタフェロン)の1つの処方物とである。4つめの薬物療法はグラチラマー酢酸塩(Copaxone)である。5つめの薬物療法であるミトキサントロンは、癌化学療法においても使用される免疫抑制剤であって、米国において主に二次性進行型MSについてのみ認可された。6つめはナタリズマブ(タイサブリとして市販されている)であり、これは免疫細胞輸送を遮断して、CNS炎症を効果的に低減する抗VLA−4抗体である。6つの薬物療法はすべて、効力が発揮される割合が互いに異なり、また、長期的効果に関する研究は依然存在しないものの、発作回数の減少および障害に到る進行の緩徐化に対して多少の効果はある。複数の免疫調節物質(ミトキサントロン以外すべて)を比較してみると、再発率の低減についても、障害の進行の停止についても、もっとも効果的な免疫調節物質はナタリズマブであることがわかる。さらに、ナタリズマブはMSの重症度を低下させることもわかった。ミトキサントロンがすべての免疫調節物質の中でもっとも高い効果を有している可能性はあるが、ミトキサントロンは、その使用が重篤な心毒性によって制限されるために、一般に長期治療法であるとは考えられていない。
インターフェロンおよびグラチラマー酢酸塩は頻繁な注射によって供給され、その頻度はグラチラマー酢酸塩の場合の1日に1回から、Avonexの場合の1週間に1回(ただし内筋肉注射である)まで、ばらつきがある。ナタリズマブおよびミトキサントロンは、IV注入によって1ヶ月ごとに投与される。進行型MSの治療は再発寛解型MSの治療よりも困難である。ミトキサントロンは、二次性進行型および進行再発性の過程にある患者において良好な作用を示した。ミトキサントロンは、短期的な追跡調査では、患者の疾患進行および再発頻度の抑制において中程度の効果がある。一次性進行型MSの過程を修飾することが証明された治療法は存在しない。
発作を抑制できる、あるいは機能を改善できる可能性がある複数の治療法ついて、調査研究が進められている。これらの治療法の中には、すでに多発性硬化症の治療に使用されている薬を組み合わせて用いる治療法もある(例えばミトキサントロンおよびグラチラマー酢酸塩(Copaxone)の関節投与)。しかし、すでに臨床治験の段階にある大半の治療法は、他の疾患の治療に使用される薬を用いている。ごく最近、ニューロファスシン186(主要な神経線維タンパク質)に対する反応性を有する自己抗体が、進行型MSに関連する神経細胞の変性に関与していることが強く示唆され、新しい可能性として期待されている。
いかなる治療法においても同様であるが、上記の治療法にはいくつかの有害作用がある。もっともよく見られる有害作用は、グラチラマー酢酸塩およびインターフェロン治療法の場合の、注射部位における刺激作用である。時間とともに、脂肪萎縮症として知られる脂肪組織の局所的な破壊に起因する、目に見えるほどの大きさの凹部が注射部位にできることがある。インターフェロンの場合には、インフルエンザに類似の症状が発生する。具体的には、グラチラマーを摂取している患者の中には、通常持続時間は30分未満であるが、紅潮、胸部絞扼感、心臓の動悸、息切れ、および、不安感として現れる注射後反応を経験する者もいる。さらに危険な有害作用は、インターフェロンおよびミトキサントロンによる肝損傷、ミトキサントロンの免疫抑制作用および心毒性、ならびに、ナタリズマブと死亡可能性のある合併症(例えば進行性多巣性白質脳症)の複数の症例との間の推定上の関連性である。
したがって、依然として、より良好な治療プロファイルおよび副作用プロファイルを有する代替となるMSの治療法に対する必要性がある。
本発明の目的の1つは、先行技術の療法の欠点の少なくとも1つを解消する、あるいは寛解すること、または、有用な代替治療法を提供することである。
〔発明の概要〕
本発明の第1の態様によれば、架橋結合されて微小粒子を形成しているムラミルジペプチドを包含する組成物を、多発性硬化症の治療を必要とする被験体に投与することを含む、多発性硬化症を治療する方法が提供される。
第2の態様によれば、本発明は、架橋結合されて微小粒子を形成しているムラミルジペプチドを包含する組成物を、多発性硬化症の症状の治療を必要とする被験体に投与することを含む、多発性硬化症の症状を治療する方法を提供する。
第3の態様によれば、本発明は、架橋結合されて微小粒子を形成しているムラミルジペプチドを包含する組成物と、多発性硬化症の治療において有効な別の活性薬剤とを、多発性硬化症の治療を必要とする被験体に投与することを含む、多発性硬化症の治療における併用療法の方法を提供する。
好ましくは、治療対象となる多発性硬化症のタイプは進行型多発性硬化症である。この進行型多発性硬化症は一次性進行型多発性硬化症であっても、二次性進行型多発性硬化症であっても、慢性進行型多発性硬化症であってもかまわない。あるいは、治療対象となる多発性硬化症のタイプは再発寛解型多発性硬化症である。
架橋結合されて微小粒子(MIS416)を形成するムラミルジペプチドを包含する上記組成物は、任意の公知の手段によって被験体に投与されればよいが、好ましくは、注入または注射によって投与される。適切な投与様式も、筋肉内投与、腹腔内投与、静脈内投与、皮下投与、直腸投与、経鼻投与、経口投与、胃内投与、経肺投与などから選択されればよい。
MIS416の投与量は、多発性硬化症のタイプ、疾患の重症度および症状、ならびに、患者の全般的に状態を考慮して、医師が容易に決定可能である。通常、与えられる投与量は50μg〜1500μgの範囲であって、1日に1回、1週間に1回、2週間に1回、または、1ヶ月に1回、投与されればよい。適切な投与計画の一例としては、MIS416の初回投与量を100μgとして始めて、続いて、大きな副作用を起こさずに適切かつ有益な治療効果が患者において観察されるまで、例えば、投与量を1週間または2週間について50μg〜200μg増量する。この投与量は、単回の急速投与量として与えられても、経時的に注入されても、複数回に分割して与えられてもかまわない。
併用療法として投与される場合には、MIS416組成物は、MSの治療において使用される他の活性薬剤(例えばステロイド、インターフェロン、抗体など)とともに投与されてもかまわない。
MIS416組成物とともに使用可能な、MSの治療において使用される他の活性薬剤は、副腎皮質ステロイド薬(例えばメチルプレドニゾロン)、インターフェロン(例えばインターフェロンβ−1aやインターフェロンβ−1b)、グラチラマー酢酸塩、ミトキサントロン、抗体(例えばナタリズマブ)、または、これらの組み合わせから選択されてもかまわない。
MIS416組成物は、MSの治療において有効な他の薬剤と同時に与えられても、順に与えられてもよい。
第4の態様によれば、本発明は、多発性硬化症の治療のための、架橋結合されて微小粒子を形成するムラミルジペプチド、または、架橋結合されて微小粒子を形成するムラミルジペプチドを包含する組成物を提供する。
第5の態様によれば、本発明は、多発性硬化症の症状の治療のための、架橋結合されて微小粒子を形成しているムラミルジペプチド、または、架橋結合されて微小粒子を形成しているムラミルジペプチドを包含する組成物を提供する。
第6の態様によれば、本発明は、多発性硬化症の治療における併用療法のための、架橋結合されて微小粒子を形成しているムラミルジペプチド、または、架橋結合されて微小粒子を形成しているムラミルジペプチドを包含する組成物を提供する。
本発明において、架橋結合されて微小粒子(MDP微小粒子)を形成しているムラミルジペプチドを包含する組成物は、ここでは互換的にMISまたはMIS416と称する。
〔図面の簡単な説明〕
図1: MIS416が抗炎症性サイトカインを誘導する。
図2: MIS416の単回瞬時大量i.v.投与後の、自己免疫性患者における血清Th2サイトカインの阻害。
図3: MIS416を用いて最長で12週間まで進行型MS患者を治療すると、白血球遊走にとって重要な細胞接着分子の血清レベルが低下する。
図4: MIS416が、もっとも強力なIFNα分泌免疫細胞である形質細胞様樹状細胞によるIFNαの生成を誘導する。IFNαは一部の形態の多発性硬化症において臨床的有用性を示す。
図5: MIS416が、非自己MHC抗原(非自己抗原)に反応してT細胞増殖を阻害する。T細胞増殖を阻害することができる薬剤は、多発性硬化症に関連する自己反応性T細胞活性化を抑制できる潜在的可能性がある。
図6: MIS416が疾患誘導時に投与されると、再発寛解型多発性硬化症のマウスモデルにおける発症率および発生率を低下させるメカニズムを誘導する。
図7: MIS416を用いて事前治療を実施すると、多発性硬化症の再発寛解型マウスモデルにおいて疾患の自然治癒期を強化するメカニズムが誘導される。
図8: 進行型MS患者におけるMIS416を用いた長期治療によって、白血球輸送において重要な可溶性接着分子の増加レベルが継続的に抑制される。
図9: 多発性硬化症のマウスモデルにおいて実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)の誘導時に投与されたMIS416が疾患の発症率および重症度を低下させることを実証する繰り返し試験(実験#2)。
図10: 実験#2において、マウスのEAEモデルにおいて疾患誘導時にMIS416を用いて治療しても、最大疾患スコアが大幅に低下する。
図11: マウスのEAEモデルにおいて疾患誘導時にMIS416を用いて治療すると、末梢性血清中のIFN−γの含有レベルが大幅に増加する。
図12: マウスのEAEモデルにおいて疾患誘導時にMIS416を用いて治療すると、末梢性血中単球の絶対数がEAEの誘導後22日目に大幅に増加する。
〔好適な実施形態〕
DNAの断片を包含する微小粒子の形態を有するムラミルジペプチドは、免疫系を複数の側面から調節することができ、進行型MSおよび再発寛解型MSの両タイプに対するより有効性の高い治療方法となり得ることが、以上のことから期せずして分かった。本発明の微小粒子は、免疫系を複数の側面から同時に調節することができるDNA断片をも含有しているようであるが、この記載はいかなる理論によって制限されるものでもない。進行型MSのある患者および再発寛解型MSの動物モデルの症例研究によってここで実証するように、架橋結合されて微小粒子(MDP微小粒子またはMIS416)を形成するムラミルジペプチドを包含する組成物を複数回投与する治療法は、単独型治療法と同様に効果的であり、大きな副作用を起こさない。
● MIS416は、MSの管理に関わる様々な免疫調節経路を活性化する多様型免疫応答修飾因子である。これらの免疫調節経路としては、調節解除されたT細胞およびB細胞の応答を阻害するようにも作用する、天然の抗炎症性メディエーターの(例えばIL−10やPGE)誘導などがあげられる。
● MIS416を用いた進行型MS患者の治療によって、白血球輸送において重要な接着分子の血清レベルが低下することが実証される。特にMIS416は、白血球インテグリンVLA−4と相互作用するsVCAM−1の低減において効果的である。これは、MIS416を用いた治療によって、これらの分子のMSに関連する上方制御が下方制御されることを示唆している。このVLA−4に依存する輸送経路を調節することによって得られる治療効果は、ナタリズマブによって確認済みであるが、MIS416は無毒である。MIS416を用いた治療は、ICAM−1およびE−セレクチンの増加レベルが調節できることも示している。
● MIS416は、マウスの再発寛解型多発性硬化症モデル(EAE)において疾患の発生率および重症度を変化させることができる。これらの研究では、MIS416の作用のメカニズムとなり得る複数のメカニズムが特定された。特記に値するのは、このマウスモデルにおいて、EAEに対する保護性を有する高レベルのIFN−γがMIS416の媒介によって誘導されることである。MIS416を用いた治療によって、循環単球の絶対数も増加する。これは、単球が効果的に動員されたことを示唆している。単球とは、公知の抗炎症性サイトカインであるIL−10の細胞性供給源である。
● MSの治療のための他の認可済み薬剤とは対照的に、MIS416は無毒かつ非免疫性であって、長期治療に適している。
MIS416を含有する組成物は、任意の適した手段によって投与されればよい。投与方法の例としては、筋肉内注射、皮下注射、静脈内注射、腹腔内注射、点眼、飲料水を介した投与、エアロゾル、または、点鼻薬などがあげられる。動物に投与する場合には、任意の適した獣医学的処方物を使用すればよい。上述の処方物に加えて、処方物は粉末またはペーストの形態であってもよく、飼料に添加されても、あるいは、通常の様式で経口的に投与されてもかまわない。適切な処方物プロトコールおよび賦形剤は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th Ed, 1995 (Mack Publishing Co. Pennsylvania, USA), British Pharmacopoeia, 2000, and the like.などの標準的なテキストに記載されている。
MDP微小粒子組成物の適切な1回当たりの投与量、投与総量、および、投与期間は、ここに提供する指示、MSの特性、重症度、および、症状、ならびに、治療に対する患者の応答に基づいて、医師が容易に決定可能である。一例をあげれば、50μg〜1000μgの範囲から有効な1回当たりの投与量が選択され、患者の状態、症状、許容度、および、治療に対する応答に応じて1日に1回、1週間に1回、または、1ヶ月に1回、投与されればよい。MDP微小粒子組成物は、約50μg、75μg、100μg、125μg、150μg、175μg、200μg、225μg、250μg、275μg、300μg、325μg、350μg、375μg、400μg、425μg、450μg、475μg、500μg、525μg、550μg、575μg、600μg、625μg、650μg、675μg、700μg、725μg、750μg、775μg、800μg、825μg、850μg、875μg、900μg、925μg、950μg、975、または、1000μgから選択された投与量で投与されればよい。さらに高い範囲の投与量(例えば50μg〜1500μgの範囲の投与量)も要件に応じて使用可能である。投与されるMDP微小粒子の総量は、治療に対する患者の反応および許容度に依存する。上記組成物は、患者の応答に応じた全体期間にわたって1日に1回、1週間に1回、2週間に1回、または、1ヶ月に1回、投与されればよい。
MIS416の作用には、少なくとも部分的には、治療用量に関連する一過性の炎症期、グレード1〜グレード3の発熱、および、悪寒をともなうと考えられているが、この記載はいかなる特定の作用機構によって制限されるものでもない。したがって、50μg〜100μgのMIS416を初回に投与しても、ほとんど、または、全く応答を誘発しないと予想されるので、この初回投与量は、究極的にはわずかな発熱および悪寒の応答を誘発することを目的とする投与量増量療法における適切な1回目の投与量を構成すると考えられる。このような応答がなければ、投薬量を、患者が所望の軽度(グレード1〜グレード2)の発熱および悪寒の応答を報告するまで、例えば1週間または2週間当たり50μg増量してもよい。投薬間隔は、治療法に対する患者の応答および許容度に応じて変えてもよく、MDP微小粒子組成物の量を減らして頻度を上げて投薬してもかまわない(例えば、1週間または2週間の投与量を分割してより少量の投与量にして、1日に1回、1週間に2回、または、その他の適切な間隔で投薬する)。これは、患者の反応に基づいて、医師が容易に決定可能である。
MIS416を用いた治療法がMSの治療における併用療法の一部をなしてもかまわないことは、当業者にとって明らかであろう。したがって、MIS416は、MSの他の公知の治療薬(例えばインターフェロン、ステロイド、抗体など)とともに投与されてもかまわない。併用療法において、MIS416は、他の治療薬と同時に投与されても、順に投与されてもかまわない。
次に、非限定的な実施例を参照しながら、本発明についてさらに具体的に説明する。
〔実施例〕
〔実施例1; MDP微小粒子の調製〕
Propionibacterium aciniから単離されたムラミルジペプチド(MDP)の複数の繰り返しにより、本実施例のMDP微小粒子形態を有する免疫賦活薬のコア構造を形成した。好ましい単量体サブユニットの化学組成を次に示す。
Figure 2012530132
MDPは公知の免疫賦活性特性を有し、これらの特性については、免疫機能の増加に対する作用を判定できるようにデザインされた研究において広く調査されている。今日に到るまで、天然の供給源から単離されたMDP、および合成MDPはどちらも、哺乳類に投与された場合に顕著な毒性を示すことに関連付けられてきた。この毒性は免疫賦活剤としてのMDPの有効性を制限している。
同時係属中の国際特許出願第PCT/NZ2009/000049号明細書には、有毒成分を含有しないMDPの単離方法について記載されている。なお、該国際特許出願は参照によってここで引用されるものとする。手短に説明すると、Propionibacterium acnesを中間定常増殖期まで成長させ、当業者には公知の手法で洗浄して細菌培養物由来の汚染物を除去した。細胞壁および細胞質に含有される疎水性成分を、エタノール/イソプロパノール/水で濃度を増加させながら(10%:10%:80%、25%:25%:50%、および、40%:40%:20%)高い温度で連続洗浄によって順に抽出した。次に、イソプロピルアルコールを、エタノール濃度を減少させながら(80%、50%、40%、および、20%)高い温度で連続洗浄によって除去する。そして、この結果得られたMDP微小粒子を6MのグアニジンHCl内で懸濁させ、水で洗浄し、さらに、該微小粒子の濃度を、540nmにおける微小粒子の吸光度を濁度の標準規格の吸光度に対応させることによって、測定する。
この調製物を分析することによって、ムラミルジペプチドは広く架橋結合され、ほとんどが1μm〜3μmの範囲の微小粒径を有することが実証された。MDP微小粒子は、アミノ結合したL−アラニン−D−イソグルタミンジペプチドおよび細菌性DNA断片とともに、ムラミン酸を含有する。DNA断片は上記微小粒子の生理活性成分となる可能性が高いと考えられているが、この記載はいかなる理論によって制限されるものでもない。上記微小粒子は、上述のように天然の供給源から単離することも、周知の合成手順で合成することもできる(例えば、Liu G.; Zhang S.-D.; Xia S.-Q.; Ding Z.-K. Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters, 10 (12), 2000, pp. 1361-1363(3); Schwartzman S.M., Ribi E., Prep Biochem. 1980; 10(3): 255-67; Ohya et al. Journal of Bioactive and Compatible Polymers, 1993; 8: 351-364を参照)。本方法によって生成されるMDP微小粒子は広い範囲の粒径(例えば0.01μm〜30μm)を有する可能性があるが、もっとも通常の粒径の範囲は1μm〜7μmである。好ましい粒径は0.5μm〜3μmの範囲である。
i.v.投与(静脈投与)のために、上記MDP微小粒子の濃度を塩化ナトリウムで10mg/mlに調節し、複数の単回投与用バイアル(容量:1.5ml)に注入した。塩化ナトリウム中の上記MDP微小粒子のこの処方物を、ここではMISまたはMIS416と称する。患者にMIS416を投与する場合には、上記MIS416を、1000μg(1mg)未満の投与量をより投与しやすい濃度にまで、予め希釈しておくことが好適である。この希釈は、インスリン用シリンジを用いて適切な体積のMIS416を薬用バイアルから抜き取り、1ml〜2mlの通常の生理食塩水を含有する別のシリンジに注射用として上記投与量を注入することによって達成すればよい。
〔実施例2; ヒトPBMCをMIS416によって刺激すると、抗炎症性サイトカインIL−10およびPGE2が生成される〕
(A) ヒトPBMC(10/ml)を、アッセイのポジティブコントロールとして使用するLPS(E coli;100ng/ml)、または50μg/ml、20μg/ml、および5μg/mlのMIS416とともに、総培養期間55時間で培養した。無細胞の上清を22時間経過時および55時間経過時に回収し、フローサイトメトリーサイトカインビーズアレイ(flow cytometric cytokine bead array)法を製造業者(Bender MedSystems GmbH社、ウイーン、オーストリア)の標準プロトコールにしたがってアッセイを実施して分泌IL−10を得た。(B) ヒトPBMC(10/ml)を、10μg/ml、1μg/ml、および0.1μg/mlのMISとともに総培養期間96時間培養した。PMA(1nM)とイオノマイシン(100ng/ml)とによる同時刺激をアッセイのポジティブコントロールとして使用した。無細胞の上清を24時間経過時、48時間経過時、および72時間経過時に収集し、市販のPGE2 ELISAを製造業者(R&D Systems Inc.社、ミネアポリス、米国)の勧める使用法に厳密にしたがって用いてアッセイを実施してPGE2を得た。結果を図1に示す。
〔実施例3; 液性免疫および自己抗体生成に関与することが知られているサイトカインの血清レベルが、MIS416を用いた治療によって低下する〕
コンパッショネートユース(人道的使用)のもとでMIS416の単回投与を受けた患者から、生理食塩水で希釈したMIS416の単回瞬時大量i.v.投与(a single i.v bolus of MIS416 diluted in saline)の直前、24時間経過時、および、48時間経過時に、末梢性血清を回収した。血清中のIL−4およびIL−5をフローサイトメトリービーズアレイ(flow cytometry bead array)法を製造業者(Bender MedSystems GmbH社、ウイーン、オーストリア)の指示にしたがって確認した。結果を図2に示す。
〔実施例4; MIS416を用いた治療によって、白血球輸送にとって重要な細胞接着分子の血清レベルが低下する〕
ヘパリンによって抗凝固化された末梢血液を、MIS治療の第1週、第2週、第3週、第4週、および第12週のMIS416の投薬の直前に、進行型多発性硬化症の患者YVから収集した。この血液から血清を回収して、分析まで−80℃で保存した。血清試料を、フローサイトメトリービーズアレイ(flow cytometric bead array)法(Bender MedSystems GmbH社、ウイーン、オーストリア)を用いて分析し、可溶性接着分子sEセレクチン、sICAM−1、および、sVCAM−1を同時に検出した。結果を図3に示す。
〔実施例5; MIS416療法で進行型多発性硬化症を治療した結果、病状悪化が阻害され、既存の疾患症状および生活の質が改善される〕
ニュージーランドでは医学法令の下で、未認可の医薬品をコンパッショネートユースによって患者に投与することが許されている。下記の進行型多発性硬化症患者の例では、単独型治療法として、MIS416を生理食塩水で希釈して、単回瞬時大量i.v.“プッシュ法”によって投与した。受領した投与計画の詳細を表1に示す。MIS416のすべての投与は、生理食塩水で最終容量2mlにまで希釈した。
Figure 2012530132
6回の投与後にMRIスキャンを実施し、MRIスキャン法によって記録される可能性がある、その後に発生する進行の速度および特性の任意の変化、または、他の任意の改善点を判定するための基礎を提供した。初期のMRIスキャンは、長期にわたる進行型MSに典型的な脳および脊髄の病変を示していた。1年を超える間、血液試料を定期的に採取し、患者のCPC(白血球数、酵素など)をモニターした。その間、患者は脚および足に感覚がなく、動かすことができなかった。
〔治療の進行に関する記載〕
(i) 高用量(1500μg)のMIS416組成物の初期投与後、患者はいくつかの副作用を経験したが、この副作用は、生理食塩水で希釈したMIS416を用いた今後の1週間ごとの投薬についての投与計画の再評価を必要とするものであった。必要であれば、MIS416の投与時に鎮痛剤を投与した。
初期に高用量を与える治療法の他の効果に関連して、初期量のMIS416組成物の投与後1週間の追跡調査で、患者につま先を動かすように依頼すると、患者は実際につま先を動かすことができることに気づいた。これは1年来初めてのことであった。
(ii) MIS416組成物の量を100μgにして、2回目の投与を実施した。患者は治療機関を通じて詳細な日記をつけた。
(iii) MIS416組成物の量を250μgにした3回目の投与後には、大きな副作用は一切なかった。患者は足の最上部の感覚をさらに回復し、足の骨を感じ取ることができ、背中および腹部(胴体)にしっかりと力が入れられると感じた。以前にあった症状が再発し、患者は夜半にベッドで踵に強い痛みを感じるようになった。
(iv) MIS416組成物の4回目の投与(350μg)後に、患者はその同じ日に強い頭痛を訴えたが、翌日には調子がよく、膝を感じ取ることができた。さらに、患者は腕を頭上まで持ち上げることができるようになった。患者は、このことが大きく前進する一歩であると感じていた。
患者は、さらに、以前には紫色で冷たかった手が今では暖かくピンク色だと報告した。顔の定常的な紅潮も消えた。
(vii) 患者に約6ヶ月間会わなかった、他所に住む親戚が、7回目のMIS614の投与からしばらく後に見舞いにきたところ、患者の物理的および精神的な改善に非常に強い印象を受けた。その時点で、患者はほぼ1年ぶりに(!)自分の足でなんとか立ち上がることができた。患者は、つま先が常にチクチクし、以前のように足に骨が載っていると感じることができると証言する。
患者の手および足の循環は非常に良くなり、以前は紫色で冷たかったが、どちらも常にピンク色で暖かくなった。患者は常に寒いと感じることもなくなった。
患者は背中の感覚を取り戻し、今では車椅子の背もたれが背中に当たっていることが感じられる。患者は依然食欲がなく、以前にはあった食物渇望が全く失われた。
(viii) MIS416の8回目の投与の後に、患者は非常に興奮して、なんとか(ベッドで上向きに横たわった姿勢から)上半身を自分一人で起こすことができたと報告したが、これは患者にとっても担当の理学療法士にとっても驚きであった。
患者は継続的に毎日(体を1本の松葉杖だけで支えながら)立ち上がり、ずっと真っ直ぐに立てるようになったことを指摘している。患者は歩行することは依然全くできないが、しっかりと立てるようになったと感じている。踵の燃えるような痛みは、特に片足に依然残っている。
さらに、患者は背中に痛みを感じるようになった(患者は以前には自分の背中を感じることができなかったが、今は実際に感じられるようになったからである)。患者は脚をベッドで伸ばすことができるようになった(以前にはできなかった)が、頻繁に試してはいるものの、ベッドで寝返りを打つことは依然できない。
(ix) MIS416の9回目から18回目の投与を実施した後には、睡眠パターンが改善され、食欲が戻った(特定の食物渇望はない)ことを除けば、大きな変化は報告されなかった。患者は引き続き足の感覚が強くなっており、常に気分がいいと感じ始めており、特に投与を受けた翌日にはそうであると証言する。上半身の筋力は引き続き改善している。
(x) MIS416の19回目の投与を実施した後に、頭痛や脚の震えなどの副作用をさらに低減する一助とするために、治療計画を1週間に1回の投与から2週間に1回の投与に変更した。20回目の投与および21回目の投与を実施した後に、患者は気分が優れた状態が継続し、変更した治療計画が頭痛を緩和したようであった。患者はよく眠ることができ、ベッドへ移動するために装着する装具を依然感じることができる(背中の感覚も保持している)。患者は、ベッドに移動すれば、依然自分の体を起こすことができる。
(xi) MIS416の最後の3回の投与の後に、患者は足がさらによくなっていることに気づいた。具体的には、患者はしかるべき足の感覚がある(例えば暑いとか冷たいとか)。以前には患者は感覚がなかったが、感覚が回復するにつれて踵がチクチクし、続いて燃えるような痛みを感じ、今では局所的な条件に対応する足全体の感覚が戻った。
患者は、以前に比べて少ししっかりと立ち、立っていても気持ちがいいと感じている。また、上半身の筋力が強くなっていると引き続き感じている。患者は、腕を持ち上げるだけの十分な筋力がついたので、自分の頭髪を乾かすことができるまでになっている。患者は「流しに倒れ込まないで」皿を洗うことができる。上半身の筋力はまだ幾分弱いが、大きく改善した。
患者はMISを用いた治療を受ける前には片眼で焦点を合わせようとすると難しかったが、MISの1回目の投与以来焦点が合わせやすくなり、今では眼の焦点合わせが正常にできることを報告した。
患者は非常に前向きな気持ちであり、ゆっくりと回復していると確信している。
Figure 2012530132
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Figure 2012530132
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治療開始の6ヶ月後に、追跡MRIスキャンを実施した。前回のスキャンで記録された広範なMS病変が安定し、新たな病変は見つからないことが指摘された。
〔実施例6; MDP微小粒子を用いたインビトロ刺激後の、形質細胞様樹状細胞による免疫調節性I型インターフェロンの誘導〕
強力なINF−α生成細胞であるヒトpDCを、BDCA−2+細胞の磁気的ビーズ選択によってPBMCから精製した。分類した細胞(10/ml)を、MDP微小粒子、またはアッセイのポジティブコントロールとしてのTLR9のA型配位子とともに培養した(完全培地+5%のAb血清)。培養によって得られた上清に、フローサイトメトリーサイトカインビーズアレイ(flow cytometry cytokine bead array)法でアッセイを実施してIFNα含有成分を得た。図4に示した結果は、pDCの投与に応答してIFNαが誘導されたことを実証している。なお、IFNαは、一部のタイプの多発性硬化症に治療効果を提供するサイトカインである。
〔実施例7; 非自己の抗原によって誘導されるT細胞増殖の、MDP微小粒子共培養による阻害〕
抗原によって誘導されるT細胞増殖をシミュレートするために、双方向混合リンパ球反応を確立した。MHC IおよびMHC IIとマッチしない2つのドナーから、PBMCを得た。一方のコホート(レスポンダー)には、CFSE染料と呼ばれる細胞分裂蛍光指示染料(Cell division fluorescent indicator dye)(Invitrogen社、米国)を用いて標識し、もう一方のコホートは非標識のままにした(刺激細胞)。等しい細胞数の刺激細胞およびレスポンダーについて、可溶性CD40Lを添加するものと添加しないものをつくって、10μg/ml、1μg/ml、および0.1μg/mlのMDP微小粒子の存在下で5日間共培養した。CD40Lとは、公知のT細胞同時刺激因子である。生体染色剤(ヨウ化プロピジウム;Invitrogen社、米国)およびCD3細胞との反応性を有する蛍光抗体(Sigma−Aldrich NZ Ltd.社、オークランド、ニュージーランド)で、細胞を標識した。細胞をフローサイトメトリーで分析し、生きたレスポンダーT細胞をCFSE/CD3の蛍光に基づいて特定した。非増殖性のコントロールと比較したCFSEの蛍光の低下によって示される、分裂%(The % that had divided)を求めた。図5に示すように、MDP微小粒子は、T細胞同時刺激因子が存在しても、存在しなくても、同種抗原によって誘導されるT細胞増殖を阻害した。これは、MDP微小粒子も、多発性硬化症に関連する、自己抗原によって誘導されるT細胞増殖を調節できる可能性があることを示唆している。
〔実施例8; 疾患誘導時にMDP微小粒子治療を実施することによって、再発寛解型多発性硬化症のマウスモデルにおいて、疾患発症率および発生率が低下する〕
ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)ペプチド(Sigma−Aldrich NZ Ltd.社、オークランド、ニュージーランド)およびフロイント免疫賦活剤を皮下(s.c.)に投与し、さらに、2日目に百日咳毒素を内腹膜(i.p.)に投与することによって、マウス(n=5)を免疫化した。MOG+フロイント免疫賦活剤による免疫化と同時に、MDP微小粒子(250μg)を静脈内に(i.v.)投与した。実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)の発症率(図6A)および疾患スコアを測定した(図6B)。疾患スコアを使用して、疾患重荷(曲線下面積;AUC;図6B)および最大疾患スコア(図6C)を算出した。これらの結果は、フロイント免疫賦活剤s.c.中でMOGペプチドを用いた免疫化時にMDP微小粒子をi.v.投与し、さらに、2日目に百日咳毒素を内腹膜(i.p.)に投与することによって、発症が遅延し、疾患の発生率が低下することを実証している。総疾患重荷(つまり「苦しみ」)の徴候としてAUCを決定したところ、処置なしの動物は31という値を有し、これが、MDP微小粒子処置を受けた動物の場合には、11.9にまで低下した。最大疾患スコアも、処置群において大幅に低下した。
〔実施例9; EAEの誘導に先立ってMDP微小粒子治療を実施することによって、再発寛解型多発性硬化症のマウスモデルにおいて、自然治癒期が強化される〕
実施例8に記載したように、再発寛解型モデルにおいてEAEの誘導の3日前に、250μgのMDP微小粒子をマウス(n=5)の静脈内(i.v.)に処置し、疾患スコアを求めた。回復率を、ピークスコアから>1.0の減少が発生し、かつ、継続した日として規定した。図7に示すように、MDP微小粒子で事前治療を実施したことによって、観察期間中に全く回復しなかった処置なしのマウスに比べると、自然治癒期の発生率が大きく増加した。これらの結果は、MDP微小粒子治療法は重症度を調節する能力、または、進行中のアクティブな疾患に関連する多発性硬化症の症状を制限する能力を有することを示唆している。
〔実施例10; 長期MDP微小粒子(MIS416)治療法によって、白血球輸送にとって重要な細胞接着分子の血清レベルが低下したまま継続する〕
実施例4に記載したようにして、進行中のMIS416治療法を第32週までカバーするように、患者YVの試料を得た。第1週から第32週までをカバーする試料を評価して、第12週までに検出された可溶性接着分子sEセレクチン、sICAM−1、および、sVCAM−1のレベルの減少が、MIS416治療によって継続したかどうかを判定した。フローサイトメトリービーズアレイ(flowcytometric bead array)法(Bender MedSystems GmbH社、ウイーン、オーストリア)を用いて血清試料を分析し、可溶性接着分子sEセレクチン、sICAM−1、および、sVCAM−1を同時に検出した。結果を図8に示す。これらの結果は、32週間という長期的なMIS416治療によって、治療前には高かった白血球輸送分子のレベルが継続的に抑制されたことを示している。
〔実施例11; EAE疾患誘導時にMDP微小粒子治療を実施することによって、繰り返し試験において、疾患の発症が遅延し、重症度が低下し、疾患の発生率が低下する〕
マウス(n=5)において、実施例8に記載したのと全く同様にして、EAEを誘導した。MOG+フロイント免疫賦活剤による免疫化と同時に、MDP微小粒子(250μg)を静脈内に(i.v.)投与して、EAEを誘導した。実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)の発症率および疾患スコアを測定した(図9A)。累積発生率(%)を図9Bに示す。疾患スコアを用いて最大疾患スコアを算出した(図10)。これらの結果は、さらに、フロイント免疫賦活剤s.c.中でMOGペプチドを用いた免疫化時にMDP微小粒子を静脈内に(i.v.)投与し、さらに、2日目に百日咳毒素をi.p.投与することによって、発症が遅延し、疾患の発生率が低下し、また、処置群の最大疾患スコアが無処置の動物と比べて大幅に低下することを実証している。
〔実施例12; EAE疾患誘導時にMDP微小粒子治療を実施することによって、末梢性血清中のIFN−γレベルが増加する〕
実施例8および実施例9で使用したマウスから、0日目、4日目、8日目、16日目、および30日目に、後眼窩出血によって血液試料を得た。血清を遠心分離によって単離した。IFN−γのレベルを、マウスのIFN−γに専用のフローサイトメトリービーズアレイ(flow cytometric bead array)法(Bender MedSystems社)で決定した。図11Aおよび図11Bに示すように、MDP微小粒子治療によって、マウスの再発寛解型EAEモデルにおいて疾患の重症度を低下させるとして知られる、高レベルのIFN−γが誘導された。
〔実施例13; EAE疾患誘導時にMDP微小粒子治療を実施することによって、疾患誘導後22日目までに、末梢性血中単球の絶対数が増加する〕
EAEの誘導後後22日目に、後眼窩出血によって血液試料をマウスから得た。2%の酢酸を微量のゲンチアナバイオレット(Sigma Aldrich社)とともに用いて調製した試料の白血球(WBC)の総数を、血球計算器で勘定した。血液を一滴スライドに塗布し、続いてギムザ染色法(Sigma Aldrich社)を用いて、単球百分率(白血球分画)を決定した。スライドを顕微鏡で検査して、WBC全体に対する単球百分率を決定した。実際の単球の絶対数を算出するために、WBCに単球百分率を乗じた。MDP微小粒子で処置した動物における単球の絶対数は、無処置のマウスに比べると大幅に増加した(図12)。
好適な実施形態および実施例を参照しながら、本発明について記載してきたが、ここに記載した本発明の優位性および精神を維持する中で施す変形および変更が、本発明の技術的範囲において考慮済みであり、該範囲内に含まれるものであることは理解できるであろう。
MIS416が抗炎症性サイトカインを誘導することを示すグラフである。 MIS416の単回瞬時大量i.v.投与後の、自己免疫性患者における血清Th2サイトカインの阻害を示すグラフである。 MIS416を用いて最長で12週間まで進行型MS患者を治療すると、白血球遊走にとって重要な細胞接着分子の血清レベルが低下することを示すグラフである。 MIS416が、もっとも強力なIFNα分泌免疫細胞である形質細胞様樹状細胞によるIFNαの生成を誘導することを示し、かつIFNαは一部の形態の多発性硬化症において臨床的有用性を示すグラフである。 MIS416が、非自己MHC抗原(非自己抗原)に反応してT細胞増殖を阻害し、T細胞増殖を阻害することができる薬剤は、多発性硬化症に関連する自己反応性T細胞活性化を抑制できる潜在的可能性があることを示すグラフである。 A〜Cは、MIS416が疾患誘導時に投与されると、再発寛解型多発性硬化症のマウスモデルにおける発症率および発生率を低下させるメカニズムを誘導することを示すグラフである。 MIS416を用いて事前治療を実施すると、多発性硬化症の再発寛解型マウスモデルにおいて疾患の自然治癒期を強化するメカニズムが誘導されることを示すグラフである。 MIS416を用いた進行型MS患者の長期治療によって、白血球輸送において重要な可溶性接着分子の増加レベルが継続的に抑制されることを示すグラフである。 (A)及び(B)は、多発性硬化症のマウスモデルにおいて実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)の誘導時に投与されたMIS416が疾患の発症率および重症度を低下させることを実証する繰り返し試験(実験#2)の結果を示すグラフである。 実験#2において、マウスのEAEモデルにおいて疾患誘導時にMIS416を用いて治療しても、最大疾患スコアが大幅に低下することを示すグラフである。 (A)及び(B)は、マウスのEAEモデルにおいて疾患誘導時にMIS416を用いて治療すると、末梢性血清中のIFN−γの含有レベルが大幅に増加することを示すグラフである。 マウスのEAEモデルにおいて疾患誘導時にMIS416を用いて治療すると、末梢性血中単球の絶対数がEAEの誘導後22日目に大幅に増加することを示すグラフである。

Claims (14)

  1. 架橋結合されて微小粒子を形成しているムラミルジペプチドを包含する組成物を、多発性硬化症の治療を必要とする被験体に投与することを含む、多発性硬化症を治療する方法。
  2. 架橋結合されて微小粒子を形成しているムラミルジペプチドを包含する組成物を、多発性硬化症の症状の治療を必要とする被験体に投与することを含む、多発性硬化症の症状を治療する方法。
  3. 多発性硬化症の治療において有効な1つ以上の他の活性薬剤を投与することを含む、請求項1に記載の方法。
  4. 治療対象となる多発性硬化症のタイプが進行型多発性硬化症および再発寛解型多発性硬化症から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 上記進行型多発性硬化症が、一次性進行型多発性硬化症、二次性進行型多発性硬化症、または、慢性進行型多発性硬化症から選択される、請求項4に記載の方法。
  6. 治療対象となる多発性硬化症のタイプが再発寛解型多発性硬化症である、請求項4に記載の方法。
  7. 上記組成物が、筋肉内投与、腹腔内投与、静脈内投与、皮下投与、直腸投与、経鼻投与、経口投与、胃内投与、および、経肺投与から選択される手段によって被験体に投与される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 上記組成物が注入または注射によって被験体に投与される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  9. 上記組成物が50μg〜1500μgの範囲の投与量で上記被験体に投与される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 上記組成物が1日に1回、1週間に1回、2週間に1回、または、1ヶ月に1回、上記被験体に投与される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 多発性硬化症の治療において使用される上記1つ以上の他の活性薬剤が、架橋結合されて微小粒子を形成するムラミルジペプチドを包含する上記組成物と同時にまたは任意の順で投与される、請求項3に記載の方法。
  12. 多発性硬化症の治療において使用される上記1つ以上の他の活性薬剤が、副腎皮質ステロイド薬、インターフェロン、グラチラマー酢酸塩、ミトキサントロン、抗体、または、これらの組み合わせから選択される、請求項11に記載の方法。
  13. 多発性硬化症または多発性硬化症の症状の治療のための、架橋結合されて微小粒子を形成しているムラミルジペプチド、または、架橋結合されて微小粒子を形成しているムラミルジペプチドを包含する組成物。
  14. 多発性硬化症の治療における併用療法のための、架橋結合されて微小粒子を形成しているムラミルジペプチド、または、架橋結合されて微小粒子を形成しているムラミルジペプチドを包含する組成物。
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