JP2012251595A - 風力発電設備の減速装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】風力発電設備の減速装置の内歯歯車を、短時間で且つ低コストで製造する。
【解決手段】風力発電設備に使用する減速装置G1であって、最終段が、複数枚の外歯歯車64A、64Bと、該外歯歯車64A、64Bが揺動しながら内接噛合する単一の内歯歯車68と、を有する揺動内接噛合式の遊星歯車機構で構成され、内歯歯車68は、円柱状の内歯ピン68Aと、該内歯ピン68Aのピン溝68B1を有する内歯歯車本体68Bとで構成され、外歯歯車64A、64Bの外歯と前記内歯歯車68の内歯の歯数差が2であり、かつ、内歯ピン68Aの長さをL1、直径をd1としたときに、L1/d1が、該揺動内接噛合式の遊星歯車機構の減速比が20以下の場合は5以上、減速比が21〜30の場合は8以上、減速比が31以上の場合は10以上、となるように設定されている。
【選択図】図2
【解決手段】風力発電設備に使用する減速装置G1であって、最終段が、複数枚の外歯歯車64A、64Bと、該外歯歯車64A、64Bが揺動しながら内接噛合する単一の内歯歯車68と、を有する揺動内接噛合式の遊星歯車機構で構成され、内歯歯車68は、円柱状の内歯ピン68Aと、該内歯ピン68Aのピン溝68B1を有する内歯歯車本体68Bとで構成され、外歯歯車64A、64Bの外歯と前記内歯歯車68の内歯の歯数差が2であり、かつ、内歯ピン68Aの長さをL1、直径をd1としたときに、L1/d1が、該揺動内接噛合式の遊星歯車機構の減速比が20以下の場合は5以上、減速比が21〜30の場合は8以上、減速比が31以上の場合は10以上、となるように設定されている。
【選択図】図2
Description
本発明は、風力発電設備に使用する減速装置に関する。
風力発電設備には、モータの駆動力によって風に対してナセル(発電室)を水平面内で回転させるヨー制御を行うための減速装置、あるいは、風に対して風車ブレードの向き(傾き)を変更するピッチ制御を行うための減速装置等が組み込まれている。
一方、特許文献1に、外歯歯車が揺動しながら内歯歯車に内接噛合するいわゆる揺動内接噛合式の遊星歯車機構を備えた減速装置が開示されている。この減速装置では、内歯歯車が内歯を構成する円柱状の内歯ピンと、該内歯ピンを回転自在に保持するピン溝を有する内歯歯車本体とで構成されている。また、大きな伝達トルクを確保するために、外歯歯車が2枚軸方向に並べて組み込まれ、それぞれが単一の内歯歯車に同時に噛合するように構成されている。
複数枚の外歯歯車を軸方向に並べて組み込むようにすると、内歯歯車の内歯ピンの長さも長くなってしまう。特許文献1では、内歯ピンの長さが長くなることによって該内歯ピンの加工が困難になるという不具合に関し、該内歯ピンを軸方向で分割する等の工夫を施した技術を開示している。
揺動内接噛合式の遊星歯車機構を備えた減速装置を、風力発電設備の減速装置として使用する場合、大きなトルク容量を確保するため、特許文献1で開示されているように外歯歯車を複数枚並べて組み込む構成が必須となる。また、1枚1枚の外歯歯車の歯幅(軸方向の厚さ)も大きくならざるを得ない。そのため、内歯歯車の内歯を構成する内歯ピンの長さが長くなり、該内歯ピンを保持するピン溝の長さも長くなってしまう。
特許文献1では、内歯ピンの長さが長くなることによって生じる不具合に対して、内歯ピンを軸方向で分割する等の工夫を施した技術を開示している。しかし、内歯ピンを軸方向で分割すると、内歯ピンの組み込み工数は、当然に2倍に増大し、製造に時間と手間が掛かるようになり、高コスト化に繋がる。
また、特許文献1では、内歯ピンを保持するピン溝の長さが長くなることによって生じる問題については、特に触れられていない。しかしながら、風力発電設備の減速装置は、1個1個の大きさが非常に大きい。このように大きな減速装置において、軸方向に長い内歯歯車のピン溝を加工するのは、削り代が大きくなって加工時間が長くなり、工具の寿命が短くなる等、加工コスト上、多くの問題がある。
本発明は、このような従来の事情に鑑みて開発されたもので、揺動内接噛合式の遊星歯車機構を備えた風力発電設備の減速装置において、特に、内歯歯車を短時間で且つ低コストで製造することをその課題としている。
本発明は、風力発電設備に使用する減速装置であって、最終段が、複数枚の外歯歯車と、該複数枚の外歯歯車が揺動しながら内接噛合する単一の内歯歯車と、を有する揺動内接噛合式の遊星歯車機構で構成され、前記内歯歯車は、内歯を構成する円柱状の内歯ピンと、該内歯ピンを回転自在に保持するピン溝を有する内歯歯車本体とで構成され、前記外歯歯車の外歯と前記内歯歯車の内歯の歯数差が2であり、かつ、前記内歯ピンの長さをL、直径をdとしたときに、L/dが、該揺動内接噛合式の遊星歯車機構の減速比が20以下の場合は5以上、減速比が21〜30の場合は8以上、減速比が31以上の場合は10以上、となるように設定されている構成とすることにより、上記課題を解決したものである。
本発明においては、内歯ピンを細くすることによって、(すなわち内歯ピンの長さをL、直径をdとしたときの、L/dを大きくすることによって)当該細い内歯ピンを支持するピン溝の内径も小さくできる、という発想により創案された。
但し、この種の揺動内接噛合式の遊星歯車機構においては、内歯ピンの直径は、減速比と強い相関関係にある要素であるため、減速比との関係を無視して該内歯ピンのみを単純に細くすることはできない。
そこで、本発明では、この問題を外歯歯車の外歯と内歯歯車の内歯の歯数差を「2」とし、その上で、減速比及び大きさとの関係で内歯ピンを相対的に細くする(すなわち、減速比に対してL/dを大きくする)ようにして解決している。
この構成により、同じ減速比を実現する場合であっても、より細い(L/dの大きな)内歯ピンを用いることができる。したがって、全長が長くなり易い風力発電設備の減速装置において、特にその内歯歯車のピン溝の加工の削り代を小さくでき、その結果、加工時間を短く、工具の寿命を長くすることができ、結果として低コストで内歯歯車を製造することができる。
風力発電設備の減速装置の内歯歯車を、短時間で且つ低コストで製造することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例に係る風力発電設備の減速装置(動力伝達装置)について詳細に説明する。
始めに、当該減速装置が適用されている風力発電設備のヨー駆動装置の概略から説明する。
図5、図6を参照して、この風力発電設備10は、円筒支柱11の最上部にナセル(発電室)12を備える。図6では、ヨー(Yaw)駆動装置14と、ピッチ(Pitch)駆動装置16が描写されている。ヨー駆動装置14は、円筒支柱11に対するナセル12全体の旋回角を制御するためのものであり、ピッチ駆動装置16は、ノーズコーン18に取り付けられる3枚の風車ブレード20のピッチ角を制御するためのものである。
この実施形態では、ヨー駆動装置14に本発明が適用されているため、ここではヨー駆動装置14について説明する。
このヨー駆動装置14は、モータ22及び出力ピニオン24付きの4個の減速装置G1〜G4及びそれぞれの出力ピニオン24と噛合する1個の旋回用内歯歯車28を備える(旋回用内歯歯車28は、外歯歯車であることもある)。旋回用内歯歯車28は、円筒支柱11側に固定されている。各減速装置G1〜G4は、それぞれナセル12の構造体12A(図1参照)の所定の位置に固定されている。
この構成により、各減速装置G1〜G4のモータ22によって各出力ピニオン24を同時に回転させると、該出力ピニオン24が旋回用内歯歯車28と噛合しながら旋回用内歯歯車28の中心36(図6参照)に対して公転する。この結果、ナセル12の構造体12Aを円筒支柱11に固定された旋回用内歯歯車28に対して相対的に移動させることができ、ナセル12全体を該旋回用内歯歯車28の中心36の周りで旋回させることができる。これにより、ノーズコーン18を所望の方向(例えば風上の方向)に向けることができ、効率的に風圧を受けることができる。
前記減速装置G1〜G4は、それぞれ同一の構成を有しているため、ここでは減速装置G1について説明する。
図1は、本発明の実施形態の一例に係る風力発電設備の減速装置の断面図、図2は、図1の減速装置のII−II線に沿う断面図である。
減速装置G1はモータ22(図1では図示略)、ウォーム減速機構40、揺動内接噛合式の遊星歯車機構44を、動力伝達経路上でこの順に備えている。
モータ22は、図1においては図示が省略されており、取付フランジ46の取付ボルト孔46Aを介して図1の紙面と垂直の方向に取り付けられている。モータ22は、この実施形態では6ポールモータが使用されている(4ポールモータでも可)。モータ22のモータ軸(図示略)には、図示せぬカップリングを介してウォーム減速機構40のウォーム48が連結されている。ウォーム48は、ウォームギヤ50と噛合し、動力の伝達方向を90度変更している。
この実施形態ではウォーム減速機構40の減速比は「40」とされている(入力された回転を1/40に減速する)。これは、ウォーム減速機構40に後述する所望のセルフロック機能(出力側からの負荷で回転しない機能)を持たせることを意図したためである。ウォーム減速機構40のセルフロック機能は、ウォーム48の進み角とウォーム48およびウォームギヤ50の接触部の摩擦係数とにより決定されるが、本実施形態のような円筒ウォームの場合には、減速比が30以上、より好ましくは40以上であれば、ウォーム減速機構40のセルフロック機能により風力発電設備のヨー制御に要求される逆転防止機能(ナセル12が風で振り回されない機能)を確保できる。この実施形態では、ウォーム減速機構40のセルフロック機能を利用することで出力ピニオン24側からの外力に対する反力を提供するようにしているため、モータ22にはブレーキ機構を設けておらず、その分コストダウンを図っている。
ウォームギヤ50は、中間軸52に固定されている。中間軸52は、スプライン54を介して揺動内接噛合式の遊星歯車機構44の入力軸56と連結されている。
揺動内接噛合式の遊星歯車機構44の入力軸56は、第1、第2軸受59、60によって支持されている。入力軸56にはキー58を介して偏心体60A、60Bが一体回転可能に組み込まれている。偏心体60A、60Bは、それぞれ入力軸56の軸心O1に対してΔeずつ互いに逆方向に偏心している。各偏心体60A、60Bの外周にはころ62A、62Bを介して外歯歯車64A、64Bが摺動・回転可能に組み込まれている。
図2を合わせて参照して、外歯歯車64A、64Bは、それぞれ内歯歯車68に内接噛合している。内歯歯車68の内歯は、この実施形態では内歯ピン68Aと、該内歯ピン68Aを回転自在に保持するピン溝68B1を有する内歯歯車本体68Bとによって構成されている。内歯歯車本体68Bは、ケーシング66と一体化されている。外歯歯車64A、64Bには、それぞれ内ピン孔70A、70Bが形成されている。この内ピン孔70A、70Bには内ローラ72の被せられた内ピン74が遊嵌している。内ピン74は出力軸76と一体化されたキャリヤ体76Aに固定(圧入)されている。出力軸76は、転動ローラ(第3軸受)78、及び第4軸受80によって支持され、スプライン83を介して前出の出力ピニオン24と連結されている。
この実施形態では、2枚の外歯歯車64A、64Bが軸方向に並んでいるだけでなく、外歯歯車64Aと外歯歯車64Bの間には該外歯歯車64A、64Bの軸方向の位置決めを行うための支持板82が介在されている。また、内歯歯車68のピン溝68B1が、外歯歯車64A、64Bとの噛合位置よりも更に軸方向外側に延在され、この延在された部分にキャリヤ体76Aを支持する前記転動ローラ(第3軸受)78が、内歯ピン68Aと同軸に組み込まれている。転動ローラ78は、内歯ピン68Aと同径である。
このため、内歯歯車68のピン溝68B1の軸方向長さLd1は、内歯ピン68Aの長さL1のほかに、支持板82および転動ローラ78の分を含めた長さを有しており、極めて長くなっている。なお、外歯歯車64Aと外歯歯車64Bの間には、上記支持板82とは若干機能は異なるものの、例えば、前述の特許文献1の図4で開示されているようなプレート(特許文献1の図4の符号で39)が介在されることもあるが、このようなプレートが外歯歯車64Aと64Bとの間に介在される場合でも、やはり内歯ピン68Aの長さは長くなってしまう。
そこで、この実施形態では、以下の様な構成を採用し、内歯歯車68の加工の容易化を図っている。
図2から明らかなように、この実施形態では外歯歯車64A、64Bの外歯の数が「56」であり、内歯歯車68の内歯(内歯ピン68Aの数)が「58」である。すなわち、外歯歯車64A、64Bの外歯と内歯歯車68の内歯の歯数差は、58−56の「2」である。なお、歯数差を「2」とするための歯形の形成手法等については、特許1208548号に詳細な開示がある。
歯数差が「2」の揺動内接噛合式の遊星歯車機構44では、この実施形態のように外歯歯車64A、64Bの自転を取り出す使用態様においては、(歯数差/外歯歯車の外歯の数)の減速比を得ることができる。したがって、通常、この種の揺動内接噛合式の遊星歯車機構44では、1段で高減速比を得るために歯数差が「1」に設定される。減速比を高くするには、外歯歯車64A、64Bの歯数(内歯歯車68の歯数)を多くすることになる。逆に言うならば、減速比が低いときは、内歯歯車68の外径は大きくなる傾向となってしまう。しかし、歯数差を2に設定することにより、減速比56相当の太さの内歯ピン68Aを用いて減速比28が実現できる(2/56=28)。この定性的傾向を利用して、本実施形態では、内歯ピン68Aの長さL1が80mm、外径d1が8mmに設定されており、L1/d1が、10.0という「細い内歯ピン」の設計を可能としている。また、該細い内歯ピン68Aを回転自在に保持する内歯歯車本体68Bのピン溝68B1も長さLd1に比して内径がD1と細くできている。
因みに、風力発電設備のヨー駆動用の減速装置G1の場合、総減速比は、4ポールモータの場合で1500〜3000、6ポールモータの場合で1000〜2000に設定されるのが好ましい。この実施形態では、6ポールモータが使用されており、ウォーム減速機構での減速比が「40」であるため、減速装置全体の総減速比は、40×28となり、1120である。
なお、この実施形態では、揺動内接噛合式の遊星歯車機構44の減速比が28であり、内歯ピン68Aの長さをL1、外径をd1としたときに、L1/d1を、10.0に設定していた。しかし、該L/dの最適値は、前述したように減速比の影響を受ける。故に、具体的には、L/dは、歯数差を「2」とすることを前提とすることで、内歯ピンの長さをL、外径をdとしたときに、該揺動内接噛合式の遊星歯車機構の減速比が20以下の場合は5以上、減速比が21〜30の場合は8以上、減速比が31以上の場合は10以上、とするとよい。このような値とすることで、結果として内歯歯車本体のピン溝の内径を、該ピン溝の長さに比して小さな内径とすることができ、削り代(削り量)の小さなピン溝とすることができる。
なお、本発明では「細い内歯ピン68Aを使用する」という趣旨からすれば、L/dの上限は特に限定されないが、より好ましくは、該揺動内接噛合式の遊星歯車機構44の減速比が10〜20の場合は6〜12、該減速比が21〜30の場合は8〜15、該減速比が31〜40の場合は10〜18の範囲に設定されるようにするとよい。これらの上限は、内歯ピン68Aの強度の確保や変形のし難さ等から導かれる。
次にこの減速装置G1の作用を説明する。
モータ22のモータ軸の回転は、ウォーム減速機構40のウォーム48及びウォームギヤ50の噛合によって初段減速され、スプライン54を介して揺動内接噛合式の遊星歯車機構44の入力軸56に伝達される。
入力軸56が1回回転すると偏心体60A、60B及びころ62A、62Bを介して外歯歯車64A、64Bが1回揺動する。この実施形態では、内歯歯車本体68Bがケーシング66と一体化されて固定状態にあるため、外歯歯車64A、64Bの1回の揺動により、該外歯歯車64A、64Bが内歯歯車68に対して2歯だけ(歯数差分だけ)相対回転する(入力軸56の回転と逆方向に自転する)。
この内歯歯車68に対する外歯歯車64A、64Bの相対回転(自転)が、内ピン孔70A、70Bと内ピン74(及び内ローラ72)の遊嵌を介してキャリヤ体76Aから取り出され、2/56=1/28、すなわち減速比28の減速を実現することができる。
キャリヤ体76Aの回転は、該キャリヤ体76Aと一体化されている出力軸76へと伝達される。この出力軸76にはスプライン83を介して前出の出力ピニオン24が固定・連結されているため、該出力ピニオン24が、既に説明した旋回用内歯歯車28(図6)と噛合し、この噛合により、ナセル12全体が旋回する。
従来の風力発電設備の減速装置にあっては、外歯歯車と内歯歯車の歯数差が「1」に設定されていたため、同一の減速比を実現するに当たって内歯ピンの外径も大きく(太く)ならざるを得なかった。具体的には、例えば減速比28の場合、従来の内歯ピンのL/dは、4〜5程度であり、長さLに対して外径dが太いものであった。そのため、結局、該太い内歯ピンを保持するピン溝の内径も太くせざるを得ず、大きな削り代が必要とされ、削り屑も大量に発生した。当然、工具の寿命も短かった。
しかし、本実施形態によれば、歯数差が「1」のピン溝と比較して、1本1本のピン溝68B1の内径D1が小さいため、(たとえピン溝68B1の形成本数が倍になったとしても)トータルでの削り代(削り量)を低減することができ、加工時間を短縮できると共に工具の長寿命化が図れる。また、歯数差1の内歯ピンと比べると、内歯ピン68Aの外形d1は小さくなるものの、本数は2倍になっているため、強度の低下を防止でき、また、内歯ピン68A1本1本の円周方向の間隔が小さいため、外歯歯車64A、64Bと内歯歯車68が噛合するときの脈動が小さい等の利点も得られる。
図3、図4に、本発明の他の実施形態の例を示す。
図3、図4には、風力発電設備のヨー駆動装置14(図6参照)に使用する他の減速装置G1bが示されている。この減速装置G1bは、いわゆる振り分け式と称される揺動内接噛合式の遊星歯車機構102を備える。
モータ103(図示略)の回転は、ウォーム減速機構40のウォーム48及びウォームギヤ50の噛合によって初段減速される。ここまでは、先の実施形態と同様である。ウォーム減速機構40の出力軸104は、揺動内接噛合式の遊星歯車機構102のサブ減速機構105の入力軸107と一体化されている。
入力軸107の先端にはピニオン106が取り付けられている。ピニオン106は3個のギヤ111〜113と噛合している(サブ減速機構105を構成)。
3個のギヤ111〜113は、それぞれ3本の偏心体軸121〜123に固定されている。偏心体軸121〜123には、偏心体151A〜153Aと偏心体151B〜153Bが軸方向に並んで設けられている。偏心体151A〜153Aと偏心体151B〜153Bは、それぞれ偏心体軸121〜123に対して同位相で偏心しており、軸受146A〜148A、146B〜148Bを介して外歯歯車144A、144Bがそれぞれ嵌合している。すなわち、偏心体軸121〜123は、入力軸107の軸心O2からオフセットされた位置で外歯歯車144A、144Bを貫通している。
内歯歯車160は、内歯を構成する内歯ピン160Aと、該内歯ピン160Aを回転自在に保持するピン溝160B1を有する内歯歯車本体160Bと、によって構成されている。内歯歯車160の内歯の数(内歯ピン160Aの数)は58であり、外歯歯車144A、144Bの外歯の数56より2だけ多い(歯数差が2)。内歯歯車160の本体160Bは、ケーシング170と一体化されて固定されており、外歯歯車144A、144Bと内歯歯車160との相対回転は、3本の偏心体軸121〜123の軸心O2周りの公転成分(すなわち外歯歯車144A、144Bの自転成分)として出力軸172から取り出される。この出力軸172には、風車ブレード20(図5参照)側に取り付けられた図示せぬピッチ用歯車と噛合する出力ピニオン180が、一体化されている。
この実施形態では、外歯歯車144A、144Bは、各偏心体151A〜153A、151B〜153Bがそれぞれ同時に同位相で同一の回転速度で回転することによって互いに180度の位相差で揺動し、それぞれ内歯歯車160と内接噛合する。外歯歯車144A、144Bを揺動させるためのメカニズムは先の実施形態と若干異なるものの、該外歯歯車144A、144Bが揺動しながら内歯歯車160と内接噛合する作用については、先の実施形態と同様の作用が得られ、(外歯歯車144A、144Bと内歯歯車160の歯数差)/(外歯歯車の歯数)の減速比「2/56=28」が実現できる。
本実施形態は、風力発電設備のヨー駆動用の減速装置G1bに本発明を適用しているものであるが、いわゆる振り分け式と称される揺動内接噛合式の遊星歯車機構との組み合わせでヨー駆動用の減速装置G1bに本発明を適用する場合、本発明の利点を最大限に生かした効果が得られる。
すなわち、ヨー駆動用の減速装置G1bの場合、必要な総減速比が、4ポールモータの場合で1500〜3000、6ポールモータの場合で1000〜2000程度である。前述したように、低コスト化のために、ウォーム減速機構40のセルフロック機能を風車ブレード20側からの反力の提供に活用しようとすると、該ウォーム減速機構40で減速比30以上、好ましくは40程度の減速比が必要となる。本実施形態では、6ポールモータを採用しているため、2段目以降の減速機構は、25程度の減速比が必要とされる。この値の減速比を、歯数差1の外歯歯車および内歯歯車の組み合わせで実現しようとすると、内歯ピンの外径が大きくなり、ピン溝の加工が時間的な面でも工具の寿命的な面でも問題となる。特に、この実施形態のように、反負荷側のキャリヤ体172Bの軸受を構成する転動ローラ(内歯ピン160Aと同径の転動ローラ)174を、ピン溝160B1内に内歯ピン160Aと同軸に配置している場合は、なお更である。
しかしながら、本実施形態では、外歯歯車144A、144Bと内歯歯車160の歯数差が「2」に設定されているため、内歯ピン160Aの数を56とすることで、減速比が28でありながら減速比が56相当の外径d2の細い内歯ピン160A、内径D2の細いピン溝168B1とすることができる。このため、加工の困難性を克服できる。なお、この実施形態に関しても、内歯ピン160Aの長さL2とその外径d2の減速比に対するL2/d2の上限、あるいは適正の範囲は、先の実施形態と同様に捉えることができる。因みに、この実施形態で採用されているL2/d2は、9.0程度である。
この実施形態では、更には、このように「低減速比」でありながら、揺動内接噛合式の遊星歯車機構102の前段にサブ減速機構105を備えた揺動内接噛合式の遊星歯車機構とすることができるため、揺動内接噛合式の遊星歯車機構102に入力されてくる回転をより低くすることができるようになり、揺動内接噛合式の遊星歯車機構102の回転の円滑性および高効率性をより高めることができる。
10…風力発電設備
11…円筒支柱
12…ナセル(発電室)
14…ヨー駆動装置
16…ピッチ駆動装置
22…モータ
24…出力ピニオン
64A、64B…外歯歯車
68…内歯歯車
68A…内歯ピン
68B…内歯歯車本体
68B1…ピン溝
L1…内歯ピンの長さ
d1…内歯ピンの外径
11…円筒支柱
12…ナセル(発電室)
14…ヨー駆動装置
16…ピッチ駆動装置
22…モータ
24…出力ピニオン
64A、64B…外歯歯車
68…内歯歯車
68A…内歯ピン
68B…内歯歯車本体
68B1…ピン溝
L1…内歯ピンの長さ
d1…内歯ピンの外径
Claims (7)
- 風力発電設備に使用する減速装置であって、
最終段が、複数枚の外歯歯車と、該複数枚の外歯歯車が揺動しながら内接噛合する単一の内歯歯車と、を有する揺動内接噛合式の遊星歯車機構で構成され、
前記内歯歯車は、内歯を構成する円柱状の内歯ピンと、該内歯ピンを回転自在に保持するピン溝を有する内歯歯車本体とで構成され、
前記外歯歯車の外歯と前記内歯歯車の内歯の歯数差が2であり、かつ、
前記内歯ピンの長さをL、直径をdとしたときに、L/dが、該揺動内接噛合式の遊星歯車機構の減速比が20以下の場合は5以上、減速比が21〜30の場合は8以上、減速比が31以上の場合は10以上、となるように設定されている
ことを特徴とする風力発電設備の減速装置。 - 請求項1において、
該揺動内接噛合式の遊星歯車機構の減速比が10〜20の場合は6〜12、該減速比が21〜30の場合は8〜15、該減速比が31〜40の場合は10〜18に設定されている
ことを特徴とする風力発電設備の減速装置。 - 請求項1又は2において、
前記揺動内接噛合式の遊星歯車機構よりも前段にウォーム減速機構が配置されており、該ウォーム減速機構の減速比が30以上に設定されている
ことを特徴とする風力発電設備の減速装置。 - 請求項3において、
前記ウォーム減速機構と前記揺動内接噛合式の遊星歯車機構とを備えた前記減速装置の総減速比が、4ポールモータの場合で1500〜3000、6ポールモータの場合で1000〜2000に設定されている
ことを特徴とする風力発電設備の減速装置。 - 請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記内歯歯車の前記ピン溝を、前記外歯歯車が噛合する軸方向位置よりも更に軸方向外側に延在させ、この延在された部分に前記遊星歯車機構のキャリヤ体の軸受として機能する転動ローラが組み込まれた
ことを特徴とする風力発電設備の減速装置。 - 請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記外歯歯車と外歯歯車との間に、該外歯歯車の軸方向の位置規制を行う支持板が組み込まれている
ことを特徴とする風力発電設備の減速装置。 - 請求項1〜6のいずれかにおいて、
前記揺動内接噛合式の遊星歯車機構の前段に、入力軸に設けられたピニオンと、該ピニオンと同時に噛合する複数のギヤとからなるサブ減速機構を有し、かつ
該揺動内接噛合式の遊星歯車機構が、該複数のギヤがそれぞれ固定されると共に前記外歯歯車を揺動させるための偏心体を備えた複数の偏心体軸を備え、かつ該複数の偏心体軸が、それぞれ前記サブ減速機構の前記入力軸の軸心からオフセットされた位置で前記外歯歯車を貫通している遊星歯車機構である
ことを特徴とする風力発電設備の減速装置。
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