[(メタ)アクリレート化合物]
本発明の9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物は、下記一般式(1)で示される化合物である。
一般式(1)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Xは水素原子又はアルキル基のいずれかを示す。
一般式(1)中、Xで表されるアルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
本発明の一般式(1)で示される9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物としては、以下の化合物が挙げられる。すなわち、R6及びR7が同一であって、Xが水素原子の場合は、9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン等が挙げられる。
R6及びR7が同一であって、Xがアルキル基の場合は、6−メチル−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−メチル−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−メチル−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−メチル−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6,11−ジメチル−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6,11−ジメチル−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5,11−ジメチル−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5,11−ジメチル−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1,6−ジメチル−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1,6−ジメチル−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1,5−ジメチル−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1,5−ジメチル−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2,5−ジメチル−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2,5−ジメチル−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン等が挙げられる。
R6及びR7が異なっていて、Xが水素原子の場合は、9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン等が挙げられる。
R6及びR7が異なっていて、Xがアルキル基の場合は、6−メチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−メチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、7−メチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、8−メチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、7−エチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、8−エチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6,11−ジメチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5,11−ジメチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、7,11−ジメチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、8,11−ジメチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、7−エチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、8−エチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1,6−ジメチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1,5−ジメチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1,7−ジメチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1,8−ジメチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、7−エチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、8−エチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2,6−ジメチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2,5−ジメチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2,7−ジメチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2,8−ジメチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、7−エチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、8−エチル−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン等が挙げられる。
なお、本発明の一般式(1)で示される9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物として、1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン環にハロゲン原子が置換した化合物、すなわちXがハロゲン原子である化合物を用いることもできる。該化合物はハロゲン原子を含むという欠点を有するが、ハロゲン原子を有することから、屈折率としては高く、また、該化合物は新規なラジカル重合性化合物であり、かつ、光重合においては、最も一般的な紫外光源である高圧水銀ランプにより容易に重合する化合物となる。例えば、5−クロロ−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−ブロモ−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−ブロモ−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−ブロモ−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−ブロモ−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−ブロモ−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−ブロモ−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−ブロモ−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−ブロモ−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−ブロモ−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−ブロモ−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−ブロモ−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−ブロモ−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−ブロモ−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−ブロモ−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−ブロモ−9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−ブロモ−9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−ブロモ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−ブロモ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、8−クロロ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、7−クロロ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、8−ブロモ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、7−ブロモ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−ブロモ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−ブロモ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、8−クロロ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、7−クロロ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、8−ブロモ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、7−ブロモ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−ブロモ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−ブロモ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、8−クロロ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、7−クロロ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、8−ブロモ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、7−ブロモ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−ブロモ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−ブロモ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、8−クロロ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、7−クロロ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、8−ブロモ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、7−ブロモ−9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン等が挙げられる。
これらの9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物のうち、Xが水素原子であり、R1からR5のすべてが水素原子あるいはR1からR5のいずれか一つがメチル基で他のすべてが水素原子であり、R6及びR7が水素原子かメチル基である化合物が、合成が容易であり、かつ得られる生成物の屈折率が高いことから特に好ましい。
また、本発明の9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物のうち、R6及びR7が同一の化合物は、以下に製造方法を詳しく説明するが、R6及びR7が異なる化合物より、製造工程が簡略であるという点で好ましい。また、一般的にR6及びR7が同一の化合物は、結晶性が良く単離収率が高いという点で好ましい。
一方、本発明の9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物のうち、R6及びR7が異なる化合物は、R6及びR7が同一の化合物より、一般的に融点が低くなる傾向にあり、また、ヘキサン、トルエン等の非極性溶媒や酢酸エチル、テトラヒドロフラン等の一般的な溶媒に対する溶解度が、R6及びR7が同一の化合物より高い傾向にあるため、取扱いやすさという点で好ましい。
[製造方法]
本発明の一般式(1)に示される9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物の製造方法について説明する。
本発明の9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物は、まず、1,4−ナフトキノン化合物とシクロペンタジエン化合物とのディールス・アルダー反応付加物である1,4,4a,9a−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物を製造し、次に、該1,4,4a,9a−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物を接触水素化して1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物とする。そして、該1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物をエノール化し、得られた1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物をハロゲン化(メタ)アクリロイルと反応させることにより、9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を得ることができる。
本発明の9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物の製造ルートは3通りある。まず、本発明の9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物の一般式(1)におけるR6及びR7が同一であるか、異なっているかにより、製造方法が異なる。
また、R6及びR7が同一である場合において、中間体である1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物を単離するか否かによってその製造方法が異なる。
まず、R6及びR7が同一である場合の製造方法について説明する。
(R6及びR7が同一であり、中間体である1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物を単離しない場合の製造方法)
まず、下記第1反応に示したように、出発原料として工業的に入手可能な1,4−ナフトキノン化合物とシクロペンタジエン化合物とをディールス・アルダー反応(DA反応)させた後、接触水素化して、1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物を得る。次いで第2反応に示したように、該1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物を無機塩基の存在下、加熱しエノール化して1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物の無機塩溶液とし、該1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物を単離することなく、ハロゲン化(メタ)アクリロイルと反応させる第3反応より、ジ(メタ)アクリル化することにより、R6及びR7が同一である9,10−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を得ることができる。
(上記の反応式において、Xは水素原子又はアルキル基のいずれかを示し、R1、R2、R3、R4及びR5は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示す。)
(上記の反応式において、Xは水素原子又はアルキル基のいずれかを示し、Mはナトリウム原子、カリウム原子、リチウム原子のいずれかを示し、R1、R2、R3、R4及びR5は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示す。)
(上記の反応式において、Xは水素原子又はアルキル基のいずれかを示し、Mはナトリウム原子、カリウム原子、リチウム原子のいずれかを示し、R1、R2、R3、R4及びR5は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示す。また、R6及びR7は同一であり水素原子又はメチル基を示す。)
第1反応の原料である1,4−ナフトキノン化合物としては、例えば次のような化合物が挙げられる。すなわち、1,4−ナフトキノン、6−メチル−1,4−ナフトキノン、6−エチル−1,4−ナフトキノン、5−メチル−1,4−ナフトキノン、5−エチル−1,4−ナフトキノン等が挙げられる。
シクロペンタジエン化合物としては、シクロペンタジエン、1−メチルシクロペンタジエン、2−メチルシクロペンタジエン、5−メチルシクロペンタジエン等を挙げることができる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することもできる。また、シクロペンタジエン化合物は、対応するジシクロペンタジエン化合物を加熱し、シクロペンタジエン化合物に分解して用いてもよい。
例えば、ジシクロペンタジエンを150度以上に加熱すると熱分解して、シクロペンタジエンとなる。これを冷却することにより、シクロペンタジエンを単離することができる。メチルシクロペンタジエンも同様にして、メチルジシクロペンタジエンを熱分解して得ることができる。このようにして得たシクロペンタジエンあるいはメチルシクロペンタジエンは、室温で徐々に再び二量化するため、すぐに次の反応に用いることが好ましい。シクロペンタジエンあるいはメチルシクロペンタジエンをナフトキノン化合物と混合すると発熱を伴って、ディールス・アルダー反応を起こし、環状付加物を生成する。メチルシクロペンタジエンがメチル基の置換位置の異なる異性体の混合物となっているものの場合は、ディールス・アルダー反応物がシクロペンタジエンを用いた時に比べ、低融点物となる場合が多いが、以下の接触水素化反応、エノール化反応、ジ(メタ)アクリル化反応において、ほぼ同様の反応操作で9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を合成することができる。また、引き続いて説明する中間体を単離する場合のエノール化物の単離操作、R6及びR7が異なる場合の、モノ(メタ)アクリル化反応及びその後の(メタ)アクリル化反応においても、ほぼ同様の反応操作で9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を合成することができる。
1,4−ナフトキノン化合物とシクロペンタジエン化合物とのディールス・アルダー反応物を接触水素化して得られた1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。すなわち、第1反応の原料である1,4−ナフトキノン化合物に対応して、1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、6−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、6−エチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、5−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、5−エチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、11−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、6,11−ジメチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、6−エチル−11−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、5,11−ジメチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、5−エチル−11−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、1−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、1,6−ジメチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、6−エチル−1−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、1,5−ジメチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、5−エチル−1−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、2−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、2,6−ジメチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、6−エチル−2−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、2,5−ジメチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、5−エチル−2−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン等が挙げられる。
1,4−ナフトキノン化合物と、シクロペンタジエン化合物とのディールス・アルダー反応は従来公知の方法で行うことができる。例えば、特開平6-312950号公報の工程1に記載の方法により合成できる。
次に、接触水素化について説明する。1,4,4a,9a−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物は、接触水素化触媒の存在下、容易に2、3位の二重結合を接触水素化することができる。触媒としては炭素−炭素二重結合の接触水素添加反応に一般的に使用される触媒が使用可能であり、例えば、パラジウム担持活性炭、ラネーニッケル、ラネーコバルト、酸化白金、白金担持活性炭、ニッケル珪藻土、銅クロマイトなどの不均一系触媒;またはクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、白金−スズ錯体、第三級ホスフィン−コバルトカルボニル錯体などの均一系触媒を挙げることができる。当該接触水素化反応は水素ガスの存在下に行う。使用する触媒の種類によっては常圧で行うことも可能であるが、加圧下で行うことが反応速度が大である場合が多いため望ましい。加圧下で行う場合には、30MPa以下、好ましくは20MPa以下、更に好ましくは10MPa以下であるのが、反応装置、操作性等の面で工業的に有利である。
次に第2反応であるが、第2反応で用いる無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等が挙げられる。
無機塩基の添加量は、1,4,4a,9a−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物1モルに対し、2.0モル倍以上4.0モル倍未満である。2.0モル倍未満だと1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物が残ってしまい、一方、4.0モル倍より多すぎても添加に見合う効果はなく経済的に不利であるため、好ましくない。
第2反応で用いる溶媒としては、水又は水と混和性の溶媒若しくはそれらの混合溶媒が挙げられる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒が挙げられる。
第2反応の反応温度としては、20℃以上、100℃以下が好ましい。より好ましくは50℃以上、80℃以下である。20℃以下では反応時間がかかりすぎ、100℃以上では、生成物の純度が低下し、共に好ましくない。
第2反応は、通常1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物を水中に分散させ、次いで無機塩基を添加する。無機塩基の添加と同時に、反応液の色が赤くなり、次第に1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物の結晶が溶けて、最後に1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物の無機塩の赤い溶液となる。反応時間は、反応温度にもよるが、通常30分以上、2時間以下である。
次に、第2反応で得られた1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物の無機塩溶液にハロゲン化(メタ)アクリロイル化合物を加える第3反応により、9,10−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を得ることができる。
第3反応で用いるハロゲン化(メタ)アクリロイルとしては、塩化アクリロイル、塩化メタクリロイル、臭化アクリロイル又は臭化メタクリロイルが挙げられる。その中でも特に塩化アクリロイル又は塩化メタクリロイルが収率よく目的物が得られるため好ましい。
第3反応におけるハロゲン化(メタ)アクリロイルの添加量は、1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオールの無機塩化合物1モルに対して、通常2.0モル倍以上6.0モル倍未満、好ましくは2.5モル倍以上4.0モル倍未満である。2.0モル倍より少なすぎる場合は、原料の1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物が未反応のまま残ってしまい、一方、6.0モル倍より多すぎる場合は、ハロゲン化(メタ)アクリロイルが一部重合し、得られた9,10−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物の純度が低下してしまい、いずれも好ましくない。
第3反応において、通常は溶媒の存在下で行なう。溶媒の種類は特に制限されないが、水相及び有機相からなる二相系で反応を行なうことが好ましい。水相及び有機相からなる二相系で(メタ)アクリロイル化する場合、通常は溶媒として、水と、有機相を形成する一又は二以上の有機溶媒とを併用することが好ましい。有機相を形成する有機溶媒の種類は特に制限されないが、比較的低い極性を示し、水に対して混和性を示さない有機溶媒を用いることが好ましい。用いることができる有機溶媒の例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ヘプタン、シクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。単独で用いる場合は、トルエンが好ましく、二種以上を組み合わせて用いる場合の有機溶媒の組み合わせとしては、トルエンとキシレン又はトルエンとヘプタンの組み合わせが好ましい。
水相及び有機相からなる二相系で反応を行なう場合は、相関移動触媒を添加してもよい。相関移動触媒としては例えばテトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウブロマイドム、テトラブチルアンモニウムクロライド等が用いられる。
第3反応において、(メタ)アクリル化反応は冷却しながら行なうことが好ましい。具体的には、反応温度を通常10℃以下、中でも5℃以下で、水相が凝固しない温度以上とすることが好ましい。発熱により反応温度が上昇しすぎると、得られる9,10−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物の選択率が低下する傾向があり、また、得られる9,10−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物が加水分解してしまう場合があり、いずれも好ましくない。
(R6及びR7が同一であり、中間体である1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物を単離する場合の製造方法)
次に、R6及びR7が同一であり、中間体を単離する場合の製造方法、即ち、1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物を単離したのち(メタ)アクリル化する製造方法について説明する。
まず、R6及びR7が同一であり、中間体である1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物を単離しない場合の製造方法で説明した方法と同様の方法で1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物を得る(第1反応)。次いで、該1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物をエノール化し、得られた1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物を単離する(第4反応)。該単離した1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物を(メタ)アクリル化剤と塩基の存在下で反応させる第5反応により、R6及びR7が同一である9,10−ビス [(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を得ることができる。
(上記の反応式において、Xは水素原子又はアルキル基のいずれかを示し、R1、R2、R3、R4及びR5は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示す。)
(上記の反応式において、Xは水素原子又はアルキル基のいずれかを示し、R1、R2、R3、R4及びR5は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示す。)
(上記の反応式において、Xは水素原子又はアルキル基のいずれかを示し、R1、R2、R3、R4及びR5は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示す。また、R6及びR7は同一であり水素原子又はメチル基を示す。)
第1反応で原料として用いる1,4−ナフトキノン化合物、シクロペンタジエン化合物は、R6及びR7が同一であり、中間体である1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物を単離しない場合の製造方法で用いた1,4−ナフトキノン化合物、シクロペンタジエン化合物と同様である。また、第4反応で原料として用いる1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物も第2反応で用いた原料と同様である。
第1反応の条件は、R6及びR7が同一であり、中間体である1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物を単離しない場合の製造方法で説明した方法と同様である。第1反応で得られた1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物をエノール化する第4反応は酸触媒又は無機塩基存在下の2種類の方法で行われる。
まず、酸触媒を用いるエノール化方法について説明する。第4反応は、1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物を酸を触媒として溶媒中加熱することにより行われる。用いる酸触媒としては、硫酸、塩化水素、硝酸、p−トルエンスルホン酸又はメタンスルホン酸、燐酸等が挙げられる。
第4反応において、用いる溶媒としては、特に種類を選ばないが、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸,プロピオン酸等の有機酸等が好適に用いられる。特に芳香族系溶媒を使用した場合は、反応終了後、反応液を冷却すると1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物が析出してくるので、特に望ましい。
第4反応において、エノール化の温度は、50℃以上、150℃以下が好ましく、より好ましくは80℃以上、120℃以下である。50℃以下では反応時間がかかりすぎ、150℃以上では生成物の純度が低下するので、共に望ましくない。エノール化の反応時間は反応温度にもよるが、通常、30分から3時間程度である。反応終了後、反応液を冷却するか又はn−ヘキサン等の貧溶媒に投入することにより、1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物が析出するため、これを濾過等により分離することができる。
次に無機塩基を用いたエノール化方法について説明する。第4反応は、1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物を前記第2反応と同様に、水又は水溶性溶媒若しくは水と水溶性溶媒の混合液中分散し、次いで1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物の2倍モル以上の無機塩基を添加し、加熱して、1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物の無機塩溶液とする。次いで、該水溶液に酸を加えて中和することにより、1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物が得られる。
第4反応において、用いる無機塩基としては、第2反応と同様、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
第4反応において、水混和性溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒等が挙げられる。中でも、反応収率の高さから、ジメチルアセトアミドが特に好ましい。
第4反応において、反応温度としては、20℃以上、100℃以下が好ましい。より好ましくは50℃以上、80℃以下である。20℃以下では反応時間がかかりすぎ、100℃以上では、生成物の純度が低下し、共に好ましくない。
第4反応において、反応時間としては、反応温度にもよるが、通常30分以上、2時間以下である。無機塩基の添加と同時に、液の色が赤くなり、加熱するにつれて次第に結晶が溶けて、最後に赤い溶液となる。次に、得られた1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物の無機塩溶液に酸を加えて、液のpHを微酸性にする。反応液の赤色が消えて、灰白色の1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物が析出するため、これを濾過等により分離することができる。
第4反応で得られた1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物を単離し、第5反応の原料として用いる。該化合物は、そのまま次の第5反応に供してもよいし、さらに再結晶等により精製したものを第5反応に供してもよい。
用いられる1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。すなわち、1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール、6−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール、6−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール、5−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール、5−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール、11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール、6,11−ジメチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール、6−エチル−11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール、5,11−ジメチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール、5−エチル−11−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール、1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール、1,6−ジメチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール、6−エチル−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール、1,5−ジメチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール、5−エチル−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール、2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール、6−メチル−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール、6−エチル−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール、5−メチル−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール、5−エチル−2−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール等である。
次に第5反応について説明する。第4反応で得られた1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物を塩基の存在下、ハロゲン化(メタ)アクリロイルと反応させることにより、9,10−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を得ることができる。
第5反応において、用いるハロゲン化(メタ)アクリロイルとしては、塩化アクリロイル、塩化メタクリロイル、臭化アクリロイル、臭化メタクリロイルが挙げられる。その中でも特に塩化アクリロイル又は塩化メタクリロイルが収率よく目的物が得られるため好ましい。1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物に塩化アクリロイルを反応させると、9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物が得られる。一方、塩化メタクリロイルを反応させると、9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物が得られる。
第5反応において、用いるハロゲン化(メタ)アクリロイルの添加量は1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物1モルに対して、通常2〜4モル倍、好ましくは2.2〜3.0モル倍である。2モル倍より少なすぎる場合は、原料の1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物が未反応のまま残ってしまい、一方、4モル倍より多すぎる場合は、ハロゲン化(メタ)アクリロイルが一部重合し、得られた9,10−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物の純度が低下してしまい、いずれも好ましくない。
第5反応において用いる塩基としては、無機塩基又は有機塩基等が挙げられる。無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムが好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。有機塩基としては、ピリジン、α−ピコリン、γ−ピコリン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。中でも、トリエチルアミンが反応し易いことからより好ましい。
第5反応において用いる塩基の添加量は、ハロゲン化(メタ)アクリロイル1モルに対して、通常0.8モル倍以上1.0モル倍未満である。塩基の使用量が少なすぎると、ハロゲン化(メタ)アクリロイルの滴下中に水層のpHが酸性になり、選択率が低下する場合がある。一方、塩基の使用量が多すぎると、ハロゲン化(メタ)アクリロイルが分解する場合があり好ましくない。
第5反応は、通常は溶媒の存在下で行なう。溶媒の種類は特に制限されないが、塩基が有機塩基の場合は、ベンゼン、トルエン、o−キシレン等の芳香族系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドンのようなアミド系溶媒が好適に用いられる。
また、第5反応において用いる塩基が無機塩基である場合は、水相及び有機相からなる二相系で反応を行なうことが好ましい。水相及び有機相からなる二相系で(メタ)アクリル化する場合、通常は溶媒として、水と、有機相を形成する一又は二以上の有機溶媒とを併用することが好ましい。有機相を形成する有機溶媒の種類は特に制限されないが、比較的低い極性を示し、水に対して混和性を示さない有機溶媒を用いることが好ましい。用いることができる有機溶媒の例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ヘプタン、シクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。単独で用いる場合は、トルエンが好ましく、二種以上を組み合わせて用いる場合の有機溶媒の組み合わせとしては、トルエンとキシレン又はトルエンとヘプタンの組み合わせが好ましい。
第5反応において、水相と有機相との混合比率は、特に制限されるものではないが、水相及び有機相の合計容積に対して、水相の容積比率が、通常50vol%以上、95vol%以下の範囲であることが好ましい。水相の容積比率が50vol%より少なすぎ、又は95vol%より多すぎると、得られる9−(メタ)アクリロイルオキシ−10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物の選択率が低下するため、いずれも好ましくない。
第5反応において用いる塩基が有機塩基である場合は、反応温度の制御および選択率向上の観点から、有機塩基を原料であるハロゲン化(メタ)アクリロイルと1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物との溶液中に攪拌しながら滴下する方法が好ましい。塩基が無機塩基である場合は、反応温度の制御および選択率向上の観点から、原料であるハロゲン化(メタ)アクリロイルを1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物と有機溶媒等との溶液中に攪拌しながら滴下する方法が好ましい。
第5反応において、反応は冷却しながら行なうことが好ましい。具体的には、反応温度を通常10℃以下、中でも5℃以下で、水相が凝固しない温度以上とすることが好ましい。発熱により反応温度が上昇しすぎると、得られる9,10−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物の選択率が低下する傾向があり、また、得られる9,10−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物が加水分解してしまう場合があり、いずれも好ましくない。
第5反応において、(メタ)アクリル化反応に要する時間は、特に限定されないが、塩基が有機塩基である場合は通常0.5時間以上4時間未満、特に0.4時間以上1.0時間未満の範囲が好ましく、塩基が無機塩基である場合は、通常0.1時間以上2時間未満、特に0.2時間以上0.5時間未満が好ましい。
(R6及びR7が異なる場合の製造方法)
次に、本発明の一般式(1)に示される9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物において、R6及びR7が異なる場合は、以下の第1反応、第4反応、第6反応、第7反応を経る手順で製造する。なお、当該製造方法は、R6及びR7が異なる場合の製造方法であるが、同一の手順でR6及びR7が同一の化合物も製造できる。
まず第1反応は、前記R6及びR7が同一であり、中間体である1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物を単離しない場合の製造方法で説明した方法と同様の方法で行なう。次いで、第4反応は前記R6及びR7が同一であり、中間体である1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物を単離する場合の製造方法で説明した方法と同様の方法で行なう。第4反応で単離した1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物を、無機塩基の存在下、ハロゲン化(メタ)アクリロイルと反応させることにより、まずモノ(メタ)アクリル化し、9−(メタ)アクリロイルオキシ−10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を得る(第6反応)。そして、該(メタ)アクリレート化合物をさらにハロゲン化(メタ)アクリロイルと反応させることにより、9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を得ることができる(第7反応)。例えば、1,4−ナフトキノン化合物と、シクロペンタジエン化合物とをディールス・アルダー反応させ(第1反応)、次いで、接触水素化反応により、1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物を得て(第4反応)、単離する。そして、該1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物を無機塩基の存在下、ハロゲン化アクリロイルと反応させて9−アクリロイルオキシ−10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を得て(第5反応)、単離した後、単離した該9−アクリロイルオキシ−10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を無機塩基の存在下、ハロゲン化メタクリロイルと反応させることにより、9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を得ることができる。また、第5反応でハロゲン化メタクリロイルと反応させ、第7反応ではハロゲン化アクリロイルと反応させることにより、9−メタクリロイルオキシ−10−アクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を得ることもできる。
(上記の反応式において、Xは水素原子又はアルキル基のいずれかを示し、R1、R2、R3、R4及びR5は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示す。)
(上記の反応式において、Xは水素原子又はアルキル基のいずれかを示し、R1、R2、R3、R4及びR5は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示す。)
(上記の反応式において、Xは水素原子又はアルキル基のいずれかを示し、R1、R2、R3、R4及びR5は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示す。また、R6は水素原子又はメチル基を示す。)
(上記の反応式において、Xは水素原子又はアルキル基のいずれかを示し、R1、R2、R3、R4及びR5は互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示す。また、R6及びR7もまた同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示す。)
第1反応及び第4反応は、すでに説明した通りである。次に第6反応について説明する。第6反応では、1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物を無機塩基の存在下、ハロゲン化(メタ)アクリロイルと反応させる。用いる1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物としては、R6及びR7が同一であり、中間体である1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物を単離する場合の1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物と同様である。
第6反応において、用いるハロゲン化(メタ)アクリロイルとしては、塩化アクリロイル、塩化メタクリロイル、臭化アクリロイル、臭化メタクリロイル等が挙げられる。その中でも特に塩化アクリロイル又は塩化メタクリロイルが収率よく目的物が得られるため、好ましい。
第6反応において、1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物に塩化アクリロイルを反応させると、9−アクリロイルオキシ−10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物が得られる。一方、塩化メタクリロイルを反応させると、9−メタクリロイルオキシ−10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物が得られる。
第6反応において、用いるハロゲン化(メタ)アクリロイルの添加量は1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物1モルに対して、通常1.0モル倍以上2.0モル倍未満、好ましくは1.2モル倍以上1.5モル倍未満である。1.0モル倍より少なすぎる場合は、原料の1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物が未反応のまま残ってしまい、一方、2.0モル倍以上になると、ハロゲン化(メタ)アクリロイルが一部重合し、得られた9−(メタ)アクリロイルオキシ−10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物の純度が低下してしまい、いずれも好ましくない。
第6反応では、1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物の9位と10位のどちらか一方に、(メタ)アクリロイル基が置換された化合物が選択性よく生成し、両方に(メタ)アクリロイル基が置換された9,10−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物の生成を抑えることができる。
第6反応において用いる無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。特に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
第6反応において用いる無機塩基の添加量は、ハロゲン化(メタ)アクリロイル1モルに対して、通常0.6モル倍以上1.0モル倍未満である。塩基の使用量が少なすぎると、原料ジオールが未反応で残る可能性があり、一方塩基の使用量が多すぎると、ハロゲン化(メタ)アクリロイルが分解する場合があり好ましくない。
第6反応は、通常は溶媒の存在下で行なう。溶媒の種類は特に制限されないが、水相及び有機相からなる二相系で反応を行なうことが好ましい。
水相及び有機相からなる二相系で(メタ)アクリル化する場合、通常は溶媒として、水と、有機相を形成する一又は二以上の有機溶媒とを併用することが好ましい。有機相を形成する有機溶媒の種類は特に制限されないが、比較的低い極性を示し、水に対して混和性を示さない有機溶媒を用いることが好ましい。このような有機溶媒の例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ヘプタン、シクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。単独で用いる場合は、トルエンが好ましく、二種以上を組み合わせて用いる場合の有機溶媒の組み合わせとしては、トルエンとキシレン又はトルエンとヘプタンの組み合わせが好ましい。
第6反応において、反応温度の制御及び選択率向上の観点から、原料であるハロゲン化(メタ)アクリロイルを1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物と有機溶媒等との溶液中に攪拌しながら滴下する方法が好ましい。
また、(メタ)アクリル化反応は冷却しながら行なうことが好ましい。具体的には、反応温度を通常10℃以下、特に5℃以下で、水相が凝固しない温度以上とすることが好ましい。発熱により反応温度が上昇しすぎると、得られる9−(メタ)アクリロイルオキシ−10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物の選択率が低下し、また、得られる9−(メタ)アクリロイルオキシ−10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物が加水分解してしまう場合があり、いずれも好ましくない。
第6反応に要する時間は、特に限定されないが、通常0.1時間以上2時間未満、特に0.2時間以上0.5時間未満の範囲が好ましい。反応終了後は、できるだけ早く反応をクエンチ(停止)することが好ましい。
反応のクエンチの方法は、例えば、反応系(水相)に希塩酸(濃度が1〜3モル/L)、希硫酸(濃度0.5〜1.5モル/L)等の酸を加えて酸性にすることにより行なう。クエンチにより析出した9−(メタ)アクリロイルオキシ−10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物は濾過した後、乾燥して単離することができる。単離した9−(メタ)アクリロイルオキシ−10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物は必要に応じて、粗精製、再結晶精製等の後処理を行なってもよいし、濾過後、乾燥せずに濾過ケーキのまま単離して次の第7反応に供してもよい。
なお、当該第6反応では、1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物の(メタ)アクリル化において、適量の無機塩基と適当な溶媒を用いることにより、1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物のモノ(メタ)アクリル化物が溶媒にほとんど溶けなくなる。そのため逐次反応が抑えられ、10位にも(メタ)アクリロイル基で置換されたジ(メタ)アクリル化物の生成を抑えることができる。
次に第7反応について説明する。第6反応で得られた9−(メタ)アクリロイルオキシ−10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を塩基の存在下、第6反応で用いたハロゲン化(メタ)アクリロイルとは異なるハロゲン化(メタ)アクリロイルと反応させることにより、9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を収率よく得ることができる。例えば、第6反応でハロゲン化アクリロイルを用いた場合は、第7反応でハロゲン化メタクリロイルを用いる。その逆でもよい。もちろん、第6反応と第7反応において、同一のハロゲン化(メタ)アクリロイルを用いることにより、R6及びR7が同一の9,10−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を得ることもできる。
第7反応において、用いるハロゲン化(メタ)アクリロイルの添加量は9−(メタ)アクリロイルオキシ−10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物1モルに対して、通常1モル以上、2モル倍未満、より好ましくは1.2モル倍以上、1.5モル倍未満である。1モル倍より少なすぎる場合は、9−(メタ)アクリロイルオキシ−10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物が未反応のまま残ってしまい、一方、2.0モル倍より多すぎる場合は、ハロゲン化(メタ)アクリロイルが一部重合し、得られた9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物の純度が低下してしまい、いずれも好ましくない。
第7反応において用いる塩基としては、無機塩基又は有機塩基が挙げられる。無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムが好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。有機塩基としては、ピリジン、α−ピコリン、γ−ピコリン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。中でも、トリエチルアミンが反応し易いことからより好ましい。
第7反応において用いる塩基の添加量は、ハロゲン化(メタ)アクリロイル1モルに対して、通常0.6モル倍以上1.0モル倍未満である。塩基の使用量が少なすぎると、原料モノヒドロキシ体が未反応で残る可能性があり、一方塩基の使用量が多すぎると、ハロゲン化(メタ)アクリロイルが分解する場合があり好ましくない。
第7反応は、通常は溶媒の存在下で行なう。溶媒の種類は特に制限されないが、塩基が有機塩基の場合は、ベンゼン、トルエン、o−キシレン等の芳香族系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドンのようなアミド系溶媒が好適に用いられる。
また、第7反応において用いる塩基が無機塩基である場合は、水相及び有機相からなる二相系で反応を行なうことが好ましい。水相及び有機相からなる二相系で(メタ)アクリル化する場合、通常は溶媒として、水と、有機相を形成する一又は二以上の有機溶媒とを併用することが好ましい。有機相を形成する有機溶媒の種類は特に制限されないが、比較的低い極性を示し、水に対して混和性を示さない有機溶媒を用いることが好ましい。用いることができる有機溶媒の例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、ヘプタン、シクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。単独で用いる場合は、トルエンが好ましく、二種以上を組み合わせて用いる場合の有機溶媒の組み合わせとしては、トルエンとキシレン又はトルエンとヘプタンの組み合わせが好ましい。
第7反応において用いる塩基が有機塩基である場合は、反応温度の制御および選択率向上の観点から、有機塩基を原料であるハロゲン化(メタ)アクリロイルと9−(メタ)アクリロイルオキシ−10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物との溶液中に攪拌しながら滴下する方法が好ましい。塩基が無機塩基である場合は、反応温度の制御および選択率向上の観点から、原料であるハロゲン化(メタ)アクリロイルを9−(メタ)アクリロイルオキシ−10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物と有機溶媒等との溶液中に攪拌しながら滴下する方法が好ましい。
第7反応において、反応は冷却しながら行なうことが好ましい。具体的には、反応温度を通常10℃以下、中でも5℃以下で、水相が凝固しない温度以上とすることが好ましい。発熱により反応温度が上昇しすぎると、得られる9,10−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物の選択率が低下する傾向があり、また、得られる9,10−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物が加水分解してしまう場合があり、いずれも好ましくない。
第7反応において、(メタ)アクリル化反応に要する時間は、特に限定されないが、塩基が有機塩基である場合は通常0.5時間以上4時間未満、特に0.4時間以上1.0時間未満の範囲が好ましく、塩基が無機塩基である場合は、通常0.1時間以上2時間未満、特に0.2時間以上0.5時間未満が好ましい。
本発明の9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物において、R6及びR7の置換基で言うと、水素原子であるよりは、メチル基である方が、本発明の製造方法における(メタ)アクリル化収率が高い傾向にある。また、メチルシクロペンタジエンとナフトキノン化合物の反応物を原料として合成される、R1、R2、R3、R4又はR5のいずれか一つにメチル基が置換している1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール化合物の混合物を用いて合成した9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物は、その融点が低くなり扱いやすい傾向にある。そしてまた、R6とR7が異なる9,10−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物も、R6とR7が同一である化合物に比べ、その融点が低くなり扱いやすい傾向にある。
[重合性組成物]
かくして得られた9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物は、ラジカル重合により、重合物とすることができる。本発明の化合物のラジカル重合を促進するためには、ラジカル重合開始剤を添加することが好ましい。そして、9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物とラジカル重合開始剤を混合することにより重合性組成物とすることができる。
このようなラジカル重合開始剤には、光ラジカル重合開始剤と熱ラジカル重合開始剤とがある。紫外線や可視光線等の活性エネルギー線による光ラジカル重合は、硬化が速く、効率よく透明性の高い重合物を得ることができるので、特に本発明の化合物を光学用途に用いる場合は、光ラジカル重合によることが好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2−イソプロピルチオキサントン、2−t−ブチルアントラキノン等が挙げられる。実際の工業製品としてはチバスペシャリティケミカルズ社製のイルガキュア651、イルガキュア184、ダロキュア1173、イルガキュア907、イルガキュア369、ダロキュアTPO、イルガキュア819が挙げられる(イルガキュア、ダロキュアはチバスペシャリティケミカルズ社の登録商標)。
本発明の重合性組成物において、9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を単独で用いて、重合物とすることもできるが、9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物以外の通常のラジカル重合性化合物を加えて共重合性の重合性組成物として共重合させることもできる。
共重合させるラジカル重合性化合物として、例えば、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、ポリオールアクリレート、ポリエーテルアクリレート、シリコーン樹脂アクリレート、イミドアクリレートさらには、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、p−トリルアクリレート、p−トリルメタクリレート、m−トリルアクリレート、m−トリルメタクリレート、o−トリルアクリレート、o−トリルメタクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、ビフェニル−4−イル−アクリレート、ビフェニル−4−イル−メタクリレート、4−フェノキシフェニルアクリレート、4−フェノキシフェニルメタクリレート、2−フェノキシフェニルアクリレート、2−フェノキシフェニルメタクリレート、2−(ビフェニル−2−イルオキシ)エチルアクリレート、2−(ビフェニル−2−イルオキシ)エチルメタクリレート等が挙げられる。
これらのラジカル重合性化合物と本発明の9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物とを共重合することにより、当該9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物以外のラジカル重合性化合物単独での重合に比べ、得られる重合物の屈折率向上のほか、耐溶剤性、硬度、あるいは酸素非透過性などを高めることができる。
また、2−(ビフェニル−4−イルオキシ)エチルアクリレート、2−(ビフェニル−4−イルオキシ)エチルメタクリレート等のビフェニル系アクリレート、9,9−ビス[4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ)プロポキシフェニル]フルオレン、9,9−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス[4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス{4−[2−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−エトキシ]フェニル}フルオレン、9,9−ビス[4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ)プロポキシ−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンのグリシジルエーテルのアクリル酸付加物等のフルオレン系アクリレート等の屈折率の高いラジカル重合性化合物と共重合させることもできる。
光ラジカル重合開始剤の添加濃度は、9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物および必要に応じて併用されるラジカル重合性化合物の合計重量に対して0.1〜5重量%の範囲から選ばれ、好ましくは0.5〜2重量%である。0.1重量%より少ないと重合速度が遅く、5重量%より多いと重合物の物性が悪化するので好ましくない。
また、9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物は熱ラジカル重合開始剤を用いて重合物となす事もできる。
熱ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物やアゾ系化合物等のどちらでも使用可能である。有機過酸化物としては、例えばt− ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t− ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,6−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート類等のパーオキシ エステル類、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,6− トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類、 ラウロイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド 類等を挙げることができる。またアゾ系化合物の開始剤 としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリルや、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)等のアゾニトリル類を挙げることができる。
本発明の重合性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、希釈剤、着色剤、有機又は無機の充填剤、レベリング剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤、滑剤、可塑剤等の各種樹脂添加剤を配合してもよい。
[重合方法]
当該光ラジカル重合性組成物の重合はフィルム状で行うこともできるし、塊状に硬化させることも可能である。フィルム状に重合させる場合は、液状の当該重合性組成物をたとえばポリエステルフィルムなどの基材に、たとえばバーコーターなどを用いて膜厚5〜300μmになるように塗布する。本発明の9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物は、このような薄膜だけでなく、500μmのような厚膜においても容易に重合させることができる。
このようにして調製した塗布膜に活性エネルギー線を照射することにより重合させることができる。用いることができる光源としては、光ラジカル重合開始剤によって異なるが、250〜500nmの波長の活性エネルギー線が用いられる。したがって、上記の波長の活性エネルギー線を照射できる光源として、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、UV−LEDランプ、青色LEDランプ、白色LEDランプ等の光源が使用可能である。また、太陽光線を使用することもできる。特に、本発明の9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物は、UV硬化装置として最も広く用いられている光源である高圧水銀ランプ(波長366nm)をもちいて重合させることができることから、工業的に非常に有用な化合物である。
光ラジカル重合の判定は、タック・フリーテスト(指触テスト)に基づいて行った。すなわち、光照射によりフィルム表面の光ラジカル重合性組成物のタック(べたつき)が取れるまでの時間を硬化時間とした。
このようにして得られた、9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を重合させて得られるフィルム、シートもしくは塊状物は、高い屈折率を示し、またその構造から、耐湿性、高い耐熱性、高硬度、高光沢性等が期待できる工業的に有用なものである。
下記の実施例により本発明を例示するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。特記しない限り、すべての部および百分率は重量基準である。
生成物の確認は下記の機器による測定により行った。
(1)融点:ゲレンキャンプ社製の融点測定装置、型式MFB−595(JIS K0064に準拠)
(2)屈折率:アッベ屈折率計:エルマー社製、形式ER−7MW−H
(3)赤外線(IR)分光光度計:日本分光社製、型式IR−810
(4)核磁気共鳴装置(NMR):日本電子社製、型式GSX FT NMR Spectorometer
(合成例1)1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオンの合成<第1反応>
和光純薬製ジシクロペンタジエン120gを300mlナス型フラスコに量り取り、フリードリッヒ冷却管を備えた蒸留装置にて185℃のオイルバスで加熱し、熱分解して溜出して来たシクロペンタジエン(溜出温度40℃)を和光純薬製塩化メチレン60gの入った200mlナスフラスコで捕集し、捕集するナスフラスコはドライアイス・アセトンで冷却しながら行った。上記の方法で得られたシクロペンタジエン64g(塩化メチレン60g含む)を500ml四口フラスコに移し入れ、ドライアイス・アセトンで−60℃に冷却した。撹拌下で1,4−ナフトキノン(川崎化成工業製品)128gと塩化メチレン200gのスラリーを15分掛けて添加した。添加終了後、ドライアイス・アセトンの冷却を止め、発熱反応により内温が45℃まで上昇し、下降するまで撹拌を続けた。内温が下がり始めたらバス温35℃の温浴で30分攪拌した。反応液を1Lナス型フラスコに移し変え、和光純薬製メタノール300mlを加え、50℃で塩化メチレン250gを溜去し、晶析させた。析出した結晶を吸引濾過し、結晶をメタノール50mlで3回洗浄した。かくして1,4,4a,9a−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオンの白色結晶170gを得た。原料1,4−ナフトキノンに対する収率は94モル%であった。
次に、上記と同様の方法で得られた1,4,4a,9a−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン70gを300mlガラス製オートクレーブに量り取り、溶媒としてオルソキシレン150g、水添触媒としてPd/C1gを加え、0.2MpaGの条件下で水素を供給し、反応させた。反応終了後、Pd/Cを濾過し、反応液を減圧濃縮し、オルソキシレン130gを溜去させ、メタノール50gを加え晶析させた。析出した結晶を吸引濾過し、メタノール50mlで洗浄・乾燥し、1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオンの白色結晶72gを得た。1,4,4a,9a−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオンに対する収率は85モル%であった。
(1)融点:116−117℃
(2)IR(KBr,cm−1):2980,2960,2880,1670,1590,14 78,1452,1322,1302,1262,1168,1050,998,900,820,757,730,540
(3)1H−NMR(CDCl3,400MHz):δ=1.11−1.21(2H,m),1.41−1.46(1H,m),1.46−1.54(2H,m),1.58−1.65(1H,m),3.03(2H,s),3.20(2H,s),7.72−7.80(2H,m),8.08−8.16(2H,m).
(合成例2)1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオールの合成<第4反応、塩基性条件>
温度計、攪拌機付きの300ml三口フラスコ中で、合成例1と同様にして得られた1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン11.3g(50ミリモル)を脱気水100g中十分にスラリー化した。該スラリーに水酸化ナトリウム6.0g(150ミリモル)の脱気水20gの溶液を加えた。薄赤くなったスラリーを60℃で30分加熱して真っ赤な溶液となった。該溶液を氷水で冷やした後、1000mlの酸性水溶液に添加した。白い沈殿が多量に生成するので、吸引濾過、乾燥し、1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオールの白い粉末を10.6g得た。原料の1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオンに対する収率は94モル%であった。
(1)融点:157−159℃
(2)IR(KBr,cm−1):3260,2970,2880,1612,1450,1390,1320,1296,1272,1224,1172,1158,1083,1040,972,928,878,772,758,645.
(3)1H−NMR(CDCl3,400MHz):δ=1.30−1.37(1H,m),1.60−1.71(2H,m),1.78−1.85(1H,m),1.92−2.03(2H,m),3.62(2H,s),4.72(2H,s),7.39−7.48(2H,m),8.01−8.09(2H,m).
(合成例3)1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオールの合成<第4反応、酸性条件>
温度計、攪拌機付きの100ml三口フラスコに合成例1と同様にして得られた1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン
5.65g(25ミリモル)、トルエン20g、メタンスルホン酸50mgを加え、窒素雰囲気下105℃で1時間加熱した。得られた反応液を冷却した後、n−ヘキサン200mlに投入し、白い沈殿を得た。吸引濾過、乾燥し、1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオールの白い粉末を4.09g得た。原料の1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオンに対する収率は72モル%であった。
(合成例4)9−アクリロイルオキシ−10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの合成<第6反応>
温度計、攪拌機付きの容積が300mlの三口フラスコに、窒素雰囲気下、合成例2で得られた1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール4.52g(20ミリモル)を水40gでスラリー化したものを加えた。そこへ、水酸化ナトリウム1.0g(25ミリモル)を水6gで溶解した溶液を加えた。水酸化ナトリウム水溶液の添加により、赤色の溶液となるので、該溶液を氷水で冷やし、そこへ塩化アクリロイル2.75g(30ミリモル)とトルエン8gとヘキサン4gを混合した溶液を加え、良く攪拌した。すると、直ちに溶液の色が消えて無色となった。その後、水層を捨て、残りの有機層を水15mlで良く洗った。ついで、残りのスラリーを吸引濾過し、ろ別した固形分を最初に水洗い、次にトルエン洗いした。トルエン洗いと同時に固形分の色は黄色から白色になった。この固形分を乾燥して、白色の粉末1.78gを得た。この白色の粉末を同定したところ、9−アクリロイルオキシ−10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンであることがわかった。原料である1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオールに対する収率は32モル%であった。
(1)融点:140−142℃
(2)屈折率:nD=1.651
(3)IR(KBr,cm−1): 3480,2980,2950,2874,1720,1660,1620,1590,1403,1378,1312,1262,1250,1217,1170,1080,1040,974,802,762,752,570.
(4)1H−NMR(CDCl3,400MHz):δ=1.31−1.48(2H,m),1.60−1.68(1H,m),1.79−1.88(1H,m),1.88−2.00(2H,m),3.47(1H,s),3.60(1H,s),5.04(1H,s),6.10(1H,d,J=9H),6.49(1H,dd,J1=17Hz,J2=9Hz),6.74(1H,d,J=17Hz),7.40−7.48(2H,m),7.67−7.76(1H,m),8.02−8.12(1H,m).
(合成例5)9−メタクリロイルオキシ−10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの合成<第6反応>
温度計、攪拌機付きの容積が300mlの三口フラスコに、窒素雰囲気下、合成例2と同様にして得られた1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール4.52g(20ミリモル)を水40gでスラリー化したものを加えた。そこへ水酸化ナトリウム1.0g(25ミリモル)を水6gに溶解した溶液を加えた。水酸化ナトリウム水溶液の添加により、赤色の溶液となるので、該溶液を氷水で冷やし、そこへ塩化メタクリロイル3.12g(30ミリモル)とトルエン8gとヘキサン4gを混合した溶液を加え、良く攪拌した。攪拌5分後、溶液の色が消えて無色となった。水層を捨て、残りの有機層のスラリーを水15mlで良く洗った。ついで、残りの有機層のスラリーを吸引濾過し、固形分を最初に水洗い、次にトルエン洗いした。トルエン洗いと同時に固形分の色は黄色から白色になった。この固形分を乾燥して、白色の粉3.51gを得た。この白色の粉を同定したところ、9−メタクリロイルオキシ−10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンであることがわかった。原料である1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオールに対する収率は59モル%であった。
(1)融点:142−143℃
(2)屈折率:nD=1.635
(3)IR(KBr,cm−1):3490,3070,2980,2950,2850,1720,1640,1590,1438,1380,1302,1288,1268,1217,1160,1145,1120,1095,955,957,760,550.
(4)1H−NMR(CDCl3,400MHz):δ=1.32−1.48(2H,m),1.60−1.67(1H,m),1.80−1.88(1H,m),1.88−2.00(2H,m),2.16(3H,s),3.43(1H,s),3.58(1H,s),4.96(1H,s),5.83(1H,s),6.51(1H,s),7.38−7.47(2H,m),7.68−7.74(1H,m),8.04−8.12(1H,m).
(実施例1)9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの合成<第2,3反応>
窒素雰囲気下、温度計、攪拌機付きの200ml四口フラスコに、合成例1と同様にして得られた1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン5.0g(22ミリモル)、イオン交換水50g、水酸化ナトリウム2.64g(66ミリモル)、テトラブチルアンモニウムブロマイド0.04g(0.1ミリモル)を加え溶液とする。80℃で1時間攪拌してエノール化した後、20℃以下まで冷却した。そこへアクリル酸クロライド6.0g(66ミリモル)のトルエン(45g)溶液を20℃以下で1時間かけて滴下し、さらに1時間攪拌した。析出した結晶を吸引濾過し、イオン交換水、メタノールで洗浄後乾燥することにより、9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの真っ白い結晶が4.8g得られた。原料1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオンに対する収率は65モル%であった。
(1)融点:168−169℃
(2)屈折率:nD=1.622
(3)IR(KBr,cm−1):760、1120、1220、1360、1410、1630、1720、3000、3450
(4)1H−NMR(CDCl3,400MHz):δ=1.50−1.52(m,2H),1.63−1.66(m,1H),1.88−1.95(m,3H),3.46−3.47(m、2H)、6.13(dd,J1=1.4Hz、J2=10.3Hz、2H),6.51(dd、J1=10.5Hz、J2=17.4Hz、2H),6.75(dd、J1=1.4Hz、J2=17.4Hz,2H)、7.43−7.46(m,2H),7.77−7.79(m,2H)
(実施例2)9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの合成<第2,3反応>
窒素雰囲気下、温度計、攪拌機付きの200ml四口フラスコに、合成例1と同様にして得られた1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン10.0g(44ミリモル)、イオン交換水100g、水酸化ナトリウム5.3g(132ミリモル)、テトラブチルアンモニウムブロマイド0.08g(0.2ミリモル)を加え溶液とする。80℃で1時間攪拌してエノール化した後、20℃以下まで冷却した。そこへメタクリル酸クロライド13.8g(132ミリモル)のトルエン(35g)溶液を20℃以下で1時間かけて滴下し、さらに1時間攪拌した。析出した結晶を吸引濾過し、イオン交換水、メタノールで洗浄後乾燥することにより、9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの真っ白い結晶が8.4g得られた。原料1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオンに対する収率は53モル%であった。
(1) 融点:176−177℃
(2) 屈折率:nD=1.619
(3) IR(KBr,cm−1):760、950、1130、1300、1360、1640、1730、2975、3450
(4) 1H−NMR(CDCl3,400MHz):δ=1.50−1.53(m,2H),1.63−1.65(m,1H),1.89−1.94(m,3H),2.17(s、6H)、3.45−3.46(m、2H)、5.87(s、2H)、6.53(s、2H)、7.42−7.46(m,2H),7.76−7.80(m,2H)
(実施例3)9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの合成<第5反応>
温度計、攪拌機付きの200ml三口フラスコに、合成例3と同様にして得られた1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール4.52g(20ミリモル)、アセトン20g、塩化アクリロイル4.7g(45ミリモル)を加え溶液とする。次いで、トリエチルアミン4.0gのアセトン5g溶液を滴下する。滴下に従い、トリエチルアミンの塩酸付加物の結晶が析出する。30分攪拌後、水7g加えると、トリエチルアミンの塩酸塩が溶解し、均一溶液となる。ついで、さらに水10gを添加すると、結晶が徐々に析出してきた。吸引濾過、水洗い、メタノール洗い、乾燥し、9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの白い結晶が3.7g(11ミリモル)得られた。原料1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオールに対する収率は55モル%であった。
得られた結晶を分析したところ、実施例1で得られた9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンと同じ、融点、屈折率、IRスペクトル、1H−NMRスペクトルを示した。
(実施例4)9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの合成<第5反応>
温度計、攪拌機付きの200ml三口フラスコに、合成例3と同様にして得られた1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオール4.52g(20ミリモル)、アセトン25g、塩化メタクリロイル5.2g(50ミリモル)を加え溶液とする。次いで、トリエチルアミン4.0gのアセトン6g溶液を滴下する。滴下に従い、トリエチルアミンの塩酸付加物の結晶が析出する。30分攪拌後、水10g加えると、トリエチルアミンの塩酸塩が溶解し、均一溶液となる。ついで、さらに水14gを添加すると、結晶が徐々に析出してきた。吸引濾過、水洗い、メタノール洗い、乾燥し、9,10−ビス(メタアクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの真っ白い結晶が4.5g(12.4ミリモル)得られた。原料1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオールに対する収率は62モル%であった。
得られた結晶を分析したところ、実施例2で得られた9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンと同じ、融点、屈折率、IRスペクトル、1H−NMRスペクトルを示した。
(実施例5)9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの合成<第7反応>
温度計、攪拌機つきの200ml三口フラスコ中、合成例5と同様にして得られた9−メタクリロイルオキシ−10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン2.92g(10ミリモル)をトルエン20gに加えてスラリーとし、次いで、塩化アクリロイル1.17g(13ミリモル)を加えた。該スラリーにトリエチルアミン1.2g(12ミリモル)のトルエン5g溶液を氷水で冷やしながら添加した。いったん溶けてその後、塩化アンモニウムの結晶が多量に出た。室温で30分攪拌したのち、水12を加え、無機性結晶を溶解し、2層となした。トルエン層を水洗いし、次いでメタノール25g加え、濃縮した。結晶が析出するので、吸引濾過・乾燥し、9−メタクリロイルオキシ−10−アクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの白色結晶を2.0g(5.8ミリモル)得た。原料9−メタクリロイルオキシ−10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンに対する収率は58モル%であった。
(1)融点:138−139℃
(2)屈折率 :nD=1.608
(3)IR(KBr,cm−1):2990,2960,2880,1740,1732,1636,1414,1360,1312,1298,1250,1180,1168,1140,1080,1040,990,964,808,768,758.
(4)1H−NMR(CDCl3,400MHz):δ=1.45−1.54(m,2H),1.64(d,J=8Hz,1H)),1.83−1.97(m,3H),2.16(s,3H),3.46(s,2H),5.86(s,1H),6.11(d,J=9Hz,1H),6.48(dd,J1=17Hz,J2=9Hz,1H),6.53(s,1H),6.73(d,J=17Hz,1H),7.38−7.47(m,2H),7.72−7.81(m,2H).
実施例5で得られた9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの融点は、138−139℃であり、実施例1で得られた9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの融点168−169℃や実施例2で得られた9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの融点176−177℃に比べ、低い値を示していることがわかる。
(実施例6)9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの合成<第7反応>
温度計、攪拌機つきの200ml三口フラスコ中、合成例4と同様にして得られた9−アクリロイルオキシ−10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン2.80g(10ミリモル)をトルエン20gを加えてスラリーとし、次いで、塩化メタクリロイル1.35g(13ミリモル)を加えた。該スラリーにトリエチルアミン1.2g(12ミリモル)のトルエン5g溶液を氷水で冷やしながら添加した。いったん溶けてその後、塩化アンモニウムの結晶が多量に出た。室温で30分攪拌したのち、水10gを加え、無機性結晶を溶解し、2層となした。トルエン層を水洗いし、次いでメタノール30g加え、濃縮した。結晶が析出するので、吸引濾過・乾燥し、9−アクリロイルオキシ−10−メタクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの合成の白色結晶を2.4g(6.9ミリモル)得た。原料9−アクリロイルオキシ−10−ヒドロキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンに対する収率は69モル%であった。
得られた結晶を分析したところ、実施例5で得られた9−メタクリロイルオキシ−10−アクリロイルオキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンと同じ、融点、屈折率、IRスペクトル、1H−NMRスペクトルを示した。
実施例1,2,5で得られた化合物の屈折率の値から分かるように、本発明の9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物は、いずれも1.60以上という高い屈折率を示している。そのことから、本発明の9,10−2置換[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を重合した重合体もまた高屈折率を示し、工業的に有用な化合物であることがいえる。
(実施例7)9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンとトリメチロールプロパントリアクリレートの共重合反応
実施例1と同様にして得られた9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン10部、トリメチロールプロパントリアクリレート90部に対し2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(チバスペシャリティケミカルズ社製イルガキュア369)0.5部を混合し、100℃のオイルバス中に浸漬して溶融した。得られた光ラジカル重合性組成物の融液をガラスプレパラートの上に膜厚が10μmになるように塗布し、その後、窒素雰囲気下、100℃に保温した状態で、表面に高圧水銀ランプ(波長366nmにおける照射強度が1mW/cm2)を照射したところ、10秒でベタつきが無くなり、硬化した。
重合の進行とともにうす黄色に着色することがよくあるが、当該溶融物の重合においては、まったく着色することなく、この得られた重合物は、無色透明であり、蛍光もなく、UV吸収も330nm以上には認められなかった。
(比較例1)トリメチロールプロパントリアクリレートの重合反応
9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンを用いず、トリメチロールプロパントリアクリレート100部とした以外は、実施例7と同様に行ったところ、10秒でベタつきが無くなり、硬化した。
(実施例8)9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンとメタクリル酸メチルの共重合反応と重合物の屈折率
実施例1と同様にして得られた9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン10部、メタクリル酸メチル90部に対しアゾビスイソブチロニトリル0.1部を混合し、80℃のホットプレート上で撹拌しながらシロップ状になるまで加熱する。そして、シロップ状にしたものを、2枚のガラス板と塩ビ製チューブにより構成された厚み2.0mm、20mm角のセルに注入し、70℃で3時間ついで100℃で1時間加熱し重合を行った。重合後、セルを解体し共重合物を取り出して屈折率nDを測定したところ1.503であった。
得られた重合物は、無色透明であり、蛍光もなく、UV吸収も330nm以上には認められなかった。
(比較例2)メタクリル酸メチルの重合反応と重合物の屈折率
9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンを用いず、メタクリル酸メチル100部とした以外は、実施例8と同様に行い、得られた重合物の屈折率nDを測定したところ1.490であった。
(実施例9)9−(アクリロイルオキシ)−10−(メタクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンとメタクリル酸メチルの共重合反応と重合物の屈折率
9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンを実施例5と同様にして得られた9−(アクリロイルオキシ)−10−(メタクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンとした以外は、実施例8と同様に行い、得られた重合物の屈折率nDを測定したところ1.502であった。
得られた重合物は、無色透明であり、蛍光もなく、UV吸収も330nm以上には認められなかった。
以上の結果より、次のことが明らかである。すなわち、実施例7と比較例1より、本発明の9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンは、トリメチロールプロパントリアクリレートのような既存のラジカル重合性化合物と共重合させることができ、高圧水銀ランプでも重合可能であることが分かる。また、実施例8,9、比較例2より、本発明の9,10−ビス(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン又は9,10−ビス(メタクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン10部とメタクリル酸メチル90部を共重合して得た重合物の屈折率が1.503又は1.502であるのに対して、メタクリル酸メチルの単独重合物の屈折率が1.490であり、本発明の化合物を共重合することにより、重合物の屈折率が0.013又は0.012高くなっていることが分かる。そのことから、本発明の9,10−2置換(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物は、熱重合も可能であり、メタクリル酸メチルのような既存のラジカル重合性化合物と共重合させることができ、得られる重合物の屈折率を高める効果があることが分かる。よって、本発明の9,10−2置換(アクリロイルオキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物は、高屈折率な重合体を合成するうえで、工業的に有用な化合物であるといえる。