JP2012251047A - インク組成物及びインクジェット記録方法 - Google Patents

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【課題】発色性および耐擦性に優れ、かつ濃淡ムラが低減され画像が得られると共に、保存安定性に優れ、かつノズルの目詰まりを低減できるインク組成物、及びそれを用いたインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るインク組成物は、インク吸収性の被記録媒体、及び、インク非吸収性または低吸収性の被記録媒体に記録されるインク組成物であって、粒子状の樹脂分散剤に含有されてなる顔料と、1気圧下での沸点が180〜230℃の範囲内であるアルキルポリオール類と、オレフィン系モノマーと非プロトン性極性基を有するモノマーとの共重合体を少なくとも含み、かつ体積平均粒子径が200nm以上で最低造膜温度(MFT)が100℃未満であるポリマー粒子と、を含んでなり、1気圧下での沸点が280℃以上のアルキルポリオール類を実質的に含まない。
【選択図】なし

Description

本発明は、インク組成物及びこれを用いたインクジェット記録方法に関する。
従来、インクジェット記録用ヘッドのノズルから吐出させた微小なインク滴によって画像や文字を記録する、いわゆるインクジェット記録方法が知られている。このようなインクジェット記録方法に用いられるインク組成物としては、各種の染料及び/又は顔料等の色材を高沸点有機溶剤及び水の混合物に溶解ないし分散させたものが広く利用されている。かかる高沸点有機溶剤は、低揮発性及び保水能力に優れていることから、インクジェット記録用ヘッドのノズルの乾燥防止に寄与している。
ところで、上記のインクジェット記録方法に用いられるインク組成物は、種々の被記録媒体への記録に利用されてきた。例えば、特許文献1〜特許文献4には、印刷本紙、合成紙、フィルム等のインク非吸収性又は低吸収性の被記録媒体に記録可能なインク組成物が記載されている。また、特許文献5には、普通紙等のインク吸収性の被記録媒体に記録可能なインク組成物が記載されている。このような種々の被記録媒体に対して記録される画像は、定着性および発色性に優れていることが要求される。
特開2007−217671号公報 特開2008−101192号公報 特開2009−67909号公報 特開2008−260926号公報 特開2009−287015号公報
上記のインク組成物は、高沸点有機溶剤を含有するため、インク非吸収性又は低吸収性の被記録媒体上に記録した際に、どうしてもインクの乾燥が遅くなる傾向があった。その結果、記録された画像や文字の耐擦性が低下したり、特にベタ部等のインク量の多い部分においては濃淡ムラが発生しやすい傾向があった。一方、高沸点有機溶剤を含有しないインク組成物では、インクジェット記録用ヘッドのノズルの乾燥を防止することができずノズルの目詰まりが生じやすくなると共に、インクの保存安定性も低下する傾向があった。
ところで、上記のインク組成物は、被記録媒体の種類に適した成分に調整されている。そのため、上述したインク非吸収性又は低吸収性の被記録媒体に記録可能なインク組成物を用いて、インク吸収性の被記録媒体に対する記録を行うと、記録される画像の発色性が低下する等の不具合が生じる場合があった。また、上述したインク吸収性の被記録媒体に記録可能なインク組成物を用いて、インク吸収性の被記録媒体に対する記録を行うと、記録される画像の定着性に優れず、耐擦性の低下等の不具合を生じる場合があった。このように、一のインク組成物を用いて、種々の被記録媒体に対して良好な画像を記録することが困難な場合があった。
本発明に係る幾つかの態様は、前記課題の少なくとも一部を解決することで、種々の被記録媒体に記録した際に、発色性および耐擦性に優れ、かつ濃淡ムラが低減され画像が得られると共に、保存安定性に優れ、かつノズルの目詰まりを低減できるインク組成物、及びそれを用いたインクジェット記録方法を提供するものである。
[適用例1]
本発明に係るインク組成物の一態様は、
インク吸収性の被記録媒体、及び、インク非吸収性または低吸収性の被記録媒体に記録されるインク組成物であって、
粒子状の樹脂分散剤に含有されてなる顔料と、
1気圧下での沸点が180〜230℃の範囲内であるアルキルポリオール類と、
オレフィン系モノマーと非プロトン性極性基を有するモノマーとの共重合体を少なくとも含み、かつ体積平均粒子径が200nm以上で最低造膜温度(MFT)が100℃未満であるポリマー粒子と、
を含んでなり、
1気圧下での沸点が280℃以上のアルキルポリオール類を実質的に含まない。
適用例1のインク組成物によれば、種々の被記録媒体に記録した際に、発色性および耐擦性に優れ、かつ濃淡ムラが低減され画像が得られると共に、保存安定性に優れ、かつノズルの目詰まりを低減できる。
[適用例2]
適用例1のインク組成物において、
さらに、デービス法により算出されたHLB値が4.2〜8.0の範囲内であるグリコールエーテル類を含むことができる。
[適用例3]
適用例1又は適用例2に記載のインク組成物において、
前記グリコールエーテル類中のアルキル基が分岐構造を有することができる。
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例に記載のインク組成物において、
さらに、体積平均粒子径が200nm未満であり、かつ最低造膜温度(MFT)が100℃以上であるワックス粒子を含むことができる。
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか一例のインク組成物において、
前記粒子状の樹脂分散剤が、
少なくとも、塩生成基含有モノマー由来の構成単位と、マクロマー由来の構成単位および疎水性モノマー由来の構成単位の少なくとも一方と、を備えることができる。
[適用例6]
適用例5のインク組成物において、
さらに、前記粒子状の樹脂分散剤が、一般式(1)で表されるモノマー由来の構成単位を備えることができる。
CH=C(R)COO(RO) ・・・(1)
(式(1)中、Rは、水素原子または炭素数1〜5の範囲内である低級アルキル基、
は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の範囲内である2価の炭化水素基、
は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の範囲内である1価の炭化水素基、または炭素数1〜9の範囲内であるアルキル基を有していてもよいフェニル基、
nは、平均付加モル数を示し、1〜60の範囲内である。)
[適用例7]
本発明に係るインクジェット記録方法の一態様は、
被記録媒体上に適用例1ないし適用例6のいずれか一例に記載のインク組成物の液滴を吐出して画像を形成する第1工程と、
前記第1工程時または前記第1工程後において前記被記録媒体上の前記インク組成物を乾燥させる第2工程と、
を含む。
適用例7のインクジェット記録方法によれば、インクの吐出安定性に優れるとともに、発色性および耐擦性に優れ、かつ濃淡ムラが低減された画像が得られる。
[適用例8]
適用例7のインクジェット記録方法において、
前記第2工程は、前記被記録媒体を40℃以上80℃以下に加熱することにより行われることができる。
[適用例9]
適用例7または適用例8のインクジェット記録方法において、
前記被記録媒体が、インク吸収性、インク非吸収性または低吸収性の被記録媒体であることができる。
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
1.インク組成物
本発明の一実施形態に係るインク組成物は、粒子状の樹脂分散剤に含有されてなる顔料と、デービス法により算出されたHLB値が4.2〜8.0の範囲内であるグリコールエーテル類と、1気圧下での沸点が180〜230℃の範囲内であるアルキルポリオール類と、オレフィン系モノマーと非プロトン性極性基を有するモノマーとの共重合体からなり、かつ体積平均粒子径が200nm以上で最低造膜温度(MFT)が100℃未満であるポリマー粒子と、を含んでなり、1気圧下での沸点が280℃以上のアルキルポリオール類を実質的に含まないことを特徴とする。
本実施の形態に係るインク組成物は、1気圧下での沸点が280℃以上のアルキルポリオール類を実質的に含まない。1気圧下での沸点が280℃以上のアルキルポリオール類を含むことで、インク組成物の乾燥性が大幅に低下してしまう。その結果、種々の被記録媒体、特にインク非吸収性又は低吸収性の被記録媒体において、画像の濃淡ムラが目立つだけではなく、画像の定着性も低下する場合があるからである。1気圧下での沸点が280℃以上のアルキルポリオール類としては、たとえば1気圧下での沸点が290℃のグリセリンが挙げられる。
また、1気圧下での沸点が280℃以上の有機溶剤を1.5質量%以上含まないことが好ましく、当該有機溶剤を1.0質量%以上含まないことがより好ましく、当該有機溶剤を0.5質量%以上含まないことが特に好ましい。1気圧下での沸点が280℃以上の有機溶剤としては、たとえば1気圧下での沸点が305℃のトリイソプロパノールアミンが挙げられる。
なお、本発明において、「Aを実質的に含まない」とは、インク組成物を製造する際にAを意図的に添加しないという程度の意味であり、インク組成物を製造中又は保管中に不可避的に混入又は発生する微量のAを含んでいても構わない。「実質的に含まない」の具体例としては、たとえば1.0質量%以上含まない、好ましくは0.5質量%以上含まない、より好ましくは0.1質量%以上含まない、さらに好ましくは0.05質量%以上含まない、特に好ましくは0.01質量%以上含まないことである。以下、本実施の形態に用いられる各成分について詳細に説明する。
1.1.グリコールエーテル類
本実施の形態に係るインク組成物は、デービス法により算出されたHLB値が4.2〜8.0の範囲内であるグリコールエーテル類を含んでなることが好ましい。この場合の本実施の形態に係るインク組成物は、前述のHLB値範囲を満たすグリコールエーテル類を含むことで、被記録媒体種の影響をあまり受けずに濡れ性・浸透速度を制御することできる。これにより、種々の被記録媒体、特にインク非吸収性又は低吸収性の被記録媒体に対して濃淡ムラが少ない鮮明な画像を記録することができる。
ここで、本実施の形態において用いられるグリコールエーテル類のHLB値は、デービスらが提唱した化合物の親水性を評価する値であり、たとえば文献「J.T.Davies and E.K.Rideal,“Interface Phenomena”2nd ed.Academic Press,New York 1963」中で定義されているデービス法により求められる数値で、下記の式(2)によって算出される値をいう。
HLB値=7+Σ[1]+Σ[2] ・・・(2)
(但し、[1]は親水基の基数を表し、[2]は疎水基の基数を表す。)
下記の表1に、代表的な親水基及び疎水基の基数を例示する。
Figure 2012251047
本実施の形態に係るインク組成物に含まれるグリコールエーテル類は、デービス法により算出されたHLB値が4.2〜8.0の範囲内であり、5.4〜8.0の範囲内であることが好ましい。HLB値が4.2未満であるとグリコールエーテル類の疎水性が高まり、主溶媒である水との親和性が低下してインクの保存安定性が低下する場合がある。HLB値が8.0より大きくなると、被記録媒体への濡れ性・浸透性の効果が減少し、画像の濃淡ムラが目立つ場合がある。特に疎水表面であるインク非吸収性又は低吸収性の被記録媒体への濡れ性の効果は顕著に低下する傾向がある。
このようなグリコールエーテル類の具体例としては、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、エチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、エチレングリコールモノイソオクチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソオクチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソオクチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−メチルペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−メチルペンチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独又は2種以上を混合して使用することができる。
前記例示したグリコールエーテル類の中でも、そのグリコールエーテル類中に含まれるアルキル基が分岐構造を有することがより好ましい。アルキル基が分岐構造を有するグリコールエーテル類を含有することで、特にインク非吸収性又は低吸収性の被記録媒体に対して濃淡ムラが少ない鮮明な画像を記録することができる。具体的には、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、エチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、エチレングリコールモノイソオクチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソオクチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソオクチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−メチルペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−メチルペンチルエーテル等が挙げられる。
前記グリコールエーテル類中に含まれるアルキル基の分岐構造の中でも、発色性をさらに高める観点から、2−メチルペンチル基、2−エチルペンチル基、2−エチルヘキシル基がさらに好ましく、2−エチルヘキシル基が特に好ましい。具体的には、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−メチルペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−メチルペンチルエーテル等が挙げられ、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル等が特に好ましい。
前記グリコールエーテル類の含有量は、被記録媒体への濡れ性及び浸透性を向上させて濃淡ムラを低減させる効果や、インク保存安定性及び吐出信頼性を確保する観点から、インク組成物全量に対して0.05質量%以上6質量%以下の範囲で含まれることが好ましい。0.05質量%未満であると、インク組成物の濡れ性、浸透性、乾燥性が乏しくなってしまい、鮮明な画像が得られにくく、また印刷濃度(発色性)が不充分である場合がある。また、6質量%よりも大きくなると、インクの粘度が高くなりヘッドの目詰まりが発生したり、インク組成物中に完全に溶解しないことにより保存安定性が得られない場合がある。
1.2.アルキルポリオール類
本実施の形態に係るインク組成物は、1気圧下での沸点が180℃〜230℃の範囲内であるアルキルポリオール類を含んでなる。本実施の形態に係るインク組成物は、前述の沸点範囲を満たすアルキルポリオール類を含むことで、被記録媒体種の影響をあまり受けずに、インク組成物の濡れ性、浸透性、乾燥性を制御することできる。これにより、種々の被記録媒体、特にインク非吸収性または低吸収性の被記録媒体に対して定着性に優れた画像を記録することができると共に、インクジェット記録用ヘッドのノズルの目詰まりを低減させることができる。
本実施の形態に係るインク組成物に含まれるアルキルポリオール類は、1気圧下での沸点が180℃〜230℃の範囲内であり、188℃〜230℃の範囲内であることが好ましい。1気圧下での沸点が180℃未満であるとインク組成物の乾燥性が高まることにより、インクジェット記録用ヘッドのノズルの目詰まりが発生する場合がある。1気圧下での沸点が230℃より大きくなると、インク組成物の乾燥性が低下することで、画像の濃淡ムラが目立ち、画像の定着性が低下する場合がある。
1気圧下での沸点が180℃〜230℃の範囲内であるアルキルポリオール類の具体例としては、プロピレングリコール[188℃]、ジプロピレングリコール[230℃]、1,2−ブタンジオール[194℃]、1,2−ペンタンジオール[210℃]、1,2−ヘキサンジオール[224℃]、1,2−ヘプタンジオール[227℃]、3−メチル−1,3−ブタンジオール[203℃]、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール[226℃]、2−メチル−1,3−プロパンジオール[214℃]、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール[230℃]、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール[210℃]、2−メチルペンタン−2,4−ジオール[197℃]等が挙げられる。なお、括弧内の数値は、1気圧下での沸点を表す。本実施の形態に係るインク組成物には、上に挙げたアルキルポリオール類のうち、少なくとも1種含まれていればよく、2種以上含まれていてもよい。
前記アルキルポリオール類の含有量は、被記録媒体への濡れ性及び浸透性を向上させて濃淡ムラを低減させる効果や、インク保存安定性及び吐出信頼性を確保する観点から、インク組成物全量に対して8質量%以上25質量%以下の範囲で含まれることが好ましい。8質量%未満であると、インク組成物の保存安定性が低下し、またインク組成物の乾燥性が高まることで、インクジェット記録用ヘッドのノズルの目詰まりが発生する場合がある。一方、25質量%よりも大きくなると、インク組成物の乾燥性が低下することで、画像の濃淡ムラが目立ち、画像の定着性が低下する場合がある。また、インク組成物粘度をインクジェット記録方式に適した範囲に調整し難くなる。
また、本実施の形態に係るインク組成物に含有されるアルキルポリオール類のうち、炭素数が4〜7(以下、「C4〜7」と略記することもある)の範囲内である1,2−アルキルジオール類は、上記の機能と併せて、本実施の形態に係るインク組成物に上述したグリコールエーテル類を添加する場合には、これと相乗して、被記録媒体に対するインク組成物の濡れ性をさらに高めて均一に濡らす作用、及び浸透性をさらに高める効果を有する。そのため、インク組成物にC4〜7の1,2−アルキルジオール類を含有させることで、さらにインクの濃淡ムラを低減させることができる。また、C4〜7の1,2−アルキルジオール類は、前述したグリコールエーテル類との相溶性に優れる。ここで「相溶する」とは、インク組成物を構成する各成分の中で、水を主溶媒としたインク組成において、前記グリコールエーテル類とC4〜7の1,2−アルキルジオール類の混合物が完全に溶解するような、各材料とこれら各材料の比率との組み合わせを意味する。前記グリコールエーテル類との相溶性に優れるC4〜7の1,2−アルキルジオールをインク組成物中に含ませることで、インク組成物における前記グリコールエーテルの溶解性を高めることができ、インク保存安定性及び吐出安定性の向上を実現できる。また、インク組成中における前記グリコールエーテル類の含有量を増量することが容易となるため、さらなる記録画像の品質の向上に寄与することとなる。
このような特性を有するC4〜7の1,2−アルキルジオール類として具体的には、1,2−ブタンジオール[194℃]、1,2−ペンタンジオール[210℃]、1,2−ヘキサンジオール[224℃]、1,2−ヘプタンジオール[227℃]等が挙げられる。これら1,2−アルキルジオールのうち、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール等のC4〜C5(炭素数が4〜5)の1,2−アルキルジオール類は、浸透性向上効果とともにインク組成物の保湿性向上効果も高いため、上述した他のアルキルポリオール類と同様にインクジェット記録用ヘッドノズルの目詰まりを低減する効果に優れる。また、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール等のC6〜C7(炭素数が6〜7)の1,2−アルキルジオール類は、前記グリコールエーテル類との相溶性が高くまたそのもの自身の浸透性向上効果も高いため、前記グリコールエーテル類と相乗して、これを含むインク組成物のインク非吸収性またはインク低吸収性記録媒体上での濡れ性向上効果、及び濃淡ムラ低減効果に優れる。
アルキルポリオール類のうちC4〜7の1,2−アルキルジオール類をインク組成物中に添加する場合の添加量は、前記グリコールエーテル類との相溶性、インク組成物の保存安定性・吐出安定性確保の観点から、インク組成物全量に対して0.1質量%〜25質量%の範囲が好ましく、0.5質量%〜20質量%の範囲がより好ましい。特にC6〜C7の1,2−アルキルジオール類を用いた場合、その添加量が1重量%〜8重量%の範囲であることがさらに好ましい。1,2−アルキルジオール類の添加量が上記の範囲内であると、そのインク組成物を用いた後述するインクジェット記録方法の第2の工程(乾燥工程)において、1,2−アルキルジオール類の蒸発飛散速度が充分速いため、結果的に記録物の乾燥が迅速となって記録速度が向上するという格別な効果を奏する。また各工程中での臭気の発生が低減される。
1.3.顔料
本実施の形態に係るインク組成物は、顔料を含んでなる。本実施形態に係るインク組成物に含まれる顔料は、後述する粒子状の樹脂分散剤に含有された状態でインク組成物に添加される。
顔料としては、公知の無機顔料、有機顔料、カーボンブラックのいずれも用いることができる。これらの顔料は、インク組成物全量に対して0.5質量%以上20質量%以下の範囲で含まれることが好ましく、1質量%以上10質量%以下の範囲で含まれることがより好ましい。
1.4.粒子状の樹脂分散剤
本実施の形態に係るインク組成物は、粒子状の樹脂分散剤を含む。粒子状の樹脂分散剤は、上述した顔料を含有してなる。インク組成物は、粒子状の樹脂分散剤に含有されてなる顔料を含むことにより、被記録媒体のカールを抑制する効果(以下、「カール抑制効果」ともいう。)を有し、保存安定性、吐出性、耐水性に優れたものとなる。また、粒子状の樹脂分散剤に含有されてなる顔料を用いると、特にインク吸収性の被記録媒体に対して色濃度に優れた画像を記録することができる。「粒子状」とは、インク中の状態を意味するものとする。したがって、粒子は、インクジェット記録の過程において、インクが乾燥して被記録媒体上に固着した状態で、粒子形状を保持してもよいし、被膜を形成してもよい。
粒子状の樹脂分散剤は、カール抑制の観点から、水不溶性樹脂であることが好ましい。ここで、水不溶性樹脂とは、樹脂固形分換算100gを105℃で2時間乾燥させ、恒量に達した後、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10g以下、好ましくは5g以下、更に好ましくは1g以下である樹脂をいう。溶解量は、水不溶性樹脂が塩生成基を有する場合は、その種類に応じて、水不溶性樹脂の塩生成基を酢酸又は水酸化ナトリウムで100%中和した時の最大溶解量である。
水不溶性樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタン、ビニル系ポリマー等が挙げられるが、保存安定性の観点から、ビニル単量体(ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物)の付加重合により得られるビニル系樹脂が好ましい。
ビニル系樹脂としては、少なくとも、(a)塩生成基含有モノマー(以下、「(a)成分」ともいう。)と、(b)マクロマー(以下、「(b)成分」ともいう。)及び/又は(c)疎水性モノマー(以下、「(c)成分」ともいう。)と、を含むモノマー混合物(以下、単に「モノマー混合物」ともいう。)を共重合させてなるビニル系樹脂が好ましい。このビニル系樹脂は、(a)成分由来の構成単位と、(b)成分由来の構成単位および(c)成分由来の構成単位の少なくとも一方と、を有する。より好適なビニル系樹脂は、(a)成分由来の構成単位、又は(a)及び(c)成分由来の構成単位を主鎖として有し、(b)成分由来の構成単位を側鎖として有する、水不溶性ビニル系グラフトポリマーである。以下、(a)成分〜(c)成分について説明する。
(1)(a)塩生成基含有モノマー
(a)塩生成基含有モノマー((a)成分)は、粒子状の樹脂分散剤の保存安定性を高める観点から用いられる。塩生成基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、アンモニウム基等が挙げられる。
塩生成基含有モノマーとしては、特開平9−286939号公報の段落[0022]等に記載されているカチオン性モノマー、アニオン性モノマー等が挙げられる。
カチオン性モノマーの代表例としては、アミン含有モノマー、アンモニウム塩含有モノマー等が挙げられる。これらの中では、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−(N',N'−ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド及びビニルピロリドンが好ましい。
アニオン性モノマーの代表例としては、カルボキシ基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー等が挙げられる。
カルボキシ基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。スルホン酸基含有モノマーとしては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。リン酸基含有モノマーとしては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記アニオン性モノマーの中では、保存安定性、吐出安定性の観点から、カルボキシ基含有モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
(2)(b)マクロマー
(b)マクロマー((b)成分)は、顔料を含有する粒子状の樹脂分散剤の保存安定性及びカール抑制効果を高める観点から用いられる。マクロマーとしては、数平均分子量500〜100,000、好ましくは1,000〜10,000の重合可能な不飽和基を有するモノマーであるマクロマーが好ましく挙げられる。なお、(b)成分の数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミンを含有するクロロホルムを用いたゲルクロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
(b)成分の中では、顔料を含有する粒子状の樹脂分散剤の保存安定性等の観点から、片末端に重合性官能基を有する、スチレン系マクロマー、芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマー、及びシリコーン系マクロマーからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
スチレン系マクロマーとしては、スチレン系モノマー単独重合体、又はスチレン系モノマーと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。スチレン系モノマーとしては、スチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ビニルナフタレン、クロロスチレン等が挙げられる。
芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマーとしては、芳香族基含有(メタ)アクリレートの単独重合体又はそれと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数7〜22、好ましくは炭素数7〜18、更に好ましくは炭素数7〜12のアリールアルキル基、又は、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数6〜22、好ましくは炭素数6〜18、更に好ましくは炭素数6〜12のアリール基を有する(メタ)アクリレートであり、ヘテロ原子を含む置換基としては、ハロゲン原子、エステル基、エーテル基、ヒドロキシ基等が挙げられる。芳香族基含有(メタ)アクリレートとして具体的には、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート等が挙げられ、これらの中でも特にベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。
また、それらのマクロマーの片末端に存在する重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、共重合される他のモノマーとしては、アクリロニトリル等が好ましい。
スチレン系マクロマー中におけるスチレン系モノマー、又は芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマー中における芳香族基含有(メタ)アクリレートの含有量は、顔料との親和性を高める観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。
(b)成分は、オルガノポリシロキサン等の他の構成単位からなる側鎖を有するものであってもよい。この側鎖は、例えば下記一般式(3)で表される片末端に重合性官能基を有するシリコーン系マクロマーを共重合することにより得ることができる。
CH=C(CH)−COOC−[Si(CHO]−Si(CH ・・・(3)
上記式(3)中、tは8〜40の数を示す。
(b)成分として商業的に入手しうるスチレン系マクロマーとしては、例えば、AS−6(S)、AN−6(S)、HS−6(S)(商品名、以上すべて東亜合成株式会社製)等が挙げられる。
(3)(c)疎水性モノマー
(c)疎水性モノマー((c)成分)は、印刷濃度の向上の観点から用いられる。疎水性モノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有モノマー等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数1〜22、好ましくは炭素数6〜18のアルキル基を有するものが好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、これらの基が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの基が存在しない場合には、ノルマルを示す。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート又はそれらの両方を示す。
芳香族基含有モノマーとしては、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数6〜22、好ましくは炭素数6〜18、より好ましくは炭素数6〜12の芳香族基を有するビニルモノマーが好ましく、例えば、スチレン系モノマー(以下、「(c−1)成分」ともいう。)、芳香族基含有(メタ)アクリレート(以下、「(c−2)成分」ともいう。)が挙げられる。スチレン系モノマーおよび芳香族基含有(メタ)アクリレートの具体例は、上記(b)成分で挙げたものと同様である。また、ヘテロ原子を含む置換基の具体例も、上記(b)成分で挙げたものと同様である。
(c)成分の中では、印刷濃度向上の観点から、(c−1)成分が好ましく、(c−1)成分の中でも特にスチレン及び2−メチルスチレンが好ましい。(c)成分中の(c−1)成分の含有量は、印刷濃度向上の観点から、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは20〜80重量%である。
また、(c−2)成分としては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましい。(c)成分中の(c−2)成分の含有量は、印字濃度及び保存安定性の向上の観点から、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは20〜80重量%である。また、(c−1)成分と(c−2)成分を併用することも好ましい。
(4)その他の成分
モノマー混合物には、さらに、(d)水酸基含有モノマー(以下、「(d)成分」ともいう。)が含有されていてもよい。(d)成分は、保存安定性を高めるという優れた効果を発現させるものである。
(d)成分としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜30、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。以下同じ。)(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、ポリ[エチレングリコール(n=1〜15)・プロピレングリコール(n=1〜15)](メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレートが好ましい。
モノマー混合物には、さらに、(e)下記式(1)で表されるモノマー(以下、「(e)成分」ともいう。)が含有されていることが好ましい。
CH=C(R)COO(RO) ・・・(1)
上記式(1)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基を示す。Rは、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の2価の炭化水素基を示す。Rは、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の1価の炭化水素基、又は炭素数1〜9のアルキル基を有してもよいフェニル基を示す。nは、平均付加モル数を示し、1〜60、好ましくは1〜30である。
(e)成分は、インクの吐出性を向上するという優れた効果を発現させることができる。また、(e)成分は、特にインク吸収性の被記録媒体に形成される画像の印刷濃度を向上させることができる。
式(1)のモノマーに含まれるヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、ハロゲン原子及び硫黄原子等が挙げられる。
の好適例としては、メチル基、エチル基、(イソ)プロピル基等が挙げられる。
O基の好適例としては、オキシエチレン基、オキシトリメチレン基、オキシプロパン−1,2−ジイル基、オキシテトラメチレン基、オキシヘプタメチレン基、オキシヘキサメチレン基及びこれらの2種以上の組合せからなる炭素数2〜7のオキシアルカンジイル基(オキシアルキレン基)等が挙げられる。
の好適例としては、炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜8の脂肪族アルキル基、芳香族環を有する炭素数7〜30のアルキル基及びヘテロ環を有する炭素数4〜30のアルキル基、炭素数1〜8のアルキル基を有していてもよいフェニル基が好ましく挙げられる。
(e)成分の具体例としては、メトキシポリエチレングリコール(1〜30:式(1)中のnの値を示す。以下同じ。)(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート2−エチルヘキシルエーテル、(イソ)プロポキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、メトキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(1〜30、その中のエチレングリコール:1〜29)(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、オクトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート2−エチルヘキシルエーテルが好ましい。
商業的に入手しうる(d)成分および(e)成分の具体例としては、新中村化学工業株式会社製のアクリレートモノマー(NKエステル)M−40G、同90G、同230G(以上、商品名)、日本油脂株式会社製のブレンマーシリーズ、PE−90、同200、同350、PME−100、同200、同400、同1000、PP−500、同800、同1000、AP−150、同400、同550、同800、50PEP−300、50POEP−800B、43PAPE600B(以上、商品名)等が挙げられる。
上記(a)〜(e)成分は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
ビニル系樹脂製造時における、上記(a)成分〜(e)成分のモノマー混合物中における含有量(未中和量としての含有量。以下同じ)、又はビニル系樹脂中における(a)成分〜(e)成分に由来する構成単位の含有量は、次のとおりである。
(a)成分の含有量は、得られるインクの保存安定性の観点から、好ましくは3〜40質量%、より好ましくは4〜30質量%、特に好ましくは5〜25質量%である。
(b)成分の含有量は、特に顔料との相互作用を高め、カール抑制効果と保存安定性を高める観点から、好ましくは1〜25質量%、より好ましくは5〜20質量%である。
(c)成分の含有量は、得られるインクの印刷濃度向上の観点から、好ましくは5〜98質量%、より好ましくは10〜60質量%である。
(d)成分の含有量は、得られるインクの保存安定性の観点から、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは7〜20質量%である。
(e)成分の含有量は、得られるインクの吐出性及び印字濃度向上の観点から、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%である。
モノマー混合物中における[(a)成分+(d)成分]の含有量の合計は、得られるインクの保存安定性の観点から、好ましくは6〜60質量%、より好ましくは10〜50質量%である。[(a)成分+(e)成分]の含有量の合計は、得られるインクの保存安定性及び吐出性の観点から、好ましくは6〜75質量%、より好ましくは13〜50質量%である。また、[(a)成分+(d)成分+(e)成分]の含有量の合計は、得られるインクの保存安定性及び吐出性の観点から、好ましくは6〜60質量%、より好ましくは7〜50質量%である。
また、〔(a)成分/[(b)成分+(c)成分]〕の重量比は、得られるインクの分散安定性及び印刷濃度の観点から、好ましくは0.01〜1、より好ましくは0.02〜0.67、更に好ましくは0.03〜0.5である。
(5)粒子状の樹脂分散剤の製造方法
粒子状の樹脂分散剤は、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により、モノマー混合物中の各成分を共重合させることによって製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒としては、特に限定されないが、極性有機溶媒が好ましい。極性有機溶媒が水混和性を有する場合には、水と混合して用いることもできる。極性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;等が挙げられる。これらの中では、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン又はこれらの1種以上と水との混合溶媒が好ましい。
重合の際には、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物や、t−ブチルペルオキシオクトエート、ジベンゾイルオキシド等の有機過酸化物等の公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤の量は、モノマー混合物1モルあたり、好ましくは0.001〜5モル、より好ましくは0.01〜2モルである。
重合の際には、さらに、オクチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類、チウラムジスルフィド類等の公知の重合連鎖移動剤を添加してもよい。
モノマー混合物の重合条件は、使用するラジカル重合開始剤、モノマー、溶媒の種類等によって異なるので一概には決定することができない。通常、重合温度は、好ましくは30〜100℃、より好ましくは50〜80℃であり、重合時間は、好ましくは1〜20時間である。また、重合雰囲気は、窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱を繰り返したり、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去して精製することができる。
粒子状の樹脂分散剤の重量平均分子量は、インクの印刷濃度及び保存安定性の観点から、5,000〜50万が好ましく、1万〜40万がより好ましく、1万〜30万がさらに好ましく、2万〜30万が特に好ましい。なお、ポリマーの重量平均分子量は、以下の装置・方法で測定した。溶媒として60mmol/Lのリン酸と50mmol/Lのリチウムブロマイドを含有するN,N−ジメチルホルムアミドを用い、ここへ製造した粒子状の樹脂分散剤を投入し、粒子状の樹脂分散剤を溶解して、ゲルクロマトグラフィー法により標準物質としてポリスチレンを用いて測定した。使用カラムは、TSK−GEL、α−M×2本(商品名、東ソー株式会社製)、本体は、HLC−8120GPC(商品名、東ソー株式会社製)、条件として流速は、1mL/minで測定した。
樹脂分散剤が(a)塩生成基含有モノマー由来の塩生成基を有している場合は、中和剤により中和して用いる。中和剤としては、樹脂分散剤中の塩生成基の種類に応じて、酸又は塩基を使用することができる。例えば、塩酸、酢酸、プロピオン酸、リン酸、硫酸、乳酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、グリセリン酸等の酸、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリブチルアミン等の塩基が挙げられる。
樹脂分散剤中の塩生成基の中和度は、保存安定性の観点から、50〜150%であることが好ましく、50〜100%であることがより好ましく、60〜100%であることが更に好ましい。
樹脂分散剤を架橋させる場合は、架橋前の樹脂分散剤の塩生成基の中和度は、保存安定性と架橋効率の観点から、10〜90%であることが好ましく、20〜80%であることがより好ましく、30〜80%であることが更に好ましい。
ここで中和度は、塩生成基がアニオン性基である場合、下記式(4)によって求めることができる。
{[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[樹脂分散剤の酸価(KOHmg/g)×樹脂分散剤の重量(g)/(56×1000)]}×100 ・・・(4)
塩生成基がカチオン性基である場合は、下記式(5)によって求めることができる。
{[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[樹脂分散剤のアミン価(HCLmg/g)×樹脂分散剤の重量(g)/(36.5×1000)]}×100 ・・・(5)
酸価やアミン価は、樹脂分散剤の構成単位から、計算で算出することができる。又は、適当な溶剤(例えばメチルエチルケトン)に樹脂分散剤を溶解して、滴定する方法でも求めることができる。
1.5.架橋剤
(1)架橋剤
上記の粒子状の樹脂分散剤は、架橋剤によって架橋されていることが好ましい。粒子状の樹脂分散剤が架橋剤によって架橋されていると、インク組成物の保存安定性およびカール抑制の効果が一層高まる場合がある。特に、架橋剤として分子中に2以上の反応性官能基を有する化合物を用いると、当該架橋剤が樹脂分散剤の表層部を架橋するため、上記効果がより一層高まる場合がある。
架橋剤の分子量は、反応のし易さ、及び得られる架橋樹脂分散剤粒子の保存安定性の観点から、120〜2000が好ましく、150〜1500がより好ましく、150〜1000が更に好ましい。
架橋剤に含まれる反応性官能基の数は、分子量を制御して保存安定性を向上する観点から、2〜6が好ましい。反応性官能基としては、水酸基、エポキシ基、アルデヒド基、アミノ基、カルボキシ基、オキサゾリン基、及びイソシアネート基からなる群から選ばれる1種以上が挙げられる。
架橋剤は、効率よく樹脂分散剤(特に水不溶性の樹脂分散剤)の表面を架橋する観点から、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が50g以下であることが好ましく、40g以下であることがより好ましく、30g以下であることがさらに好ましい。
架橋剤の具体例としては、(a)分子中に2以上の水酸基を有する化合物(以下、(a)化合物)ともいう。)、(b)分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物(以下、「(b)化合物」ともいう。)、(c)分子中に2以上のアルデヒド基を有する化合物(以下、「(c)化合物」ともいう。)、(d)分子中に2以上のアミノ基を有する化合物(以下、「(d)化合物」ともいう。)、(e)分子中に2以上のカルボキシ基を有する化合物(以下、「(e)化合物」ともいう。)、(f)分子中に2以上のオキサゾリン基を有する化合物(以下、「(f)化合物」ともいう。)、(g)分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物(以下、「(g)化合物」ともいう。)等が挙げられる。
(a)化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングルコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルアルコール、ジエタノールアミン、トリジエタノールアミン、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ペンタエリスリトール、ソルビット、ソルビタン、グルコース、マンニット、マンニタン、ショ糖、ブドウ糖等の多価アルコールが挙げられる。
(b)化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
(c)化合物としては、例えば、グルタールアルデヒド、グリオキザール等のポリアルデヒドが挙げられる。
(d)化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン等のポリアミンが挙げられる。
(e)化合物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸等の多価カルボン酸が挙げられる。
(f)化合物としては、例えば、脂肪族基又は芳香族基に2個以上、好ましくは2〜3個のオキサゾリン基が結合した化合物、より具体的には、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、1,3−フェニレンビスオキサゾリン、1,3−ベンゾビスオキサゾリン等のビスオキサゾリン化合物、該化合物と多塩基性カルボン酸とを反応させて得られる末端オキサゾリン基を有する化合物が挙げられる。
(g)化合物としては、例えば、有機ポリイソシアネート又はイソシアネート基末端プレポリマー等が挙げられる。有機ポリイソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;トリレン−2,4−ジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;脂環式ジイソシアネート;芳香族トリイソシアネート;それらのウレタン変性体等の変性体が挙げられる。イソシアネート基末端プレポリマーは、有機ポリイソシアネート又はその変性体と低分子量ポリオール等とを反応させることにより得ることができる。
これらの中では、(b)化合物が好ましく、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルがより好ましい。
本実施の形態に係る樹脂分散剤は、前記架橋剤と反応しうる反応性基(架橋性官能基)を有するが、両者の好適な組合せ例は、次のとおりである。
樹脂分散剤の反応性基がカルボキシ基、スルホン酸基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基等のアニオン性基の場合には、架橋剤は前記(a)、(b)、(d)、(f)及び(g)化合物であることが好ましい。樹脂分散剤の反応性基がアミノ基の場合には、架橋剤は前記(b)、(c)、(e)及び(g)化合物であることが好ましい。樹脂分散剤の反応性基が水酸基の場合は、架橋剤は前記(c)、(e)及び(g)化合物であることが好ましい。ポリマーの反応性基がイソシアネート基、エポキシ基の場合には、架橋剤は前記(a)、(d)及び(e)化合物であることが好ましい。
上記の組合せの中では、樹脂分散剤に適度な架橋構造を付与するように制御する観点から、架橋剤が樹脂分散剤のアニオン性基と反応する官能基を有することが好ましく、(b)化合物との組合せがより好ましい。
架橋剤と反応しうる反応性基(以下、「架橋性官能基」ともいう。)として、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等のアニオン性基、アミノ基、水酸基、イソシアネート基、エポキシ基等を有する樹脂分散剤は、上述した樹脂分散剤の製造において、架橋性官能基を有するモノマーを含む重合性モノマー組成物をモノマー混合物中に添加して、モノマー混合物中の各成分と共重合させることによって製造することができる。
架橋性官能基としてアニオン性基、アミノ基等の塩生成基を有する樹脂分散剤としては、前述の塩生成基含有モノマーを共重合した樹脂分散剤を用いることができる。また、架橋性官能基として水酸基を有する樹脂分散剤としては、前述の水酸基含有モノマーを共重合した樹脂分散剤を用いることができる。
架橋性官能基としてエポキシ基を有する樹脂分散剤としては、エポキシ基を有するモノマー、具体的にはグリシジル(メタ)アクリレートを共重合した樹脂分散剤を用いることができる。架橋性官能基としてイソシアネート基を有する樹脂分散剤としては、(i)イソシアネート基を有するモノマー、例えばイソシアネートエチル(メタ)アクリレートを共重合した樹脂分散剤、(ii)不飽和ポリエステルポリオールおよびイソシアネートから得られるイソシアネート末端プレポリマーを共重合した樹脂分散剤等を用いることができる。
(2)粒子状の架橋樹脂分散剤
上記の粒子状の樹脂分散剤は、インク組成物中に水溶性の有機溶媒を含有することから、粒子状の樹脂分散剤を上記の架橋剤で架橋して得られたもの(以下、「架橋樹脂分散剤」ともいう。)であることが好ましい。つまり、本実施の形態に係るインク組成物には、架橋樹脂分散剤に含有されてなる顔料の形態で添加される。このように、インク組成物中に架橋樹脂分散剤に含有されてなる顔料の形態で添加されることにより、インクの保存安定性及びカール抑制に効果的である。
架橋樹脂分散剤における塩基で中和されたアニオン性基の具体例としては、カルボキシイオン(−COOM)、スルホン酸イオン(−SO)、リン酸イオン(−PO )等が挙げられる。化学式中、Mは、同一でも異なっていてもよく、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;アンモニウム;モノメチルアンモニウム基、ジメチルアンモニウム基、トリメチルアンモニウム基;モノエチルアンモニウム基、ジエチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基;モノメタノールアンモニウム基、ジメタノールアンモニウム基、トリメタノールアンモニウム基等の有機アンモニウムである。
塩基としては、水酸化ナトリウム等のアルカリ水酸化物、アルカリ土類水酸化物、アミン、トリエタノールアミン等の有機アミン、塩基性アミノ酸等が挙げられる。
塩基で中和されたアニオン性基は、解離して、アニオンのイオン同士の電荷反発により、架橋樹脂分散剤の安定性に寄与すると考えられる。
塩基で中和されたアニオン性基の量が多すぎると、インク吸収性の被記録媒体のカール抑制の点から好ましくない。
塩基で中和されたアニオン性基の量は、粒子状の架橋樹脂分散剤同士の電荷反発により、保存安定性及びカール抑制効果を向上させる観点から、該架橋ポリマー1g当たり、好ましくは0.5mmol以上、より好ましくは0.5〜5mmol、より好ましくは0.7〜3mmol、より好ましくは0.7〜2mmol、更に好ましくは0.7〜1.5mmol、更に好ましくは1.0〜1.5mmolである。上記範囲内であれば、顔料濃度が高く、水分量が少ない水系インクにおいても保存安定性が高く、カールも抑制される。
1.6.顔料を含有する粒子状の樹脂分散剤の製造方法
顔料を含有する粒子状の樹脂分散剤は、保存安定性の観点から、顔料と樹脂分散剤とを用いて、顔料を含有する粒子状の樹脂分散剤を得る工程(I)によって製造されることが好ましい。
また、顔料を含有する粒子状の架橋樹脂分散剤は、保存安定性の観点から、上記工程(I)で得られた顔料を含有する粒子状の樹脂分散剤と、架橋剤と、を混合して、該粒子状の樹脂分散剤を架橋させて、顔料を含有する粒子状の架橋樹脂分散剤を得る工程(II)によって製造されることが好ましい。
前記工程(I)及び工程(II)は、例えば、次の工程(i)〜(iii)によって行われる。
工程(i)は、粒子状の樹脂分散剤、有機溶媒、顔料、水、及び必要に応じて中和剤を含有する混合物を分散処理して、顔料を含有する粒子状の樹脂分散剤の分散体を得る工程である。
工程(ii)は、工程(i)で得られた分散体から前記有機溶媒を除去して、顔料を含有する粒子状の樹脂分散剤の水分散体を得る工程である。
工程(iii)は、工程(ii)で得られた水分散体中の粒子状の樹脂分散剤を架橋剤で架橋させて、顔料を含有する粒子状の架橋樹脂分散剤の水分散体を得る工程である。
工程(i)では、まず、粒子状の樹脂分散剤を有機溶媒に溶解させ、次に顔料、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を、得られた有機溶媒溶液に加えて混合し、水中油型の分散体を得る方法が好ましい。混合物中、顔料の含有量は、5質量%〜50質量%であることが好ましく、10質量%〜40質量%であることがより好ましい。混合物中、有機溶媒の含有量は、10質量%〜70質量%であることが好ましく、10質量%〜50質量%であることがより好ましい。また、混合物中、粒子状の樹脂分散剤の含有量は、2質量%〜40質量%であることが好ましく、3質量%〜20質量%であることがより好ましい。混合物中、水の含有量は、10質量%〜70質量%であることが好ましく、20質量%〜70質量%であることがより好ましい。
樹脂分散剤と顔料との合計量に対する顔料量の質量比[顔料/(樹脂分散剤+顔料)]は、保存安定性の観点から、55/100〜90/100であることが好ましく、70/100〜85/100であることがより好ましい。
樹脂分散剤が塩生成基を有する場合、中和剤を用いることが好ましい。中和剤を用いて中和する場合の中和度には、特に限定がない。通常、最終的に得られる水分散体の液性が中性、例えば、pHが4.5〜10であることが好ましい。また、樹脂分散剤の望まれる中和度により、pHを決めることもできる。中和剤は、粒子状の樹脂分散剤の製造方法で挙げたものを用いることができる。なお、樹脂分散剤を予め中和しておいてもよい。
有機溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶媒及びジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒が挙げられる。好ましくは、水100gに対する溶解量が20℃において、好ましくは5g以上、更に好ましくは10g以上であり、より具体的には、好ましくは5〜80g、更に好ましくは10〜50gのものであり、特に、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンが好ましい。
工程(i)における混合物の分散方法に特に制限はない。本分散だけで粒子状の樹脂分散剤の平均粒径を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、好ましくは予備分散させた後、さらに剪断応力を加えて本分散を行い、粒子状の樹脂分散剤の平均粒径を所望の粒径とするよう制御することが好ましい。工程(i)における分散時の温度は、5〜50℃であることが好ましく、10〜35℃であることがより好ましく、分散時間は、1〜30時間であることが好ましく、2〜25時間であることがより好ましい。
混合物を予備分散させる際には、アンカー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができる。混合撹拌装置の中では、ウルトラディスパー(商品名、浅田鉄工株式会社製)、エバラマイルダー(商品名、株式会社荏原製作所製)、TKホモミクサー(商品名、プライミクス株式会社製)等の高速攪拌混合装置が好ましい。
本分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ビーズミル、ニーダー、エクストルーダ等の混練機、高圧ホモゲナイザー(商品名、株式会社イズミフードマシナリ製)、ミニラボ8.3H型(商品名、Rannie社製)に代表されるホモバルブ式の高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー(商品名、Microfluidics社製)、ナノマイザー(商品名、ナノマイザー株式会社製)等のチャンバー式の高圧ホモジナイザー等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。これらの中では、顔料の小粒子径化の観点から、高圧ホモジナイザーが好ましい。
工程(ii)では、得られた分散体から、公知の方法で有機溶媒を留去して水系にすることで、顔料を含有する粒子状の樹脂分散剤の水分散体を得ることができる。得られた粒子状の樹脂分散剤を含む水分散体中の有機溶媒は、実質的に除去されていることが好ましいが、本発明の目的を損なわない限り、残存していてもよく、架橋工程を後に行う場合は、必要により架橋後に再除去すればよい。有機溶媒の残留量は、0.1重量%以下であることが好ましく、0.01重量%以下であることがより好ましい。
また、必要に応じて、有機溶媒を留去する前に分散体を加熱撹拌処理することもできる。この操作により、インクとしての保存性が向上する場合がある。保存性向上の理由は定かでないが、分散体中の樹脂分散剤がより強固に顔料に吸着するためであると考えられる。
得られた顔料を含有する粒子状の樹脂分散剤の水分散体は、顔料を含有する粒子状の樹脂分散剤の固体分が水を主媒体とする中に分散しているものである。ここで、粒子状の樹脂分散剤の形態は、特に制限はなく、少なくとも顔料と樹脂分散剤により粒子が形成されていればよい。例えば、樹脂分散剤に顔料が内包された粒子形態、樹脂分散剤中に顔料が均一に分散された粒子形態、樹脂分散剤の表面に顔料が露出された粒子形態等が含まれる。
工程(iii)では、カール抑制と保存安定性との観点から、顔料を含有する粒子状の樹脂分散剤と架橋剤とを混合することにより、粒子状の樹脂分散剤を架橋させ、顔料を含有する粒子状の架橋樹脂分散剤粒子を得ることが好ましい。より具体的には、顔料を含有する粒子状の樹脂分散剤の水分散体と架橋剤とを混合して、樹脂分散剤を架橋させて、顔料を含有する粒子状の架橋樹脂分散剤の水分散体を得る方法が好ましい。樹脂分散剤が水不溶性であり、架橋剤の水への溶解量が上述した通りであることが、架橋効率及び表層部の架橋による保存安定性の向上の観点から好ましい。
工程(iii)では、用いる架橋剤により、触媒、溶媒、温度、時間を適宜選択することができる。架橋反応の時間は、好ましくは0.5〜10時間、更に好ましくは1〜5時間、架橋反応の温度は、好ましくは40〜95℃である。
架橋剤の使用量は、保存安定性及びカール抑制の観点から、[架橋剤/樹脂分散剤]の重量比で0.3/100〜50/100が好ましく、0.3/100〜35/100がより好ましく、2/100〜30/100がより好ましく、5/100〜25/100が更に好ましく、5/100〜20/100が更に好ましい。
架橋樹脂分散剤の保存安定性及びカール抑制を向上させる観点から、架橋剤が樹脂分散剤のアニオン性基と反応する官能基を有し、架橋剤の使用量が、樹脂分散剤1g当たりのアニオン性基量換算で、樹脂分散剤のアニオン性基0.1〜3mmolと反応する量であることが好ましく、0.4〜2.5mmolと反応する量であることがより好ましく、0.7〜2.5mmolと反応する量であることが一層好ましく、0.7〜2.0mmolと反応する量であることがより一層好ましく、0.7〜1.5mmolと反応する量であることが特に好ましい。また、[架橋剤のモル数×架橋剤1分子が有する架橋に寄与する反応性官能基の数]は、上記の観点から、樹脂分散剤1gあたり、好ましくは0.1〜3mmol、より好ましくは0.4〜2.5mmol、一層好ましくは0.7〜2.5mmol、より一層好ましくは0.7〜2.0mmol、特に好ましくは0.7〜1.5mmolである。
また、樹脂分散剤の架橋工程としては、工程(i)で得られた顔料を含有する粒子状の樹脂分散剤の分散体と架橋剤とを混合して行うこともできる。この場合は、該架橋工程で得られた粒子状の架橋樹脂分散剤の水分散体から、有機溶媒を除去する工程を前記工程(ii)と同様に行うことにより、顔料を含有する粒子状の架橋樹脂分散剤の水分散体を得ることができる。
ここで、下記式(6)から求められる架橋樹脂分散剤の架橋率(モル%)は、保存安定性及びカール抑制の観点から、好ましくは10〜80モル%、より好ましくは20〜80モル%、更に好ましくは30〜60モル%である。架橋率は、架橋剤の使用量と反応性基のモル数、樹脂分散剤の使用量と架橋剤の反応性基と反応できる樹脂分散剤の反応性基のモル数から計算で求めることができる値である。
架橋率(モル%)=[架橋剤の反応性基のモル数×100/樹脂分散剤が有する架橋剤と反応できる反応性基のモル数] ・・・(6)
上記式(4)において、「架橋剤の反応性基のモル数」とは、使用する架橋剤の重量を反応性基の当量で除した値である。即ち、使用する架橋剤のモル数に架橋剤1分子中の反応性基の数を乗じたものである。
架橋樹脂分散剤と顔料との合計量に対する顔料量の重量比[顔料/(架橋樹脂分散剤+顔料)]は、保存安定性の観点から、55/100〜90/100であることが好ましく、70/100〜85/100であることがより好ましい。
1.7.ポリマー粒子
本実施の形態に係るインク組成物は、オレフィン系モノマーと非プロトン性極性基を有するモノマーとの共重合体を少なくとも含み、かつ体積平均粒子径が200nm以上でMFTが100℃未満であるポリマー粒子を必須成分として含む。インク組成物にこのようなポリマー粒子を含有させることにより、被記録媒体上に耐擦性に優れた画像を形成することができる。特にポリ塩化ビニルやポリプロピレン、ポリエチレン等のインク非吸収性またはインク低吸収性の被記録媒体上に該ポリマー粒子を含んでなるインク組成物を用いて記録する場合、後述するインクジェット記録方法における第2工程(乾燥工程)を経ることで、さらに耐擦性に優れた画像が得られる。その理由は、後述するインクジェット記録方法における第2工程(乾燥工程)において、当該ポリマー粒子がインクを固化させ、さらにインク固化物を被記録媒体上に強固に定着させる作用を有するためであり、加熱によってこの作用をより高めることができるからである。特に本実施の形態に係るインク組成物には、該ポリマー粒子は微粒子状態(すなわち、エマルジョン状態またはサスペンジョン状態)で含有されていることが好ましい。ポリマー粒子を微粒子状態で含有することにより、インク組成物の粘度をインクジェット記録方式において適正な範囲に調整しやすく、また保存安定性・吐出安定性を確保しやすい。なお、「オレフィン系モノマーと非プロトン性極性基を有するモノマーとの共重合体を少なくとも含み」とは、構造骨格として当該共重合体を有しているポリマー粒子を示す。
前記ポリマー粒子を構成するポリマーとしては、オレフィン系モノマーと非プロトン性極性基を有するモノマーとの共重合体であることが必須である。オレフィン系モノマーとして具体的には、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられる。また、非プロトン性極性基を有するモノマーとしては、カルボン酸エステル、リン酸エステル、ビニルエステル等が挙げられ、さらに具体的にはカルボン酸エステルとしてアクリル酸エステル(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2−エチルヘキシル等)、メタクリル酸エステル(例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ドデシルペンタデシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル等)、ビニルエステルとして具体的には酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、ラウリル酸ビニル、バーチサック酸ビニル等が挙げられる。この中で、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン等で構成されているインク非吸収性のフィルムに対して相性がよく(すなわちポリマー分子構造中に疎水性部分を有している)、加えて強力な接着性を有する親水性部分を併せ持つものが好ましく、そのようなものとしてはエチレン−ビニルエステル共重合体(その中でも特にエチレン−酢酸ビニル共重合体)が好ましい。
上記のような特性を持つポリマー粒子としては、公知の材料・方法で得られるものを用いることもできる。また、市販品を用いることもでき、たとえばデンカEVAテックス50、55N、59、60、65、70、75、80、81、82、88、90、100、170(以上商品名、電気化学工業株式会社製)、スミカフレックス201HQ、305HQ、355HQ、400HQ、401HQ、408HQ、410HQ、450HQ、455HQ、456HQ、460HQ、465HQ、467HQ、470HQ、510HQ、520HQ、752、755、850HQ、900HL、950HQ、951HQ、7400HQ(以上商品名、住友化学株式会社製)、ケミパールV100、V200、V300、EV210H(以上商品名、三井化学株式会社製)、ビニブラン3302、1570、1570J、1570K、1570L、1540K、1540L、A20J2、A23J1、A23J2、A34G2、A68J1、4495LL、A23P2E、A68J1N、A70J9、B90J9、TLE−383、4018、A22J7−F2、A22J8、1157、1502B改、1588C、1588CL、1588C改、1588FD、1080、1087、1090B、1571、A22J7−F2、4470、4485LL、4495LL、1042F、1008、GV−6170、GV−6181、1002、1017−AD、KM−01、1225、1245L(以上商品名、日信化学工業株式会社製)等が挙げられる。特に、酢酸ビニルモノマーに8質量%〜35質量%程度のエチレンモノマーを混和して高圧下で乳化重合させ、エマルジョン化したエチレン−酢酸ビニル共重合体よりなるポリマー粒子は、耐水性・耐候性・耐アルカリ性に優れ、またポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルムに対する接着性や耐擦性も向上する。上記エチレン−酢酸ビニル共重合体よりなるポリマー粒子は、メディアの密着性・耐擦性・耐水性等の面から、酢酸ビニルモノマー含量が8質量%〜35質量%が好ましく、12質量%〜30質量%がさらに好ましい。
上記のポリマー粒子は、以下に示す方法で得られ、そのいずれの方法でもよく、必要に応じて複数の方法を組み合わせてもよい。その方法としては、所望のポリマー粒子を構成する成分の単量体中に重合触媒(重合開始剤)と分散剤とを混合して重合(すなわち乳化重合)する方法、親水性部分を持つポリマーを水溶性有機溶剤に溶解させその溶液を水中に混合した後に水溶性有機溶剤を蒸留等で除去することで粒子を得る方法、ポリマーを非水溶性有機溶剤に溶解させその溶液を分散剤と共に水溶液中に混合して粒子を得る方法等が挙げられる。上記の方法は、用いるポリマーの種類・特性に応じて適宜選択することができる。ポリマーを微粒子状態に分散する際に用いることのできる分散剤としては、特に制限はないが、アニオン性界面活性剤(たとえばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ラウリルリン酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートアンモニウム塩等)、ノニオン性界面活性剤(たとえばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル)が挙げられ、これらを単独あるいは二種以上を混合して用いることができる。
前記ポリマー粒子の体積平均粒子径は200nm以上であり、好ましくは220nm〜900nmの範囲である。ポリマー粒子の体積平均粒子径が200nm未満であると、インク吸収性の記録媒体(例えば上質紙、普通紙等)での耐擦性が充分に得られなくなる場合がある。前記ポリマー粒子の体積平均粒子径は、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)により測定することができる。
また、前記ポリマー粒子のMFTは100℃未満であり、好ましくは0℃〜80℃の範囲である。ポリマー粒子のMFTが100℃以上であると、好ましいインクジェット記録方法として後述する第2工程(乾燥工程)における加熱温度が100℃以上必要となり、被記録媒体がその熱により収縮もしくは膨張して印刷画像に皺等の不具合が発生してしまうため好ましくない。また、MFTが0℃以上であることにより、好ましいインクジェット記録方法として後述する第2工程(乾燥工程)においてより強固な樹脂皮膜が形成される効果が高い。そのため記録画像の耐擦性がさらに良好となる。またインクジェット記録方式ヘッドのノズル先端でのインク詰まりが発生し難い。一方、MFTが0℃未満の成分のみからなるポリマー粒子を用いた場合、好ましいインクジェット記録方法として後述する第2工程(乾燥工程)を経ても強固な樹脂皮膜が形成され難いため、記録画像の耐擦性が不良となる場合がある。さらにインクジェット記録方式ヘッドのノズル先端でのインク詰まりが発生し易くなる。
なお、MFTとは連続被膜のできる最低温度(最低造膜温度)のことである。MFTはポリマー粒子が溶媒の蒸発に伴って変形できる温度であり、おおよそポリマーのTgに相当するものである。また、ポリマー粒子のMFT(最低造膜温度)は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
以上述べたポリマー粒子の含有量は、インク組成物全量に対して、固形分換算で0.5質量%〜3質量%の範囲であることが好ましい。この範囲内であることにより、インク非吸収性または低吸収性の被記録媒体上においても、本実施の形態に係るインク組成物と、好ましいインクジェット記録方法として後述する第2工程(乾燥工程)と、を組み合わせることで、インク組成物を固化・定着させることができる。
1.8.ワックス粒子
本実施の形態に係るインク組成物は、体積平均粒子径が200nm未満でかつMFTが100℃以上のワックス粒子を含んでいることが好ましい。このようなワックス粒子を添加することにより、主として後述するインクジェット記録方法における第2工程(乾燥工程)により樹脂皮膜を形成し被記録媒体上に定着させる効果を持つ前記ポリマー粒子と相乗して、記録された記録物の表面に滑沢を付与し耐擦性を向上させる効果がある。本実施の形態に係るインク組成物には、前記ポリマー粒子とワックス粒子とを併用して添加することが好ましい。以下、ワックス粒子について詳細に説明する。
前記ワックス粒子を構成する成分としては、たとえばカルナバワックス、キャンデリワックス、みつろう、ライスワックス、ラノリン等の植物・動物系ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト等の鉱物系ワックス;カーボンワックス、ヘキストワックス、ポリオレフィンワックス、ステアリン酸アミド等の合成ワックス類、α−オレフィン・無水マレイン酸共重合体等の天然・合成ワックスエマルジョンや配合ワックス等を単独あるいは複数種を混合して用いることができる。この中で好ましいワックスの種類としては、ポリオレフィンワックス、特にポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスである。ワックス粒子としては市販品をそのまま利用することもでき、たとえばノプコートPEM17(商品名、サンノプコ株式会社製)、ケミパールW4005(商品名、三井化学株式会社製)、AQUACER515、AQUACER593(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
上記のワックス粒子の体積平均粒子径は、200nm未満であり、好ましくは10nm〜200nmの範囲であり、より好ましくは20nm〜100nmの範囲である。体積平均粒子径が200nm以上であるとフィルム等の表面が滑らかなインク非吸収性記録媒体に印刷した時の記録画像の耐擦性が悪くなる。ワックス粒子の体積平均粒子径は、上記のポリマー粒子と同様の方法で測定することができる。
また、ワックス粒子のMFTは100℃以上であり、耐擦性の観点から好ましくは100℃〜200℃の範囲である。MFTが100℃未満であると擦られた時の摩擦熱によりポリマー粒子が軟化する為、充分な耐擦性が得られなくなる場合がある。なお、ワックス粒子のMFTは、上記のポリマー粒子と同様の方法で測定することができる。
特に本実施の形態に係るインク組成物において、体積平均粒子径が200nm以上でかつMFTが100℃未満であるポリマー粒子としてエチレン−酢酸ビニル系共重合体ポリマー粒子を、体積平均粒子径が200nm未満でかつMFTが100℃以上であるワックス粒子としてポリエチレンワックス粒子を用いた場合、インク吸収性、インク低吸収性、さらにはインク非吸収性のいずれの被記録媒体上に記録した印刷画像においても良好な耐擦性を得ることができる。このような、上述のポリマー粒子とワックス粒子を併用することで記録された画像の耐擦性が良好となる理由はいまだ明らかではないが、下記のように推察される。
エチレン−酢酸ビニル系共重合体ポリマー粒子を構成する成分は、インク非吸収性または低吸収性の被記録媒体及び水不溶性の顔料に対して良好な親和性を有するため、第2工程(乾燥工程)において樹脂皮膜を形成する際に顔料を包み込みながら被記録媒体上に強固に定着する。一方、ポリエチレンワックス粒子の成分は、樹脂皮膜の表面にも存在しており、樹脂皮膜表面の摩擦抵抗を低減する特性を有する。これらの樹脂に共通に有しているエチレン骨格の相乗効果により、外部からの擦れによって削れにくく、かつ被記録媒体から剥がれにくい樹脂皮膜を形成することができるため、記録された画像の耐擦性が向上するものと推察される。
以上述べたワックス粒子の含有量は、インク組成物全量に対して、固形分換算で0.1質量%〜5質量%の範囲であることが好ましい。この範囲内であることにより、インク非吸収性または低吸収性の被記録媒体上においても、上述したポリマー粒子と相乗して、本実施の形態に係るインク組成物と、好ましいインクジェット記録方法として後述する第2工程(乾燥工程)と、を組み合わせることで、インク組成物を固化・定着させることができる。
上述したポリマー粒子とワックス粒子とを併用する場合の含有比率は、固形分換算の質量基準でポリマー粒子:ワックス粒子=1:2〜5:1の範囲であることが好ましい。この範囲内であると、前述した機構が良好に働くため記録された画像の耐擦性が良好となる。
1.9.水
本実施の形態に係るインク組成物は、水を含んでなる。水は、前記インク組成物の主となる媒体であり、後述する第2工程(乾燥工程)において蒸発飛散する成分である。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、顔料分散液及びこれを用いたインク組成物を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
1.10.その他の添加剤
本実施の形態に係るインク組成物には、さらにその特性を向上させる観点から、以上に述べた構成成分の他に、必要に応じて浸透溶剤、保湿剤、防腐・防かび剤、pH調整剤、キレート化剤、さらにはピロリドン類、界面活性剤等を添加することができる。
1.10.1.ピロリドン類
本実施の形態に係るインク組成物は、ピロリドン類をさらに含んでもよい。これを含んだインク組成物は、特にポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等からなるフィルム系のインク非吸収性の被記録媒体を用いた場合、インク組成物の小滴を付着させた際の濡れ拡がりが均一となって、ベタ画像においても濃淡ムラや滲みの少ない、くっきりとした鮮明な画像が得られるという特性を有する。その理由は定かではないが、ピロリドン類の分子骨格構造に含まれるピロリドン構造がフィルム系の被記録媒体に対する親和性が高いため、それを含むインク組成物においてもフィルムに対する濡れ性が向上するものと推察される。また、ピロリドン類は前記グリコールエーテル類やアルキルポリオール類との相溶性にも優れているため、本実施の形態に係るインク組成物は優れた保存安定性及び吐出安定性の両立が可能となる。
ピロリドン類としては、たとえばN−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−ブチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。これらの中でも、インク組成物の保存性確保の点、樹脂定着剤の皮膜形成促進の点、及び臭気が比較的少ない点で、2−ピロリドンが好ましい。
以上述べたピロリドン類は、本実施の形態に係るインク組成物に所望の特性を与えられるのに必要なだけ加えることができるが、好ましい添加量はインク組成物全量に対して0.1質量%〜10質量%の範囲であり、より好ましくは1質量%〜8質量%の範囲である。この範囲内であれば、上述した特性をインク組成物に付与することができ、インク組成物の粘度をインクジェット記録方式において適正な範囲に調整しやすい。
1.10.2.界面活性剤
本実施の形態に係るインク組成物は、界面活性剤をさらに含んでもよい。インク組成物に界面活性剤を含有させることにより、被記録媒体上に均一に濡れ拡がる作用が付与される。これにより、濃淡ムラが少ない鮮明な画像を記録することが可能となる。
このような効果を有する界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤であることが好ましい。ノニオン系界面活性剤の中でも、特に本実施の形態に係るインク組成物に含まれる前記グリコールエーテル類と前記アルキルポリオール類との相溶性・相乗効果に優れるものとして、シリコーン系界面活性剤及び/又はアセチレングリコール系界面活性剤がより好ましい。
シリコーン系界面活性剤としては、ポリシロキサン系化合物等が好ましく用いられ、ポリエーテル変性オルガノシロキサン等が挙げられる。より詳しくは、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−348(以上商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上商品名、信越化学株式会社製)等が挙げられる。シリコーン系界面活性剤の含有量は、インク組成物全量に対して、好ましくは1.0質量%以下である。
アセチレングリコール系界面活性剤は、他のノニオン系界面活性剤と比較して、表面張力及び界面張力を適正に保つ能力に優れており、かつ起泡性がほとんどないという特性を有する。これにより、アセチレングリコール系界面活性剤を含有するインク組成物は、表面張力及びヘッドノズル面等のインクと接触するプリンター部材との界面張力を適正に保つことができるため、これをインクジェット記録方式に適用した場合、吐出安定性を高めることができる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、前記グリコールエーテル類と前記アルキルポリオール類と同様に被記録媒体に対して良好な濡れ性・浸透剤として作用するため、これを含んでなるインク組成物により記録された画像は濃淡ムラや滲みの少ない高精細なものとなる。アセチレングリコール系界面活性剤の含有量は、インク組成物全量に対して、好ましくは1.0質量%以下である。
アセチレングリコール系界面活性剤として、たとえばサーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(以上全て商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業株式会社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。
1.11.インク組成物の物性
インク組成物のpHは、中性ないしアルカリ性であることが好ましく、7.0〜10.0の範囲内であることがより好ましい。pHが酸性であると、インク組成物の保存安定性及び分散安定性が損なわれることがある。また、インクジェット記録装置内のインク流路に用いられている金属部品の腐食等の不具合が発生しやすくなる。pHは、前述したpH調整剤を用いて中性ないしアルカリ性に調整することができる。
インク組成物の粘度は、20℃において1.5mPa・s〜15mPa・sの範囲であることが好ましい。この範囲内であれば、後述する第1工程においてインクの吐出安定性を確保することができる。
インク組成物の表面張力は、25℃において15mN/m〜40mN/mであることが好ましく、20mN/m〜30mN/mであることがより好ましい。この範囲内であれば、後述する第1工程においてインクの吐出安定性を確保することができ、インク非吸収性又は低吸収性の被記録媒体に対する適正な濡れ性を確保することができる。
1.12.インク組成物の製造方法
本実施の形態に係るインク組成物は、前述した材料を任意な順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより得られる。
各材料の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。濾過方法としては、遠心濾過、フィルター濾過等を必要に応じて行なうことができる。
2.インクジェット記録方法
本実施の形態に係るインクジェット記録方法は、被記録媒体上に前述のインク組成物の液滴を吐出して画像を形成する第1工程と、第1工程時又は第1工程後において被記録媒体上のインク組成物を乾燥させる第2工程と、を含むことを特徴とする。以下、各工程について詳細に説明する。
2.1.第1工程
本実施の形態に係るインクジェット記録方法における第1の工程は、インクジェット記録方式で、被記録媒体上に前述したインク組成物の液滴を吐出して画像を形成する工程である。
インクジェット記録方式は、前述したインク組成物を微細なノズルより液滴として吐出して該液滴を被記録媒体に付着させる方式であれば、いかなる方法も使用することができる。インクジェット記録方式として、たとえば以下の4つの方式が挙げられる。
第1の方式は、静電吸引方式と呼ばれるもので、ノズルとノズルの前方に置いた加速電極の間に強電界を印加し、ノズルからインクを液滴状で連続的に噴射させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏向電極に与えて記録する方式、あるいはインク滴を偏向することなく印刷情報信号に対応して噴射させる方式である。
第2の方式は、小型ポンプでインク液に圧力を加え、ノズルを水晶振動子等で機械的に振動させることにより、強制的にインク滴を噴射させる方式である。噴射したインク滴は噴射と同時に帯電させ、インク滴が偏向電極間を飛翔する間に印刷情報信号を偏向電極に与えて記録する。
第3の方式は、圧電素子を用いる方式であり、インク液に圧電素子で圧力と印刷情報信号を同時に加え、インク滴を噴射・記録させる方式である。
第4の方式は、熱エネルギーの作用によりインク液を急激に体積膨張させる方式であり、インク液を印刷情報信号にしたがって微小電極で加熱発泡させ、インク滴を噴射・記録させる方式である。
被記録媒体としては、所望に応じてどのようなものを用いてもよい。本実施の形態に係るインクジェット記録方法では、例えば、インク吸収性の被記録媒体、および、インク非吸収性又は低吸収性の被記録媒体を好適に用いることができる。このように、被記録媒体のインク吸収性によらず、多様な種類の被記録媒体に用いることができる理由の一つとしては、インク組成物に上述の各成分を含有していることが挙げられる。
インク吸収性の被記録媒体としては、例えば、水性インクの浸透性が高い普通紙、再生紙、インクジェット用紙(シリカ粒子やアルミナ粒子から構成されたインク吸収層、あるいは、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドン(PVP)等の親水性ポリマーから構成されたインク吸収層を備えたインクジェット専用紙)、上質紙等が挙げられる。
本明細書において「インク非吸収性及び低吸収性の被記録媒体」とは、「ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である記録媒体」を示す。このブリストー法は、短時間での液体吸収量の測定方法として最も普及している方法であり、日本紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)でも採用されている。試験方法の詳細は「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に述べられている。
インク非吸収性の被記録媒体としては、たとえばインクジェット印刷用に表面処理をしていない(すなわち、インク吸収層を形成していない)プラスチックフィルム、紙等の基材上にプラスチックがコーティングされているものやプラスチックフィルムが接着されているもの等が挙げられる。ここでいうプラスチックとしては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。インク低吸収性の被記録媒体として、アート紙、コート紙、マット紙等の印刷本紙が挙げられる。
2.2.第2工程
本実施の形態に係るインクジェット記録方法における第2の工程は、前記第1工程時及び前記第1工程後の少なくとも一方において、被記録媒体上の前記インク組成物を乾燥させる工程である。第2工程を組み込むことにより、被記録媒体上に付着させた前記インク組成物中に含有される液媒体(具体的には、水、グリコールエーテル類、アルキルポリオール類)が速やかに蒸発飛散して、前記インク組成物中に用いられる体積平均粒子径が200nm以上でかつMFTが100℃未満であるポリマー粒子の皮膜が形成される。これにより、インク吸収層を有しないプラスチックフィルムのようなインク非吸収性の被記録媒体上においても、濃淡ムラが少ない高画質な画像を短時間で得ることができる。また、前記インク組成物中に用いられる体積平均粒子径が200nm以上でかつMFTが100℃未満であるポリマー粒子の皮膜が形成されることで、被記録媒体上にインク乾燥物が接着するため画像が定着する。
第2工程は、インク組成物中に存在する液媒体の蒸発飛散を促進させる方法であれば特に限定されない。第2工程に用いられる方法として、第1工程時及び第1工程後の少なくとも一方で被記録媒体に熱を加える方法、第1の工程後に被記録媒体上のインク組成物に風を吹きつける方法、さらにそれらを組み合わせる方法等が挙げられる。具体的には、これらの方法に用いられる手段としては、強制空気加熱、輻射加熱、電導加熱、高周波乾燥、マイクロ波乾燥等が好ましく用いられる。
第2工程において熱を与える際の温度範囲は、インク組成物中に存在する液媒体の蒸発飛散を促進することができれば特に制限はないが、40℃以上であればその効果が得られ、好ましくは40℃〜90℃であり、より好ましくは40℃〜80℃の範囲である。温度が100℃以上となる場合、被記録媒体の種類によっては変形等の不具合が生じて第2工程後の被記録媒体の搬送に支障が生じたり、被記録媒体が室温まで冷えた際に収縮等の不具合が起こる場合がある。なお、温度はインク組成物と接触する記録媒体表面の温度である。
また、第2の工程における加熱時間は、インク組成物中に存在する液媒体が蒸発飛散し、かつポリマー粒子の皮膜を形成することができれば特に制限はなく、用いる液媒体種・ポリマー粒子種・印刷速度を加味して適宜設定することができる。
3.実施例
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。また、以下の記載において、「部」とは質量部を、「%」とは質量%を示す。
3.1.顔料分散液の調製
3.1.1.ブラック顔料分散液1
実施例1〜実施例20および比較例1〜比較例4に係るインク組成物には、粒子状の樹脂分散剤1で分散させた顔料を含むブラック顔料分散液1を添加した。以下、ブラック顔料分散液1の製造方法を具体的に示す。
(1)粒子状の樹脂分散剤1の製造
ブラック顔料分散液1には、粒子状の樹脂分散剤1に含有されてなる顔料を用いた。ブラック顔料分散液1を調製するために、まず、以下の材料・方法を用いて粒子状の樹脂分散剤1を製造した。
反応容器内に、メチルエチルケトン20部、重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)0.03部、及びモノマーとして、(a)成分;メタクリル酸(商品名:GE−110(MAA)、三菱瓦斯化学株式会社製)15部、(b)成分;スチレンマクロマー(商品名:AS−6S、数平均分子量6,000、50%トルエン溶液、東亜合成株式会社製)20部、(c)成分;2−エチルヘキシルメタクリレート(商品名:アクリエステルEH、三菱レイヨン株式会社製)30部、(c)成分;スチレンモノマー(商品名:スチレンモノマー、新日鉄化学株式会社製)30部、及び(e)成分;メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(上述の式(1)において、nが9、R及びRがメチル基、Rがエチレン基、商品名:NKエステルM−90G、新中村化学株式会社製)15部のうちのそれぞれ10%ずつを入れて攪拌混合しながら、窒素ガス置換を十分に行い、混合溶液を得た。
一方、滴下ロート中に、上記各モノマーの残りの90%ずつを仕込み、次いで重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)0.27部、メチルエチルケトン60部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2部を入れて混合し、十分に窒素ガス置換を行い、混合溶液を得た。
窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら75℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて徐々に反応容器内に滴下した。滴下終了後、その混合溶液の液温を75℃で2時間維持した後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.3部をメチルエチルケトン5部に溶解した溶液を加え、更に75℃で2時間、85℃で2時間熟成させ、反応終了とし、樹脂分散剤1を含む溶液を得た。得られた樹脂分散剤1を含む溶液を減圧乾燥して、粒子状の樹脂分散剤1を製造した。得られた粒子状の樹脂分散剤1の重量平均分子量は196,000であった。
(2)ブラック顔料分散液1の調製
顔料をインク組成物に添加する際には、あらかじめ該顔料を上記の「3.1.1.(1)粒子状の樹脂分散剤1の製造」で得られた粒子状の樹脂分散剤1で水中に分散させた顔料分散液(粒子状の樹脂分散剤に含有されてなる顔料からなる顔料分散液)を用いた。なお、使用した顔料は、水不溶性の性質を有するものである。
ブラック顔料分散液1は、以下のようにして調製した。まず、上記で得られた粒子状の樹脂分散剤1の25部をメチルエチルケトン70部に溶かし、5規定−水酸化ナトリウム水溶液4.1部(中和度75%)、及びイオン交換水230部を加えてポリマーを中和し、次いでウルトラディスパー(浅田鉄工株式会社製)を用いて分散させた後(ディスパー翼、2,000回転/分、10分間)、顔料としてC.I.ピグメントブラック7を100部加え、さらに15℃以下で9,000回転/分で1時間分散処理した。
得られた分散液をピコミル(浅田鉄工株式会社製、分散メディア:ジルコニア、温度:20℃、分散メディア:分散液重量比=8:2)を用いて分散した(周速15m/秒、2時間)。得られた分散液をさらにマイクロフルイダイザー(商品名、Micro fluidics 社製)で分散した(200MPa、10パス)。次に、得られた分散液に、イオン交換水250部を加え、攪拌した後、60℃の水浴に浸けて減圧下でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去して、固形分濃度が30%(顔料固形分:24%)の水分散体を得た。
次に得られた水分散体40gに、架橋剤(商品名:デナコールEX321、エポキシ当量140、水100gへの溶解量約27g(25℃)、ナガセケムテックス株式会社製)を0.177g加え、90℃下で1時間攪拌を行った。攪拌後、冷却し、孔径5μmのメンブランフィルターにて濾過することで、固形分濃度が30%(顔料固形分:24%)のブラック顔料分散液1を得た。
なお、ブラック顔料分散液1における架橋率は、40モル%であった。具体的には、架橋率は、以下のようにして算出した。
架橋率:(0.177/140)×100/(1.6×0.17/86)=40(モル%)
ここで、架橋剤使用量0.177g、エポキシ当量140、粒子状の樹脂分散剤1の使用量1.6g、粒子状の樹脂分散剤1中のメタクリル酸由来の構成単位の比率0.17、メタクリル酸の分子量86である。
また、架橋樹脂分散剤1の1g当たりの塩基で中和されたアニオン性基の量は、1.34mmolであった。なお、アニオン性基の量は、以下のようにして算出された。
架橋樹脂分散剤1の1g当たりの塩基で中和されたアニオン性基の量:111/56×0.75×(1.6/1.777)=1.34(mmol)
ここで、樹脂分散剤1の酸価111、中和度75%である。
また、架橋剤の使用量は、ポリマー1g当たりのアニオン性基量換算で、0.00126/1.6×1000=0.79mmolと反応する量である。
3.1.2.ブラック顔料分散液2
実施例21に係るインク組成物には、粒子状の樹脂分散剤2で分散させた顔料を含むブラック顔料分散液2を添加した。以下、ブラック顔料分散液2の製造方法を具体的に示す。
(1)粒子状の樹脂分散剤2の製造
上記の粒子状の樹脂分散剤1の製造において、(e)成分:メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートを使用せず、(c)成分:スチレンモノマーを45部にした以外は同様にして、粒子状の樹脂分散剤2を含む溶液を得た。
得られた溶液の一部を、減圧下、105℃で2時間乾燥させ、溶媒を除去することによって単離した。得られた樹脂分散剤2の重量平均分子量は186,000であった。
(2)ブラック顔料分散液2の調製
上記のブラック顔料分散液1の調製において、粒子状の樹脂分散剤1を含む溶液の代わりに粒子状の樹脂分散剤2を含む溶液を用いた以外は同様にして、固形分濃度が30%(顔料固形分:24%)のブラック顔料分散液2を得た。
3.1.3.ブラック顔料分散液3
比較例5に係るインク組成物には、樹脂分散剤で分散させた顔料を含むブラック顔料分散液3を添加した。具体的には、ブラック顔料分散液3は、以下のようにして得られた。
まず、30%アンモニア水溶液(中和剤)1.5部を溶解させたイオン交換水76部に、樹脂分散剤としてアクリル酸−アクリル酸エステル共重合体(重量平均分子量:25,000、酸価:180)7.5部を加えて溶解させた。そこに、顔料としてC.I.ピグメントブラック7を15部加えてジルコニアビーズによるボールミルにて10時間分散処理を行なった。その後、遠心分離機による遠心濾過を行って粗大粒子やゴミ等の不純物を除去し、顔料濃度が15%となるように調整して、ブラック顔料分散液3を得た。
3.2.エチレン−酢酸ビニル共重合体ポリマー粒子Aの調製
実施例17及び実施例20に係るインク組成物には、ポリマー粒子として「エチレン−酢酸ビニル共重合体ポリマー粒子A」を添加した。具体的には、以下のようにして得られた。
エチレン−酢酸ビニル共重合体(エバフレックス220;三井デュポンポリケミカル製、酢酸ビニル含量28質量%)100部、オレイン酸カリウム10部を混合し、2軸スクリュー押出機(池貝鉄工製PCM−30,L/D=40)のホッパーより3,000g/時間の速度で供給し、同押出機のベント部に設けた供給口より、水酸化カリウムの1%水溶液を150g/時間の割合で連続的に供給し、加熱温度160℃で連続的に押出した。押出された樹脂混合物を同押出機口に設置したジャケット付きスタティックミキサーで90℃まで冷却し、さらに80℃の温水中に投入し、固形分濃度40%、pH9のエチレン−酢酸ビニル共重合体ポリマー粒子Aを得た。得られた水性分散体エチレン−酢酸ビニル共重合体ポリマー粒子Aの粒径分布をマイクロトラックUPA150(商品名、日機装株式会社製)で測定したところ、体積平均粒子径は250nmであり、MFTは20℃であった。なお、表中のエチレン−酢酸ビニル共重合体ポリマー粒子A以外のポリマー粒子、およびワックス粒子の体積平均粒子径についても、エチレン−酢酸ビニル共重合体ポリマー粒子Aと同様の方法で測定した。
なお、表中のポリマー粒子およびワックス粒子の「MFT」は、以下のように測定した。適当な温度に管理された室内で、ヒーターと温度計を設けたアルミニウム板にポリマー粒子(エマルジョン)またはワックス粒子を薄く塗布し、塗布後、直ちにシリカゲルの入ったバスケット(透明な窓付き)をアルミニウム板の上にのせ塗膜を乾燥させた。塗膜の乾燥後、アルミニウム板を加熱しながら目視により、塗膜の白濁している部分が一様な連続皮膜になる温度を確認して、MFTとした。
3.3.インク組成物の調製
上記の「3.1.顔料分散液の調製」で調製した顔料分散液、及び「3.2.エチレン−酢酸ビニル共重合体ポリマー粒子A」を用いて、表2〜3に示す材料組成にてブラック色の材料組成の異なる実施例1〜21及び比較例1〜5のインク組成物を調製した。各インク組成物は、表2〜3に示す材料を容器中に入れ、マグネチックスターラーにて2時間撹拌混合した後、孔径5μmのメンブランフィルターにて濾過してゴミや粗大粒子等の不純物を除去することにより調製した。なお、表2〜3中の数値は、全て質量%を示し、イオン交換水はインク全量が100質量%となるように添加した。
Figure 2012251047
Figure 2012251047
表2〜3において商品名で記載した各材料は、以下の通りである。
・BYK−348(ビックケミー・ジャパン株式会社製、シリコーン系界面活性剤)
・サーフィノールDF110D(日信化学株式会社製、アセチレングリコール系界面活性剤)
・スミカフレックス752(住友化学株式会社製、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン(50%分散液、体積平均粒子径:500nm、MFT:15℃))
・スミカフレックス465HQ(住友化学株式会社製、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン(65%分散液、体積平均粒子径:1,000nm、MFT:0℃))
・ジョンクリル7100(BASFジャパン株式会社製、スチレン−アクリル系エマルジョン(48%分散液、体積平均粒子径:100nm、MFT:5℃未満))
・AQUACER515(ビックケミー・ジャパン株式会社製、ポリエチレンワックスエマルジョン(35%分散液、体積平均粒子径:60nm、MFT:130℃))
・AQUACER539(混合系ワックスエマルジョン(35%分散液、体積平均粒子径:54nm、MFT:90℃))
・ケミパールW4005(ポリエチレンワックスエマルジョン(40%分散液、体積平均粒子径:600nm、MFT:110℃))
3.4.インク組成物の評価
3.4.1.インク組成物の保存安定性
表2〜3に示した実施例1〜21及び比較例1〜5の各インク組成物を、各々サンプルビン内に密封して60℃環境下にて2週間放置した。放置後のインク組成物の粘度変化、及びインク成分の分離・沈降・凝集状況を観察することにより、インク組成物の保存安定性を評価した。評価結果を表4に示す。また評価基準は以下の通りである。
<粘度変化>
A:調製直後の粘度と比較して変化率が±5%未満
B:調製直後の粘度と比較して変化率が±5%以上±10%未満
C:調製直後の粘度と比較して変化率が±10%以上±20%未満
D:調製直後の粘度と比較して変化率が±20%以上
<インク成分の分離・沈降・凝集>
A:インク成分の分離・沈降・凝集が無い
B:インク成分の分離・沈降・凝集のうちのいずれかがわずかに見られる
C:インク成分の分離・沈降・凝集のうちのいずれかが明確に見られる
D:インク成分の分離・沈降・凝集のうちのいずれかが著しい
Figure 2012251047
表4に示したように、実施例1〜21のインク組成物のうち、実施例6以外のインク組成物は、粘度変化及びインク成分の分離・沈降・凝集において問題なく、保存安定性に優れていた。実施例6のインク組成物は、アルキルポリオール類の添加量が少ないためインク全体のバランスが崩れてしまい、保存安定性が低下したものと推測される。
3.3.2.インク組成物のインクジェットヘッド目詰まり性
表2〜3に示した実施例1〜21及び比較例1〜5の各インク組成物を、インクジェット記録方式のプリンターであるインクジェットプリンターPX−G930(商品名、セイコーエプソン株式会社製、ノズル解像度:180dpi)のヘッド内に充填した。充填後、ノズルチェックパターンを印刷して充填不良・ノズル目詰まりの無いことを確認してから、プリンタヘッドのキャップを外した状態(すなわちヘッドノズル面が乾燥しやすい状態)にして、25℃/40%RH〜60%RHの環境下で一週間放置した。放置後、必要に応じてクリーニング動作を行なってノズルチェックパターンを印刷してノズルの吐出状況を観察することで、インク組成物のインクジェットヘッド目詰まり性を評価した。評価結果を表5に示す。また評価基準は以下の通りである。
A:クリーニング動作が3回以内で、全ノズルからインク組成物が正常吐出された
B:クリーニング動作が4回〜6回の範囲内で、全ノズルからインク組成物が正常吐出された
C:クリーニング動作が7回〜10回の範囲内で、全ノズルからインク組成物が正常吐出された
D:全ノズルからインク組成物が正常吐出されるまでにクリーニング動作が11回以上必要、あるいはクリーニング動作を11回以上行なっても正常吐出されないノズルがあった
Figure 2012251047
表5に示したように、実施例1〜21のインク組成物のうち、実施例6、7、13及び19以外のインク組成物では、インクジェットヘッドの目詰まりが発生し難いことが判った。実施例6及び7のインク組成物の結果より、アルキルポリオール類の添加量が少なくなるにつれてインクの乾燥性が高まり、インクジェットヘッドの目詰まりが発生しやすくなることが判った。また実施例1〜5のインク組成物の結果より、アルキルポリオール類の一気圧下での沸点が低くなるにつれてインクの乾燥性が高まり、インクジェットヘッドの目詰まりが発生しやすくなることが判った。
3.3.3.印刷物の印刷濃度測定
記録媒体としてインクをよく吸収する上質紙である55PW8R(商品名、リンテック株式会社製)を用いた。
また、インクジェット記録方式のプリンターとして、紙案内部に温度が可変できるヒーターを取り付けたインクジェットプリンターPX−G930(商品名、セイコーエプソン株式会社製、ノズル解像度:180dpi)を用いた。
インクジェットプリンターPX−G930に実施例1〜21及び比較例1〜5のインク組成物を充填して、上記記録媒体に印刷した。印刷パターンとしては、横720dpi、縦720dpiの解像度で、100%のdutyで印刷できる塗り潰しパターンを作製しこれを用いた。印刷条件は、プリンターのヒーター設定を「印刷面の温度が40℃となる設定」とした。さらに、印刷中及び印刷直後の印刷物に対して80℃の温度の風を送風することにより乾燥処理を行った。なお、上記の送風強度は記録媒体表面での風速が2m/秒〜5m/秒程度となるように風を送る状態を示す。また、印刷直後の送風時間を1分間とした。
このような条件で印刷したときの印刷物の印刷濃度(O.D.値)を測定した。測定には、ポータブル反射濃度計RD−19T(商品名、サカタインクスエンジニアリング株式会社製)を用いた。その結果を表6に示す。また印刷物の印刷濃度の評価基準は、以下のとおりである。
A:O.D.値が1.4以上を示す。
B:O.D.値が1.3以上1.4未満を示す。
C:O.D.値が1.2以上1.3未満を示す。
D:O.D.値が1.2未満を示す。
Figure 2012251047
表6に示したように、実施例1〜21のインク組成物のうち、実施例9以外のインク組成物では、印刷物の印刷濃度が高いことが判った。実施例9のインク組成物の結果より、アルキルポリオール類の添加量が多くなりすぎると、印刷濃度が低くなることが判った。また、本発明のインク組成物に必須である、オレフィン系モノマーと非プロトン性極性基を有するモノマーとの共重合体からなり、かつ体積平均粒子径が200nm以上でMFTが100℃未満であるポリマー粒子を用いていない比較例1、3及び4、本発明の樹脂分散剤を用いていない比較例5のインク組成物においても、印刷物の印刷濃度が低くなることが判った。
3.3.4.印刷物の濃淡ムラ評価
記録媒体としてインクをよく吸収する上質紙である55PW8R(商品名、リンテック株式会社製)と、インク低吸収性の印刷本紙であるPODグロスコート(商品名、王子製紙株式会社製)と、インク非吸収性のポリプロピレンフィルムであるSY51M 2.6mil.PPWhite TC RP37 2.2mil.HIGH DENSITY WHITE(商品名、UPM RAFLATAC社製、以下「SY51M」と略記する)と、インク非吸収性のポリ塩化ビニルフィルムであるLLSPEXシリーズ(商品名、リンテック株式会社製)を用いた。
また、インクジェット記録方式のプリンターには、上記「3.3.3.印刷物の印刷濃度測定」で使用したプリンターを用いた。
インクジェットプリンターPX−G930に実施例1〜21及び比較例1〜5のインク組成物を充填して、上記記録媒体に印刷した。印刷パターンとしては、横720dpi、縦720dpiの解像度で、50%〜100%の範囲のdutyで10%刻みで印刷できる塗り潰しパターンを作製しこれを用いた。その他の印刷条件は、上記「3.3.3.印刷物の印刷濃度測定」と同様にした。
このような条件で印刷したときの印刷物の濃淡ムラを目視で確認した。その結果を表7に示す。また印刷物の濃淡ムラの評価基準は、以下のとおりである。
A:duty80%以上でも濃淡ムラが認められなかった。
B:duty70%まで濃淡ムラが認められなかった。
C:duty60%まで濃淡ムラが認められなかった。
D:duty60%以下でも濃淡ムラが認められた。
Figure 2012251047
表7に示したように、実施例1〜21のインク組成物は総じて印刷物に濃淡ムラのない鮮明な印刷物が得られた。その中で、実施例5、6、9及び16のインク組成物の結果より、インク非吸収性のSY51MとLLSPEXシリーズにおいては、アルキルポリオール類の沸点が比較的高いものを用いているインク組成物(実施例5)、グリコールエーテル類のHLB値が比較的高いものを用いているインク組成物(実施例16)、アルキルポリオール類の添加量が本発明の好ましい範囲から外れているインク組成物(実施例6及び9)で濃淡ムラが発生する傾向にあることが判った。また、本発明のインク組成物に必須である、オレフィン系モノマーと非プロトン性極性基を有するモノマーとの共重合体からなり、かつ体積平均粒子径が200nm以上でMFTが100℃未満であるポリマー粒子を用いていない比較例1、3及び4においては、印刷物の濃淡ムラが発生することが判った。
3.3.5.印刷物の耐擦性評価
記録媒体は、上記「3.3.4.印刷物の濃淡ムラ評価」と同様のものを用いた。
また、インクジェット記録方式のプリンターには、上記「3.3.3.印刷物の印刷濃度測定」で使用したプリンターを用いた。なお、この評価は室温(25℃)条件下の実験室で行った。
インクジェットプリンターPX−G930に実施例1〜21及び比較例1〜5のインク組成物を充填して、上記記録媒体に印刷した。印刷パターンとしては、横720dpi、縦720dpiの解像度で、100%のdutyで印刷できる塗り潰しパターンを作製しこれを用いた。その他の印刷条件は、上記「3.3.3.印刷物の印刷濃度測定」と同様にした。
その後、室温(25℃)条件下の実験室にて5時間放置した印刷物の印刷面を学振型摩擦堅牢度試験機AB−301(商品名、テスター産業株式会社製)を用いて、荷重200g下・綿布にて20回擦ったときの印刷面の剥がれ状態や綿布へのインク移り状態を確認することにより、耐擦性を評価した。耐擦性の評価基準は、以下のとおりである。またその結果を表8に示した。
A:20回擦ってもインク剥がれ・綿布へのインク移りが認められなかった。
B:20回擦った後インク剥がれまたは綿布へのインク移りがわずかに認められた。
C:20回擦った後インク剥がれまたは綿布へのインク移りが認められた。
D:20回擦り終わる前に、インクの剥がれまたは綿布へのインク移りが認められた。
Figure 2012251047
表8に示したように、実施例1〜21のインク組成物は総じて印刷物の耐擦性が良好であった。その中で、実施例5、9、11、13、16及び19のインク組成物の結果より、インク非吸収性のSY51MとLLSPEXシリーズにおいては、アルキルポリオール類の沸点が比較的高いものを用いているインク組成物(実施例5)、アルキルポリオール類の添加量が本発明の好ましい範囲より多いインク組成物(実施例9)で耐擦性が悪い傾向にあることが判った。また、本発明のインク組成物に必須である、オレフィン系モノマーと非プロトン性極性基を有するモノマーとの共重合体からなり、かつ体積平均粒子径が200nm以上でMFTが100℃未満であるポリマー粒子を用いていない比較例1、3及び4のインク組成物においては、印刷物の耐擦性が悪いことが判った。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

Claims (9)

  1. インク吸収性の被記録媒体、及び、インク非吸収性または低吸収性の被記録媒体に記録されるインク組成物であって、
    粒子状の樹脂分散剤に含有されてなる顔料と、
    1気圧下での沸点が180〜230℃の範囲内であるアルキルポリオール類と、
    オレフィン系モノマーと非プロトン性極性基を有するモノマーとの共重合体を少なくとも含み、かつ体積平均粒子径が200nm以上で最低造膜温度(MFT)が100℃未満であるポリマー粒子と、
    を含んでなり、
    1気圧下での沸点が280℃以上のアルキルポリオール類を実質的に含まない、インク組成物。
  2. さらに、デービス法により算出されたHLB値が4.2〜8.0の範囲内であるグリコールエーテル類を含む、請求項1に記載のインク組成物。
  3. 前記グリコールエーテル類中のアルキル基が分岐構造を有する、請求項1又は請求項2に記載のインク組成物。
  4. さらに、体積平均粒子径が200nm未満で、かつ最低造膜温度(MFT)が100℃以上であるワックス粒子を含む、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のインク組成物。
  5. 前記粒子状の樹脂分散剤が、
    少なくとも、塩生成基含有モノマー由来の構成単位と、マクロマー由来の構成単位および疎水性モノマー由来の構成単位の少なくとも一方と、を備える、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のインク組成物。
  6. さらに、前記粒子状の樹脂分散剤が、一般式(1)で表されるモノマー由来の構成単位を備える、請求項5に記載のインク組成物。
    CH=C(R)COO(RO) ・・・(1)
    (式(1)中、Rは、水素原子または炭素数1〜5の範囲内である低級アルキル基、
    は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の範囲内である2価の炭化水素基、
    は、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜30の範囲内である1価の炭化水素基、または炭素数1〜9の範囲内であるアルキル基を有していてもよいフェニル基、
    nは、平均付加モル数を示し、1〜60の範囲内である。)
  7. 被記録媒体上に請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のインク組成物の液滴を吐出して画像を形成する第1工程と、
    前記第1工程時または前記第1工程後において前記被記録媒体上の前記インク組成物を乾燥させる第2工程と、
    を含む、インクジェット記録方法。
  8. 前記第2工程は、前記被記録媒体を40℃以上80℃以下に加熱することにより行われる、請求項7に記載のインクジェット記録方法。
  9. 前記被記録媒体が、インク吸収性、インク非吸収性または低吸収性の被記録媒体である、請求項7または請求項8に記載のインクジェット記録方法。
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