さらに、調理室11の例えば上部には、加熱手段としてのヒータ8が設けられると共に、加熱調理庫2の内部には、別な加熱手段たるマイクロ波発生装置9が組み込まれており、ヒータ8からの輻射熱とマイクロ波発生装置9からのマイクロ波によって、調理室11に収容した被調理物を加熱する構成となっている。
このオーブンレンジ1の調理室11内には、被調理物を収容するための調理器具として、図2に示した角皿13や、図3に示した焼きプレート14や、図4に示した焼き網15などが装着可能である。調理用皿として角皿13や焼きプレート14は、何れも被調理物を載置する平板状の底部4と、その底部4の周縁から立上がる枠状部5とによりトレイ状に形成される。また焼き網15は、複数本の棒体を組み合わせてなり、被調理物を載置する網状の載置部6と、この載置部6の下方に延設する脚部7とにより構成される。これらの調理器具の表面にも、アルミナセラミックの微粉体を主成分とする有機化合物を含まない無機質素材の塗膜12が形成してある。また、調理室11の扉16に対しても、調理室11に面する内側面に塗膜12が形成してある。
図5に示すように、セラミックス層となる前記塗膜12は、アルミナセラミックの微粉体21を主成分とする有機化合物を含まない無機質素材を溶解した液体22を、母材31の表面に塗布し乾燥させることによって形成したものである。アルミナセラミックの微粉体21は、粒径100nm以下、好ましくは50nm以下である。これを溶解させる液体22は、蒸発後に有機化合物を残さない液体、例えば水,アルコールその他の適切な溶剤を使用する。
塗膜12の形成には、図5に示すような1回塗りの他に、図6に示すような2回塗りも可能である。詳細は後ほど説明するが、塗膜12の形成は、図5に示すような1回塗りであれば、10〜50μmの厚さに調整する。また、図6に示すようなベース塗膜層32とトップ塗膜層33からなる2回塗りであれば、それぞれ20〜25μの厚さで2回塗りする。
本実施形態によれば、調理室11の内壁面や、調理器具(角皿13,焼きプレート14,焼き網15)の表面や、扉16の内側面に、アルミナセラミックの微粉体21を主成分とする有機化合物を含まない無機質素材の塗膜12を形成したことにより、これらの部位の表面硬度を高めて耐摩耗性を向上させ、汚れに対する非粘着性を高めて汚れを着きにくくし、同時に付着した汚れが容易に拭き取れて、清掃性に優れた加熱調理器を実現することが可能になる。
なお本実施形態では、オーブンレンジ1について説明したが、アルミナセラミックの微粉体21を主成分とする有機化合物を含まない無機質素材の塗膜12は、他の加熱調理器、例えば、電子レンジの調理室の内壁面や扉の内側面に対しても形成することができ、またIHクッキングヒーターのグリル部の内壁面や扉の内側面、またグリル内の調理器具である受け皿や焼き網等の表面に対しても形成することができる。ここで、電子レンジの調理室やIHクッキングヒーターのグリル部を形成する本体が、被調理物を収容して加熱を行なう加熱調理庫に相当する。
平均粒径10nmのアルミナセラミック粉体(微粉体21)をコーティングした実施例の角皿13に対して、碁盤目試験をしたところ、4Hの鉛筆でも塗膜剥離が発生しなかった。また、0.1ml,0.2mlの水滴の滴下試験を行ったが、水滴の広がりはいずれにも見られなかった。これに対して、比較例のシリコーン系塗料をコーティングした角皿13については、Hの硬度の鉛筆で塗膜剥離が見られた。また、水滴の若干の広がりが認められた。
卵,ソース,ケチャップ,砂糖,サラダ油,醤油,食酢,レモン,バター,焼き肉のたれを角皿13にそれぞれ垂らし、オーブンレンジ1の調理室11内に入れて300℃,30分の運転の後、中性洗剤で洗った後にタオルで拭き取る試験を行なった。その結果、アルミナセラミック粉体をコーティングした実施例の角皿13では、そのいずれに対しても跡形なくきれいに拭き取ることができた。これに対して、比較例の角皿13の場合、醤油,バターについてはきれいに拭き取ることができたが、卵,ソース,砂糖,サラダ油,食酢,レモン,焼き肉のたれについては少し跡形が残った。そして、ケチャップでは跡形が目立つ結果となった。
こうして、本実施形態の角皿13の場合、表面硬度が強く、また汚れの付着がしにくく、また付着した汚れの拭き取りが容易であり、清掃性にも優れていることが確認できた。
(2)第一の実施形態
次に、上記実施形態を具体化した第一の実施形態について説明する。なお、以下の各実施形態では、上記実施形態と重複する説明は省略する。
図7において、前記母材31は、アルミニウムや鉄などの金属,またはアルミニウムメッキや亜鉛メッキなどの表面処理鋼板からなる。そして母材31の表面に、シリコーン系(SiO)やアルミナ系(AL2O3)の1000nm以下、好ましくは100nm以下の無機成分としての微粉体21を主体にして、膜厚を5〜35μm、好ましくは10〜25μmとしたベース塗膜層32を塗装し、そのベース塗膜層32の上面に、シリコーン系やアルミナ系の粒径が1000nm以下、好ましくは100nmの無機成分としての微粉体21を主体にして、膜厚を3〜30μm、好ましくは2〜25μmとしたトップ塗膜層33を重ねて塗装することで、膜厚8〜65μm、好ましくは15〜50μmのセラミックス層が、母材31の表面に塗膜12として形成される。
この場合、ベース塗膜層32の膜厚を35μm以下、好ましくは25μm以下にすることで、塗膜12の焼成工程での加熱や、実際にオーブンレンジ1として使用した時の加熱冷却で、母材31である金属と塗膜12であるセラミックス層との熱膨張差から、塗膜12の表面に生じる微細なクラックの発生を抑制する構成となっている。
ベース塗膜層32の膜厚が35μm以上になると、塗膜12の表面に生じるクラック幅が大きくなり(3μm以上)、汚れがクラックに入って焦げ付き汚れが食いつき、炭化した汚れが拭取りにくくなる。また、そのクラック幅がさらに広くなり(5μm以上)、クラックが多くなると(複数本以上/1mm平方)、クラックの端部が掛けて、セロハンテープを貼り付けて、セロハンテープを急激に剥がしたときのテープ剥離試験で、粒状にセラミックス粒が剥離する現象が確認できた。実験の結果、ベース塗膜層32の膜厚は35μm以下、好ましくは25μm以下がクラック発生が少ない結果となった。また、ベース塗膜層32の膜厚が薄すぎる場合は、母材31の隠蔽が悪くなり、母材31が透けて見える恐れがあるため、実験では、5μm以上、好ましくは10μmが外観上良好な結果となった。
また、トップ塗膜層33の膜厚を、30μm以下、好ましくは25μm以下とした結果も、上記同様に、クラックの発生を抑制し、テープ剥離試験でのセラミックスの粒状剥離現象を抑制するために有効な結果となった。また、トップ塗膜層33の膜厚は薄すぎると、ベース塗膜層32の隠蔽性が悪化し、ベース塗膜層32が部分的に表面に露出した場合は、塗膜12の表面にザラツキを生じ、また光沢が低下する他、撥水性低下要因となる。実験では、粒径が1000nmないし100nmの微粉体21である場合、トップ塗膜層33の平均膜厚を3μm以上、好ましくは5μm以上にすることで、ベース塗膜層32を良好に隠蔽し、塗膜12の表面のザラツキを抑制可能な結果となった。
上記結果によれば、ベース塗膜層32とトップ塗膜層33の合計膜厚を8〜65μm、好ましくは15〜50μmにすることにより、塗膜12表面のクラックが少なく、テープ剥離でセラミックスの粒状剥離が無く、また塗膜12表面のザラツキや光沢不足がない良好な外観が確保できる。
これにより、図1に示すオーブンレンジ1はもとより、他のオーブン機能を備えた電子レンジや、グリル加熱機能を備えた電子レンジや、魚焼き器などの加熱調理器と、この加熱調理器に付属する調理器具(角皿13,焼きプレート14,焼き網15)において、セラミックスの耐熱性と、微細ナノサイズ膜での非粘着性(汚れが付きにくい)を両立し、かつ従来のシリコーンやフッ素のコーティングの様に、機器が故障した場合などでの異常加熱時に、有機機化合物が溶解,分解して、有害ガスが発生する問題や、低温では非粘着性があるものの、高温になると軟化して非粘着性が悪化する欠点をなくすことができる。
さらに、微粉体21によるセラミックスが主体膜なので高硬度で傷がつきにくく、オーブンレンジ1の高温加熱で、塗膜12の表面に汚れが焦げ付いた場合でも、容易に炭化物を除去し傷付きが防止できる。また、セラミックスは熱放射効率が高く、調理室11の外面に備えたヒータ8から、オーブン庫である調理室11の内面(底面,左側面,右側面,奥面,天面)への熱放射が高まり、オーブンレンジ1としての調理性能が向上する。しかも、塗膜12は高温時も非粘着性が確保できるので、例えばキッチンペーパーを調理用皿(角皿13や焼きプレート14)に敷いて調理をしたり、調理用皿に油を敷いて調理したりするなどの後始末を考慮した手間が無くなり、油を使わないか、油を減らした健康に良い調理を行なうことができる。
そして、こうしたナノセラミックスの塗膜12は、調理室11の内面のみならず、調理室11内に収容する調理器具の表面に塗装して施すのが好ましい。従来は、調理室11と調理器具との双方の接触部に汚れや、調味料の焦げ付きが生じやすく、その焦げ付きが隙間に固まって調理器具が調理室11内にくっつき、調理室11内から調理器具を取り出しにくくなるが、調理器具の両接触部に、コーティングを施すことで隙間に入った調味料などが高温加熱で焦げ付いた場合でも容易に調理用具の着脱ができる。
このように、粒径が1000nm以下、好ましくは100nm以下のアルミナセラミックスからなる微粒体21を主体に、ナノレベルに微細で、高硬度なセラミックスの塗膜12を形成することで、非粘着性と撥水性膜が形成され、傷がつきにくく、汚れが付着しにくくなる調理室11や調理器具を提供できる。また、塗膜12はセラミックスを主成分とし、シリコーンやフッ素,PES,アクリルなどの有機化合物を含まないので、従来のように230℃を超えた高温であっても、有機化合物が軟化して硬度や非粘着性が低下することは無く、被調理物や調味料が付着して加熱で焦げ付いた場合でも、その非粘着性により容易に汚れを拭き取ることができることから、強制的に汚れを落として傷がついてしまう問題も解消可能となる。
ところで、セラミックスの塗膜12を生成する方法として、有機塗料へセラミックス粉末を添加する方法は、有機化合物が表面へ露出し、上記効果が得られない。またセラミックスを溶射スプレーにて形成する方法は、母材31の強度が問題となり、調理室11内を形成する薄板板金では強度がもたない。しかも耐汚れ性や撥水性の良い、ナノサイズのセラミックス粉末層を形成することは困難である。そこで、本発明の各実施形態では、塗膜12としてセラミックス薄膜を生成する手段として、ゾル−ゲル法を選定している。
具体的には、まず母材31を60℃に温め、次に母材31の表面上にベース塗膜層32を塗装して、60℃で10分間加熱し、トップ塗膜層33を塗装する。トップ塗膜層33を塗装した後、120℃または150℃まで3分以上、好ましくは5分以上かけて昇温させ、120〜250℃で5分以上、好ましくは150〜220℃で15分以上加熱焼成して、セラミックス層となる塗膜12を形成する。
また図7では、ベース塗膜層32へCr,Mn,Feなどの無機成分の着色顔料36を添加し、ベース塗膜層32全体を着色してもよい。この着色顔料36によって、母材31表面に対する塗装の有無が容易に分かるため、ベース塗膜層32の作業時に塗り忘れや、部分的に膜厚が薄くなる問題が改善できる。同様の着色は従来から知られているが、とりわけ耐熱性の高い無機成分の着色顔料36を使用することで、塗膜12の耐熱性を維持できる。また特に本発明では、膜厚の管理が性能確保のために重要な点であり、ベース塗膜層32の塗装時に膜厚が厚すぎたり、薄すぎたりした場合に視認できて有効な方策となる。また、好ましくは黒系色の着色顔料36を使用すれば、長期間使用時に汚れが目立ちにくくさらに良い。
図7では、ベース塗膜層32と同様に、トップ塗膜層33にも着色顔料36が添加される。トップ塗膜層33に添加する着色顔料36は、ベース塗膜層32よりも少なくするか、さもなければトップ塗膜層33には顔料を添加しないようにしてもよく、何れの場合もトップ塗膜層33を透明とすることで、ベース塗膜層32とトップ塗膜層33との境界面が容易に観測可能となる。また特に本発明では、前述のように膜厚の管理が性能確保のために重要な点であることから、トップ塗膜層33を透明にすれば、トップ塗膜層33の塗装時に膜厚が厚すぎたり、薄すぎたりした場合に視認できて有効な方策となる。さらに、トップ塗膜層33の膜厚が薄い場合は、塗膜12の表面にザラツキが生じ、逆にトップ塗膜層33の膜厚が厚すぎれば、塗膜12の透明感が強くなるので、それによりトップ塗膜層33の膜厚と、ベース塗膜層32を合計した塗膜12の膜厚の視認が可能となる。また、塗膜12の表面が透明感のある光沢面となり、外観品位が向上する効果もある。
図7では、トップ塗膜層33へマイカ粒やアルミ粒などの光輝成分顔料37を添加すれば、トップ塗膜層33が粒状にキラキラ光り、さらにベース塗膜層32とトップ塗膜層33の境界面が一層容易に観測可能となる。また、塗膜12としてメタリック調またはパール調の外観となり、外観品位がさらに向上する。
前述したように、塗膜12を形成する際には、トップ塗膜層33を塗装した後に、120℃または150℃まで3分以上、好ましくは5分以上かけて昇温させ、120〜250℃で5分以上、好ましくは150〜220℃で15分以上加熱焼成して、セラミックス層となる塗膜12を形成する。ここでの加熱焼成温度は、加熱調理時における調理室11内の調理可能な最高加熱温度よりも低く設定され、またベース塗膜層32やトップ塗膜層33、または母材31は、それらの成分の耐熱使用温度が、加熱調理時における前記最高加熱温度以下のものを選択する。こうすると、オーブンレンジ1の加熱調理時には塗膜12を形成する際の焼成温度以上で、かつベース塗膜層32やトップ塗膜層33の成分、または母材31の成分の耐熱使用温度以下の加熱温度を、調理可能な最高温度とすることができる。
塗膜12の焼成時には、塗膜12中の水分を脱水させ分子結合を活性化させる役割を果たすが、実験の結果、急速に昇温させると塗膜12の表面にクラックが発生する要因が分かった。焼成温度(120℃または150℃)に到達させるまでの時間を3分以上、好ましくは5分以上かけてゆっくり昇温させることで、クラックの発生を抑制できる。
また、その後の焼成温度は、低温すぎると脱水作用が悪く、また高温すぎると表面クラックの発生要因となるため、120〜250℃、好ましくは150〜220℃に設定する。さらに、焼成時間が短いと十分に脱水や分子結合が進まないため、5分以上、好ましくは15分以上加熱焼成することで、セラミックス層の密着性が向上し、テープ剥離試験での粒状剥離を無くすことができた。
焼成により完成した塗膜12は、セラミックスの耐熱性を有し、加熱調理時に焼成温度より高温の120〜250℃以上の温度に耐え、セラミックス(塗膜12)の耐熱温度、または母材31の耐熱温度まで約400℃(鉄系鋼板の場合)の高温に耐える。また、母材31に耐熱ステンレスや、インコロイなどの耐熱鋼板を使用すれば約600〜800℃(セラミックスと母材のどちらかの耐熱温度限界まで)の高温に絶えるが、何れの場合もセラミックスが主体のため、有機化合物の溶解によるガスの発生などなく、例えば250〜800℃のオーブンレンジ1の加熱にも耐える調理用皿(角皿13,焼きプレート14)や容器の他に、焼き網15,調理室11内面,扉16のガラス(母材は耐熱ガラス)内面,調理室11内底面のセラミックス板(オーブンレンジ1の例)表面,及びガス/電気コンロ用の調理器具などに応用可能である。
なお、従来の有機化合物塗料の場合は、焼成温度を超えた温度での使用は困難で(フッ素は約400℃で分解・溶解し、ガスが発生)、焼成温度を高温にする必要があったが、本発明では塗膜12形成時における焼成温度を低くすることができ、焼成時には液体22としての塗料に含まれた主に水分が蒸発するだけで、有毒ガスの発生がなく、安全で環境上の問題も無くなる。また、低温で焼成可能なことから、焼成炉の消費エネルギーを少なくできる。
図7に示す前述の塗膜12は、加熱調理庫である調理室11の内面、または加熱調理時に使用する角皿13,焼きプレート14,焼き網15などの調理器具の表面へ、セラミックス層として形成される。それにより、図1に示すオーブンレンジ1はもとより、他の例えば電子レンジやオーブンなどの加熱調理器の調理性能(油無しか減量、高温加熱調理)、清掃性(耐汚れ性、高硬度)、安全性(有害ガス発生無し、有機化合物無し)、経済性(焼成炉電力減)などを向上することが可能となる。
このように、本実施形態における加熱調理器や調理器具は、金属または表面処理鋼からなる母材31の表面に、シリコーン系またはアルミナ系の粒径が1000nm以下である無機成分としての微粉体21を主体に、膜厚を5〜35μmとしたベース塗膜層32と、シリコーン系またはアルミナ系の粒径が1000nm以下である無機成分としての微粉体21を主体に、膜厚を3〜30μmとしたトップ塗膜層33を重ねて塗装し、膜厚8〜65μmのセラミックス層を塗膜12として形成している。
この場合、粒径が1000nm以下の微粒体21を主体にしたセラミックスの塗膜12を形成することで、母材31の表面に非粘着性と撥水性を有する膜が形成され、高硬度で傷がつきにくく、汚れが付着しにくくなるオーブンレンジ1の調理室11や調理器具を提供できる。また、塗膜12には有機化合物を含んでいないので、高温下であっても硬度や非粘着性が低下することは無く、さらにその非粘着性により容易に汚れを拭き取ることができるので、強制的に汚れを落として傷がついてしまう問題も解消する。そのため、高硬度で傷が付きにくく、汚れが付着しにくい非粘着性を有し、汚れが拭き取りやすく清掃性に優れたオーブンレンジ1の調理室11や調理器具を提供できる。
また、ベース塗膜層32の膜厚を35μm以下とし、トップ塗膜層33の膜厚を30μm以下とすることで、塗膜12の表面に生じる微細なクラックの発生を抑制して、テープ剥離試験でのセラミックスの粒状剥離現象を抑制することができ、ベース塗膜層32の膜厚を5μm以上とすることで、母材31を隠蔽して良好な外観を得ることができ、トップ塗膜層33の膜厚を3μm以上とすることで、ベース塗膜層32を隠蔽して良好な外観を保ちつつ、塗膜12の表面のザラツキを抑制することができる。
また本実施形態では、ベース塗膜層32へ無機成分の顔料36を添加して着色を施している。こうすると、母材31表面に対する塗装の有無が容易に分かるようになり、ベース塗膜層32の塗装時に膜厚が厚すぎたり、薄すぎたりした場合に視認ができる。また、塗膜12の耐熱性を維持できる。
また本実施形態では、トップ塗膜層33の着色顔料36の添加量を、ベース塗膜層32の着色顔料36の添加量より少なくするか、さもなければトップ塗膜層33に着色顔料を添加しないようにし、トップ塗膜層33を透明に形成している。
この場合、トップ塗膜層33を透明とすることで、ベース塗膜層32とトップ塗膜層33との境界面が容易に観測可能となり、トップ塗膜層33の塗装時に膜厚が厚すぎたり、薄すぎたりした場合に視認ができる。さらに、トップ塗膜層33の膜厚が薄い場合は、塗膜12の表面にザラツキが生じ、トップ塗膜層33の膜厚が厚すぎれば、塗膜12の透明感が強くなるので、それによりトップ塗膜層33の膜厚と、ベース塗膜層32を合計した塗膜12の膜厚の視認が可能となる。また、塗膜12の表面が透明感のある光沢面となり、外観品位が向上する。
また本実施形態では、トップ塗膜層33へ光輝成分顔料37を添加し、トップ塗膜層33をメタリック調またはパール調の外観としている。それにより、トップ塗膜層33が粒状にキラキラ光り、ベース塗膜層32とトップ塗膜層33の境界面が一層容易に観測可能となる。また、塗膜12として外観品位がさらに向上する。
また本実施形態では、トップ塗膜層33の塗装後に、120℃または150℃まで3分以上かけて昇温させ、120〜250℃で5分以上加熱焼成して、セラミックス層としての塗膜12を形成し、加熱調理時にはその加熱焼成した温度以上で、かつベース塗膜層32やトップ塗膜層33の成分、または母材31の成分の耐熱使用温度以下の加熱温度を、調理可能最高温度としている。
この場合、トップ塗膜層33の塗装後に、120℃または150℃まで3分以上かけて昇温させることで、塗膜12の表面におけるクラックの発生を抑制できる。またその後で、120〜250℃で5分以上加熱焼成することで、塗膜12の密着性が向上し、テープ剥離試験での粒状剥離を無くすことができる。焼成により完成した塗膜12は、ベース塗膜層32やトップ塗膜層33の成分、または母材31の成分の耐熱使用温度以下であれば、焼成温度よりも高温の温度に耐え、有機化合物の溶解によるガスの発生も無い。また、焼成時には主に水分が蒸発するだけで、有毒ガスの発生がないため、安全で環境上の問題も無く、しかも低温で焼成可能なことから、焼成炉の消費エネルギーを少なくできる。
また本実施形態では、加熱調理庫2と調理器具(角皿13,焼きプレート14,焼き網15)とを備えた加熱調理器としてのオーブンレンジ1において、上述したセラミックス層としての塗膜12を、加熱調理庫2の内面部または調理器具の表面部に形成している。
このようにすることで、塗膜12を形成したことによる効果を、加熱調理庫2の内面部や調理器具の表面部にも適用させることができる。
(3)第二の実施形態
図8は、本発明における第二の実施形態を示している。前記第一の実施形態と異なるのは、母材31の表面に、表面粗さが1.5〜6.5μm、好ましくは3〜5μmの凹凸粗面41を形成していることである。それ以外は第一の実施形態と共通しており、凹凸粗面41の表面に、前述したベース塗膜層32とトップ塗膜層33を重ねて塗装し、母材31の表面に膜厚8〜65μm、好ましくは15〜50μmのセラミックス層としての塗膜12を形成している。塗膜12は、図1に示す加熱調理庫2を構成する調理室11の内壁面や扉16の内側面の他に、角皿13,焼きプレート14,焼き網15などの調理器具の表面に形成される。
塗装前に、母材の塗装面をサンドブラス,アルミナブラスト,化学エッチングなどで粗面化し、その粗面へ塗装して粗面の凹凸と塗膜とのアンカー効果で塗膜を密着させることは、一般的な加工方法として知られている。但し、本発明のような1000nm以下、好ましくは100nm以下の無機成分としての微粉体21を主体にした塗膜12の場合、塗装される母材31の表面粗さが非常に重要で、細かすぎても粗すぎても密着性が低下する。実験では、母材31の表面粗さが1.5〜6.5μm、好ましくは3〜5μmの凹凸粗面41をブラスト加工で形成し、その凹凸粗面41にベース塗膜層32とトップ塗膜層33とにより塗膜12を形成して、テープ剥離試験(セロハンテープを貼り付けて、セロハンテープを急激に剥がしたときの塗膜の剥離を検査)や、碁盤目テープ剥離試験(カッターで1mm角の升目を100枡切り込みセロハンテープを貼り付けて、セロハンテープを急激に剥がしたときの升目の塗膜の剥離を検査)を行った。その結果、両試験共に塗膜12の剥離が無いことを確認できた。
また、オーブン庫となる加熱調理庫2の内部は、板状の母材31により、天井面,左側面,右側面,底面,奥面の少なくとも5面の要素で構成され、図示されてはいないが、これらの各板状要素の端部が、溶接,カシメ,またはねじ止めなどの止着部材によって互いに固着された箱状の筐体を成す。
ここで、筐体にした後に加熱調理庫2の内面をブラストすると、加熱調理庫2の奥まった内面へのブラスト処理を行なう際に、その内面に予め形成される凹凸部や孔端部、及び各要素間の接合面の隙間などに、十分なブラストがかからず、粗面化が不足する問題があった。よって本実施形態では、加熱調理庫2を構成する各要素の端部を溶接や、カシメや、ねじ止めなどにより接合し固着する前に、前述したような表面粗さが1.5〜6.5μm、好ましくは3〜5μmの凹凸粗面41を形成するためのブラスト加工を施すことで、筐体にしてからブラストした場合の部分的な粗面化不足を防止する効果が得られる。
また加熱調理庫2として、上記各要素を接合・固着するときに、母材31の表面に形成した凹凸粗面41が、外力によって無くなってしまう可能性があるだけでなく、母材31の表面に汚れが付着する可能性もあり、塗膜12を塗装した後に密着性の低下要因となるリスクがある。そこで本実施形態では、加熱調理庫2を構成する各要素の端部を固着した後、塗膜12を母材31の表面に塗装する前に、再度ブラストを行って、加熱調理庫2内部の各表面を1.5〜6.5μm、好ましくは3〜5μmの凹凸粗面41で粗面化することで、そうした密着性の低下要因となるリスクを回避することが可能になる。
以上のように本実施形態では、加熱調理庫2と調理器具とを備えた加熱調理器としてのオーブンレンジ1において、これらの加熱調理庫2や調理器具の露出面は、金属または表面処理鋼からなる母材31の表面に、表面粗さが1.5〜6.5μmの凹凸粗面41が形成され、この凹凸粗面41に、シリコーン系またはアルミナ系の粒径が1000nm以下である無機成分としての微粉体21を主体に、膜厚を5〜35μmとしたベース塗膜層32と、シリコーン系またはアルミナ系の粒径が1000nm以下である無機成分としての微粉体21を主体に、膜厚を3〜30μmとしたトップ塗膜層を重ねて塗装し、膜厚8〜65μmのセラミックス層を塗膜12として形成している。
このようにすることで、オーブンレンジ1の加熱調理庫2や調理器具において、上述した第一の実施形態による作用効果を維持しつつ、母材31から塗膜12が容易に剥離しないようにして、母材31と塗膜12との密着性を高めることができる。
また、本実施形態の加熱調理庫2は、母材31により天井面,左側面,右側面,底面,奥面の5面の要素で構成され、これらの各要素の端部を固着してなり、各要素を固着する前に、母材31の表面に凹凸粗面41を形成している。
この場合、加熱調理庫2となる各要素の端部を固着した後で、その内面に凹凸粗面41を形成しようとすると、粗面化が不足する場合があるが、各要素の端部を固着する前に、母材31の表面に凹凸粗面41を形成することで、そうした粗面化の不足を解消できる。
また本実施形態では、加熱調理庫2となる各要素を固着した後の塗膜12を塗装する前に、母材31の表面に凹凸粗面41を再度形成している。
このように、加熱調理庫2を構成する各要素を固着した後、母材31の表面に塗膜12を塗装する前に、再度その表面を凹凸粗面41で粗面化することで、塗膜12を塗装した後に密着性の低下要因となるリスクを回避できる。
(4)第三の実施形態
次に、本発明における第三の実施形態について説明する。第二の実施形態でも説明したように、オーブン庫となる加熱調理庫2は、板状の母材31を、天井面,左側面,右側面,底面,庫内奥面の少なくとも5面の要素で構成し、各要素の端部を溶接や、カシメや、ねじ止めなどの止着部材を利用して接合および固着することで、正面を開口した筐体を構成している。また図1に示すように、その開口した筐体の開口面外周囲には、扉16を開いたときに、加熱調理庫2の正面として露出する前面枠18が、前記天井面,左側面,右側面および底面の各要素に接合および固着される。
加熱調理庫2の前面枠18は、上記各実施形態で示したものと同じ塗膜12が施されている。これは図7や図8に示すように、母材31の表面にシリコーン系やアルミナ系の1000nm以下、好ましくは100nm以下の無機成分としての微粉体21を主体にしたセラミックス層としての塗膜12が形成される。図7や図8では、何れもベース塗膜層32とトップ塗膜層33とによる2コートの塗膜12を示しているが、トップ塗膜層33だけの1コートの塗膜12を、母材31の表面に形成しても構わない。
このような塗膜12を前面枠18の母材31の表面に形成することで、その前面枠18の表面に汚れなど異物が付託した場合に容易に拭取ることができる。また、汚れがオーブンレンジ1の加熱で炭化などでこびりついた場合(固着した場合)に、タワシやヘラなどで炭化固着物を削ぎ落としても、前面枠18の表面に傷がつきにくくなり、また汚れが容易にとれるので前面枠18の表面が変形しにくくなる。これにより、扉16を閉じて前面枠18に対向させたときに、その扉16と前面枠18の隙間寸法が安定的に維持でき、汚れが付着した場合に、(その汚れを除去した部分で)隙間が部分的に広くなったり、狭くなったりすることが抑制される。そのため、隙間が大きくなった場合には、加熱調理庫2内の加熱による熱気が隙間から漏れて、加熱性能が低下する問題を解決でき、また隙間が狭くなった場合には、加熱調理庫2内の加熱温度が高くなってしまうなど、設定温度に対する実際の加熱調理庫2内の温度との差異が大きくなってしまう問題を解決可能となる。
また、ヒータ8を備えたオーブン機能の他に、マイクロ波発生装置9によるマイクロ波加熱を付加したオーブンレンジ1の場合は、マイクロ波発生装置9からのマイクロ波加熱時に、部分的に隙間が広がった場合には電波がリークする恐れや、隙間が狭くなった場合にはマイクロ波加熱特性が変化する諸問題を解決できる。
本実施形態では、塗膜12へCr,Mn,Feなどの無機成分の着色顔料36を添加して、塗膜12を着色してもよい。この着色顔料36によって、母材31表面に対する塗装の有無が容易に分かるため、塗膜12の作業時に塗り忘れや、部分的に膜厚が薄くなる問題が改善できる。また、着色顔料36は無機質で高硬度な成分を有するのでで、汚れが炭化固着した場合に、ヘラなどでこそぎ落とした場合に傷がつきにくくなる効果がある。加えて、好ましくは黒系色の着色顔料36を使用すれば、長期間使用時に汚れが目立ちにくくさらに良い。
また図7や図8に示すように、塗膜12をベース塗膜層32とトップ塗膜層33とによる2コートとし、トップ塗膜層33に添加する着色顔料36は、ベース塗膜層32よりも少なくするか、さもなければトップ塗膜層33には顔料を添加しないようにして、トップ塗膜層33を透過膜として形成してもよい。このように、塗膜12のトップに透過膜があることで、前面枠18の外観について光沢(艶)が向上し、前面枠18表面のザラツキ低減など外観品位を向上させることができる。また、前面枠18への汚れが付着した場合に、汚れとの色差が明確となり、汚れの視認性を向上して、清掃時の使い勝手を改善することが可能となる。
さらに、トップ塗膜層33へマイカ粒やアルミ粒などの光輝成分顔料37を添加すれば、トップ塗膜層33が粒状にキラキラ光り、さらにベース塗膜層32とトップ塗膜層33の境界面が一層容易に観測可能となる。また、塗膜12としてメタリック調またはパール調の外観となり、外観品位がさらに向上する。
以上のように本実施形態では、加熱調理庫2を備えた加熱調理器において、この加熱調理庫2は、母材31により天井面,左側面,右側面,底面,奥面の5面の要素で構成され、これらの各要素の端部を固着して開口した筐体をなし、この筐体の開口を開閉する扉16を備え、筐体の開口外周囲に、扉16を開いたときに加熱調理庫2の正面となる枠としての開口枠18を備え、開口枠18の表面に、シリコーン系またはアルミナ系の粒径が1000nm以下である無機成分としての微粉体21を主体にしたセラミックス層を塗膜12として形成している。
この場合、加熱調理庫2の開口枠18に、粒径が1000nm以下の微粒体21を主体にしたセラミックスの塗膜12を形成することで、母材31の表面に非粘着性と撥水性を有する膜が形成され、高硬度で傷がつきにくく、汚れが付着しにくくなるオーブンレンジ1の開口枠18を提供できる。また、塗膜12には有機化合物を含んでいないので、高温下であっても硬度や非粘着性が低下することは無く、さらにその非粘着性により容易に汚れを拭き取ることができるので、強制的に汚れを落として傷がついてしまう問題も解消する。そのため、高硬度で傷が付きにくく、汚れが付着しにくい非粘着性を有し、汚れが拭き取りやすく清掃性に優れたオーブンレンジ1の開口枠18を提供できる。
加えて、前面枠18の表面に汚れなど異物が付託した場合に容易に拭取ることができる。また、オーブンレンジ1の加熱で固着した炭化固着物を、タワシやヘラなどで削ぎ落としても、前面枠18の表面に傷がつきにくくなり、また汚れが容易にとれるので前面枠18の表面が変形しにくくなる。これにより、扉16と前面枠18の隙間寸法が安定的に維持できることになり、オーブンレンジ1としての設定温度に対する実際の加熱調理庫2内の温度との差異が大きくなってしまう問題を解決できる。そのため、高硬度で傷が付きにくく、汚れが付着しにくい非粘着性を有し、汚れが拭き取りやすく清掃性に優れたオーブンレンジ1の前面枠18を提供でき、さらには扉16と前面枠18の隙間寸法を安定的に維持できる。
また本実施形態では、塗膜12へ無機成分の顔料36を添加して着色を施している。このようにすると、前面枠18表面に対する塗装の有無が容易に分かるため、塗膜12の作業時に塗り忘れや、部分的に膜厚が薄くなる問題が改善できる。また、着色顔料36は無機質で高硬度な成分を有するので、汚れが炭化固着した場合に、ヘラなどでこそぎ落としても傷がつきにくくなる効果がある。
また本実施形態の塗膜12は、ベース塗膜層32とトップ塗膜層33とにより形成され、トップ塗膜層33の着色顔料36の添加量を、ベース塗膜層32の着色顔料36の添加量より少なくするか、さもなければトップ塗膜層33に着色顔料を添加しないようにし、トップ塗膜層33を透過膜として形成している。
このように、塗膜12のトップに透過膜を形成することで、前面枠18の外観品位を向上させることができる。また、前面枠18への汚れが付着した場合に、汚れとの色差が明確となり、清掃時の使い勝手を改善できる。
さらに本実施形態では、トップ塗膜層33へ光輝成分顔料37を添加し、トップ塗膜層33をメタリック調またはパール調の外観としている。それにより、開口枠18においてトップ塗膜層33が粒状にキラキラ光り、ベース塗膜層32とトップ塗膜層33の境界面が一層容易に観測可能となる。また、塗膜12として外観品位がさらに向上する。
(5)第四の実施形態
次に、本発明における第四の実施形態について説明する。ここでもオーブン庫となる加熱調理庫2は、板状の母材31を、天井面,左側面,右側面,底面,庫内奥面の少なくとも5面の要素で構成し、各要素の端部を溶接や、カシメや、ねじ止めなどの止着部材を利用して接合および固着することで、正面を開口した筐体を構成している。また、筐体の内側をなす天井面,左側面,右側面,底面,奥面の各表面には、シリコーン系またはアルミナ系の粒径が1000nm以下である無機成分としての微粉体21を主体にして、セラミックス層となる塗膜12を形成している。
塗膜12の膜厚が厚くなると、母材31と塗膜12との熱膨張差で、塗膜12にクラックが生じやすくなる。一方、塗膜12の膜厚が薄くなると、塗膜12による母材31の隠蔽性が低下し、母材31が透けて見える。よって本実施形態では、塗膜12の膜厚を8〜65μm、好ましくは15〜50μmとすることで、こうした問題を回避しているが、加熱調理庫2内の奥面(開口面の対向面)は、光が入りにくく母材31の隠蔽性が低下しても外観上の支障はないことから、他の天井面,左側面,右側面,底面よりも薄めの膜厚にし、それにより塗料の使用量を低減することが可能になる。
また、前記加熱調理庫2内の奥面には、その奥面から加熱調理庫2の調理室11内へ熱を供給するための孔や、ヒータ8や送風用のモーターを固定するための凹凸がある場合がある。図1を参照すると、19はそうした凹凸部に相当するものである。孔の端面や凹凸部19は、オーブンレンジ1の加熱時の熱による膨張収縮の影響を受けやすく、塗膜12にクラックが発生しやすい環境にあり、そのクラックが大きくなると塗膜12の剥離につながる。そこで本実施時態では、孔や凹凸部19を含めた加熱調理庫2内の奥面において、母材31の表面に形成する塗膜12の膜厚を他の面より薄くすることで、塗膜12にクラックが発生し難くする効果を得ることができる。
なお、オーブンレンジ1の場合は特に加熱調理庫2内の奥面が外観上見えにくい部位となるが、奥面に限定されるものではなく、庫内の側面奥や上側など製品構成や目的に応じて、内面の任意の箇所で、塗膜12を他の部位よりも薄めの膜厚に形成しても良い。
このように本実施形態では、加熱調理庫2を備えた加熱調理器において、この加熱調理庫2は、母材31により天井面,左側面,右側面,底面,奥面の5面の要素で構成され、これらの各要素の端部を固着して開口した筐体をなし、この筐体の内側表面に、シリコーン系またはアルミナ系の粒径が1000nm以下である無機成分としての微粉体21を主体にして、膜厚8〜65μmのセラミックス層を塗膜12として形成し、さらに筐体の奥面に形成した塗膜12を、筐体の他の面に形成した塗膜12よりも薄い膜厚で形成している。
この場合、加熱調理庫2をなす筐体の内側表面に、粒径が1000nm以下の微粒体21を主体にしたセラミックスの塗膜12を形成することで、母材31の表面に非粘着性と撥水性を有する膜が形成され、高硬度で傷がつきにくく、汚れが付着しにくくなるオーブンレンジ1の筐体を提供できる。また、塗膜12には有機化合物を含んでいないので、高温下であっても硬度や非粘着性が低下することは無く、さらにその非粘着性により容易に汚れを拭き取ることができるので、強制的に汚れを落として傷がついてしまう問題も解消する。そのため、高硬度で傷が付きにくく、汚れが付着しにくい非粘着性を有し、汚れが拭き取りやすく清掃性に優れたオーブンレンジ1の筐体を提供できる。
また、塗膜12の膜厚を8〜65μmとすることで、塗膜12にクラックが生じにくくなり、母材31が透けて見えることがない。但し、加熱調理庫2内の奥面は、母材31の隠蔽性が低下しても外観上の支障はないことから、他の面よりも薄めの膜厚で塗膜12を形成し、それにより塗料の使用量を低減することが可能になる。
また本実施形態において、加熱調理庫2をなす筐体の奥面には、孔,凹凸(凹凸部19),または孔と凹凸が設けてある。
孔の端面や凹凸部19は、塗膜12にクラックが発生しやすい環境にあるが、孔や凹凸部19を含めた加熱調理庫2内の奥面において、母材31の表面に形成する塗膜12の膜厚を他の面より薄くすることで、塗膜12にクラックが発生し難くする効果を得ることができる。
(6)第五の実施形態
次に、本発明における第五の実施形態について説明する。図9に示すように、本実施形態は上記第一の実施形態で示したベース塗膜層32とトップ塗膜層33とによる2コートの塗膜12を、1コートで形成したものである。塗膜12は、下限8μm以上、好ましくは下限15μm以上、上限65μm以下、好ましくは上限50μm以下のセラミックス層として、母材31の表面に形成される。この場合も、塗膜12の表面クラックを少なくし、テープ剥離試験での粒状剥離を防止し、外観にメタリックやパールはできないが、加熱調理庫2内や調理器具の清掃性など基本機能の改善を図ることができる。
また、塗膜12へCr,Mn,Feなどの無機成分の着色顔料36を添加し、塗膜12全体を着色してもよい。この着色顔料36によって、母材31表面に対する塗装の有無が容易に分かるため、塗膜12の作業時に塗り忘れや、部分的に膜厚が薄くなる問題が改善できる。同様の着色は従来から知られているが、とりわけ耐熱性の高い無機成分の着色顔料36を使用することで、塗膜12の耐熱性を維持できる。また特に本発明では、膜厚の管理が性能確保のために重要な点であり、塗膜12の塗装時に膜厚が厚すぎたり、薄すぎたりした場合に視認できて有効な方策となる。また、好ましくは黒系色の着色顔料36を使用すれば、長期間使用時に汚れが目立ちにくくさらに良い。その他の構成は、第一の実施形態と共通しているが、第二の実施形態のような凹凸粗面41を母材31の表面に形成してもよい。
このように本実施形態では、金属または表面処理鋼からなる母材31の表面に、シリコーン系またはアルミナ系の粒径が1000nm以下である無機成分としての微粉体21を主体にして、膜厚8〜65μmのセラミックス層を塗膜12として形成している。
この場合も、粒径が1000nm以下の微粒体21を主体にしたセラミックスの塗膜12を形成することで、母材31の表面に非粘着性と撥水性を有する膜が形成され、高硬度で傷がつきにくく、汚れが付着しにくくなるオーブンレンジ1の調理室11や調理器具を提供できる。また、塗膜12には有機化合物を含んでいないので、高温下であっても硬度や非粘着性が低下することは無く、さらにその非粘着性により容易に汚れを拭き取ることができるので、強制的に汚れを落として傷がついてしまう問題も解消する。そのため、高硬度で傷が付きにくく、汚れが付着しにくい非粘着性を有し、汚れが拭き取りやすく清掃性に優れたオーブンレンジ1の調理室11や調理器具を提供できる。
また本実施形態では、塗膜12へ無機成分の顔料36を添加して着色を施している。こうすると、母材31表面に対する塗装の有無が容易に分かるようになり、塗膜12の塗装時に膜厚が厚すぎたり、薄すぎたりした場合に視認ができる。また、塗膜12の耐熱性を維持できる。
本実施形態の変形例として、図7に示すようなベース塗膜層32とトップ塗膜層33とによる2コートの塗膜12を形成してもよい。その場合、ベース塗膜層32へCr,Mn,Feなどの無機成分の着色顔料36を添加して、ベース塗膜層32全体を着色し、トップ塗膜層33にも着色顔料36を添加する。ベース塗膜層32よりも少なくするか、さもなければトップ塗膜層33には顔料を添加しないようにしてもよいが、上記実施形態のように、トップ塗膜層33を透明または透明膜とする必要はない。
このように本実施形態では、アルミニウムや鉄などの金属,またはアルミニウムメッキや亜鉛メッキなどの表面処理鋼からなる母材31の表面に、シリコーン系またはアルミナ系の粒径が1000nm以下、好ましくは100nm以下の無機成分としての微粉体21を主体に、無機成分の着色顔料36を添加して着色して、膜厚を下限5μm以上、好ましくは下限10μm以上、上限35μm以下、好ましくは上限25μm以下としたベース塗膜層32と、シリコーン系またはアルミナ系の粒径が1000nm以下、好ましくは100nm以下の無機成分を主体としての微粉体21に、ベース塗膜層32よりも着色顔料36の添加を少なくするか、着色顔料36を添加しないようにして、膜厚を下限3μm以上、好ましくは5μm以上、上限30μm以下、好ましくは上限25μm以下としたトップ塗膜層33を重ねて塗装することで、母材31の表面に、ベース塗装膜32とトップ塗装膜33の合計が8〜65μm、好ましくは15〜50μmの膜厚を有するセラミックス層としての塗膜12を形成している。
この場合、粒径が1000nm以下の微粒体21を主体にしたセラミックスの塗膜12を形成することで、母材31の表面に非粘着性と撥水性を有する膜が形成され、高硬度で傷がつきにくく、汚れが付着しにくくなるオーブンレンジ1の調理室11や調理器具を提供できる。また、塗膜12には有機化合物を含んでいないので、高温下であっても硬度や非粘着性が低下することは無く、さらにその非粘着性により容易に汚れを拭き取ることができるので、強制的に汚れを落として傷がついてしまう問題も解消する。そのため、高硬度で傷が付きにくく、汚れが付着しにくい非粘着性を有し、汚れが拭き取りやすく清掃性に優れたオーブンレンジ1の調理室11や調理器具を提供できる。
また、ベース塗膜層32の膜厚を35μm以下とし、トップ塗膜層33の膜厚を30μm以下とすることで、塗膜12の表面に生じる微細なクラックの発生を抑制して、テープ剥離試験でのセラミックスの粒状剥離現象を抑制することができ、ベース塗膜層32の膜厚を5μm以上とすることで、母材31を隠蔽して良好な外観を得ることができ、トップ塗膜層33の膜厚を3μm以上とすることで、ベース塗膜層32を隠蔽して良好な外観を保ちつつ、塗膜12の表面のザラツキを抑制することができる。
さらに、ベース塗膜層32へ無機成分の顔料36を添加して着色を施している。こうすると、母材31表面に対する塗装の有無が容易に分かるようになり、ベース塗膜層32の塗装時に膜厚が厚すぎたり、薄すぎたりした場合に視認ができる。また、塗膜12の耐熱性を維持できる。
また、トップ塗膜層33の着色顔料36の添加量を、ベース塗膜層32の着色顔料36の添加量より少なくするか、さもなければトップ塗膜層33に着色顔料を添加しないようにすることで、ベース塗膜層32とトップ塗膜層33との境界面がある程度容易に観測可能となり、トップ塗膜層33の塗装時に膜厚が厚すぎたり、薄すぎたりした場合に視認ができる。
また、塗膜12が上述した1コートまたは2コートの何れであっても、塗膜12を形成する際には、トップ塗膜層33を塗装した後に、120℃または150℃まで3分以上、好ましくは5分以上かけて昇温させ、120〜250℃で5分以上、好ましくは150〜220℃で15分以上加熱焼成して、セラミックス層となる塗膜12を形成する。ここでの加熱焼成温度は、加熱調理時における調理室11内の調理可能な最高加熱温度よりも低く設定され、またベース塗膜層32やトップ塗膜層33、または母材31は、それらの成分の耐熱使用温度が、加熱調理時における前記最高加熱温度以下のものを選択する。こうすると、オーブンレンジ1の加熱調理時には塗膜12を形成する際の焼成温度以上で、かつベース塗膜層32やトップ塗膜層33の成分、または母材31の成分の耐熱使用温度以下の加熱温度を、調理可能な最高温度とすることができる。
塗膜12の焼成時には、塗膜12中の水分を脱水させ分子結合を活性化させる役割を果たすが、実験の結果、急速に昇温させると塗膜12の表面にクラックが発生する要因が分かった。焼成温度(120℃または150℃)に到達させるまでの時間を3分以上、好ましくは5分以上かけてゆっくり昇温させることで、クラックの発生を抑制できる。
また、その後の焼成温度は、低温すぎると脱水作用が悪く、また高温すぎると表面クラックの発生要因となるため、120〜250℃、好ましくは150〜220℃に設定する。さらに、焼成時間が短いと十分に脱水や分子結合が進まないため、5分以上、好ましくは15分以上加熱焼成することで、セラミックス層の密着性が向上し、テープ剥離試験での粒状剥離を無くすことができた。
焼成により完成した塗膜12は、セラミックスの耐熱性を有し、加熱調理時に焼成温度より高温の120〜250℃以上の温度に耐え、セラミックス(塗膜12)の耐熱温度、または母材31の耐熱温度まで約400℃(鉄系鋼板の場合)の高温に耐える。また、母材31に耐熱ステンレスや、インコロイなどの耐熱鋼板を使用すれば約600〜800℃(セラミックスと母材のどちらかの耐熱温度限界まで)の高温に絶えるが、何れの場合もセラミックスが主体のため、有機化合物の溶解によるガスの発生などなく、例えば250〜800℃のオーブンレンジ1の加熱にも耐える調理用皿(角皿13,焼きプレート14)や容器の他に、焼き網15,調理室11内面,扉16のガラス(母材は耐熱ガラス)内面,調理室11内底面のセラミックス板(オーブンレンジ1の例)表面,及びガス/電気コンロ用の調理器具などに応用可能である。
なお、従来の有機化合物塗料の場合は、焼成温度を超えた温度での使用は困難で(フッ素は約400℃で分解・溶解し、ガスが発生)、焼成温度を高温にする必要があったが、本発明では塗膜12形成時における焼成温度を低くすることができ、焼成時には液体22としての塗料に含まれた主に水分が蒸発するだけで、有毒ガスの発生がなく、安全で環境上の問題も無くなる。また、低温で焼成可能なことから、焼成炉の消費エネルギーを少なくできる。
また、塗膜12の主体がシリコーン系、アルミナ系の無機成分が90%以上、好ましくは95%以上であり、かつベース塗膜層32とトップ塗膜層33による2コートの場合に、トップ塗膜層33に含まれる着色顔料36は無機質成分を選定していることから、実際の使用時に塗膜12からガスの発生がほとんどなく、安全に使用可能となる。さらに、万一オーブンレンジ1が故障して異常加熱になったり、調理器具がガスや電気コンロで使用され、使用温度限度を超えた加熱を受けたりした場合でも、有機化合物の分解時のようなガスの発生がほとんど無く、安全性が向上する。
さらにセラミックスの特徴として、高温時の赤熱がなく、赤外線の放射および吸収効率が高く、調理器具として調理皿や容器に使用した場合は、高温時に熱の吸収が良くなる。また、加熱調理庫2の内面に使用した場合は、オーブンレンジ1の外面に備えたヒータ8からの加熱調理庫2内への熱放射効率が良くなり、加熱効率がアップする。加熱調理庫2の内面と、その加熱調理庫2内で使用する調理皿や容器の両方に応用すれば、ヒータ8からの熱放射改良と、調理皿や容器の熱吸収改良の相乗効果によって、調理性能を向上させることが可能となる。
以上のように本実施形態では、トップ塗膜層33の塗装後に、加熱調理時における温度よりも低い温度で加熱焼成して塗膜12を形成し、加熱調理時には塗膜12の形成時に加熱焼成した温度以上で、かつ塗膜12の成分、または母材31の成分の耐熱使用温度以下の加熱温度を、使用可能最高温度としている。
この場合、焼成により完成した塗膜12は、その塗膜12の成分または母材31の成分の耐熱使用温度以下であれば、焼成温度よりも高温の温度に耐え、有機化合物の溶解によるガスの発生も無い。また、焼成時には主に水分が蒸発するだけで、有毒ガスの発生がないため、安全で環境上の問題も無く、しかも低温で焼成可能なことから、焼成炉の消費エネルギーを少なくできる。
また本実施形態において、前記使用可能最高温度は230℃以上で、400℃以下とするのが好ましい。こうすると、鉄系鋼材を使用した母材31であっても、母材31の耐熱温度を超えて使用されることがなく、また塗膜12はセラミックスが主体のため、有機化合物の溶解によるガスも発生しない。
また本実施形態において、セラミックス層としての塗膜12は、無機成分が90%以上となっている。この場合、実際の使用時のみならず、使用可能最高温度を超えた加熱を受けた場合でも、有機化合物の分解時のようなガスの発生がほとんど無く、安全性が向上する。
なお本実施形態では、例えば第二の実施形態で説明したような凹凸粗面41を、母材31の表面に形成してもよい。
(7)第六の実施形態
次に、本発明における第六の実施形態について説明する。従来のフッ素系やシリコーン系などの有機化合物からなる塗料、または有機化合物にセラミックス粒を添加したセラミックス塗料で形成した塗膜は、初期の塗膜の鉛筆硬度が2H〜4Hで、この硬度は温度上昇に従って有機化合物が軟化し、結果的に塗膜としての鉛筆硬度が低下する問題があった。
特に非粘着性と、外観光沢を確保した塗膜では、耐熱性の高い有機化合物が使用できず、230℃以上になると塗膜が軟化する欠点があり、例えば300℃以上の高温で加熱した場合、調理物から出た油や、醤油、ケチャップなどの調味料が焦げ付き、塗膜が軟化しているので、焦げ付きが強固に塗膜に密着して、調理後に冷えたときに、焦げ付きが容易に取れない欠点があった。また、焦げ付きをヘラなどでこそぎ落としたときに、塗膜を傷つけ、再度使用するときに、傷による凹凸でさらに汚れがこびり付きやすくなる問題があった。
こうした問題に対処するべく、本実施形態では、上記図7〜図9に対応した各実施形態の特徴に加えて、特に非調理時における表面の鉛筆硬度が4H以上、好ましくは6H以上となり、オーブンレンジ1の加熱調理時における塗膜12の受熱温度が230℃以上、好ましくは250℃以上で、被加熱中における表面の鉛筆硬度の低下が、非調理時に対して1H以内、好ましくは鉛筆硬度の低下が無く、シリコーン系やアルミナ系の粒径が1000nm以下、好ましくは100nm以下のアルミナセラミックス粒体(微粉体21)を選定したセラミックス層を、母材31の表面に塗膜12として形成する。また、シリコーン系またはアルミナ系の無機成分が90%以上、好ましくは95%以上となるように塗膜12を構成する。これにより、塗膜12表面の鉛筆硬度は非調理時の初期に6H以上を有し(実験では9H)、またセラミックスが主体のため、230℃,250℃,300℃,350℃の温度下でも、実験の結果では塗膜12表面の鉛筆硬度は殆ど低下せず、母材31が鉄やアルミメッキ鋼板などの場合は、母材31の耐熱温度限界の400℃まで、塗膜12の非粘着性が実用に耐える鉛筆硬度が確保できた。母材31として、さらに耐熱性の高いインコロイや、インコネルや、耐熱ステンレスなどを選定すれば、塗膜12表面の硬度を低下させることなく、600℃〜800℃の実用耐熱温度に耐えることが可能となる。
これにより、調理物を調理器具(角皿13,焼きプレート14,焼き網15)に載せて、調理室11に入れ、230℃以上の高温で加熱調理しても、調理物から流れ出た油や、醤油や、ケチャップなどが塗膜12の表面に焦げ付いたときに、その焦げ付きを容易に剥がすことが可能になる。
また従来、170℃程度でクッキーなど焼くときに、塗膜に含まれる有機化合物の軟化にともない、焼きあがったクッキーが塗膜にくっついてしまう難点があったが、本発明の調理器具を使った場合は、塗膜12にくっつくことが無かった。また、350℃の温度で、調理器具を用いて鳥のもも焼きや、秋刀魚焼きをしたときに、その調理器具に調理物の皮がこびり付く現象はなかった。さらに、醤油,ソース,ケチャップを350℃で加熱し、調理器具表面の塗膜12に焦げ付かせた場合に、その焦げ付きを冷めてから拭き取るだけで簡単除去できた。その他、ヘラを使った場合でも、本実施形態での塗膜12表面の鉛筆硬度が、通常の有機化合物塗料の2H〜3Hに比べて、倍以上の6H以上あるため、塗膜12の表面に傷が付かず、繰り返して使っても性能の低下がなかった。
このように、本実施形態の調理器具は、金属または表面処理鋼からなる母材31の表面に、シリコーン系またはアルミナ系のセラミックス粒体(微粉体21)を主体にしたセラミックス層としての塗膜12を形成し、この塗膜12は、非調理時における表面の鉛筆硬度が4H以上であり、調理時における受熱温度が230℃以上で、被加熱中の表面の鉛筆硬度の低下が1H以内のセラミックス成分(微粉体21)を選定している。
この場合、微粒体21を主体にしたセラミックスの塗膜12を形成することで、母材31の表面に非粘着性と撥水性を有する膜が形成され、高硬度で傷がつきにくく、汚れが付着しにくくなる調理器具を提供できる。また、塗膜12には有機化合物を含んでいないので、高温下であっても硬度や非粘着性が低下することは無く、さらにその非粘着性により容易に汚れを拭き取ることができるので、強制的に汚れを落として傷がついてしまう問題も解消する。そのため、高硬度で傷が付きにくく、汚れが付着しにくい非粘着性を有し、汚れが拭き取りやすく清掃性に優れた調理器具を提供できる。
また、塗膜12の受熱温度が230℃以上に達しても、塗膜12表面の硬度を低下させることなく、調理器具としての実用耐熱温度に耐えることが可能となる。
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。例えば、塗膜12の組成は、アルミナセラミック粉体を主成分としていれば、他のセラミック粉体が若干量混入されていてもかまわない。また調理器具として、例えば図示した角皿13や焼きプレート14よりも深皿状の調理用容器を用い、その調理用容器に上述した塗膜12を形成してもよい。その他、上記各実施形態の特徴を適宜組み合わせても構わない。