以下、本発明における好ましい加熱調理器の実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、これらの全図面にわたり、共通する部分には共通する符号を付すものとする。
図1〜図30は、本発明の加熱調理器をオーブンレンジに適用した一実施形態を示している。先ず図1〜図6に基いて、オーブンレンジの全体構成を説明すると、1は略矩形箱状に構成される本体で、この本体1は、製品となるオーブンレンジの外郭を覆う部材として、金属製のキャビネット2を備えている。また3は、本体1の前面に設けられる開閉自在な扉である。
扉3の上部には、縦開きの扉3を開閉するときに手をかける開閉操作用のハンドル4を備えており、扉3の下部には、表示や報知や操作のための操作パネル部5を備えている。操作パネル部5は、調理の設定内容や進行状況などを表示する表示手段6の他に、加熱調理に関する各種の操作入力を可能にする操作手段7が配設される。扉3の内部で操作パネル部5の後側には、図示しないが、表示手段6や操作手段7などの制御を行なうために、操作パネルPC(印刷回路)板が配置される。
本体1の下部には、本体1の前面より着脱が可能な給水カセット8と水受け9が各々配設される。給水カセット8は、蒸気発生装置(図示せず)から発生する蒸気の供給源として、液体となる水を入れる有底状の容器である。また水受け9は、本体1からの食品カスや水滴、蒸気などを受ける有底状の容器である。
本体1の左右側面と上面を形成するキャビネット2は、本体1ひいてはオーブンレンジの底面を形成するオーブン底板11を覆うように、本体1の前面を形成するオーブン前板12と、本体1の後面を形成するオーブン後板13との間に設けられる。また本体1には、加熱調理すべき被調理物Sを内部に収容する調理室14と、調理室14の温度を検出する温度検出素子たるサーミスタ15が設けられる。調理室14の前面はオーブン前板12に達していて、被調理物Sを出し入れするのに開口しており、この開口を扉3で開閉する構成となっている。
調理室14を形成する周壁は、天井壁14aと、底壁14bと、左側壁14cと、右側壁14dと、奥壁14eとからなる。調理室14の奥壁14eは、その中央に吸込み口16を備えており、吸込み口16の周囲には複数の熱風吹出し口17を備えている。また、調理室14の上壁面となるドーム状の天井壁14aに対向して、本体1の上部には、調理室14の上方から被調理物Sを輻射加熱するグリル用の上ヒータ18が設けられ、本体1の底部には、調理室14内に電波であるマイクロ波を供給するために、マグネトロンを含むマイクロ波発生装置19が設けられる。これにより、上ヒータ18への通電に伴う熱放射によって、調理室14内に収容した被調理物Sを上方向からグリル加熱し、またマイクロ波発生装置19への通電動作により、調理室14内に収容した被調理物Sにマイクロ波を放射して、被調理物Sをレンジ加熱する構成となっている。
調理室14の左側壁14cと右側壁14dには、調理室14の内部に金属製の角皿21を吊設状態で収納保持するために、左右一対の棚支え22を上下二段に備えている。ここで使用する角皿21は、上面を開口した有底凹状で、その他は無孔に形成される収容部21Aと、収容部21Aの上端より外側水平方向に延設するフランジ部21Bとにより構成される。またフランジ部21Bには、角皿21を通して熱風の流通を可能にする通気孔21Cが開口形成される。図2では、調理室14の内部で下段の棚支え22に角皿21のフランジ部21Bを載せて、収容部21Aに被調理物Sを載せた状態を示しているが、調理に応じて角皿21を上段の棚支え22にだけ載せたり、2枚の角皿21を上段と下段の棚支え22に各々載せたりしてもよく、角皿21に代えて別な焼き網(図示せず)などの付属品を収納保持することもできる。
24は、本体1の内部において、調理室14の室外後方から下方にかけて具備されるオーブン加熱用の熱風ユニットである。この熱風ユニット24は、奥壁14eに取付けられる凸状のケーシング26と、空気を加熱する熱風ヒータ27と、調理室14内に加熱した空気を送り込んで循環させる熱風ファン28と、熱風ファン28を所定方向に回転させる電動の熱風モータ29と、熱風モータ29からの駆動力を熱風ファン28に伝達する伝達機構30と、により概ね構成される。奥壁14eとケーシング26との間の内部空間として、調理室14の室外後方に形成された加熱室31には、熱風ヒータ27と熱風ファン28がそれぞれ配設される一方で、本体1の内部に形成された調理室14とオーブン底板11との間の下部空間32には、熱風モータ29が配設される。そして、熱風ユニット24全体を後側外方から覆うように、本体1の後部にオーブン後板13が配設される。
本実施形態の熱風ファン28は、軸方向に取り入れた空気を、回転時の遠心力によって、軸方向と直角な放射方向に吐き出すいわゆる遠心ファンとして設けられており、管状の熱風ヒータ27は熱風ファン28の放射方向を取り囲んで配置される。発熱部でもある熱風ヒータ27は、例えばシーズヒータ、マイカヒータ、石英管ヒータやハロゲンヒータなどを用いる。前述した吸込み口16や熱風吹出し口17は、調理室14と加熱室31との間を連通する通風部として機能するものである。
そして本実施形態では、熱風モータ29への通電に伴い熱風ファン28が回転駆動すると、調理室14の内部から吸込み口16を通して吸引された空気が、熱風ファン28の放射方向に吹出して、通電した熱風ヒータ27により加熱され、熱風吹出し口17を通過して、調理室14内に熱風が供給される。これにより、調理室14の内外で熱風を循環させる経路が形成され、調理室14内の被調理物Sを熱風コンベクション加熱する。さらに、調理室14の左側壁14cには、蒸気発生装置に連通する蒸気噴出孔33が設けられる。図示しないが、本体1の内部に設けられる蒸気発生装置は、金属製で中空の蒸発容器や、蒸発容器に装着されるシーズヒータなどの蒸発用ヒータや、給水カセット8からの水を蒸発容器内に導く給水ポンプなどを備え、蒸発容器内に連通して複数の蒸気噴出孔33を有している。これにより蒸気発生装置の動作中には、給水カセット8からの水を蒸発容器内に送り込んで所定の温度にまで加熱することで、蒸気噴出口33から調理室14の内部に飽和蒸気や過熱蒸気が供給され、調理室14内に入れられた被調理物Sのスチーム調理を行なう構成となっている。
熱風ファン28は、その回転軸となるシャフト34を中心として、シャフト34の周囲に複数枚のブレード35を放射状に配置して構成される。シャフト34の基端は、本体1の後方に向けて加熱室31の外方へ突出しており、ここに従動側のプーリー36Bが取付け固定される。また熱風モータ29には、本体1の後方に向けて突出する回動可能なモータ軸37に、主動側のプーリー36Aが取付け固定される。これらのプーリー36A,36Bの間には無端状のベルト38が懸架され、プーリー36A,36Bとベルト38からなる伝達機構30が、熱風ファン28と熱風モータ29とを連結する構成となっている。図示しないが、ベルト38の断面は例えば矩形状や台形状の他、様々な形状とすることができる。
伝達機構30はその他に、熱風ファン28のシャフト34を所定の位置で軸支するための支持体41を備えている。支持体41は、ベルト38の側部を取り囲んでケーシング26の後外面に取付け固定され、熱風ファン28のシャフト34や熱風モータ29のモータ軸37が挿通するケース部材42と、シャフト34を回動可能に支持するのに、プーリー36Bを部分的に覆ってケース部材42に取付け固定されたホルダー部材43と、により構成される。特に本実施形態のケース部材42は、調理室14の底壁14bより下方に延びた脚部44を一体的に形成しており、脚部44の底面を本体1のオーブン底板11上に載せて、調理庫14の後部を脚部44で支えることで、熱風モータ29を収容し得る程の大きさの下部空間32が、調理室14とオーブン底板11との間に形成される。またケース部材42には、熱風ファン28の回転速度を検出するために、プーリー36Aに近接配置された非接触の検出センサ45が配設される。
図4に示すように、熱風ファン28のシャフト34は、伝達機構30により調理室14の奥壁14eのほぼ中央に配置される一方で、熱風モータ29とそのモータ軸37は、調理室14の底壁面となる底壁14bよりも下方一側に偏って配置され、ケース部材42はシャフト34とモータ軸37とを結ぶ直線上に沿って設けられる。このように、熱風ファン28と熱風モータ29は、本体1の内部で離れた位置に設けられているが、プーリー36A,36Bとベルト38とを組み合わせた伝達機構30によって、熱風モータ29からの回転駆動力を熱風ファン28に円滑に伝えることができる。また、熱風モータ29を調理室14より十分に離すことで、調理室14からの熱影響を防ぐことができる。
次に、オーブンレンジの細部構成について、図7〜図25を参照しながら説明する。先ず、熱風ユニット24に関する構成を図7と図8に基づき説明すると、これらの各図において、熱風ヒータ27は金属製の放熱パイプ51の内部に、発熱体としてのニクロム線(図示せず)を収納したものであり、放熱パイプ51の外周面には所定の間隔で円板状のフィン52が配設される。これにより加熱室31の内部では、回転する熱風ファン28から吐出される風がフィン52に吹付けられて、効率よく熱風化される構成となっている。
ケーシング26には、熱風ヒータ27を加熱室31の内外に密閉状態で挿通させるヒータ取付け部53が設けられる。このヒータ取付け部53は、加熱室31の横幅寸法Wkを無理なく調理室14の横幅寸法Wmに近付けて広げられるように、加熱室31の側部にではなく下部に配置される。また、これらの図には示していないが、調理室14の奥壁14eには、熱風ファン28と向かい合う位置に吸込み口16が配設されると共に、熱風ファン28の放射方向に位置して、複数の熱風吹出し口17が配設される。
特に本実施形態では、加熱室31の横幅寸法Wkが調理室14の横幅寸法Wmに近付くように、加熱室31を極力左右に広げると共に、熱風ファン28の中心から見て熱風ヒータ27よりも外方で、且つ加熱室31の左右端部近傍に熱風吹出し口17を設けている。これにより、熱風ファン28を正逆回転させることなく、熱風ユニット24で生成した熱風が、熱風吹出し口17から調理室14の両隅側まで広がってワイドに送り込まれ、ムラのないオーブン加熱を実現できる。なお、熱風ヒータ27の両端部は、通電のために加熱室31の外部に引き出されて、他の電気部品に接続される。
図9はオーブン前板12を示しており、図10は調理室14の内面構造と熱風の流れを示している。これらの各図において、本実施形態では、調理室14の天井壁14aが上方に向けて凸形をなすドーム状に形成される。また、調理室14の内面の屈曲した四隅部55、すなわち底壁14bと左側壁14cとを繋ぐ部位と、左側壁14cと天井壁14aとを繋ぐ部位と、天井壁14aと右側壁14dとを繋ぐ部位と、右側壁14dと底壁14bとを繋ぐ部位の内面は、何れもR状に形成され、調理室14の内面の奥壁14eと他の壁との角部56、すなわち天井壁14a,底壁14b,左側壁14cおよび右側壁14dと、奥壁14eとを繋ぐ部位の内面も、同様に何れもR状に形成される。
こうして、丸い天井壁14aと、丸い隅角部となる四隅部55や角部56とを組み合わせて、調理室14の内面をラウンド状に形成することで、調理室14の内部では、熱風吹出し口17から吹出された熱風が、奥壁14eに沿って角部56の近傍で突き当たることなく回り込んで、若しくは奥壁14eに沿うことなく直接に、天井壁14aや、底壁14bや、左側壁14cや、右側壁14dに流れ、丸い天井壁14aに沿って流れる熱風が、そのまま四隅部55で突き当たることなく左側壁14cや右側壁14dに回り込み、また天井壁14aに対向する底壁14b側でも、略直線状の底壁14bに沿って流れる熱風が、四隅部55に殆ど突き当たることなく左側壁14cや右側壁14dに回り込んで中央部へ流れて行く。そのため、調理室14の内部全体に熱風が対流して、熱の回りが良好になる。なお図10では、熱風ユニット24の動作時における四隅部55周辺での熱風の流れFを矢印で示している。
また、ここでの四隅部55は、その面取り寸法が半径R=15mm(すなわちR15)に形成されるが、調理室14の内面を指先でふき取ることができるように、四隅部55や角部56の面取り寸法を、何れもR10以上とするのが好ましい。
図11は、調理室14内面のふき取り前とふき取り後の状態を示したものである。本実施形態において、調理室14の内面を形成する全ての壁14a〜14eは、前述の四隅部55や角部56を含めて、金属板材からなる母材58の表面全体を、粒径が1000nm以下である無機成分の粒子59を主体とした塗膜60で覆うことで構成される。粒子59は、例えばアルミナなどの微細なセラミックス粒体からなり、塗膜60の表面に付着した焦げ付きや汚れKが、塗膜60の内部に入らない程度の粒径と密度で充填される。これにより、調理室14の内表面に付着した焦げ付きや汚れKは、微細な粒子59を主体としたナノセラミックスの塗膜60の中に入り込むことができず、クロスなどで簡単にふき取れる。したがって、ふき取り後に調理室14の内表面を清潔に保つことができる。
本実施形態の熱風ユニット24は、その動作時に最高で350℃の熱風を調理室14内に供給する構成を有する。そのため図12に示すように、調理室14の内面をセラミックの塗膜60でコーティングすることと相俟って、扉3を除く部分で調理室14の内面全体から、遠赤外線Rを効果的に放射することができる。そして、このような遠赤外線Rの放射と、前述した熱風Fの対流との組み合わせにより、例えばオーブン加熱の予熱時に、調理室14内の温度が200℃に達するまでの加熱時間を約5分に早くすることができる他に、調理室14内の被調理物Sに対する焼きムラを抑えて、きれいに焼き上げることが可能になる。
また、図2で示したように、角皿21の周囲にはスリット状の通気孔21Cが設けられる。そのため、例えば上下2段の棚支え22に各々角皿21を各々載せて、熱風ユニット24を利用したオーブン加熱調理を行なった場合に、各角皿21の通気孔21Cを通して調理室14内で熱風Fが上下に循環すると共に、調理室14の内面全体から遠赤外線Rが放射され、被調理物Sとなる食品を熱風Fと遠赤外線Rで前後左右から包み込んで焼き上げることが可能になる。
続いて、マイクロ波発生装置19とその周辺の細部構成を、図13〜図15に基いて説明する。これらの各図において、調理室14の底壁14bは、金属板材61に形成された凹状のアンテナ収納部62の上面開口を、セラミック板などのマイクロ波が透過可能な底板63で覆うことで構成される。マイクロ波が透過不能な金属板材61は、底壁14bの周囲部のみならず、左側壁14cや、右側壁14dや、奥壁14eを一体的に形成するもので、底板63を除く調理室14の内面は、全てマイクロ波が透過不能な材料で形成される。
マイクロ波発生装置19は、マイクロ波の供給源となるマグネトロン(図示せず)の他に、本体1内部の下部空間32において、マグネトロンで発振されたマイクロ波をアンテナ収納部62の直下に導く導波管65と、導波管65の下方に配設されるアンテナモータ66と、その下端部が導波管65の内部に配置され、アンテナモータ66の回転軸に取付け固定されるアンテナホルダ67と、アンテナホルダ67内に挿入固定される円柱状のケーブル軸68と、その中心にケーブル軸68の上端部が取付け固定され、アンテナ収納部62の内部で回動可能に設けられるアンテナ69と、により主に構成される。アンテナ収納部62の上面開口を底板63で塞いだ状態では、調理室14の底壁14Bを形成する平板状の底板63に対向して、アンテナ69の全体が底板63と平行に配置される。
アンテナ69は、ケーブル軸68に沿って下から上に進行するマイクロ波を表面から放射するもので、本実施形態では上方から見た輪郭形状が一部を切り欠いた円形であり、一定の厚さを有する凹凸のないアルミニウムなどの金属平板で形成される。アンテナ69には、ケーブル軸68の上端部が挿入される貫通孔71や、外周部が開口する切欠き状のマイクロ波放射部72や、大小2つずつの開口した放射調整部73,74が形成される。マイクロ波放射部72は、マイクロ波の放射に図14に示す矢印Dの方向への指向性を与えるものである。マイクロ波放射部72の内面には、直線状に突出する放射突部75と、アンテナ69の外周形状に沿って円弧状に突出する一対の放射突部76が各々配置され、これらの放射突部75,76からマイクロ波が強く放射される。また放射調整部73,74は、アンテナ69からのマイクロ波を目標の放射分布に調整するためのもので、ここでは特に、ケーブル軸68からアンテナ69の端部までの距離に応じて変動するマイクロ波の放射分布を調整するものである。
ここで使用する円板状のアンテナ69は、アンテナモータ66への通電により底板63の下方でケーブル軸68を中心に回転するが、大きな円板を動かした方が、小さな円板を動かすより電波をかき回す面積が増えるので、調理室14に入れた被調理物Sへの加熱ムラを抑えるのには有利となる。また、調理室14の内壁面に近いところは電波の変化が少なくなり、温まりにくい特徴を持っている。そのため、従来のものよりも被調理物Sへの加熱ムラを効果的に抑制するために、アンテナ69の直径Arは20cm以上とするのが好ましい。
また図14に示すように、アンテナ69の外周端面とアンテナ収納部62の側面との隙間Adが3mm程度以下になると、金属間の電界集中によるスパークが発生する。したがって、アンテナ69と他の金属として例えばアンテナ収納部62との間隔Adは、10mm以上離して設計するのが好ましい。
次に、扉3の開閉機構に関する構成を、図16と図17に基いて説明する。同図において、81は扉3の開閉を保持するように扉3と本体1とを連結する連結機構である。連結機構81は、扉3の左右両側下部に取付け固定された扉ヒンジ(図示せず)に、本体1側からオーブン前板12を貫通して前方に延びる第1アーム83と第2アーム84をそれぞれ連結して構成される。また連結機構81は、扉3が開くときに制動をかける弾性体としてのスプリング85と、樹脂製のローラー86と、ローラー86を回動可能に保持する金属板状のローラーホルダ87と、扉3が閉じるときに制動をかけるオイルダンパ88とを、本体1の内部に備えている。
第2アーム84はローラーホルダ87と一体に形成され、その先端が扉ヒンジに設けたヒンジ軸90に回動可能に軸支される。これにより、ハンドル4を握って扉3の上部を引いて手前に倒すと、ヒンジ軸90を中心に扉3が開動し、加熱室14の開口を通して被調理物Sを加熱室14内に出し入れできるようになっている。
第1アーム83の先端は、扉ヒンジに設けたアームピン91に回動可能に支持される。また、第1アーム83の基端と、本体1のオーブン底板11に取付け固定されたローラーホルダ87との間には、伸縮可能なスプリング85が連結して設けられる。このスプリング85は、扉3の開閉時に第1アーム85を介して扉3を閉じる方向に付勢すると共に、第1アーム83がローラー86から脱落しないように付勢するものである。扉3の開閉に伴い移動する第1アーム83の下面は、ローラー86に当接する摺動面92として形成されており、これにより第1アーム83は、ローラー86上で前後方向に移動可能に支持される。
オイルダンパ88は、ローラーホルダ87に固定保持され、内部にオイルを充填した本体シリンダ94と、本体シリンダ94の先端側で突出し、オイルによる弾性反発力に抗して出没する可動体95とにより構成される。そして、図17に示す扉3を閉める途中で、第1アーム83の受け片96に可動体95が当接し、そこから扉3をさらに本体1側に閉じようとすると、オイルダンパ88からの弾性反発力が第1アーム83を介して扉3に作用する位置に、オイルダンパ88が配設される。
前記第1アーム83の摺動面92には、図16に示す扉3を完全に閉じた時に、ローラー86と当接する位置に凹部97が形成される。この凹部97は、扉3を閉じた時のオーブン前板12に対する扉3の位置決めとなるものである。また第1アーム83には、摺動面58とは反対側の面に突片98を一体的に形成している。突片98は、扉3を開けた時に本体1の内部に設けたストッパー片99と嵌合し、その位置で扉3を全開した状態に保持するものである。
本実施形態では、扉3が完全に閉まる手前で手を離した場合でも、第1アーム83の受け片96にオイルダンパ88の可動体95が当接すると、そこから扉3に対するオイルダンパ88の弾性反発力が次第に強く作用するようになる。そのため、扉3を閉じるときの回転速度を徐々に低下させながら、金属製の第1アーム83の凹部97を樹脂製のローラー86に当接させることが可能となり、扉3は本体1側に衝突することなく静かに閉じられる。
図18は、調理室14内の照明手段に関する好ましい例を示したものである。同図において、101a,101bは調理室14の室外側方に配設され、点灯時に調理室14の内部に向けて各々放射状に光La,Lbを出射する上下2段の庫内灯である。上段の庫内灯101aは、上段の棚支え22に載せた角皿21に向けて光Laを出射する位置に設けられ、下段の庫内灯101bは、下段の棚支え22に載せた角皿21に向けて光Lbを出射する位置に設けられる。
この例では、調理室14内に上下2か所の庫内灯101a,101bを設け、調理中にこれらの庫内灯101a,101bを点灯させることで、2枚の角皿21を上段と下段の棚支え22に各々載せて調理を行なう2段調理でも、各角皿21に収容した被調理物Sが光La,Lbによる照明で見やすくなる。また、庫内灯101a,101bをLEDとすることで、調理室14内を明るく照明しつつも、省エネを図ることができる。
図19は、本体1の内部に配設される庫内温度分布検出手段105とその周辺の構成を示したものである。調理室14の右側壁14dには、四角錐台状の隆起部材111が調理室14内に向かう内方に膨出して設けられる。隆起部材111は、上段の棚支え22より上方にあって、右側壁14dの上部で前後の中央に設けられており、その傾斜した下面部に窓112が開口形成される。また、上下の棚支え22の間に位置して、右側壁14dの上下前後の中央には、窓112とは別の窓113が開口形成される。
調理室14と本体1との間には、窓112を含む隆起部材111の外方に臨んで、第1センサ115やセンサモータ116が配設され、窓113に臨んで第2センサ118が配設される。また、センサモータ116や第2センサ118は、本体1の内部に取付け固定される一方で、第1センサ115はセンサモータ116の回動自在な回転軸120に取付けられる。
第1センサ115の駆動装置となるセンサモータ116は、ステッピングモータなどで構成され、本体1の内部で第1センサ115を前後方向に揺動させる回転軸120を備えている。第1センサ115は、回転軸120に取付け固定される中空状のセンサケース122と、センサケース122の内部に収納されるセンサ基板123と、センサ基板123の表面に搭載される複数個(例えば8個)の赤外線検出素子124と、この赤外線検出素子54に臨んでセンサケース122に取付け固定されるレンズ125と、を主な構成要素としている。
本実施形態では図22に示すように、各赤外線検出素子54の視野V1が、調理室14の右側壁14dの上部中央から窓112を通して、略矩形状をなす底壁14bの左右方向に並ぶように、調理室14の上下方向に沿って複数個の赤外線検出素子124を一直線上に並べて配置している。また、本実施形態では図23に示すように、図示しない制御手段からのモータ駆動信号を受けて、センサモータ116がその回転軸120を正方向と逆方向に所定角度だけ往復回動すると、第1センサ115が揺動するのに伴い、調理室14の底壁14bに達する複数個の赤外線検出素子124の視野V1が、各赤外線検出素子124を中心として移動方向X1に沿って扇状に繰り返しスイングするように、図19の一点鎖線で示す複数個の赤外線検出素子124を結ぶ直線と、回転軸120の回転中心軸線とを略一致させている。なお、本体1内部への熱影響を低減するために、図示しない赤外線透過部材で窓112を塞いでもよい。
一方、第2センサ118は、本体1の内部に取付け固定される中空状のセンサケース132と、センサケース132の内部に収納されるセンサ基板133と、センサ基板133の表面に搭載される1個の赤外線検出素子134と、この赤外線検出素子134に臨んでセンサケース132に取付け固定されるレンズ135と、を主な構成要素としている。そして図24に示すように、赤外線検出素子134の視野V2が、右側壁14dの上下前後の中央から窓113を通して、常に底壁14bの前後左右の中心に達するように、第2センサ118が本体1の内部に取付け固定される。なお、本体1内部への熱影響を低減するために、図示しない赤外線透過部材で窓43を塞いでもよい。
第1センサ115と第2センサ118は何れも赤外線センサで、本実施形態の庫内温度分布検出手段105を構成する。ここでの庫内温度分布検出手段105は、スイングする第1センサ115と、固定した第2センサ118とにより、加熱室14内全体の温度分布を検出することで、そこに収容された被調理物Sが放射する赤外線の量から、被調理物Sの表面温度を短時間で検出するものである。
図25は、オーブンレンジの主な電気的構成を図示したものである。同図において、141はマイクロコンピュータにより構成される制御手段であり、この制御手段141は周知のように、演算処理手段としてのCPUや、記憶手段としてのメモリや、計時手段としてのタイマや、入出力デバイスなどを備えている。
制御手段141の入力ポートには、前述したキーやタッチパネルによる操作手段7や、庫内温度分布検出手段105の他に、加熱室14内の温度を検出するサーミスタなどの庫内温度検出手段142と、検出センサ45を含む熱風モータ回転検出手段143と、扉3の開閉状態を検出する扉開閉検出手段144と、アンテナ69の回転の原点を検出するアンテナ位置検出手段145と、前述した蒸気容器内の温度を検出するサーミスタなどの蒸気容器検出手段146が、それぞれ電気的に接続される。
制御手段141の出力ポートには、前述した表示手段6の他に、マグネトロンやその駆動手段を含むマイクロ波加熱手段151と、グリル加熱用の上ヒータ18や、オーブン加熱用の熱風ヒータ27や、スチーム加熱用の蒸発用ヒータをそれぞれ通断電させるリレーなどのヒータ駆動手段152と、アンテナモータ66を回転駆動させるためのアンテナ駆動手段153と、熱風モータ29を回転駆動させるための熱風モータ駆動手段154と、センサモータ116を正逆回転駆動させるためのセンサモータ駆動手段155と、蒸気発生装置の給水ポンプを動作させるためのポンプ駆動手段156と、照明手段としての庫内灯101a,101bを個々に駆動するための庫内照明駆動手段157が、それぞれ電気的に接続される。
制御手段141は、操作手段7からの操作信号と、庫内温度分布検出手段105や、庫内温度検出手段142や、熱風モータ回転検出手段143や、扉開閉検出手段144や、アンテナ位置検出手段145や、蒸気容器検出手段146からの各検出信号を受けて、計時手段からの計時に基づく所定のタイミングで、マイクロ波加熱手段151と、ヒータ駆動手段152と、アンテナ駆動手段153と、熱風モータ駆動手段154と、センサモータ駆動手段155と、ポンプ駆動手段156と、庫内照明駆動手段157に駆動用の制御信号を出力し、また表示手段6に表示用の制御信号を出力する機能を有する。
そして制御手段141は、操作手段7の操作に伴う操作信号を受け取ると、扉開閉検出手段144からの検出信号により、扉3が閉じていると判断した場合に、その操作信号に応じて、マイクロ波加熱手段151や、ヒータ駆動手段152や、アンテナ駆動手段153や、熱風モータ駆動手段154や、センサモータ駆動手段155や、ポンプ駆動手段156に制御信号を送出して、種々の加熱調理を制御する構成となっている。
次に、上記構成のオーブンレンジについてその作用を説明すると、予め調理室14内に被調理物Sを入れた状態で、ハンドル4を手で握りながら扉3を閉め、操作手段7により調理メニューを選択操作した後に調理開始を指示すると、制御手段141の記憶部に組み込まれた制御プログラムに従って、選択した調理メニューに対応して生成された制御信号が所定のタイミングで出力され、被調理物Sが加熱調理される。
ここで、例えばオーブン加熱の調理メニューを選択した場合、制御手段141からの制御信号がヒータ駆動手段152と熱風モータ駆動手段154に送出されて、熱風ヒータ27と熱風モータ29が各々通電され、熱風モータ29のモータ軸37に発生した回転力が、伝達機構30を通して熱風ファン28のシャフト34に伝達する。それにより熱風ファン28は加熱室31の内部で一方向に回転し、その速度は熱風モータ回転検出手段143により制御手段141に取り込まれると共に、調理室14から吸込み口16を通して加熱室31に吸込んだ空気を、通電した熱風ヒータ27側に送り出し、ここで加熱された空気が熱風吹出し口17を通して調理室に熱風Fとして供給されることで、調理室14内の被調理物Sが熱風コンベクション加熱される。
このとき加熱室31の内部では、熱風ファン28の放射方向に吹き出される空気が、そのほぼ全周で熱風ヒータ27のフィン52に吹付けられ、効率よく熱風化される。また、加熱室31の横幅寸法Wkを調理室14の横幅寸法Wmに極力近付けているため、熱風ファン28を正逆回転させることなく、加熱室31の内部で熱風Fが特に横方向へ広範囲に生成される。この熱風Fはさらに、加熱室31の左右端部近傍に設けた熱風吹出し口17から、調理室14の両隅側まで広がってワイドに送り込まれ、被調理物Sの焼きムラを改善したオーブン加熱が実現できる。
また、調理室14の内面全体をラウンド状に形成することで、熱風吹出し口17から吹出された熱風Fが、調理室14の内面を途中で突き当たることなく回り込んで、調理室14の中央部へと導かれて行く。そのため、調理室14の内部全体で熱風Fが対流し、熱の回りが良好になり、結果的に被調理物Sの焼きムラが効果的に改善される。
さらに本実施形態では、オーブン加熱の調理メニューで、調理室14内の温度が最高で350℃に達するように、制御手段141が庫内温度検出手段142からの検出信号を受けて、熱風ヒータ27や熱風モータ29の動作を制御することができる。この場合、調理室14内が熱風Fで高温に晒されるに従って、セラミック塗膜60を表面にコーティングした調理室14の内面全体から遠赤外線Rが効果的に放射され、加熱時間が短縮されると共に、被調理物Sの焼きムラがより効果的に改善される。特に角皿21に被調理物Sを載せてオーブン加熱を行なう場合は、角皿21の通気孔21Cを通して調理室14内で熱風Fが上下に循環し、熱風Fと遠赤外線Rで被調理物Sを前後左右から包み込んで焼き上げることが可能になる。
レンジ加熱の調理メニューを選択した場合、制御手段141は庫内温度分布検出手段105からの検出信号を受けて、被調理物Sが設定した温度に加熱されるように、アンテナ位置検出手段145からの検出信号で、アンテナ69の原点位置を確認しながら、マイクロ波加熱手段151とアンテナ駆動手段153とセンサモータ駆動手段155に適切な制御信号をそれぞれ送出する。これにより、マイクロ波発生装置19のマグネトロンやアンテナモータ66が通電動作して、回転するアンテナ69の表面から発生したマイクロ波が調理室14内に供給され、底壁14bに置かれた被加熱物Sが高周波加熱される。
このレンジ加熱調理時において、センサモータ116の回転軸120は、回転角度が0°の位置(図22に示すように、8個の赤外線検出素子124の視野V1が、調理室14の底壁14bの前後方向の中央に一列に並ぶ状態のとき。)から、時計回り方向(正方向)と反時計回り方向(逆方向)への回転を繰り返し行なう。その結果、本体1の内部で第1センサ115は揺動し、各赤外線検出素子54の視野V1は、図23に示すような移動方向X1に沿って扇状に繰り返しスイングする。このときセンサモータ116の回転軸120は所定の角度で間欠的に回転しており、制御手段141は回転軸120を所定の角度で回転させる毎に、各赤外線検出素子124からの検出信号を取り込んで、調理室14内の任意の位置に置かれた被調理物Sの温度を監視する。こうして各赤外線検出素子124は、実質的に調理室14の底壁14bのほぼ全域から赤外線を受光して、調理室14内に入れられた被調理物Sの温度を検出することが可能になる。
本実施形態では、調理室14の右側壁14dの上部において、第1センサ115が前後方向の後方にではなく中央に設けられており、被調理物Sを底壁14bの前後方向の中央付近に置いたときに、第1センサ115から被調理物Sまでの距離が近づいて、被調理物Sの温度をより正しく検出できる。特に加熱調理時には、習慣的に被調理物Sの中心を調理室14の中央部に一致させて置くことが多いので、本実施形態のような位置に第1センサ115を設けるだけで、自ずと被調理物Sの温度検出精度を向上させることができる。
また本実施形態のセンサモータ116は、所定時間となる例えば5秒間を1周期として第1センサ11を揺動させ、その間に第1センサ115は、1つの赤外線検出素子124につき片道で64か所、往復で128か所の温度を検出する。つまり、8個の赤外線検出素子124を有する第1センサ115をスイングすることで、第1センサ115は1周期当り128×8=1024か所もの温度を測定でき、第1センサ115により広い調理室14の内部温度を広範囲に細かく隅々まで検出できる。
これとは別に、本実施形態では本体1に固定した第2センサ118により、図24に示すような赤外線検出素子134の視野V2に置かれた被調理物Sの温度を連続的に検出する。制御手段141は、少なくともモータ116の回転軸120が所定の角度で回転する毎に、若しくはそれよりも短い時間間隔で、赤外線検出素子134からの検出信号を取り込んで、調理室14内の中央部付近における被調理物Sの温度を監視する。
こうして本実施形態では、8個の赤外線検出素子124を有する第1センサ115からの各検出信号により、調理室14内の温度を広範囲に細かく隅々まで検出すると共に、1個の赤外線検出素子134を有する第2センサ118からの検出信号により、調理室14内の中央部付近の温度を、連続的に検出することが可能になる。制御手段141はこれらの検出信号を受けて、被調理物Sに対して所望のレンジ加熱調理が行われるように、マイクロ波発生装置19の動作を制御する。また異常監視の機能として、被調理物Sの検出温度が通常の範囲を超えている場合は、機器に異常が発生したと判断して、マイクロ波発生装置19への通電を強制的に停止する。何れの場合も、第1センサ115と第2センサ118との併用で、被調理物Sの温度を瞬時に判断することで、結果的に加熱調理の制御や異常監視を正確に行なうことが可能になる。
また本実施形態では、調理室14へのマイクロ波放射手段として、従来よりも大型のアンテナ69を採用している。図26は、アンテナ形状の違いによるマイクロ波の放射方向を矢印で示したものであるが、図中(A)の一般的なモデルでは、アンテナ69’が平板状で、その直径Ar’は15cmであり、調理室14内の限られた領域にしかマイクロ波を放射させることができない。図中(B)に示す従来のドーム形アンテナ69’’では、アンテナ69’’の表面から調理室14に向けてマイクロ波が広がって放射されるが、調理室14の中心部付近に比べて周辺部付近に放射されるマイクロ波の量が少なく、被調理物Sに温めムラが発生する要因となる。また、アンテナ69’’の直径Ar’’は一般的なモデルと同様に15cmであり、調理室14内の限られた領域にしかマイクロ波を放射させることができない。
それに対して、本実施形態のような大型のアンテナ69は、直径Arが20cmであるため、アンテナ69を回動させたときに、アンテナ69から放射するマイクロ波をかき回す面積が増加して、調理室14内の隅々にまでマイクロ波を放射させることができる。これは、被調理物Sの加熱ムラを抑えるのに有利である。また、平板状のアンテナ69の表面から調理室14に向けて、どの領域でも均一にマイクロ波が放射されるので、被調理物Sを広範囲にわたりムラなく加熱することができる。
スチーム加熱の調理メニューを選択した場合、制御手段141は蒸気容器検出手段146からの検出信号を受けて、調理室14内に設定した温度の蒸気が供給されるように、ヒータ駆動手段152とポンプ駆動手段156に適切な制御信号をそれぞれ送出する。これにより、蒸気発生装置の給水ポンプや蒸発用ヒータが通電動作し、給水カセット8に貯留した水が蒸発容器内に送り込まれて所定の温度に加熱され、蒸気噴出口33から調理室14の内部に飽和蒸気や過熱蒸気が供給されることで、被調理物Sがスチーム加熱される。
本実施形態ではさらに、被調理物Sとして被解凍物を解凍するために、解凍の調理メニューを備えており、制御手段141は、解凍の調理メニューに対応した制御プログラムを記憶部に予め記憶保存している。また、この解凍の調理メニューは、複数の異なる解凍コース、すなわち「お急ぎ解凍」,「スチーム全解凍」,「さしみ(半解凍)」のコースを有し、操作手段7でその何れか1つのコースを選択した後に、調理の開始を指示すると、制御手段141がその選択したコースに対応する制御プログラムの処理手順に従って、各部の制御を行なう構成となっている。
具体的には、「お急ぎ解凍」のコースは、従来の「お急ぎ全解凍」のコースに代わるもので、普段使いのスピード解凍を行なうお勧めのコースである。ここでは前述した2つの赤外線センサとして、第1センサ115と第2センサ118を有する庫内温度分布検出手段105により、従来よりも短い時間と高い温度検出精度で被調理物Sを解凍できる。例として、従来の「お急ぎ全解凍」では、100g〜600gの被調理物Sを、100gの場合に約4分で次に調理ができるレベルに解凍していたものを、本実施形態の「お急ぎ解凍」では、50g〜600gの被調理物Sを、100gの場合に3分以下で普段使いのレベルに解凍できる。
また、「スチーム全解凍」のコースは、従来の「スチーム全解凍」と同じく、薄切り肉がはがせるレベルに解凍するコースであるが、本実施形態では従来の半分の時間で被調理物Sを解凍できる。例として、従来の「スチーム全解凍」のコースでは、50g〜600gの被調理物Sを、100gの場合に約15分で解凍していたものを、本実施形態の「スチーム全解凍」は、50g〜600gの被調理物Sを、100gの場合に約7分で解凍できる。
さらに、「さしみ(半解凍)」のコースは、従来の「さしみ(半解凍)」と同じく、被調理物Sを食卓に出す頃に、ちょうど氷分が溶けるレベルに解凍するコースである。
図27と図28は、何れも従来の「お急ぎ全解凍」と本実施形態の「お急ぎ解凍」について、被解凍物として冷凍豚ひき肉を解凍した評価結果を一覧で示したものである。図27に示す冷凍豚ひき肉100gの解凍評価結果で両者を比較すると、従来は加熱時間が3分48秒であったのに対し、本実施形態では加熱時間が2分12秒に短縮された。また、図28に示す冷凍豚ひき肉600gの解凍評価結果でも、従来は加熱時間が25分4秒であったのに対し、本実施形態では加熱時間が8分38秒と大幅に短縮された。その他、被解凍物の各測定点の仕上がり温度と、その中の最高温度や最低温度と、全測定点の平均温度と、最高温度と最低温度との温度差と、判定結果は、各図に示した通りである。
図29は、従来の「スチーム全解凍」と本実施形態の「スチーム全解凍」について、被解凍物として冷凍薄切り肉100gを解凍した評価結果を一覧で示したものである。この両者を比較すると、従来は加熱時間が12分30秒であったのに対し、本実施形態では加熱時間が6分47秒に大幅に短縮された。その他、被解凍物の各測定点の仕上がり温度と、その中の最高温度や最低温度と、全測定点の平均温度と、最高温度と最低温度との温度差と、判定結果は、各図に示した通りである。
図30は、本実施形態における「お急ぎ解凍」と「スチーム全解凍」の各コースについて、制御手段141による加熱制御のタイムチャートを示したものである。図30の上段に示すように、操作手段7により「お急ぎ解凍」のコースを選択した後に、調理の開始を指示した場合、制御手段141は調理開始直後t0から被調理物Sを400Wの出力でレンジ加熱し、その後、庫内温度分布検出手段105からの検出信号により、被調理物Sの温度が上昇して第1温度に達したら、被調理物Sをそれまでよりも弱い200Wの出力でレンジ加熱し、被調理物Sの温度がさらに上昇して第2温度に達したら、被調理物Sをさらに弱い100Wの出力でレンジ加熱し、被調理物Sの温度がさらに上昇して第3温度に達したら、レンジ加熱を停止するように、マイクロ波発生装置19のマグネトロンやアンテナモータ66の動作を制御する。
また、図30の下段に示すように、操作手段7により「スチーム全解凍」のコースを選択した後に、調理の開始を指示した場合、制御手段141は調理開始直後t0から被調理物Sを400Wの出力でレンジ加熱し、その後、庫内温度分布検出手段105からの検出信号により、被調理物Sの温度が上昇して第1温度に達したら、被調理物Sをそれまでよりも弱い80Wの出力でレンジ加熱するように、マイクロ波発生装置19のマグネトロンやアンテナモータ66の動作を制御した後、被調理物Sの温度がさらに上昇して第2温度に達したら、今度は被調理物Sをスチーム加熱し、被調理物Sの温度がさらに上昇して第3温度に達したらスチーム加熱を停止するように、蒸気発生装置の給水ポンプや蒸発用ヒータの動作を制御する。なお何れのコースの場合も、第1温度<第2温度<第3温度に設定されるが、各コースで、第1温度〜第3温度を同じ温度に設定する必要はない。
「お急ぎ解凍」では、調理開始から終了まで一貫してレンジ加熱を行なうことで、被調理物Sを解凍するが、直径Arが20cmである大型のアンテナ69により、調理室14に向けてマイクロ波が広く均一に照射される。そのため、調理室14内に収容した被調理物Sの広範囲を、従来よりもムラなく加熱できる。また従来は、強い出力を投入すると、一部煮えや解凍ムラの原因となっていたが、本実施形態ではアンテナ69から放射するマイクロ波を大きくかき回すことで、従来よりも強い出力で被調理物Sへの加熱ムラを抑えながら解凍することが可能になり、解凍時間が短縮される。被調理物Sに対するレンジ加熱の出力は、時間と共に徐々に弱めてゆくが、例えば冷凍豚ひき肉100gであれば、3分以下で解凍できる。
「スチーム全解凍」では、調理開始後の最初にレンジ加熱で被調理物Sの中心部を加熱し、その後はスチーム加熱に切替えて、被調理物Sの外側を加熱することで、被調理物Sを自然に解凍したもの(冷蔵庫で解凍したもの)に近い状態に仕上げる。「スチーム全解凍」の加熱時間は、「お急ぎ解凍」に比べて長くなるが、例えば冷凍豚薄切り肉(ひき肉に比べて煮えやすい)100gであれば、7分以下で解凍できる。
以上のように、本実施形態の加熱調理器としてオーブンレンジは、調理室14に入れられた被調理物Sを、加熱手段である熱風ユニット24により加熱調理するものであって、特に調理室14の内面の屈曲した隅角部となる四隅部55や角部56を、何れも面取り寸法がR10以上のR状に形成している。
この場合、調理室14の内面の隅角部である四隅部55や角部56を角状にせずR状にすることで、清掃時にクロスが四隅部55や角部56に届きやすくなり、四隅部55や角部56に付着した焦げ付きや汚れを簡単に除去して、調理室14の内面の清掃性をさらに向上させることが可能になる。
また本実施形態では、調理室14の内表面に、粒径が1000nm以下である無機成分の粒子59を主体にした塗膜60を形成している。
この場合、調理室14の内表面に形成した塗膜60は、微細な粒子59を主体としたコーティング層なので、その表面に付着した焦げ付きや汚れは塗膜の中に入り込むことができず、ふき取りにより簡単に除去できる。
また本実施形態のオーブンレンジは、回動可能なアンテナ69から調理室14の内部にマイクロ波を放射することで、その調理室14に入れられた被調理物Sを加熱するものであって、特にアンテナ69はドーム状ではない平板円形状で、調理室14の底壁14bに対向して配置され、アンテナ69の直径を20cm以上に形成している。
この場合、調理室14の底壁14bに対向するアンテナ69をドーム状とせずに平板状に形成し、且つアンテナ69の直径を20cm以上とすることで、アンテナ69を回動させたときに、アンテナ69から放射する電波をかき回す面積が増加し、且つアンテナ69から調理室14に向けて均一に電波が放射される。そのため、被調理物Sを広範囲にムラなく加熱することが可能になり、被調理物Sの温めムラを低減できる。
また、本実施形態のオーブンレンジは、被調理物Sを収容する調理室14と、調理室14の室外後方に加熱室31を有し、この加熱室31から調理室14の内部に熱風を供給する熱風ユニット24とを備えたもので、特に加熱室31の横幅寸法Wkを調理室14の横幅寸法Wmと略同等に形成し、加熱室31の左右端部近傍に熱風の吹出し口17を設けている。
これにより、熱風ファン28を正逆回転させることなく一方向にのみ回転させて、加熱室31から調理室14に向けてより広範囲に熱風を供給でき、調理室14内における被調理物Sの焼きムラを改善できる。
また好ましくは、調理室14の内面を形成する天井壁14aをドーム状に形成し、調理室14の内面の屈曲した隅角部となる四隅部55や角部56をR状に形成する。このように、調理室14の内面を構成する天井壁14aのみならず、四隅部55や角部56も丸く形成することで、調理室14の内部で加熱室31から供給された熱風の回りを良くすることができ、被調理物Sの焼きムラを効果的に改善できる。
また、本実施形態のオーブンレンジは、被調理物Sを収容する調理室14と、この調理室14の開口部を開閉する回動可能な扉3と、を備えたもので、特に扉3が閉じるに従い当該扉3への制動力を増加させるオイルダンパ88を備えている。
この場合、扉3が閉まるのに従って、扉3への制動力を次第に増加させるオイルダンパ88を装着することで、扉3が完全に閉まる手前で手を離しても、扉3を緩やかに優しく閉じることが可能になる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。例えば扉3の開閉する方向などは、本実施形態のものに限定されず、適宜変更が可能である。