以下、本発明における好ましい加熱調理器の実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、これらの全図面にわたり、共通する部分には共通する符号を付すものとする。
図1〜図38は、本発明の加熱調理器をオーブンレンジに適用した一実施形態を示している。先ず図1〜図6に基いて、オーブンレンジの全体構成を説明すると、1は略矩形箱状に構成される本体で、この本体1は、製品となるオーブンレンジの外郭を覆う部材として、金属製のキャビネット2を備えている。また3は、本体1の前面に設けられる開閉自在な扉である。
扉3の上部には、縦開きの扉3を開閉するときに手をかける開閉操作用のハンドル4を備えており、扉3の下部には、表示や報知や操作のための操作パネル部5を備えている。操作パネル部5は、調理の設定内容や進行状況などを表示する表示手段6の他に、加熱調理に関する各種の操作入力を可能にする操作手段7が配設される。扉3の内部で操作パネル部5の後側には、図示しないが、表示手段6や操作手段7などの制御を行なうために、操作パネルPC(印刷回路)板が配置される。
本体1の下部には、本体1の前面より着脱が可能な給水カセット8と水受け9が各々配設される。給水カセット8は、蒸気発生装置(図示せず)から発生する蒸気の供給源として、液体となる水を入れる有底状の容器である。また水受け9は、本体1からの食品カスや水滴、蒸気などを受ける有底状の容器である。
本体1の左右側面と上面を形成するキャビネット2は、本体1ひいてはオーブンレンジの底面を形成するオーブン底板11を覆うように、本体1の前面を形成するオーブン前板12と、本体1の後面を形成するオーブン後板13との間に設けられる。また本体1には、加熱調理すべき被調理物Sを内部に収容する調理室14と、調理室14の温度を検出する温度検出素子たるサーミスタ15が設けられる。調理室14の前面はオーブン前板12に達していて、被調理物Sを出し入れするのに開口しており、この開口を扉3で開閉する構成となっている。
調理室14を形成する周壁は、天井壁14aと、底壁14bと、左側壁14cと、右側壁14dと、奥壁14eとからなる。調理室14の奥壁14eは、その中央に吸込み口16を備えており、吸込み口16の周囲には複数の熱風吹出し口17を備えている。また、調理室14の上壁面となるドーム状の天井壁14aに対向して、本体1の上部には、調理室14の上方から被調理物Sを輻射加熱するグリル用の上ヒータ18が設けられ、本体1の底部には、調理室14内に電波であるマイクロ波を供給するために、マグネトロン64(図32を参照)を含むマイクロ波発生装置19が設けられる。これにより、上ヒータ18への通電に伴う熱放射によって、調理室14内に収容した被調理物Sを上方向からグリル加熱し、またマイクロ波発生装置19への通電動作により、調理室14内に収容した被調理物Sにマイクロ波を放射して、被調理物Sをレンジ加熱する構成となっている。
調理室14の左側壁14cと右側壁14dには、調理室14の内部に金属製の角皿21を吊設状態で収納保持するために、左右一対の棚支え22を上下二段に備えている。ここで使用する角皿21は、上面を開口した有底凹状で、その他は無孔に形成される収容部21Aと、収容部21Aの上端より外側水平方向に延設するフランジ部21Bとにより構成される。またフランジ部21Bには、角皿21を通して熱風の流通を可能にする通気孔21Cが開口形成される。図2では、調理室14の内部で下段の棚支え22に角皿21のフランジ部21Bを載せて、収容部21Aに被調理物Sを載せた状態を示しているが、調理に応じて角皿21を上段の棚支え22にだけ載せたり、2枚の角皿21を上段と下段の棚支え22に各々載せたりしてもよく、角皿21に代えて別な焼き網(図示せず)などの付属品を収納保持することもできる。
24は、本体1の内部において、調理室14の室外後方から下方にかけて具備されるオーブン加熱用の熱風ユニットである。この熱風ユニット24は、奥壁14eに取付けられる凸状のケーシング26と、空気を加熱する熱風ヒータ27と、調理室14内に加熱した空気を送り込んで循環させる熱風ファン28と、熱風ファン28を所定方向に回転させる電動の熱風モータ29と、熱風モータ29からの駆動力を熱風ファン28に伝達する伝達機構30と、により概ね構成される。奥壁14eとケーシング26との間の内部空間として、調理室14の室外後方に形成された加熱室31には、熱風ヒータ27と熱風ファン28がそれぞれ配設される一方で、本体1の内部に形成された調理室14とオーブン底板11との間の室外下部空間32には、熱風モータ29が配設される。そして、熱風ユニット24全体を後側外方から覆うように、本体1の後部にオーブン後板13が配設される。
本実施形態の熱風ファン28は、軸方向に取り入れた空気を、回転時の遠心力によって、軸方向と直角な放射方向に吐き出すいわゆる遠心ファンとして設けられており、管状の熱風ヒータ27は熱風ファン28の放射方向を取り囲んで配置される。発熱部でもある熱風ヒータ27は、例えばシーズヒータ、マイカヒータ、石英管ヒータやハロゲンヒータなどを用いる。前述した吸込み口16や熱風吹出し口17は、調理室14と加熱室31との間を連通する通風部として機能するものである。
そして本実施形態では、熱風モータ29への通電に伴い熱風ファン28が回転駆動すると、調理室14の内部から吸込み口16を通して吸引された空気が、熱風ファン28の放射方向に吹出して、通電した熱風ヒータ27により加熱され、熱風吹出し口17を通過して、調理室14内に熱風が供給される。これにより、調理室14の内外で熱風を循環させる経路が形成され、調理室14内の被調理物Sを熱風コンベクション加熱する。さらに、調理室14の左側壁14cには、蒸気発生装置に連通する蒸気噴出孔33が設けられる。図示しないが、本体1の内部に設けられる蒸気発生装置は、金属製で中空の蒸発容器や、蒸発容器に装着されるシーズヒータなどの蒸発用ヒータや、給水カセット8からの水を蒸発容器内に導く給水ポンプなどを備え、蒸発容器内に連通して複数の蒸気噴出孔33を有している。これにより蒸気発生装置の動作中には、給水カセット8からの水を蒸発容器内に送り込んで所定の温度にまで加熱することで、蒸気噴出孔33から調理室14の内部に飽和蒸気や過熱蒸気が供給され、調理室14内に入れられた被調理物Sのスチーム調理を行なう構成となっている。
熱風ファン28は、その回転軸となるシャフト34を中心として、シャフト34の周囲に複数枚のブレード35を放射状に配置して構成される。シャフト34の基端は、本体1の後方に向けて加熱室31の外方へ突出しており、ここに従動側のプーリー36Bが取付け固定される。また熱風モータ29には、本体1の後方に向けて突出する回動可能なモータ軸37に、主動側のプーリー36Aが取付け固定される。これらのプーリー36A,36Bの間には無端状のベルト38が懸架され、プーリー36A,36Bとベルト38からなる伝達機構30が、熱風ファン28と熱風モータ29とを連結する構成となっている。図示しないが、ベルト38の断面は例えば矩形状や台形状の他、様々な形状とすることができる。
伝達機構30はその他に、熱風ファン28のシャフト34を所定の位置で軸支するための支持体41を備えている。支持体41は、ベルト38の側部を取り囲んでケーシング26の後外面に取付け固定され、熱風ファン28のシャフト34や熱風モータ29のモータ軸37が挿通するケース部材42と、シャフト34を回動可能に支持するのに、プーリー36Bを部分的に覆ってケース部材42に取付け固定されたホルダー部材43と、により構成される。特に本実施形態のケース部材42は、調理室14の底壁14bより下方に延びた脚部44を一体的に形成しており、脚部44の底面を本体1のオーブン底板11上に載せて、調理庫14の後部を脚部44で支えることで、熱風モータ29を収容し得る程の大きさの下部空間32が、調理室14とオーブン底板11との間に形成される。またケース部材42には、熱風ファン28の回転速度を検出するために、プーリー36Aに近接配置された非接触の検出センサ45が配設される。
図4に示すように、熱風ファン28のシャフト34は、伝達機構30により調理室14の奥壁14eのほぼ中央に配置される一方で、熱風モータ29とそのモータ軸37は、調理室14の底壁面となる底壁14bよりも下方一側に偏って配置され、ケース部材42はシャフト34とモータ軸37とを結ぶ直線上に沿って設けられる。このように、熱風ファン28と熱風モータ29は、本体1の内部で離れた位置に設けられているが、プーリー36A,36Bとベルト38とを組み合わせた伝達機構30によって、熱風モータ29からの回転駆動力を熱風ファン28に円滑に伝えることができる。また、熱風モータ29を調理室14より十分に離すことで、調理室14からの熱影響を防ぐことができる。
その他、調理室14の開口部を覆う縦開きの扉3は、オーブン前板12を貫通して本体1に設けた左右一対の可動するヒンジ機構46により、本体1の前側下部で回動自在に支持される。また、扉3を閉じた時に調理室14内部への視認を可能にするために、扉3の外郭をなす扉部材47の内部には、ガラスなどの透明な窓部材となる内装パネル48が配設される。
次に、オーブンレンジの細部構成について、図7〜図38を参照しながら説明する。先ず、熱風ユニット24に関する構成を図7と図8に基づき説明すると、これらの各図において、熱風ヒータ27は金属製の放熱パイプ51の内部に、発熱体としてのニクロム線(図示せず)を収納したものであり、放熱パイプ51の外周面には所定の間隔で円板状のフィン52が配設される。これにより加熱室31の内部では、回転する熱風ファン28から吐出される風がフィン52に吹付けられて、効率よく熱風化される構成となっている。
ケーシング26には、熱風ヒータ27を加熱室31の内外に密閉状態で挿通させるヒータ取付け部53が設けられる。このヒータ取付け部53は、加熱室31の横幅寸法Wkを無理なく調理室14の横幅寸法Wmに近付けて広げられるように、加熱室31の側部にではなく下部に配置される。また、これらの図には示していないが、調理室14の奥壁14eには、熱風ファン28と向かい合う位置に吸込み口16が配設されると共に、熱風ファン28の放射方向に位置して、複数の熱風吹出し口17が配設される。
特に本実施形態では、加熱室31の横幅寸法Wkが調理室14の横幅寸法Wmに近付くように、加熱室31を極力左右に広げると共に、熱風ファン28の中心から見て熱風ヒータ27よりも外方で、且つ加熱室31の左右端部近傍に熱風吹出し口17を設けている。これにより、熱風ファン28を正逆回転させることなく、熱風ユニット24で生成した熱風が、熱風吹出し口17から調理室14の両隅側まで広がってワイドに送り込まれ、ムラのないオーブン加熱を実現できる。なお、熱風ヒータ27の両端部は、通電のために加熱室31の外部に引き出されて、他の電気部品に接続される。
図9はオーブン前板12を示しており、図10は調理室14の内面構造と熱風の流れを示している。これらの各図において、本実施形態では、調理室14の天井壁14aが上方に向けて凸形をなすドーム状に形成される。また、調理室14の内面の屈曲した四隅部55、すなわち底壁14bと左側壁14cとを繋ぐ部位と、左側壁14cと天井壁14aとを繋ぐ部位と、天井壁14aと右側壁14dとを繋ぐ部位と、右側壁14dと底壁14bとを繋ぐ部位の内面は、何れもR状に形成され、調理室14の内面の奥壁14eと他の壁との角部56、すなわち天井壁14a,底壁14b,左側壁14cおよび右側壁14dと、奥壁14eとを繋ぐ部位の内面も、同様に何れもR状に形成される。
こうして、丸い天井壁14aと、丸い隅角部となる四隅部55や角部56とを組み合わせて、調理室14の内面をラウンド状に形成することで、調理室14の内部では、熱風吹出し口17から吹出された熱風が、奥壁14eに沿って角部56の近傍で突き当たることなく回り込んで、若しくは奥壁14eに沿うことなく直接に、天井壁14aや、底壁14bや、左側壁14cや、右側壁14dに流れ、丸い天井壁14aに沿って流れる熱風が、そのまま四隅部55で突き当たることなく左側壁14cや右側壁14dに回り込み、また天井壁14aに対向する底壁14b側でも、略直線状の底壁14bに沿って流れる熱風が、四隅部55に殆ど突き当たることなく左側壁14cや右側壁14dに回り込んで中央部へ流れて行く。そのため、調理室14の内部全体に熱風が対流して、熱の回りが良好になる。なお図10では、熱風ユニット24の動作時における四隅部55周辺での熱風の流れFを矢印で示している。
また、ここでの四隅部55は、その面取り寸法が半径R=15mm(すなわちR15)に形成されるが、調理室14の内面を指先でふき取ることができるように、四隅部55や角部56の面取り寸法を、何れもR10以上とするのが好ましい。
図11は、調理室14内面のふき取り前とふき取り後の状態を示したものである。本実施形態において、調理室14の内面を形成する全ての壁14a〜14eは、前述の四隅部55や角部56を含めて、金属板材からなる母材58の表面全体を、粒径が1000nm以下である無機成分の粒子59を主体とした塗膜60で覆うことで構成される。粒子59は、例えばアルミナなどの微細なセラミックス粒体からなり、塗膜60の表面に付着した焦げ付きや汚れKが、塗膜60の内部に入らない程度の粒径と密度で充填される。これにより、調理室14の内表面に付着した焦げ付きや汚れKは、微細な粒子59を主体としたナノセラミックスの塗膜60の中に入り込むことができず、クロスなどで簡単にふき取れる。したがって、ふき取り後に調理室14の内表面を清潔に保つことができる。
本実施形態の熱風ユニット24は、その動作時に最高で350℃の熱風を調理室14内に供給する構成を有する。そのため図12に示すように、調理室14の内面をセラミックの塗膜60でコーティングすることと相俟って、扉3を除く部分で調理室14の内面全体から、遠赤外線Rを効果的に放射することができる。そして、このような遠赤外線Rの放射と、前述した熱風Fの対流との組み合わせにより、例えばオーブン加熱の予熱時に、調理室14内の温度が200℃に達するまでの加熱時間を約5分に早くすることができる他に、調理室14内の被調理物Sに対する焼きムラを抑えて、きれいに焼き上げることが可能になる。
また、図2で示したように、角皿21の周囲にはスリット状の通気孔21Cが設けられる。そのため、例えば上下2段の棚支え22に各々角皿21を各々載せて、熱風ユニット24を利用したオーブン加熱調理を行なった場合に、各角皿21の通気孔21Cを通して調理室14内で熱風Fが上下に循環すると共に、調理室14の内面全体から遠赤外線Rが放射され、被調理物Sとなる食品を熱風Fと遠赤外線Rで前後左右から包み込んで焼き上げることが可能になる。
続いて、マイクロ波発生装置19とその周辺の細部構成を、図13〜図15に基いて説明する。これらの各図において、調理室14の底壁14bは、金属板材61に形成された凹状のアンテナ収納部62の上面開口を、セラミック板などのマイクロ波が透過可能な底板63で覆うことで構成される。マイクロ波が透過不能な金属板材61は、底壁14bの周囲部のみならず、左側壁14cや、右側壁14dや、奥壁14eを一体的に形成するもので、底板63を除く調理室14の内面は、全てマイクロ波が透過不能な材料で形成される。
マイクロ波発生装置19は、電波すなわちマイクロ波の供給源となるマグネトロン64の他に、本体1内部の下部空間32において、マグネトロン64で発振されたマイクロ波をアンテナ収納部62の直下に導く導波管65と、導波管65の下方に配設されるアンテナモータ66と、その下端部が導波管65の内部に配置され、アンテナモータ66の回転軸に取付け固定されるアンテナホルダ67と、アンテナホルダ67内に挿入固定される円柱状のケーブル軸68と、その中心にケーブル軸68の上端部が取付け固定され、アンテナ収納部62の内部で回動可能に設けられるアンテナ69と、により主に構成される。そして、アンテナ収納部62の上面開口を底板63で塞いだ状態では、調理室14の底壁14bを形成する平板状の底板63に対向して、アンテナ69の全体が底板63と平行に配置される。
アンテナ69は、ケーブル軸68に沿って下から上に進行するマイクロ波を表面から放射するもので、本実施形態では上方から見た輪郭形状が一部を切り欠いた円形であり、一定の厚さを有する凹凸のないアルミニウムなどの金属平板で形成される。アンテナ69には、ケーブル軸68の上端部が挿入される貫通孔71や、外周部が開口する切欠き状のマイクロ波放射部72や、大小2つずつの開口した放射調整部73,74が形成される。マイクロ波放射部72は、マイクロ波の放射に図15に示す矢印Dの方向への指向性を与えるものである。マイクロ波放射部72の内面には、直線状に突出する放射突部75と、アンテナ69の外周形状に沿って円弧状に突出する一対の放射突部76が各々配置され、これらの放射突部75,76からマイクロ波が強く放射される。また放射調整部73,74は、アンテナ69からのマイクロ波を目標の放射分布に調整するためのもので、ここでは特に、ケーブル軸68からアンテナ69の端部までの距離に応じて変動するマイクロ波の放射分布を調整するものである。
ここで使用する円板状のアンテナ69は、アンテナモータ66への通電により底板63の下方でケーブル軸68を中心に回転するが、大きな円板を動かした方が、小さな円板を動かすより電波をかき回す面積が増えるので、調理室14に入れた被調理物Sへの加熱ムラを抑えるのには有利となる。また、調理室14の内壁面に近いところは電波の変化が少なくなり、温まりにくい特徴を持っている。そのため、従来のものよりも被調理物Sへの加熱ムラを効果的に抑制するために、アンテナ69の直径Arは20cm以上とするのが好ましい。
また図14に示すように、アンテナ69の外周端面とアンテナ収納部62の側面との隙間Adが3mm程度以下になると、金属間の電界集中によるスパークが発生する。したがって、アンテナ69と他の金属として例えばアンテナ収納部62との間隔Adは、10mm以上離して設計するのが好ましい。
次に、扉3の開閉機構に関する構成を、図16と図17に基いて説明する。同図において、46は扉3の開閉を保持するように扉3と本体1とを連結するヒンジ機構である。ヒンジ機構46は、扉3の左右両側下部に取付け固定された扉ヒンジ(図示せず)に、本体1側からオーブン前板12を貫通して前方に延びる第1アーム83と第2アーム84をそれぞれ連結して構成される。またヒンジ機構46は、扉3が開くときに制動をかける弾性体としてのスプリング85と、樹脂製のローラー86と、ローラー86を回動可能に保持する金属板状のローラーホルダ87と、扉3が閉じるときに制動をかけるオイルダンパ88とを、本体1の内部に備えている。
第2アーム84はローラーホルダ87と一体に形成され、その先端が扉ヒンジに設けたヒンジ軸90に回動可能に軸支される。これにより、ハンドル4を握って扉3の上部を引いて手前に倒すと、ヒンジ軸90を中心に扉3が開動し、加熱室14の開口を通して被調理物Sを加熱室14内に出し入れできるようになっている。
第1アーム83の先端は、扉ヒンジに設けたアームピン91に回動可能に支持される。また、第1アーム83の基端と、本体1のオーブン底板11に取付け固定されたローラーホルダ87との間には、伸縮可能なスプリング85が連結して設けられる。このスプリング85は、扉3の開閉時に第1アーム85を介して扉3を閉じる方向に付勢すると共に、第1アーム83がローラー86から脱落しないように付勢するものである。扉3の開閉に伴い移動する第1アーム83の下面は、ローラー86に当接する摺動面92として形成されており、これにより第1アーム83は、ローラー86上で前後方向に移動可能に支持される。
オイルダンパ88は、ローラーホルダ87に固定保持され、内部にオイルを充填した本体シリンダ94と、本体シリンダ94の先端側で突出し、オイルによる弾性反発力に抗して出没する可動体95とにより構成される。そして、図17に示す扉3を閉める途中で、第1アーム83の受け片96に可動体95が当接し、そこから扉3をさらに本体1側に閉じようとすると、オイルダンパ88からの弾性反発力が第1アーム83を介して扉3に作用する位置に、オイルダンパ88が配設される。
前記第1アーム83の摺動面92には、図16に示す扉3を完全に閉じた時に、ローラー86と当接する位置に凹部97が形成される。この凹部97は、扉3を閉じた時のオーブン前板12に対する扉3の位置決めとなるものである。また第1アーム83には、摺動面58とは反対側の面に突片98を一体的に形成している。突片98は、扉3を開けた時に本体1の内部に設けたストッパー片99と嵌合し、その位置で扉3を全開した状態に保持するものである。
本実施形態では、扉3が完全に閉まる手前で手を離した場合でも、第1アーム83の受け片96にオイルダンパ88の可動体95が当接すると、そこから扉3に対するオイルダンパ88の弾性反発力が次第に強く作用するようになる。そのため、扉3を閉じるときの回転速度を徐々に低下させながら、金属製の第1アーム83の凹部97を樹脂製のローラー86に当接させることが可能となり、扉3は本体1側に衝突することなく静かに閉じられる。
図18は、調理室14内の照明手段に関する好ましい例を示したものである。同図において、101a,101bは調理室14の室外側方に配設され、点灯時に調理室14の内部に向けて各々放射状に光La,Lbを出射する上下2段の庫内灯である。上段の庫内灯101aは、上段の棚支え22に載せた角皿21に向けて光Laを出射する位置に設けられ、下段の庫内灯101bは、下段の棚支え22に載せた角皿21に向けて光Lbを出射する位置に設けられる。
この例では、調理室14内に上下2か所の庫内灯101a,101bを設け、調理中にこれらの庫内灯101a,101bを点灯させることで、2枚の角皿21を上段と下段の棚支え22に各々載せて調理を行なう2段調理でも、各角皿21に収容した被調理物Sが光La,Lbによる照明で見やすくなる。また、庫内灯101a,101bをLEDとすることで、調理室14内を明るく照明しつつも、省エネを図ることができる。
図19は、本体1の内部に配設される庫内温度分布検出手段105とその周辺の構成を示したものである。調理室14の右側壁14dには、四角錐台状の隆起部材111が調理室14内に向かう内方に膨出して設けられる。隆起部材111は、上段の棚支え22より上方にあって、右側壁14dの上部で前後の中央に設けられており、その傾斜した下面部に窓112が開口形成される。また、上下の棚支え22の間に位置して、右側壁14dの上下前後の中央には、窓112とは別の窓113が開口形成される。
調理室14と本体1との間には、窓112を含む隆起部材111の外方に臨んで、第1センサ115やセンサモータ116が配設され、窓113に臨んで第2センサ118が配設される。また、センサモータ116や第2センサ118は、本体1の内部に取付け固定される一方で、第1センサ115はセンサモータ116の回動自在な回転軸120に取付けられる。
第1センサ115の駆動装置となるセンサモータ116は、ステッピングモータなどで構成され、本体1の内部で第1センサ115を前後方向に揺動させる回転軸120を備えている。第1センサ115は、回転軸120に取付け固定される中空状のセンサケース122と、センサケース122の内部に収納されるセンサ基板123と、センサ基板123の表面に搭載される複数個(例えば8個)の赤外線検出素子124と、この赤外線検出素子54に臨んでセンサケース122に取付け固定されるレンズ125と、を主な構成要素としている。
本実施形態では図22に示すように、各赤外線検出素子54の視野V1が、調理室14の右側壁14dの上部中央から窓112を通して、略矩形状をなす底壁14bの左右方向に並ぶように、調理室14の上下方向に沿って複数個の赤外線検出素子124を一直線上に並べて配置している。また、本実施形態では図23に示すように、図示しない制御手段からのモータ駆動信号を受けて、センサモータ116がその回転軸120を正方向と逆方向に所定角度だけ往復回動すると、第1センサ115が揺動するのに伴い、調理室14の底壁14bに達する複数個の赤外線検出素子124の視野V1が、各赤外線検出素子124を中心として移動方向X1に沿って扇状に繰り返しスイングするように、図19の一点鎖線で示す複数個の赤外線検出素子124を結ぶ直線と、回転軸120の回転中心軸線とを略一致させている。なお、本体1内部への熱影響を低減するために、図示しない赤外線透過部材で窓112を塞いでもよい。
一方、第2センサ118は、本体1の内部に取付け固定される中空状のセンサケース132と、センサケース132の内部に収納されるセンサ基板133と、センサ基板133の表面に搭載される1個の赤外線検出素子134と、この赤外線検出素子134に臨んでセンサケース132に取付け固定されるレンズ135と、を主な構成要素としている。そして図24に示すように、赤外線検出素子134の視野V2が、右側壁14dの上下前後の中央から窓113を通して、常に底壁14bの前後左右の中心に達するように、第2センサ118が本体1の内部に取付け固定される。なお、本体1内部への熱影響を低減するために、図示しない赤外線透過部材で窓113を塞いでもよい。
第1センサ115と第2センサ118は何れも赤外線センサで、本実施形態の庫内温度分布検出手段105を構成する。ここでの庫内温度分布検出手段105は、スイングする第1センサ115と、固定した第2センサ118とにより、加熱室14内全体の温度分布を検出することで、そこに収容された被調理物Sが放射する赤外線の量から、被調理物Sの表面温度を短時間で検出するものである。
図25は、扉3に組み込まれた扉板141の全体を図示したものである。また図26〜図29は、図25に示す扉板141のL1部〜L4部を、それぞれ矢印の方向から見た拡大図である。これらの各図において、金属製の導体からなる扉板141は、扉部材47の内側に嵌め込まれており、扉板141の中央には、内装パネル48を装着する窓孔142が開口形成される。また、窓枠142の全周囲には、扉3を閉じたときに、オーブン前板12の前面に最も近接対向する対向面部143が形成される。対向面部143の外方で、扉板141の周縁には、調理室14からのマイクロ波を減衰抑制するために、櫛形のチョーク構造体となる複数個のリッジ144が枠状に配置される。ここでのリッジ144は、扉板141と一体に折り曲げ形成するのではなく、別体に構成してもよい。
リッジ144となる扉板141の外周部は、前記対向面部143と略直角で、オーブン前板12の前面から遠ざかる方向に延設された側壁面部145と、この側壁面部145と略直角で、扉3の外方に延設された底面部146とにより、断面略L字状の段部が構成されている。そして、この段部の外端に扉板141の外周端部が一体的に設けられることで、扉板141の外周部を周回する状態でチョーク溝148が形成され、オーブン前板12と扉板31との間の隙間(1mm程度)から漏えいするマイクロ波を減衰するようになっている。
扉板141の外周端部は、底面部146の外端からオーブン前板12の前面に向けて折り曲げられた立上がり部151に、断面L字状の導体片152が、所定の間隔を置いて複数個櫛状に連なって一体に形成されたものであり、隣り合う導体片152,152の間には、各導体片152を区画するスリット状の切込み部153が形成される。各々の導体片152は、立上がり部151からオーブン前板12の前面に向けて延びる垂直面部155と、この垂直面部155に延設され、底面部146と略平行で側壁面部145側に張り出す張出面部156と、張出面部156に延設され、底面部146側に突出する突出面部157とにより構成される。チョーク溝148は、調理室14からのマイクロ波を減衰する凹状の電波減衰溝に相当し、その開口側には立上がり部151から延設した導体片152が周期的に配列される。
図25に示すように、リッジ144の外形は、扉3の外形に合わせて略矩形枠状に形成される。つまり、ここでのリッジ144は、何れも直線状の四辺を形成する上辺部144aと、下辺部144bと、左辺部144cと、右辺部144dとにより構成される。また、後述するリッジ144の小型化に対応して、その強度を向上させるために、材厚を0.5mmから0.6mmに厚くすると共に、上辺部144aと左辺部144cとの間、左辺部144cと下辺部144bとの間、下辺部144bと右辺部144dとの間、右辺部144dと上辺部144aとの間の角部において、何れも立上がり部151に連なるR状の湾曲部158が形成され、さらに全ての導体片152の垂直面部155から立上がり部151にかけて、補強用のビード159が設けられる。このビード159はリッジ144と一体で、内方の側壁面部145に向けて、調理室14からのマイクロ波の減衰を損なわない程度にスリット状に膨出して形成される。
図30は、従来製品と本実施形態において、上述した扉板141のリッジ144やオーブン前板12の寸法関係を示したものである。同図中、d1はチョーク溝148の開口幅寸法、すなわち側壁面部145と突出面部157との間の寸法であり、d2は導体片152の張出面部156の幅寸法であり、d3はチョーク溝148を形成する側壁面部145の深さ寸法であり、d4は扉板141の対向面部143やリッジ144に対向するオーブン前板12の前側上面または前側側面の幅寸法である。
リッジ144の形状に関し、本実施形態では従来製品と比べて、リッジ144の各寸法d1〜d3をそれぞれ1〜4mm短く形成している。これにより、リッジ144に対向するオーブン前板12の上面や側面の幅寸法d4も、4mm〜8mm短く形成される。したがって、製品の大型化を避けるために、本体1の外形寸法を従来製品と本実施形態で変えないとすれば、オーブン前板12の上面や側面の幅寸法d4が短くなった分、図8で示した調理室14の横幅寸法Wmや縦幅寸法Wtを長くして、調理室14内の庫内容量を広く確保することができる。
また、従来製品ではリッジ144の各寸法d1〜d3が、リッジ144の上辺部144aに相当する上面と、左辺部144cおよび右辺部144dに相当する左右側面と、さらには図示しないものの、下辺部144bに相当する下面の全てで同じであるのに対して、本実施形態では、リッジ144の寸法d1,d3が、リッジ144の上面,左右側面および下面の全てで同じであるものの、リッジ144の寸法d2が、リッジ144の左右側面および下面では9mmで、リッジ144の上面では7mmと短くなっている。
つまり本実施形態では、オーブン前板12の前面に対向する導体片152の張出面部156の幅寸法d2が、リッジ144の上辺部144aでは7mmであるのに対し、他の下辺部144b,左辺部144cおよび右辺部144dでは9mmと異なっている。これに伴い、リッジ144の上辺部144aに対向するオーブン前板12の上面の幅寸法d4は28mmであるのに対し、他のリッジ144の下辺部144b,左辺部144cおよび右辺部144dに対向するオーブン前板12の下面や左右側面の幅寸法d4は32mmとなり、オーブン前板12の上面の幅寸法d4だけを、別な下面や左右側面の幅寸法d4よりも狭く形成できる。そのため、本体1の外形寸法を変えることなく、調理室14の横幅寸法Wmよりも縦幅寸法Wtを効果的に大きく形成して、調理室14内の庫内容量を大きく確保することが可能になる。
なお、こうしたリッジ144の各寸法d1〜d3は、調理室14からのマイクロ波の減衰性能を左右するものなので、むやみに変更できるものではない。そこで本実施形態では、調理室14からのマイクロ波の漏えい量が、評価基準値以下となる範囲で、リッジ144の各寸法d1〜d3を設定する。
図31は、従来製品と本実施形態において、オーブンレンジからの電波漏れ量の測定結果をグラフで示したものである。ここでの評価基準値は、製品としての安全性を考慮して、少なくとも「電気用品安全法 電気用品の技術上の基準を定める省令 別表第八2(95)ト項」で明示された「漏えい電波の電力密度の値」以下の値とする。
同項では、電子レンジの外側に漏れ出る電波の電力密度について、
「(イ)275cm3±15cm3の水を入れた円筒状のビーカーをその器体内のほぼ中央に置いた状態において、定格周波数に等しい周波数の定格電圧に等しい電圧を試験品に加えてとびらを閉めたときおよび発振管の発振停止装置が動作する直前の最大の位置までとびらを開いて固定したとき、器体の表面から5cm離れたあらゆる箇所において測定した漏えい電波の電力密度の値は、次に適合すること。
a とびらを閉めたときにあっては、1mW/cm2以下であること。
b 発振管の発振停止装置が動作する直前の最大の位置までとびらを開いて固定したときにあっては、5mW/cm2以下であること。」
とされているので、同じ測定条件で、扉3を閉めた「扉閉」(上記「a」に相当する)の状態では、評価基準を0.3mW/cm2とし、扉3を開ける際に、後述する扉開閉検出手段184からの検出信号により、動作が停止する直前の「扉開」(上記「b」に相当する)の状態では、評価基準3.0mW/cm2として、オーブンレンジからの電波漏れ量がその評価基準を満足するか否かを測定した。
その結果、従来製品と本実施形態は、何れもこの評価基準を満足する範囲で、リッジ144の各寸法d1〜d3が設定されていたことが確かめられた。特に本実施形態では、「扉閉」の状態で、電波漏えい量の実測値が0.1mW/cm2であり、また「扉開」の状態で、電波漏えい量の実測値が1.8mW/cm2であった。そのため本実施形態のリッジ144は、図30に示す各寸法d1〜d3であっても、調理室14からのマイクロ波を効果的に減衰できることが確かめられた。
次に、本体1内部の冷却構造について、図32〜図34を参照して説明する。本体1の内部は、前述した室外下部空間32の他に、調理室14の外面とキャビネット2の内面との間に、室外上部空間161と左右の室外側部空間162が各々形成される。図32に示すように、室外下部空間32には、熱風モータ29と、第1送風ファン164と、印刷回路基板165と、マイクロ波発生装置19のマグネトロン64,アンテナモータ66およびインバータ166がそれぞれ配置される。遠心ファンである第1送風ファン164は、室外下部空間32の一側後方に設けられ、内部に風洞を形成するファンケース167と、ファンケース167内に回動可能に収容される羽根車168と、羽根車168に回転力を与える電動モータ169と、を主な構成要素とする。ファンケース167は、羽根車168の回転軸方向に、本体1を通してオーブンレンジ外部からの冷気を取込む吸気孔170が開口形成される一方で、これと直交する羽根車168の外周方向に、室外下部空間32の被冷却部へ冷風を送り出す送風孔171,172が形成される。
前記印刷回路基板165は、室外下部空間32の前方で基板取付板組立体174に収容保持され、この基板取付板組立体174の後側には、送風孔171に対向して取入口175が開口形成される。また、マグネトロン64の駆動電源となるインバータ166は、室外下部空間32の後方に設けた底部ダクト176に収容保持され、この底部ダクト176の一側には、送風孔171に対向して取入口177が開口形成される。底部ダクト176の他側にあって室外下部空間32の他側後方には、熱風ユニット24を構成する熱風モータ29が配設され、これとは別に底部ダクト176には、室外下部空間32の他側略中央に設けたマグネトロン64に向けて冷風出口178が開口形成される。このように本実施形態では、室外下部空間32において、基板取付板組立体174が第1送風ファン164から制御基板165に冷風を導く送風路を形成する一方で、これとは別部材の底部ダクト176が、第1送風ファン164から熱風モータ29やマグネトロン64に冷風を導く送風路を形成する構成となっている。
なお、上述した室外下部空間32における各構成の配置や形状,数などは、第1送風ファン164の送風能力などを考慮して、適宜変更が可能である。
図33および図34は、本体1の正面から見て右側の室外側部空間162と、それに連なる室外上部空間161の各構成を示している。これらの各図において、室外上部空間161は、キャビネット2の上面部と調理室14の天井壁14aとの間に形成され、ここには前述の上ヒータ18が上遮熱板組立体181に囲まれた状態で配置される。上遮熱板組立体181には配線接続用の孔182が開口形成され、この孔182を通して上ヒータ18と印刷回路基板165との電気的接続を可能にしている。
右側の室外側部空間162は、キャビネット2の右側面部と調理室14の右側壁14dとの間に形成され、ここには前述のヒンジ機構46や、庫内灯101a,101bや、第1センサ115や、センサモータ116や、第2センサ118の他に、扉3の開閉を検出する扉開閉検出手段184と、前述の第1送風ファン164とは別な第2送風ファン185がそれぞれ配置される。また室外側部空間162には、キャビネット2への熱影響を遮断する遮熱体として、上遮熱板組立体181と同様の右遮熱板組立体187が配設される。なお図示しないが、キャビネット2の左側面部と調理室14の左側壁14cとの間に形成される左側の室外側部空間162には、ヒンジ機構46や、蒸気発生装置や、遮熱体としての左遮熱板組立体がそれぞれ配設される。
扉開閉検出手段184は、複数のマイクロスイッチにより室外側部空間162の前方上部に配設され、本体1に対して扉3が閉じた状態だけでなく、扉3が僅かに開いたときの状態も検出するものである。この扉開閉検出手段184よりも後方近傍には、上下の庫内灯101a,101bが配設され、扉開閉検出手段184の各マイクロスイッチや庫内灯101a,101bと印刷回路基板165との間を、配線により電気的に接続している。第1センサ115と、センサモータ116と、第2センサ118は、室外側部空間162の前後方向の略中央部に、上下に並んで配設される。右遮熱板組立体187には配線接続用の孔188,189が開口形成され、この孔182を通して上ヒータ18と印刷回路基板165との電気的接続を可能にしている。
遠心ファンである第2送風ファン185は、室外側部空間162の略中央部下方にあって、右遮熱板組立体187の外側に設けられ、内部に風洞を形成するファンケース191と、ファンケース191内に回動可能に収容される羽根車192と、羽根車192に回転力を与える電動モータ193と、を主な構成要素とする。ファンケース191は、羽根車192の回転軸方向に、本体1を通してオーブンレンジ外部からの冷気を取り込む吸気孔194が開口形成される一方で、これと直交する羽根車192の外周方向に、室外側部空間162の被冷却部へ冷風を送り出す送風孔195,196,197が形成される。
201は、室外側部空間162において、第2送風ファン185から各部に冷風を導く送風路として設けた側部ダクトである。側部ダクト201は、第2送風ファン185の各送風孔195,196,197を取り囲むようにして配置されるダクト基部202と、このダクト基部202から室外側部空間162の被冷却部に向けて延びる複数のアーム部203,204とにより構成される。ダクト基部202には、第2センサ118に向けて冷風出口206が開口形成される。また、アーム部203の先端には、扉開閉検出手段184や庫内灯101a,101bに向けて冷風出口207が開口形成され、さらにアーム部204の先端にも、第1センサ115やセンサモータ116に向けて冷風出口208が開口形成される。なお、図33では第2センサ118が装着されていないが、第2センサ118は製品の仕様に合わせて着脱することができる。
図35〜図37は、キャビネット2の外観構成を示している。これらの各図において、211は、キャビネット2の外面より外方に突出するリブである。このリブ211は、キャビネット2の右側面と左側面の前後にそれぞれ2個ずつ丸型凸状に形成される。また212は、第2送風ファン185の吸気孔194に対向して、オーブンレンジ外部からの冷気を取り入れるパンチングの取込孔である。取込孔212は、キャビネット2の右側面に開口形成され、この取込孔212の前後にリブ211が設けられる。なお、リブ211の形状や数などは図で示したものに限定されず、オーブンレンジを任意の場所に設置したときに、リブ211が設置壁面に当接した場合であっても、キャビネット2の外面と設置壁面との間での熱のこもりを防止して、取込孔212から本体1の内部に冷気を取入れることができる程度の突出高さに形成すればよい。
図38は、オーブンレンジの主な電気的構成を図示したものである。同図において、221はマイクロコンピュータにより構成される制御手段であり、この制御手段221は前述の印刷回路基板165に搭載され、演算処理手段としてのCPUや、記憶手段としてのメモリや、計時手段としてのタイマや、入出力デバイスなどを備えている。
制御手段221の入力ポートには、前述したキーやタッチパネルによる操作手段7や、庫内温度分布検出手段105や、扉3の開閉状態を検出する扉開閉検出手段184の他に、調理室14内の温度を検出するサーミスタなどの庫内温度検出手段222と、検出センサ45を含む熱風モータ回転検出手段223と、アンテナ69の回転の原点を検出するアンテナ位置検出手段225と、前述した蒸気容器内の温度を検出するサーミスタなどの蒸気容器検出手段226が、それぞれ電気的に接続される。
制御手段221の出力ポートには、前述した表示手段6の他に、マグネトロンやその駆動手段を含むマイクロ波加熱手段231と、グリル加熱用の上ヒータ18や、オーブン加熱用の熱風ヒータ27や、スチーム加熱用の蒸発用ヒータをそれぞれ通断電させるリレーなどのヒータ駆動手段232と、アンテナモータ66を回転駆動させるためのアンテナ駆動手段233と、熱風モータ29を回転駆動させるための熱風モータ駆動手段234と、センサモータ116を正逆回転駆動させるためのセンサモータ駆動手段235と、蒸気発生装置の給水ポンプを動作させるためのポンプ駆動手段236と、照明手段としての庫内灯101a,101bを個々に駆動するための庫内照明駆動手段237と、第1送風ファン164の電動モータ169や、第2送風ファン185の電動モータ193を個々に駆動するための送風モータ駆動手段238が、それぞれ電気的に接続される。
制御手段221は、操作手段7からの操作信号と、庫内温度分布検出手段105や、庫内温度検出手段222や、熱風モータ回転検出手段223や、扉開閉検出手段184や、アンテナ位置検出手段225や、蒸気容器検出手段226からの各検出信号を受けて、計時手段からの計時に基づく所定のタイミングで、マイクロ波加熱手段231と、ヒータ駆動手段232と、アンテナ駆動手段233と、熱風モータ駆動手段234と、センサモータ駆動手段235と、ポンプ駆動手段236と、庫内照明駆動手段237と、送風モータ駆動手段238に駆動用の制御信号を出力し、また表示手段6に表示用の制御信号を出力する機能を有する。
そして制御手段221は、操作手段7の操作に伴う操作信号を受け取ると、扉開閉検出手段184からの検出信号により、扉3が閉じていると判断した場合に、その操作信号に応じて、マイクロ波加熱手段231や、ヒータ駆動手段232や、アンテナ駆動手段233や、熱風モータ駆動手段234や、センサモータ駆動手段235や、ポンプ駆動手段236に制御信号を送出して、種々の加熱調理を制御する構成となっている。
次に、上記構成のオーブンレンジについてその作用を説明すると、予め調理室14内に被調理物Sを入れた状態で、ハンドル4を手で握りながら扉3を閉め、操作手段7により調理メニューを選択操作した後に調理開始を指示すると、制御手段221の記憶部に組み込まれた制御プログラムに従って、選択した調理メニューに対応して生成された制御信号が所定のタイミングで出力され、被調理物Sが加熱調理される。
ここで、例えばオーブン加熱の調理メニューを選択した場合、制御手段221からの制御信号がヒータ駆動手段232と熱風モータ駆動手段234に送出されて、熱風ヒータ27と熱風モータ29が各々通電され、熱風モータ29のモータ軸37に発生した回転力が、伝達機構30を通して熱風ファン28のシャフト34に伝達する。それにより熱風ファン28は加熱室31の内部で一方向に回転し、その速度は熱風モータ回転検出手段223により制御手段221に取り込まれると共に、調理室14から吸込み口16を通して加熱室31に吸込んだ空気を、通電した熱風ヒータ27側に送り出し、ここで加熱された空気が熱風吹出し口17を通して調理室に熱風Fとして供給されることで、調理室14内の被調理物Sが熱風コンベクション加熱される。
このとき加熱室31の内部では、熱風ファン28の放射方向に吹き出される空気が、そのほぼ全周で熱風ヒータ27のフィン52に吹付けられ、効率よく熱風化される。また、加熱室31の横幅寸法Wkを調理室14の横幅寸法Wmに極力近付けているため、熱風ファン28を正逆回転させることなく、加熱室31の内部で熱風Fが特に横方向へ広範囲に生成される。この熱風Fはさらに、加熱室31の左右端部近傍に設けた熱風吹出し口17から、調理室14の両隅側まで広がってワイドに送り込まれ、被調理物Sの焼きムラを改善したオーブン加熱が実現できる。
また、調理室14の内面全体をラウンド状に形成することで、熱風吹出し口17から吹出された熱風Fが、調理室14の内面を途中で突き当たることなく回り込んで、調理室14の中央部へと導かれて行く。そのため、調理室14の内部全体で熱風Fが対流し、熱の回りが良好になり、結果的に被調理物Sの焼きムラが効果的に改善される。
さらに本実施形態では、オーブン加熱の調理メニューで、調理室14内の温度が最高で350℃に達するように、制御手段221が庫内温度検出手段222からの検出信号を受けて、熱風ヒータ27や熱風モータ29の動作を制御することができる。この場合、調理室14内が熱風Fで高温に晒されるに従って、セラミック塗膜60を表面にコーティングした調理室14の内面全体から遠赤外線Rが効果的に放射され、加熱時間が短縮されると共に、被調理物Sの焼きムラがより効果的に改善される。特に角皿21に被調理物Sを載せてオーブン加熱を行なう場合は、角皿21の通気孔21Cを通して調理室14内で熱風Fが上下に循環し、熱風Fと遠赤外線Rで被調理物Sを前後左右から包み込んで焼き上げることが可能になる。
レンジ加熱の調理メニューを選択した場合、制御手段221は庫内温度分布検出手段105からの検出信号を受けて、被調理物Sが設定した温度に加熱されるように、アンテナ位置検出手段225からの検出信号で、アンテナ69の原点位置を確認しながら、マイクロ波加熱手段231とアンテナ駆動手段233とセンサモータ駆動手段235に適切な制御信号をそれぞれ送出する。これにより、マイクロ波発生装置19のマグネトロンやアンテナモータ66が通電動作して、回転するアンテナ69の表面から発生したマイクロ波が調理室14内に供給され、底壁14bに置かれた被加熱物Sが高周波加熱される。
このレンジ加熱調理時において、センサモータ116の回転軸120は、回転角度が0°の位置(図22に示すように、8個の赤外線検出素子124の視野V1が、調理室14の底壁14bの前後方向の中央に一列に並ぶ状態のとき。)から、時計回り方向(正方向)と反時計回り方向(逆方向)への回転を繰り返し行なう。その結果、本体1の内部で第1センサ115は揺動し、各赤外線検出素子54の視野V1は、図23に示すような移動方向X1に沿って扇状に繰り返しスイングする。このときセンサモータ116の回転軸120は所定の角度で間欠的に回転しており、制御手段221は回転軸120を所定の角度で回転させる毎に、各赤外線検出素子124からの検出信号を取り込んで、調理室14内の任意の位置に置かれた被調理物Sの温度を監視する。こうして各赤外線検出素子124は、実質的に調理室14の底壁14bのほぼ全域から赤外線を受光して、調理室14内に入れられた被調理物Sの温度を検出することが可能になる。
本実施形態では、調理室14の右側壁14dの上部において、第1センサ115が前後方向の後方にではなく中央に設けられており、被調理物Sを底壁14bの前後方向の中央付近に置いたときに、第1センサ115から被調理物Sまでの距離が近づいて、被調理物Sの温度をより正しく検出できる。特に加熱調理時には、習慣的に被調理物Sの中心を調理室14の中央部に一致させて置くことが多いので、本実施形態のような位置に第1センサ115を設けるだけで、自ずと被調理物Sの温度検出精度を向上させることができる。
また本実施形態のセンサモータ116は、所定時間となる例えば5秒間を1周期として第1センサ11を揺動させ、その間に第1センサ115は、1つの赤外線検出素子124につき片道で64か所、往復で128か所の温度を検出する。つまり、8個の赤外線検出素子124を有する第1センサ115をスイングすることで、第1センサ115は1周期当り128×8=1024か所もの温度を測定でき、第1センサ115により広い調理室14の内部温度を広範囲に細かく隅々まで検出できる。
これとは別に、本実施形態では本体1に固定した第2センサ118により、図24に示すような赤外線検出素子134の視野V2に置かれた被調理物Sの温度を連続的に検出する。制御手段221は、少なくともモータ116の回転軸120が所定の角度で回転する毎に、若しくはそれよりも短い時間間隔で、赤外線検出素子134からの検出信号を取り込んで、調理室14内の中央部付近における被調理物Sの温度を監視する。
こうして本実施形態では、8個の赤外線検出素子124を有する第1センサ115からの各検出信号により、調理室14内の温度を広範囲に細かく隅々まで検出すると共に、1個の赤外線検出素子134を有する第2センサ118からの検出信号により、調理室14内の中央部付近の温度を、連続的に検出することが可能になる。制御手段221はこれらの検出信号を受けて、被調理物Sに対して所望のレンジ加熱調理が行われるように、マイクロ波発生装置19の動作を制御する。また異常監視の機能として、被調理物Sの検出温度が通常の範囲を超えている場合は、機器に異常が発生したと判断して、マイクロ波発生装置19への通電を強制的に停止する。何れの場合も、第1センサ115と第2センサ118との併用で、被調理物Sの温度を瞬時に判断することで、結果的に加熱調理の制御や異常監視を正確に行なうことが可能になる。
また本実施形態では、調理室14へのマイクロ波放射手段として、従来よりも大型のアンテナ69を採用している。つまり、本実施形態のような大型のアンテナ69は、直径Arが20cmであるため、アンテナ69を回動させたときに、アンテナ69から放射するマイクロ波をかき回す面積が増加して、調理室14内の隅々にまでマイクロ波を放射させることができる。これは、被調理物Sの加熱ムラを抑えるのに有利である。また、平板状のアンテナ69の表面から調理室14に向けて、どの領域でも均一にマイクロ波が放射されるので、被調理物Sを広範囲にわたりムラなく加熱することができる。
調理室14内に放射されたマイクロ波は、調理室14と扉3との隙間からオーブンレンジの外部に漏れ出そうとする。しかし本実施形態では、扉3に設けられたリッジ144の各寸法d1〜d3を工夫することで、リッジ144による電波の減衰効果を損なうことなく、その漏えい量を評価基準値以下に減衰することが可能になる。
具体的には、本実施形態におけるリッジ144の各寸法d1〜d3は、従来製品と比べてそれぞれ1〜4mm短く、リッジ144に対向するオーブン前板12の上面や側面の幅寸法d4も、4mm〜8mm短く形成されるので、本体1の外形形状を変えることなく、調理室14の横幅寸法Wmや縦幅寸法Wtを大きくすることができる。さらに本実施形態では、導体片152の張出面部156の幅寸法d2を、リッジ144の上辺部144aと他の下辺部144b,左辺部144cおよび右辺部144dで意図的に変えて、上辺部144aにおける幅寸法d2だけを短くすることで、本体1の外形形状を変えることなく、調理室14の横幅寸法Wmよりも縦幅寸法Wtを効果的に大きく形成して、調理室14内の庫内容量を広く確保することが可能となる。
スチーム加熱の調理メニューを選択した場合、制御手段221は蒸気容器検出手段226からの検出信号を受けて、調理室14内に設定した温度の蒸気が供給されるように、ヒータ駆動手段232とポンプ駆動手段236に適切な制御信号をそれぞれ送出する。これにより、蒸気発生装置の給水ポンプや蒸発用ヒータが通電動作し、給水カセット8に貯留した水が蒸発容器内に送り込まれて所定の温度に加熱され、蒸気噴出口33から調理室14の内部に飽和蒸気や過熱蒸気が供給されることで、被調理物Sがスチーム加熱される。
さらに、グリル加熱の調理メニューを選択した場合、制御手段221からの制御信号がヒータ駆動手段232に送出されて、上ヒータ18が通電されることにより、調理室14の上方から被調理物Sが輻射熱で加熱される。
こうした加熱調理では、制御手段221による各部への通電制御に伴い、本体1内部の室外下部空間32に配置した第1発熱部として、熱風モータ29や、マグネトロン64や、制御基板165や、インバータ166の温度が上昇し、また室外側部空間162に配置した第2発熱部として、庫内灯101a,101bや、第1センサ115や、センサモータ116や、第2センサ118や、扉開閉検出手段184の温度が上昇する。そこで本実施形態では、制御手段221から冷風モータ駆動手段238に送出される制御信号により、第1送風ファン164の電動モータ169と第2送風ファン185の電動モータ193を各々通電し、これらの第1発熱部や第2発熱部に冷却風を送風して温度上昇を抑制する。
具体的には、第1送風ファン164の電動モータ169への通電により、ファンケース167の内部で羽根車168が回転すると、オーブンレンジ外部から吸気孔170に取込まれた冷気が、送風孔171から基板取付板組立体174の取入口175に、また別の送風孔172から底部ダクト176の取入口177にそれぞれ送り出される。これにより、基板取付板組立体174内に導かれた冷却風が印刷回路基板165から発する熱を奪い取り、底部ダクト176内に導かれた冷却風がインバータ166から発する熱を奪い取る。また、底部ダクト176内を通過した一部の冷却風は熱風モータ29に達して、この熱風モータ29から発する熱を奪い取り、残りの冷却風は冷風出口178からマグネトロン64に送り出されて、マグネトロン64から発する熱を奪い取る。こうして、制御手段221からの制御信号を受けて、本体1内部の室外下部空間32に配置した第1ファン164が駆動すると、同じ本体1内部の室外下部空間32で、熱風モータ29や、マグネトロン64や、制御基板165や、インバータ166に冷却風を効果的に送風して、これらの発熱部の温度上昇を同時に抑制することができる。
また、第2送風ファン185の電動モータ193への通電により、ファンケース191の内部で羽根車192が回転すると、オーブンレンジ外部から吸気孔194に取込まれた冷気が、送風孔195,196,197から側部ダクト201のダクト基部202に送り出される。これにより、ダクト基部202の冷風出口206から第2センサ118に送り出された冷却風が、第2センサ118から発する熱を奪い取る。また、ダクト基部202からアーム部203に導かれた冷却風が、冷風出口207から扉開閉検出手段184と庫内灯101a,101bに送り出されて、これらの扉開閉検出手段184や庫内灯101a,101bから発する熱を奪い取り、ダクト基部202から別なアーム部204に導かれた冷却風が、冷風出口208から第1センサ115とセンサモータ116に送り出されて、これらの第1センサ115やセンサモータ116から発する熱を奪い取る。こうして、制御手段221からの制御信号を受けて、本体1内部の室外側部空間162に配置した第2ファン185が駆動すると、同じ本体1内部の室外側部空間162で、庫内灯101a,101bや、第1センサ115や、センサモータ116や、第2センサ118や、扉開閉検出手段184に冷却風を効果的に送風して、これらの発熱部の温度上昇を同時に抑制することができる。
このように本実施形態では、本体1の内部において、調理室14の室外下部空間32に配置された熱風モータ29や、マグネトロン64や、制御基板165や、インバータ166を第1送風ファン164で冷却し、調理室14の室外側部空間162に配置された庫内灯101a,101bや、第1センサ115や、センサモータ116や、第2センサ118や、扉開閉検出手段184を、別な第2送風ファン185で冷却することができる。この場合の制御手段211は、第1送風ファン164と第2送風ファン185の駆動を同時に制御してもよいし、別々に制御してもよい。何れにせよ、調理室14の室外下部空間32と室外側部空間162に配置された各発熱部を、2個の送風ファン164,185でそれぞれ冷却するので、室外下部空間32と室外側部空間162との間に、冷却風を導くためダクトを設ける必要がなくなり、各発熱部に最短で効率よく冷却風を送風できる。
以上のように、本実施形態の加熱調理器としてオーブンレンジは、被調理物Sを収容する調理室14を備えた本体1と、本体1の前面に設けられ、調理室14の前面開口を開閉する扉3と、からなり、扉3の周縁部には、調理室14からの電波を減衰する枠状のチョーク構造体としてのリッジ144が設けられ、このリッジ144は、凹状の電波減衰溝となるチョーク溝148と、チョーク溝148の開口側に延設して周期的に配列される導体片152と、を有し、本体1の前面となるオーブン前板12に対向する導体片152の対向部となる張出面部156について、調理室14からの電波漏れ量が、好ましくは電気用品安全法で定められた漏えい電波の電力密度の値以下に設定した評価基準値以下となる範囲で、リッジ144の枠を形成する一つの辺である例えば上辺部144aに設けられた全ての張出面部156の幅寸法d2が、別な辺である下辺部144bや、左辺部144cや、右辺部144dに設けられた全ての張出面部156の幅寸法d2よりも短くなるように形成している。
この場合、調理室14からの電波漏れ量が、基準値となる評価基準値以下となる範囲内で、導体片152の張出面部156の幅寸法d2を、枠状に形成したリッジ144の各辺で同一にではなく、上辺部144aの幅寸法d2を、別な下辺部144bや、左辺部144cや、右辺部144dの幅寸法d2よりも短くすることで、上辺部144aに対向するオーブン前板12の上面の幅寸法d4を、下辺部144bや、左辺部144cや、右辺部144dに対向するオーブン前板12の左右側面や下面の幅寸法d4よりも狭くして、その分だけ本体1の外形寸法を変えずに、調理室14内の庫内容量を大きくすることが可能になる。
また本実施形態では、調理室14に入れられた被調理物Sを、加熱手段である熱風ユニット24により加熱調理するものであって、特に調理室14の内面の屈曲した隅角部となる四隅部55や角部56を、何れも面取り寸法が半径10mm以上のR状に形成している。
この場合、調理室14の内面の隅角部である四隅部55や角部56を角状にせず、半径が10mm以上のR状にすることで、清掃時にクロスが四隅部55や角部56に届きやすくなり、指先を利用して四隅部55や角部56に付着した焦げ付きや汚れを簡単に除去して、調理室14の内面の清掃性をさらに向上させることができる。また、調理室14の内面を構成する天井壁14aのみならず、四隅部55や角部56も丸く形成することで、調理室14の内部で加熱室31から供給された熱風の回りを良くすることができ、被調理物Sの焼きムラを効果的に改善できる。
また本実施形態では、本体1の外郭部材となるキャビネット2の外面に、外方へ突出するリブ211が設けられる。
これにより、オーブンレンジを任意の場所に設置したときに、リブ211が設置壁面に当接した状態であっても、本体1と設置壁面との間には、少なくともリブ211の突出した分だけ所定の空間が確保される。そのため、この空間を利用してオーブンレンジ周辺の熱のこもりを確実に防止することが可能になる。
また本実施形態では、本体1の内部における調理室14の室外下部空間32と室外側部空間162に、第1送風ファン164と第2送風ファン185をそれぞれ配設し、第1送風ファン164からの冷却風を、室外下部空間32に配置した第1発熱部としての熱風モータ29や、マグネトロン64や、制御基板165や、インバータ166に送風する一方で、第2送風ファン185からの冷却風を、室外側部空間162に配置した第2発熱部としての庫内灯101a,101bや、第1センサ115や、センサモータ116や、第2センサ118や、扉開閉検出手段184に送風する構成となっている。
この場合、本体1の内部において、調理室14の室外下部空間32に配置された第1発熱部と、調理室14の室外側部空間162に配置された第2被冷却部を、それぞれ別個の第1送風ファン164と第2送風ファン185で冷却することで、調理室14の室外下部空間32から室外側部空間162に冷却風を導く必要がなくなる。そのため、本体1の内部で限られた調理室14の室外空間に、冷却風を効率的に送風することが可能になる。
その他に実施例上の効果として、本実施形態では、調理室14の内表面に、粒径が1000nm以下である無機成分の粒子59を主体にした塗膜60を形成している。
この場合、調理室14の内表面に形成した塗膜60は、微細な粒子59を主体としたコーティング層なので、その表面に付着した焦げ付きや汚れは塗膜の中に入り込むことができず、四隅部55や角部56の面取り寸法を半径10mm以上のR状に形成することと相俟って、ふき取りにより簡単に除去できる。
また本実施形態のオーブンレンジは、回動可能なアンテナ69から調理室14の内部にマイクロ波を放射することで、その調理室14に入れられた被調理物Sを加熱するものであって、特にアンテナ69はドーム状ではない平板円形状で、調理室14の底壁14bに対向して配置され、アンテナ69の直径を20cm以上に形成している。
この場合、調理室14の底壁14bに対向するアンテナ69をドーム状とせずに平板状に形成し、且つアンテナ69の直径を20cm以上とすることで、アンテナ69を回動させたときに、アンテナ69から放射する電波をかき回す面積が増加し、且つアンテナ69から調理室14に向けて均一に電波が放射される。そのため、被調理物Sを広範囲にムラなく加熱することが可能になり、被調理物Sの温めムラを低減できる。
また、本実施形態のオーブンレンジは、被調理物Sを収容する調理室14と、調理室14の室外後方に加熱室31を有し、この加熱室31から調理室14の内部に熱風を供給する熱風ユニット24とを備えたもので、特に加熱室31の横幅寸法Wkを調理室14の横幅寸法Wmと略同等に形成し、加熱室31の左右端部近傍に熱風の吹出し口17を設けている。
これにより、熱風ファン28を正逆回転させることなく一方向にのみ回転させて、加熱室31から調理室14に向けてより広範囲に熱風を供給でき、調理室14内における被調理物Sの焼きムラを改善できる。
また、本実施形態のオーブンレンジは、被調理物Sを収容する調理室14と、この調理室14の開口部を開閉する回動可能な扉3と、を備えたもので、特に扉3が閉じるに従い当該扉3への制動力を増加させるオイルダンパ88を備えている。
この場合、扉3が閉まるのに従って、扉3への制動力を次第に増加させるオイルダンパ88を装着することで、扉3が完全に閉まる手前で手を離しても、扉3を緩やかに優しく閉じることが可能になる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。例えば扉3の開閉する方向などは、本実施形態のものに限定されず、適宜変更が可能である。