JP2012246169A - 窒化アルミニウム−金属接合基板の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 窒化アルミニウム焼結体基板の表面に付着する離型材などを確実に除去しつつ、金属基板接合後の窒化アルミニウム−金属接合板の抗折強度と熱サイクル特性に優れる窒化アルミニウム−金属接合基板を安定してかつ再現性よく得ることを可能にした製造方法を提供する。
【解決手段】窒化アルミニウム焼結体基板の被処理面に砥粒を衝突せしめて改質した後、上記被処理面に金属基板を接合する方法であって、前記砥粒として、窒化アルミニウム焼結体より高い硬度を有する砥粒を使用し、該砥粒を10〜30体積%の濃度で含有する液体を、前記窒化アルミニウム焼結体基板の被処理面に対して、該被処理面にかかる圧力が0.07〜0.12MPaとなるように噴射する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、各種電子素子の実装基板や回路基板などとして用いられる窒化アルミニウム−金属接合基板の新規な製造方法に関する。
従来から、半導体素子を始めとする各種電子素子を搭載するための基板として、優れた絶縁性、放熱性、機械的特性などを有するセラミックス基板が使用されている。特に、発熱量が大きいパワートランジスタのような高出力型半導体素子やレーザ素子を搭載する基板には、高熱伝導率を有する窒化アルミニウム焼結体基板が多用されている。このような窒化アルミニウム焼結体基板を実装基板や回路基板として使用する場合、その表面に素子搭載部や回路部などを構成する金属層を形成することが不可欠である。また、上記金属層の形成方法として、窒化アルミニウム焼結体基板と金属基板とを、ロウ材を介して接合して接合体を構成する方法が行われている。
ところで、該窒化アルミニウム焼結体基板の製造工程においては、通常、焼結を複数枚の成形体を積み重ねて行うため、基板同士の接着を防止するために離型材(BN粉など)が使用され、これが焼成後に窒化アルミニウム焼結体基板表面に残留する。前記窒化アルミニウム焼結体基板と金属基板との接合において、上記離型材の残存は、窒化アルミニウム焼結体基板と金属基板との接合強度を低下させる等の問題を誘発する。そのため、焼成後の窒化アルミニウム焼結体基板より離型材などの付着物(異物)を除去する程度の清浄化加工、例えば、ホーニング処理のような衝撃力が弱い表面加工を施した後、金属基板との接合を行う方法が提案されている(特許文献1参照)。
上記ホーニング処理は、研磨加工に比べて大量生産性に優れ、衝撃力が少ないため、研磨加工を実施した場合には基板表面に砥石の研削痕が残って特定方向の基板強度が低下するおそれがあるのに対して、基板強度の低下などを招くおそれもなく、金属基板を接合する際の前処理として多用されている。
かかる窒化アルミニウム焼結体基板のホーニング処理には、前記特許文献1に記載されているように、各種の砥粒が使用されるが、ホーニング処理の処理条件によっては基板表面に与えるダメージが大きくなり、窒化アルミニウム焼結体基板の強度や窒化アルミニウム焼結体基板と銅板のような金属基板との接合体(接合基板)の熱サイクル特性などが低下するという問題がある。
上記問題に対して、窒化アルミニウム焼結体基板よりも硬度の低い砥粒を用い、また、砥粒を被処理物に衝突させる際の衝撃力を、前記離型材を除去する程度の最小限に抑えることによって、基板表面に与えるダメージを小さくすることが提案されている(特許文献2参照)。
一方、上記金属基板との接合体を構成する場合、窒化アルミニウム焼結体基板はその機械的特性、特に曲げ強度や破壊靱性値が十分ではなく、更なる向上が求められている。即ち、曲げ強度あるいは破壊靭性値が小さいと、窒化アルミニウム焼結体基板に接合された金属基板によって形成された金属回路層に半導体素子を実装する際の応力や熱などにより窒化アルミニウム焼結体基板が破損したり、半導体素子の作動に伴う熱サイクルの繰り返しによって、前記金属回路層の接合部付近の窒化アルミニウム焼結体基板にクラックが発生し易くなったりし、耐熱サイクル特性及び信頼性が低下するという問題が生じる。
特に、最近のパワーモジュール用セラミックス基板においては、従来以上に厳しい熱サイクル下における使用が多くなってきており、耐熱衝撃性ひいては曲げ強度や破壊靱性値の向上が一層強く求められる状況である。
ところが、前記特許文献1、2に示される従来のホーニング処理の技術によれば、窒化アルミニウム焼結体基板と金属基板との接合強度は強固になるものの、かかるホーニング処理により、得られる接合基板全体の強度や熱サイクル特性などの改善においては、更なる改善の余地があった。
特開2002−171037号公報 特開2005−89265号公報
従って、本発明は、窒化アルミニウム焼結体基板と金属基板との接合強度の向上効果を発揮するのみでなく、更に、高強度で熱サイクル特性に優れた窒化アルミニウム−金属接合基板を安定にかつ再現性よく得ることのできる窒化アルミニウム−金属接合基板の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく研究を重ねた結果、従来は窒化アルミニウム焼結体基板自体の強度低下に繋がると考えられていた処理条件、即ち窒化アルミニウム焼結体基板よりも硬度の高い砥粒を用い、且つ、該砥粒を液体中に特定量存在せしめ、これを特定の圧力で、窒化アルミニウム焼結体基板の被処理面に衝突させることにより、基板表面に付着していた離型材などを確実に除去しつつ、該被処理面の表面に何らかの変化を生じせしめ、金属基板接合後の窒化アルミニウム−金属接合基板において、抗折強度や熱サイクル特性を著しく向上せしめることができることを見出し、本発明を提案するに至った。
即ち、本発明は、窒化アルミニウム焼結体基板の被処理面に砥粒を衝突せしめて改質した後、上記窒化アルミニウム焼結体の被処理面に金属基板を接合するに際し、前記砥粒として、窒化アルミニウム焼結体より高い硬度を有する砥粒を使用し、該砥粒を10〜30体積%の濃度で含有する液体(以下、砥粒を含有する液体を「砥粒スラリー」ともいう。)を、前記窒化アルミニウム焼結体基板の被処理面に対して、該被処理面にかかる圧力が0.07〜0.12MPaとなるように噴射することを特徴とする窒化アルミニウム−金属接合基板の製造方法である。
本発明の窒化アルミニウム−金属接合基板の製造方法において、前記砥粒は、ビッカース硬度が1060を超え、1800以下であることが好ましい。
本発明の窒化アルミニウム−金属接合基板の製造方法によれば、従来のホーニング処理では採用されなかった前記特定の条件と特定の砥粒を選定した砥粒スラリーの噴射により窒化アルミニウム焼結体基板表面を処理(以下、かかる処理を「湿式噴射処理」ともいう。)することにより、従来のホーニング処理では達成することのできない、高い抗折強度と高い耐熱サイクル特性を窒化アルミニウム−金属接合基板に付与することが可能となる。この現象は、かかる湿式噴射処理により窒化アルミニウム焼結体基板自体の強度が若干低下ことなどより、窒化アルミニウム焼結体基板の被処理面に何らかの変化が生じているものと推定される。
また、本発明の方法は、後述するようにノズルから砥粒スラリーを噴出せしめるため、比較的広範囲に均一に処理を行うことができ、処理効率が良く、しかも、本発明の効果を再現性良く発揮することができるため、工業的な実施において有利である。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
(窒化アルミニウム焼結体)
本発明の製造方法で使用する窒化アルミニウム焼結体としては、入手の容易さや所望の形状のものを容易に得ることができるといった理由から窒化アルミニウム焼結体の平均結晶粒径が0.5〜20μm、より好適には2〜7μmの窒化アルミニウム焼結体を使用するのが好適である。このような窒化アルミニウム焼結体は、平均粒子径が0.1〜15μm、好適には0.5〜5μmの窒化アルミニウム原料粉末からなる成形体を焼成することにより得ることができる。
上記成形体は、必要に応じて焼結助剤、有機バインダ等を含んでいてもよい。例えば、焼結助剤としては窒化アルミニウム原料粉末の種類に応じて常用される焼結助剤が特に制限なく使用できる。具体的には、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化エルビウム(Er2O3)、酸化イッテルビウム(Yb2O3)などの希土類金属酸化物、Ca、Ba、Srなどのアルカリ土類金属元素の酸化物などが挙げられ、これらのうちでも特に酸化イットリウムを使用することが好ましい。希土類金属酸化物の配合量は、窒化アルミニウム焼結体粉末に対して1〜10質量%の範囲とすることが好ましい。希土類酸化物の配合量が10質量%を超えると、窒化アルミニウム焼結体の熱伝導率の低下などを招くおそれがある。一方、希土類酸化物の配合量が1質量%未満であると、窒化アルミニウム焼結体の焼結性が低下してポアの増大などを招くおそれがある。
また、有機バインダとしては、ポリビニルブチラール、エチルセルロース類やアクリル樹脂類が使用され、成形体の成形性が良好になるという理由からアクリル樹脂類、ポリビニルブチラールが特に好適に使用される。
本発明で使用する窒化アルミニウム焼結体の形状は、その上にCu板などの金属基板が接合できるような表面を有するものであれば特に限定されず、板状体或いは板状体の一部に切削加工や穿孔加工を施したもの或いは曲面を有する焼結体でも使用することができる。
また、窒化アルミニウム焼結体の大きさは特に限定されず、表面に接合される金属基板の大きさに応じて適宜決定すればよい。
更に、窒化アルミニウム焼結体の厚さは一般的には0.1〜2.0mm、好ましくは0.3〜1.5mm程度とすればよい。窒化アルミニウム焼結体基板の板厚が1.5mmを超えると、熱抵抗が増大して熱サイクルが印加された際に金属基板の剥離などが生じやすくなる。また、窒化アルミニウム焼結体基板の板厚が0.3mm未満であると基板強度の劣化が大きくなると共に、窒化アルミニウム焼結体基板の絶縁耐圧が低下するなどによって、窒化アルミニウム焼結体−金属接合基板の信頼性が低下する。
また、窒化アルミニウム焼結体の表面粗さは特に制限されず、焼結後のそのままの表面であっても良いし、焼結の際に用いた離型材(BNなど)などの付着物(異物)を除去する程度の清浄化加工、例えば、公知のホーニング処理のような表面加工を施した面であっても良いし、研削・研磨加工を施した面であっても良い。
更にまた、本発明において使用する窒化アルミニウム焼結体は、常温での熱伝導率が100W/mK以上、さらには150W/mK以上の放熱性を有していることが好ましい。窒化アルミニウム焼結体の熱伝導率が100W/mK未満であると、半導体素子特にパワートランジスタのような高出力型の半導体素子やレーザ素子などを搭載する基板に求められる放熱性を確保することができず、各種電子素子の実装基板や回路基板などに窒化アルミニウム−金属接合基板を適用することの利点が損なわれてしまう。また、窒化アルミニウム焼結体は1012Ωcm以上の体積抵抗率を有していることが好ましい。
(窒化アルミニウム焼結体基板の表面処理)
本発明の製造方法においては、窒化アルミニウム焼結体より高い硬度を有する砥粒を使用し、該砥粒を10〜30体積%の濃度で含有する液体を、該窒化アルミニウム焼結体基板の被処理面にかかる圧力が0.07〜0.12MPaとなるようにノズルより噴射して該基板の表面を処理することが特徴である。
本発明で用いる砥粒の材質は、窒化アルミニウム焼結体より硬度が高いものであることが本発明の目的を達成するために必要である。即ち、砥粒の硬度が上記範囲より低い場合は、従来のホーニング処理と同様、窒化アルミニウム焼結体基板の表面の付着物の除去は可能であるが、後述する吹付条件との組み合わせによる表面改質が十分でなく、得られる接合体に高い抗折強度と高い耐熱サイクル特性を付与することが困難となる。
砥粒の材質は、窒化アルミニウム焼結体基板の材質である、窒化アルミニウム焼結体より硬度が高いものであれば特に制限されないが、本発明の効果をより発揮するためには、窒化アルミニウム焼結体の硬度より、ピッカース硬度で、50Hvを超える硬度、好ましくは、100Hv以上高い硬度のものが使用される。かかる砥粒の材質としては、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素等を挙げることが出来る。中でも、アルミナが入手が容易であり、工業的に好ましい。
また、前記砥粒の平均粒径は特に制限されないが、30〜70μm、好ましくは、40〜60μmであることが好ましい。即ち、砥粒の粒径が小さすぎると接合基板の強度や熱サイクル特性を向上させる効果が小さくなる傾向にあり、一方、粒径が大きすぎると局所的な衝撃力が増大してダメージが大きくなる傾向がある。
本発明で用いる砥粒は、10〜30体積%の濃度で液体中に含有させた状態で使用される。かかる砥粒の濃度が10体積%未満の場合、接合基板の抗折強度や熱サイクル特性を向上させる効果が不十分となり、砥粒の濃度が30体積%を超えるとノズル孔に詰まりが生じやすくなったり、砥粒の循環不良が起こり易くなったりする。
また、上記液体としては、砥粒を分散することが可能であれば、特に制限されない。例えば、水が代表的であるが、その他にも、アルコール等、有機溶媒の液体が使用可能である。
本発明の製造方法において、前記砥粒スラリーは、該窒化アルミニウム焼結体基板の被処理面に掛かる圧力が0.07〜0.12MPaとなるように噴射することが前記目的を達成するために必要である。
ここで、窒化アルミニウム焼結体基板の被処理面にかかる圧力とは、砥粒スラリーを加圧して、ノズルから噴射させた際の圧力を、被処理面の面積あたりに作用する圧力に換算した値である。具体的には、砥粒スラリーを加圧する圧力をP1[MPa]、砥粒スラリーが噴射されるノズルの開口面積をS1[m2]、砥粒スラリーが作用する面積をS2[m2]とした場合、被処理面の面積あたりに作用する圧力P2[MPa]は下記式で表わされる。
P2=P1×S1/S2
上記被処理面の面積は、砥粒を含む流体が吹き付けられる窒化アルミニウム焼結体基板表面に形成された縞模様を実測することにより、求められる。
尚、本発明の方法において、砥粒を含む液体の噴射に使用する装置は公知のブラスト機等の砥粒噴射装置が特に制限無く使用される。また、かかる装置におけるノズル孔の形状および数も特に制限されないが、処理による表面改質効果や生産性を考慮すると、ノズル孔の開口面積は2〜4mm2であることが好ましく、2.5〜3.5mm2であることがより好ましい。
因みに、本発明の実施例において用いた処理装置では、S1となるノズル開口面積が3mm2に対して、S2となる窒化アルミニウム焼結体基板の被処理面に作用する面積は159mm2であった。
また、砥粒スラリーを窒化アルミニウム焼結体基板の被処理面に噴射する際のノズル−被処理面間距離については、100mm以下であることが好ましく、特に50mm以下であることがより好ましい。上記ノズル−被処理面間距離が100mmよりも大きくなると、被処理面にかかる圧力の分布にムラが生じやすくなったり、接合基板の強度や熱サイクル特性を向上させる効果が不十分となったりするおそれがある。
本発明において、前記窒化アルミニウム焼結体基板の被処理面にかかる圧力が0.07MPa未満の場合、被処理面における変異が十分でなく、窒化アルミニウム焼結体基板の若干の強度低下も起こらず、その結果、得られる接合基板の強度や耐熱サイクル特性を向上させる効果が不十分となる。一方、窒化アルミニウム焼結体基板の被処理面にかかる圧力が0.12MPaを超えると、ノズルに破損が生じて生産性が低下したり、また、窒化アルミニウム焼結体基板の被処理面がダメージを受け過ぎ、例えば、接合強度自体の低下が生じる。
尚、本発明において、上記のような高い硬度を有する砥粒の砥粒スラリーを窒化アルミニウム焼結体基板の被処理面に噴射する方法に対して、空気など気体の加圧流体と共に砥粒を噴射して被処理面に吹き付ける方法は、被処理面において同等の圧力で処理しようとした場合、噴射速度が毎時100km以上となり、砥粒の速度が圧倒的に速いため、離型材などの異物の除去効率は向上するものの、焼結体表面に与えるダメージが大きくなり過ぎ、逆に金属基板を接合した後の耐熱サイクル特性が低下することが懸念される。また、空気など気体の加圧流体で砥粒を加速させる場合において、噴射速度を毎時100km以下にしようとすると、吐出ノズル先端部につまりが発生し易くなるばかりでなく、砥粒による深い当たり斑が発生する等、制御が困難となる。
本発明において、前記砥粒スラリーを被処理面に噴射する時間(処理時間)は、一般に、15秒〜600秒であることが好ましく、15秒〜200秒であることがより好ましい。即ち、処理時間が15秒よりも短い場合、得られる接合基板の強度や耐熱サイクル特性を向上させる効果が不十分となるおそれがある。一方、処理時間が600秒を超えると生産性が低下することが懸念される。
また、上記処理を施す際は、窒化アルミニウム焼結体基板は固定された状態である必要はなく、窒化アルミニウム焼結体基板表面の全面を効率良く、且つ、ムラなく処理するために、複数のノズルが予め配置された処理ゾーンを、該窒化アルミニウム焼結体基板をベルトコンベアなどによって搬送させても良い。また、前記処理は窒化アルミニウム焼結体基板の片面だけを行っても良いし、あるいは、片面ずつを交互に処理して両面を処理しても良く、両面同時に行っても良い。また、窒化アルミニウム焼結体を固定した状態で、ノズルを移動させることによって高速湿式処理を行っても良い。
(金属基板の接合)
本発明において、前記砥粒スラリーを噴射して被処理面を改質された窒化アルミニウム焼結体基板は、かかる被処理表面上に金属基板を接合することによって、窒化アルミニウム焼結体−金属接合基板が得られる。また、前記したように、窒化アルミニウム焼結体基板の処理表面の表面粗さは、JIS B0601−1994で規定される算術平均粗さRaで1.0μm以下であることが好ましい。窒化アルミニウム焼結体基板の処理表面の表面粗さRaが1.0μmを超えると、金属基板との接合強度の低下などを招くおそれがある。
窒化アルミニウム焼結体−金属接合基板を構成する金属基板は、接合基板の使用用途や使用形態などに応じて適宜に選択されるものであり、例えばCuもしくはCu合金板、AlもしくはAl合金板、NiもしくはNi合金板などが使用される。ただし、金属基板はこれらに限定されるものではなく、必要に応じてWやMoなどの高融点金属との合金やクラッド材などを使用してもよい。特に、接合法に活性金属法を適用する場合には、各種の金属材料からなる金属基板を窒化アルミニウム焼結体基板に接合することが可能である。 本発明において、前記金属基板は0.2〜0.4mmの範囲の厚さを有することが好ましい。また、金属基板は回路構造を有しているもの、あるいは単純な板状のいずれでもよい。
なお、前記説明では、便宜的に窒化アルミニウム焼結体基板の一方の基板面のみに金属基板を接合した状態を示したが、窒化アルミニウム焼結体基板の両面に金属基板を接合することもできる。
窒化アルミニウム焼結体基板と金属基板との接合方法は、必ずしも限定されるものではないが、活性金属ろう材層を用いた接合方法を適用することが好ましい。活性金属ろう材層を用いた接合方法(活性金属法)においては、基板表面の性状が接合基板の強度や熱サイクル特性などに対して大きな影響を及ぼすことから、特に本発明の製造方法を適用することで健全な窒化アルミニウム焼結体−金属接合基板を得ることができる。活性金属法以外には、窒化アルミニウム焼結体基板とCu板とを加熱処理により直接接合するDBC法を適用することも可能であるが、DBC法の場合には窒化アルミニウム焼結体基板の表面に酸化膜を形成することが一般的であるため、基板表面の性状がそれほど影響しない。このように、本発明は活性金属法を適用した窒化アルミニウム焼結体−金属接合基板の製造方法に対して好適である。
活性金属ろう材層には、例えばTi、Zr、Hf、Nb、Alなどから選ばれる少なくとも1種の活性金属を、Ag−Cuの共晶組成(72wt%Ag−28wt%Cu)もしくはその近傍組成のAg−Cu系ろう材やCu系ろう材などのろう材成分に配合した活性金属ろう材を適用することが好ましい。活性金属ろう材中の活性金属量は、ろう材の全量に対して0.5〜10重量%の範囲とすることが好ましい。活性金属ろう材は適量のSnやIn(例えばろう材の全量に対して2〜7重量%)などを含んでいてもよい。このような活性金属ろう材の塗布層などを介して窒化アルミニウム焼結体基板と金属基板とを積層し、この積層物を例えば700〜900℃程度の温度で熱処理することによって、窒化アルミニウム焼結体−金属接合基板が得られる。接合時の熱処理は不活性雰囲気中や真空中で実施することが好ましい。
上述したような製造方法により得られる窒化アルミニウム焼結体−金属接合基板は、窒化アルミニウム焼結体基板の基板表面、すなわち湿式噴射処理を施した処理面の性状に基づいて、高接合強度と優れた耐熱サイクル特性を有するものである。
次に、本発明の具体的な実施例およびその評価結果について述べる。
尚、後述の実施例および比較例において、金属基板接合前の表面改質窒化アルミニウム焼結体基板について、まず表面粗さおよび曲げ強度を測定した。窒化アルミニウム焼結体基板の抗折強度は10枚(n=10)の窒化アルミニウム焼結体に対して、3点曲げ試験を行い、その平均値にて評価した。
次に、窒化アルミニウム−金属接合基板については、熱サイクル後の窒化アルミニウム−金属接合基板の抗折強度の測定、および、熱サイクル特性の測定、評価を実施した。熱サイクル後の窒化アルミニウム−金属接合基板の抗折強度は、10枚(n=10)の該接合基板に対して、380℃×10分を1サイクルとする熱サイクル試験を3回繰返した後の3点曲げ試験を行い、その平均値にて評価した。
また、熱サイクル特性は、10枚の窒化アルミニウム焼結体−Cu接合基板に対して、380℃×10分を1サイクルとする熱サイクル試験を35回繰返した後、クラックの発生枚数に基づく合格率により評価した。
熱サイクル特性評価の合格率が100%であるということはクラックの発生が皆無であることを意味し、一方合格率が0%であるということは窒化アルミニウム焼結体基板の全数にクラックが発生していたことを意味する。
実施例1
まず、平均粒径が1.0μmの窒化アルミニウム粉末に対して、焼結助剤として平均粒径が1.0μmのY2O3粉末を5.0質量部加え、さらに適量の有機バインダと溶媒などを加えて混合してスラリー状とした。この原料スラリーをドクターブレード法により板状に成形した。このような窒化アルミニウム成形体を複数枚用意し、これら複数枚の窒化アルミニウム成形体を各成形体間にBN粉(離型材)を介在させて重ね合わせた。
この状態で、この窒化アルミニウム成形体を530℃の温度で脱脂した。次に、脱脂後のこれら窒化アルミニウム脱脂体を窒素ガス雰囲気中にて1760℃×5時間の条件で焼成することによって、窒化アルミニウム焼結体基板(熱伝導率=170W/mK、体積抵抗率=1012Ωcm、板厚0.635mm)を作製した。
次いで、得られた窒化アルミニウム焼結体の両面(全表面)に、砥粒スラリーとして、平均粒径が50μm(粒度=#280)のアルミナ(組成:Al2O3)砥粒が20体積%の濃度で含有された水を、0.5MPaの圧力で加圧し、該窒化アルミニウム焼結体被処理面にかかる圧力が0.09MPaとなるようにノズルより噴出せしめることにより、焼結体表面を100秒間、湿式噴射処理することによって表面改質窒化アルミニウム焼結体基板を得た。
次に、上記表面改質窒化アルミニウム焼結体基板の両面に活性金属ろう材ペーストを塗布した後、厚さ0.3mmのCu板をそれぞれ配置し、この積層物を真空雰囲気中にて800℃×0.5時間の条件で熱処理して、窒化アルミニウム焼結体基板とCu板とを活性金属ろう材を介して接合することによって、目的とする窒化アルミニウム焼結体−Cu接合基板を得た。このような窒化アルミニウム焼結体−Cu接合基板を後述する特性評価に供した。
なお、活性金属ろう材ペーストにはTiを4.0質量%含有するAg−Cu共晶ろう材(活性金属ろう材)に適量の有機バインダと溶媒を加えてペースト化したものを使用し、このような活性金属ろう材ペーストを塗布厚が30μmとなるように、表面改質窒化アルミニウム焼結体基板の両面にスクリーン印刷した。
実施例2
上述した実施例1において、窒化アルミニウム焼結体基板の湿式噴射処理に、アルミナ砥粒が含有された水を0.4MPaの圧力で加圧し、窒化アルミニウム焼結体の被処理面にかかる圧力が0.08MPaとなるようにした以外は、実施例1と同様に窒化アルミニウム焼結体−Cu接合基板を作製した。
比較例1
上述した実施例1において、窒化アルミニウム焼結体の湿式噴射処理に、アルミナ砥粒が含有された水を0.3MPaの圧力で加圧し、窒化アルミニウム焼結体の被処理面にかかる圧力が0.06MPaとなるようにした以外は、実施例1と同様に窒化アルミニウム焼結体−Cu接合基板を作製した。
比較例2
上述した実施例1において、窒化アルミニウム焼結体の湿式噴射処理に、アルミナ砥粒が含有された水を0.2MPaの圧力で加圧し、窒化アルミニウム焼結体の被処理面にかかる圧力が0.04MPaとなるようにした以外は、実施例1と同様に窒化アルミニウム焼結体−Cu接合基板を作製した。
比較例3
上述した実施例1において、窒化アルミニウム焼結体の湿式噴射処理に、平均粒径60μmのジルコン砥粒を用い、ジルコン砥粒が含有された水を0.4MPaの圧力で加圧し、窒化アルミニウム焼結体の被処理面にかかる圧力が0.08MPaとなるようにした以外は、実施例1と同様に窒化アルミニウム焼結体−Cu接合基板を作製した。
比較例4
上述した実施例1において、窒化アルミニウム焼結体の湿式噴射処理に、平均粒径60μmのジルコン砥粒を用い、ジルコン砥粒が含有された水を0.2MPaの圧力で加圧し、窒化アルミニウム焼結体の被処理面にかかる圧力が0.04MPaとなるようにした以外は、実施例1と同様に窒化アルミニウム焼結体−Cu接合基板を作製した。
比較例5
上述した実施例1において、窒化アルミニウム焼結体基板の湿式噴射処理の代わりに敷粉を除去する目的で超音波水洗を実施したこと、および、超音波水洗後の窒化アルミニウム焼結体基板とCu板を活性金属ろう材を介して接合しなかったこと以外は、実施例1と同様に窒化アルミニウム焼結体を作製した。
比較例6
上述した実施例1において、窒化アルミニウム焼結体基板の湿式噴射処理を実施せずにラップ研磨を実施したこと、および、ラップ研磨後の窒化アルミニウム焼結体基板とCu板を活性金属ろう材を介して接合しなかったこと以外は、実施例1と同様に窒化アルミニウム焼結体を作製した。
Figure 2012246169
表1に示したように、実施例1、2による窒化アルミニウム焼結体は、被処理物である窒化アルミニウムよりも硬度の高いアルミナ砥粒を、従来よりも高い衝撃力で衝突させているため、表面粗さが小さくなっていることが分かる。また、実施例1、2による窒化アルミニウム焼結体−Cu接合基板は、窒化アルミニウム焼結体表面の改質効果も高いため窒化アルミニウム焼結体−Cu接合基板の抗折強度および熱サイクル特性が優れていることが分かる。一方、弱い衝撃力でアルミナ砥粒を衝突させて湿式噴射処理を実施した比較例1、2では、窒化アルミニウム焼結体表面の改質効果が低いため窒化アルミニウム焼結体−Cu接合基板の抗折強度および熱サイクル特性が共に劣っている。更に、窒化アルミニウムよりも硬度の低いジルコン砥粒を用いて湿式噴射処理を行った比較例3、4においては、窒化アルミニウム焼結体表面の表面粗さが大きく、窒化アルミニウム焼結体−Cu接合基板の抗折強度および熱サイクル特性の向上が不十分となっていることが分かる。

Claims (4)

  1. 窒化アルミニウム焼結体基板の被処理面に砥粒を衝突せしめて改質した後、上記窒化アルミニウム焼結体の被処理面に金属基板を接合するに際し、前記砥粒として、窒化アルミニウム焼結体より高い硬度を有する砥粒を使用し、該砥粒を10〜30体積%の濃度で含有する液体を、前記窒化アルミニウム焼結体基板の被処理面に対して、該被処理面にかかる圧力が0.07〜0.12MPaとなるように噴射することを特徴とする窒化アルミニウム−金属接合基板の製造方法。
  2. 前記砥粒のビッカース硬度が1060を超え、1800以下であり、平均粒径が30〜70μmの無機粒子である請求項1記載の窒化アルミニウム−金属接合基板の製造方法。
  3. 前記液体が水である請求項1記載の窒化アルミニウム−金属接合基板の製造方法。
  4. 前記窒化アルミニウム焼結体と金属基板との接合を、融点700〜900℃のロウ材を介して行う請求項1記載の窒化アルミニウム−金属接合基板の製造方法。
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