JP2012244838A - 回転電機用ロータ、回転電機、および、回転電機用ロータの製造方法 - Google Patents

回転電機用ロータ、回転電機、および、回転電機用ロータの製造方法 Download PDF

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英治 柳田
Yoshitada Yamagishi
義忠 山岸
Shinya Sano
新也 佐野
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Abstract

【課題】絶縁皮膜処理されていない磁石を用いながら磁石を介しての渦電流損失を抑制するとともに、磁束漏れの低減により出力低下を抑制できる回転電機用ロータを提供する。
【解決手段】回転電機用ロータのロータコア12に形成された磁石挿入穴32内に、永久磁石26が挿入配置されている。永久磁石26は、一方表面が第1極性に着磁されるとともに他方表面が第1極性とは異なる第2極性に着磁されている。永久磁石26の一方表面および他方表面と磁石挿入穴32の内壁面との間に設けられた電気絶縁性の接着層34によって永久磁石26が磁石挿入穴32内に固定され、接着層34には高透磁率の材料が混合されている。また、永久磁石26の側面のうち上記一方表面および前記他方表面以外の側面と磁石挿入穴の内壁面との間に低透磁率領域である空隙部が形成されている。
【選択図】図3

Description

本発明は、回転電機用ロータ、回転電機、および、回転電機用ロータの製造方法に係り、特に、永久磁石を内蔵する回転電機用ロータ等に関する。
従来、電動機や発電機等の回転電機において、永久磁石埋め込み型のロータが知られている。このようなロータでは、円筒状磁性体からなるロータコアにおいて外周面近傍の内部に磁石挿入穴が軸方向に延びて形成されており、この磁石挿入穴内に永久磁石を挿入して樹脂材料で接着固定することが行われている。
例えば、特開2002−272033号公報(特許文献1)には、少なくともマグネット表面の表面粗さ測定における最大高さの2倍以上の粒径の非導電性の粒子を混合した樹脂材料をマグネットとロータコアとの間に充填してマグネットを接着固定した永久磁石式同期モータのロータが開示されている。ここで、上記樹脂材料には、上記非導電性の粒子のほかに、この非導電性の粒子よりも細かい高透磁率材料のフィラーを混合して、樹脂層部分の透磁率を高めてもよいことが記載されている(請求項4、段落0056、図5,6等)。
特開2002−272033号公報
上記特許文献1に記載されるロータのように、マグネットとロータコアとの隙間に高透磁率材料のフィラーを混合した樹脂材料をマグネットの全周囲にわたって充填すると、マグネットの周方向端部において磁束がマグネット表裏面で短絡しやすくなり、磁束漏れを助長することになる。そうすると、ロータ外周へと向かうマグネット磁束量が低下し、モータのトルク出力の低下につながる。
本発明の目的は、絶縁皮膜処理されていない磁石を用いながら磁石を介しての渦電流損失を抑制するとともに、磁束漏れの低減により出力低下を抑制できる回転電機用ロータ、回転電機、および回転電機用ロータの製造方法を提供することにある。
本発明に係る回転電機用ロータは、ロータコアに形成された磁石挿入穴内に磁石が配置されている回転電機用ロータであって、前記磁石は、一方表面が第1極性に着磁されるとともに、他方表面が前記第1極性とは異なる第2極性に着磁されており、前記磁石の一方表面および他方表面と前記磁石挿入穴の内壁面との間に設けられた電気絶縁性の接着層によって前記磁石が前記磁石挿入穴内に固定され、前記接着層には当該接着層を構成する樹脂材料よりも高透磁率の材料が混合されており、前記磁石の側面のうち前記一方表面および前記他方表面以外の側面と前記磁石挿入穴の内壁面との間に前記接着層よりも低透磁率の領域を形成したものである。
本発明に係る回転電機用ロータにおいて、前記接着層は、前記ロータコアへの磁石挿入前に前記磁石の一方表面および他方表面にそれぞれ貼着された接着シートにより構成されるのが好ましい。
また、本発明に係る回転電機用ロータにおいて、前記低透磁率領域は、前記磁石挿入穴に連通するが前記接着層が設けられない空隙部により形成されてもよい。
また、本発明に係る回転電機用ロータにおいて、前記接着層には発泡剤が混合されていてもよい。
本発明の別の態様である回転電機は、上記いずれかの構成を有するロータと、前記ロータの周囲に設けられたステータとを備える。
さらに、本発明の更に別の態様である回転電機用ロータの製造方法は、磁石挿入穴が形成されたロータコアと、一方表面が第1極性に着磁されるとともに他方表面が前記第1極性とは異なる第2極性に着磁された磁石とを準備する準備工程と、前記磁石の一方表面および他方表面に、磁性粉を混合した絶縁性の接着シートをそれぞれ貼着する貼着工程と、前記接着シートが貼着された磁石を前記ロータコアの磁石挿入穴に挿入して配置する埋設工程と、前記接着シートを構成する接着材料を硬化させる接着工程と、を含む。
本発明に係る回転電機用ロータ、回転電機、および回転電機用ロータの製造方法によれば、磁石に絶縁皮膜処理が施されていない場合であっても、磁石の両面に設けた接着層により磁石とローコアとの間が電気絶縁されるため磁石を介して渦電流ループ経路が大きく形成されるのを防止することができ、これにより渦電流損失を抑制することができる。
また、接着層に高透磁率材料を混合したことによって接着層の透磁率を高めるとともに、このような接着層が設けられた磁石表面以外の側面に面して低透磁率領域を形成したことにより、接着層の磁気抵抗の低減および磁石の漏れ磁束の低減により磁石からロータ外周へと出る磁束量の低下を抑制できる。
したがって、これらのことから磁石埋め込み型ロータにおいて、絶縁皮膜処理を不要にしてコスト低減を図りながら、渦電流損失および漏れ磁束の抑制により出力向上を図れる。
本発明の一実施の形態である回転電機用ロータの軸方向に沿う断面図である。 図1に示すロータコアの軸方向端面を示す図である。 図2に示すロータコアの1つの磁極を拡大して示す図である。 永久磁石の表面に接着シートが貼着される様子を示す斜視図である。 絶縁皮膜処理がされていない永久磁石の表面を介してロータコアを構成する磁性鋼板に渦電流が流れる様子を模式的に示す図である。 絶縁皮膜処理がされていない永久磁石とロータコアとが絶縁性樹脂層を介して電気絶縁される様子を示す図である。 磁性粉または磁性粒子を永久磁石の全周囲に充填した状態を示す図3と同様の図である。 磁石挿入穴の両側に入れ子型を挿入した状態で樹脂材料を充填する様子を示す拡大断面図である。
以下に、本発明に係る実施の形態(以下、実施形態という)について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
図1は、本実施形態の回転電機用ロータ(以下、単にロータという)10の軸方向に沿う断面図である。ロータ10の周囲には図示しない筒状のステータが所定のギャップを隔てて設けられて、回転電機が構成される。ステータの内周には、複数のティースが円周方向に等間隔で且つ径方向内側へ向かって突設されており、隣り合うティース間には、それぞれ、ティースと同数のスロットが内周側と軸方向両端で開口して形成されている。そして、スロットには、ティースの周囲に巻回されるステータコイルが挿入配置される。これにより、ステータコイルに通電されると、ロータ10を回転駆動させる回転磁界がステータの内側に形成されることになる。
ロータ10は、径方向中心部にシャフト穴23を有する円柱状または円筒状のロータコア12と、ロータコア12のシャフト穴23を貫通して固定されるシャフト14と、矢印Xで示すシャフト14(およびロータコア12)の軸方向に関してロータコア12の両側に接して配置されるエンドプレート16と、ロータコア12およびエンドプレート16をシャフト14上に固定する固定部材18とを備える。
ロータコア12は、例えば板厚0.3mmの珪素鋼板等を円環状に打ち抜き加工してそれぞれ形成された多数の電磁鋼板を軸方向に積層して構成されている。ロータコア12を構成する各電磁鋼板は、ロータコア12を軸方向に複数分割したブロックごとに又は全て一括してカシメ、接着、溶接等の方法によって一体に連結されている。
また、ロータコア12には複数の磁極24(図2参照)が周方向に均等な間隔で設けられている。各磁極24は1つ又は複数の永久磁石を含んで構成されるが、その詳細については後述する。さらに、ロータコア12は、締り嵌めによる固定またはキー嵌合によってシャフト14上での周方向位置が決められている。
シャフト14は、例えば丸棒鋼材から形成されており、その外周には径方向外側へ突出するフランジ部15が形成されている。このフランジ部15は、ロータ10が組み立てられる際にエンドプレート16に当接してシャフト14でのロータコア12の軸方向位置を決める当り部として機能する。
エンドプレート16は、ロータコア12の軸方向端面とほぼ同じ外形状の円板によって構成される。エンドプレート16は、例えばアルミニウム、銅等の非磁性金属材料により好適に形成されている。ここで非磁性金属材料とするのは、磁極を構成する永久磁石の軸方向端部における磁束の短絡を抑制するためである。ただし、非磁性材料であれば金属材料に限定されるものではなく、樹脂材料で形成されてもよい。また、エンドプレート16をロータコア12よりも小径化するか又は省略することにより、コスト低減を図ってもよい。
固定部材18は、円筒状をなすかしめ部20と、かしめ部20の一方端部から径方向外側へ突出する押え部22とを含む。固定部材18は、その押え部22によってロータコア12および2枚のエンドプレート16を上記フランジ部15に向かって押圧した状態で、かしめ部20がシャフト14に対してかしめられることによってシャフト14上に固定される。これにより、ロータコア12がエンドプレート16と共にシャフト14に対して固定されることになる。ただし、固定部材18は、シャフト14上にかしめ固定されるものでなくてもよく、例えば溶接、ネジ止め等の他の固定方法によって固定されてもよい。
次に、図2,3を参照して、ロータコア12の構成について説明する。図2は、ロータコア12の軸方向端面を示す図であるが、ロータコア12における軸方向に垂直な断面の構成もこれと同様である。また、図3は、図2中の1つの磁極24を拡大して示す図である。
円柱状の外形をなすロータコア12の中心部には、シャフト14を挿入して固定するためのシャフト穴23が貫通して形成されている。ロータコア12がシャフト14に締り嵌めによって固定される場合、図2に示すようにシャフト穴23は円形であってその縁部にキーは形成されていない。ただし、ロータコア12がキー嵌合を介してシャフト14に取り付けられる場合、シャフト穴23の縁部にキー(またはキー溝)が突設(または凹設)されることになる。
ロータコア12の外周部には、複数の磁極24が周方向に等間隔で設けられている。本実施形態では、8つの磁極24が周方向に45°間隔で設けられている例を示す。各磁極24は、永久磁石26の着磁方向を除いて同一構成であるため、以下においては1つの磁極24について説明する。
1つの磁極24には、一対の永久磁石26が配置されている。一対の永久磁石26は、ロータコア12の外周面13近傍の内部に埋設されている。図3に示すように、磁極24に含まれる2つの永久磁石26は、同じ形状および大きさを有している。すなわち、永久磁石26は、各2つの短辺側面および長辺側面を有する扁平長方形の軸方向端面(および断面)を有するとともに、ロータコア12と略同一の軸方向長さに形成されている。ただし、これに限定されるものではなく、2つの永久磁石26の形状または大きさが異なっていてもよい。
磁極24内において一対の永久磁石26は、それぞれ、磁石挿入穴32内に挿入および固定されて埋設されている。これにより、2つの永久磁石26は、ロータコア12の外周面13へ向かって互いに間隔が広がるように略V字状に配置されている。また、一対の永久磁石26は、周方向磁極中心位置を通る径方向線である磁極中心線Cに対して両側に対称に配置されている。ただし、これに限定されるものではなく、一対の永久磁石26が磁極中心線Cに対して非対称に配置されてもよい。また、1つの磁極24は、1つの永久磁石だけを含んで構成されてもよいし、あるいは、3つ以上の永久磁石を含んで構成されてもよい。
本実施形態における永久磁石26は、2つの長辺側面のうち径方向外方側の一方表面側が第1極性に着磁されるとともに、径方向内方側の他方表面側が上記第1極性とは異なる第2極性に着磁されている。具体的には、或る磁極24に含まれる一対の永久磁石26は、径方向外方側の一方表面側がN極性に着磁され、他方表面側がS極性されており、周方向に隣り合う別の磁極24の一対の永久磁石26は、径方向外方側の一方表面側がS極性に着磁され、他方表面側がN極性されている。したがって、永久磁石26では、2つの長辺側面に直交する厚み方向が着磁方向となり、2つの短辺側面が着磁方向に沿った側面となっている。
永久磁石26は、ロータコア12内に軸方向に延伸して形成された磁石挿入穴32内に挿入されて配置されている。永久磁石26は、2つの長辺側面と磁石挿入穴32の内壁面との間に介在する接着層34によって接着固定されている。永久磁石26には、電気絶縁性処理が施されていないものを用いることができる。これにより、永久磁石26の製造工数およびコストを低減できる。
接着層34は、図4に示すように、磁石挿入穴32に永久磁石26が挿入される前に、永久磁石26の長辺側面26a,26b上にそれぞれ貼着された接着シート36によって好適に構成される。接着シート36は、例えば、絶縁性フィルム基材の表裏面にエポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化型樹脂材料からなる接着剤をそれぞれ塗布した両面テープのような構造を有している。
なお、接着シート36は、上記のような三層構造のものに限定されるのもではなく、貼着作業での取扱いが容易であること等を条件に一層構造の接着シートであってもよいし、二層構造であってもよいし、あるいは、四層以上の層構造を有していてもよい。
また、接着層34に用いられる接着剤は、熱硬化型樹脂材料からなるものに限定されず、熱可塑性樹脂材料からなる接着剤が用いられてもよい。
さらに、接着層34を構成する接着シート36には、発泡剤が混合されていてもよいし、あるいは、発泡層が接着剤層またはフィルム基材に積層して形成されていてもよい。このようにすれば、接着層34の硬化工程における加熱処理時に、発泡剤が膨張することによって永久磁石26の両側面26a,26bとロータコア12の内壁面との間をより確実に隙間なく埋めることができ、永久磁石26の接着固定強度を高めることができる。
さらにまた、接着シート36は、図4において永久磁石26よりも若干小さく示されているが、永久磁石26の側面26a,26bと同等のサイズに形成されてもよいことは勿論である。
接着層34を構成する接着剤には、該接着剤をなす樹脂材料よりも高透磁率の材料が混合されている。この高磁性材料には、例えばアトマイズ処理された珪素鋼粉等の磁性粒子または磁性粉末が好適に用いられる。このような磁性粒子の粒径は、例えば、レーザー回析型粒子測定装置等によって測定され、10〜50μmが適当である。また、接着層34に含まれる高透磁率材料の割合(例えば、体積%)は、ロータコア12に対する永久磁石26の接着強度を確保できることを前提として、より多く設定されるのが好ましい。これにより、永久磁石26をしっかりと接着固定しながら、接着層34の透磁率を高めることにより通過磁束量の増加ひいてはモータ出力の向上を図れる。
磁石挿入穴32は、周方向両側において拡張されている。より詳しくは、磁石挿入穴32の周方向両側の端部には、永久磁石26の短辺側面26c,26dから外側へ拡張されたポケット部33a,33bが磁石収納部33cに連通して形成されている。そして、ポケット部33a,33b内は、接着層34よりも透磁率が低い空隙部(低透磁率領域)とされている。このように永久磁石26の着磁方向に沿う短辺側面26c,26dに対向して低透磁率領域を設けることにより、永久磁石26の周方向端部における表裏面間での磁束Fの漏れや短絡を効果的に抑制することができ、これによっても永久磁石26からロータ外周へと向かう磁束量の低減を抑制してモータ出力の向上に寄与することができる。
図5は、絶縁皮膜処理が施されていない導電線の永久磁石26が磁石挿入穴32の内壁面に接触固定されたときの状態を示す図である。この場合、図5中の一点差線領域Bで示されるように、永久磁石26のロータコア12との接触表面26aが、互いに絶縁状態で積層されている電磁鋼板と導通した状態になることで磁石表面26aを介して流れる渦電流のループ経路が大きく形成されることとなり、その分、変動磁界中を回転するロータにおける渦電流損失が大きくなってトルク発生効率が悪くなる。
これに対して、図6に示すように、ロータコア12の磁石挿入穴32内に永久磁石26を挿入して配置した後、絶縁性の樹脂材料を穴内壁面との間の隙間に注入して接着層35aを形成し、これにより永久磁石26とロータコア12との電気絶縁を図ることが考えられる。これにより、永久磁石26を介して発生する渦電流損失を低減できる効果が見込める。しかしながら、この場合、接着層35aが磁気抵抗となって磁束量の低下を招き、所望のトルクを得るにはより強力な磁石、または、より大きな磁石を用いなければならず、ロータひいては回転電機のコスト増加または大型化につながる。
また、図7に示すように、永久磁石26の周囲全体に磁性材料を混合した樹脂材料35bを充填すると、永久磁石26の周方向端部において磁束Fmがマグネット表裏面で短絡しやすくなって磁束漏れを助長することになり、その結果、ロータ外周へと向かう磁石磁束量が低下してモータ出力の低下につながる。
これに対し、本実施形態のロータ10では、永久磁石26の着磁方向の側面26a,26bに高透磁率材料が混合された接着シート36を貼着した後、永久磁石26をロータコア12内に挿入して接着固定するものであり、かつ、永久磁石26の着磁方向に沿う側面26c,26dに対向する位置に低透磁率領域を形成してあるから、接着層34の磁気抵抗の低減および磁石の漏れ磁束の低減により永久磁石26からロータ外周へと出る磁束量の低下を抑制できる。
また、永久磁石26が絶縁皮膜を有しない場合でも、ロータコア12との間は絶縁性の接着層34によって確保されているので、渦電流損失の発生を抑制できるとともに、永久磁石26の製造工数およびコストの低減を図れる。
さらに、永久磁石26に予め貼着される接着シート36は、厚さ及び絶縁性能の管理が容易であることから、永久磁石26とロータコア12との間の絶縁性を確実に得ることができるとともに、永久磁石26におけるロータコア12に対する接着位置を容易かつ正確に規定することができる。
したがって、これらのことから本実施形態によれば、磁石埋め込み型ロータ10において、永久磁石の絶縁皮膜処理を不要にしてコスト低減を図りながら、渦電流損失および漏れ磁束の抑制により回転電機の出力向上を図れる。
次に、本実施形態のロータ10の製造方法について説明する。
まず、磁石挿入穴32が形成されたロータコア12と、磁石挿入穴32に挿入される永久磁石26を準備する。永久磁石26は、一方表面26aが第1極性(例えば、N極性)に着磁されるとともに他方表面26bが第1極性とは異なる第2極性(例えば、S極性)に着磁されている。
続いて、永久磁石26の一方表面26aおよび他方表面26bに、磁性粉を混合した絶縁性の接着シート36をそれぞれ貼着する。
次に、接着シート36が貼着された永久磁石26をロータコア12の磁石挿入穴32に挿入して埋設する。このとき、磁石挿入穴32の幅は、永久磁石26の厚み(短辺側面26c,26dの長さに相当する)に2枚分の接着シート36の厚みを加えた寸法よりも若干大きく設定されている。したがって、接着シート36の外側表面と磁石挿入穴32の内壁面との間に例えば0.1mm程度の隙間をもって永久磁石26を挿入することが可能になっている。
続いて、接着シート36を構成する接着材料を硬化させる。接着材料に熱硬化型樹脂材料が用いられている場合には、永久磁石26を組み込んだロータコア12を加熱処理することにより接着材料を硬化させて接着層34を形成する。この際、接着材料が硬化する過程において若干膨張することにより、磁石挿入時に形成されている接着シート36と磁石挿入穴32の内壁面との間の隙間が完全に埋められて、永久磁石26がロータコア12に対して接着固定される。あるいは、溶剤を含む接着剤が用いられている場合には、自然乾燥等の乾燥工程によって接着層を硬化させるようにしてもよい。
なお、本発明に係るロータは、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更または改良が可能である。
例えば、上記実施形態では、接着層34が永久磁石26に予め貼着される接着シート36により構成されるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、図8に示すように、磁石挿入穴32に永久磁石26を挿入した後に、ロータコア12との間に磁性材料を混合した樹脂材料を充填して接着層40を形成してもよい。この場合、磁石挿入穴32のポケット部33a,33bに樹脂材料が入り込まないようにするために、棒状又は軸状の挿入型42a,42bを予め挿入して塞いだ状態にしておけばよい。これによっても、ロータコア12に対する永久磁石26の接着固定位置を正確に規定して低透磁率領域を確保することができる。
また、上記実施形態では、永久磁石26の周方向両側に形成される低透磁率領域が空隙部により構成されるものと説明したが、これに限定されるものではなく、例えば磁性材料が混合されていない樹脂材料をポケット部33a,33bに充填してもよい。これにより、永久磁石26が短辺側面26c,26d上においてもロータコア12に対してしっかりと接着固定され、永久磁石26の接着固定強度をより高めることができる。
さらに、上記実施形態では、表面に絶縁皮膜処理が施されていない永久磁石を用いることを前提に説明したが、本発明では絶縁皮膜処理された永久磁石が用いられてもよいし、あるいは、表面に導電性の防錆用めっき処理が施された永久磁石が用いられてもよい。
10 回転電機用ロータ、12 ロータコア、13 外周面、14 シャフト、15 フランジ部、16 エンドプレート、18 固定部材、20 かしめ部、22 押え部、23 シャフト穴、24 磁極、26 永久磁石、26a 長辺側面または一方表面、26b 長辺側面または他方表面、26c,26d 短辺側面、32 磁石挿入穴、33a,33b ポケット部、33c 磁石収納部、34,40 接着層、36 接着シート、40 接着層,42a,42b 挿入型、F 磁束、Fm 漏れ磁束。

Claims (6)

  1. ロータコアに形成された磁石挿入穴内に磁石が配置されている回転電機用ロータであって、
    前記磁石は、一方表面が第1極性に着磁されるとともに、他方表面が前記第1極性とは異なる第2極性に着磁されており、
    前記磁石の一方表面および他方表面と前記磁石挿入穴の内壁面との間に設けられた電気絶縁性の接着層によって前記磁石が前記磁石挿入穴内に固定され、前記接着層には当該接着層を構成する樹脂材料よりも高透磁率の材料が混合されており、
    前記磁石の側面のうち前記一方表面および前記他方表面以外の側面と前記磁石挿入穴の内壁面との間に前記接着層よりも低透磁率の領域を形成した、
    回転電機用ロータ。
  2. 請求項1に記載の回転電機用ロータにおいて、
    前記接着層は、前記ロータコアへの磁石挿入前に前記磁石の一方表面および他方表面にそれぞれ貼着された接着シートにより構成されることを特徴とする回転電機用ロータ。
  3. 請求項1または2に記載の回転電機用ロータにおいて、
    前記低透磁率領域は、前記磁石挿入穴に連通するが前記接着層が設けられない空隙部により形成されることを特徴とする回転電機用ロータ。
  4. 請求項1ないし3のいずれか一項に記載の回転電機用ロータにおいて、
    前記接着層には発泡剤が混合されていることを特徴とする回転電機用ロータ。
  5. 請求項1ないし4のいずれか一項に記載のロータと、
    前記ロータの周囲に設けられたステータと、を備える回転電機。
  6. 磁石挿入穴が形成されたロータコアと、一方表面が第1極性に着磁されるとともに他方表面が前記第1極性とは異なる第2極性に着磁された磁石とを準備する準備工程と、
    前記磁石の一方表面および他方表面に、磁性粉を混合した絶縁性の接着シートをそれぞれ貼着する貼着工程と、
    前記接着シートが貼着された磁石を前記ロータコアの磁石挿入穴に挿入して配置する埋設工程と、
    前記接着シートを構成する接着材料を硬化させる接着工程と、
    を含む回転電機用ロータの製造方法。
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