JP2012240452A - ブレーキ制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】サービスブレーキ力から駐車ブレーキ力への切替え時に、EPBの加圧機構を作動させることによる車両のサービスブレーキ力の低下を抑制する。
【解決手段】後輪系においてサービスブレーキ1とEPB2とが一体型とされた駐車ブレーキ一体型加圧機構を採用しており、かつ、X配管の車両用ブレーキシステムにおいて、サービスブレーキ力から駐車ブレーキ力への切替えを行う際に、両前輪の増圧制御弁34、44を遮断状態にして前輪ブレーキ力を保持する。これにより、駐車ブレーキ力への切替えを開始したときに、後輪ブレーキ力が低下しても、前輪ブレーキ力については低下しないようにできる。このため、サービスブレーキ力と駐車ブレーキ力を合計した車両全体のブレーキ力が低下することによる車両振動を抑制できるし、停車可能なブレーキ力よりも低下しないようにでき、坂路において車両のずり下がりが発生しないようにすることが可能となる。
【選択図】図3
【解決手段】後輪系においてサービスブレーキ1とEPB2とが一体型とされた駐車ブレーキ一体型加圧機構を採用しており、かつ、X配管の車両用ブレーキシステムにおいて、サービスブレーキ力から駐車ブレーキ力への切替えを行う際に、両前輪の増圧制御弁34、44を遮断状態にして前輪ブレーキ力を保持する。これにより、駐車ブレーキ力への切替えを開始したときに、後輪ブレーキ力が低下しても、前輪ブレーキ力については低下しないようにできる。このため、サービスブレーキ力と駐車ブレーキ力を合計した車両全体のブレーキ力が低下することによる車両振動を抑制できるし、停車可能なブレーキ力よりも低下しないようにでき、坂路において車両のずり下がりが発生しないようにすることが可能となる。
【選択図】図3
Description
本発明は、電動パーキングブレーキ(以下、EPB(Electric parking brake)という)の加圧機構とサービスブレーキのホイールシリンダ(以下、W/Cという)とが一体型とされた駐車ブレーキ一体型加圧機構を有する車両用ブレーキシステムに適用されるブレーキ制御装置に関するものである。
従来、特許文献1において、ドライバのブレーキペダル操作に基づいてW/Cにブレーキ液圧を発生させて制動力を発生させるサービスブレーキ(常用ブレーキ)と、主に駐車時に制動力を発生させるために用いられる駐車ブレーキを含む車両用ブレーキシステムにおいて、サービスブレーキと駐車ブレーキの双方を用いて車両を安定化させる制御方法が提案されている。この制御方法では、サービスブレーキによるブレーキ力(以下、サービスブレーキ力という)で停車保持させた際に、停車保持できるブレーキ力を駐車ブレーキによるブレーキ力(以下、駐車ブレーキ力という)に切替えたのち、サービスブレーキを解除するようにしている。
例えば、アクティブクルーズコントロール(以下、ACCという)において、サービスブレーキに備えられたブレーキ液圧制御用アクチュエータの電磁弁やポンプ駆動用モータを作動させてサービスブレーキ力を発生させて停車した場合、その後、駐車ブレーキ力への切替えを行うようにしている。また、坂路でドライバのブレーキペダル操作に伴って停車した際に、ドライバのブレーキペダル操作が緩められてサービスブレーキ力が足りなくなるような状況になると、発進補助制御により車両のずり下がりを防止するために駐車ブレーキ力への切替えを行うようにしている。
サービスブレーキ力を発生させるためのアクチュエータの駆動時間としての電磁弁の通電時間等には耐久性上、制限があるのに対して、駐車ブレーキ力については一旦モータを駆動して発生させてしまえば、その後モータを駆動し続けなくても駐車ブレーキ力を保持することができる。このため、サービスブレーキ力を駐車ブレーキ力に切替えることで、サービスブレーキ力を発生させるためのアクチュエータの駆動時間の低減を図りつつ、安定して停車状態を保つことが可能となる。
しかしながら、EPBの加圧機構とサービスブレーキのW/Cとが一体型とされた駐車ブレーキ一体型加圧機構を有する車両用ブレーキシステムにおいて、その車両用ブレーキシステムのブレーキ液圧配管構成がX配管とされている場合には、サービスブレーキ力から駐車ブレーキ力への切替えを行うと、その切替え時に車両全体のブレーキ力が低下するという問題が発生することが本発明者により見出された。以下、この問題について説明する。
駐車ブレーキ一体型加圧機構の場合、サービスブレーキ時にW/C圧に基づいて移動させられる加圧ピストンと、駐車ブレーキ用のモータの駆動に伴って移動させられる加圧ピストンが共通化されている。このため、サービスブレーキ力を駐車ブレーキ力に切替える際には、W/C圧に基づいて加圧ピストンを移動させてサービスブレーキ力を発生させている状況において、駐車ブレーキ用のモータを駆動させて加圧ピストンを押し、駐車ブレーキ力を発生させることになる。このとき、W/C内の容積は、駐車ブレーキ用のモータの駆動によって加圧ピストンが押されることでサービスブレーキのみの時よりも増加する。ところが、W/C内の容積が増加したことにより、W/C圧が低下する。
一般的に、EPBの加圧機構は、車両後輪側に設置され、両後輪に対して駐車ブレーキ力を発生させる。
また、X配管では、右前輪と左後輪のW/Cが単一のブレーキ液圧のブレーキ液を供給する管路に接続され、左前輪と右後輪のW/Cが別の単一のブレーキ液圧のブレーキ液を供給する管路に接続されている。このため、上記のようにサービスブレーキ力を駐車ブレーキ力に切替える際には、EPBの加圧機構が備えられる後輪側のW/C圧が低下し、それに伴って、その後輪に管路で接続される各前輪のW/C圧も低下することになる。このため、切替え時に車両全体のブレーキ力が低下し、車両が坂路でずり下がってしまうこと、あるいはずり下がりに伴い新たにブレーキをかけたとしてもそれによる車両振動の発生が懸念される。特に、車両用ブレーキシステムでは、両前輪において両後輪よりも大きなブレーキ力を発生させられる構造にされているのが一般的であり、両前輪のW/C圧が低下すると、前後輪のブレーキ力の低下が大きくなる。
なお、ここではEPBの加圧機構が両後輪側に備えられる場合を例に挙げた。これは、一般的に車両の操舵輪が両前輪となり非操舵輪が両後輪となるためであり、フォークリフトのような車両の場合には操舵輪が両後輪となることから、EPBの加圧機構は両前輪に備えられることが多い。この場合には、両前輪に備えられたEPBの加圧機構を作動させて、サービスブレーキ力から駐車ブレーキ力への切替えを行うことになるが、X配管の場合には、上記と同様の問題が発生する。
本発明は上記点に鑑みて、サービスブレーキ力から駐車ブレーキ力への切替え時に、EPBの加圧機構を作動させることによる車両のサービスブレーキ力の低下を抑制することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、ドライバのブレーキ操作に基づいてブレーキ液圧を発生するブレーキ液圧発生手段(3〜5)と、内部でブレーキ液圧が増加することにより第1摩擦材(11)を第1被摩擦材(12)側に移動させて当接させることで第1サービス制動力を発生させると共に、内部でブレーキ液圧が減少することにより第1摩擦材(11)を第1被摩擦材(12)から離間させる方向に移動させる第1ホイールシリンダ(31、41)と、内部でブレーキ液が増加することにより第2摩擦材(11)を第2被摩擦材(12)側に移動させて当接させることで第2サービス制動力を発生させると共に、内部でブレーキ液圧が減少することにより第2摩擦材(11)を第2被摩擦材(12)から離間させる方向に移動させる第2ホイールシリンダ(32、42)と、第2ホイールシリンダ(32、42)の内部に設けられた押圧部材(19)を有した構成とされている。そして、ブレーキ液圧とは独立した外力で押圧部材が移動することでその外力が第2摩擦材(11)に加えられ、その外力により該第2摩擦材(11)が第2被摩擦材(12)に対し移動させて当接させることで駐車ブレーキ力を発生させると共に、押圧部材(19)の移動により第2ホイールシリンダ(32、42)の内部の圧力が減少する加圧機構と、第1ホイールシリンダ(31、41)および第2ホイールシリンダ(32、42)に接続され、ブレーキ液圧発生手段(3〜5)からの単一のブレーキ液圧のブレーキ液を供給する管路と、第1ホイールシリンダ(31、41)と第2ホイールシリンダ(32、42)との間の管路に設けられ、第1ホイールシリンダ(31、41)のブレーキ液圧を保持する制御弁(34、44)と、車両を停止させる制動力を第2サービス制動力から駐車ブレーキ力に切替えて発生させる際に、制御弁(34、44)を遮断状態にすることで第1ホイールシリンダ(31、41)内のブレーキ液圧を保持するホールド切り替え制御を行うホールド切替制御手段(100〜150)を有していることを特徴としている。
このように車両を停止させる制動力を加圧機構が設けられた第2ホイールシリンダ(32、42)での第2サービス制動力から駐車制動力に切替えて発生させる際に、ホールド切替制御手段(100〜150)が制御弁(34、44)を遮断状態にすることで第1ホイールシリンダ(31、41)内のブレーキ液圧を保持するホールド切替制御を行うことができるようにしている。これにより、駐車ブレーキ力への切替えを開始したときに第2ホイールシリンダ(32、42)での第2サービスブレーキ力が低下しても、第1ホイールシリンダ(31、41)での第1サービス力については低下しないようにできる。このため、サービスブレーキ力と駐車ブレーキ力を合計した車両全体のブレーキ力が低下することによる車両振動を抑制できる。また、停車可能なブレーキ力よりも低下しないようにでき、坂路において車両のずり下がりが発生しないようにすることが可能となる。
例えば、請求項2に記載したように、ホールド切替制御手段(100〜150)は目標とする駐車ブレーキ力である目標駐車ブレーキ力を達成したのち所定時間経過後に、制御弁(34、44)の遮断状態を解除することができる。また、請求項3に記載したように、ホールド切替制御手段(100〜150)は目標とする駐車ブレーキ力である目標駐車ブレーキ力を達成したのと同時に、制御弁(34、44)の遮断状態を解除することもできる。
このように、制御弁(34、44)の遮断状態を解除してサービスブレーキ力を解除するタイミングについては、目標駐車ブレーキ力を達成してから所定時間経過後もしくは目標駐車ブレーキ力を達成したのと同時とすることができ、ユーザの嗜好やメーカの要望に従って設定可能である。例えば、所定時間経過後にすると、電動パーキングブレーキ(2)の作動音とサービスブレーキ力の解除による音の発生タイミングを異ならせることができる。電動パーキングブレーキ(2)を作動させているときには、他の部位で音が発生して欲しくないという要望もあり、このように音の発生タイミングを異ならせることができることで、そのような要望に沿うことができる。逆に、電動パーキングブレーキ(2)の作動音の発生時にサービスブレーキ力の解除による音を発生させるようにすれば、これらの音を重複させることができ、これらの音をある程度同化させることも可能となる。したがって、ユーザの嗜好やメーカの要望に従ってサービスブレーキ力の解除タイミングを設定すると良い。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態では、後輪系にディスクブレーキタイプのEPBを適用しているX配管の車両用ブレーキシステムを例に挙げて説明する。図1は、本実施形態にかかるブレーキ制御装置が適用された車両用のブレーキシステムの全体概要を示した模式図である。また、図2は、ブレーキシステムに備えられる後輪系のブレーキ機構の断面模式図である。以下、これらの図を参照して説明する。
本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態では、後輪系にディスクブレーキタイプのEPBを適用しているX配管の車両用ブレーキシステムを例に挙げて説明する。図1は、本実施形態にかかるブレーキ制御装置が適用された車両用のブレーキシステムの全体概要を示した模式図である。また、図2は、ブレーキシステムに備えられる後輪系のブレーキ機構の断面模式図である。以下、これらの図を参照して説明する。
図1に示すように、ブレーキシステムは、ドライバの踏力に基づいて制動力を発生させるサービスブレーキ1と駐車時に車両の移動を規制するためのEPB2とが備えられている。
サービスブレーキ1は、ドライバによるブレーキペダル3の踏み込みに応じた踏力を倍力装置4にて倍力したのち、この倍力された踏力に応じたブレーキ液圧をマスタシリンダ(以下、M/Cという)5内に発生させ、このブレーキ液圧を各車輪のブレーキ機構に備えられた各W/C31、32、41、42に伝えることで制動力を発生させる。本実施形態では、ブレーキペダル3、倍力装置4およびM/C5が本発明のブレーキ液圧発生手段に相当する。また、M/C5とW/C31、32、41、42との間にブレーキ液圧調整手段としてのアクチュエータ7が備えられており、サービスブレーキ1により発生させる制動力を調整し、車両の安全性を向上させるための各種制御(例えば、アンチスキッド制御等)を行える構造とされている。
アクチュエータ7を用いた各種制御は、ESC(Electronic Stability Control)−ECU8にて実行される。例えば、ESC−ECU8からアクチュエータ7に備えられる各種制御弁やポンプ駆動用のモータを制御するための制御電流を出力することにより、アクチュエータ7に備えられる油圧回路を制御し、W/C31、32、41、42に伝えられるW/C圧を制御する。このアクチュエータ7の詳細構成に関しては後述する。
一方、EPB2は、EPB制御装置(以下、EPB−ECUという)9によって制御され、EPB−ECU9によってモータ10を駆動し、ブレーキ機構を制御することで制動力を発生させる。
ブレーキ機構は、本実施形態のブレーキシステムにおいて制動力を発生させる機械的構造であり、前輪系のブレーキ機構はサービスブレーキ1の操作によって制動力を発生させる構造とされているが、後輪系のブレーキ機構は、サービスブレーキ1の操作とEPB2の操作の双方に対して制動力を発生させる共用の構造とされている。前輪系のブレーキ機構は、後輪系のブレーキ機構に対して、EPB2の操作に基づいて制動力を発生させる機構をなくした従来から一般的に用いられているブレーキ機構であるため、ここでは説明を省略し、以下の説明では後輪系のブレーキ機構について説明する。
後輪系のブレーキ機構では、サービスブレーキ1を作動させたときだけでなくEPB2を作動させたときにも、図2に示す摩擦材であるブレーキパッド11を押圧し、ブレーキパッド11によって被摩擦材であるブレーキディスク12を挟み込むことにより、ブレーキパッド11とブレーキディスク12との間に摩擦力を発生させ、制動力を発生させる。すなわち、EPB2の加圧機構とサービスブレーキのW/C32、42とが一体型とされた駐車ブレーキ一体型加圧機構とされている。
EPB2の加圧機構はモータ10、平歯車15、平歯車16、回転軸17、推進軸18により構成される。そしてこの加圧機構により駐車ブレーキ力を発生させる。具体的には、EPB2を作動させる際には、ブレーキ機構は、図1に示すキャリパ13内において、図2に示すようにブレーキパッド11を押圧するためのW/C32、42のボディ14に直接固定されているモータ10を回転させる。そして、モータ10の駆動軸10aに備えられた平歯車15を回転させ、平歯車15に噛合わされた平歯車16にモータ10の回転力を伝えることによりブレーキパッド11を移動させ、EPB2による制動力を発生させる。
キャリパ13内には、W/C32、42およびブレーキパッド11に加えて、ブレーキパッド11に挟み込まれるようにしてブレーキディスク12の端面の一部が収容されている。W/C32、42は、シリンダ状のボディ14の中空部14a内に通路14bを通じてブレーキ液圧を導入することで、ブレーキ液収容室である中空部14a内にW/C圧を発生させられるようになっており、中空部14a内に回転軸17、推進軸18、ピストン19などを備えて構成されている。ボディ14は有底シリンダ状でその底面はブレーキパッド11と反対側に位置し、開口部141をブレーキパッド11側に位置するように設けられている。この開口部141はピストン19で塞がれている。
回転軸17は、一端がボディ14に形成された挿入孔14cを通じて平歯車16に連結され、平歯車16が回動させられると、平歯車16の回動に伴って回動させられる。この回転軸17における平歯車16と連結された端部とは反対側の端部において、回転軸17の外周面には雄ネジ溝17aが形成されている。一方、回転軸17の他端は、挿入孔14cに挿入されることで軸支されている。具体的には、挿入孔14cには、Oリング20と共に軸受け21が備えられており、Oリング20にて回転軸17と挿入孔14cの内壁面との間を通じてブレーキ液が漏れ出さないようにされながら、軸受け21により回転軸17の他端を軸支持している。
推進軸18は、中空状の筒部材にて構成され、内壁面に回転軸17の雄ネジ溝17aと螺合する雌ネジ溝18aが形成されている。この推進軸18は、例えば回転防止用のキーを備えた円柱状もしくは多角柱状に構成されることで、回転軸17が回動しても回転軸17の回動中心を中心として回動させられない構造になっている。このため、回転軸17が回動させられると、雄ネジ溝17aと雌ネジ溝18aとの噛合いにより、回転軸17の回転力を回転軸17の軸方向に推進軸18を移動させる力に変換する。推進軸18は、モータ10の駆動が停止されると、雄ネジ溝17aと雌ネジ溝18aとの噛合いによる摩擦力により同じ位置で止まるようになっており、目標制動力になったときにモータ10の駆動を停止すれば、その位置に推進軸18を保持することができる。
ピストン19は、推進軸18の外周を囲むように配置されるもので、有底の円筒部材もしくは多角筒部材にて構成され、外周面がボディ14に形成された中空部14aの内壁面と接するように配置されている。ピストン19の外周面とボディ14の内壁面との間のブレーキ液洩れが生じないように、ボディ14の内壁面にシール部材22が備えられ、ピストン19の端面にW/C圧を付与できる構造とされている。このシール部材22は、ロック制御後のリリース制御時にピストン19を引き戻すための反力を発生させるために用いられる部材である。
また、ピストン19は、回転軸17が回転しても回転軸17の回動中心を中心として回動させられないように、推進軸18に回転防止用のキーが備えられる場合にはそのキーが摺動するキー溝が備えられ、推進軸18が多角柱状とされる場合にはそれと対応する形状の多角筒状とされる。
このピストン19の先端にブレーキパッド11が配置され、ピストン19の移動に伴ってブレーキパッド11を紙面左右方向に移動させるようになっている。具体的には、ピストン19は、その外周面がボディ14の中空部14aの内壁面に接して、推進軸18の移動に伴って紙面左方向に移動可能で、かつ、ピストン19の端部(ブレーキパッド11が配置された端部と反対側の端部)にW/C圧が付与されることで推進軸18から独立して紙面左方向に移動可能な構成とされている。そして、推進軸18が初期位置(モータ10が回転させられる前の状態)のときに、中空部14a内のブレーキ液圧が付与されていない状態(W/C圧=0)であれば、ピストン19が紙面右方向に移動させられ、ブレーキパッド11をブレーキディスク12から離間させられるようになっている。また、モータ10が回転させられて推進軸18が初期位置から紙面左方向に移動させられているときにW/C圧が0になると、移動した推進軸18によってピストン19の紙面右方向への移動が規制され、ブレーキパッド11がその場所で保持される。
このように構成されたブレーキ機構では、サービスブレーキ1が操作されると、それにより発生させられたW/C圧に基づいてピストン19が紙面左方向に移動させられることでブレーキパッド11がブレーキディスク12に押圧され、制動力を発生させる。また、EPB2が操作されると、モータ10が駆動されることで平歯車15が回転させられ、それに伴って平歯車16および回転軸17が回転させられるため、雄ネジ溝17aおよび雌ネジ溝18aの噛合いに基づいて推進軸18がブレーキディスク12側(紙面左方向)に移動させられる。そして、それに伴ってピストン19も同方向に移動させられることでブレーキパッド11がブレーキディスク12に押圧され、制動力を発生させる。このため、サービスブレーキ1の操作とEPB2の操作の双方に対して制動力を発生させることができる駐車ブレーキ一体型加圧機構とされた、サービスブレーキ1とEPB2の共用のブレーキ機構とすることが可能となる。
続いて、図3にアクチュエータ7の詳細構造を示したブレーキシステムの油圧回路図を示し、この図を参照してアクチュエータ7の詳細構造について説明する。
図3に示されるように、アクチュエータ7内には、M/C5のプライマリ室およびセカンダリ室それぞれに対して連通させられた第1、第2配管系統30、40が構成されている。第1配管系統30は、左前輪FLと右後輪RRに加えられるブレーキ液圧を制御し、第2配管系統40は、右前輪FRと左後輪RLに加えられるブレーキ液圧を制御する。つまり、X配管の配管構成とされている。
サービス制動力を発生させる際にM/C5に発生させられるM/C圧は、第1配管系統30と第2配管系統40を通じて各W/C31、32、41、42に伝えられる。第1配管系統30には、M/C5のプライマリ室とW/C31、32とを接続する管路Aが備えられていると共に、第2配管系統40には、M/C5のセカンダリ室とW/C41、42とを接続する管路Eが備えられ、これら各管路A、Eを通じてM/C圧がW/C31、32、41、42に伝えられる。
また、管路A、Eは、連通状態と差圧状態に制御できる差圧制御弁33、43を備えている。差圧制御弁33、43は、ドライバがブレーキペダル3の操作を行うサービスブレーキ時には連通状態となるように弁位置が調整されており、差圧制御弁33、43に備えられるソレノイドコイルに電流が流されると、この電流値が大きいほど大きな差圧状態となるように弁位置が調整される。
この差圧制御弁33、43が差圧状態のときには、W/C31、32、41、42側のブレーキ液圧がM/C圧よりも所定以上高くなった際にのみ、W/C31、32、41、42側からM/C5側へのみブレーキ液の流動が許容される。このため、常時W/C31、32、41、42側がM/C5側よりも所定圧力高い状態が維持される。
そして、管路A、E、差圧制御弁33、43よりも下流になるW/C31、32、41、42側において、2つの管路A1、A2、E1、E2に分岐する。管路A1、E1にはW/C31、41へのブレーキ液圧の増圧を制御する第1増圧制御弁34、44が備えられ、管路A2、E2にはW/C32、42へのブレーキ液圧の増圧を制御する第2増圧制御弁35、45が備えられている。
これら第1、第2増圧制御弁34、35、44、45は、連通・遮断状態を制御できる2位置電磁弁により構成されている。第1、第2増圧制御弁34、35、44、45は、第1、第2増圧制御弁34、35、44、45に備えられるソレノイドコイルへの制御電流がゼロとされる時(非通電時)には連通状態となり、ソレノイドコイルに制御電流が流される時(通電時)に遮断状態に制御されるノーマルオープン型となっている。
管路A、Eにおける第1、第2増圧制御弁34、35、44、45及び各W/C31、32、41、42の間は、減圧管路としての管路B、Fを通じて調圧リザーバ36、46に接続されている。管路B、Fには、連通・遮断状態を制御できる2位置電磁弁により構成される第1、第2減圧制御弁37、38、47、48がそれぞれ配設されている。そして、これら第1、第2減圧制御弁37、38、47、48は、第1、第2減圧制御弁37、38、47、48に備えられるソレノイドコイルへの制御電流がゼロとされる時(非通電時)には遮断状態となり、ソレノイドコイルに制御電流が流される時(通電時)に連通状態に制御されるノーマルクローズ型となっている。
調圧リザーバ36、46と主管路である管路A、Eとの間には還流管路となる管路C、Gが配設されている。管路C、Gには調圧リザーバ36、46からM/C5側あるいはW/C31、32、41、42側に向けてブレーキ液を吸入吐出するモータ50によって駆動される自吸式のポンプ39、49が設けられている。モータ50は図示しないモータリレーに対する通電が制御されることで駆動される。
そして、調圧リザーバ36、46とM/C5の間には補助管路となる管路D、Hが設けられている。管路D、Hを通じ、ポンプ39、49にてM/C5からブレーキ液を吸入し、管路A、Eに吐出することで、W/C31、32、41、42側にブレーキ液を供給する。
このようにしてアクチュエータ7が構成されており、ESC−ECU8が各種制御弁33〜35、37、38、43〜45、47、48やポンプ駆動用のモータ50を制御するための制御電流を出力することにより、アクチュエータ7に備えられる油圧回路を制御する。これにより、アンチスキッド制御として、制動時の車輪スリップ時にW/C圧の減圧、保持、増圧を行うことで車輪ロックを防止したり、横滑り防止制御として、制御対象輪のW/C圧を自動加圧することで横滑り傾向(アンダーステア傾向もしくはオーバステア傾向)を抑制して理想的軌跡での旋回が行えるようにすることができる。また、ACC制御として、前方車両との間を車速に応じた一定間隔に保てるように各車輪のW/C圧を自動加圧することで制動力を発生させ、前方車両が停車したときには自車両も停車させることもできる。
なお、図示しないが、ESC−ECU8には車両の車輪毎に備えられた車輪速度センサからの検出信号が入力されるようになっており、この車輪速度センサの検出信号に基づいて、各車輪速度や推定車体速度およびスリップ率などを演算している。ESC−ECU8は、これらの演算結果に基づいてアンチスキッド制御などを実行している。また、アクチュエータ7には、W/C圧センサ60が備えられるようにしてある。そして、EPB−ECU9にW/C圧センサ60の検出信号が入力されるようにしており、EPB−ECU9にてW/C圧を監視できるようにしている。
EPB−ECU9は、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを備えた周知のマイクロコンピュータによって構成され、ROMなどに記憶されたプログラムにしたがってモータ10の回転を制御することによりロック・リリース制御などの駐車ブレーキ制御を行うものである。本実施形態では、EPB−ECU9がESC−ECU8から情報に基づいて後述するホールド切替制御も行っており、本発明の電子制御手段を構成している。EPB−ECU9は、例えば車室内のインストルメントパネル(図示せず)に備えられた操作スイッチ(SW)23の操作状態に応じた信号等を入力し、操作SW23の操作状態に応じてモータ10を駆動する。さらに、EPB−ECU9は、インストルメントパネルに備えられたロック/リリース表示ランプ24に対してモータ10の駆動状態に応じて、ロック中であるかリリース中であるかを示す信号を出力する。
具体的には、EPB−ECU9は、モータ10に流される電流(モータ電流)をモータ10の上流側もしくは下流側で検出するモータ電流検出、ロック制御を終了させるときの目標モータ電流(目標電流値)を演算する目標モータ電流演算、モータ電流が目標モータ電流に達したか否かの判定、操作SW23の操作状態に基づくモータ10の制御など、ロック・リリース制御を実行するための各種機能部を有している。このEPB−ECU9により操作SW23の状態やモータ電流に基づいてモータ10を正回転や逆回転させたりモータ10の回転を停止させることで、EPB2をロック・リリースする制御を行う。
以上のように構成された車両用ブレーキシステムでは、基本的には、車両走行時にサービスブレーキ1によってサービスブレーキ力を発生させることで車両に制動力を発生させるという動作と、サービスブレーキ1によって停車させられた際に、ドライバが操作SW23を押下してEPB2を作動させて駐車ブレーキ力を発生させることで停車状態を維持するという動作を行う。すなわち、サービスブレーキ1の動作としては、車両走行時にドライバによるブレーキペダル操作が行われると、M/C5に発生したブレーキ液圧がW/C31、32、41、42に伝えられることでサービスブレーキ力を発生させる。また、EPB2の動作としては、モータ10を駆動することでピストン19を移動させ、ブレーキパッド11をブレーキディスク12に押し付けることで駐車ブレーキ力を発生させる。
さらに、サービスブレーキ1に備えられたアクチュエータ7を動作させることにより、車輪ロックを防止するアンチスキッド制御を行うこともできる。また、アクチュエータ7を動作させることにより、差圧制御弁33、34を差圧状態に制御した状態でモータ50を駆動することで各W/C31、32、41、42を自動加圧することができる。このため、その自動加圧機能を利用して、ドライバによるブレーキペダル操作がなされていなくても、車両の横滑り傾向を抑制して理想的軌跡での旋回が行えるようにする横滑り防止制御を行ったり、前方車両との間を車速に応じた一定間隔に保つACC制御を行うこともできる。
また、EPB2の動作として、ドライバがSW23を押下していないときでも、坂路において車両のずり下がりを防止するために駐車ブレーキ力を発生させる発進補助制御を行うこともできる。
このように、本実施形態の車両用ブレーキシステムを用いることにより、様々な制御を行うことができる。そして、それらのうちの一部の制御では、サービスブレーキ力を駐車ブレーキ力に切替えることで、サービスブレーキ力を発生させるためのアクチュエータの駆動時間の低減を図りつつ、安定して停車状態を保つというホールド切替制御を行うことができる。例えば、ACC制御を実施して停車したときにサービスブレーキ力を駐車ブレーキ力に切替えたり、発進補助制御を実施する際にドライバのブレーキペダル操作によるサービスブレーキ力の低下分を駐車ブレーキ力にすることが可能である。この切替え時に、上記したようにW/C圧の低下するという問題が発生する。
図4は、切替え前後での後輪系のブレーキ機構の作動状態を示した断面図である。サービスブレーキ力から駐車ブレーキ力への切替えは、ドライバのブレーキペダル操作に基づいて、もしくは、アクチュエータ7による自動加圧機能によってサービスブレーキ力を発生させている状態からEPB2を作動させて駐車ブレーキ力を発生させることにより行われる。サービスブレーキ力は、ボディ14に備えられた通路14bを通じてW/C32、42内の中空部14a内にブレーキ液を供給し、図4(a)に示すようにピストン19をブレーキディスク12側に移動させてブレーキパッド11をブレーキディスク12に押し付けることで発生させられている。この状態から駐車ブレーキ力を発生させることになるため、EPB2のモータ10を作動させ、図4(b)に示すようにピストン19を更にブレーキディスク12に押し付ける側に移動させることになる。
なお、図4(a)、(b)のいずれの状態でも、サービスブレーキ力が発生させられているため、ブレーキパッド11がブレーキディスク12に押し付けられている状態になっている。しかしながら、ピストン19をより強くブレーキディスク12側に移動させる力が加われば、ブレーキパッド11がブレーキディスク12に押し付けられている状態からでも、ブレーキパッド11などの弾性変形によってピストン19がブレーキディスク12側に移動させられる。
このため、図4(b)中に示したように、ピストン19の移動前後において、ピストン19の前進分だけボディ14の中空部14aの容積が変化する。ところが、中空部14a側に供給されているブレーキ液量は変化がないため、中空部14aの容積変化によってW/C圧が低下する。そして、X配管であることから、後輪系のW/C圧の低下に伴って、両前輪のW/C圧も同様に低下する。したがって、切替え時にサービスブレーキ力と駐車ブレーキ力を合計した車両全体のブレーキ力が低下し、車両振動が発生したり、あるいは車両が坂路でずり下がる可能性が生じる。このような後輪系のW/C圧の低下に伴う両前輪のW/C圧の低下は、サービスブレーキ1の自動加圧機能に基づくW/C内へのブレーキ液の供給が継続されているか否かに拘わらず発生する。つまり、自動加圧機能によってW/C内へのブレーキ液の供給は可能であるが、加圧の応答性に依存し、W/C圧の低下よりも加圧の応答の方が遅れるため、W/C圧の低下の問題を解決することは困難である。
そこで、本実施形態では、サービスブレーキ力から駐車ブレーキ力への切替えを行う際に、前輪側の増圧制御弁34、44を作動させて遮断状態とし、後輪系のW/C圧が低下しても、前輪系のW/C圧が保持されるようにするというホールド切替制御を行う。このように前輪側のW/C圧を保持することで、サービスブレーキ力の低下を後輪系のみに留めることが可能となり、同時に発生させられた駐車ブレーキ力とサービスブレーキ力とのトータルのブレーキ力が低下しないように、もしくは低下しても最小限に留めることが可能となる。
図5に、本実施形態にかかる車両用ブレーキシステムが行うホールド切替制御のフローチャートを示し、この図を参照してホールド切替制御の詳細について説明する。この処理は、例えば、ACC制御や発進補助制御等、サービスブレーキ力から駐車ブレーキ力への切替えを行う制御が実行されたときに、EPB−ECU9がESC−ECU8からの情報やW/C圧センサ60の検出信号に基づいて所定の制御周期毎に実行する。
まず、ステップ100では、全車輪速度が0km/hであるか否かを判定する。これにより、停車状態であるか否かを判定している。この処理は、ESC−ECU8から各車輪速度に関する情報を入手することで実行される。ここで肯定判定されるとステップ110に進み、否定判定されると本処理が繰り返される。
ステップ110では、油圧ホールドが完了したか否かを判定する。油圧ホールドの完了とは、目標とするW/C圧まで達した状態になったことを意味している。例えば、ACC制御において自動加圧機能に基づいて停車させたときの目標W/C圧に達した場合や、発進補助制御において坂路でのずり下がりが防止できる程度の目標W/C圧に達している場合を意味している。なお、ACC制御や発進補助制御は、一般的にはESC−ECU8によって実行されるため、EPB−ECU9がESC−ECU8からACC制御や発進補助制御における目標W/C圧に関する情報を入手することで、本処理が行われるようにしている。
そして、ステップ110で肯定判定されるとステップ120に進む。そして、モータ10の駆動を開始することでEPB2の作動を実施すると同時に、ステップ130に進んで前輪側の増圧制御弁34、44を遮断状態に切り替え、ステップ140に進む。これにより、サービスブレーキ力から駐車ブレーキ力への切り替えが開始されるが、それと同時に、前輪側の増圧制御弁34、44を遮断状態することで前輪系のサービスブレーキ力の低下を防止することができる。
この後、ステップ140において、目標駐車ブレーキ力を達成したか否かを判定し、達成するとステップ150に進んで所定時間経過後に前輪側の増圧制御弁34、44の遮断状態を解除して連通状態に戻すことでサービスブレーキ力を解除する。これにより、駐車ブレーキ力のみによって所望の制動力を発生させることができる。
目標駐車ブレーキ力については、停車状態を維持できるブレーキ力としてACC制御や発進補助制御において求められており、例えば、ACC制御の場合には車両停車時の目標とするW/C圧、発進補助制御の場合には坂路勾配に応じた目標とするW/C圧とされる。発生させられている駐車ブレーキ力については、モータ10に流される電流の値によって推定でき、発生させられている駐車ブレーキ力が目標駐車ブレーキ力に達すると、肯定判定されるようにしてある。
このようにしてホールド切替制御が完了する。図6は、ホールド切替制御を行わない場合と行った場合それぞれの各ブレーキ力の変化を示したタイミングチャートである。
図6(a)に示すように、ホールド切替制御を行わない場合には、駐車ブレーキ力への切替えを開始すると同時に、サービスブレーキ1による前輪ブレーキ力と後輪ブレーキ力が共に減少し、それらを合わせたサービスブレーキ力が低下している。この場合、車両停車可能なブレーキ力よりもサービスブレーキ力と駐車ブレーキ力を合計した車両全体のブレーキ力が低下することで車両振動を発生させたり、停車可能なブレーキ力よりも低下することで、坂路において車両のずり下がりが発生する可能性がある。
これに対して、図6(b)に示すように、ホールド切替制御を行う場合には、駐車ブレーキ力への切替えを開始したときに、後輪ブレーキ力が低下しているものの、前輪ブレーキ力については低下しない。このため、サービスブレーキ力と駐車ブレーキ力を合計した車両全体のブレーキ力が低下することによる車両振動を抑制できるし、停車可能なブレーキ力よりも低下しないようにでき、坂路において車両のずり下がりが発生しないようにすることが可能となる。
なお、ここでは増圧制御弁34、44の遮断状態を解除してサービスブレーキ力を解除するタイミングを目標駐車ブレーキ力を達成してから所定時間経過後とした。このタイミングについては、目標駐車ブレーキ力を達成したのと同時にしても良く、ユーザの嗜好やメーカの要望に従って設定可能である。例えば、所定時間経過後にすると、EPB2の作動音とサービスブレーキ力の解除による音の発生タイミングを異ならせることができる。EPB2を作動させているときには、他の部位で音が発生して欲しくないという要望もあり、このように音の発生タイミングを異ならせることができることで、そのような要望に沿うことができる。逆に、EPB2の作動音の発生時にサービスブレーキ力の解除による音を発生させるようにすれば、これらの音を重複させることができ、これらの音をある程度同化させることも可能となる。したがって、ユーザの嗜好やメーカの要望に従ってサービスブレーキ力の解除タイミングを設定すると良い。
以上説明したように、本実施形態では、後輪系においてサービスブレーキ1とEPB2とが一体型とされた駐車ブレーキ一体型加圧機構を採用しており、かつ、X配管の車両用ブレーキシステムにおいて、サービスブレーキ力から駐車ブレーキ力への切替えを行う際に、両前輪の増圧制御弁34、44を遮断状態にして前輪ブレーキ力が保持されるようにしている。これにより、駐車ブレーキ力への切替えを開始したときに、後輪ブレーキ力が低下しても、前輪ブレーキ力については低下しないようにできる。このため、サービスブレーキ力と駐車ブレーキ力を合計した車両全体のブレーキ力が低下することによる車両振動を抑制できるし、停車可能なブレーキ力よりも低下しないようにでき、坂路において車両のずり下がりが発生しないようにすることが可能となる。
(他の実施形態)
(1)上記実施形態では、EPB2の加圧機構が両後輪側に備えら得る場合を例に挙げた。これは、一般的に車両の操舵輪が両前輪となり非操舵輪が両後輪となるためであり、フォークリフトのような車両の場合には操舵輪が両後輪となることから、EPB2の加圧機構は両前輪に備えられることが多い。この場合には、両前輪に備えられたEPB2の加圧機構を作動させて、サービスブレーキ力から駐車ブレーキ力への切替えを行う際に非操舵輪となる両後輪の増圧制御弁35、45を遮断状態にすることで、上記と同様の効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、EPB2の加圧機構が両後輪側に備えら得る場合を例に挙げた。これは、一般的に車両の操舵輪が両前輪となり非操舵輪が両後輪となるためであり、フォークリフトのような車両の場合には操舵輪が両後輪となることから、EPB2の加圧機構は両前輪に備えられることが多い。この場合には、両前輪に備えられたEPB2の加圧機構を作動させて、サービスブレーキ力から駐車ブレーキ力への切替えを行う際に非操舵輪となる両後輪の増圧制御弁35、45を遮断状態にすることで、上記と同様の効果を得ることができる。
また、一部の車両では操舵輪に駐車ブレーキの加圧機構を装着することもあるが、この場合もEPB非装着輪である非操舵輪の増圧制御弁35、45を遮断状態にすることで、上記と同様の効果を得ることができる。
さらに4輪すべてに加圧機構を装着した車両において特定輪の加圧機構を作動させて、サービスブレーキ力から駐車ブレーキ力への切替えを行う際に特定輪の管路で接続された特定輪とは別の車輪の増圧制御弁35、45を遮断状態にすることで、上記と同様の効果を得ることができる。
さらには特定輪の加圧機構を作動させて、サービスブレーキ力から駐車ブレーキ力への切替えを行う際に特定輪の増圧制御弁35、45を遮断状態にすることで特定輪の管路で接続された特定輪とは別の車輪のサービスブレーキ力を低下させないようにでき、上記と同様の効果を得ることができる。
(2)上記実施形態では、ディスクブレーキを例に挙げて説明したが、ドラムブレーキなどの他の形態のブレーキ機構についても、サービスブレーキ1とEPB2の加圧機構が一体化された駐車ブレーキ一体型加圧機構とされるブレーキシステムについて、本発明を適用できる。また、上記実施形態では、電子制御手段としてEPB−ECU9を例に挙げたが、これに限るものではない。例えば、上記実施形態では、制御装置としてESC−ECU8やEPB−ECU9を備えた構成を例に挙げたが、これらが一体的なECUとされることで電子制御手段を構成していても良いし、他のECUによって実現されても良い。すなわち、本発明は、サービスブレーキ1とEPB2とを備えたブレーキシステムにおいて、駐車ブレーキ一体型加圧機構を有するものに対してサービスブレーキ力から駐車ブレーキ力への切替えを電子制御手段によって実現するものであれば、上記実施形態の構成以外の構成であっても良い。
例えば、EPB2は、ブレーキパッド11などの摩擦材および摩擦材が取り付けられたピストン19などの押圧部材を推進軸18などの移動部材によって、ブレーキディスク12などの被摩擦材に対して摩擦材が当接する方向に移動させることで駐車ブレーキ力を発生させる構成であれば良い。また、サービスブレーキ1は、ドライバによるブレーキペダル3などのブレーキ操作部材の操作に基づいてブレーキ液圧を発生させるブレーキ液圧発生手段と、ブレーキ液圧発生手段に接続されたW/C31、32、41、42と、これらの間に配置されてW/C圧の自動加圧を行えるブレーキ液圧調整手段を構成するアクチュエータ7を備えた構成とされる。そして、W/C加圧時にそのブレーキ液圧によってEPB2と共通の押圧部材を摩擦材が被摩擦材側に移動させる方向に押圧することで、サービスブレーキ力を発生させる構成であれば良い。
なお、ブレーキ機構としてドラムブレーキが採用される場合、摩擦材と被摩擦材は、それぞれブレーキシューとドラムとなる。
1…サービスブレーキ、2…EPB、5…M/C、7…アクチュエータ、8…ESC−ECU、9…EPB−ECU、10…モータ、11…ブレーキパッド、12…ブレーキディスク、13…キャリパ、14…ボディ、14a…中空部、14b…通路、17…回転軸、17a…雄ネジ溝、18…推進軸、18a…雌ネジ溝、19…ピストン、22…シール部材、23…操作SW、31、32、41、42…W/C、60…W/C圧センサ
Claims (3)
- ドライバのブレーキ操作に基づいてブレーキ液圧を発生するブレーキ液圧発生手段(3〜5)と、
内部でブレーキ液圧が増加することにより第1摩擦材(11)を第1被摩擦材(12)側に移動させて当接させることで第1サービス制動力を発生させると共に、内部で前記ブレーキ液圧が減少することにより前記第1摩擦材(11)を前記第1被摩擦材(12)から離間させる方向に移動させる第1ホイールシリンダ(31、41)と、
内部でブレーキ液が増加することにより第2摩擦材(11)を第2被摩擦材(12)側に移動させて当接させることで第2サービス制動力を発生させると共に、内部で前記ブレーキ液圧が減少することにより前記第2摩擦材(11)を前記第2被摩擦材(12)から離間させる方向に移動させる第2ホイールシリンダ(32、42)と、
前記第2ホイールシリンダ(32、42)の前記内部に設けられた押圧部材(19)を有し、
前記ブレーキ液圧とは独立した外力で前記押圧部材が移動することでその外力が第2摩擦材(11)に加えられ、その外力により該第2摩擦材(11)が前記第2被摩擦材(12)に対し移動させて当接させることで駐車ブレーキ力を発生させると共に、
前記押圧部材(19)の移動により前記第2ホイールシリンダ(32、42)の前記内部の圧力が減少する加圧機構と、
前記第1ホイールシリンダ(31、41)および前記第2ホイールシリンダ(32、42)に接続され、前記ブレーキ液圧発生手段(3〜5)からの単一のブレーキ液圧のブレーキ液を供給する管路と、
前記第1ホイールシリンダ(31、41)と前記第2ホイールシリンダ(32、42)との間の前記管路に設けられ、前記前記第1ホイールシリンダ(31、41)のブレーキ液圧を保持する制御弁(34、44)と、
車両を停止させる制動力を前記第2サービス制動力から前記駐車ブレーキ力に切替えて発生させる際に、前記制御弁(34、44)を遮断状態にすることで前記前記第1ホイールシリンダ(31、41)内のブレーキ液圧を保持するホールド切り替え制御を行うホールド切替制御手段(100〜150)を有していることを特徴とするブレーキ制御装置。 - 前記ホールド切替手段(100〜150)は目標とする駐車ブレーキ力である目標駐車ブレーキ力を達成したのち所定時間経過後に、前記制御弁(34、44)の遮断状態を解除することを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御装置。
- 前記ホールド切替手段(100〜150)は目標とする駐車ブレーキ力である目標駐車ブレーキ力を達成したのと同時に、前記制御弁(34、44)の遮断状態を解除することを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御装置。
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