JP2012236137A - 石炭ガス化プロセスにおける二酸化炭素膜分離システム、およびこれを用いた石炭ガス化複合発電設備 - Google Patents

石炭ガス化プロセスにおける二酸化炭素膜分離システム、およびこれを用いた石炭ガス化複合発電設備 Download PDF

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Abstract

【課題】 従来の二酸化炭素吸収法に必要な吸収剤の再生工程がないことに加え、石炭からガス化させた燃料ガスを高温のまま二酸化炭素分離することで濃縮させて、ガスタービンへ供給することが可能となる、炭ガス化プロセスにおける二酸化炭素膜分離システム、およびこれを用いた石炭ガス化複合発電設備を提供する。
【解決手段】 石炭ガス化プロセスにおける二酸化炭素膜分離システムは、水性ガスシフト反応炉からの水性ガスシフト反応により発生する高温・高圧状態の二酸化炭素(CO)と水素(H)の混合ガスを、そのままの温度・圧力状態で二酸化炭素除去用ゼオライト膜を具備するゼオライト膜モジュールに導入し、二酸化炭素を除去するとともに、水素に富む燃料ガスを生成する。そして、ゼオライト膜モジュールから排出される高温・高圧状態の水素に富む燃料ガスを、そのままの温度・圧力状態で発電設備のガスタービンへ供給する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、石炭ガス化プロセスにおける二酸化炭素膜分離システム、およびこれを用いた石炭ガス化複合発電設備に関する。
従来より、石炭は発電燃料として用いられているが、その発電方式は、従来方式である微粉炭焚きボイラー発電から、より効率が良く、環境保全性にも優れた石炭ガス化複合発電設備(IGCC;Integrated Coal Gasification Combined Cycle)に注目が移ってきている。このような石炭ガス化複合発電設備(IGCC)においては、燃料となる石炭をガス化してガスタービンを運転し、ガスタービンの駆動力及びガスタービンの排熱を利用して発電するものであり、このため、各方面で石炭をガスに転換するガス化技術の開発が盛んに行われている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
石炭を発電燃料として用いる場合、微粉砕した石炭は、まず熱分解反応炉に導入される。熱分解反応炉では、高温ガス発生炉において発生する高温ガスに石炭を混合し、熱分解することによって、熱分解反応生成物として熱分解ガス、オイル、チャーが発生する。発生したチャーは、サイクロンによってガス、オイルから分離される。分離されたチャーの一部または全量は、高温ガス発生炉(ガス化炉)において酸素ガスによってガス化(部分酸化)され、高温ガス(主成分は水素および一酸化炭素)に変換される。高温ガスは、ついで、水性ガスシフト反応器へ導入され、下記式(1)に示す水性ガスシフト反応によって、一酸化炭素が水素および二酸化炭素へと変換される。さらに反応ガスより二酸化炭素が除去され、水素に富む燃料ガスが生成される。
CO+HO=CO+H・ ・ ・ (1)
ガスタービンへの燃料ガス(H)を精製するためのガス化炉および水性ガスシフト反応炉においては、反応後の燃料ガスには、水素(H)以外にも二酸化炭素(CO)が等モル分含まれている。
従来は、二酸化炭素(CO)を含んだまま燃料ガスとしてガスタービンに供給している場合もあったが、最近ではその二酸化炭素(CO)を吸収法で除去しているケースが殆どである。また反応後のガスに含まれる二酸化炭素の除去に利用できるような分離膜が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特開2000−319672号公報 特開2010−59940号公報 特開2010−214324号公報
しかしながら、従来の吸収法においては、二酸化炭素(CO)が吸収された後に吸収剤を再生させる必要があり、再生させるには二酸化炭素(CO)を揮発させるための熱エネルギーが必要となる。また、特許文献3に記載の炭酸ガス分離膜では、分離性能の観点から供給温度が20℃以上200℃以下とされているので、膜へ供給する前に温度を下げるための熱交換器が必要となる。何れの場合も、ガス化した際には200〜400℃程度の温度になっており、そのままガスタービンへ供給した方が熱効率的にも有利であるが、二酸化炭素(CO)を分離して燃料の濃縮するためには、一旦冷却することが必要となってくるという問題があった。
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、従来の二酸化炭素吸収法に必要な吸収剤の再生工程がないことに加え、石炭からガス化させた燃料ガスを高温のまま二酸化炭素(CO)分離することで濃縮させて、ガスタービンへ供給することが可能となる、石炭ガス化プロセスにおける二酸化炭素膜分離システム、およびこれを用いた石炭ガス化複合発電設備を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1の石炭ガス化プロセスにおける二酸化炭素膜分離システムの発明は、水性ガスシフト反応炉からの水性ガスシフト反応により発生する高温・高圧状態の二酸化炭素(CO)と水素(H)の混合ガスを、そのままの温度・圧力状態で二酸化炭素除去用ゼオライト膜を具備するゼオライト膜モジュールに導入し、二酸化炭素を除去するとともに、水素に富む燃料ガスを生成することを特徴としている。
請求項2の発明は、請求項1に記載の石炭ガス化プロセスにおける二酸化炭素膜分離システムを用いた石炭ガス化複合発電設備であって、ゼオライト膜モジュールから排出される高温・高圧状態の水素に富む燃料ガスを、そのままの温度・圧力状態で発電設備のガスタービンへ供給することを特徴としている。
請求項3の石炭ガス化プロセスにおける二酸化炭素膜分離システムの発明は、請求項1に記載の水性ガスシフト反応炉と、二酸化炭素除去用ゼオライト膜を具備するゼオライト膜モジュールとの組み合わせよりなる燃料ガス生成・二酸化炭素分離ユニットを、順に複数個連続して組み合わせ、各ユニットから生じる水素に富む燃料ガス中に含まれる未反応原料ガスを、次段のユニットの水性ガスシフト反応炉において反応させるとともに、各ユニットで生じる二酸化炭素を回収することを特徴としている。
請求項4の発明は、請求項3に記載の燃料ガス製造プロセスにおける二酸化炭素の膜分離システムを用いた石炭ガス化複合発電設備であって、最終段の燃料ガス生成・二酸化炭素分離ユニットのゼオライト膜モジュールから排出される高温・高圧状態の水素に富む燃料ガスを、そのままの温度・圧力状態で発電設備のガスタービンへ供給することを特徴としている。
請求項1の石炭ガス化プロセスにおける二酸化炭素膜分離システムの発明は、水性ガスシフト反応炉からの水性ガスシフト反応により発生する高温・高圧状態の二酸化炭素(CO)と水素(H)の混合ガスを、そのままの温度・圧力状態で二酸化炭素除去用ゼオライト膜を具備するゼオライト膜モジュールに導入し、二酸化炭素を除去するとともに、水素に富む燃料ガスを生成することを特徴とするもので、請求項1の発明によれば、従来の二酸化炭素吸収法において二酸化炭素(CO)を取り除くためのガス冷却(熱交換器)が不要であるとともに、二酸化炭素吸収法に必要な吸収剤の再生工程がないことに加え、石炭からガス化させた燃料ガスを高温のまま二酸化炭素(CO)分離することで濃縮させて、ガスタービンへ供給することが可能となるという効果を奏する。
請求項2の発明は、請求項1に記載の石炭ガス化プロセスにおける二酸化炭素膜分離システムを用いた石炭ガス化複合発電設備であって、ゼオライト膜モジュールから排出される高温・高圧状態の水素に富む燃料ガスを、そのままの温度・圧力状態で発電設備のガスタービンへ供給することを特徴とするもので、請求項2の発明によれば、エネルギーを有効利用することができて、石炭燃料を用いた発電コストが大幅に低減することができるという効果を奏する。
請求項3の石炭ガス化プロセスにおける二酸化炭素膜分離システムの発明は、請求項1に記載の水性ガスシフト反応炉と、二酸化炭素除去用ゼオライト膜を具備するゼオライト膜モジュールとの組み合わせよりなる燃料ガス生成・二酸化炭素分離ユニットを、順に複数個連続して組み合わせ、各ユニットから生じる水素に富む燃料ガス中に含まれる未反応原料ガスを、次段のユニットの水性ガスシフト反応炉において反応させるとともに、各ユニットで生じる二酸化炭素を回収することを特徴とするもので、請求項3の発明によれば、従来の二酸化炭素吸収法において二酸化炭素(CO)を取り除くためのガス冷却(熱交換器)が不要であるとともに、二酸化炭素吸収法に必要な吸収剤の再生工程がないことに加え、水性ガスシフト反応炉→二酸化炭素除去用ゼオライト膜を具備するゼオライト膜モジュールの組合せを連続してつなげることで、水性ガスシフト反応の反応転化率が向上する。さらに、石炭からガス化させた燃料ガスを高温のまま二酸化炭素(CO)分離することで濃縮させて、ガスタービンへ供給することが可能となるという効果を奏する。
請求項4の発明は、請求項3に記載の燃料ガス製造プロセスにおける二酸化炭素の膜分離システムを用いた石炭ガス化複合発電設備であって、最終段の燃料ガス生成・二酸化炭素分離ユニットのゼオライト膜モジュールから排出される高温・高圧状態の水素に富む燃料ガスを、そのままの温度・圧力状態で発電設備のガスタービンへ供給することを特徴とするもので、請求項4の発明によれば、エネルギーを有効利用することができて、石炭燃料を用いた発電コストが大幅に低減することができるという効果を奏する。
本発明の燃料ガス製造プロセスにおける二酸化炭素の膜分離システムを示すフローシートである。
つぎに、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
石炭を発電燃料として用いる場合、微粉砕した石炭は、まず熱分解反応炉(図示略)に導入される。熱分解反応炉では、高温ガス発生炉において発生する高温ガスに石炭を混合し、熱分解することによって、熱分解反応生成物として熱分解ガス、オイル、チャーが発生する。発生したチャーは、サイクロンによってガス、オイルから分離される。
図1に示すように、分離されたチャーの一部または全量は、高温ガス発生炉(ガス化炉)において酸素ガスによってガス化(部分酸化)され、高温ガス(主成分は水素および一酸化炭素)に変換される。高温ガスは、ついで、水性ガスシフト反応器へ導入され、下記式(1)に示す水性ガスシフト反応によって、一酸化炭素が水素および二酸化炭素へと変換される。
CO+HO=CO+H・ ・ ・ (1)
反応後の燃料ガスには、水素(H)以外にも二酸化炭素(CO)が等モル分含まれている。
本発明による石炭ガス化プロセスにおける二酸化炭素膜分離システムは、水性ガスシフト反応炉からの水性ガスシフト反応により発生する高温・高圧状態の二酸化炭素(CO)と水素(H)の混合ガスを、そのままの温度・圧力状態で二酸化炭素除去用ゼオライト膜を具備するゼオライト膜モジュールに導入し、二酸化炭素を除去するとともに、水素に富む燃料ガスを生成することを特徴とするものである。
ここで、「そのままの温度・圧力状態で」とは、ガス冷却のための設備を介さないことを意味しており、自然放熱などによる温度・圧力低下を排除するものではない。
このような本発明の石炭ガス化プロセスにおける二酸化炭素膜分離システムによれば、従来の二酸化炭素吸収法において二酸化炭素(CO)を取り除くためのガス冷却(熱交換器)が不要であるとともに、二酸化炭素吸収法に必要な吸収剤の再生工程がないことに加え、石炭からガス化させた燃料ガスを高温のまま二酸化炭素(CO)分離することで濃縮させて、ガスタービンへ供給することが可能となる。
そして、本発明の石炭ガス化プロセスにおける二酸化炭素膜分離システムを用いた石炭ガス化複合発電設備は、ゼオライト膜モジュールから排出される高温・高圧状態の水素に富む燃料ガスを、そのままの温度・圧力状態で発電設備のガスタービンへ供給するものである。
この場合の発電設備の発電方式としては、例えば、低負荷運転への切り替えが容易で、かつその際の発電効率も高い複合サイクル発電(ガスタービン+スチームタービン)が好ましい。
本発明の石炭ガス化複合発電設備によれば、エネルギーを有効利用することができて、石炭燃料を用いた発電コストが大幅に低減することができる。
また、本発明の石炭ガス化プロセスにおける二酸化炭素膜分離システムは、上記水性ガスシフト反応炉と、二酸化炭素除去用ゼオライト膜を具備するゼオライト膜モジュールとの組み合わせよりなる燃料ガス生成・二酸化炭素分離ユニットを、順に2〜5個、好ましくは2〜4個連続して組み合わせ、各ユニットから生じる水素に富む燃料ガス中に含まれる未反応原料ガスを、次段のユニットの水性ガスシフト反応炉において反応させるとともに、各ユニットで生じる二酸化炭素を回収することを特徴とするもので、本発明によれば、従来の二酸化炭素吸収法において二酸化炭素(CO)を取り除くためのガス冷却(熱交換器)が不要であるとともに、二酸化炭素吸収法に必要な吸収剤の再生工程がないことに加え、水性ガスシフト反応炉→二酸化炭素除去用ゼオライト膜を具備するゼオライト膜モジュールの組合せを連続してつなげることで、水性ガスシフト反応の反応転化率が向上する。さらに、石炭からガス化させた燃料ガスを高温のまま二酸化炭素(CO)分離することで濃縮させて、ガスタービンへ供給することが可能となる。
そして、本発明の燃料ガス製造プロセスにおける二酸化炭素の膜分離システムを用いた石炭ガス化複合発電設備は、最終段の燃料ガス生成・二酸化炭素分離ユニットのゼオライト膜モジュールから排出される高温・高圧状態の水素に富む燃料ガスを、そのままの温度・圧力状態で発電設備のガスタービンへ供給するものである。
本発明の石炭ガス化複合発電設備によれば、エネルギーを有効利用することができて、石炭燃料を用いた発電コストが大幅に低減することができる。
ここで、本発明の石炭ガス化プロセスにおける二酸化炭素膜分離システムのゼオライト膜モジュールに用いる二酸化炭素除去用ゼオライト膜の種類として代表的なものは、Y型(FAU型)であるが、例えば、多孔質アルミナ等の支持体上に製膜された酸素12員環構造を有するゼオライト膜の表面に、酸素8員環構造を有する複合ゼオライト膜を用いるのが、特に好ましい。これらのゼオライト膜を用いることにより、そのゼオライト種の二酸化炭素に対する吸着力が、水素など他のガスに比較して大きいため、二酸化炭素が優先的にゼオライト膜表面に吸着され、膜の細孔を通って膜二次側に二酸化炭素が拡散移動することで透過し、一方で膜の細孔が二酸化炭素分子で埋まることにより、他のガス分子が細孔に入りにくくなることで、選択的な分離が可能なメカニズムとなっている。
以下、本発明の二酸化炭素膜分離システムのゼオライト膜モジュールに用いる複合ゼオライト膜について説明する。
まず、複合ゼオライト膜に用いられる多孔質支持体としては、例えばアルミナ、シリカ、コージェライト、ジルコニア、チタニア、バイコールガラス、焼結金属などの多孔質体が挙げられるが、これらに限らず、種々の多孔質体を用いることができる。多孔質支持体の形状は、通常は、チューブ状もしくは板状である。多孔質支持体の孔径は、通常、0.01〜5μmであり、好ましくは0.05〜2μmである。
酸素12員環構造を有するゼオライト膜の形成は、例えば、多孔質支持体の表面にゼオライトの粉末(種結晶)の懸濁水溶液を塗布したのち、所定の温度で乾燥したのち、水熱合成させることによって行われる。
原料として用いるゼオライトの種類は、特に限定されず、例えばY型ゼオライト(FAU)、ベータ型ゼオライト(BEA)、モルデナイト(MOR)などが挙げられる。ゼオライト膜の形成のための塗布方法は、特に限定されないが、ラビング(擦り込み)法や浸漬法が好ましい。
ラビング(擦り込み)法は、多孔質支持体の表面にゼオライト粉末懸濁液を擦り込み、次いで所望により乾燥することにより、ゼオライトの粉末(種結晶)を均一塗布する方法である。
また、浸漬法は、ゼオライト粉末懸濁液内に、多孔質支持体を浸し、表面にゼオライトの粉末(種結晶)を均一塗布する方法である。
ゼオライト粉末の塗布および乾燥ののち、水熱合成させるが、この水熱合成により、多孔質支持体上に塗布したゼオライトの粉末からゼオライト膜を形成することができる。水熱合成の温度は、特に限定されないが、多孔質支持体上にゼオライト膜がより均一に生成するという観点から、80〜300℃が好ましく、反応時間は、通常2〜720時間、好ましくは6〜120時間である。
本発明の複合ゼオライト膜は、上記のように、多孔質アルミナ等の支持体上に製膜された酸素12員環構造を有するゼオライト膜の表面に、酸素8員環構造を有するゼオライト膜が設けられているものである。
本発明の二酸化炭素膜分離システムのゼオライト膜モジュールとしては、被分離される混合ガスを管状膜エレメントへ供給する際には、できるだけ乱流状態であることが望ましく、例えば管状膜エレメント外側に一対の外管を設けて二重管構造とし、その膜エレメントと外管の隙間を、10m/s以上の流速で混合ガスが流れるような構造を有するものであるのが好ましい。(特許文献:特開2009−39654参照)
本発明の二酸化炭素膜分離システムのゼオライト膜モジュールに用いる複合ゼオライト膜は、酸素12員環構造を有するゼオライト膜が、FAU型ゼオライト膜により構成され、酸素8員環を有するゼオライト膜が、CHA型ゼオライトまたはMER型ゼオライト膜、好ましくはCHA型ゼオライトにより構成されることが好ましい。
ここで、Y型ゼオライト(FAU)は、天然ゼオライトであるホージャサイトと同じ結晶構造を有するゼオライトであり、酸素の12員環を含む多面体によって形成されているとともに、酸素12員環の細孔径は0.74nmであることが知られており、分子振動により0.95nm程度の分子まで空孔を通過することができる。
一方、CHA型ゼオライトは、その細孔が酸素8員環を含む多面体によって形成されているとともに、酸素8員環の細孔径は0.38nmであることが知られている。このような構造上の特徴を有するCHA型ゼオライトは、ゼオライトの中では比較的細孔径が小さいものである。
また、本発明の二酸化炭素膜分離システムのゼオライト膜モジュールに用いる複合ゼオライト膜において、転換処理を行う前の酸素12員環構造を有するゼオライト膜の膜厚は、高い膜透過度を維持するために、10μm以下が望ましく、0.1μm〜10μmが好ましい。また転換した酸素8員環構造を有するゼオライト層の膜厚は、耐久性の観点からは10nm以上、膜透過度の観点からは2μm以下が好ましい。
なおここで、二酸化炭素(CO)の分子サイズは、0.33nmである。
また、上記ゼオライト膜モジュールに用いる複合ゼオライト膜の製造方法は、例えば、酸素12員環構造を有するゼオライト粉末を添加したアルカリ水溶液中に、支持体上に製膜された酸素12員環構造を有するゼオライト膜を浸漬し、所定の条件下で加熱加圧処理することで、支持体上に製膜された酸素12員環構造を有するゼオライト膜の表面の一部を、酸素8員環構造を有するゼオライト膜に転換させることにより、酸素12員環構造を有するゼオライト膜の表面に酸素8員環構造を有するゼオライト膜が設けられた複合ゼオライト膜を形成する。
このような複合ゼオライト膜の製造方法において、酸素12員環構造を有するゼオライト粉末を0.01〜20wt%、好ましくは1〜10wt%の割合で添加した0.01〜3mol/L、好ましくは0.1〜1mol/Lの水酸化カリウム水溶液中に、支持体上に製膜された酸素12員環構造を有するゼオライト膜を浸漬し、温度80〜150℃、好ましくは95〜125℃、圧力0.05〜2MPa、好ましくは0.1〜1MPaの条件下で、1〜120時間、好ましくは6〜36時間、加熱加圧処理することが好ましい。
また、上記複合ゼオライト膜の製造方法において、酸素12員環構造を有するゼオライト膜が、FAU型ゼオライト膜により構成され、酸素8員環を有するゼオライト膜が、CHA型ゼオライト膜により構成されることが、特に、好ましい。
こうして、多孔質アルミナ管等の基体上に製膜したFAU型ゼオライト膜の表面を、酸素8員環構造を有するゼオライト膜に転換させることにより、従来の合成方法に比べて、酸素8員環構造を有するゼオライト膜層の大幅な薄膜化が可能であり、分子篩機能を付与した複合ゼオライト膜を合成することができる。
特に、基体上に製膜したFAU膜表面のみを、8員環ゼオライトに転換させることで、高い膜透過度を維持したまま分子篩能を維持させる。さらに高い膜透過度を維持するためには、転換処理を行う前のFAU型ゼオライト膜の膜厚は、0.1μm〜10μmが望ましい。また転換した8員環構造を有するCHA型ゼオライト層の膜厚については、耐久性の観点からは10nm以上、膜透過度の観点からは2μm以下が好ましい。
ここで、ゼオライト層の膜厚は、断面を電子顕微鏡によって観察するか、または、ゼオライト膜表面から所定の厚さの層を研削・除去した後、XRD(X線回折)パターンを調べることによって測定することができる。
つぎに、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
まず、微粉砕した石炭は熱分解反応炉(図示略)に導入される。熱分解反応炉では、高温ガス発生炉において発生する高温ガスに石炭を混合し、熱分解することによって、熱分解反応生成物として熱分解ガス、オイル、チャーが発生する。発生したチャーは、サイクロンによってガス、オイルから分離される。
図1に示すように、分離されたチャーの一部または全量は、高温ガス発生炉(ガス化炉)において酸素ガスによってガス化(部分酸化)され、高温ガス(主成分は水素および一酸化炭素)に変換される。高温ガスは、ついで、水性ガスシフト反応器へ導入され、水性ガスシフト反応によって一酸化炭素(CO)が、水素(H)および二酸化炭素(CO)へと変換される。
本発明による石炭ガス化プロセスにおける二酸化炭素膜分離システムは、水性ガスシフト反応炉からの水性ガスシフト反応により発生する高温・高圧状態の二酸化炭素(CO)と水素(H)の混合ガスを、そのままの温度・圧力状態で二酸化炭素除去用ゼオライト膜を具備するゼオライト膜モジュールに導入し、二酸化炭素を除去するとともに、水素に富む燃料ガスを生成することを特徴としている。
すなわち、水性ガスシフト反応炉から排出される反応後の水素(H2)および二酸化炭素(CO)を含む混合ガスは、圧力2〜4MPa、温度200〜400℃程度の状態であるが、これをそのままゼオライト膜のモジュールで受け入れて、二酸化炭素(CO)を除去するとともに、水素に富む燃料ガスを生成するものである。
これにより、水素に富む燃料ガスを、高温ガスのまま燃料としてガスタービンへの供給が可能となる。またガスの圧力が高いため、膜の透過側が大気圧のままでも駆動力となる圧力差は確保され、特にポンプやコンプレッサといった動力も特段に必要としない。
なお、この場合の発電設備の発電方式としては、低負荷運転への切り替えが容易で、かつその際の発電効率も高い複合サイクル発電(ガスタービン+スチームタービン)が好ましい。
本実施例においては、本発明の二酸化炭素膜分離システムのゼオライト膜モジュールに用いる複合ゼオライト膜を、つぎのようにして製造した。
まず、定法により、多孔質アルミナ管(基体)(Hitz日立造船社製)表面にFAU型ゼオライト粉末(種結晶)(東ソー社製)の懸濁水溶液を塗布乾燥したのち、温度100℃で4.75時間、水熱合成させることによってFAU型ゼオライト膜を合成した。転換処理を行う前の多孔質アルミナ管表面のFAU型ゼオライト膜の膜厚は、約2μmであった。
つぎに、ゼオライト膜の転換処理により、複合ゼオライト膜を下記のようにして製造した。
すなわち、オートクレーブ内で、FAU型ゼオライト粉末を、10wt%の割合で添加した0.5mol/Lの水酸化カリウム水溶液中に、上記多孔質アルミナ管よりなる支持体上に製膜された酸素12員環構造を有するFAU型ゼオライト膜を浸漬し、温度95℃、圧力0.1MPaの条件下で、24時間、静置することで加熱加圧処理し、支持体上に製膜されたFAU型ゼオライト膜の表面を、酸素8員環構造を有するCHA型ゼオライト膜に転換させることにより、FAU型ゼオライト膜の表面にCHA型ゼオライト膜が設けられた複合ゼオライト膜を形成した。
このようなゼオライト膜モジュールに用いる複合ゼオライト膜では、多孔質アルミナ管(基体)上に製膜した酸素12員環構造を有するFAU型ゼオライト膜の表面のみを、酸素8員環構造を有するCHA型ゼオライト膜に転換させることで、高い膜透過度を維持したまま二酸化炭素の除去機能を付与したゼオライト膜を合成することができた。なお、転換した酸素8員環構造を有するゼオライト層の膜厚は、0.01〜1μmであると推定され、酸素8員環構造を有するCHA型ゼオライト膜層の大幅な薄膜化を果たすことができた。
本実施例の二酸化炭素膜分離システムのゼオライト膜モジュールとしては、被分離される混合ガスを管状膜エレメントへ供給する際には、できるだけ乱流状態であることが望ましく、例えば管状膜エレメント外側に一対の外管を設けて二重管構造とし、その膜エレメントと外管の隙間を、10m/s以上の流速で混合ガスが流れるような構造を有するものであった。
実施例2
この実施例の石炭ガス化プロセスにおける二酸化炭素膜分離システムでは、上記実施例1の水性ガスシフト反応炉と、二酸化炭素除去用ゼオライト膜を具備するゼオライト膜モジュールとの組み合わせよりなる燃料ガス生成・二酸化炭素分離ユニットを、順に3個連続して組み合わせ、各ユニットから生じる水素に富む燃料ガス中に含まれる未反応原料ガスを、次段のユニットの水性ガスシフト反応炉において反応させるとともに、各ユニットで生じる二酸化炭素を回収した。
このように、水性ガスシフト反応炉の後にゼオライト膜モジュールを並べ、その後段にも同様に水性ガスシフト反応炉+ゼオライト膜モジュールを入れることで、二酸化炭素(CO)が少ない分だけ未反応ガスが反応しやすく平衡状態がシフトされる。これにより燃料ガスへの反応転化率が向上し、石炭燃料の有効活用が促進された。
また、本発明の燃料ガス製造プロセスにおける二酸化炭素の膜分離システムを用いた石炭ガス化複合発電設備は、最終段の燃料ガス生成・二酸化炭素分離ユニットのゼオライト膜モジュールから排出される高温・高圧状態の水素に富む燃料ガスを、そのままの温度・圧力状態で発電設備のガスタービンへ供給した。
本実施例の石炭ガス化複合発電設備によれば、エネルギーを有効利用することができて、石炭燃料を用いた発電コストを大幅に低減することができた。

Claims (4)

  1. 水性ガスシフト反応炉からの水性ガスシフト反応により発生する高温・高圧状態の二酸化炭素(CO)と水素(H)の混合ガスを、そのままの温度・圧力状態で二酸化炭素除去用ゼオライト膜を具備するゼオライト膜モジュールに導入し、二酸化炭素を除去するとともに、水素に富む燃料ガスを生成することを特徴とする、石炭ガス化プロセスにおける二酸化炭素膜分離システム。
  2. ゼオライト膜モジュールから排出される高温・高圧状態の水素に富む燃料ガスを、そのままの温度・圧力状態で発電設備のガスタービンへ供給することを特徴とする、請求項1に記載の石炭ガス化プロセスにおける二酸化炭素膜分離システムを用いた石炭ガス化複合発電設備。
  3. 請求項1に記載の水性ガスシフト反応炉と、二酸化炭素除去用ゼオライト膜を具備するゼオライト膜モジュールとの組み合わせよりなる燃料ガス生成・二酸化炭素分離ユニットを、順に複数個連続して組み合わせ、各ユニットから生じる水素に富む燃料ガス中に含まれる未反応原料ガスを、次段のユニットの水性ガスシフト反応炉において反応させるとともに、各ユニットで生じる二酸化炭素を回収することを特徴とする、燃料ガス製造プロセスにおける二酸化炭素の膜分離システム。
  4. 最終段の燃料ガス生成・二酸化炭素分離ユニットのゼオライト膜モジュールから排出される高温・高圧状態の水素に富む燃料ガスを、そのままの温度・圧力状態で発電設備のガスタービンへ供給することを特徴とする、請求項3に記載の石炭ガス化プロセスにおける二酸化炭素膜分離システムを用いた石炭ガス化複合発電設備。
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