JP2012234098A - 成膜用塗布液の製造方法、成膜用塗布液および塗膜 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】成膜用塗布液の製造方法であって、少なくともシラン化合物またはハロゲン化シランを含むシランカップリング剤に酸性加水分解触媒を加え、pH3.0〜5.0の環境下で前記シラン化合物を加水分解・縮重合することにより、鎖状のシロキサンオリゴマーを含有する液体Aを得る第1工程と、前記第1工程で得られた前記液体Aにシリカ系微粒子を加え、pH5.0〜7.0の環境下で前記シロキサンオリゴマーを加水分解・縮重合する第2工程とを有することを特徴とする成膜用塗布液の製造方法。
【選択図】図1
Description
特許文献1に記載の塗布液は、次のようにして製造される。まず、フッ素原子を有する有機ケイ素化合物を有機溶剤で希釈し、さらに、そこにエポキシ基を有する有機ケイ素化合物を添加する。その後、必要に応じて水または薄い塩酸、酢酸等を添加して加水分解縮重合を行う。次に、平均粒径1〜150nmのシリカ系微粒子を有機溶剤中にコロイド状に分散した分散液を添加する。その後、必要に応じ、硬化触媒、光重合開始剤、酸発生剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを添加し十分に撹拌する。以上のようにして塗布液が製造される。
しかしながら、本発明者らが、この塗布液を用いて成膜した反射防止膜について観察や試験を行ったところ、反射防止膜中でシリカ系微粒子が凝集していることを発見した。このようなシリカ系微粒子の凝集が生じると、密な塗膜を形成することが困難となり、耐水性、耐薬品性、耐熱性、耐傷性が低下するという問題がある。
本発明の成膜用塗布液の製造方法は、成膜用塗布液の製造方法であって、
少なくとも下記一般式(1)で表されるシラン化合物および下記一般式(2)で表されるハロゲン化シランの少なくとも一方を含むシランカップリング剤に酸性加水分解触媒を加え、pH3.0〜5.0の環境下で前記シラン化合物および前記ハロゲン化シランの少なくとも一方を加水分解・縮重合することにより、鎖状のシロキサンオリゴマーを含有する液体Aを得る第1工程と、
前記第1工程で得られた前記液体Aにシリカ系微粒子を加え、pH5.0〜7.0の環境下で前記シロキサンオリゴマーを加水分解・縮重合する第2工程とを有することを特徴とする。
R1 nR2 pSiZ4−(n+p)・・・・・・(1)
(式中、R1、R2は、炭素数1〜16の有機基で少なくとも一方がエポキシ基を含む。Zは加水分解性基。n、pは、0〜2の整数であって1≦n+p≦3である。)
XmR3 3−mSi−Y−SiR3 3−mXm・・・・・・(2)
(式中、R3は、炭素数1〜6の一価炭化水素基。Yはフッ素原子を1個以上含有する二価有機基。Xは加水分解性基。mは1〜3の整数である。)
これにより、密な塗膜を成膜することのできる成膜用塗布液を製造することができる。
これにより、鎖状のシロキサンオリゴマーをより多く生成することができるため、より密な塗膜を成膜することのできる成膜用塗布液を製造することができる。
本発明の成膜用塗布液の製造方法では、前記第2工程では、前記シラン化合物の縮重合反応の速度の方が加水分解反応の速度よりも速いことが好ましい。
これにより、架橋構造のシロキサンオリゴマーをより多く生成することができる。さらに、シリカ系微粒子の凝集を防止または抑制することができる。これは、鎖状のシロキサンオリゴマーをシリカ系微粒子の表面にグラフト化するためと推察することができる。
前記第1工程の縮重合反応の速度は、前記第2工程の縮重合反応の速度よりも遅いことが好ましい。
これにより、鎖状または架橋構造のシロキサンオリゴマーをより多く生成することができると共に、シリカ系微粒子の凝集をより効果的に防止または抑制することができる。
本発明の成膜用塗布液の製造方法では、前記鎖状のシロキサンオリゴマーは、前記環状のシロキサンオリゴマーよりも多く前記液体Aに含まれていることが好ましい。
これにより、より密な塗膜を成膜することのできる成膜用塗布液を製造することができる。
これにより、反射防止性、防汚性、撥水性に優れた膜を成膜することのできる成膜用塗布液となる。
これにより、屈折率の低い塗膜を成膜することのできる成膜用塗布液となる。
本発明の成膜用塗布液の製造方法では、成膜用塗布液は、反射防止膜を成膜するためのものであることが好ましい。
これにより、例えば、メガネレンズ等のレンズ(プラスチックレンズ)に形成される反射防止膜を成膜するための成膜用塗布液となる。
これにより、密な塗膜を成膜することのできる成膜用塗布液を提供することができる。
本発明の塗膜は、本発明の成膜用塗布液を用いて成膜されたことを特徴とする。
これにより、密な塗膜を提供することができる。
図1は、シリカゾルのpH値と反応速度との関係を示したグラフ、図2は、本発明の塗膜の好適な実施形態を示す模式的断面図、図3は、成膜用塗布液で成膜された塗膜をラマン分光法で解析したグラフ、図4は、実施例および比較例の塗膜の光学顕微鏡写真である。
本実施形態の成膜用塗布液は、例えば、メガネレンズ等の各種レンズ(プラスチックレンズ)上に形成され、反射防止性能を有する反射防止膜を成膜するのに用いる塗布液である。
成膜用塗布液の製造方法は、下記の第1工程と第2工程とを有している。
第1工程は、下記一般式(1)で表されるシラン化合物と、下記一般式(2)で表わされるハロゲン化シランとを含むシランカップリング剤に酸性加水分解触媒を加え、pH3.0〜5.0の環境下で、シラン化合物、ハロゲン化シランをそれぞれ加水分解・縮重合することにより、鎖状のシロキサンオリゴマーを含有する液体Aを得る工程である。
(式中、R1、R2は、炭素数1〜16の有機基で少なくとも一方がエポキシ基を含む。Zは加水分解性基。n、pは、0〜2の整数であって、1≦n+p≦3である。)
XmR3 3−mSi−Y−SiR3 3−mXm・・・・・・(2)
(式中、R3は、炭素数1〜6の炭化水素基を表し、Yは、フッ素原子を1個以上含有する二価の有機基を表し、Xは、加水分解性基を表す。また、mは、1〜3の整数である。)
これらの中でも、前記式(1)で表されるシラン化合物としては、n+p=1であるもの、すなわち、(−SiZ基)を3つ有する3官能型のアルコキシシランであるのが好ましい。これにより、後述する鎖状のシロキサンオリゴマーを効率的に生成することができる。
前記式(2)で表されるハロゲン化シランとしては、特に限定されないが、フッ素原子の個数が4個以上50個以下であるのが好ましく、4個以上24個以下であるのがより好ましい。これにより、成膜用塗布液を用いて成膜された塗膜は、優れた反射防止性、防汚性、撥水性、耐擦傷性、耐薬品性等を発揮することができる。
−CH2CH2(CF2)nCH2CH2−
−C2H4−CF(CF3)−(CF2)n−CF(CF3)−C2H4−
(nは、2〜20の整数である。)
前記式(2)中のmは、1〜3の整数であるが、2または3であるのが好ましく、3であるのがより好ましい。これにより、成膜された塗膜をより高硬度なものとすることができる。
(CH3O)3Si−C2H4−C6F12−C2H4−Si(OCH3)3
(CH3O)3Si−C2H4−C8F16−C2H4−Si(OCH3)3
(C2H5O)3Si−C2H4−C4F8−C2H4−Si(OC2H5)3
(C2H5O)3Si−C2H4−C6F12−C2H4−Si(OC2H5)3
(C2H5O)2(CH3)Si−C2H4−C6F12−C2H4−Si(CH3)(OC2H5)2
酸性加水分解触媒は、pH3.0〜5.0の環境下で、前記式(1)で表されるシラン化合物と前記式(2)で表わされるハロゲン化シランとをそれぞれ加水分解・縮重合するために加えられる。酸性加水分解触媒としては、pH3.0〜5.0の環境とすることができれば、特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、シュウ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、乳酸等の有機酸が挙げられる。
液体A中には、鎖状のシロキサンオリゴマーの方が環状のシロキサンオリゴマーよりも多く含まれている。この理由について以下、詳細に説明する。
図1に示すように、加水分解反応速度は、pH1〜7にかけて徐々に低くなり、pH7〜14にかけて徐々に高くなる。一方、縮重合反応速度は、pH1〜2にかけて徐々に低くなり、pH2〜7にかけて徐々に高くなり、pH7〜14にかけて再び徐々に低くなる。また、pH4程度で加水分解反応速度と縮重合反応速度がほぼ等しくなる。
なお、上記の反応は、pH3.0〜5.0程度であれば良いが、pH4.0程度であるのがより好ましい。前述したように、pH4.0の環境下では、加水分解反応速度と縮重合反応速度が等しいため、環状のシロキサンオリゴマーの生成を抑えつつ、効率よくより多くの鎖状のシロキサンオリゴマーを生成することができる。
第2工程は、第1工程で得られた液体Aにシリカ系微粒子を加え、pH5.0〜7.0の環境下で液体A中に含まれる鎖状のシロキサンオリゴマーを加水分解・縮重合する工程である。
シリカ系微粒子は、内部に空洞を有する中空シリカ粒子である。この中空シリカ粒子は、SiO2で構成されている。このような中空シリカ粒子は、屈折率が低いため、成膜された塗膜の屈折率を充分に低くすることができ、反射防止膜として好適に利用することができる。また、このような中空シリカ粒子は、コロイド領域の微粒子であり分散性に優れているので、中空シリカ粒子の凝集を効果的に防止または抑制することができる。
シリカ系微粒子の屈折率は、低い程よく、具体的には、1.40以下程度であるのが好ましく、1.35以下であるのがより好ましい。これにより、成膜された塗膜は、より優れた反射防止性能を発揮することができる。なお、シリカ系微粒子の屈折率が上記数値を超えると、成膜された塗膜の反射防止性能が不充分となるおそれがある。
シリカ系微粒子を分散する分散媒としては、特に限定されないが、中性または塩基性であることが好ましい。これにより、液体Aとの混合物のpHを3.0〜5.0の領域から塩基性側へシフトさせることができる。
このような分散液を液体Aに加えることにより、液体A中にシリカ系微粒子を供給するとともに、液体Aと分散液との混合物のpHを5.0〜7.0とし、この環境下で、液体Aに含まれる鎖状のシロキサンオリゴマーを加水分解・縮重合する。
そして、例えば、液体Bに必要に応じて溶媒を混合することにより、本発明の成膜用塗布液が得られる。
また、バインダー成分として架橋構造を有するシロキサンオリゴマーを含むため、このような成膜用塗布液を用いて成膜された塗膜は、密着性、膜強度、耐擦傷性に優れたものとなる。
なお、シリカ系微粒子の含有量が上記最小値よりも少ないと、塗膜の屈折率が充分低くならず、反射防止性能が不充分となる場合がある。反対に、シリカ系微粒子の含有量が上記上限値を超えると、硬化被膜の機械的強度が低下するおそれがある。
次いで、成膜用塗布液を用いて成膜された塗膜について説明する。
図2に示すように、塗膜1は、反射防止膜であり、例えば、メガネレンズ等のレンズ基板100の表面に形成される。レンズ基板100としては、例えば、プラスチックレンズで構成されたレンズ生地101と、レンズ生地101の表面に形成されたプライマー層102と、プライマー層102の表面に形成されたハードコート層103とを有するものが挙げられ、ハードコート層103の表面に塗膜1が形成されている。なお、プライマー層102およびハードコート層103は、それぞれ省略してもよい。
プライマー層102は、レンズ生地101とハードコート層103との間に介在し、これらの密着性を向上させるための層である。このようなプライマー層102は、例えば、レンズ生地101とハードコート層103の双方に密着性を有する(A)成分と、プライマーの屈折率を発現するとともに、フィラーとしてプライマー層102の架橋密度向上に作用して、耐水性、耐候性の向上させるための(B)成分とを含む組成物をコーティングすることで形成することができる。
ハードコート層103は、レンズ生地101の表面を保護するための層である。このようなハードコート層103としては、特に限定されないが、下記の(C)成分および(D)成分を含む組成物をコーティングすることで形成することができる。
なお、レンズ基板100に前記成膜用塗布液を塗布する前に、レンズ基板100に対してプラズマ処理(大気プラズマ)を施すのが好ましい。これにより、レンズ基板100に対してより高い密着力を有する塗膜1を形成することができる。
また、塗膜1の厚さ(平均厚さ)は、特に限定されないが、10nm以上300nm以下であるのが好ましく、50nm以上150nm以下であるのがより好ましい。
また、塗膜1の屈折率は、1.40以下であるのが好ましい。これにより、優れた反射防止性能を発揮することができる。
このような塗膜1は、例えば、下記のように形成することができる。
まず、レンズ基板100のハードコート層103上に成膜用塗布液を塗布する。塗布方法は、特に限定されず、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、スリットコーター法、転写法等の塗布方法を用いることができる。この中でも、スピンコート法を用いるのが好ましく、これにより、塗膜1の膜厚の均一性や低発塵性が優れたものとなる。
次に、ハードコート層103上に塗布された成膜用塗布液を、90℃〜110℃程度の温度で1分〜10分程度仮焼成する。仮焼成は、不活性ガスとしての窒素ガス雰囲気下または空気雰囲気下で行うことができる。
次に、仮焼成された成膜用塗布液を本焼成する。本焼成は、110℃〜130℃程度の温度で1時間〜2時間程度行う。本焼成は、不活性ガスとしての窒素ガス雰囲気下または空気雰囲気下で行うことができる。
以上、本発明の成膜用塗布液の製造方法、成膜用塗布液および塗膜について説明したが、本発明はこれに限定されるものでない。例えば、成膜用塗布液の製造方法では、必要に応じて工程を追加してもよい。また、前述した実施形態では、レンズの反射防止膜に用いられる場合について説明したが、用途はこれに限定されず、例えば、配線基板の絶縁膜に用いてもよい。本発明の塗膜は、優れた絶縁性を有しているため、絶縁層として好適に用いることができる。
(実施例1)
ステンレス製容器内に、下記式(A)で表されるアルコキシシラン(シラン化合物)2.8重量部に、下記式(B)で表わされるハロゲン化シラン27.8重量部と、0.1×10−3モル/Lの硝酸水溶液152.9重量部とを加え、これをよく混合し、25℃でのpHが4.0の混合液を得た。この混合液を25℃で120時間攪拌して固形分10.0重量%の液体を得た。
ステンレス製容器内に、上記式(A)で表されるアルコキシシラン2.8重量部に、上記式(B)で表わされるハロゲン化シラン27.8重量部と、0.1モル/Lの塩酸水溶液152.9重量部とを加え、これをよく混合し、25℃でのpHが1.0の混合液を得た。この混合液を25℃で120時間攪拌して固形分10.0重量%の液体を得た。
上述した実施例1および比較例1の成膜用塗布液に、プロピレングリコールモノメチルエーテル420部を加えて希釈してコーティング液を得た。次に、コーティング液をスピンコート法によりレンズ基板上に塗布し、これを100℃で10分間、大気中で仮焼成した。次に、120℃で1時間半、大気中で本焼成した。これにより塗膜を形成した。この塗膜の厚さ(平均厚さ)は、100nmであった。
(1)プライマー組成物の調製
ステンレス製容器内に、メチルアルコール3700重量部、水250重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル1000重量部を投入し、十分に攪拌したのち、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素を主体とする複合微粒子ゾル(アナターゼ型結晶構造、メタノール分散、全固形分濃度20重量%、触媒化成工業(株)、商品名オプトレイク1120Z U―25・A8)2800重量部を加え撹拌混合した。次いでポリウレタン樹脂2200重量部を加えて攪拌混合した後、さらにシリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名L−7604)2重量部を加えて一昼夜撹拌を続けた後、2μmのフィルターでろ過を行い、プライマー組成物を得た。
ステンレス製容器内にブチルセロソルブ1000重量部を取り、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1200重量部を加えて十分攪拌した後、0.1モル/リットル塩酸300重量部を添加して一昼夜攪拌を続け、シラン加水分解物を得た。このシラン加水分解物中にシリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製;商品名L−7001)30重量部を加えて1時間撹拌した後、酸化チタン、酸化スズ、酸化ケイ素を主体とする複合微粒子ゾル(ルチル型結晶構造、メタノール分散、触媒化成工業(株)製;商品名オプトレイク1120Z 8RU―25、A17)7300重量部を加え2時間撹拌混合した。次いでエポキシ樹脂(ナガセ化成(株)製、商品名デナコールEX−313)250重量部を加えて2時間攪拌した後、鉄(III)アセチルアセトナート20重量部を加えて1時間攪拌し、2μmのフィルターでろ過を行い、ハードコート組成物を得た。
チオウレタン系プラスチックレンズ基材(セイコーエプソン(株)製、商品名セイコースーパーソブリン生地、屈折率1.67)を準備した。そして、準備したレンズ基材をアルカリ処理(50℃に保たれた2.0規定水酸化カリウム水溶液に5分間浸漬した後に純水洗浄を行い、次いで25℃に保たれた0.5規定硫酸に1分間浸漬して中和する)し、純水洗浄及び乾燥、放冷を行った。そして、(1)において調製したプライマー組成物中に浸漬し、引き上げ速度30cm/min.で引き上げて80℃で20分焼成し、レンズ基材表面にプライマー層を形成した。そして、プライマー層が形成されたレンズ基材を、(2)において調製したハードコート組成物中に浸漬し、引き上げ速度30cm/min。で引き上げて80℃で30分焼成し、プライマー層上にハードコート層を形成した。その後、125℃に設定したオーブン内で3時間加熱して、プライマー層とハードコート層が形成されたプラスチックレンズを得た。形成されたプライマー層の膜厚は0.5μm、ハードコート層の膜厚は2.5μmであった。
そして、プライマー層とハードコート層が形成されたプラスチックレンズを、プラズマ処理(大気プラズマ)したものを前記レンズ基板として用いた。
実施例1および比較例1の成膜用塗布液で成膜された塗膜を、それぞれ、ラマン分光法で解析した。そのグラフを図3に示す。ここで、波数500cm−1の領域がSiO四員環に起因するピークであり、波数950cm−1の領域がSi欠損に起因するピークである。
また、Si欠損に起因するピークを見ると、実施例1のピーク強度が比較例1のピーク強度よりも著しく小さい。これにより、実施例1の成膜用塗布液を用いて成膜された塗膜は、比較例1の成膜用塗布液を用いて成膜された塗膜よりも、Siの結晶性が向上していることがわかる。
(4−1)耐温水性
眼鏡フレーム形状に合わせてレンズ基板(実施例1および比較例1の成膜用塗布液で成膜された塗膜)を玉摺り加工した後、60℃の温水中に20日間浸漬させた。その後レンズを温水中から取り出して水冷し、水滴を擦り取った後、目視で塗膜の膜剥がれの状態を下記のA〜Dの基準で評価した。その結果を下記の表1に示す。
A:全く膜剥がれがない(剥がれの面積率0%)
B:ほとんど膜剥がれがない(剥がれの面積率1〜19%)
C:やや剥がれが発生(剥がれの面積率20〜49%)
D:膜剥がれが発生(剥がれの面積率50%以上)
実施例1および比較例1の成膜用塗布液で成膜された塗膜を光学顕微鏡(オリンパス株式会社製;商品名「BX50」)を用いて観察した。その結果を図4に示す。なお、図4中の(a)が実施例1を示し、(b)が比較例1を示す。
図4から明らかなように、実施例1の塗膜は、比較例1の塗膜と比較して白く見える点Aの数が極めて少ない。具体的には、0.71mm(縦)×0.95mm(横)の範囲にて、実施例1の塗膜中に発生した点Aが118個であり、比較例1の塗膜中に発生した点Aが727個であった。すなわち、実施例1の塗膜では、比較例1の塗膜と比較して点Aが83.8%減少した。
Claims (11)
- 成膜用塗布液の製造方法であって、
少なくとも下記一般式(1)で表されるシラン化合物および下記一般式(2)で表されるハロゲン化シランの少なくとも一方を含むシランカップリング剤に酸性加水分解触媒を加え、pH3.0〜5.0の環境下で前記シラン化合物および前記ハロゲン化シランの少なくとも一方を加水分解・縮重合することにより、鎖状のシロキサンオリゴマーを含有する液体Aを得る第1工程と、
前記第1工程で得られた前記液体Aにシリカ系微粒子を加え、pH5.0〜7.0の環境下で前記シロキサンオリゴマーを加水分解・縮重合する第2工程とを有することを特徴とする成膜用塗布液の製造方法。
R1 nR2 pSiZ4−(n+p)・・・・・・(1)
(式中、R1、R2は、炭素数1〜16の有機基で少なくとも一方がエポキシ基を含む。Zは加水分解性基。n、pは、0〜2の整数であって1≦n+p≦3である。)
XmR3 3−mSi−Y−SiR3 3−mXm・・・・・・(2)
(式中、R3は、炭素数1〜6の一価炭化水素基。Yはフッ素原子を1個以上含有する二価有機基。Xは加水分解性基。mは1〜3の整数である。) - 前記第1工程では、前記シラン化合物の加水分解反応と縮重合反応の速度がほぼ同じである請求項1に記載の成膜用塗布液の製造方法。
- 前記第2工程では、前記シラン化合物の縮重合反応の速度の方が加水分解反応の速度よりも速い請求項1または2に記載の成膜用塗布液の製造方法。
- 前記第1工程の加水分解反応の速度は、前記第2工程の加水分解反応の速度よりも速く、
前記第1工程の縮重合反応の速度は、前記第2工程の縮重合反応の速度よりも遅い請求項1ないし3のいずれかに記載の成膜用塗布液の製造方法。 - 前記第1工程で得られる前記液体Aには、前記鎖状のシロキサンオリゴマーと共に、環状のシロキサンオリゴマーが含まれている請求項1ないし4のいずれかに記載の成膜用塗布液の製造方法。
- 前記鎖状のシロキサンオリゴマーは、前記環状のシロキサンオリゴマーよりも多く前記液体Aに含まれている請求項5に記載の成膜用塗布液の製造方法。
- 前記シランカップリング剤には、前記一般式(1)で表されるシラン化合物および前記一般式(2)で表わされるハロゲン化シランが含まれている請求項1ないし6のいずれかに記載の成膜用塗布液の製造方法。
- 前記シリカ系微粒子は、中空シリカ粒子である請求項1ないし7のいずれかに記載の成膜用塗布液の製造方法。
- 成膜用塗布液は、反射防止膜を成膜するためのものである請求項1ないし8のいずれかに記載の成膜用塗布液の製造方法。
- 請求項1ないし9のいずれかに記載の成膜用塗布液の製造方法によって製造されることを特徴とする成膜用塗布液。
- 請求項10に記載の成膜用塗布液を用いて成膜されたことを特徴とする塗膜。
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