従来、一般の家屋等において、フックのような吊り下げ用又は引っ掛け用の金具、棚や収納ケースや装飾物或いは鏡や額縁等の物品を、石膏ボード、コンクリート、べニヤ板のような木材等の壁材からなる壁に対して取り付けることが行われている。このような物品の壁への取付け構造としては、ピンによって物品を直接に固定する構造、或いはピンを壁材に固定し、その固定されたピンに物品を直接又はアダプタを介して掛け止める構造がある。後者の場合、物品はピンに対して掛け止めてあるだけなので、周囲に取付け専用の器具や装置が物品の外にはみ出ることが少なく、見栄えが良い。更に、物品をピンに対する掛け止めを外すことで、物品を壁から取り外すことも簡単である。
物品を壁に掛け止める場合、壁が耐えられる荷重はその壁材の種類によって異なる。したがって、物品の重さに加えて、壁の種類を考慮して、使用するピンの形態及び個数が選択されている。
壁面に装着する装着具の一例として、特許文献1に開示されているものがある。この装着具は、ピン頭部と当該ピン頭部から延びるピン針部とを備えていて、当該ピン針部を壁に突き刺して壁に取り付けられた画鋲状のピンに対して、ピン頭部を抱き込むようにピンに係合する係合部材を、壁に取り付けたい装飾物に取り付けておき、当該係合部材を画鋲状のピンに係合させることで、装飾物を壁に取り付けることを可能にしている。
ピンは、取り付ける装飾物が軽いものであれば、突き刺しによって壁に突き刺される針の形態にすることができる。しかしながら、装飾物が重いものであると、針の代わりに釘や或いはねじが切られたねじ釘のような形態が用いられ、釘を壁に打ち込む或いはねじ釘を壁にねじ込むことにより、ピンを壁に取り付けることが行われている。
室内の模様替え、或いは住民が引っ越し等で退去する場合、掛け止めていた物を取り外してしまう場合には、掛け止めに用いていたピンも壁から取り除くことが一般的である。石膏ボード、ベニヤ等の木材、或いはマンション壁のようなコンクリートである壁材の場合、壁に刺したピンを取り外すと、ピンが刺されていた壁の箇所には大きな穴が残り、室の美観や価値が損なわれるおそれがある。特に、ねじ釘のような形態のものはこの傾向が強いと言える。この穴を埋める作業は手間が掛かり、しかもその周囲から目立たないように且つ低コストで穴を埋めることは非常に難しい。
また、コンクリート壁のような硬い壁に突き刺す壁装着用突き刺しピンにおいては、壁の抵抗力が大きく、それに打ち勝つ大きな力で突き刺しピンを打ち込む必要がある。しかしながら、そのような大きな力で突き刺しピンを硬質の壁に対して真っ直ぐな姿勢を維持しながら突き刺し続けることは困難である。即ち、突き刺しピンは、打ち込み当初や打ち込み途中から、ピン自体が変形し易い、又は突き刺しピンの姿勢が変化し易い。突き刺しピン自体が変形する又はその姿勢が変形をすると、壁に対して正しい姿勢で突き刺しピンを取り付けられず、また、刺しピンが壁から外れ易くなる等の、不具合を生じる。
そこで、壁に突き刺される針部材と、当該針部材の根元部分が固定されているヘッド部材とを備えており、壁に取り付けられる物品が当該ヘッド部材に係合可能となっている壁装着用突き刺しピンにおいて、コンクリート壁のような硬質の壁に対して、当該突き刺しピンを、その安定した姿勢を維持しながら突き刺し続けることを可能にする点で解決すべき課題がある。
この発明の目的は、上記課題を解決することであり、石膏ボードのような比較的柔らかい壁に対するばかりでなく、コンクリートのような比較的硬質の壁に対しても、正確且つ確実に突き刺すことができる壁装着用突き刺しピンを提供することである。
上記の課題を解決するため、この発明による壁装着用突き刺しピンは、壁に突き刺される針部材と、当該針部材の根元部分が固定されているヘッド部材とを備えており、壁に取り付けられる物品が当該ヘッド部材に係合可能となっており、前記針部材は先端部分が尖った少なくとも二本の細長い板状ピンを有しており、前記板状ピンは、板面が共通の第1面内に存在するように配置された第1群と、板面が前記第1面と平行な共通の第2面内に存在するように配置された第2群とに区分けされており、前記第1群に属する前記板状ピンは第1高さを有しており、第2群に属する前記板状ピンは前記第1高さよりも低い第2高さを有していることを特徴としている。
この壁装着用突き刺しピンによれば、少なくとも二本の細長い板状ピンが第1群のピンと第2群のピンとに区分けされていて、しかも第2群に属する板状ピンの高さ(第2高さ)は第1群に属する板状ピンの高さ(第1高さ)よりも低くされているので、壁装着用突き刺しピンを壁に突き刺していくときに、当初は全部の板状ピンが壁に突き刺されていくのではなく、高さの高い第1群の板状ピンのみが壁に突き刺されていく。したがって、突き刺し力は第1群の板状ピンに集中するので、一本の板状ピン当たりの突き刺し力が大きくなって板状ピンは壁に突き刺し易くなる。第1群の板状ピンが壁に刺し込まれると、次に、高さの低い第2群の板状ピンによる壁への突き刺しが、第1群の板状ピンによって案内されながら開始される。壁装着用突き刺しピンは、比較的硬質の壁に対しても、突き刺しの途中で姿勢を変更することなく、姿勢を正しく保ったまま安定して確実に突き刺すことができる。
この壁装着用突き刺しピンにおいて、前記第1群に属する前記板状ピンは、前記根元部分と前記先端部分の間の中間部において湾曲したものとすることができる。このように、第1群に属する板状ピンを根元部分と先端部分の間の中間部において湾曲させることで、壁内に突き刺された状態では、湾曲された中間部が抜け出しに対して壁と摩擦係合をして抵抗を示し、第1群に属する板状ピンが、そして延いては壁装着用突き刺しピンが壁から抜け出るのを防止される。
この壁装着用突き刺しピンにおいて、前記第1群に属する前記板状ピンは二本又はそれ以上の本数であり、前記第2群に属する前記板状ピンは一本又はそれ以上の本数であり且つ前記第1群に属する前記板状ピンの本数と等しいかそれよりも少ない本数であるとすることができる。当初、高さの高い第1群の板状ピンが壁に突き刺されるが、第1群に属する板状ピンの本数を二本とする場合には、最小の数に分散されて突き刺し力の減少程度が最小限に抑えられ、且つ壁に当接する箇所が二カ所あって当初の突き刺しが安定する。 第1群に属するピンの先端が壁の中に入ったあと、第2群に属するピンの先端が壁に刺さり、両群のピンは平行に維持される。刺すときにピンが安定しないとピンが左右に揺れ穴が大きくなり強度が弱くなる原因にもなるが、この突き刺しピンであれば、壁に刺す時にピンの姿勢が安定して壁へ刺しやすくなる。また、壁に突き刺しが完了した状態では、両群合わせて三本のピンが存在しており、二本のピンの場合よりもより安定して且つ強度が増す。第2群のピンは、少なくとも一本存在しているが、二本とする場合には、両群のピンの合計は少なくとも四本となり、更に安定と強度を増すこともできる。
この壁装着用突き刺しピンにおいて、前記第1群に属する前記板状ピンの前記先端部分は板厚方向に反らせてあり、そのうちの一部の前記板状ピンと別の一部の前記板状ピンの反り方向が逆であるとすることができる。第1群に属する板状ピンの先端部分を板厚方向に反り方向を逆にして反らせてあるので、第1群に属する板状ピンを壁に突き刺していくと、板状ピンは、先端部分を反らせた方向に応じて、互いに逆な方向に逸れるように壁中に突き刺せられる。したがって、壁装着用突き刺しピンは、その全体としての姿勢は互いに相殺されて変更されないが、壁から抜け出す方向の力が突き刺しピンに作用したときに、各板状ピンはその抜け出し方向の力に対して抵抗となり、壁装着用突き刺しピンは安定して壁に取り付けられた状態に維持される。
この壁装着用突き刺しピンにおいて、前記ヘッド部材は樹脂で形成されており、前記針部材は、前記根元部分がインサート成形されることにより、前記ヘッド部材に固定することができる。即ち、前記針部材は、前記根元部分を前記ヘッド部材にインサート成形することにより、樹脂で形成されるヘッド部材に簡単に且つ強固に固定される。
この壁装着用突き刺しピンにおいて、前記板状ピンの細長平板の表面には前記針部の長手方向に延びるリブを形成することができる。細長平板に働く曲げについては、一般に、その長手方向に直交し且つ当該平板の面内に延びる軸の回りの曲げ(即ち、長手方向に対して進むときに板面に直交する方向に撓む曲げ)に対する剛性が最も弱い。板状ピンの細長平板の表面にその長手方向に延びるリブを形成することで、板状ピンが長手方向の曲げ剛性が向上するので、長手方向に伸びる線を梁の線とする曲げ或いは座屈を起こし難い構造にすることができる。
この壁装着用突き刺しピンにおいて、前記リブは、前記ヘッド部材に埋設されている前記根元部分にまで延びて形成することができる。板状ピンに形成するリブを、ヘッド部材に埋設されている根元部分にまで延びて形成することにより、板状ピンは、ヘッド部材に埋設されている根元部分から強度と剛性を高めることができ、当該根元部分から突き出る板状ピンの付け根で生じ易い曲げ変形や座屈を防ぐことができる。ヘッド部材を樹脂で成形するときには、樹脂にリブが埋設されることになるので、針部材と樹脂製のヘッド部材との結合を高めることができる。
この壁装着用突き刺しピンにおいて、前記板状ピンの前記先端部分は、三角山状又は鏃状に形成することができる。板状ピンの先端部分を三角山状又は鏃状に形成することで、突き刺しピンを壁に突き刺すときに、板状ピンに加える力が先端部分に集中して壁に突き刺し易くなる。また、鏃状に形成する場合には、突き刺した後に板状ピンが壁から抜け出るのを防止することができ、壁への保持性を高めることができる。
この壁装着用突き刺しピンにおいて、前記板状ピンは、板厚が、前記根元部分から前記先端部分まで一様な厚さ、又は前記根元部分から前記先端部分に向かって次第に薄くされている厚さである、とすることができる。板状ピンは、板材から打ち抜いたものを加工することで製作可能である。この場合、板状ピンは、根元部分から先端部分まで一様な板厚となる。更に、打ち抜きの際又は打ち抜きの後、プレス加工によって根元部分から先端部分に向かって次第に薄くすることもでき、この構造の板状ピンは、板厚において先細となり、壁への突き刺しが容易化される。
この壁装着用突き刺しピンは、壁に突き刺される少なくとも二本のピンを有している針部材と、当該針部材の根元部分が埋設される樹脂製のヘッド部材とを備えている突き刺しピンであって、前記針部材は先が尖った細長い平板状の板状ピンであり、当該細長い平板状のピンの表面には針部材の長手方向に延びるリブが形成されている。本壁装着用突き刺しピンによれば、壁に突き刺される針部は先が尖った細長平板状の針部であって、その細長平板の表面には針部の長手方向に延びるリブが形成されているので、針部が硬い壁に刺し込まれるときに、その長手方向に進むに従って板面に直交する方向の撓み曲げに対する高い剛性によって容易には座屈しない。また、針部は、金属板の打ち抜きと、塑性変形によるリブの加工とを、例えば同時に行うことで簡単に製作することができる。更に、針部を突き刺すとき、及び突き刺した後に物品を吊り下げる或いは支持したときに、針部はリブによって強度が保たれているので、針部は大きな荷重を支えることができる。
この発明は、壁に突き刺される針部材と、当該針部材の根元部分が固定されているヘッド部材とを備えており、当該ヘッド部材が壁に取り付けられる物品に係合可能となっている壁装着用突き刺しピンであって、針部材は先端部分が尖った少なくとも二本の細長い板状ピンを有しており、板状ピンは、板面が共通の第1面内に存在するように配置された第1群と、板面が第1面と平行な共通の第2面内に存在するように配置された第2群とに区分けされており、第1群に属する板状ピンは第1高さを有しており、第2群に属する板状ピンは第1高さよりも低い第2高さを有しているので、壁装着用突き刺しピンを壁に突き刺していくときに、当初は高さの高い第1群の板状ピンのみが壁に突き刺されていくので、突き刺し力は第1群の板状ピンに集中し、板状ピンは壁に突き刺し易くなる。第1群の板状ピンが壁に刺し込まれると、次に、高さの低い第2群の板状ピンによる壁への突き刺しが開始され、第2群の板状ピンは、第1群の板状ピンによって案内されながら、姿勢を正しく保ったまま安定して確実に壁に突き刺されていく。したがって、壁装着用突き刺しピンは、柔らかい材質の壁である場合は勿論のこと、コンクリートのような比較的硬質の壁に対して突き刺す場合も、安定した姿勢を維持しながら突き刺し続けることができ、正確で、確実で、且つ突き刺しの失敗を可及的に少なくして、突き刺すことができる壁装着用突き刺しピンを提供することができる。
以下、添付した図面に基づいて、この発明による壁装着用突き刺しピンの実施例を説明する。
図1はこの発明による壁装着用突き刺しピン(以下、簡単のため「突き刺しピン」と略す。)の実施例1を示す図であって、図1の(a)はその全体を示す斜視図、(b)はその平面図、(c)はその側面図、(d)はその背面図である。図2は図1に示す突き刺しピンの針部材を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は裏面図である。また、図3は図1に示す突き刺しピンのヘッド部材を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
図1に示す本発明の実施例1においては、突き刺しピン10は、ばね鋼のようなステンレス等の金属製の針部材11と、針部材11の根元部分が埋設されて固定されている樹脂製のヘッド部材12とを備えている。突き刺しピン10は、針部材11を壁に突き刺した状態で、ヘッド部材12が壁に取り付けられる物品に係合可能となっている。
実施例1では、針部材11は、図2にも示すように、三本の細長い薄板状の板状ピン13,14,15と、これら板状ピン13〜15に連続し且つ共通している根元部分16とから構成されている。三本の板状ピン13,14,15はすべて同じ方向に向かって延びており、したがってすべて互いに平行である。第1群に属する二本の板状ピン13,14は、共通の第1面内に存在するように配置されており、板状ピン13,14の針幅程度(例示するものは針幅よりも僅かに細いが、これに限らない)隙間20を挟んで互いに平行に延びている。第2群に属するもう一本の板状ピン15は、第1面と平行な第2面内に存在するように配置されている。即ち、三本の細長い板状ピン13,14,15は第1群のピン13,14と第2群のピン15とに区分けされていて、板状ピン15は、板状ピン13,14から板厚方向にオフセットした位置において、板面を板状ピン13,14と平行に、且つ、板状ピン13,14の間の隙間20に位置を対応させて延びている。なお、板状ピン13〜15は、図1及び図2に示すように、根元部分16に対する付け根にR部を形成することにより、突き刺し又は打ち込みの際にも折れにくくされている。
板状ピン13,14の先頭部分は、それぞれ同じ鏃21の形状に形成され、板状ピン15は単純な先が尖った三角山状のテーパ22に形成されている。鏃21は、一旦括れて幅が狭くなっているので、板状ピン13,14が壁に突き刺される時に突き刺し易くするとともに、突き刺された後には壁から容易に抜け出すのを防止して壁への保持性を高めることができる。第1群に属する板状ピン13,14は第1高さH1(先頭部分の先端の位置(図1の(c)を参照))を有している。第2群に属する板状ピン15は、板状ピン13,14の第1高さH1よりも低い第2高さH2を有している。突き刺しピン10を壁に突き刺していくときに、当初は全部の板状ピン13〜15が壁に突き刺されていくのではなく、高さの高い第1群の板状ピン13,14の先端部分である鏃21が壁に突き刺されていく。第1群の板状ピン13,14に作用する突き刺し力は、各板状ピン13,14の鏃状の先端部分に集中するので、一本の板状ピン当たりの突き刺し力が大きくなって、壁への突き刺し開始がし易くなる。第1群の板状ピンが壁に刺し込まれると、次に、高さの低い第2群の板状ピン15の先端部分である三角山状のテーパ22による壁への突き刺しが開始される。板状ピン15が壁に突き刺されると、第1群の板状ピン13,14によって案内されながら第2群の板状ピン15が壁に突き刺されていく。平行な三本の板状ピン13,14,15がそれぞれ壁内に更に安定して突き刺される。このように、突き刺しピン10は、比較的硬質の壁に対しても、突き刺しの途中で姿勢を変更することなく、姿勢を正しく保ったまま安定して確実に突き刺すことができる。
針部材11は、一枚の金属板好ましくはステンレス板から、先ず、打ち抜きによって、中央に根元部分16に相当する基部と、その基部の一方の側において当該基部に連続して延びる二つの板状ピン13,14と、その基部の他方の側において当該基部に連続して延びる一つの板状ピン15とを有する途中部品として製作される。その途中部品について、基部を直角に折り曲げて、底部分17とその両側の側部分18及び19を形成することで、一方の側部分18には連続して二本の平行に延びる板状ピン13,14が形成され、他方の側部分19には連続して一本の板状ピン15が形成される。実施例1においては、針部材11においては、根元部分16が一様な板厚であり、各板状ピン13,14,15の板厚は、根元部分16に接続する部位では根元部分16と同じ板厚であるが、打ち抜きの際又は打ち抜きの後、プレス加工によって、根元部分16から先端部分(鏃又は三角山状のテーパ22)に向かって板厚が次第に薄くなるように形成されている。先端部分の板厚が最も薄くされているので壁への突き刺しが容易になっており、根元部分16に向かって板厚が増しているので壁への突き刺しが完了した状態での取付け力を確保し安定させている。この構造の板状ピンは、板厚において先細となり、石膏ボード等の比較的柔らかい壁材から成る壁への突き刺しに好適である。
ヘッド部材12は、図3にも示すように、根元部分16を埋設可能になるように樹脂によってブロック状に形成されている。金属製の針部材11は、根元部分16がインサート成形の手法を伴う樹脂の射出成形によってヘッド部材12と一体化して形成されることで、ヘッド部材12に対して簡単に且つ強固に固定される。ヘッド部材12は、ブロック状の本体部分25と本体部分25の手元側において一体的で且つ面積が拡大されたヘッド端部分26とを備えている。ヘッド端部分26は、突き刺しピン10を壁に突き刺す際に、手で押される、又はハンマ等の工具が打ち付けられる部分である。図示の例では、図1の(c)に示すように、針部材11の根元部分16のうち底部分17は、ヘッド端部分26の位置まで深くインサート成形されているが、底部分17がヘッド端部分26において露出してはいない。
壁装着具で吊り下げるときの吊り下げ力は三本の板状ピン13,14,15で分担して保持されるので、二本の場合よりも安定して保持することができる。また、突き刺すときの針部分11は、その姿勢が安定しないと、左右に揺れて壁に作る穴が大きくなり、突き刺しピンの保持強度が低下することになるが、突き刺しピン10では、平行に形成されている三本の板状ピン13,14,15がそれぞれ壁に突き刺されるので、姿勢が安定し、壁に作る穴も最小限に済ませることができる。鏃21の形状や、テーパ22の形状は一例であって、これに限られることはない。図1〜3に示される突き刺しピン10は、板厚が先端ほど薄くなるように形成されているので、石膏ボードからなる壁、ベニヤ板などの木材やその加工品から成る壁、マンション等のコンクリート壁に用いることができる。板状ピン13,14,15の板厚は、適用する壁の硬さに応じて、適宜変更可能である。コンクリートのような硬質の壁に対しては、一様な板厚とすることが好ましい。
突き刺しピン10において、第1群に属する板状ピン13,14は二本として説明したが、それ以上の本数であってもよい。また、第2群に属する板状ピン15は一本であるとしたが、それ以上の本数であってもよい。しかしながら、第2群に属する板状ピンの本数は第1群に属する板状ピンの本数と等しいかそれよりも少ない本数であるとするのが好ましい。実施例1のように、高さの高い第1群に属する板状ピン13,14の本数を二本とした場合には、当初、第1群の板状ピン13,14が突き刺されるので、突き刺し力は最小の数にピンに分散されて減少程度が最小限に抑えられ、且つ壁に当接する箇所が二カ所あって当初の突き刺しが安定する。その後、第2群に属する板状ピン15の先端が壁に刺さり、両群のピンは平行になる。刺すときにピンが安定しないとピンが左右に揺れ穴が大きくなり強度が弱くなる原因にもなるが、突き刺しピン10は、壁に刺す時に板状ピン13〜15の姿勢が安定して壁へ刺しやすくなる。また、壁への突き刺しが完了した状態では、両群合わせて三本の板状ピン13〜15が存在しており、二本のピンの場合よりもより安定して且つ強度が増す。第2群の板状ピンは少なくとも一本(板状ピン15)が存在しているが、二本とする場合には、両群のピンの合計は少なくとも四本となり、更に安定と強度を増すこともできる。
本発明による突き刺しピンの実施例2が図4及び図5に示されている。図4は、この発明による突き刺しピンを示す図であり、(a)はその全体を示す斜視図、(b)はその平面図、(c)はその側面図、(d)はその背面図である。図5は図4に示す突き刺しピンの針部材を示す図であって、(a)は正面図、(b)は裏面図、(c)は側面図、(d)は(c)の二点鎖線で囲む部分の拡大図である。実施例2の説明において、実施例1と共通する構造であって同等の機能を奏する部材及び部位には、実施例1に用いたのと同じ符号を用いることで、再度の説明を省略する。
実施例2においては、突き刺しピン30の針部材31を構成する第1群に属する板状ピン33,34には、それぞれ、細長平板の表面においてピン長手方向に沿ってリブ35,36が形成されている。板状ピン33,34の先端部分は、鏃ではなく、板状ピン15の先細のテーパ22と同様の三角山状のテーパ37,38に形成されている。その他の構造は、実施例1の針部材11と同様の構造である。リブ35,36は、テーパ37,38の部分を除いて、板状ピン33,34の長手方向に延び、更に根元部分16の側部分18における中程の高さまで延びている。なお、リブ35,36は、突き刺しピン10の製造過程において、プレス加工によって、容易に成形可能である。なお、符号32は、突き刺しピン30のヘッド部材である。
細長平板状の板状ピン33,34に働く曲げについては、一般に、その長手方向に直交し且つ当該平板の面内に延びる軸の回りの曲げ(即ち、長手方向に対して進むときに板面に直交する方向に撓む曲げ)に対する剛性が最も弱いが、細長平板の表面にリブ35,36を形成することで、根元部分16から突き出る板状ピン33,34の強度と剛性が向上し、壁への突き刺し時又は打ち込み時に曲げ変形或いは座屈を起こし難い構造にすることができる。
根元部分16は、針部材31をヘッド部材32にインサート成形するときに樹脂に埋設されるので、板状ピン33,34から側部分18上に連続的に形成されているリブ35,36も、側部分18上の部分では樹脂内に埋設されることになる。その結果、ヘッド部材32に埋設されている根元部分16から板状ピン33,34に渡って強度と剛性を連続的に高めることができ、板状ピン33,34の付け根で生じ易い曲げ変形や座屈を防ぐことができる。また、針部材31は、リブ35,36がインサート成形によって樹脂に埋設されるとき、樹脂との接触面積が増えるので、根元部分16においてヘッド部材32との結合も強固にすることができる。
本発明による突き刺しピンの実施例3が図6に示されている。図6は、この発明による突き刺しピンを示す図であり、(a)は突き刺しピンの針部材の全体を示す斜視図、(b)は突き刺しピンの平面図、(c)は(b)の側面図、(d)は(b)の一部を拡大して示す図である。実施例3の説明において、実施例2(図4及び図5)と共通する構造であって同等の機能を奏する部材及び部位には、実施例2に用いたのと同じ符号を用いることで、再度の説明を省略する。
図6に示す実施例3に示す突き刺しピン40は、その針部材41の第1群に属する板状ピン43,44のテーパ47,48の先端部分47a,48aが板厚方向に反らせてある。実施例3では、第1群の板状ピン43,44において、一方の板状ピン43におけるテーパ47の先端部分47aの反り方向(A方向)と、他方の板状ピン44におけるテーパ48の先端部分48aの反り方向(B方向)とは逆とされている。したがって、板状ピン43,44を壁に突き刺していくと、板状ピン43,44は、先端部分47a,48aを反らせた方向に応じて、壁中を互いに逆な方向に逸れるように突き進むことになる。板状ピン43,44のそれぞれの挙動は向きが逆であるために互いに相殺されるので、突き刺しピン40の全体としての姿勢は変更されない。しかしながら、突き刺しピン40に壁から抜け出す方向の力が作用したときに、変形した各板状ピン43,44はその抜け出し方向の力に対して抵抗となり、突き刺しピン40は、安定して壁に取り付けられた状態を維持する。なお、符号42は、突き刺しピン40のヘッド部材を指す。
本発明による突き刺しピンの実施例4が図7に示されている。図7は、この発明による突き刺しピンを示す側面図である。実施例4の説明において、実施例2(図4及び図5)と共通する構造であって同等の機能を奏する部材及び部位には、実施例2に用いたのと同じ符号を用いることで、再度の説明を省略する。
図7に示す突き刺しピン50において、針部材51の第1群に属する板状ピン53,54は、根元部分16と先端部分57,58の間の中間部59において板厚方向(リブ35,36が形成される側とは反対方向)に膨出するように湾曲成形されている。このようにすることで、壁内への突き刺しにはそれほど抵抗にならないが、壁内に突き刺された状態では、湾曲された中間部59が壁から抜け出そうとすると、壁と摩擦係合をして抵抗を示し、第1群に属する板状ピン53,54がそして延いては突き刺しピン50が壁から抜け出るのを防止する作用・効果を高めることができる。なお、実施例4においては、針部材51の第2群に属する板状ピン55にも、板状ピン53,54のリブ35,36と同様に突き刺しピン50の外側を向く板面に、補強用のリブ56が形成されている。実施例4に示す突き刺しピン50は、硬い材質の壁に好適である。
本発明による突き刺しピンの実施例5が図8及び図9に示されている。図8は、この発明による突き刺しピンを示す図であり、(a)は突き刺しピンの針部材の全体を示す裏面図、(b)は突き刺しピンの平面図、(c)は側面図である。また、図9は、図8に示す突き刺しピンの針部材を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は裏面図である。実施例5の説明において、実施例4(図7)と共通する構造であって同等の機能を奏する部材及び部位には、実施例4に用いたのと同じ符号を用いることで、再度の説明を省略する。
図8及び図9に示す実施例5において、突き刺しピン60は、針部材61の第1群に属する板状ピン63,64に、根元部分16(側部分18の途中高さ)にまでピンの長手方向に伸びるリブ35,36が形成されている。また、針部材61の第2群に属する板状ピン65にも、根元部分16(側部分18の途中高さ)にまでピンの長手方向に伸びるリブ56が形成されている。針部材61は、ヘッド部材62に対してインサート成形によって一体化されているが、針部材61の底部分17がヘッド部材62の端面にて露出するように成形されている。突き刺しピン60を硬質の壁に打ち込む際には、露出した金属製の底部分17をハンマで叩くことによって行われるので、樹脂がハンマで叩かれることによる破損が生じない。ハンマ打ちの後、ヘッド部材62の端面にキャップを取り付けることで、底部分17を覆うことができる。
特に図9に示すように、針部材61の根元部分16には、リブ35,36及びリブ56と干渉しない位置に、材料抜き用の孔66及び孔67,67が形成されている。板状ピン63,64が延びる側部分18には、中央に比較的大きな一つの孔66が形成されており、板状ピン65が延びる側部分19には、両側に比較的小さい二つの孔67,67が形成されている。針部材61のインサート成形時、注入される樹脂が孔66及び孔67,67にそれぞれ入り込む。樹脂が孔66及び孔67,67に入り込み、そして板状ピン63,64のリブ35,36と板状ピン65のリブ56とがインサート成形時に樹脂と結合することにより、針部材61とヘッド部材62との結合が大きく強化される。
壁装着用突き刺しピンにおいて、上記のように、針部材の板状ピンについては三本(第1群が二本、第2群が一本)の例を挙げて各実施例を説明してきたが、二本のピン(第1群及び第2群が共に一本)を持つ針部材の場合も考えられる。二本のピンの突き刺しピンは、先端部分が尖った二本の細長い板状ピンを有しているものである。板状ピンの本数が少ないので、取り付ける物品の重量が小さいものであればマンションのようなコンクリート壁にも適用可能であるが、壁材が石膏ボード、べニヤ板材にも使用することができる。また、タイルのメジなど細い箇所にも刺すことができるので、タイルに穴をあけることが無く、物を固定することができる。また、外した場合は大きな穴が空くことが無い点でも有利である。二本の板状ピンの突き刺しピンの場合でも、三本の板状ピンの場合と同様に、ステンレスにすることで錆びることなく且つ強い強度を確保することができ、またピン中央部にリブを設けることにより強度を高めることができる。
板状ピンの形状について、先端側ほど板厚を次第に薄くした板状ピンを備える突き刺しピンは、特に、石膏ボード、モルタル用として使うのに好適である。板状ピンの先端部を尖る形状とし、また先端部の厚みを薄くすることができる。更に脚には反対方向への反りを付けてもよい。
針部材が3つの脚を持つ突き刺しピンは、コンクリート又は板材用として好適である。各板状ピンは、根元部分から先端部分まで一様な板厚とされる。三本の板状ピンを備えるものは、二本の板状ピンより強度は増す。そして、二本のピンの先端が壁の中に入ったあと、一本のピンの先端が壁に刺さり、三本のピンは平行になり、刺す時にピンは安定して刺しやすくなる。刺すときにピンが安定しないと、ピンが左右に揺れ穴が大きくなり強度が弱くなる原因にもなる。更に強度を増すために、ピンを四本にしてもよい。
本発明による壁装着用突き刺しピンにおいては、壁体への物品の取付けに用いられるピンとしたが、壁体は、一般の家庭のモルタル壁、木材又はベニヤ板材で構成された壁材、或いはコンクリート壁であってもよい。木材又はベニヤ板材で構成された壁材としては、製品的には、無垢材の他に、合板やMDF(中質繊維板)などの基材に木材の薄い板を張り付けた天然木化粧合板、合板の表面に樹脂加工した紙やビニールを貼着した合成樹脂合板、合板に直接木目などを印刷したプリント合板などであってもよいことは明らかである。また、塗り壁としては、例えば臭機能が高い珪藻土、消石灰を原料とした漆喰であってもよい。石膏プラスターやドロマイトプラスター塗りであってもよい。
また、本発明による壁装着用突き刺しピンにおいては、ピンの板厚は、材質が柔らかい壁である場合にはピンの先端部分ほど薄くして突き刺しを容易にすることもできる。プレス加工にて容易に加工することができる。また、硬い壁の場合には、針部材としては、硬い壁用には根元部分から先端部分まで一様な厚さとすることができるが、全体的には板厚を厚くし、ピンの長さを短くし、ピンとピンの間隔を狭めたものを用いることが好ましい。リブ有りのものを用いると更に強度・剛性が増し、変形や座屈に対して抵抗性が増す。一例として、長い方のピンの長さを略13mm、短い方のピンの長さを略11mm、ピンとピンの間隔(隙間)を略2mm、板厚は1.6mm〜2.0mmであるが、これらは一例であって、取り付ける物品の重さ、壁材の性質、用いる突き刺しピンの個数、個々の突き刺しピンに掛かる荷重条件等を考慮して、突き刺しピンの形態を選択するのが好ましい。それゆえ、多数の仕様の突き刺しピンを用意しておき、使用する状況に応じて、その中から、安全な仕様のものを選択可能にしておくことが推奨される。
図10に、本発明による壁装着用突き刺しピン(例えば、実施例1に示す突き刺しピン10)の一適用例を示す。図10においては、三つの突き刺しピン10,10,10が、壁Wに引っ掛け金具100を固定するのに用いられている。引っ掛け金具100は、本体101と、本体101の下端から折り返して形成したフック部102と、本体101から延びる3本のアーム部103,103,103とを備えている。各アーム部103の先端部分には、突き刺しピン10を突き刺すための孔104が形成されている。孔104は、突き刺しピン10のヘッド部材12を受け入れるために四角形に形成されている。各突き刺しピン10を、孔104を通して壁Wに突き刺すことにより、ヘッド部材のブロック状の本体部分25が孔104に嵌合し、ヘッド端部分26が壁Wとの間で引っ掛け金具100を挟み込むことで、引っ掛け金具100を壁Wに固定することができる。引っ掛け金具100は、フック部102において、ハンガや手提げ等の物品を掛けて吊り下げることができる。図10に示した壁Wに固定するための金具はあくまで例示であり、図示以外の適宜の形状・形態のものを採用することができる。引っ掛けに供する以外に、支えや、或いは別の製品を取り付けるためのアダプタを壁Wに固定するのにも使用することができる。ヘッド部材12の物品への係合は、ヘッド部材12自体が物品に係合する構造を持つ場合の他、ヘッド部材12が壁Wとの間に物品を挟み込む、或いはそれらの組合せであってもよい。