JP2012231750A - 加熱調理用油脂組成物及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】トランス脂肪酸と飽和脂肪酸含有量が低く、かつ酸化安定性が高く、また従来の硬化油と似た風味が良好な加熱調理用油脂組成物を提供すること。
【解決手段】ヨウ素価70以上の油脂混合物(A)を60〜90質量%と、ヨウ素価10〜55のパーム油分別硬質油(B)を10〜40質量%含有し、全構成脂肪酸中における飽和脂肪酸含量が15〜35質量%であり、かつ全構成脂肪酸中における多価不飽和脂肪酸含量が15質量%以下であることを特徴とする加熱調理用油脂組成物を提供する。
【選択図】なし
【解決手段】ヨウ素価70以上の油脂混合物(A)を60〜90質量%と、ヨウ素価10〜55のパーム油分別硬質油(B)を10〜40質量%含有し、全構成脂肪酸中における飽和脂肪酸含量が15〜35質量%であり、かつ全構成脂肪酸中における多価不飽和脂肪酸含量が15質量%以下であることを特徴とする加熱調理用油脂組成物を提供する。
【選択図】なし
Description
本発明は、加熱調理に用いられる油脂組成物に関する。より詳細には、トランス脂肪酸と飽和脂肪酸含有量が低く、かつ風味が良好な加熱調理食品を製造することができる油脂組成物及びその製造方法に関する。
炒める、揚げるなどの加熱調理には、様々な植物油脂または動物油脂が用いられているが、熱安定性あるは酸化安定性を付与する目的で水素添加した水素添加油脂(いわゆる「硬化油」)が多用されてきた。しかし、水素添加処理により油脂中のトランス脂肪酸含有量が増加することが知られている。トランス脂肪酸は、近年、その摂取により動脈硬化等の疾病を引き起こす可能性があることが報告されており、その含有量をできる限り低くしたいという市場の要請がある。
従って、加熱調理用油脂組成物において、酸化安定性を向上しかつ、トランス脂肪酸含有量を低下させることが一つの課題である。
従来、加熱調理用油脂組成物において、トランス脂肪酸含有量を低下させる方法としては、パームや牛脂など常温で固体である油脂を使用する方法と、大豆油やナタネ油など常温で液状である油脂を用いる方法が取られてきた。
例えば、特許文献1ではヨウ素価54〜70のパーム分別軟質油を25〜65質量%、及びヨウ素価10〜55のパーム分別硬質油を17質量%以上50質量%未満用いることにより、トランス脂肪酸含有量をある程度低減でき、かつ水素添加油脂由来の風味を維持できることを報告している。しかし、前述の油脂は、パーム油を多く使用しているため飽和脂肪酸含有量が増加してしまうという問題があった。すなわち、飽和脂肪酸は、トランス脂肪酸同様、過剰な摂取により動脈硬化等の疾病を引き起こす可能性があることが報告されているため、摂取をできる限り低減したいという市場の要請もある。
一方、液体油を使用することでトランス脂肪酸を低減させ、飽和脂肪酸含有量をある程度抑制することができる。しかし、液体油を多用すると、酸化安定性が低下し、更に液体油特有の臭いが強くなるため、加熱調理用油脂組成物を用いて調理した食品の風味が、いわゆる「硬化油」を用いたそれとは大きく変わってしまう、という問題があった。
従って、加熱調理用油脂組成物において、酸化安定性を向上しかつ、トランス脂肪酸含有量を低下させることが一つの課題である。
従来、加熱調理用油脂組成物において、トランス脂肪酸含有量を低下させる方法としては、パームや牛脂など常温で固体である油脂を使用する方法と、大豆油やナタネ油など常温で液状である油脂を用いる方法が取られてきた。
例えば、特許文献1ではヨウ素価54〜70のパーム分別軟質油を25〜65質量%、及びヨウ素価10〜55のパーム分別硬質油を17質量%以上50質量%未満用いることにより、トランス脂肪酸含有量をある程度低減でき、かつ水素添加油脂由来の風味を維持できることを報告している。しかし、前述の油脂は、パーム油を多く使用しているため飽和脂肪酸含有量が増加してしまうという問題があった。すなわち、飽和脂肪酸は、トランス脂肪酸同様、過剰な摂取により動脈硬化等の疾病を引き起こす可能性があることが報告されているため、摂取をできる限り低減したいという市場の要請もある。
一方、液体油を使用することでトランス脂肪酸を低減させ、飽和脂肪酸含有量をある程度抑制することができる。しかし、液体油を多用すると、酸化安定性が低下し、更に液体油特有の臭いが強くなるため、加熱調理用油脂組成物を用いて調理した食品の風味が、いわゆる「硬化油」を用いたそれとは大きく変わってしまう、という問題があった。
本発明の課題は、トランス脂肪酸含有量が低く、飽和脂肪酸含有量を増やすことなく、かつ酸化安定性が高い、従来の硬化油と似た良好な風味を食品に与える加熱調理用油脂組成物を提供することである。
本発明者らは、ヨウ素価70以上の油脂混合物(A)を60〜90質量%と、ヨウ素価10〜55のパーム油分別硬質油(B)を10〜40質量%含有し、全構成脂肪酸中における飽和脂肪酸含量が15〜35質量%であり、かつ全構成脂肪酸中における多価不飽和脂肪酸含量が15質量%以下であることを特徴とする加熱調理用油脂組成物により、トランス脂肪酸含有量が低く、飽和脂肪酸含有量が適性な範囲に抑制され、かつ風味が良好で酸化安定性も高い加熱調理用油脂組成物が得られることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、ヨウ素価70以上の油脂混合物(A)を60〜90質量%と、ヨウ素価10〜55のパーム油分別硬質油(B)を10〜40質量%含有し、全構成脂肪酸中における飽和脂肪酸含量が15〜35質量%であり、かつ全構成脂肪酸中における多価不飽和脂肪酸含量が15質量%以下であることを特徴とする加熱調理用油脂組成物を提供する。
本発明により、トランス脂肪酸含有量が低く、飽和脂肪酸含有量も抑制され、水素添加油脂由来の風味と同様の風味を有し、かつ酸化安定性が良好な加熱調理食品用油脂組成物及びその製造方法並びにトランス脂肪酸含有量が低く、飽和脂肪酸含有量を増やすことなく、水素添加油脂由来の風味と同様の風味を有する加熱調理食品を提供することができる。
本発明の加熱調理用油脂組成物に用いられる油脂配合物について以下に述べる。
<ヨウ素価70以上の油脂混合物(A)>
本発明の加熱調理用油脂組成物に用いられる油脂混合物はヨウ素価70以上である。より好ましくはヨウ素価は75〜90の間である。前記範囲とすることにより、飽和脂肪酸量を低めに抑え、更に多価不飽和脂肪酸量も低めに抑えることで、加熱調理用油脂組成物の脂肪酸組成に対する要求を満たしながら、可塑性を有し、口の中にロウ感がなく、液体油に特有の風味を抑えることができる。また前記範囲を満たすものであれば、上記原料を水素添加、エステル交換等処理したもの、およびこれらを組み合わせて使用することができる。
<ヨウ素価70以上の油脂混合物(A)>
本発明の加熱調理用油脂組成物に用いられる油脂混合物はヨウ素価70以上である。より好ましくはヨウ素価は75〜90の間である。前記範囲とすることにより、飽和脂肪酸量を低めに抑え、更に多価不飽和脂肪酸量も低めに抑えることで、加熱調理用油脂組成物の脂肪酸組成に対する要求を満たしながら、可塑性を有し、口の中にロウ感がなく、液体油に特有の風味を抑えることができる。また前記範囲を満たすものであれば、上記原料を水素添加、エステル交換等処理したもの、およびこれらを組み合わせて使用することができる。
本発明の加熱調理用油脂組成物の全質量に対して、ヨウ素価70以上の油脂混合物(A)を60〜90質量%の範囲で用いることが好ましい。より好ましくは65〜85質量%である。
上記油脂混合物(A)の原料油脂としては、ヒマワリ油、ナタネ油、サフラワー油、コーン油、米油、綿実油、大豆油、パーム油、または前記油脂の2種以上の混合油脂からなる群より選択される油脂である。
上記油脂混合物(A)の原料油脂としては、ヒマワリ油、ナタネ油、サフラワー油、コーン油、米油、綿実油、大豆油、パーム油、または前記油脂の2種以上の混合油脂からなる群より選択される油脂である。
より好ましくは、前記原料油脂は、高オレイン品種から得られる高オレイン油脂若しくは高オレイン分別油またはその部分水素添加油を主として用いることが好ましい。より好ましくは、ハイオレインヒマワリ油、ハイオレインヒマワリ部分水素添加油、ハイオレインナタネ油、ハイオレインナタネ部分水素添加油、ハイオレインサフラワー油、ハイオレインサフラワー部分水素添加油、パームダブルオレイン油が挙げられる。高オレイン油脂は、構成脂肪酸中のオレイン酸量が60%以上、好ましくは60%〜95質量%のものを意味する。好ましくは、油脂混合物(A)全質量に対して、前記高オレイン分別油またはその部分水素添加油を100〜80質量%、更に好ましくは95〜85質量%で使用する。油脂混合物(A)の残部は、前記原料油脂のいずれかまたはこれらの2種以上の混合油脂が挙げられる。好ましくは、パーム油、コーン油、大豆油が挙げられる。コーン油/大豆油の混合物を用いることが風味の観点から特に好ましく、更にコーン油/大豆油の混合物を2〜8質量%程度使用することがより好ましい。
<ヨウ素価10〜55のパーム油分別硬質油(B)>
本発明の加熱調理用油脂組成物に用いられるヨウ素価10〜55のパーム油分別硬質油(B)としては、パームステアリン及び/又はパームミッドフラクションを好ましく用いることができる。これらの油脂は、加熱調理用油脂組成物全質量に対して10〜40質量%の間で使用することが好ましい。より好ましくは15〜35質量%である。
パームステアリン、パームミッドフラクションは、アセトン分別やヘキサン分別等の溶剤分別、ドライ分別等の無溶剤分別等の方法によって、パーム油を分別することにより得られる高融点部であり、ヨウ素価が10〜55のものである。この油脂を用いることにより、飽和脂肪酸を低めに抑え、多価不飽和脂肪酸も低めに抑えることができ、加熱調理用油脂組成物の脂肪酸組成に対する要求を満たしながら、可塑性を有し、口の中にロウ感がない良好な油脂混合物を得ることができる。また前記範囲を満たすものであれば、上記原料を水素添加処理、エステル交換等処理したもの、およびこれらを組み合わせたものを使用することができる。
本発明の加熱調理用油脂組成物に用いられるヨウ素価10〜55のパーム油分別硬質油(B)としては、パームステアリン及び/又はパームミッドフラクションを好ましく用いることができる。これらの油脂は、加熱調理用油脂組成物全質量に対して10〜40質量%の間で使用することが好ましい。より好ましくは15〜35質量%である。
パームステアリン、パームミッドフラクションは、アセトン分別やヘキサン分別等の溶剤分別、ドライ分別等の無溶剤分別等の方法によって、パーム油を分別することにより得られる高融点部であり、ヨウ素価が10〜55のものである。この油脂を用いることにより、飽和脂肪酸を低めに抑え、多価不飽和脂肪酸も低めに抑えることができ、加熱調理用油脂組成物の脂肪酸組成に対する要求を満たしながら、可塑性を有し、口の中にロウ感がない良好な油脂混合物を得ることができる。また前記範囲を満たすものであれば、上記原料を水素添加処理、エステル交換等処理したもの、およびこれらを組み合わせたものを使用することができる。
本発明の加熱調理用油脂組成物は、全質量に対して、ヨウ素価70以上の油脂混合物(A)を60〜90質量%と、ヨウ素価10〜55のパーム分別硬質油(B)を10〜40質量%含有する。ヨウ素価10〜55のパーム分別硬質油がこれより少ないと、融点が低くなり、可塑性がなくなり、作業性が悪くなる。また、酸化安定性も悪化する。さらに多価不飽和脂肪酸も増加し、液体油に特徴的な風味が強く感じられ、加熱調理用油脂組成物を用いた食品の風味が損なわれてしまう。また、ヨウ素価10〜55のパーム分別硬質油(B)が前記範囲より多いと融点が高くなりすぎ、ロウ感が強く感じられるようになり、やはり加熱調理用油脂組成物を用いた食品の風味が損なわれてしまう。
本発明において、加熱調理用油脂組成物を構成する脂肪酸組成として、好ましくは、トランス脂肪酸含有量が、5質量%未満であることが好ましく、更に3質量%以下であることが更に好ましい。トランス脂肪酸は、近年、その摂取により動脈硬化等の疾病を引き起こす可能性があることが報告されており、加熱調理食品においても低く抑えることが好ましい。
本発明において、加熱調理用油脂組成物を構成する飽和脂肪酸含有量は、15〜40質量%である。飽和脂肪酸は、トランス脂肪酸同様、過剰な摂取により動脈硬化等の疾病を引き起こす可能性があることが報告されている。その一方でエネルギー源として重要な栄養成分でもある。例えば、「日本人の食事摂取基準2010年版」(厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書)では、30歳以上の脂質の食事摂取基準が20エネルギー%以上25エネルギー%未満、飽和脂肪酸の食事摂取基準が4.5エネルギー%以上7.0エネルギー%未満となる。これらから計算すると、油脂組成物を構成する飽和脂肪酸含有量としては18〜35質量%であることが好ましい。同様に18〜29歳においては15〜35質量%であることが好ましい。
本発明において、加熱調理用油脂組成物を構成する脂肪酸組成として、好ましくは、多価不飽和脂肪酸含有量の合計が、15質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。多価不飽和脂肪酸とは、油脂組成物を構成する脂肪酸において、不飽和結合を2以上含む脂肪酸を意味する。具体的には、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸等が挙げられる。
トランス脂肪酸含有量、飽和脂肪酸含有量、および多価不飽和脂肪酸含有量は、例えば、日本油化学会編「基準油脂試験分析法」(2007年)に記載の「トランス脂肪酸含量(キャピラリーガスクロマトグラフ法)」により決定することができる。
トランス脂肪酸含有量、飽和脂肪酸含有量、および多価不飽和脂肪酸含有量は、例えば、日本油化学会編「基準油脂試験分析法」(2007年)に記載の「トランス脂肪酸含量(キャピラリーガスクロマトグラフ法)」により決定することができる。
本明細書において、「加熱調理用油脂組成物」とは、炒める、焼く、揚げるなどの加熱調理に用いる油脂組成物をいう。
加熱調理食品としては、フライ、天ぷら、からあげ、フライドポテト、ドーナツ、スナック菓子などの油ちょう品が挙げられる。
加熱調理食品としては、フライ、天ぷら、からあげ、フライドポテト、ドーナツ、スナック菓子などの油ちょう品が挙げられる。
<実施例1〜6及び比較例1〜2>
(ヨウ素価70以上油脂混合物の調製)
表1に示した配合で原料油脂を混合し、ヨウ素価70以上の油脂混合物(A)を調製した。
原料植物油脂には精製ハイオレイックヒマワリ油(商品名:精製ハイオレイックヒマワリ油、太陽油脂株式会社製)と精製ハイオレイックナタネ油(商品名:ヘルシーライト、日清オイリオグループ株式会社製)、精製パームダブルオレイン(ヨウ素価65)(商品名:もなか用パーム油、太陽油脂株式会社製)、および精製コーン、大豆混合硬化油(商品名:MS75-NR、太陽油脂株式会社製)を使用した。ハイオレイックヒマワリ部分水素添加油、およびハイオレイックナタネ油部分水素添加油はそれぞれ上記に記載の精製ハイオレイックヒマワリ油、精製ハイオレイックナタネ油を通常の方法により水素添加した。すなわち、オートクレーブ内で、開始温度110℃、水素圧力0.1MPa、ニッケル触媒0.2重量%(ニッケル含量20重量%)で加熱しながら、ヨウ素価を85あるいは95となるまで水素添加反応を行った。この部分水素添加植物油脂に、活性白土を添加し、撹拌しながら減圧下(0.09MPa)110℃まで加熱し15分保持後80℃まで冷却した。これを濾紙にて活性白土を濾過して脱色油を得た。
この脱色油を減圧下で表1に示す条件で脱臭することにより、精製された部分水素添加植物油脂を得た。
(ヨウ素価70以上油脂混合物の調製)
表1に示した配合で原料油脂を混合し、ヨウ素価70以上の油脂混合物(A)を調製した。
原料植物油脂には精製ハイオレイックヒマワリ油(商品名:精製ハイオレイックヒマワリ油、太陽油脂株式会社製)と精製ハイオレイックナタネ油(商品名:ヘルシーライト、日清オイリオグループ株式会社製)、精製パームダブルオレイン(ヨウ素価65)(商品名:もなか用パーム油、太陽油脂株式会社製)、および精製コーン、大豆混合硬化油(商品名:MS75-NR、太陽油脂株式会社製)を使用した。ハイオレイックヒマワリ部分水素添加油、およびハイオレイックナタネ油部分水素添加油はそれぞれ上記に記載の精製ハイオレイックヒマワリ油、精製ハイオレイックナタネ油を通常の方法により水素添加した。すなわち、オートクレーブ内で、開始温度110℃、水素圧力0.1MPa、ニッケル触媒0.2重量%(ニッケル含量20重量%)で加熱しながら、ヨウ素価を85あるいは95となるまで水素添加反応を行った。この部分水素添加植物油脂に、活性白土を添加し、撹拌しながら減圧下(0.09MPa)110℃まで加熱し15分保持後80℃まで冷却した。これを濾紙にて活性白土を濾過して脱色油を得た。
この脱色油を減圧下で表1に示す条件で脱臭することにより、精製された部分水素添加植物油脂を得た。
(ヨウ素価10〜55のパーム分別硬質部の調製)
パームステアリンは、パーム油からドライ分別の方法によって得られた高融点部(ヨウ素価35)を使用した。パームミッドフラクションは上記ドライ分別により得られた低融点部をさらにドライ分別により得られた高融点部(ヨウ素価45)を使用した。この原料油脂を上記と同様の常法により、脱色、脱臭することにより、精製されたパームステアリン、パームミッドフラクションを得た。
パームステアリンは、パーム油からドライ分別の方法によって得られた高融点部(ヨウ素価35)を使用した。パームミッドフラクションは上記ドライ分別により得られた低融点部をさらにドライ分別により得られた高融点部(ヨウ素価45)を使用した。この原料油脂を上記と同様の常法により、脱色、脱臭することにより、精製されたパームステアリン、パームミッドフラクションを得た。
<実施例7〜12及び比較例3〜4>
(油脂組成物の調製)
表1に示した実施例1〜6、および比較例1〜2の油脂混合物、パーム分別油硬質部を用いて表2に示した配合の加熱調理用油脂組成物を調製した。
実施例において、飽和脂肪酸含有量、多価不飽和脂肪酸含有量、トランス脂肪酸含有量、及び上昇融点は下記書籍に記載の方法に基づいて測定した。
飽和脂肪酸含有量、多価不飽和脂肪酸含有量、トランス脂肪酸含量:日本油化学会編「基準油脂試験分析法」(2007年)に記載の「トランス脂肪酸含量(キャピラリーガスクロマトグラフ法)」
融点:日本油化学会編「基準油脂試験分析法」(1996年)の「2.2.4.1融点(上昇融点)」
(油脂組成物の調製)
表1に示した実施例1〜6、および比較例1〜2の油脂混合物、パーム分別油硬質部を用いて表2に示した配合の加熱調理用油脂組成物を調製した。
実施例において、飽和脂肪酸含有量、多価不飽和脂肪酸含有量、トランス脂肪酸含有量、及び上昇融点は下記書籍に記載の方法に基づいて測定した。
飽和脂肪酸含有量、多価不飽和脂肪酸含有量、トランス脂肪酸含量:日本油化学会編「基準油脂試験分析法」(2007年)に記載の「トランス脂肪酸含量(キャピラリーガスクロマトグラフ法)」
融点:日本油化学会編「基準油脂試験分析法」(1996年)の「2.2.4.1融点(上昇融点)」
(油脂風味評価)
実施例7〜12、比較例3〜4の加熱調理用油脂組成物を180℃に加熱した。精製大豆部分水素添加油、コーン部分水素添加油混合品(商品名:FFK、太陽油脂株式会社製)を、液体油臭を感じない油脂の標準とし、油脂風味基準品1とした。また、精製大豆油(商品名:精製大豆白絞油、太陽油脂株式会社製)を液体油臭を強く感じる油脂の標準とし、油脂風味基準品2とした。実施例7〜12、比較例3〜4の油脂のにおいを嗅いだときの2種類の油脂風味基準品との違いを以下の基準で点数化し、油脂の風味の評価を行った。結果を表2に示す。
表2から分かるように、多価不飽和脂肪酸が15質量%以下であった加熱調理用油脂組成物は液体油臭が弱く、油脂風味基準品1に近い良好な風味となった。また、多価不飽和脂肪酸が15%を超えると、急激に液体油臭が強くなった。
実施例7〜12、比較例3〜4の加熱調理用油脂組成物を180℃に加熱した。精製大豆部分水素添加油、コーン部分水素添加油混合品(商品名:FFK、太陽油脂株式会社製)を、液体油臭を感じない油脂の標準とし、油脂風味基準品1とした。また、精製大豆油(商品名:精製大豆白絞油、太陽油脂株式会社製)を液体油臭を強く感じる油脂の標準とし、油脂風味基準品2とした。実施例7〜12、比較例3〜4の油脂のにおいを嗅いだときの2種類の油脂風味基準品との違いを以下の基準で点数化し、油脂の風味の評価を行った。結果を表2に示す。
表2から分かるように、多価不飽和脂肪酸が15質量%以下であった加熱調理用油脂組成物は液体油臭が弱く、油脂風味基準品1に近い良好な風味となった。また、多価不飽和脂肪酸が15%を超えると、急激に液体油臭が強くなった。
(調理評価)
実施例7〜12、比較例3〜4の加熱調理用油脂組成物および、油脂風味基準品1および2を用いて、市販のプレフライ済み冷凍ポテトを、180℃で4分間フライ調理し、実施例13〜18、比較例5〜6および油脂風味基準品1および2のフライドポテトを得た。
油脂風味基準品1を用いて調理したフライドポテトを標準1とし、油脂風味基準品2を用いて調理したものを標準2とし、実施例13〜18、比較例5〜6のフライドポテトをパネル(20人)が食したときの標準1および2との風味の違いを以下の基準で点数化し、平均値を算出すことで得られたフライドポテトの評価を行った。結果を表3に示す。
表3から分かるように、多価不飽和脂肪酸が15質量%以下であった加熱調理用油脂組成物は液体油臭が弱く、油脂風味基準品1に近い良好な風味となった。また、多価不飽和脂肪酸が15%を超えると、急激に液体油臭が強くなった。
実施例7〜12、比較例3〜4の加熱調理用油脂組成物および、油脂風味基準品1および2を用いて、市販のプレフライ済み冷凍ポテトを、180℃で4分間フライ調理し、実施例13〜18、比較例5〜6および油脂風味基準品1および2のフライドポテトを得た。
油脂風味基準品1を用いて調理したフライドポテトを標準1とし、油脂風味基準品2を用いて調理したものを標準2とし、実施例13〜18、比較例5〜6のフライドポテトをパネル(20人)が食したときの標準1および2との風味の違いを以下の基準で点数化し、平均値を算出すことで得られたフライドポテトの評価を行った。結果を表3に示す。
表3から分かるように、多価不飽和脂肪酸が15質量%以下であった加熱調理用油脂組成物は液体油臭が弱く、油脂風味基準品1に近い良好な風味となった。また、多価不飽和脂肪酸が15%を超えると、急激に液体油臭が強くなった。
評価基準
標準1とほぼ同等で、液体油臭は感じない。 5点
標準1に近い風味。液体油臭は殆ど感じない。 4点
標準1と標準2の中間的な風味。液体油臭はわずかにあるが気にならない。 3点
標準2に近い風味。液体油臭を感じる。 2点
標準2とほぼ同等。強く液体油臭を感じる。 1点
※ 3点以上を合格レベルとする
標準1とほぼ同等で、液体油臭は感じない。 5点
標準1に近い風味。液体油臭は殆ど感じない。 4点
標準1と標準2の中間的な風味。液体油臭はわずかにあるが気にならない。 3点
標準2に近い風味。液体油臭を感じる。 2点
標準2とほぼ同等。強く液体油臭を感じる。 1点
※ 3点以上を合格レベルとする
このようにヨウ素価70以上の油脂混合物(A)を60〜90質量%と、ヨウ素価10〜55のパーム油分別硬質油(B)を10〜40質量%含有する加熱調理用油脂組成物を用いることで、低トランス脂肪酸含有量で、かつ、飽和脂肪酸含有量を増やすことなく、液体油臭が少なく、硬化油に近い風味を有する加熱調理食品を提供することができる。
Claims (9)
- ヨウ素価70以上の油脂混合物(A)を60〜90質量%と、ヨウ素価10〜55のパーム油分別硬質油(B)を10〜40質量%含有し、全構成脂肪酸中における飽和脂肪酸含量が15〜35質量%であり、かつ全構成脂肪酸中における多価不飽和脂肪酸含量が15質量%以下であることを特徴とする加熱調理用油脂組成物。
- 前記油脂混合物(A)の原料油脂が、ヒマワリ油、ナタネ油、サフラワー油、コーン油、米油、綿実油、大豆油、パーム油、または前記油脂の2種以上の混合油脂からなる群より選択される油脂である、請求項1に記載の加熱調理用油脂組成物。
- 前記パーム分別硬質油(B)が、パームミッドフラクション及び/又はパームステアリンである、請求項1または2に記載の加熱調理用油脂組成物。
- 前記油脂混合物(A)が、ハイオレインヒマワリ油、ハイオレインヒマワリ部分水素添加油、ハイオレインナタネ油、ハイオレインナタネ部分水素添加油、ハイオレインサフラワー油、ハイオレインサフラワー部分水素添加油、及びパームダブルオレイン油から選択される少なくとも一種を、前記油脂(A)の全質量に対し、100〜80質量%の範囲で含む、請求項1または2に記載の加熱調理用油脂組成物。
- 前記加熱調理用油脂組成物の全構成脂肪酸中における多価不飽和脂肪酸含量が、15質量%以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載の加熱調理用油脂組成物。
- 上昇融点が30℃以上40℃以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載の加熱調理用油脂組成物。
- 請求項1〜6に記載の加熱調理用油脂組成物を急冷捏和して製造されたショートニング。
- 請求項1〜6に記載の加熱調理用油脂組成物を用いて加熱調理された食品。
- 請求項1〜6に記載の加熱調理用油脂組成物を用いて食品を加熱調理することを特徴とする食品の調理方法。
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Cited By (2)
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JP2017099352A (ja) * | 2015-12-03 | 2017-06-08 | ミヨシ油脂株式会社 | 加熱調理用油脂組成物およびバタークリーム用油脂組成物 |
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JP2010004741A (ja) * | 2008-06-24 | 2010-01-14 | Nisshin Oillio Group Ltd | 液状クリーム用油脂組成物 |
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Title |
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JPN6015028035; パーム油・パーム核油の利用 初版第1刷, 19900731, p.167-170, 株式会社幸書房 * |
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