JP2012228751A - 表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高負荷切削加工条件下で、優れた耐欠損性および仕上げ面精度を示す表面被覆TiCN基サーメット製切削インサートとその製造方法を提供する。
【解決手段】工具本体への取り付け用貫通穴、逃げ面、ホーニング部、すくい面、すくい面に設けたチップブレーカを備えたインサート基体を、PVD法による硬質被覆層で被覆してなる表面被覆TiCN基サーメット製切削インサートにおいて、貫通穴の支持具接触面の表面は硬質被覆層により覆われておらず、しかもその表面粗さがカットオフ値0.08mmにおけるRaで0.2μmを超える面とし、またインサート基体の逃げ面およびチップブレーカの表面粗さは、同Raで0.2μm以下であり、かつすくい面表面部の硬質相の残留応力が、圧縮で450MPa以上である、耐欠損性、仕上げ面精度に優れた表面被覆TiCN基サーメット製切削インサート。
【選択図】図1
【解決手段】工具本体への取り付け用貫通穴、逃げ面、ホーニング部、すくい面、すくい面に設けたチップブレーカを備えたインサート基体を、PVD法による硬質被覆層で被覆してなる表面被覆TiCN基サーメット製切削インサートにおいて、貫通穴の支持具接触面の表面は硬質被覆層により覆われておらず、しかもその表面粗さがカットオフ値0.08mmにおけるRaで0.2μmを超える面とし、またインサート基体の逃げ面およびチップブレーカの表面粗さは、同Raで0.2μm以下であり、かつすくい面表面部の硬質相の残留応力が、圧縮で450MPa以上である、耐欠損性、仕上げ面精度に優れた表面被覆TiCN基サーメット製切削インサート。
【選択図】図1
Description
本発明は、インサート着脱式の各種工具に取り付けられて切削加工に用いられる炭窒化チタン基(TiCN基)サーメット製切削インサート、とりわけTiCN基サーメットからなるインサート基体に物理蒸着法(PVD法)により硬質被覆層を被覆形成した表面被覆TiCN基サーメット製切削インサートおよびその製造方法に関するものであり、特に工具本体への取り付け用貫通穴を有しており、負荷の高い切削においても異常損傷が少なく、良好な仕上げ面精度が得られる表面被覆TiCN基サーメット製切削インサートおよびその製造方法に関するものである。
従来から、Tiの炭化物もしくは窒化物または炭窒化物を主成分とし、元素周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素の炭化物もしくは窒化物または炭窒化物の1種または2種以上含有する硬質相と、NiおよびCoの内の1種または2種を主成分とする金属結合相からなるTiCN基サーメット製切削インサートが広く知られている(特許文献1,2)。このようなTiCN基サーメット製切削インサートは、通常は例えば多角形平板状のインサート本体のすくい面と逃げ面との交差稜線部に切れ刃部を形成し、かつ切削加工中に生成する切りくずをコントロールするために、すくい面にチップブレーカを形成したものが一般的である。またこのような切削インサートには、通常はその盤面を貫通する取り付け用貫通穴が形成されていて、後に改めて説明する図4の(a)あるいは図4の(b)に示すように、その取り付け用貫通穴に工具本体取り付け手段(支持具)、例えばL字形レバー、ねじ、偏心ピンなどを挿入し、工具本体に取り付けられるように構成されている。
さらに、従来のTiCN基サーメット製切削インサートの耐熱性、耐摩耗性、靭性を改善するために、インサート表面の焼き肌面の最大表面粗さを3.5μm以下に低減することも知られている(特許文献3)。
一方、前述のようなTiCN基サーメットからなる切削インサート基体の表面に、周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、Si、Y、Mn、Ni、Sのうちから選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素、ホウ素のうちから選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物の一層または2層以上からなる硬質被覆層を、物理蒸着法(PVD法)によって被覆形成した、表面被覆TiCN基サーメット製切削インサートも知られている。この種の表面被覆TiCN基サーメット製切削インサートに関しての従来技術としては、TiCN基サーメットに限らず炭化タングステン基(WC基)超硬合金を含む技術ではあるが、例えば特許文献4に示されているものがある。
上述のような表面被覆TiCN基サーメット製切削インサートは、TiCN基サーメット製の切削インサート基体の表面に、適切な硬質材料からなる硬質被覆層を被覆形成することによって、硬質被覆層が存在しない場合と比較して耐磨耗性が向上することが知られている。そしてさらに表面被覆TiCN基サーメット製切削インサートの耐摩耗性を向上させることを目的として、例えば前記特許文献4の提案では、TiCN基サーメット製切削インサートの表面に、ほぼ球状の鋼、鋳造粒子、重金属粉、ガラス、コランダム、硬金属粒子、耐破壊性セラミックなどを圧縮空気により投射して、いわゆる乾式ブラスト処理を施すことにより、切削インサート上にPVD法により被覆形成される硬質被覆層内に生じる残留応力と同程度の残留応力を、切削インサートの表面近傍に付与することが提案されており、このような特許文献4の表面被覆TiCN基サーメット製切削インサートでは、切削インサートと硬質被覆層との間の残留応力差が小さくなることによって、従来の被覆インサートよりもさらに耐摩耗性が向上するとされている。
TiCN基サーメット製切削インサートは、炭化タングステン基(WC基)超硬合金製切削インサートに比べれば、耐欠損性が低い工具材料であるとされており、そのため切れ刃部に対して高負荷が作用する切削条件下での使用は避けられ、軽負荷の切削条件下で使用されることが多かった。
ここで、軽負荷の通常条件の切削加工に用いるTiCN基サーメット製インサートとしては、その表面粗さを低減し、平滑な面とすることにより、耐欠損性が改善され、同時に仕上げ面精度も向上するようになり、例えばインサート表面の平滑化手段としてウエットブラスト処理を施し、インサートの表面粗さを、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下の平滑な面とした場合には、耐欠損性が改善され、また被削材の仕上げ面精度も向上し、光沢ある切削加工表面を形成することができるようになり、さらに、ウエットブラスト処理を施す際に、インサート表面を平滑化すると同時に、インサート表面に所定の圧縮残留応力を付与することによって、より耐欠損性が向上することを本発明者等は知見している。そしてこのような傾向は、TiCN基サーメットをインサート基体とし、その表面を、PVD法により硬質被覆層で被覆した場合にも同様であることが確認されている。
ここで、軽負荷の通常条件の切削加工に用いるTiCN基サーメット製インサートとしては、その表面粗さを低減し、平滑な面とすることにより、耐欠損性が改善され、同時に仕上げ面精度も向上するようになり、例えばインサート表面の平滑化手段としてウエットブラスト処理を施し、インサートの表面粗さを、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下の平滑な面とした場合には、耐欠損性が改善され、また被削材の仕上げ面精度も向上し、光沢ある切削加工表面を形成することができるようになり、さらに、ウエットブラスト処理を施す際に、インサート表面を平滑化すると同時に、インサート表面に所定の圧縮残留応力を付与することによって、より耐欠損性が向上することを本発明者等は知見している。そしてこのような傾向は、TiCN基サーメットをインサート基体とし、その表面を、PVD法により硬質被覆層で被覆した場合にも同様であることが確認されている。
しかしながら、近年、切削加工の分野では、高能率加工が求められており、切削時の切れ刃部に対する負荷は、ますます高くなる傾向にある。例えば図4の(a)に示されるようなL字形レバー、あるいは図4の(b)に示されるねじなどの支持具によって工具本体へ取り付けたTiCN基サーメット製切削インサートを、重切削、断続切削等のような切れ刃部に対して高負荷が作用する切削条件下において使用した場合には、切れ刃部からの欠損発生に加え、支持具と接触するインサート貫通穴内面の表面から亀裂や破損が生じ、比較的短時間で使用寿命にいたるのが現状である。そして、貫通穴内面からの破損が生じたような場合には、同一インサートの他の切れ刃部への交換も不可能となるため、着脱式インサートとしては致命的な問題となる。このような問題は、例えば前記特許文献3に示されるようなTiCN基サーメット製切削インサートでも避け得ず、また前述のようにウエットブラスト処理を施すことによって表面粗さを低減したTiCNインサートであっても、確実かつ十分には解消し得なかったのである。さらにこのような問題は、TiCN基サーメットをインサート基体として、その表面にPVD法により硬質被覆層を被覆形成してなる従来の表面被覆TiCN基サーメット製切削インサート、例えば前記特許文献4のインサートにおいても、同様に発生していた。
以上のように、従来は、高負荷切削条件下において支持具と接触するインサート貫通穴内面の表面からの亀裂や破損の発生については、特に考慮されておらず、そのため上述のような問題の発生を回避し得なかったのが実情である。
したがって本発明は、表面被覆TiCN基サーメット製切削インサートを、切れ刃部に対して高負荷が作用する切削条件下で使用した場合でも、貫通穴内面からの亀裂や破損の発生、進展を抑制して、耐欠損性を確実かつ十分に向上させ、これにより長期の使用に亘って、すぐれた切削性能を発揮し得る表面被覆TiCN基サーメット製切削インサートおよびその製造方法を提供することを課題としている。
したがって本発明は、表面被覆TiCN基サーメット製切削インサートを、切れ刃部に対して高負荷が作用する切削条件下で使用した場合でも、貫通穴内面からの亀裂や破損の発生、進展を抑制して、耐欠損性を確実かつ十分に向上させ、これにより長期の使用に亘って、すぐれた切削性能を発揮し得る表面被覆TiCN基サーメット製切削インサートおよびその製造方法を提供することを課題としている。
本発明者等は、工具本体への取り付け用貫通穴、逃げ面、ホーニング部、すくい面、およびすくい面にチップブレーカを備えたTiCN基サーメット製のインサート基体の表面に、PVD法により硬質被覆層を形成してなる表面被覆TiCN基サーメット製切削インサート(以下、表面被覆TiCNインサートという)において、ねじ、L字形レバー、偏心ピン等の支持具と接触する取り付け用貫通穴内面(支持具接触面)の状態と表面被覆TiCNインサートを工具本体へ保持する力との関連を研究した結果、取り付け用貫通穴における支持具接触面については、PVD法による硬質被覆層で被覆せず、しかも適切な表面粗さの粗面としておくことによって、高負荷が作用する切削条件においても、貫通穴の支持具接触面からの亀裂・破損の発生、進展を抑制することができ、そのため長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮し、工具寿命の延命化を図れることを見出したのである。
すなわち、断続切削やフライス加工等のごとく、インサートに対して極めて高い負荷が加わる切削条件下では、切れ刃部に絶え間ない変動負荷が作用することによって、工具本体に保持されたインサートに異常な微小振動が発生し、耐欠損性や被削材の仕上げ面精度に悪影響を及ぼし、より振動が大きい場合には、インサートの取り付け用貫通穴の支持具接触面から亀裂、破損を発生することを本発明者らは確認している。そしてこのようなインサートの異常な微小振動は、L字レバーやねじ等の工具本体との取り付け手段、すなわち支持具と、その支持具が接しているインサート貫通穴内面との間の摩擦力が低いことによるインサートの滑りが原因となって発生している可能性がある、と考えられ、それに基づいて、その解決手段を検討した結果、表面被覆TiCNインサートにおける取り付け用貫通穴内面、特に工具本体に対する取り付け手段(支持具)に接する面(支持具接触面)を、硬質被覆層で被覆されていない状態とし、かつその支持具接触面の表面粗さを、所定値以上の粗面(具体的には、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μmを超える粗面)とすれば、前記支持具の表面とこれに接触する貫通穴の支持具接触面との間の摩擦力が増大し、高負荷が作用する切削条件においても、表面被覆TiCNインサートが工具本体に強固かつ確実に保持されて、表面被覆TiCNインサートに異常な微小振動が発生することが防止され、その結果、取り付け用貫通穴の支持具接触面からの亀裂、破損の発生、進展を抑制して、欠損発生を抑制し得るとともに、高仕上げ面精度の加工面を形成することができることを見出し、本発明をなすに至ったのである。
したがって本発明の基本的な形態(第1の形態)による表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートは、工具本体への取り付け用貫通穴、逃げ面、ホーニング部およびすくい面を備え、かつ前記すくい面に、プレス成形時にその金型形状を転写することにより形成されたチップブレーカを有する炭窒化チタン基サーメットからなる焼結体で構成されたインサート基体を、物理蒸着法(PVD法)によって硬質被覆層により被覆してなる表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートにおいて;
前記取り付け用貫通穴の内面のうち、少なくとも工具本体への取り付け手段としての支持具に接する支持具接触面は、前記硬質被覆層により覆われていない面で構成され、かつその支持具接触面は、その表面面粗さが、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μmを超える粗さとされ、かつ前記インサート基体における逃げ面およびチップブレーカの表面粗さは、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下であり、しかも前記インサート基体における少なくともすくい面の表面部の硬質相の残留応力が、圧縮で450MPa以上であることを特徴とするものである。
前記取り付け用貫通穴の内面のうち、少なくとも工具本体への取り付け手段としての支持具に接する支持具接触面は、前記硬質被覆層により覆われていない面で構成され、かつその支持具接触面は、その表面面粗さが、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μmを超える粗さとされ、かつ前記インサート基体における逃げ面およびチップブレーカの表面粗さは、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下であり、しかも前記インサート基体における少なくともすくい面の表面部の硬質相の残留応力が、圧縮で450MPa以上であることを特徴とするものである。
また本発明の第2の形態による表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートは、前記第1の形態の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートにおいて、前記貫通穴の少なくとも支持具接触面は焼結肌で構成され、かつその支持具接触面の表面粗さが、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.3μm以上とされていることを特徴とするものである。
さらに本発明の第3の形態による表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートは、前記第1の形態もしくは第2の形態の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートにおいて、前記インサート基体における少なくともすくい面の表面部の硬質相の残留応力が、圧縮で600MPa以上であることを特徴とするものである。
そしてまた本発明の第4の形態による表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートは、前記第1〜第3の形態のうちのいずれかの形態の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートにおいて、前記インサート基体における刃先先端のホーニング部の表面粗さが、インサート基体の逃げ面およびチップブレーカの表面粗さより小さく形成されていることを特徴とするものである。
また本発明の第5の形態による表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートは、前記第1〜第4の形態のうちのいずれかの形態の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートにおいて、前記インサート基体におけるホーニング部の表面粗さが、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.1μm以下であることを特徴とするものである。
さらに本発明の第6の形態による表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートは、前記第1〜第5の形態のうちのいずれかの形態の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートにおいて、前記硬質被覆層が、周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、Si、Y、Mn、Ni、Sのうちから選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素、ホウ素のうちから選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物の1層または2層以上からなるものであることを特徴とするものである。
また本発明の第7の形態による表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートは、前記第6の形態の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートにおいて、前記硬質被覆層のうち、少なくとも1層は、TiAlN層によって構成されていることを特徴とするものである。
また本発明の第8の形態による表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートは、前記第6の形態の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートにおいて、前記硬質被覆層が、Tiの炭化物、窒化物、炭窒化物のうちから選ばれた1層または2層以上からなり、かつその硬質被覆層の総膜厚が0.5〜15μmであることを特徴とするものである。
また本発明の第9の形態による表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートは、前記第8の形態の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートにおいて、前記硬質被覆層として、インサート基体の側から、膜厚0.1〜1.0μmのTiN層、膜厚0.5〜5.0μmのTiCN層、および膜厚0.1〜1.0μmのTiN層がその順に被覆形成されていることを特徴とするものである。
さらに本発明の第10〜第19の形態は、表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法についてのものである。
すなわち先ず本発明の第10の形態による表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法は、
工具本体への取り付け用貫通穴、逃げ面、ホーニング部およびすくい面を備え、かつ前記すくい面に、プレス成形時にその金型形状を転写することにより形成されたチップブレーカを有する炭窒化チタン基サーメットからなる焼結体で構成されたインサート基体を、物理蒸着法によって硬質被覆層により被覆してなる表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法において;
焼結法によって、前記取り付け用貫通穴における少なくとも工具本体への取り付け手段としての支持具に接する支持具接触面の表面面粗さがカットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μmを超える粗さとなっているインサート基体を製造するインサート基体製造工程と、
前記インサート基体の表面のうち、少なくとも前記支持具接触面を除く領域内にウエットブラスト処理を施すことにより、逃げ面およびチップブレーカの表面粗さを、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下とし、かつ少なくともすくい面の表面部の硬質相の残留応力を圧縮で450MPa以上とするウエットブラスト工程と、
前記ウエットブラスト工程の後、インサート基体の表面のうち、少なくとも前記支持具接触面を除く領域に、物理蒸着法によって硬質被覆層を形成する被覆工程、
とを有してなることを特徴とするものである。
すなわち先ず本発明の第10の形態による表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法は、
工具本体への取り付け用貫通穴、逃げ面、ホーニング部およびすくい面を備え、かつ前記すくい面に、プレス成形時にその金型形状を転写することにより形成されたチップブレーカを有する炭窒化チタン基サーメットからなる焼結体で構成されたインサート基体を、物理蒸着法によって硬質被覆層により被覆してなる表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法において;
焼結法によって、前記取り付け用貫通穴における少なくとも工具本体への取り付け手段としての支持具に接する支持具接触面の表面面粗さがカットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μmを超える粗さとなっているインサート基体を製造するインサート基体製造工程と、
前記インサート基体の表面のうち、少なくとも前記支持具接触面を除く領域内にウエットブラスト処理を施すことにより、逃げ面およびチップブレーカの表面粗さを、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下とし、かつ少なくともすくい面の表面部の硬質相の残留応力を圧縮で450MPa以上とするウエットブラスト工程と、
前記ウエットブラスト工程の後、インサート基体の表面のうち、少なくとも前記支持具接触面を除く領域に、物理蒸着法によって硬質被覆層を形成する被覆工程、
とを有してなることを特徴とするものである。
そしてまた本発明の第11の形態による表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法は、前記第10の形態の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法において、前記ウエットブラスト工程で、前記インサート基体を、軸線回りに回転可能な一対の回転軸により挟み込んで保持しつつ、前記軸線回りに回転させながら、少なくとも一つ以上のブラストガンから研磨液を噴射して、少なくとも前記支持具接触面を除くインサート基体表面に、ウエットブラスト処理を施すことを特徴とするものである。
そしてまた本発明の第12の形態による表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法は、前記第11の形態の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法において、前記ウエットブラスト工程で、前記インサート基体を、回転可能に挟み込む前記回転軸の軸線方向に対して、30度以上60度以下の噴射角でブラストガンから研磨液を噴射してウエットブラスト処理を施すことを特徴とするものである。
そしてまた本発明の第13の形態による表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法は、前記第12の形態の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法において、前記ウエットブラスト工程で、前記噴射角を40度以上50度以下とすることを特徴とするものである。
そしてまた本発明の第14の形態による表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法は、前記第10〜第13の形態のうちのいずれかの形態の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法において、前記ウエットブラスト工程の終了後、前記被覆工程の前の段階で、インサート基体の切れ刃部の表面にホーニング加工を施すことを特徴とするものである。
そしてまた本発明の第15の形態による表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法は、前記第14の形態の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法において、前記ホーニング加工を、湿式ブラシホーニングにより施して、インサート基体の切れ刃部の表面粗さを、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.1μm以下とすることを特徴とするものである。
そしてまた本発明の第16の形態による表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法は、前記第10〜第15の形態のうちのいずれかの形態の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法において、前記被覆工程で、硬質被覆層として、周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、Si、Y、Mn、Ni、Sのうちから選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素、ホウ素のうちから選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物の1層または2層以上からなる層を物理蒸着法により被覆形成することを特徴とするものである。
そしてまた本発明の第17の形態による表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法は、前記第16の形態の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法において、前記被覆工程で、前記硬質被覆層のうち、少なくとも1層を、TiAlN層により形成することを特徴とするものである。
そしてまた本発明の第18の形態による表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法は、前記第16の形態の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法において、前記被覆工程で、前記硬質被覆層として、Tiの炭化物、窒化物、炭窒化物のうちから選ばれた1層または2層以上からなり、かつ総膜厚が0.5〜15μmの硬質被覆層を形成することを特徴とするものである。
そしてまた本発明の第19の形態による表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法は、前記第18の形態の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法において、前記被覆工程で、前記硬質被覆層として、インサート基体の側から、膜厚0.1〜1.0μmのTiN層、膜厚0.5〜5.0μmのTiCN層、および膜厚0.1〜1.0μmのTiN層を、その順に形成することを特徴とするものである。
本発明の表面被覆TiCN基サーメット製切削インサートは、工具本体への取り付け用貫通穴、逃げ面、ホーニング部、すくい面、およびすくい面にチップブレーカを備えた炭窒化チタン基サーメットからなる焼結体で構成されたインサート基体を、物理蒸着法(PVD法)によって硬質被覆層により被覆してなる表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートにおいて、取り付け用貫通穴の内面のうち、少なくとも工具本体への取り付け手段としての支持具に接する支持具接触面を、前記硬質被覆層により覆われていない面とし、かつその支持具接触面を、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μmを超える粗面としているため、工具本体への取り付け手段としての支持具と貫通穴の支持具接触面との間の摩擦力を確保して、支持具に対するインサートの滑りの発生を防止し、これにより高負荷の切削加工、断続切削加工においても、インサートの異常振動、微小振動の発生を防止して、切れ刃の耐欠損性や被削材の仕上げ面精度を向上させるとともに、貫通穴の支持具接触面からの亀裂・破損の発生・進展を抑制することができる。ここで貫通穴の支持具接触面にPVD法によって硬質被覆層を形成した場合、その硬質被覆層は、一般にTiCN基インサート基体のサーメットよりも硬質であるが、瞬間的な衝撃荷重により破壊されやすく、高負荷の切削加工や断続切削加工時に、支持具からインサートの支持具接触面に大きな衝撃が加わった瞬間に、インサートの支持具接触面から亀裂や破損が生じやすくなるおそれがあるが、本発明では、貫通穴の支持具接触面を硬質被覆層で被覆しないこととしているため、高負荷の切削加工や断続切削加工時においてもこのような問題を招くことなく、優れた耐欠損性を発揮することができる。さらに、貫通穴の支持具接触面にPVD法によって硬質被覆層を形成した場合には、その支持具接触面に接触する支持具(L字レバー、ねじ、偏心ピンなど)の磨耗が早期に進行し、その支持具の寿命も短くなるおそれがあるが、本発明では、貫通穴の支持具接触面を硬質被覆層で被覆しないこととしているため、このような問題も生じず、支持具の耐用寿命を長くすることができる。また一方、本発明の表面被覆インサートでは、そのインサート基体の逃げ面およびチップブレーカは、表面粗さがカットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下とされて、表面の平滑化が図られると同時に、少なくともすくい面の表面部の硬質相に圧縮残留応力が付与されていることから、その結果として、優れた耐欠損性を確保するとともに、すぐれた仕上げ面精度を長期の使用に亘って維持し得るようになる。
また本発明の表面被覆TiCN基サーメット製切削インサートの製造方法によれば、焼結法により製造されたインサート基体の表面のうち、少なくとも取り付け用貫通穴の支持具接触面を除く領域内にウエットブラスト処理を施すことにより、前記支持具接触面の表面に焼結肌を残存させてその表面粗さを適切な粗さに維持したまま、逃げ面およびチップブレーカの表面粗さと少なくともすくい面の表面部の硬質相の残留応力を、それぞれ所定の範囲内に調整し、さらにインサート基体の表面のうち、前記支持具接触面を除く領域に、物理蒸着法によって硬質被覆層を形成することにより、前述のように高負荷の切削加工においても貫通穴の支持具接触面からの亀裂・破損の発生・進展を抑制することができて、耐欠損性に優れるとともに、仕上げ面精度も優れた表面被覆TiCN基サーメット製切削インサートを、確実かつ安定して得ることができる。
以下、本発明について、より詳細に説明する。
本発明の表面被覆TiCN基サーメット製切削インサートの形状の一例を図1、図2に示す。
本発明が適用されるインサート1は、従来から広く使用されているインサートと同様に、工具本体への取り付け用貫通穴8、逃げ面2、ホーニング部(切れ刃部)3、すくい面4、および着座面6を備え、かつ前記すくい面4には、金型によって形成されたチップブレーカ部5、すなわちプレス成形時の金型形状が転写されたチップブレーカ部5が形成されてなるものである。そしてまた本発明のインサートは、基本的には、Tiの炭化物あるいは窒化物もしくは炭窒化物を主成分とする硬質相とCoおよびNiのうちの1種または2種を主成分とする金属結合相からなる焼結法によって得られたTiCN基サーメット(焼結体)をインサート基体とし、そのインサート基体の表面(但し、前記取り付け用貫通穴8における支持具接触面を除く)に、周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、Si、Y、Mn、Ni、Sのうちから選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素、ホウ素のうちから選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物の一層または2層以上からなる硬質被覆層を、物理蒸着法(PVD法)によって被覆形成したものである。そして前記貫通穴の支持具接触面は、前記硬質被覆層によって被覆されない面で構成され、かつその支持具接触面の表面粗さは、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μmを超える粗さの粗面とされている。一方、インサート基体における逃げ面およびチップブレーカは、それらの表面粗さが、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下の平滑な面とされ、しかもインサート基体における少なくともすくい面の表面部の硬質相の残留応力が、圧縮で450MPa以上とされている。
本発明が適用されるインサート1は、従来から広く使用されているインサートと同様に、工具本体への取り付け用貫通穴8、逃げ面2、ホーニング部(切れ刃部)3、すくい面4、および着座面6を備え、かつ前記すくい面4には、金型によって形成されたチップブレーカ部5、すなわちプレス成形時の金型形状が転写されたチップブレーカ部5が形成されてなるものである。そしてまた本発明のインサートは、基本的には、Tiの炭化物あるいは窒化物もしくは炭窒化物を主成分とする硬質相とCoおよびNiのうちの1種または2種を主成分とする金属結合相からなる焼結法によって得られたTiCN基サーメット(焼結体)をインサート基体とし、そのインサート基体の表面(但し、前記取り付け用貫通穴8における支持具接触面を除く)に、周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、Si、Y、Mn、Ni、Sのうちから選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素、ホウ素のうちから選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物の一層または2層以上からなる硬質被覆層を、物理蒸着法(PVD法)によって被覆形成したものである。そして前記貫通穴の支持具接触面は、前記硬質被覆層によって被覆されない面で構成され、かつその支持具接触面の表面粗さは、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μmを超える粗さの粗面とされている。一方、インサート基体における逃げ面およびチップブレーカは、それらの表面粗さが、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下の平滑な面とされ、しかもインサート基体における少なくともすくい面の表面部の硬質相の残留応力が、圧縮で450MPa以上とされている。
さらに本発明が適用されるインサートについて、工具本体への取り付けの具体的態様について、図3、図4を参照して説明すると、このインサート1は、既に説明したように取り付け用貫通穴8が形成されており、その取り付け用貫通穴8に、工具本体9へ取り付けるための取り付け手段としての支持具、例えば図4の(a)に示すようなL字レバー9A、あるいは図4の(b)に示すようなねじ9B、そのほか図示しない偏心ピンなどが挿入されて、工具本体9に取り付けられる。そしてその工具本体9のL字レバー9Aやねじ9B、偏心ピンなどの支持具に、インサート1の取り付け用貫通穴8の内面の少なくとも一部の面8Aが接触することになる。このようにインサート1の取り付け用貫通穴8の内面のうち、工具本体9への取り付け手段としての支持部に接触する部分を、支持具接触面8Aと称している。
なお本発明でいうインサートとしては、概略正方形、三角形、菱形、六角形、丸形等の略平板インサートや、三角形状の溝入れあるいはねじ切りインサート、刃先交換式の各種エンドミル用インサートあるいは厚みの厚い縦刃インサートなど、種々のものが利用可能であり、ネガティブ型やポジティブ型の形状に関しても特段の問題なく適用可能である。
本発明では、前述のように、工具本体への取り付け用貫通穴を有する表面被覆TiCN基サーメット製切削インサートにおいて、貫通穴における支持具接触面は、PVD法による硬質被覆層が形成されていない面とし、かつその表面粗さを、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μmを超える粗面としている。
図4に示されるように、貫通穴の表面は、貫通穴に通されるねじ、L字形レバー、偏心ピン等の取り付け手段(支持具)と接触し、その摩擦力によりインサートを工具本体に固定保持するが、貫通穴の支持具接触面の表面粗さが、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下であれば、支持具との接触面における摩擦力が十分でないため、絶え間ない高負荷(変動負荷)の作用する切削加工条件においては、インサートの強固かつ確実な保持を行うことができず、その結果として、欠損が発生しやすくなり、また、仕上げ面精度が低下することになるので、強固かつ確実な保持を行うという点から、貫通穴内面の表面粗さは、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μmを超える粗面とすることが必要であり、また好ましくは、0.3μm以上の粗面とする。
図4に示されるように、貫通穴の表面は、貫通穴に通されるねじ、L字形レバー、偏心ピン等の取り付け手段(支持具)と接触し、その摩擦力によりインサートを工具本体に固定保持するが、貫通穴の支持具接触面の表面粗さが、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下であれば、支持具との接触面における摩擦力が十分でないため、絶え間ない高負荷(変動負荷)の作用する切削加工条件においては、インサートの強固かつ確実な保持を行うことができず、その結果として、欠損が発生しやすくなり、また、仕上げ面精度が低下することになるので、強固かつ確実な保持を行うという点から、貫通穴内面の表面粗さは、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μmを超える粗面とすることが必要であり、また好ましくは、0.3μm以上の粗面とする。
なお、例えば図3に示したように、取り付け用貫通穴8の開口端にテーパー面8Bが形成されていて、そのテーパー面8Bには取り付け支持具9A(9B)が接触しないようになっている場合、そのテーパー面8Bについては、必ずしも上述のような粗面としなくてもよい。すなわち、上述のようにRa0.2μm超、好ましくは0.3μm以上の粗面とする必要があるのは、取り付け用貫通穴8の内面のうちでも、少なくとも工具本体への取り付け手段である支持具に接触する面であればよく、支持具に接触しないことが設計上確定している部分の表面については、Ra0.2μm以下の平滑な面であることが許容される。
なおまた、TiCN基サーメットからなる焼結インサートの貫通穴内面(特に支持具接触面)の表面粗さとして、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μmを超える粗面を確保するためには、貫通穴内面を、主として焼結肌にて構成することが有効である。すなわち、焼結原料粉末や焼結条件を調整することによって、焼結体の表面の粗さとして、Raで0.2μmを超える粗面とすることができる。そして、そのような粗面を有する焼結肌の貫通穴内面(特に支持具接触面)に対して、ウエットブラスト処理による平滑化を行わず、しかもPVD法による硬質被覆層の形成を行なわずに、最終製品の切削インサートとして焼結肌を貫通穴内面(特に支持具接触面)にそのまま露呈させることにより、貫通穴内面(特に支持具接触面)の表面粗さとして上記の条件を満たすインサートを得ることができる。
なおここで焼結肌とは、インサート基体の製造過程において焼結したままの表面肌、すなわち、ダイヤモンド砥石などによる研削を行っていない粗面の表面肌を意味する。
なおここで焼結肌とは、インサート基体の製造過程において焼結したままの表面肌、すなわち、ダイヤモンド砥石などによる研削を行っていない粗面の表面肌を意味する。
ここで、本発明の表面被覆インサートにおいては、貫通穴の支持具接触面は、前述のような表面粗さ条件を満たすばかりでなく、最終的にPVD法による硬質被覆層によって被覆されていない面とする必要がある。その理由は次の通りである。
すなわち、貫通穴の支持具接触面にPVD法によって硬質被覆層を形成した場合、その硬質被覆層は、TiCN基インサート基体のサーメットよりも硬質であるが、瞬間的な衝撃荷重により破壊されやすい。そのため、貫通穴内面の支持具接触面を所定の表面粗さに調整し、切削時の微小振動を抑制した場合でも、高負荷の切削加工や断続切削加工時において、支持具からインサートの支持具接触面に瞬間的に大きな衝撃が加われば、その衝撃が吸収されずに、インサートの支持具接触面の表面層に直接的に加わり、支持具接触面の表面層から亀裂や破損が生じやすくなるおそれがある。さらに、貫通穴の支持具接触面にPVD法によって硬質被覆層を形成した場合には、その被覆層がTiCN基インサート基体のサーメットよりも硬質であるため、その支持具接触面に接触する支持具(L字レバー、ねじ、偏心ピンなど)の磨耗が早期に進行し、その支持具の寿命も短くなるおそれがある。ちなみに、TiCN基サーメットの硬さは一般に91〜93HRA(ビッカース硬さに換算して1500〜1900HV程度)であるのに対し、一般的なPVD法による硬質被覆層の硬さは、3000HV程度である。
しかる本発明では、貫通穴の支持具接触面を硬質被覆層で被覆しないこととして、支持具接触面にサーメット基体の表面を露呈させており、硬質被覆層と比較してサーメット基体は、高負荷の切削加工や断続切削加工時においても瞬間的な大きな衝撃をある程度吸収することができるため、上述のような問題を招くことなく、優れた耐欠損性を発揮することができる。
すなわち、貫通穴の支持具接触面にPVD法によって硬質被覆層を形成した場合、その硬質被覆層は、TiCN基インサート基体のサーメットよりも硬質であるが、瞬間的な衝撃荷重により破壊されやすい。そのため、貫通穴内面の支持具接触面を所定の表面粗さに調整し、切削時の微小振動を抑制した場合でも、高負荷の切削加工や断続切削加工時において、支持具からインサートの支持具接触面に瞬間的に大きな衝撃が加われば、その衝撃が吸収されずに、インサートの支持具接触面の表面層に直接的に加わり、支持具接触面の表面層から亀裂や破損が生じやすくなるおそれがある。さらに、貫通穴の支持具接触面にPVD法によって硬質被覆層を形成した場合には、その被覆層がTiCN基インサート基体のサーメットよりも硬質であるため、その支持具接触面に接触する支持具(L字レバー、ねじ、偏心ピンなど)の磨耗が早期に進行し、その支持具の寿命も短くなるおそれがある。ちなみに、TiCN基サーメットの硬さは一般に91〜93HRA(ビッカース硬さに換算して1500〜1900HV程度)であるのに対し、一般的なPVD法による硬質被覆層の硬さは、3000HV程度である。
しかる本発明では、貫通穴の支持具接触面を硬質被覆層で被覆しないこととして、支持具接触面にサーメット基体の表面を露呈させており、硬質被覆層と比較してサーメット基体は、高負荷の切削加工や断続切削加工時においても瞬間的な大きな衝撃をある程度吸収することができるため、上述のような問題を招くことなく、優れた耐欠損性を発揮することができる。
また本発明では、TiCN基サーメットからなるインサート基体の逃げ面およびチップブレーカの表面粗さを、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下の平滑面としている。
ここで、前述のように貫通穴内面を主として焼結肌にて構成しようとした場合、インサート基体の逃げ面およびチップブレーカの表面粗さも、自ずと粗いものとなるが、逃げ面が粗面である場合には仕上げ面精度を低下させ、またチップブレーカが粗面である場合には、耐欠損性を劣化させるから、これらを防止するため、インサートの逃げ面およびチップブレーカの表面粗さを、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下の平滑面とすることが必要である。
インサート基体の逃げ面の平滑化は、主に被削材の仕上げ精度の改善に寄与し、またチップブレーカの表面粗さの低減は、主に耐欠損性改善に寄与するが、特にインサート基体の表面粗さが、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μmを超える粗面になれば、被削材の仕上げ精度および耐欠損性が低下する傾向を示すようになる。そこで本発明では、インサート基体の逃げ面およびチップブレーカの表面粗さを、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下と規定している。
前述のように焼結肌のインサート基体について、貫通穴内面(特に支持具接触面)の表面粗さをRaで0.2μmを超える粗面、好ましくは、Raで0.3μm以上に維持したまま、逃げ面、チップブレーカの表面粗さをRa0.2μm以下に平滑化するためには、貫通穴内面もしくはその支持具接触面を除き、基体表面に対してウエットブラスト処理を施せばよい。
ここで、前述のように貫通穴内面を主として焼結肌にて構成しようとした場合、インサート基体の逃げ面およびチップブレーカの表面粗さも、自ずと粗いものとなるが、逃げ面が粗面である場合には仕上げ面精度を低下させ、またチップブレーカが粗面である場合には、耐欠損性を劣化させるから、これらを防止するため、インサートの逃げ面およびチップブレーカの表面粗さを、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下の平滑面とすることが必要である。
インサート基体の逃げ面の平滑化は、主に被削材の仕上げ精度の改善に寄与し、またチップブレーカの表面粗さの低減は、主に耐欠損性改善に寄与するが、特にインサート基体の表面粗さが、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μmを超える粗面になれば、被削材の仕上げ精度および耐欠損性が低下する傾向を示すようになる。そこで本発明では、インサート基体の逃げ面およびチップブレーカの表面粗さを、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下と規定している。
前述のように焼結肌のインサート基体について、貫通穴内面(特に支持具接触面)の表面粗さをRaで0.2μmを超える粗面、好ましくは、Raで0.3μm以上に維持したまま、逃げ面、チップブレーカの表面粗さをRa0.2μm以下に平滑化するためには、貫通穴内面もしくはその支持具接触面を除き、基体表面に対してウエットブラスト処理を施せばよい。
なお、本発明で規定している逃げ面およびチップブレーカの表面粗さは、PVD法によって硬質被覆層を形成する前の段階のインサート基体表面についての値である。PVD法によって硬質被覆層を形成してその硬質被覆層の上から表面粗さを測定した場合、その表面粗さが、被覆前のインサート基体表面よりも大きくなることがある。インサート基体の逃げ面およびチップブレーカの硬質被覆層形成前の表面粗さが、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下であれば、PVD法によって硬質被覆層を形成した後の逃げ面およびチップブレーカの表面(硬質被覆層表面)の粗さは、硬質被覆層の厚みやPVD条件によっても異なるが、通常はカットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.25μm程度以下となる。そして硬質被覆層表面の粗さRaが0.25μm程度以下であれば、被削材の仕上げ精度や耐欠損性を損なわないことが確認されている。
なお、アークイオンプレーティング法による硬質被覆層にはドロップレットと呼ばれる粒状突起物が被覆層表面に生じることがあるが、本願におけるインサート表面の算術平均粗さRaは、ドロップレットが存在していない箇所にて測定した表面粗さである。
なお、アークイオンプレーティング法による硬質被覆層にはドロップレットと呼ばれる粒状突起物が被覆層表面に生じることがあるが、本願におけるインサート表面の算術平均粗さRaは、ドロップレットが存在していない箇所にて測定した表面粗さである。
なおまた、本発明において表面粗さは、JIS B0601−1994(2001)に従い、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで測定したものとする。カットオフ値を0.08mmとしているのは、切削加工表面の品質に影響を与えるのは切削インサート表面のミクロな状態であって、焼結前の圧粉体の密度バラツキや焼結時に発生する焼結変形等に起因するインサート基体の焼結肌でのうねり現象(うねり成分)の影響を除去するためである。
さらに本発明では、耐欠損性を、より向上させるため、インサート基体の少なくともすくい面の表面部の硬質相に450MPa以上の圧縮残留応力を付与することとしている。ここで、インサート基体のすくい面の表面部の硬質相の圧縮残留応力が450MPa未満の場合には、切削加工時に作用する高負荷に対する耐欠損性向上効果が少ないことから、耐欠損性を高めるため、上記のように残留応力を定めた。なおインサート基体の少なくともすくい面の表面部の硬質相の残留応力は、好ましくは600MPa以上とする。このようなインサート基体の少なくともすくい面の表面部の硬質相に対する圧縮残留応力の付与は、既に述べたようなインサート基体の逃げ面およびチップブレーカの表面の平滑化のためのウエットブラスト処理によって達成することができる。
なお、ウエットブラスト処理を施さない通常の焼結肌表面部の硬質相の残留応力は、圧縮で100MPa以下程度であり、また表面の組成等を内部と変化させたTiCN基サーメットの場合でも300MPa程度であるが、本発明法にしたがってウエットブラスト処理を施す(但し少なくとも貫通の支持具接触面を除く)ことによって、インサート基体の、少なくとも貫通の支持具接触面を除く領域のうちの少なくともすくい面の圧縮残留応力の値を450MPa以上とすることができる。
なお、ウエットブラスト処理を施さない通常の焼結肌表面部の硬質相の残留応力は、圧縮で100MPa以下程度であり、また表面の組成等を内部と変化させたTiCN基サーメットの場合でも300MPa程度であるが、本発明法にしたがってウエットブラスト処理を施す(但し少なくとも貫通の支持具接触面を除く)ことによって、インサート基体の、少なくとも貫通の支持具接触面を除く領域のうちの少なくともすくい面の圧縮残留応力の値を450MPa以上とすることができる。
ここで、本発明でいう、インサート基体の表面部の硬質相に付与する残留応力の値とは、(株)養賢堂発行の「残留応力のX線評価」(田中啓介、鈴木賢治、秋庭義明著)の第六章冒頭(P99〜105)に記載される周知のsin2Ψ法を用いX線回折装置によって測定された値である。
さらに、sin2Ψ測定範囲に関しては、0〜0.5ないし0〜0.75間で選択される範囲において等間隔に5ないし6点、並傾法にて展開し測定した。
測定に用いたX線回折装置はスペクトリス(株)製のPANalytical
X’ Pert PRO MPDで、X線源としてはCuKα線を使用した。
残留応力測定にはNaCl型結晶構造を有する硬質相の(422)面の回折ヒ゜ークを用いた。
また、測定に用いた残留応力計算ソフトウエアはX’ Pert High Score Plusで、硬質相のヤング率として475GPa、ポアソン比として0.200を使用し計算を実施した。
さらに、sin2Ψ測定範囲に関しては、0〜0.5ないし0〜0.75間で選択される範囲において等間隔に5ないし6点、並傾法にて展開し測定した。
測定に用いたX線回折装置はスペクトリス(株)製のPANalytical
X’ Pert PRO MPDで、X線源としてはCuKα線を使用した。
残留応力測定にはNaCl型結晶構造を有する硬質相の(422)面の回折ヒ゜ークを用いた。
また、測定に用いた残留応力計算ソフトウエアはX’ Pert High Score Plusで、硬質相のヤング率として475GPa、ポアソン比として0.200を使用し計算を実施した。
さらに、インサートを用いての切削開始の初期段階では、切れ刃部先端のホーニング部が被削材の切削加工表面に接触して切削加工表面を形成し、その後、切れ刃部の摩耗が発達してくれば、切削加工表面に接触する領域が逃げ面側に移行するようになる。したがってインサート基体に、前述のような平滑化および残留応力付与のためにウエットブラスト処理を施した後、インサート基体の切れ刃部先端に湿式ブラシ等によるホーニング加工を施すことにより、切れ刃部先端に形成されるホーニング部の表面粗さを他の部分より小さくすることが望ましい。具体的には、刃先先端に形成されるホーニング部の表面粗さをカットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.1μm以下にすれば、耐欠損性が更に改善され、切削初期段階での被削材に光沢のある良好な仕上げ面を形成することができる。ここで、PVD法による硬質被覆層形成後にホーニング部の表面粗さ(ホーニング部の硬質被覆層の表面粗さ)を測定した場合、その粗さは硬質被覆層を形成する前の段階の粗さよりも若干粗くなることがある。しかしながら、前述のように湿式ブラシ等によって、硬質被覆層形成前にホーニング部を加工して、その表面粗さを適切に仕上げている場合には、硬質被覆層形成後のホーニング部の表面粗さRaは、0.25μm程度以下となり、この程度であれば、上述のように耐欠損性の十分な向上を図ることができる。
なお切れ刃部に対するホーニング加工は、後述するように、ウエットブラスト処理後に行うことが最も望ましいが、ホーニング加工後にウエットブラスト処理を行った場合でも、本発明の効果を得ることが可能である。また、ホーニング寸法が比較的小さい場合等、ウエットブラスト処理のみで所定のホーニング寸法が加工される場合は、ブラシ等によるホーニング加工を行わず、ウエットブラスト処理にホーニング加工を兼ねさせる場合もあるが、その場合も本発明の効果が得られることは言うまでもない。
なお切れ刃部に対するホーニング加工は、後述するように、ウエットブラスト処理後に行うことが最も望ましいが、ホーニング加工後にウエットブラスト処理を行った場合でも、本発明の効果を得ることが可能である。また、ホーニング寸法が比較的小さい場合等、ウエットブラスト処理のみで所定のホーニング寸法が加工される場合は、ブラシ等によるホーニング加工を行わず、ウエットブラスト処理にホーニング加工を兼ねさせる場合もあるが、その場合も本発明の効果が得られることは言うまでもない。
さらに本発明の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートにおいては、炭窒化チタン基サーメットからなるインサート基体の表面のうち、少なくとも前記貫通穴の支持具接触面を除く領域に、PVD法による硬質被覆層が形成されている。このようなPVD法による硬質被覆層は、一般に基体のサーメットより緻密かつ硬質であるため、耐摩耗性を向上させることができる。また前述のようにウエットブラスト処理によって、逃げ面およびチップブレーカをRa0.2μm以下に平滑化したインサート基体の表面にPVDを施せば、逃げ面およびチップブレーカにおけるPVDによる硬質被覆層の表面もRa0.25μm程度以下の平滑な面となるため、優れた耐欠損性、仕上げ面精度を確保することができる。但し、既に述べたように、貫通穴の支持具接触面もがPVD法による硬質被覆層によって覆われてしまえば、既に述べたようにその硬質被覆層の硬さが基体のサーメットよりも格段に高く、瞬間的な衝撃荷重により破壊されやすい性質に起因して、インサートの支持具接触面から亀裂や破損が生じやすくなるとともに、支持具接触面に接触する支持具(L字レバー、ねじ、偏心ピンなど)の磨耗が早期に進行し、その支持具の寿命も短くなるおそれがあるから、本発明では、支持具接触面もしくはそれを含む貫通穴内面には、PVD法による硬質被覆層を形成しないこととしている。
なお、支持具接触面もしくはそれを含む貫通穴内面を除くインサート基体の表面にPVD法によって形成する硬質被覆層の厚みは、基本的には限定されるものではないが、通常は0.5〜15μm程度とすることが望ましい。硬質被覆層の厚みが0.5μm未満では、耐摩耗性能が十分ではなく、一方硬質被覆層の厚みが15μmを越えれば、硬質被覆層の剥離が発生しやすくなるおそれがある。
なお、支持具接触面もしくはそれを含む貫通穴内面を除くインサート基体の表面にPVD法によって形成する硬質被覆層の厚みは、基本的には限定されるものではないが、通常は0.5〜15μm程度とすることが望ましい。硬質被覆層の厚みが0.5μm未満では、耐摩耗性能が十分ではなく、一方硬質被覆層の厚みが15μmを越えれば、硬質被覆層の剥離が発生しやすくなるおそれがある。
インサート基体の表面にPVD法によって形成する硬質被覆層は、周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、Si、Y、Mn、Ni、Sのうちから選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素、ホウ素のうちから選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物の1層または2層以上からなるものであればよい。
ここで、PVD法による硬質被覆層の具体的な材質は上記のところから選択すればよいが、切削インサートとしては、TiC、TiCN、TiN、TiAlN、TiAlCrN、TiAlCrSiN、TiAlNbNなどのTi系硬質被膜やAlCrNなどが特に有効であり、工具寿命を重視する場合は、少なくとも1層が、TiAlN層によって構成されていることが望ましい。このようなTiAlN層は、インサート基体に対する付着強度が大きく、耐熱性も高いため、硬質被覆層の少なくとも1層をTiAlN層とすることによって、大幅に工具寿命を延長することが可能となる。
また、被削材の仕上げ面が要求される場合は、硬質被覆層として、耐溶着性に優れたTiの炭化物、窒化物、炭窒化物のうちから選ばれた1層または2層以上からなり、かつその硬質被覆層の総膜厚が0.5〜15μmである硬質被膜を選択することが望ましく、より具体的には、PVD法による硬質被覆層を複数層で形成する場合、インサート基体の側から、膜厚0.1〜1.0μmのTiN層、膜厚0.5〜5.0μmのTiCN層、および膜厚0.1〜1.0μmのTiN層を、その順に被覆形成することが望ましい。このような層構成とすれば、硬質被覆層を構成する物質と被削材(鉄系)との親和性が低いため、切削加工中の溶着現象が発生し難く、良好な被削材仕上げ面精度を得ることができ、加工面粗さを要求されることが多い表面被覆炭窒化チタン基サーメット製インサートに特に適している。
また、Tiの炭化物、窒化物、炭窒化物のうちから選ばれた1層または2層以上からなる硬質被覆層の総膜厚が0.5μm未満では、耐摩耗性能が十分ではなく、一方総膜厚が15μmを越えれば、硬質被覆層の剥離が発生しやすくなる傾向が確認されている。
なおここでいうPVD法としては、例えばアークイオンプレーティング法、ホロカソード法、スパッタリング法など、従来から知られている種々の物理的な蒸着法を適用することができ、特に限定されるものではない。
ここで、PVD法による硬質被覆層の具体的な材質は上記のところから選択すればよいが、切削インサートとしては、TiC、TiCN、TiN、TiAlN、TiAlCrN、TiAlCrSiN、TiAlNbNなどのTi系硬質被膜やAlCrNなどが特に有効であり、工具寿命を重視する場合は、少なくとも1層が、TiAlN層によって構成されていることが望ましい。このようなTiAlN層は、インサート基体に対する付着強度が大きく、耐熱性も高いため、硬質被覆層の少なくとも1層をTiAlN層とすることによって、大幅に工具寿命を延長することが可能となる。
また、被削材の仕上げ面が要求される場合は、硬質被覆層として、耐溶着性に優れたTiの炭化物、窒化物、炭窒化物のうちから選ばれた1層または2層以上からなり、かつその硬質被覆層の総膜厚が0.5〜15μmである硬質被膜を選択することが望ましく、より具体的には、PVD法による硬質被覆層を複数層で形成する場合、インサート基体の側から、膜厚0.1〜1.0μmのTiN層、膜厚0.5〜5.0μmのTiCN層、および膜厚0.1〜1.0μmのTiN層を、その順に被覆形成することが望ましい。このような層構成とすれば、硬質被覆層を構成する物質と被削材(鉄系)との親和性が低いため、切削加工中の溶着現象が発生し難く、良好な被削材仕上げ面精度を得ることができ、加工面粗さを要求されることが多い表面被覆炭窒化チタン基サーメット製インサートに特に適している。
また、Tiの炭化物、窒化物、炭窒化物のうちから選ばれた1層または2層以上からなる硬質被覆層の総膜厚が0.5μm未満では、耐摩耗性能が十分ではなく、一方総膜厚が15μmを越えれば、硬質被覆層の剥離が発生しやすくなる傾向が確認されている。
なおここでいうPVD法としては、例えばアークイオンプレーティング法、ホロカソード法、スパッタリング法など、従来から知られている種々の物理的な蒸着法を適用することができ、特に限定されるものではない。
次に本発明による表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、基本的には、焼結法によるインサート基体製造工程と、ウエットブラスト工程と、PVD法により硬質被覆層を形成する被覆工程とからなり、また好ましくはウエットブラスト工程と被覆工程との間、もしくはインサート基体製造工程とウエットブラスト工程との間に、切れ刃部に対するホーニング加工工程を挿入する。そこで以下にこれらの各工程について説明する。
本発明の製造方法は、基本的には、焼結法によるインサート基体製造工程と、ウエットブラスト工程と、PVD法により硬質被覆層を形成する被覆工程とからなり、また好ましくはウエットブラスト工程と被覆工程との間、もしくはインサート基体製造工程とウエットブラスト工程との間に、切れ刃部に対するホーニング加工工程を挿入する。そこで以下にこれらの各工程について説明する。
インサート基体製造工程:
インサート基体製造工程は、従来の炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造における焼結体(インサート基体)の製造工程と同様であればよい。すなわち所定の配合割合で炭窒化チタン基サーメット原料粉末を配合し、サーメット基体形状にプレス成形して、得られた圧粉成形体を、所定の条件で加熱して焼結すればよい。但しこの焼結段階では、既に述べたように、焼結体の表面粗さが、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μmを超える粗さ、好ましくはRa0.3μmを超える粗さとなるように、原料粉末の配合割合、焼結温度、焼結雰囲気、冷却条件などを適切に調整することが望ましい。なおこのようにして得られたインサート基体のすくい面には、プレス成形時の金型形状が転写されたチップブレーカが形成されている。また、インサートを工具本体へ取り付ける際の着座面は砥石による研削加工面が存在しても良いが、逃げ面は、通常は研削加工されておらず、プレス成型時の金型により形成されるものである。
インサート基体製造工程は、従来の炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造における焼結体(インサート基体)の製造工程と同様であればよい。すなわち所定の配合割合で炭窒化チタン基サーメット原料粉末を配合し、サーメット基体形状にプレス成形して、得られた圧粉成形体を、所定の条件で加熱して焼結すればよい。但しこの焼結段階では、既に述べたように、焼結体の表面粗さが、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μmを超える粗さ、好ましくはRa0.3μmを超える粗さとなるように、原料粉末の配合割合、焼結温度、焼結雰囲気、冷却条件などを適切に調整することが望ましい。なおこのようにして得られたインサート基体のすくい面には、プレス成形時の金型形状が転写されたチップブレーカが形成されている。また、インサートを工具本体へ取り付ける際の着座面は砥石による研削加工面が存在しても良いが、逃げ面は、通常は研削加工されておらず、プレス成型時の金型により形成されるものである。
ウエットブラスト処理:
前述のようにして得られた焼結体であるインサート基体に対しては、取り付け用貫通穴内面(特にその支持具接触面)を除くインサート基体表面について、表面平滑化を図り、さらに圧縮残留応力を付与することを目的として、ウエットブラスト処理を施す。
なおインサート表面の処理手段としては、従来から、ショットピーニング(ショットブラスト)、ドライブラスト等も知られているが、比較的大きな鋼球やセラミックボールを使用するショットピーニング(ショットブラスト)は、加工エネルギーが過大であるため、インサート基体の表面や内面に粗大クラックが発生するおそれがあり、また二種の流体(粉流・気流)でインサート表面をブラストするドライブラストは、ウエットブラストに比べて加工エネルギーが小さいため、表面平滑化、圧縮応力も十分に行なえず、さらには噴射研磨材の処理表面への食い込み・残留も生じやすい問題がある。
そこで本発明では、上記弊害を招くことなく、取り付け用貫通穴内面(特にその支持具接触面)を除くインサート基体表面の表面平滑化および圧縮残留応力付与のための手段として、ウエットブラスト処理を採用している。
ウエットブラスト処理を用いることにより、従来技術で生じていた製造時の粗大クラック等の表面欠陥をインサート基体に与えることなく、複雑な形状(例えば1つの面が複数の曲面の集合によって構成される形状)のインサート基体や、金型によって成型される三次元形状を持つチップブレーカ部に対しても、その形状を損なわずに、少なくとも取り付け用貫通穴内面(特にその支持具接触面)を除くインサート基体の表面部について、表面の平滑化を可能とし、さらに圧縮残留応力の付与により、切削インサートの性能をさらに飛躍的に改善することができた。
前述のようにして得られた焼結体であるインサート基体に対しては、取り付け用貫通穴内面(特にその支持具接触面)を除くインサート基体表面について、表面平滑化を図り、さらに圧縮残留応力を付与することを目的として、ウエットブラスト処理を施す。
なおインサート表面の処理手段としては、従来から、ショットピーニング(ショットブラスト)、ドライブラスト等も知られているが、比較的大きな鋼球やセラミックボールを使用するショットピーニング(ショットブラスト)は、加工エネルギーが過大であるため、インサート基体の表面や内面に粗大クラックが発生するおそれがあり、また二種の流体(粉流・気流)でインサート表面をブラストするドライブラストは、ウエットブラストに比べて加工エネルギーが小さいため、表面平滑化、圧縮応力も十分に行なえず、さらには噴射研磨材の処理表面への食い込み・残留も生じやすい問題がある。
そこで本発明では、上記弊害を招くことなく、取り付け用貫通穴内面(特にその支持具接触面)を除くインサート基体表面の表面平滑化および圧縮残留応力付与のための手段として、ウエットブラスト処理を採用している。
ウエットブラスト処理を用いることにより、従来技術で生じていた製造時の粗大クラック等の表面欠陥をインサート基体に与えることなく、複雑な形状(例えば1つの面が複数の曲面の集合によって構成される形状)のインサート基体や、金型によって成型される三次元形状を持つチップブレーカ部に対しても、その形状を損なわずに、少なくとも取り付け用貫通穴内面(特にその支持具接触面)を除くインサート基体の表面部について、表面の平滑化を可能とし、さらに圧縮残留応力の付与により、切削インサートの性能をさらに飛躍的に改善することができた。
ここで、ウエットブラスト処理とは、噴射研磨材を含有した液体(一般的には水)である研磨液を被処理物に噴射して、圧縮残留応力を付与したり、表面の研磨を行ったりする処理であるが、このようなウエットブラスト処理の噴射研磨材としては、硬質の微粒メディアであれば、アルミナ、炭化珪素、ジルコニア、樹脂系、ガラス系など種々使用可能であり、またその粒径としては、初期投入時の中心粒子径が約1〜100μm程度が望ましく、生産性と品質の両方を考慮すれば、約10〜50μm程度がより好ましい。さらに噴射条件としては、例えばメディアとしてアルミナを使用する場合には、液体(水)と混合した状態において15〜60重量%の範囲となるようにメディアを含有させて研磨液を調整し、ブラストガンに供給する圧縮空気の圧力すなわち噴射圧力を0.05〜0.5MPa、好ましくは0.1〜0.3MPaの範囲として噴射するのが望ましい。
またウエットブラスト処理に使用する研磨材の形状は、多角形状の砥粒が望ましい。ここで、アルミナ研磨材としては、一般に球形状のアルミナ研磨材が多く使用されているが、多角形状のアルミナ研磨材は、上記球形状のアルミナ研磨材と比べ、へき開面により形成された角張った切れ刃部を有する形状のため、研削力が大きく、平滑化効果も高い。これに対して研磨材が球形状の場合は、残留応力付与には適しているが、研削作用が弱く、所定の表面粗さにインサート表面を仕上げるためには、ウエットブラスト処理に長時間を要して生産性が悪くなるばかりでなく、ウエットブラストの過剰処理によるクラック等の欠陥が、インサート表面に生じる場合がある。
さらに、本発明におけるウエットブラスト処理の概略を、図5を参照して説明する。
図5(a)において、基体表面の全体が焼結肌のインサート基体10を、軸線(O)回りに回転可能な一対の回転軸12により挟み込んで保持しつつ、前記軸線回りに回転させながら、該回転軸(O)の軸線方向に対して、例えば、45度の噴射角θを有する相対向する2本のブラストガン14から前記インサート基体10の表面に研磨液Gを噴射して1個ずつウエットブラスト処理を行うことにより、少なくとも取り付け用貫通穴内面(支持具接触面を含む)を除き、インサート基体10の全面を均一に処理することができる。
図5(a)において、基体表面の全体が焼結肌のインサート基体10を、軸線(O)回りに回転可能な一対の回転軸12により挟み込んで保持しつつ、前記軸線回りに回転させながら、該回転軸(O)の軸線方向に対して、例えば、45度の噴射角θを有する相対向する2本のブラストガン14から前記インサート基体10の表面に研磨液Gを噴射して1個ずつウエットブラスト処理を行うことにより、少なくとも取り付け用貫通穴内面(支持具接触面を含む)を除き、インサート基体10の全面を均一に処理することができる。
ここで、回転軸12の先端には、大径の封止部12Aが形成されており、この封止部12Aが、インサート基体の取り付け用貫通穴8の開口端に当接されて、取り付け用貫通穴8の内側の面へのウエットブラスト研磨液の噴射が阻止されるため、取り付け用貫通穴8の内面はウエットブラスト処理が行われず、焼結直後の表面状態が維持される。すなわち支持具接触面を含む貫通穴の内面は、所定の表面粗さの焼結肌が維持される。
一方、インサート基体10の逃げ面およびチップブレーカの表面には、ウエットブラスト処理により平滑面が形成される。ここで、研磨液の種類、噴射圧等を調整することにより、インサート基体の逃げ面およびチップブレーカの表面として、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下の条件を満たす平滑面を形成することができ、同時に上記インサート基体10の少なくともすくい面の表面部の硬質相に、450MPa以上の圧縮残留応力を付与することができる。
なお図5の(b)に示すように、回転軸Oの軸線方向に対するブラストガン14の噴射角θは、30度以上60度以下、好ましくは、40度以上50度以下であれば、インサート基体10の全面(貫通穴の支持具接触面を除く)に対して均一なウエットブラスト処理を行うことができる。また、使用するブラストガン14の本数については、図5(a)では2本の例を示しているが、加工するインサート基体の形状によって、1本または3本以上の複数のガンを用いても良い。
一方、インサート基体10の逃げ面およびチップブレーカの表面には、ウエットブラスト処理により平滑面が形成される。ここで、研磨液の種類、噴射圧等を調整することにより、インサート基体の逃げ面およびチップブレーカの表面として、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下の条件を満たす平滑面を形成することができ、同時に上記インサート基体10の少なくともすくい面の表面部の硬質相に、450MPa以上の圧縮残留応力を付与することができる。
なお図5の(b)に示すように、回転軸Oの軸線方向に対するブラストガン14の噴射角θは、30度以上60度以下、好ましくは、40度以上50度以下であれば、インサート基体10の全面(貫通穴の支持具接触面を除く)に対して均一なウエットブラスト処理を行うことができる。また、使用するブラストガン14の本数については、図5(a)では2本の例を示しているが、加工するインサート基体の形状によって、1本または3本以上の複数のガンを用いても良い。
また取り付け用貫通穴8の内面が、より確実にウエットブラスト処理を受けないようにするためには、図5(c)に示すように、インサート基体10とこれを挟み込む回転軸12との間に、マスキング部材18を介在させることによって、マスキング部材18でカバーされた取り付け用貫通穴8内面を、所定の表面粗さの焼結肌のままに確実に維持することが可能となる。すなわち、例えばウエットブラストの回転軸12とインサート基体10の取り付け用貫通穴8を同一軸線上に配置できない場合や、複数の取り付け用貫通穴が距離を置いて配置されたインサート基体、あるいは取り付け用貫通穴の断面形状が楕円などの非円形をしたインサート基体にウエットブラスト処理を施す場合等、通常の保持方法では取り付け用貫通穴の内面にウエットブラスト処理が行われてしまうおそれがある形状のインサート基体に対しても、上述のようなマスキング部材を使用すれば、確実に貫通穴内面へのウエットブラスト処理を避けることが可能となる。
このように、上記のような構成のウエットブラスト処理装置を使用することによって、様々な形状やチップブレーカを有するインサート基体に対し、個々の噴射条件を適切に設定し、最適なウエットブラスト処理を施すことが可能となる。
このように、上記のような構成のウエットブラスト処理装置を使用することによって、様々な形状やチップブレーカを有するインサート基体に対し、個々の噴射条件を適切に設定し、最適なウエットブラスト処理を施すことが可能となる。
なお、例えば図3に示したように、取り付け用貫通穴8の開口端にテーパー面8Bが形成されていて、そのテーパー面8Bには取り付け支持具9A(9B)が接触しないようになっている場合、そのテーパー面8Bについては、上述のようなウエットブラスト処理が施されてもよい。すなわち、上述のように所定の表面粗さの焼結肌を残存させる必要があるのは、取り付け用貫通穴8の内面のうちでも、少なくとも工具本体への取り付け手段である支持具に接触する面であればよく、支持具に接触しないことが設計上確定している部分の表面については、ウエットブラスト処理を施すことが許容される。
ホーニング加工工程:
既に述べたように、ウエットブラスト処理を施した後には、PVD法により硬質被覆層を形成する前の段階で、インサート基体の刃先先端部に湿式ブラシ等によるホーニング加工を施して、刃先先端に形成されるホーニング部の表面粗さを他の部分より小さくすることが望ましい。そのホーニング加工の具体的方法は、基本的には従来の切削インサート製造における刃先先端のホーニング加工と同様であればよく、例えば弾性砥石、バレル、ブラシ等でホーニング加工すればよいが、特に湿式ブラシによるホーニングによれば、高品位な加工表面が得られ、かつ様々な形状のホーニングを比較的短時間で加工することができる。ただし、ホーニング加工後にウエットブラスト処理を行えば、ホーニング部がウエットブラスト処理により、再度加工され、その形状や大きさに変化が生じてしまい、本来の切削性能を発揮できないことがある。
そこで、本発明では、前述のようなウエットブラスト処理を施した後の段階の工程として、ホーニング(望ましくはブラシホーニング、より好ましくは湿式ブラシホーニング)によって切れ刃部のホーニング処理を行うことが望ましい。このように切れ刃部のホーニングを、ウエットブラスト処理の後に行うことにより、優れた被削材の仕上げ面精度を長時間にわたり維持するインサートを得ることができる。また、ウエットブラスト処理の後に湿式ブラシホーニング加工を行えば、湿式ブラシホーニングの利点を生かして、表面粗さが良く、所定の形状に精度良くコントロールされたホーニング加工面を、生産性良く得ることが可能となる。
なお切れ刃部に対するホーニング加工は、ウエットブラスト処理後に行うことが最も望ましいが、ホーニング加工後にウエットブラスト処理を行った場合でも、本発明の効果を得ることが可能である。
また、加工されるホーニングの寸法が比較的小さい場合は、ウエットブラスト処理のみで所定のホーニング寸法まで加工されるため、ブラシ等によるホーニング加工を行わずにウエットブラスト処理がホーニング加工を兼ねる場合もある。その場合も、当然、本発明の効果を得られることが確認されている。
なおこのホーニング加工では、インサート基体における刃先先端に形成されるホーニング部の表面粗さをカットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.1μm以下にすることが望ましい。硬質被覆層形成前のホーニング部の表面粗さRaを適切に調整しておくことにより、硬質被覆層形成後のホーニング部の表面粗さRaを0.25μm程度以下とすることができ、この程度のホーニング部表面粗さであれば、前述のように耐欠損性の十分な向上を図ることができる。
既に述べたように、ウエットブラスト処理を施した後には、PVD法により硬質被覆層を形成する前の段階で、インサート基体の刃先先端部に湿式ブラシ等によるホーニング加工を施して、刃先先端に形成されるホーニング部の表面粗さを他の部分より小さくすることが望ましい。そのホーニング加工の具体的方法は、基本的には従来の切削インサート製造における刃先先端のホーニング加工と同様であればよく、例えば弾性砥石、バレル、ブラシ等でホーニング加工すればよいが、特に湿式ブラシによるホーニングによれば、高品位な加工表面が得られ、かつ様々な形状のホーニングを比較的短時間で加工することができる。ただし、ホーニング加工後にウエットブラスト処理を行えば、ホーニング部がウエットブラスト処理により、再度加工され、その形状や大きさに変化が生じてしまい、本来の切削性能を発揮できないことがある。
そこで、本発明では、前述のようなウエットブラスト処理を施した後の段階の工程として、ホーニング(望ましくはブラシホーニング、より好ましくは湿式ブラシホーニング)によって切れ刃部のホーニング処理を行うことが望ましい。このように切れ刃部のホーニングを、ウエットブラスト処理の後に行うことにより、優れた被削材の仕上げ面精度を長時間にわたり維持するインサートを得ることができる。また、ウエットブラスト処理の後に湿式ブラシホーニング加工を行えば、湿式ブラシホーニングの利点を生かして、表面粗さが良く、所定の形状に精度良くコントロールされたホーニング加工面を、生産性良く得ることが可能となる。
なお切れ刃部に対するホーニング加工は、ウエットブラスト処理後に行うことが最も望ましいが、ホーニング加工後にウエットブラスト処理を行った場合でも、本発明の効果を得ることが可能である。
また、加工されるホーニングの寸法が比較的小さい場合は、ウエットブラスト処理のみで所定のホーニング寸法まで加工されるため、ブラシ等によるホーニング加工を行わずにウエットブラスト処理がホーニング加工を兼ねる場合もある。その場合も、当然、本発明の効果を得られることが確認されている。
なおこのホーニング加工では、インサート基体における刃先先端に形成されるホーニング部の表面粗さをカットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.1μm以下にすることが望ましい。硬質被覆層形成前のホーニング部の表面粗さRaを適切に調整しておくことにより、硬質被覆層形成後のホーニング部の表面粗さRaを0.25μm程度以下とすることができ、この程度のホーニング部表面粗さであれば、前述のように耐欠損性の十分な向上を図ることができる。
物理蒸着法(PVD法)による被覆工程(硬質被覆層の形成工程):
ウエットブラスト処理後、望ましくは刃先先端のホーニング加工の後に、PVD法により、インサート基体の表面のうち、少なくとも取り付け用貫通穴内面の支持具接触面を除くインサート基体表面に、周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、Si、Y、Mn、NiおよびSの群から選ばれた少なくとも一種の元素と、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群から選ばれた少なくとも一種の元素とからなる化合物の少なくとも一層または複層からなる硬質被膜を被覆形成する。
ここで硬質被覆層形成のためのPVD法としては、アークイオンプレーティング法、ホロカソード法、スパッタリング法などの公知の物理的な蒸着法を適用すればよい。但し本発明の場合、既に述べたように貫通穴内面、特にその支持具接触面は、最終製品でも所定の表面粗さの焼結肌とする必要があり、したがってインサート基体にPVD法を適用する際には、貫通穴内面、あるいは少なくとも貫通穴の支持具接触面がPVDによる硬質被覆層で覆われないようにする。そのためには、例えば貫通穴、あるいは少なくとも貫通穴内側の支持具接触面を、適宜のマスキング部材によって覆った状態でPVDによる蒸着を行なえばよい。
ウエットブラスト処理後、望ましくは刃先先端のホーニング加工の後に、PVD法により、インサート基体の表面のうち、少なくとも取り付け用貫通穴内面の支持具接触面を除くインサート基体表面に、周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、Si、Y、Mn、NiおよびSの群から選ばれた少なくとも一種の元素と、炭素、窒素、酸素および硼素からなる群から選ばれた少なくとも一種の元素とからなる化合物の少なくとも一層または複層からなる硬質被膜を被覆形成する。
ここで硬質被覆層形成のためのPVD法としては、アークイオンプレーティング法、ホロカソード法、スパッタリング法などの公知の物理的な蒸着法を適用すればよい。但し本発明の場合、既に述べたように貫通穴内面、特にその支持具接触面は、最終製品でも所定の表面粗さの焼結肌とする必要があり、したがってインサート基体にPVD法を適用する際には、貫通穴内面、あるいは少なくとも貫通穴の支持具接触面がPVDによる硬質被覆層で覆われないようにする。そのためには、例えば貫通穴、あるいは少なくとも貫通穴内側の支持具接触面を、適宜のマスキング部材によって覆った状態でPVDによる蒸着を行なえばよい。
以下、本発明の実施例を、比較例とともに示す。なお以下の実施例は、本発明の具体的な態様、及びそれによる効果を説明するためのものであって、実施例に記載された構成、条件が本発明の技術的範囲を限定するものでないことはもちろんである。
下記の原料配合組成を有するP30グレードTiCN基サーメットの原料粉末をプレス成型した後、下記の条件で焼結し、焼結温度および窒素雰囲気圧力を調整することにより種々の表面粗さを有する焼肌面を有するとともに、ISO・DNMG150612に規定する形状・寸法を有するTiCN基サーメットからなる焼結体(インサート基体)を作製した。
原料配合組成:
いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN粉末、WC粉末、NbC粉末、Co粉末、Ni粉末を、それぞれ、55wt%、20wt%、7wt%、9wt%、9wt%となるように配合し、ボールミルにて24時間湿式混合し、乾燥した。
焼結条件:
(1)常温から1200℃までを、10Pa以下の真空雰囲気中にて10℃/分の速度で昇温し、
(2)1350℃までの昇温を10Pa以下の真空雰囲気中にて、2.0℃/分の速度で昇温し、
(3)4.0kPa〜0.1kPaの窒素雰囲気で、1350℃から所定の焼結温度(1450〜1550℃)まで2℃/分の速度で昇温し、続いて同じ雰囲気で前記焼結温度に60分間保持した。
なお、切れ刃には、砥粒を含有したナイロンブラシを使用し、すくい面側から測定した幅が0.09mm、かつ、逃げ面側から測定した幅が0.05mmのウォーターフォール型の曲面ホーニングを湿式処理で施した。
これらのインサート基体に、中心粒子径40μmを有するアルミナを噴射研磨材とし、表1に示す噴射圧力で、図5(a)に示されるウエットブラスト処理装置を用いて、ウエットブラスト処理を施すことにより、本発明のTiCN基サーメット製切削インサート(本発明1〜8)を製造した。
ウエットブラスト処理では、噴射研磨材のアルミナを水と混合し研磨液中の研磨材の含有量が30重量%となるように噴射研磨液を調製した。
また、図5(a)に示されるウエットブラスト処理装置において、噴射角θは45°一定とし、一対の回転軸で挟み込んで保持した部分を除いてインサート基体全面が処理されるようウエットブラストを行っており、したがってインサート基体の貫通穴内周面にはウエットブラスト処理は施されておらず、焼結肌を維持したままである。
さらに、各インサート基体に対して、その表面に、PVD法の一種であるアークイオンプレーティング法により、平均膜厚1.5μmのTiAlN層単層の硬質被覆層を蒸着形成した。但しこの蒸着被覆においては、予めインサート基体の貫通穴部分をマスキング部材により覆っておき、貫通穴の内面(支持具接触面を含む面)には、硬質被覆層が形成されないようにした。すなわち、支持具接触面を含む貫通穴の内面については、焼結肌を維持した。
原料配合組成:
いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN粉末、WC粉末、NbC粉末、Co粉末、Ni粉末を、それぞれ、55wt%、20wt%、7wt%、9wt%、9wt%となるように配合し、ボールミルにて24時間湿式混合し、乾燥した。
焼結条件:
(1)常温から1200℃までを、10Pa以下の真空雰囲気中にて10℃/分の速度で昇温し、
(2)1350℃までの昇温を10Pa以下の真空雰囲気中にて、2.0℃/分の速度で昇温し、
(3)4.0kPa〜0.1kPaの窒素雰囲気で、1350℃から所定の焼結温度(1450〜1550℃)まで2℃/分の速度で昇温し、続いて同じ雰囲気で前記焼結温度に60分間保持した。
なお、切れ刃には、砥粒を含有したナイロンブラシを使用し、すくい面側から測定した幅が0.09mm、かつ、逃げ面側から測定した幅が0.05mmのウォーターフォール型の曲面ホーニングを湿式処理で施した。
これらのインサート基体に、中心粒子径40μmを有するアルミナを噴射研磨材とし、表1に示す噴射圧力で、図5(a)に示されるウエットブラスト処理装置を用いて、ウエットブラスト処理を施すことにより、本発明のTiCN基サーメット製切削インサート(本発明1〜8)を製造した。
ウエットブラスト処理では、噴射研磨材のアルミナを水と混合し研磨液中の研磨材の含有量が30重量%となるように噴射研磨液を調製した。
また、図5(a)に示されるウエットブラスト処理装置において、噴射角θは45°一定とし、一対の回転軸で挟み込んで保持した部分を除いてインサート基体全面が処理されるようウエットブラストを行っており、したがってインサート基体の貫通穴内周面にはウエットブラスト処理は施されておらず、焼結肌を維持したままである。
さらに、各インサート基体に対して、その表面に、PVD法の一種であるアークイオンプレーティング法により、平均膜厚1.5μmのTiAlN層単層の硬質被覆層を蒸着形成した。但しこの蒸着被覆においては、予めインサート基体の貫通穴部分をマスキング部材により覆っておき、貫通穴の内面(支持具接触面を含む面)には、硬質被覆層が形成されないようにした。すなわち、支持具接触面を含む貫通穴の内面については、焼結肌を維持した。
以上の過程において、硬質被覆層で被覆する前の段階の本発明1〜8のインサート基体について、貫通穴内面、逃げ面およびホーニング部の表面粗さを、JIS B0601−1994(2001)にしたがい、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで測定した。また同じく硬質被覆層で被覆する前の段階の本発明1〜8のインサート表面部の硬質相の残留応力を、インサート逃げ面の平坦面で前述のX線回折装置により測定した。これらの残留応力および表面粗さの測定結果を表1に示す。
なお本発明1〜8のインサート基体では、すくい面がブレーカを有した曲面となっているためにX線回折測定に必要な平坦面を確保できず、すくい面の残留応力を直接測定することはできないが、本実施例1では、ウエットブラスト処理時の噴射角を45°として、基本的に逃げ面とすくい面に同様な作用が加わるように処理を行っているため、すくい面、特に逃げ面とほぼ直角に位置する切れ刃部近傍のランド部分やブレーカ底部(すくい面では切れ刃部に近いランド部分や凹状に湾曲した最も深いブレーカ底部の残留応力値が耐欠損性向上に重要である)の残留応力は、逃げ面で測定された残留応力とほぼ同等であると考えられることから、インサート基体の残留応力は、逃げ面について測定した残留応力で代表させることとした。
また表面粗さについても、ウエットブラスト処理時の噴射角を45°としたことから、すくい面(ブレーカ底)の表面粗さは逃げ面の表面粗さとほぼ同等の値を示したので、インサート基体の表面粗さは、逃げ面について測定した表面粗さで代表させることとした。
また表面粗さについても、ウエットブラスト処理時の噴射角を45°としたことから、すくい面(ブレーカ底)の表面粗さは逃げ面の表面粗さとほぼ同等の値を示したので、インサート基体の表面粗さは、逃げ面について測定した表面粗さで代表させることとした。
さらに、貫通穴内面を除いてPVD法によりインサート基体の表面に硬質被覆層を形成した後の段階の表面被覆インサートについて、逃げ面、ホーニング部、および貫通穴内面の表面粗さを、前記同様にして測定した結果も、表1中に併せて示す。
比較のために、上記本発明1〜8のインサートと同様な組成・形状・寸法を有する切削インサート基体に対して、ウエットブラスト処理を施さずに製造した表面被覆インサートを参考例1として作製するとともに、本発明1〜8のインサートと同様なウエットブラスト処理を施すとともに、貫通穴内面にもウエットブラスト処理を施した表面被覆インサートを比較例1,2として作製した。
さらに、本発明例4と同様にして製造されたインサート基体(ウエットブラスト処理後のもの)について、支持具接触面を含む貫通穴内面も含め、インサート基体の表面の全面について、前記と同様にPVD法としてアークイオンプレーティング法を適用して、平均膜厚1.5μmのTiAlN層単層の硬質被覆層を蒸着形成して、比較例3の表面被覆インサートとした。すなわちこの比較例3の表面被覆インサートは、貫通穴の内面にも硬質被覆層が形成された例である。
これらの比較例1〜3、参考例1について、本発明1〜8と同様に、硬質被覆層形成前の逃げ面の平坦面における残留応力をX線回折装置により測定し、また、硬質被覆層形成前および後の貫通穴内面、逃げ面およびホーニング部の表面粗さを、JIS B0601−1994(2001)にしたがい、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで測定した。これらの比較例、参考例について測定した残留応力値および表面粗さの値を、表1中に併せて示す。
さらに、本発明例4と同様にして製造されたインサート基体(ウエットブラスト処理後のもの)について、支持具接触面を含む貫通穴内面も含め、インサート基体の表面の全面について、前記と同様にPVD法としてアークイオンプレーティング法を適用して、平均膜厚1.5μmのTiAlN層単層の硬質被覆層を蒸着形成して、比較例3の表面被覆インサートとした。すなわちこの比較例3の表面被覆インサートは、貫通穴の内面にも硬質被覆層が形成された例である。
これらの比較例1〜3、参考例1について、本発明1〜8と同様に、硬質被覆層形成前の逃げ面の平坦面における残留応力をX線回折装置により測定し、また、硬質被覆層形成前および後の貫通穴内面、逃げ面およびホーニング部の表面粗さを、JIS B0601−1994(2001)にしたがい、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで測定した。これらの比較例、参考例について測定した残留応力値および表面粗さの値を、表1中に併せて示す。
表1によれば、インサート基体の表面(逃げ面およびチップブレーカ)へのウエットブラストの噴射圧力を高めれば、圧縮残留応力が増加する効果があるが、噴射圧力が所定範囲以上に高くなれば、逆に表面粗さが大になり、若干平滑性が低下する傾向にあることがわかる。
また、ナイロンブラシによるホーニングを施したホーニング部の表面粗さは0.06μmと滑らかであるが、この表面に、本発明条件のウエットブラスト処理を施すとやはり逆に表面粗さが大になり、平滑性が低下することが分かる。
なお、本発明1〜8、参考例1の表面被覆インサートの貫通穴内面にはウエットブラスト処理が施されておらず、しかも硬質被覆層も被覆されておらず、焼結肌のままである。また比較例3の表面被覆インサートは、その貫通穴内面にウエットブラスト処理は施されていないが、PVD法による硬質被覆層が形成されている。
また、ナイロンブラシによるホーニングを施したホーニング部の表面粗さは0.06μmと滑らかであるが、この表面に、本発明条件のウエットブラスト処理を施すとやはり逆に表面粗さが大になり、平滑性が低下することが分かる。
なお、本発明1〜8、参考例1の表面被覆インサートの貫通穴内面にはウエットブラスト処理が施されておらず、しかも硬質被覆層も被覆されておらず、焼結肌のままである。また比較例3の表面被覆インサートは、その貫通穴内面にウエットブラスト処理は施されていないが、PVD法による硬質被覆層が形成されている。
次に上記の各表面被覆インサートを、いずれもバイトの先端部に図4(a)に示されるL字形レバーにて固定した状態で、以下に示す条件により切削試験を行った。
《切削試験1》
被削材;JIS−SCM440の角材、
切削速度;260m/min、
送り;0.5mm/rev、
切り込み;2mm
の湿式断続切削を行い、
衝撃回数は最大2000回を上限とし、欠損が発生するまでの衝撃回数を評価した。
《切削試験2》
被削材;JIS−S10Cの丸棒、切削速度;400m/min、
送り;0.6mm/rev、
切り込み;3.5mm
の湿式連続切削を行い、
切れ刃交換までの実切削時間を評価し、切れ刃交換時の切削加工表面(仕上げ面)の観察も行った。
表2に、上記切削試験1,2における欠損が発生するまでの衝撃回数、切れ刃交換までの実切削時間および切れ刃交換時の切削加工表面状況を示す。
なお、切れ刃交換までの実切削時間は、仕上げ面が劣化した場合には、その時点で切削を終了してそれまでの時間とし、良好な仕上げ面が維持されている場合には、逃げ面摩耗幅が0.4mmに達するまでの時間とした。これは、逃げ面摩耗幅が0.4mmを越えるまで成長すると、高負荷が作用する高送り切削での加工寸法精度を維持することができなくなるからである。
《切削試験1》
被削材;JIS−SCM440の角材、
切削速度;260m/min、
送り;0.5mm/rev、
切り込み;2mm
の湿式断続切削を行い、
衝撃回数は最大2000回を上限とし、欠損が発生するまでの衝撃回数を評価した。
《切削試験2》
被削材;JIS−S10Cの丸棒、切削速度;400m/min、
送り;0.6mm/rev、
切り込み;3.5mm
の湿式連続切削を行い、
切れ刃交換までの実切削時間を評価し、切れ刃交換時の切削加工表面(仕上げ面)の観察も行った。
表2に、上記切削試験1,2における欠損が発生するまでの衝撃回数、切れ刃交換までの実切削時間および切れ刃交換時の切削加工表面状況を示す。
なお、切れ刃交換までの実切削時間は、仕上げ面が劣化した場合には、その時点で切削を終了してそれまでの時間とし、良好な仕上げ面が維持されている場合には、逃げ面摩耗幅が0.4mmに達するまでの時間とした。これは、逃げ面摩耗幅が0.4mmを越えるまで成長すると、高負荷が作用する高送り切削での加工寸法精度を維持することができなくなるからである。
表2によれば、ウエットブラスト処理を施していない参考例1は、衝撃回数284回で欠損を生じ、耐欠損性に劣ることが分かる。
また、逃げ面およびチップブレーカの表面粗さは本発明と同等であるが、貫通穴内周面の表面粗さがRaで0.2μm以下の比較例1,2については、参考例1の場合と同様に耐欠損性に劣り、特に比較例1においては、切れ刃の欠損に加え、貫通穴内面の支持具接触面にも破損痕が見られたことから、切削中に生じた異常振動が支持具接触面を破損させ、その結果、インサートの工具本体への固定がより不確実となり、切れ刃の欠損が早期に発生したと考えられる。さらに、これらのインサートは、湿式連続切削でも仕上げ面の劣化により短時間で切削中断となった。
また、焼結肌の貫通穴内面を硬質被覆層で被覆した比較例3では、湿式断続切削で貫通穴内面の支持具接触面における硬質被覆層表面から破損が生じ切削終了となった。さらに湿式連続切削でも仕上げ面の白濁・ビビリにより短時間で切削終了となったが、これも支持具接触面の硬質被覆層表面における欠陥により、インサートの工具本体への固定が不確実になったためと考えられる。
これに対し、貫通穴内面の面粗さが0.2μmを超え、かつ、ウエットブラスト処理により逃げ面およびチップブレーカの表面粗さを低減し、すくい面表面部の硬質相に圧縮残留応力を付与し、さらに貫通穴内面を除いてPVD法による硬質被覆層で被覆した本発明品1〜8は、欠損を発生することなく、すぐれた仕上げ面精度を示し、かつ、長寿命を示した。
また、逃げ面およびチップブレーカの表面粗さは本発明と同等であるが、貫通穴内周面の表面粗さがRaで0.2μm以下の比較例1,2については、参考例1の場合と同様に耐欠損性に劣り、特に比較例1においては、切れ刃の欠損に加え、貫通穴内面の支持具接触面にも破損痕が見られたことから、切削中に生じた異常振動が支持具接触面を破損させ、その結果、インサートの工具本体への固定がより不確実となり、切れ刃の欠損が早期に発生したと考えられる。さらに、これらのインサートは、湿式連続切削でも仕上げ面の劣化により短時間で切削中断となった。
また、焼結肌の貫通穴内面を硬質被覆層で被覆した比較例3では、湿式断続切削で貫通穴内面の支持具接触面における硬質被覆層表面から破損が生じ切削終了となった。さらに湿式連続切削でも仕上げ面の白濁・ビビリにより短時間で切削終了となったが、これも支持具接触面の硬質被覆層表面における欠陥により、インサートの工具本体への固定が不確実になったためと考えられる。
これに対し、貫通穴内面の面粗さが0.2μmを超え、かつ、ウエットブラスト処理により逃げ面およびチップブレーカの表面粗さを低減し、すくい面表面部の硬質相に圧縮残留応力を付与し、さらに貫通穴内面を除いてPVD法による硬質被覆層で被覆した本発明品1〜8は、欠損を発生することなく、すぐれた仕上げ面精度を示し、かつ、長寿命を示した。
下記の原料配合組成を有するP20グレードTiCN基サーメットの原料粉末をプレス成型した後、下記の条件で焼結し、ISO・TNMG160412に規定する形状・寸法を有する貫通穴を有するインサート基体(焼結体)を作成した。
原料配合組成:
いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN粉末、WC粉末、TaC粉末、Mo2C粉末、Co粉末、Ni粉末を、それぞれ、56wt%、15wt%、5wt%、10wt%、7wt%、7wt%となるように配合し、ボールミルにて24時間湿式混合し、乾燥した。
焼結条件:
(1)常温から1200℃までを、10Pa以下の真空雰囲気中にて10℃/分の速度で昇温し、
(2)1350℃までの昇温を、10Pa以下の真空雰囲気中にて2℃/分の速度で昇温し、
(3)2.0kPaの窒素雰囲気で、1350℃から所定の焼結温度(1500℃)まで2℃/分の速度で昇温し、続いて同じ雰囲気で前記焼結温度に60分間保持した。
これら切削インサートに実施例1と同様のブラシホーニング処理およびウエットブラス
ト処理を、表3に示す工程順序、処理条件で施した。
さらに、各インサート基体に対して、その表面に、PVD法の一種であるアークイオンプレーティング法により、平均膜厚1.5μmのTiAlN層単層の硬質被覆層を蒸着形成し、本発明9〜12の表面被覆インサートとした。但し蒸着被覆においては、予めインサート基体の貫通穴部分をマスキング部材により覆っておき、貫通穴の内面(支持具接触面を含む面)には、硬質被覆層が形成されないようにした。すなわち、支持具接触面を含む貫通穴の内面については、焼結肌を維持した。
比較のために、ブラシホーニング処理のみを行いウエットブラスト処理を行わないインサートを参考例2として作製し、また、本発明と同条件で、ブラシホーニング処理及びウエットブラスト処理を行うとともに、これに加え、さらに、貫通穴内面にもウエットブラスト処理を行ったインサートを比較例4,5として作製した。
これらの本発明9〜12および参考例2、比較例4,5の表面被覆インサートについて、実施例1と同様にして、硬質被覆層で被覆する前のインサート基体の段階での各部の表面粗さおよび残留応力と、硬質被覆層で被覆した後の表面被覆インサートの各部の表面粗さを測定した結果を表3に示す。
原料配合組成:
いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN粉末、WC粉末、TaC粉末、Mo2C粉末、Co粉末、Ni粉末を、それぞれ、56wt%、15wt%、5wt%、10wt%、7wt%、7wt%となるように配合し、ボールミルにて24時間湿式混合し、乾燥した。
焼結条件:
(1)常温から1200℃までを、10Pa以下の真空雰囲気中にて10℃/分の速度で昇温し、
(2)1350℃までの昇温を、10Pa以下の真空雰囲気中にて2℃/分の速度で昇温し、
(3)2.0kPaの窒素雰囲気で、1350℃から所定の焼結温度(1500℃)まで2℃/分の速度で昇温し、続いて同じ雰囲気で前記焼結温度に60分間保持した。
これら切削インサートに実施例1と同様のブラシホーニング処理およびウエットブラス
ト処理を、表3に示す工程順序、処理条件で施した。
さらに、各インサート基体に対して、その表面に、PVD法の一種であるアークイオンプレーティング法により、平均膜厚1.5μmのTiAlN層単層の硬質被覆層を蒸着形成し、本発明9〜12の表面被覆インサートとした。但し蒸着被覆においては、予めインサート基体の貫通穴部分をマスキング部材により覆っておき、貫通穴の内面(支持具接触面を含む面)には、硬質被覆層が形成されないようにした。すなわち、支持具接触面を含む貫通穴の内面については、焼結肌を維持した。
比較のために、ブラシホーニング処理のみを行いウエットブラスト処理を行わないインサートを参考例2として作製し、また、本発明と同条件で、ブラシホーニング処理及びウエットブラスト処理を行うとともに、これに加え、さらに、貫通穴内面にもウエットブラスト処理を行ったインサートを比較例4,5として作製した。
これらの本発明9〜12および参考例2、比較例4,5の表面被覆インサートについて、実施例1と同様にして、硬質被覆層で被覆する前のインサート基体の段階での各部の表面粗さおよび残留応力と、硬質被覆層で被覆した後の表面被覆インサートの各部の表面粗さを測定した結果を表3に示す。
本発明9〜12は、ウエットブラスト処理を施すことにより、インサート基体の表面(逃げ面およびチップブレーカ)は全て450MPa以上の高い圧縮残留応力を示し、また、逃げ面およびチップブレーカの表面粗さは全てRa:0.2μm以下であった。
ただ、ウエットブラスト処理を施した後にブラシホーニング処理を行った本発明11,12は、ブラシホーニング処理後にウエットブラスト処理を行った本発明9,10と比較し、ホーニング部の表面粗さも大幅に改善されていることがわかる。
ブラシホーニング処理のみを行いウエットブラスト処理を行わなかった参考例2は、その表面(逃げ面およびチップブレーカ)の圧縮残留応力の値は、本発明9〜12に比して小さいものであった。
また、比較例4,5の表面(逃げ面およびチップブレーカ)の圧縮残留応力の値は、本発明とほぼ同等であったが、貫通穴内面にもウエットブラスト処理を行うことにより、貫通穴内面の表面粗さはRa:0.17μmにまでに低減していた。
なお、インサート貫通穴内面の表面粗さは、本発明9〜12、参考例2のいずれにおいても、Ra:0.32〜0.34μmの範囲内であった。
ただ、ウエットブラスト処理を施した後にブラシホーニング処理を行った本発明11,12は、ブラシホーニング処理後にウエットブラスト処理を行った本発明9,10と比較し、ホーニング部の表面粗さも大幅に改善されていることがわかる。
ブラシホーニング処理のみを行いウエットブラスト処理を行わなかった参考例2は、その表面(逃げ面およびチップブレーカ)の圧縮残留応力の値は、本発明9〜12に比して小さいものであった。
また、比較例4,5の表面(逃げ面およびチップブレーカ)の圧縮残留応力の値は、本発明とほぼ同等であったが、貫通穴内面にもウエットブラスト処理を行うことにより、貫通穴内面の表面粗さはRa:0.17μmにまでに低減していた。
なお、インサート貫通穴内面の表面粗さは、本発明9〜12、参考例2のいずれにおいても、Ra:0.32〜0.34μmの範囲内であった。
次に、上記の各種切削インサートを、いずれもバイトの先端部に図4の(a)に示されるL字形レバーにて固定した状態で、以下に示す条件により切削試験を行った。
《切削試験3》
被削材;JIS−SNCM439の角材、
切削速度;240m/min、
送り;0.6mm/rev、
切り込み;2mm
の湿式断続切削を行い、
欠損が発生するまでの衝撃回数を評価した。
《切削試験4》
被削材;JIS−SUJ2の丸棒、
切削速度;450m/min、
送り;0.6mm/rev、
切り込み;3mm
の湿式連続切削を行い、
切削時間0.2分後の切削開始時点の切削加工表面の観察を行った。
《切削試験3》
被削材;JIS−SNCM439の角材、
切削速度;240m/min、
送り;0.6mm/rev、
切り込み;2mm
の湿式断続切削を行い、
欠損が発生するまでの衝撃回数を評価した。
《切削試験4》
被削材;JIS−SUJ2の丸棒、
切削速度;450m/min、
送り;0.6mm/rev、
切り込み;3mm
の湿式連続切削を行い、
切削時間0.2分後の切削開始時点の切削加工表面の観察を行った。
ウエットブラスト処理を施した本発明9〜12は、全て優れた耐欠損性を示したが、特にウエットブラスト処理を行った後にブラシホーニング処理を行い、ホーニング部の表面粗さを低減した本発明11,12はさらに良好な結果を示した。
これに対して、逃げ面およびチップブレーカにウエットブラスト処理を施さなかった参考例2、および、逃げ面、チップブレーカに加え、貫通穴内面にまでウエットブラストを行い、貫通穴内面の表面粗さをRa:0.17μmにまで低減した比較例4においては、欠損に至るまでの衝撃回数が非常に少なく、耐欠損性に劣ることが分かった。また、同じく貫通穴内面にまでウエットブラストを行った比較例5では、貫通穴内面の支持具接触面よりインサートが欠損し、短時間で切削を終了した。
なお、良好な加工表面を得ることの難しいSUJ2の高速高送り切削において、ホーニング部の表面粗さが小さい参考例2や本発明11,12は切削開始段階から光沢のある良好な仕上げ面を提供したが、本発明9,10による切削加工表面はムシレの発生や白濁現象のない通常の仕上げ面を得ることは可能であったが、光沢のある仕上げ面を提供するまでには至らなかった。
さらに、貫通穴内面の表面粗さを低減した比較例4,5においては、切削初期よりビビリの発生した仕上げ面となっていた。
これに対して、逃げ面およびチップブレーカにウエットブラスト処理を施さなかった参考例2、および、逃げ面、チップブレーカに加え、貫通穴内面にまでウエットブラストを行い、貫通穴内面の表面粗さをRa:0.17μmにまで低減した比較例4においては、欠損に至るまでの衝撃回数が非常に少なく、耐欠損性に劣ることが分かった。また、同じく貫通穴内面にまでウエットブラストを行った比較例5では、貫通穴内面の支持具接触面よりインサートが欠損し、短時間で切削を終了した。
なお、良好な加工表面を得ることの難しいSUJ2の高速高送り切削において、ホーニング部の表面粗さが小さい参考例2や本発明11,12は切削開始段階から光沢のある良好な仕上げ面を提供したが、本発明9,10による切削加工表面はムシレの発生や白濁現象のない通常の仕上げ面を得ることは可能であったが、光沢のある仕上げ面を提供するまでには至らなかった。
さらに、貫通穴内面の表面粗さを低減した比較例4,5においては、切削初期よりビビリの発生した仕上げ面となっていた。
以上の表1〜4に示される結果から、工具本体へのインサート取り付け用貫通穴の内面(支持具接触面を含む面)が、所定の表面粗さとされかつその面が硬質被覆層で覆われていない本発明の表面被覆インサートは、これに接触する支持手段との接触面における亀裂・破損の発生を防止することができ、また、逃げ面およびチップブレーカの表面粗さと、すくい面の表面部の硬質相の残留応力とが適切に調整されているため、高負荷が作用する切削加工において優れた耐欠損性、仕上げ面精度を示し、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮し、工具寿命の延命化が可能であることが確認された。
実施例1で用いた原料と同じ配合組成の原料粉末を用い、TiCN基サーメットからなるインサート基体(焼結体)を製造した。さらにそのインサート基体に対して、表5に示す条件でウエットブラスト処理を施した(但し貫通穴の内面を除く)。またそのウエットブラスト処理前、もしくはウエットブラスト処理の後には、表5の条件でインサート基体の
刃先部にホーニング加工(ブラシホーニング)を施した。
その後、インサート基体における貫通穴の内面を除く表面に、表5中に示す種々の材質でアークイオンプレーティング法によりPVD硬質被覆層を、平均膜厚1.5μmで形成し、本発明例13〜20の表面被覆インサートを得た。なお参考例3は、インサート基体に対してウエットブラスト処理を施さずにPVD硬質被覆層を形成した例である。
硬質被覆層を形成する前の段階のインサート基体について、逃げ面の残留応力、逃げ面、ホーニング部の表面粗さを前記と同様にして測定し、また硬質被覆層形成後のインサートの逃げ面、ホーニング部、および貫通穴内面の表面粗さを、前記同様に測定したので、その結果を表5中に示す。
次に、以下に示す条件により切削試験を行なってインサート性能を評価した。
《切削試験5》
被削材:JIS−SNCM439の溝入り丸棒(溝は長手方向に6溝)、
切削速度:140m/min、
送り速度:0.3mm/rev、
切込み:2mm
の湿式断続切削を行い、切れ刃交換までの実切削時間を評価した。
切れ刃交換までの時間は、使用切れ刃にチッピングや欠損等が発生するか、インサートが割損する等、実切削を継続することが不能となるまでの時間とし、また、正常な切削が維持されている場合は、逃げ面摩耗幅が0.2mmに達するまでの時間とした。
《切削試験6》
被削材:JIS−S45Cの丸棒、
切削速度:240m/min、
送り速度:0.12mm/rev、
切込み:1.0mm
の湿式連続切削を行い、実加工時間20分後の逃げ面摩耗幅を評価した。
なお、加工途中で在っても、逃げ面摩耗幅が0.2mmに達した場合は寿命としそれまでの実加工時間を評価した。
表6に、上記切削試験5における切れ刃交換までの実切削時間および切れ刃交換の理由、切削試験6における逃げ面摩耗幅と切削終了時の被削材仕上げ面の外観状態を示す。
刃先部にホーニング加工(ブラシホーニング)を施した。
その後、インサート基体における貫通穴の内面を除く表面に、表5中に示す種々の材質でアークイオンプレーティング法によりPVD硬質被覆層を、平均膜厚1.5μmで形成し、本発明例13〜20の表面被覆インサートを得た。なお参考例3は、インサート基体に対してウエットブラスト処理を施さずにPVD硬質被覆層を形成した例である。
硬質被覆層を形成する前の段階のインサート基体について、逃げ面の残留応力、逃げ面、ホーニング部の表面粗さを前記と同様にして測定し、また硬質被覆層形成後のインサートの逃げ面、ホーニング部、および貫通穴内面の表面粗さを、前記同様に測定したので、その結果を表5中に示す。
次に、以下に示す条件により切削試験を行なってインサート性能を評価した。
《切削試験5》
被削材:JIS−SNCM439の溝入り丸棒(溝は長手方向に6溝)、
切削速度:140m/min、
送り速度:0.3mm/rev、
切込み:2mm
の湿式断続切削を行い、切れ刃交換までの実切削時間を評価した。
切れ刃交換までの時間は、使用切れ刃にチッピングや欠損等が発生するか、インサートが割損する等、実切削を継続することが不能となるまでの時間とし、また、正常な切削が維持されている場合は、逃げ面摩耗幅が0.2mmに達するまでの時間とした。
《切削試験6》
被削材:JIS−S45Cの丸棒、
切削速度:240m/min、
送り速度:0.12mm/rev、
切込み:1.0mm
の湿式連続切削を行い、実加工時間20分後の逃げ面摩耗幅を評価した。
なお、加工途中で在っても、逃げ面摩耗幅が0.2mmに達した場合は寿命としそれまでの実加工時間を評価した。
表6に、上記切削試験5における切れ刃交換までの実切削時間および切れ刃交換の理由、切削試験6における逃げ面摩耗幅と切削終了時の被削材仕上げ面の外観状態を示す。
表6に示される結果から、表5中に示しているような種々の異なる材質の硬質被覆層のいずれでも、本発明の例では、高負荷が作用する切削加工において優れた耐欠損性、仕上げ面精度を示し、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮し、工具寿命の延命化が可能であることが確認された。なおインサート基体にウエットブラスト処理を施さなかった参考例3では、耐欠損性が劣り、また仕上げ面の外観品質も劣ることが確認された。
本発明によれば、切れ刃部に対して高負荷が作用する切削条件下で、優れた耐欠損性を備え、かつ、仕上げ面精度の優れた切削加工表面の形成を可能とする表面被覆TiCN基サーメット製切削インサートを提供することができるばかりか、このインサートを通常条件の切削加工に適用した場合にも、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものであるから、切削加工の省エネ化、低コスト化に十分満足に対応することができるものである。
1 表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサート
2 逃げ面
3 ホーニング部
4 すくい面
5 チップブレーカ部
6 工具本体への取り付け着座面
7 ランド部
8 取り付け用貫通穴
8A 支持具接触面
9 工具本体
9A 工具本体への取り付け手段としての支持具
9B 工具本体への取り付け手段としての支持具
10 インサート基体
12 回転軸
14 ブラストガン
G 研磨液
2 逃げ面
3 ホーニング部
4 すくい面
5 チップブレーカ部
6 工具本体への取り付け着座面
7 ランド部
8 取り付け用貫通穴
8A 支持具接触面
9 工具本体
9A 工具本体への取り付け手段としての支持具
9B 工具本体への取り付け手段としての支持具
10 インサート基体
12 回転軸
14 ブラストガン
G 研磨液
Claims (19)
- 工具本体への取り付け用貫通穴、逃げ面、ホーニング部およびすくい面を備え、かつ前記すくい面に、プレス成形時にその金型形状を転写することにより形成されたチップブレーカを有する炭窒化チタン基サーメットからなる焼結体で構成されたインサート基体を、物理蒸着法によって硬質被覆層により被覆してなる表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートにおいて;
前記取り付け用貫通穴の内面のうち、少なくとも工具本体への取り付け手段としての支持具に接する支持具接触面は、前記硬質被覆層により覆われていない面で構成され、かつその支持具接触面は、その表面面粗さが、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μmを超える粗さとされ、かつ前記インサート基体における逃げ面およびチップブレーカの表面粗さは、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下であり、しかも前記インサート基体における少なくともすくい面の表面部の硬質相の残留応力が、圧縮で450MPa以上であることを特徴とする、表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。 - 前記貫通穴の少なくとも支持具接触面は焼結肌で構成され、かつその表面粗さが、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.3μm以上とされていることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
- 前記インサート基体における少なくともすくい面の表面部の硬質相の残留応力が、圧縮で600MPa以上であることを特徴とする、請求項1および請求項2のうちのいずれかの請求項に記載の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
- 前記インサート基体における刃先先端のホーニング部の表面粗さが、インサート基体の逃げ面およびチップブレーカの表面粗さより小さく形成されていることを特徴とする、請求項1〜請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
- 前記インサート基体におけるホーニング部の表面粗さが、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.1μm以下であることを特徴とする、請求項1〜請求項4のうちのいずれかの請求項に記載の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
- 前記硬質被覆層が、周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、Si、Y、Mn、Ni、Sのうちから選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素、ホウ素のうちから選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物の1層または2層以上からなるものであることを特徴とする、請求項1〜請求項5のうちのいずれかの請求項に記載の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
- 前記硬質被覆層のうち、少なくとも1層は、TiAlN層によって構成されていることを特徴とする、請求項6に記載の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
- 前記硬質被覆層が、Tiの炭化物、窒化物、炭窒化物のうちから選ばれた1層または2層以上からなり、かつその硬質被覆層の総膜厚が0.5〜15μmであることを特徴とする、請求項6に記載の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
- 前記硬質被覆層として、インサート基体の側から、膜厚0.1〜1.0μmのTiN層、膜厚0.5〜5.0μmのTiCN層、および膜厚0.1〜1.0μmのTiN層がその順に被覆形成されていることを特徴とする、請求項8に記載の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサート。
- 工具本体への取り付け用貫通穴、逃げ面、ホーニング部およびすくい面を備え、かつ前記すくい面に、プレス成形時にその金型形状を転写することにより形成されたチップブレーカを有する炭窒化チタン基サーメットからなる焼結体で構成されたインサート基体を、物理蒸着法によって硬質被覆層により被覆してなる表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法において;
焼結法によって、前記取り付け用貫通穴における少なくとも工具本体への取り付け手段としての支持具に接する支持具接触面の表面面粗さがカットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μmを超える粗さとなっているインサート基体を製造するインサート基体製造工程と、
前記インサート基体の表面のうち、少なくとも前記支持具接触面を除く領域内にウエットブラスト処理を施すことにより、逃げ面およびチップブレーカの表面粗さを、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.2μm以下とし、かつ少なくともすくい面の表面部の硬質相の残留応力を圧縮で450MPa以上とするウエットブラスト工程と、
前記ウエットブラスト工程の後、インサート基体の表面のうち、少なくとも前記支持具接触面を除く領域に、物理蒸着法によって硬質被覆層を形成する被覆工程、
とを有してなることを特徴とする、表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法。 - 前記ウエットブラスト工程において、前記インサート基体を、軸線回りに回転可能な一対の回転軸により挟み込んで保持しつつ、前記軸線回りに回転させながら、少なくとも一つ以上のブラストガンから研磨液を噴射して、少なくとも前記支持具接触面を除くインサート基体表面に、ウエットブラスト処理を施すことを特徴とする、請求項10に記載の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法。
- 前記ウエットブラスト工程において、前記インサート基体を、回転可能に挟み込む前記回転軸の軸線方向に対して、30度以上60度以下の噴射角でブラストガンから研磨液を噴射してウエットブラスト処理を施すことを特徴とする、請求項11に記載の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製削インサートの製造方法。
- 前記ウエットブラスト工程において、前記噴射角を40度以上50度以下とすることを特徴とする、請求項12に記載の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法。
- 前記ウエットブラスト工程の終了後、前記被覆工程の前の段階で、インサート基体の切れ刃部にホーニング加工を施すことを特徴とする、請求項10〜請求項13のうちのいずれかの請求項に記載の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製削インサートの製造方法。
- 前記ホーニング加工を、湿式ブラシホーニングにより施して、インサート基体の切れ刃部の表面粗さを、カットオフ値0.08mmにおける算術平均粗さRaで0.1μm以下とすることを特徴とする、請求項14に記載の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法。
- 前記被覆工程において、硬質被覆層として、周期律表のIVa族元素、Va族元素、VIa族元素、Al、Si、Y、Mn、Ni、Sのうちから選ばれる少なくとも1種の元素と、炭素、窒素、酸素、ホウ素のうちから選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物の1層または2層以上からなる層を物理蒸着法により被覆形成することを特徴とする、請求項10〜請求項15のうちのいずれかの請求項に記載の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法。
- 前記被覆工程において、前記硬質被覆層のうち、少なくとも1層を、TiAlN層により形成することを特徴とする、請求項16に記載の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法。
- 前記被覆工程において、前記硬質被覆層として、Tiの炭化物、窒化物、炭窒化物のうちから選ばれた1層または2層以上からなり、かつ総膜厚が0.5〜15μmの硬質被覆層を形成することを特徴とする、請求項16に記載の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法。
- 前記被覆工程において、前記硬質被覆層として、インサート基体の側から、膜厚0.1〜1.0μmのTiN層、膜厚0.5〜5.0μmのTiCN層、および膜厚0.1〜1.0μmのTiN層を、その順に形成することを特徴とする、請求項18に記載の表面被覆炭窒化チタン基サーメット製切削インサートの製造方法。
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