JP5111133B2 - 切削工具 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、ソリッドタイプのドリル、エンドミルや、旋削、フライス、ドリル加工用のスローアウェイチップ等として有用な切削工具に関するものであり、詳しくは、硬質合金からなる母材の表面を被覆層で被覆してなる切削工具に関する。
例えば、炭窒化チタン(TiCN)や炭化タングステン(WC)を主体とする硬質相と、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)等の鉄族金属の結合相とからなる超硬合金、サーメット等の硬質合金、もしくはWC−Co系などの超硬合金に周期表の4、5、6族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物等の固溶相を分散せしめた硬質合金は、従来から、切削工具に適した材料として知られている。そして、さらにその硬度を補強する目的で、上記硬質合金からなる母材の表面に、該硬質合金よりも高硬度の硬質膜からなる被覆層を形成した切削工具が汎用されている。
ところが、硬質合金である母材の表面に被覆層を形成する場合、焼成された硬質合金の焼き肌面に直接被覆層を形成すると、硬質合金表面に焼結により不可避的に発生する脱炭層や金属富化層などの異質層が存在することや、その表面粗さが大きいことが起因して、母材に対する被覆層の付着性が低下し、切削時に膜剥離が生じてしまうという問題が起こる。また、用途に応じた形状を作製するために母材を機械加工で研削した際に、研削屑の付着、クラックの発生、硬質相と結合相との界面欠陥などにより母材表面に生じる加工変質層も、被覆層との密着性を低下させる原因となる。母材と被覆層との剥離が生じると、耐摩耗性が低下し、切削工具としての寿命が短くなる。
そこで、硬質合金の表面に被覆層を形成するにあたり、硬質合金母材の表面に予め何らかの加工を施して、硬質合金母材に対する被覆層の付着性を向上させる方法が提案されている。例えば、硬質合金母材の少なくとも刃先を含む表面の平均表面粗さRaをブラシ研磨によって特定範囲とすることにより、硬質膜の付着性を向上させた超硬合金(特許文献1)や、特定の電解液中で電解研磨することにより、硬質合金母材表面の硬質相に機械加工によるクラックが存在しないようにした焼結合金(特許文献2)などである。
特開平6−108253号公報 特開2000−212743号公報
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の硬質合金によれば、被覆層の密着性は改善され、耐摩耗性の向上は期待できるものの、靭性は不充分であり、耐欠損性に関しては満足しうるレベルにはなかった。その原因としては、所望の平均表面粗さRaとなるように、もしくは母材表面の硬質相にクラックが存在しないように、ブラシ研磨加工や電解研磨加工を行なった場合、母材表面全体が凹凸のない滑らかな状態となるために、その上に被覆層として硬質膜を形成する際、結晶粒子(柱状結晶)は膜の成長方向と同じ方向に揃って配列されることが考えられる。つまり、結晶が様々な方向に成長していると、コーティング後の冷却時に生じる収縮が様々な方向に発生し、熱応力が分散されて高靭性化が図れる。しかし、結晶配列が揃っていると、同じ方向にしか収縮することができなくなり、冷却過程で発生する熱応力は分散、緩和されることなく、靭性が低下するのである。また、結晶配列が揃っていると結晶の成長がその過程で互いに淘汰されることがなく、マイクロボイドの発生を抑制することができるので、高硬度化を図ることができる。その反面、後述するようなマイクロボイドにより生じる応力緩和は得られず、靭性は低くなる傾向になる。
ところで、硬質合金の表面処理としては、エッチング加工が知られている。エッチング加工により被覆層を形成する前の母材表面を処理した場合、エッチング液が表面の結合相(例えばコバルト)を腐食し、硬質相(例えば炭化タングステン)の粒子と粒子の間に僅かな隙間ができる。この隙間に被覆層がある程度は入り込むために、母材に対する被覆層の付着力に関しては優れた効果が期待できる。しかし、このような僅かな隙間は、被覆層をコーティングしても完全に充填されることはないので、母材と被覆層との界面に比較的大きなボイドを生じさせることになる。その結果、切削時に該ボイドに被削材が侵入して異常摩耗を発生させるという問題を招く。
他方、硬質合金の表面処理として、ブラスト加工も知られている。被覆層を形成する前に母材表面をブラスト加工した場合、母材の表面は荒らされ、凹凸が設けられることになるため、柱状結晶の成長は様々な方向に成長し、結晶成長が止まる部分が多くなる。その結果、マイクロボイドが大量に生じて低硬度化が起こり、耐摩耗性が低下する。また、硬質相(例えば炭化タングステン)のエッジ部では、被覆層として形成される膜の結晶が大きな角度で成長する(換言すると、結晶の成長角度αが大きくなる)ので、該結晶は粗粒化することとなり、これによっても低硬度化が生じる。さらに、ブラスト加工によれば、母材表面は硬質相(例えば炭化タングステン)粒子が脱粒して面が荒れた状態になるため、膜生成時に凹凸部に未成膜部が生じて、膜の密着性が低下するという問題も起こる。また、一般的な条件で行うショットブラストは衝撃力が大きいため、ブラスト加工時に硬質相が脱粒するおそれもある。
本発明の課題は、優れた耐摩耗性と耐欠損性とを兼ね備えた切削工具を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、被覆層に、厚み方向に直交する平面に対してほぼ垂直に(85〜90度の角度で)結晶成長した垂直成長部と、前記平面に対して比較的大きい傾きをもって(85度未満の角度で)結晶成長した多方向成長部とを存在させることにより、高硬度と高靭性とを両立させることができ、ひいては優れた耐摩耗性と耐欠損性とを発現させることが可能になることを見出した。つまり、前記垂直成長部では、マイクロボイドが生じることはないので、この領域で高硬度を達成することができる。他方、前記多方向成長部は、大きな傾きをもって成長した結晶同士がぶつかって互いに淘汰される結果、マイクロボイドが形成された領域となる。このようなマイクロボイドが形成された領域が存在すると、膜の硬度が低下する点では不利になるが、一方で、残留応力が緩和され、高靭性化が図られ、耐欠損性が向上する、という利点が得られる。つまり、クラックが進行してきた場合にも、クラック先端の応力場においてマイクロボイドがマイクロクラックとして作用し、応力集中が緩和されてクラックの進展を抑制できるため、高靭性化が図れるのである。本発明は、このような知見により完成したものである。
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
)母材と、前記母材の表面に形成された被覆層とを備える切削工具であって、前記被覆層は、厚み方向に直交する平面に対して85〜90度の角度で結晶成長した垂直成長部と、前記平面に対して85度未満の角度で結晶成長した多方向成長部とを備えており、厚み方向に切断した断面において、多方向成長部の幅は、被覆層の外表面から母材側に向けて増大していることを特徴とする切削工具。
)前記被覆層の膜厚が2.0μm以上である、前記(1)に記載の切削工具。
)前記母材は、硬質相および当該硬質相を結合する結合相を有するとともに、前記硬質相は、周期表の4、5、6族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物からなる群より選ばれる1種以上であり、炭窒化チタンまたは炭化タングステンのいずれか一方を少なくとも必須とする成分からなる、前記(1)または)のいずれかに記載の切削工具。
)前記結合相は、鉄族金属を主成分とする、前記(1)乃至()のいずれかに記載の切削工具。
)前記母材の表面は、硬質相からなる平滑面部と、結合相または結合相および硬質相からなる凹部とから構成されている、前記()または()に記載の切削工具。
)前記垂直成長部は前記平滑面部上に形成されており、前記多方向成長部は前記凹部上に形成されている、前記()記載の切削工具。
本発明によれば、硬質合金母材の表面を被覆する被覆層における残留応力が最適化されているので、被覆層が剥離しにくいことは勿論、高硬度であると同時に高靭性であり、優れた耐摩耗性と耐欠損性とを兼ね備えた切削工具を提供することができる、という効果がある。
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。図1は、本発明の切削工具を厚み方向に切断したときの断面を模式的に表した説明図である。
本発明の切削工具は、硬質相11と該硬質相11を結合する結合相12とからなる硬質合金母材10の表面に被覆層20が形成されたものである。
前記硬質相11を構成する成分は、一般に硬質合金における硬質相に用いられる原料であれば、特に制限されることはない。例えば、好ましい態様としては、前記硬質相11を構成する成分は、周期表の4、5、6族金属(例えば、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Mo、Crなど)の炭化物、窒化物、炭窒化物からなる群より選ばれる1種以上であり、炭窒化チタンおよび炭化タングステンのうちいずれか一方を少なくとも必須とするのがよい。これらの炭化物、窒化物、炭窒化物等のさらなる具体例については、特に制限されない。
他方、前記結合相12を構成する成分も、一般に硬質合金における結合相に用いられる原料であり、前記硬質相よりも硬度が低いものであれば、特に制限されることはない。例えば、好ましい態様としては、前記結合相12を構成する成分は、鉄族金属(例えば、Co、Niなど)を主成分とするものであればよい。この鉄族金属等のさらなる具体例については、特に制限されない。
なお、硬質相および結合相の硬度は、ナノインデンテーション法等によって測定することができる。微粒超硬など、相を構成する粒子の粒径が非常に小さく上記方法による測定が困難な場合は、WDS等の元素分析によって相の組成を同定することで、相の硬度を見積もることも可能である。
前記硬質合金母材10において、硬質相11は全体積中85〜92体積%、結合相12は8〜15体積%の割合で存在するのがよい。
前記硬質合金母材10は、通常、硬質相11および結合相12を構成する各原料粉末を所定の割合で混合し、成形したものに対して脱バインダ処理を施した後、1350〜1550℃程度の真空雰囲気中で0.5〜3時間程度焼成することにより得られる。
前記被覆層20は、切削工具の厚み方向に直交する平面に対して85〜90度の角度(図1に角度βで図示)で結晶成長した垂直成長部21と、前記平面に対して85度未満の角度(図1に角度αで図示)で結晶成長した多方向成長部22とを備えている。垂直成長部21では、厚み方向に直交する平面に対してほぼ垂直に結晶成長するため、マイクロボイドが生じることがない。よって、この垂直成長部21は高い硬度を有する領域となる。他方、多方向成長部22は、切削工具の厚み方向に直交する平面に対して比較的大きい傾き(角度α)をもって結晶成長するため、成長した結晶同士がぶつかって互いに淘汰され、マイクロボイド(ここでは、数10nmのレベルのボイド)が形成されることになる。このようにマイクロボイドが形成されている多方向成長部22では、クラックが進行してきた場合にも、クラック先端の応力場においてマイクロボイドがマイクロクラックとして作用し、応力集中が緩和されてクラックの進展を抑制できるため、高い靭性を発現する。
本発明において、前記多方向成長部22は、下記(i)、(ii)または(iii)のうち少なくとも(ii)を満足する態様で存在している。これにより、垂直成長部21と多方向成長部22とは最適なバランスで存在することとなる。その結果、高硬度化と高靭性化との両立をバランスよく達成することができる。
(i)厚み方向に切断した断面において、母材10と被覆層20との界面における直線20μmの長さ範囲のうち5〜40%を多方向成長部22が占めていること。すなわち、母材10と被覆層20との界面における直線とは、図1中x−x間を結ぶ直線のことであり、図1中yで示す範囲が長さ20μmであるとすると、この範囲における前記直線を見たときに多方向成長部22が存在している長さ範囲z1が、20μmの5〜40%に相当するのである。なお、長さ範囲yの中に多方向成長部22が複数存在する場合には、各多方向成長部22が占める長さz1、z2、z3・・・の合計(但し、z2以降は図示せず)の長さが20μmの5〜40%相当するものであればよい。
(ii)厚み方向に切断した断面において、多方向成長部22の幅は、被覆層20の外表面から母材10側に向けて増大していること。すなわち、図1に示す多方向成長部22のように、母材10と被覆層20との界面(x−x間を結ぶ直線部分)でみると、多方向成長部22の幅はz1であるが、この界面を平行移動させた直線でみると、被覆層表面側に移動するにつれてその幅は狭くなっていくのである。
(iii)厚み方向に切断した断面において、母材10と被覆層20との界面上の直線20μmのなかに、互いに独立した多方向成長部22が3〜40個存在していること。すなわち、前記(i)と同様に、図1中yで示す範囲が長さ20μmであるとすると、この範囲の中に、互いに独立した(換言すると、垂直成長部21に囲まれた)多方向成長部22が3〜40個存在しているのである(図1においては1個しか図示していない)。
前記被覆層20は、成長始点における成長方向の角度θgが25度未満である柱状結晶(I)と、成長始点における成長方向の角度θgが25度以上である柱状結晶(II)とが存在し、厚み方向に切断した断面において、母材10と被覆層20との界面よりも0.3μm被覆層20側に位置する仮想直線上で、前記柱状結晶(I)が占める領域の幅をWaIとし、前記柱状結晶(II)が占める領域の幅をWaIIとしたとき、WaII/WaIの値が0.1〜1.0であることが好ましい。これにより、衝撃が多方向成長部に集中した場合にも、膜が破壊されたり、膜剥離やチッピングが発生したりすることを回避することができる。ここで言う柱状結晶(I)は、前記垂直成長部21を構成し、柱状結晶(II)は前記多方向成長部22を構成する。なお、母材10と被覆層20との界面よりも0.3μm被覆層20側に位置する仮想直線とは、母材10と被覆層20との界面における直線、すなわち図1中x−x間を結ぶ直線を被覆層20側に0.3μm平行移動させてなる直線を意味する。
前記被覆層20において、前述したような垂直成長部21と多方向成長部22とを存在させるには、前記母材10の表面が、硬質相11からなる平滑面部13と、結合相12または結合相12および硬質相11からなる表面を有する凹部14とから構成されるようにすればよい。
前記母材10表面に硬質相11からなる平滑面部13、換言すれば平滑になるよう表面処理された部分が存在することによって、当該平滑面部13では被覆層20を形成する際に柱状結晶が真直ぐに揃って成長することとなる。つまり、前記垂直成長部21は前記平滑面部13上に形成されることになる。
前記母材10表面の硬質相部分を平滑になるよう表面処理して、前記平滑面部13を設ける手段としては、例えば、ブラシ研磨加工が好ましく挙げられる。ブラシ研磨加工で用いるブラシとしては、毛足が長いものが好ましい。具体的には、カップブラシ、ホイールブラシ、ロールブラシ等のブラシが好ましく用いられる。ブラシ研磨加工を行う際には、ダイヤモンドの砥粒を使用することが一般的だが、炭化珪素(SiC)からなる砥粒を用いると、研磨加工によって生じる研磨傷が低減され、より平滑な加工面状態となるので好ましい。また、平滑な加工面を得るためには、砥粒の番手を#400以上とするのが好ましく、特に、加工効率を上げるためには、#500〜#2000の砥粒を使用することがよい。
他方、前記母材10表面に、結合相12または結合相12および硬質相11からなる表面を有する凹部14が存在することによって、この凹部14内において被覆層20が成膜される際に、その部分の柱状結晶は集束するように成長するため、結晶成長が止まる部分が多くなり、結晶と結晶との成長間の淘汰によって、マイクロボイド(ここでは、数10nmのレベルのボイド)が形成される。つまり、前記多方向成長部22は前記凹部14上に形成されることになる。なお、母材10表面に存在する凹部14は、その表面が結合相12、または結合相12および硬質相11からなるのであるが、これは換言すれば、前記凹部22の表面の少なくとも一部に結合相が存在しているということでもある。特に、凹部14の表面のうち、少なくとも底面部に結合相があることが望ましい。更には、凹部14の表面が、結合相12のみからなるのがより好ましい。
なお、ここでいう凹部14の表面が結合相12または結合相12および硬質相11からなるとは、凹部14の表面が実質的に結合相12または結合相12および硬質相11からなるものであり、製造上不可避的な成分を含むものであっても良い。
前記凹部14を形成する手段としては、前記ブラシ研磨加工により母材10表面全体を平滑にしたのち、ショットブラスト加工を施して、結合相12を除去することが好ましい。このショットブラスト加工を行なうにあたり、硬質相11(例えば、WC)よりも柔らかい砥粒を使用することによって、硬質相11の部分ではブラシ研磨で形成された平滑さをそのまま維持させながら、結合相12(例えばCo)の部分を除去して凹部形状を形成することができる。このようにして形成された凹部14の形状は、例えばエッチング加工で形成される凹部に比べ、底部が丸みを帯びており、非常に浅く形成されており、エッチング加工のように内部まで深く削られた形状とはならない。それによって、前述した結晶と結晶との成長間の淘汰が起こりやすく、ひいては靭性を向上させやすくなるのである。
なお、砥粒の硬度は、粉体の硬度を測定する種々の測定方法によって測定することができ、硬度の単位も、測定方法によって、ブリネル硬度(HB)、ビッカース硬度(HV)等適宜選択し得る。
前記ショットブラスト加工は、砥粒をエアー等とともに噴射して加工する乾式で行ってもよいし、砥粒を液体(溶媒)と同時に噴射して加工する湿式で行ってもよい。用いる砥粒としては、一般的に加工で使用されている砥粒、具体的には、例えば、酸化アルミニウム(Al)、炭化珪素(SiC)、ダイヤモンドといった砥粒が使用可能であるが、結合相のみをショットブラストにて除去させるために、酸化クロム(Cr)、酸化ジルコニウム(ZrO)など、比較的硬度が低く比重が大きいものが好ましい。また、ショットブラストを湿式で行う際には、溶媒として、一般的な湿式ブラストで使用されている溶媒、例えば水などを用いることができる。ショットブラスト加工を行う際の条件としては、一般的な加工よりも弱めの条件、詳しくは、噴射圧を0.1〜0.7MPa、噴射角度を30〜60°、被加工物と噴射ノズルとの距離を2〜5cm、砥粒の番手を#360〜#1000とするのがよい。
このように、本発明においては、被覆層20に存在する垂直成長部21が高硬度化した領域となり、一方、被覆層20に存在する多方向成長部22がマイクロボイドを有することで高靭性化した領域となる。つまり、本発明の切削工具は、その被覆層20において高硬度化した領域と高靭性化した領域とが混在しているので、相反する両方の優れた特性を保持するものとなる。その結果、優れた耐摩耗性と耐欠損性を両立して発現させることが可能となる。しかも、本発明において存在する前述のマイクロボイドは、非常に小さいボイドであるので、耐摩耗性に影響を及ぼすおそれもない。また、本発明においては、硬質合金母材表面に存在する凹部によって、凹凸によるアンカー効果も得られるので、被覆層と母材との密着性も高い。
なお、本発明において、被覆層20を厚み方向に切断した断面(すなわち、切削工具の面と略垂直な断面)において、一定範囲(すなわち界面における直線20μmの長さ範囲)に占める多方向成長部22の割合(前記(i)の要件)、多方向成長部22の幅の変化(前記(ii)の要件)、一定範囲(すなわち界面における直線20μmの長さ範囲)における互いに独立した多方向成長部22の個数(前記(iii)の要件)、あるいは上述したWaIおよびWaIIの値を測定するに際しては、例えば、該断面を走査電子顕微鏡(SEM)また透過電子顕微鏡(TEM)を用いて5000倍〜20000倍の倍率で観察すればよい。
前記硬質合金母材10の表面に形成される被覆層20の組成は、特に制限されるものではなく、例えば、炭化チタン(TiC)、炭窒化チタン(TiCN)、窒化チタン(TiN)、窒化アルミニウムチタン(TiAlN)、酸化アルミニウム(Al23)などの周期表の4、5、6族金属およびアルミニウム(Al)の炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物から選ばれる1種以上を単層または複数層形成したものから構成される。
前記被覆層20の膜厚は2.0μm以上であることが好ましく、より好ましくは3.0〜20.0μmであるのがよい。
前記被覆層20は、化学気相成長法(CVD法)や、スパッタリング法、イオンプレーティング法、蒸着法などの物理蒸着法(PVD法)など、従来公知の方法によって形成することができる。なお、好ましくは、中温化学蒸着法(MT−CVD法)を用いることが本発明の構成にすることが容易であるため望ましい。
具体的には、柱状の炭窒化チタン(TiCN)層を成膜するには、反応ガス組成として塩化チタン(TiCl)ガスを0.1〜10体積%、窒素(N)ガスを0〜40体積%、アセトニトリル(CHCN)ガスを1〜10体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを順次調整し、チャンバ内を炉内温度750〜900℃、圧力5〜85kPaとなるように調整する。また、柱状の炭窒化チタンの上層または下層にその他の硬質膜を成膜する多層構造としてもよい。
ここで、その他の膜質の一例の成膜方法を説明する。
まず、窒化チタン(TiN)層を成膜するには、反応ガス組成として塩化チタン(TiCl)ガスを0.1〜10体積%、窒素(N)ガスを5〜60体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを順次調整し、チャンバ内を炉内温度800〜1100℃、圧力5〜85kPaとなるように調整する。
次に、粒状の炭窒化チタン(TiCN)層を成膜するには、反応ガス組成として塩化チタン(TiCl)ガスを1.0〜6.0体積%、窒素(N)ガスを5〜40体積%、メタン(CH)ガスを1〜15体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを順次調整し、チャンバ内を炉内温度950〜1100℃、圧力5〜85kPaとなるように調整する。
さらに、炭酸窒化チタン(TiCNO)層を成膜するには、塩化チタン(TiCl)ガスを0.1〜6体積%、メタン(CH)ガスを0.1〜10体積%、二酸化炭素(CO)ガスを0.5〜5体積%、窒素(N)ガスを5〜60体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整して反応チャンバ内に導入し、チャンバ内を800〜1100℃、5〜30kPaとなるように調整する。
そして、酸化アルミニウム(Al)層を成膜するには、塩化アルミニウム(AlCl)ガスを1.0〜10体積%、塩化水素(HCl)ガスを0.5〜3.5体積%、二酸化炭素(CO)ガスを0.5〜5.0体積%、硫化水素(HS)ガスを0〜0.5体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを用い、900〜1100℃、5〜10kPaとなるように調整する。
最後に、窒化チタン(TiN)層を成膜するには、反応ガス組成として塩化チタン(TiCl)ガスを0.1〜10体積%、窒素(N)ガスを5〜60体積%、残りが水素(H)ガスからなる混合ガスを調整し、チャンバ内を炉内温度800〜1100℃、圧力5〜85kPaとなるように調整する。
本発明の切削工具は、例えば、外形、内径、溝入れ、ねじ切り、突っ切り等の各種旋削、フライス、ドリル、エンドミル等の切削工具として有用であるが、中でも、旋削、フライス、ドリル加工に用いる切削工具に適しており、特に、断続加工や不安定加工に用いる旋削工具として最適である。
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例)
平均粒径1.5μmの炭化タングステン(WC)粉末に対して、平均粒径1.5μmの金属コバルト(Co)粉末を6質量%、平均粒径1.5μmの炭化チタン(TiC)粉末を0.5質量%、炭化タンタル(TaC)粉末を1質量%の割合で添加、混合して、プレス成形により切削工具形状(CNMA120412)に成形した。その後、脱バインダ処理を施し、0.01Paの真空中、1500℃で1時間保持し焼成して硬質合金母材を作製した。
次に、この母材の表面に、表1に示す荒加工と仕上加工とを順次施した。各加工の条件等は、表2に示す通りである。その後、各加工を施した母材の表面に、化学蒸着法にて、
窒化チタン(TiN)層、柱状晶炭窒化チタン(TiCN)層、酸化アルミニウム(Al)層からなる硬質膜(総膜厚12.0μm)を形成して、切削工具を作製した。
窒化チタン(TiN)層の成膜条件は、成膜温度880℃、圧力200mbar、四塩化チタン(TiCl)が1.5vol%、窒素(N)が20vol%、残りが水素(H)である。
中温化学蒸着法による柱状晶炭窒化チタン(TiCN)層の成膜条件は、成膜温度860℃、圧力90mbar、四塩化チタン(TiCl)が1.5vol%、アセトニトリル(CHCN)が0.6vol%、窒素(N)が30vol%、残りが水素(H)である。
酸化アルミニウム(Al)層の成膜条件は、成膜温度1010℃、圧力90mbar、三塩化アルミニウム(AlCl)が1.6vol%、二酸化炭素(CO)が3.5vol%、硫化水素(HS)が0.1vol%、残りが水素(H)である。
各層の厚みについては、基体側から窒化チタン(TiN)層(0.3μm厚み)−柱状結晶からなる炭窒化チタン(TiCN)層(8.0μm厚み)−粒状結晶からなる炭窒化チタン(TiCN)層(0.1μm厚み)−炭酸窒化チタン(TiCNO)層(0.1μm厚み)−酸化アルミニウム(Al)層(3.0μm厚み)−窒化チタン(TiN)層(0.5μm厚み)の順に成膜した。
得られた各切削工具について、硬質合金母材と被覆層の厚み方向に切断し、その断面を透過電子顕微鏡(TEM)を用いて10000倍の倍率で観察したところ、界面における直線20μmの長さ範囲に占める多方向成長部の割合、多方向成長部の幅の変化(すなわち、母材側>被覆層表面側となっていれば「○」、なっていなければ「×」)、界面における直線20μmの長さ範囲における互いに独立した多方向成長部の個数、および上述したWaIIとWaIの比は、表1に示す通りであった。
Figure 0005111133
Figure 0005111133
上記切削工具を用い、下記の条件により、連続切削試験および強断続切削試験を行い、連続切削試験にて耐摩耗性を、強断続切削試験にて耐欠損性をそれぞれ評価した。この切削試験の結果を表3に示す。
(連続切削試験条件)
被削材 :SCM435
工具形状:CNMG120408
切削速度:300m/分
送り速度:0.3mm/rev
切り込み:2mm
切削時間:20分
切削液 :エマルジョン15%+水85%混合液
評価項目:顕微鏡にて切刃を観察し、フランク摩耗量・先端摩耗量を測定
(強断続切削試験条件)
被削材 :SCM440 4本溝入材
工具形状:CNMG120408
切削速度:300m/分
送り速度:0.4mm/rev
切り込み:2mm
切削液 :エマルジョン15%+水85%混合液
評価項目:欠損に至る衝撃回数
Figure 0005111133
上記表1及び表2から分かるように、荒加工として所定のブラシ加工を施し、仕上げ加工として所定のブラスト加工を施した本発明の試料No.1−7については、界面における直線20μμmの長さ範囲に占める多方向成長部の割合が5〜40%であることが分かる。また、試料No.1−7は、互いに独立した多方向成長部の個数が3〜40個の範囲であることが分かる。また、試料No.1−7は、多方向成長部の幅の変化が、母材側>被覆層表面側となっている(換言すれば、被覆層の外表面から母材側に向けて増大している)ことが分かる。さらに、試料No.1−7は、成長始点における成長方向の角度θgが25度未満である柱状結晶が占める領域の幅をWaIとし、成長始点における成長方向の角度θgが25度以上である柱状結晶が占める領域の幅をWaIIとしたときの、WaII/WaIの値が0.1〜1.0の範囲内に含まれることとなった。
また、表3から分かるように、界面における直線20μmの長さ範囲に占める多方向成長部の割合、互いに独立した多方向成長部の個数、多方向成長部の幅の変化が、それぞれ本発明の範囲内である試料No.1−7については、前述したそれぞれが本発明の範囲外である試料No.8‐10に比べて、フランク摩耗、先端摩耗、欠損に至る衝撃回数すべてにおいて優れた結果を得ることができた。
これは、高靭性である多方向成長部を最適な程度で存在させることで、高硬度と高靭性を兼ね備えることができたため、強断続加工での強い衝撃の際に、コーティング層にクラックが発生した場合であっても、クラックの発生を抑制し、欠損を防止することができたものと考えられる。
本発明の切削工具を厚み方向に切断したときの断面を模式的に示した説明図である。
符号の説明
10:母材
11:硬質相
12:結合相
13:平滑面部
14:凹部
20:被覆層
21:垂直成長部
22:多方向成長部

Claims (6)

  1. 母材と、前記母材の表面に形成された被覆層とを備える切削工具であって、
    前記被覆層は、厚み方向に直交する平面に対して85〜90度の角度で結晶成長した垂直成長部と、前記平面に対して85度未満の角度で結晶成長した多方向成長部とを備えており、
    厚み方向に切断した断面において、多方向成長部の幅は、被覆層の外表面から母材側に向けて増大していることを特徴とする切削工具。
  2. 前記被覆層の膜厚が2.0μm以上である、請求項記載の切削工具。
  3. 前記母材は、硬質相および当該硬質相を結合する結合相を有するとともに、前記硬質相は、周期表の4、5、6族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物からなる群より選ばれる1種以上であり、炭窒化チタンまたは炭化タングステンのいずれか一方を少なくとも必須とする成分からなる、請求項1または2記載の切削工具。
  4. 前記結合相は、鉄族金属を主成分とする、請求項に記載の切削工具。
  5. 前記母材の表面は、硬質相からなる平滑面部と、結合相または結合相および硬質相からなる凹部とから構成されている、請求項またはに記載の切削工具。
  6. 前記垂直成長部は前記平滑面部上に形成されており、前記多方向成長部は前記凹部上に形成されている、請求項記載の切削工具。
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