JP2012227055A - フラットケーブル及びそれを用いたケーブルハーネス - Google Patents
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Abstract
【課題】EMI対策が施されており、高いU字スライド特性を有し、且つ、容易に折り曲げることができ、非直線状の配線スペースにも容易に配線が可能なフラットケーブル及びそれを用いたケーブルハーネスを提供する。
【解決手段】並列に配置された複数本の電線11と、電線11の並列方向に沿って複数本の電線11間を縫うように織り込まれて配置されており、ポリトリメチレンテレフタレートからなる繊維部材の周囲に金属層が設けられている線状体12と、を備えたものである。
【選択図】図1
【解決手段】並列に配置された複数本の電線11と、電線11の並列方向に沿って複数本の電線11間を縫うように織り込まれて配置されており、ポリトリメチレンテレフタレートからなる繊維部材の周囲に金属層が設けられている線状体12と、を備えたものである。
【選択図】図1
Description
本発明は、フラットケーブル及びそれを用いたケーブルハーネスに係り、特に、ノートパソコン、液晶テレビ、プリンタ等の電子機器内に配線するのに好適なフラットケーブル及びそれを用いたケーブルハーネスに関するものである。
ノートパソコン、液晶テレビ、プリンタ等の電子機器において、電子機器の操作等を行うための本体部と液晶ディスプレイ等の表示部とを繋ぐ連結部等に配線される信号伝送用の配線材には、従来、比較的可撓性があると共に、フラット状で薄型化された電子機器の内部に配置可能なフレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuit;FPC)がよく用いられている。
また、不要輻射を要因とする電磁波障害(Electro-Magnetic Interference;EMI)対策のため、FPCに替わる配線材として、複数の細径化された電線(例えば、同軸ケーブル)をフラット状に並べ、このフラット状に並べられた電線の全周を片面に接着層を有する導電布(表面に金属めっきを施した布)で包み、その導電布の端部同士を付き合わせてシールド層を形成したフラットケーブルがある。
ノートパソコン、液晶テレビ、プリンタ等の電子機器内にフラットケーブルからなる配線材を配線する際には、フラットケーブルを電子機器内に配置された他の部材と重ならないように他の部材間の空いた配線スペースに配線することが多い。一方、最近の電子機器では小型化が望まれており、配線材の配線スペースも制限される傾向にある。このため、このような配線スペースが制限される部分に配線する配線材として、図2に示すような他の部材21,22を避けるように幅方向(電線の並列方向)に蛇行させることで、配線方向を変えることもできるフラットケーブル20が強く望まれている。
上述した導電布を用いた従来のフラットケーブルでは、導電布を貼った部分が硬いため、折り曲げ作業が難しく、無理に折り曲げると電線が破断しやすく、導電布の付き合わせ部も剥がれやすくなる。特に所定の位置を180度に折り曲げるような配線のときにはその問題が顕著に現れる。
また、プリンタの制御部とプリンタヘッドとの間など、フラットケーブルの所定の位置を180度に折り曲げた状態でのスライド(U字スライド)が要求される部分に配線された場合、従来のフラットケーブルではU字スライド特性が低い(U字スライド寿命が短い)ため、EMI特性との両立が難しいと言う問題がある。
そこで、本発明の目的は、EMI対策が施されており、高いU字スライド特性を有し、且つ、容易に折り曲げることができ、非直線状の配線スペースにも容易に配線が可能なフラットケーブル及びそれを用いたケーブルハーネスを提供することにある。
この目的を達成するために創案された本発明は、並列に配置された複数本の電線と、前記電線の並列方向に沿って前記複数本の電線間を縫うように織り込まれて配置されており、ポリトリメチレンテレフタレートからなる繊維部材の周囲に金属層が設けられている線状体と、を備えたフラットケーブルである。
前記金属層は、円以外の断面形状を有する金属線が、前記繊維部材の周囲に所定のピッチで螺旋状に巻き付けられてなると良い。
前記金属層は、銅めっき或いは銀めっきからなっても良い。
前記金属線は、圧延加工により形成され、圧延加工後の破断伸びと破断強度とが圧延加工前よりも大きいと良い。
前記金属線は、圧延加工前の破断強度が300MPa以上であり、圧延加工前の破断伸びが0.50%以上であると良い。
前記金属線は、圧延加工前の引張強度(σ0)に対する圧延加工後の引張強度(σ1)と圧延加工前の引張強度(σ0)との差の割合が0%<100×(σ1−σ0)/σ0≦50%であると良い。
前記金属線は、圧延加工前の破断伸び(δ0)に対する圧延加工後の破断伸び(δ1)と圧延加工前の破断伸び(δ0)との差の割合が10%≦100×(δ1−δ0)/δ0≦60%であると良い。
前記電線は、内部導体と、前記内部導体の周囲に設けられた絶縁層と、を有すると良い。
前記電線は、前記絶縁層の周囲に設けられた複数本の線材からなる外部導体と、前記外部導体の周囲に設けられたジャケットと、を有すると良い。
また、本発明は、請求項1〜9のいずれかに記載のフラットケーブルと、前記フラットケーブルの端末部分に接続された接続端子と、を有するケーブルハーネスである。
本発明によれば、EMI対策が施されており、高いU字スライド特性を有し、且つ、容易に折り曲げることができ、非直線状の配線スペースにも容易に配線が可能なフラットケーブル及びそれを用いたケーブルハーネスを提供することができる。
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
図1は、本実施の形態に係るフラットケーブルを用いたケーブルハーネスを示す平面図である。
図1に示すように、本実施の形態に係るフラットケーブル10は、並列に配置された複数本の電線11と、電線11の並列方向(電線11の長手方向に対して略直交する方向)に沿って複数本の電線11間を縫うように織り込まれて配置されており、ポリトリメチレンテレフタレートからなる繊維部材の周囲に金属層が設けられている線状体12と、を備えたものである。
このフラットケーブル10は、複数本の電線11を並列に配置させる工程と、線状体12を電線11の並列方向に沿って複数本の電線11間を縫うように織り込む工程と、線状体12を加熱する工程と、を含む製造方法にて製造される。
この線状体12を加熱する工程は、例えば、100℃以上120℃以下の温度で加熱する。このとき、線状体12は、後述する繊維部材が水分を含有した状態で、100℃以上120℃以下の温度で加熱する熱処理が行われることが望ましい。
なお、フラットケーブル10を得るための熱処理の方法としては、例えば、線状体12が電線11間に織り込まれて形成されたフラットケーブル本体に、繊維部材に水分を含ませる処理を施した後、100℃以上120℃以下に加熱された加熱ロールを用いて、その加熱ロールを線状体12の表面に沿わせるようにフラットケーブル本体の長手方向に移動させることで、線状体12を加熱する方法、或いは恒温槽などの加熱処理装置内にフラットケーブル本体を配置させた後、線状体12に水蒸気(スチーム)等を噴霧して繊維部材に水分を含ませながら100℃以上120℃以下の温度で加熱する方法などがある。また、上述の方法において、水蒸気を噴霧する機能を有する加熱ロールを使用して繊維部材に水分を含ませながら加熱するようにしても良い。この熱処理により、繊維部材が収縮されて各電線11が綺麗に整列された状態で保持される。また、各電線11の表面に線状体12を構成する繊維部材の収縮による圧痕が発生しにくい。この熱処理により、フラットケーブル本体の幅が、例えば、15mm程度から11mm程度まで収縮してフラットケーブル10が得られる。
(電線について)
電線11は、複数本の銅線を撚り合わせて形成された内部導体と、内部導体の外周に設けられた絶縁体と、を少なくとも有する絶縁電線からなる。
電線11は、複数本の銅線を撚り合わせて形成された内部導体と、内部導体の外周に設けられた絶縁体と、を少なくとも有する絶縁電線からなる。
絶縁体は、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)などのフッ素樹脂やポリエチレンテレフタレート(PET)を用いて形成されたものからなる。
また、電線11は、絶縁体の外周に複数本の金属導体をスパイラル状に横巻きして形成された外部導体と、この外部導体の外周に設けられたジャケットと、を有する同軸ケーブルであっても良い。
また、外部導体は、軟銅線などの金属線(表面がめっき処理されているものを含む)からなる導体(単線又は撚線)を用いて形成される。
最外層としてのジャケットは、蛇行して配線することを考慮すると、20%以上150%以下の伸び率と、150MPa以上の引張強さと、を有する層からなることが好ましい。
最外層を、20%以上150%以下の伸び率と、150MPa以上の引張強さとを有する従来に比べて硬い層とすることで、このような電線を用いて形成したフラットケーブルの一部を変形させて幅方向へ平行移動させた場合に、変形させた部分(変形部)に平行移動させた方向と反対の方向へ反発する力(反発力)を、フラットケーブルの平行移動を阻害することなく効果的に付与することができる。
ジャケットの伸び率が20%未満となるとフラットケーブルとしたときの可撓性が大きく低下してしまい、幅方向にフラットケーブルの一部を平行移動させて蛇行させることが難しくなる。また、ジャケットの伸び率が150%超となるとフラットケーブルの一部を平行移動させて蛇行させる際に、フラットケーブルの変形した部分が平行移動させた方向と反対の方向へ反発する力を、変形した部分に効果的に付与することができないためである。これら特性を満足する材料としては、例えば、PETがある。
この最外層は、プラスチックテープからなるテープ層であり、テープ層は、プラスチックテープを螺旋状に巻き付け(例えば、ラップ巻)して形成された第1のテープ層と、第1のテープ層上に、第1のテープ層とは異なる巻き付け方向にプラスチックテープを螺旋状に巻き付け(例えば、ラップ巻)して形成された第2のテープ層と、を有している。
最外層がテープ層からなる場合、プラスチックテープは、延伸されて形成された伸び率が30%以上140%以下の薄型プラスチックテープ(例えば、幅2〜3mm、厚さ5μm以下)であることが好ましい。これは、伸び率が30%未満、或いは140%超となると繊維部材を加熱する工程の際の熱によって電線11の最外層が上述した伸び率、引張強さの範囲を満たさなくなってしまう虞があるためである。
また、第1のテープ層は、薄型プラスチックテープの内側(外部導体側)に金属を蒸着(例えば、銅を0.1〜0.3μmの厚さで蒸着)させてなるシールドテープで形成されていることが好ましく、第2のテープ層は、薄型プラスチックテープの内側(第1のテープ層側)に接着層を形成してなる接着テープで形成されていることが好ましい。なお、テープ層を1層で形成する場合、シールドテープ、接着テープを単独で使用することができる。また、シールドテープの最内側に接着層を有していても良い。また、第1のテープ層、第2のテープ層を共に接着テープで形成しても良い。
なお、最外層は、上述したようなテープ層とする以外にも上述した伸び率、引張強さを有する層であれば、PET、ETFE、PFA、FEPなどの樹脂を押出被覆するなどして形成された層であっても良い。
電線11の外径は、ノートパソコン、液晶テレビ、プリンタ等の内部の極僅かなスペースに配線されることを考慮すると、0.35mm以下であることが好ましい。
(線状体について)
線状体12は、各電線11間をフラットケーブル10の長手方向の一端から他端(図示左側から右側)まで幅方向の一側から他側(図示下側から上側)へジグザグに往復しながら、複数本の電線11を長手方向でフラット状に固定するように織り込まれる。
線状体12は、各電線11間をフラットケーブル10の長手方向の一端から他端(図示左側から右側)まで幅方向の一側から他側(図示下側から上側)へジグザグに往復しながら、複数本の電線11を長手方向でフラット状に固定するように織り込まれる。
このとき、線状体12は、フラットケーブル10の幅方向(電線11の並列方向)の中央部において、2本以上の電線11を1ユニットとして縫うように織り込まれると共にフラットケーブル10の幅方向の端部において、1本の電線を1ユニットとして縫うように織り込まれると良い。なお、フラットケーブル10の幅方向の中央部とは、フラットケーブル10の中心軸上に限られず、その近傍も含まれる。また、フラットケーブル10の幅方向の端部とは、フラットケーブル10の幅方向の最外位置に限られず、その近傍も含まれる。
このような構成とすることにより、線状体12が1本の電線11を1ユニットとして縫うように織り込まれる場合に比べて、織り込まれる回数が少なくて済み、電線11の表面に線状体12が織り込まれることによる圧痕が発生してしまうのを軽減することができると共にフラットケーブル10の幅を小さくすることができる。
この線状体12は、フラットケーブル10の全長に亘って織り込まれるが、コネクタなどの機器側と接続するための接続端子13の取り付けを容易にするために、フラットケーブル10の長手方向の両端部の線状体12は除去される。
線状体12の織り込まれる割合は、フラットケーブル10の全長に亘って一定、又は、フラットケーブル10の長手方向の中央部よりも両端部において小さくすると良い。線状体12の織り込まれる割合を、フラットケーブル10の長手方向の中央部よりも両端部において小さくすることで、フラットケーブル10の形状をフラット状に保持すると共に、ケーブルハーネスとするためにフラットケーブル10の端末部分に接続端子13を取り付ける際の線状体12の除去作業が容易になる。
なお、線状体12の織り込まれる割合は、フラットケーブル10(電線11)の長手方向の所定長さ(Lmm)の範囲内に織り込まれている線状体12の本数(N本)に基づいて得られる関係式「(d×N)/L」(dは、線状体の外径)で表され、好ましくは電線11の長手方向における長さ10mmあたり20本以上30本以下の割合で線状体12が織り込まれていると良い。これにより、フラットケーブル10を折り曲げたり、蛇行させたりしたときに、線状体12の編み目から電線11が露出することがなく、また、あまり逃げることがなくなるので、フラットケーブル10の一部を変形させて幅方向へ平行移動させた場合に、フラットケーブル10の変形部に発生する反発力を効率良く得ることができる。
(繊維部材について)
線状体12を構成する繊維部材は、長尺であり、単体、或いは複数本の繊維を束ねて形成された繊維糸を1本又は複数本縦添えして形成されることが好ましい。例えば、30〜40本のモノフィラメントからなる70〜80デニールの繊維糸を2本縦添えして形成すると良い。縦添えとすることで、各電線11の間に線状体12を織り込むように配置する場合に、電線11を過度に締め付けることなく、電線11に加わる応力を緩和することができる。
線状体12を構成する繊維部材は、長尺であり、単体、或いは複数本の繊維を束ねて形成された繊維糸を1本又は複数本縦添えして形成されることが好ましい。例えば、30〜40本のモノフィラメントからなる70〜80デニールの繊維糸を2本縦添えして形成すると良い。縦添えとすることで、各電線11の間に線状体12を織り込むように配置する場合に、電線11を過度に締め付けることなく、電線11に加わる応力を緩和することができる。
なお、繊維部材としては、初期モジュラスが20cN/dtex以上30cN/dtex以下、且つ、伸長回復率が80%以上95%以下のものを用いることが好ましい。
このように、初期モジュラスが20cN/dtex以上30cN/dtex以下である繊維部材を用いることで、線状体12を織り込むときに電線11へ負荷をかけることなく織り込むことができる。以下に、線状体12を構成する繊維部材に、初期モジュラスが20cN/dtex以上30cN/dtex以下である繊維を用いる理由を述べる。
繊維部材に、初期モジュラスが20cN/dtex未満である繊維を用いると、線状体12を織り込むときの電線11を締め付ける力が弱くなり、綺麗な形状のフラットケーブル10を製造することができなくなってしまい、線状体12を織り込んだ後に線状体12の形状を綺麗に整えるための工程を別途設ける必要が生じ、製造コストの上昇を招いてしまう。
また、繊維部材に、初期モジュラスが30cN/dtexを超える繊維を用いると、線状体12を織り込むときの電線11を締め付ける力が強くなり、線状体12を織り込む際に電線11がうねるように変形してしまうため、導体と該導体に接続されるコネクタ側の電極との接続作業に手間がかかるなどの作業性の低下や、電線の特性インピーダンスの変化による伝送特性の低下を招いてしまう。
このような理由から、繊維部材に、初期モジュラスが20cN/dtex以上30cN/dtex以下である繊維を用いると良い。
また、繊維部材を、伸長回復率が80%以上95%以下であるとする理由は、伸長回復率が80%未満であると、フラットケーブル10を屈曲させてスライドさせたときの線状体12の伸縮性が不十分となり、スライドによる電線11の断線が発生しやすくなり、95%を超えると、フラットケーブル10を屈曲させてスライドさせたときの線状体12の縮む力が弱くなるため、スライド時に電線11の表面が織り込まれた線状体12の隙間から露出しやすくなり、この露出した電線11が断線してしまう虞があるからである。
なお、伸長回復率の測定は、JIS規格(日本工業規格)の「JIS L 1096」に準拠した測定方法を用いた。即ち、伸長回復率は、繊維部材で織り込まれた幅5cm、長さ30cmの試験片の一端の上部をクリップで固定し、他端に初荷重を加え、20cm間の2点に印を付け、次いで、初荷重に代えて1.5kgの荷重を与え、1時間後の印間の長さL1を測り、除重後、1時間後に初荷重をかけたときの印間の長さL2を測り、次式1により求める。
伸張回復率=(L1−L2)/(L1−20)×100 ・・・(式1)
伸張回復率=(L1−L2)/(L1−20)×100 ・・・(式1)
このような繊維部材を線状体12に用いることにより、フラットケーブル10の幅方向に伸縮性を付与することができるため、極僅かな配線スペースにおいてフラットケーブル10を蛇行させて配線する場合や、また、フラットケーブル10を極僅かな配線スペース内で屈曲させてスライドさせた場合に加えられる応力を、フラットケーブル10の幅方向に効果的に逃がすことができる。その結果、電線11がフラットケーブル10の幅方向に移動することができるので、極僅かな配線スペースにおいて、蛇行させて配線する場合や、屈曲やスライドを行う場合であっても、電線11にかかる応力が緩和され、電線11の断線等を防止することができる。
また、フラットケーブル10の幅方向に伸縮性を付与することができるため、フラットケーブル10の長手方向で配線スペースに合った形状で配線ができる。
このような繊維部材としては、1−3プロパンジオールとテレフタル酸の重縮合体からなるポリトリメチレンテレフタレート(PTT)の繊維(例えば、ソロテックス株式会社製のソロテックス(登録商標)、東レ株式会社製のT400など)を用いると良い。
通常、繊維部材を織り込むとその繊維部材は伸びきった状態で織り込まれ、織り込み後のフラットケーブルの可撓性を低下させてしまう。また、電線を強く締め付けるため折り曲げたときに断線してしまう虞もある。
これに対し、PTTからなる繊維部材を用いることで、織り込み後であっても加熱によって更に繊維部材が10%〜50%程度伸びるようになるため、フラットケーブルの可撓性を低下させることなく、また、電線11を強く締め付けるようなこともない。そのため、この繊維部材は、フラットケーブル10が並列方向へスライドされたときに、その並列方向への電線11の移動に追従して伸び、その位置が変化する。
また、複数本のPTT繊維を束ねて形成された繊維糸を複数本縦添えして形成された繊維部材を用いることで、フラットケーブル10をスライドさせたときに電線11に加わる応力を緩和することができ、結果として、折り曲げや蛇行等に対する耐性を向上させることができる。
(金属層について)
金属層は、銅線或いは銅合金線を圧延加工して得られる金属線を、繊維部材の周囲に螺旋状に巻き付けるか、又は、銅めっき或いは銀めっきを繊維部材の周囲に施すことで形成される。
金属層は、銅線或いは銅合金線を圧延加工して得られる金属線を、繊維部材の周囲に螺旋状に巻き付けるか、又は、銅めっき或いは銀めっきを繊維部材の周囲に施すことで形成される。
金属層が金属線で形成される場合、この金属線としては、圧延加工後の断面形状が長細い楕円形状、或いは角の先が尖っていない略四角形状(略矩形状)などの円以外の断面形状を有するのが好ましい。例えば、外径が0.03mmの銅線或いは銅合金線を圧延加工することにより、幅0.11mm程度、厚さ0.006mm程度としたものからなる。このような断面形状が円以外の形状である金属線を用いて螺旋状に巻き付けして金属層を設けることにより、金属層の曲げ強さを小さくすることができるため、フラットケーブル10に金属層を有する線状体12を織り込んでもフラットケーブル10自体が硬くならず、容易に蛇行させたり、屈曲させたりして極僅かなスペースに配線することができると共に、EMI特性を付与することができる。
金属線は、圧延加工前の外径が0.03mm以上0.1mm以下であることが好ましく、圧延加工後に、厚さが0.006mm以上0.025mm以下で、幅が0.10mm以上0.40mm以下であることが好ましい。
また、金属線は、銅線又は銅合金線の圧延加工後における引張強度(σ1)が銅線又は銅合金線の圧延加工前における引張強度(σ0)よりも大きいことが好ましい。特に、銅線又は銅合金線の圧延加工前における引張強度(σ0)に対する銅線又は銅合金線の圧延加工後における引張強度(σ1)と銅線又は銅合金線の圧延加工前における引張強度(σ0)との差の割合(加工による引張強度の増加率=100×(σ1−σ0)/σ0)が0%より大きく50%以下(0%<100×(σ1−σ0)/σ0≦50%)であると良い。なお、銅線又は銅合金線の圧延加工前における引張強度(σ0)は、300MPa以上であると良い。
また、金属線は、銅線又は銅合金線の圧延加工後における破断伸び(δ1)が銅線又は銅合金線の圧延加工前における破断伸び(δ0)よりも大きいことが好ましい。特に、銅線又は銅合金線の圧延加工前における破断伸び(δ0)に対する銅線又は銅合金線の圧延加工後における破断伸び(δ1)と銅線又は銅合金線の圧延加工前における破断伸び(δ0)との差の割合(加工による破断伸びの増加率=100×(δ1−δ0)/δ0)が10%以上60%以下(10%≦100×(δ1−δ0)/δ0≦60%)であると良く、20%以上50%以下であると更に良い。なお、銅線又は銅合金線の圧延加工前における破断伸び(δ0)は、0.50%以上であると良い。上述した銅線又は銅合金線の引張強度(σ)及び破断伸び(δ)は、JIS規格(JIS Z 2241「金属材料引張試験方法」)に準拠した試験方法によって得られる。
上述したような金属線を用いることにより、フラットケーブル10を非直線状の小さい配線スペースに配線する場合に、当該フラットケーブル10を蛇行して配線したり折り曲げたりして配線することができる。また、同軸ケーブルの端末にコネクタ等を取り付けるような加工を施してケーブルハーネスにするなどの端末加工の場合に、加工がしやすくなり、煩わしい手間や時間を要することなく、容易に金属層の端末処理を行うことができる。
この金属線は、繊維部材の周囲に所定のピッチで、幅方向に位置する面同士を突き合わせて螺旋状に巻き付けられる。なお、金属線の巻き付け方については、この限りではない。金属線を巻き付けるときのピッチとしては、例えば、金属線の幅に対して1.3倍以上2.0倍以下にすると良い。これにより、非直線状の極僅かな配線スペースにフラットケーブルを蛇行して配線したり折り曲げて配線したりすることに対して効果的である。
このような構成とすることにより、フラットケーブル10を蛇行させた形状に変形させつつ配線したときに、フラットケーブル10の変形部に所望の反発力を効果的に発生させることができ、線状体12の蛇行方向への可動を適度に抑制する力を付与することができる。
即ち、フラットケーブル10を蛇行させた形状としたときに、線状体12の蛇行方向への可動する力と、その可動を抑制する力とのバランスをとることができる。このため、フラットケーブル10によれば、EMI対策を施して非直線状の配線スペースに配線する場合であっても、フラットケーブル10自体が硬くならず、他の部材を避けるように蛇行させることで、配線材の配線方向を変えることができると共に、蛇行させたままの形状を保持したりすることができる。
更に、複数本の電線11間を縫うように線状体12を織り込んでいるので、フラットケーブル10の幅方向に伸縮性を付与することができ、極僅かな配線スペースにおいて、蛇行させて配線する場合や、屈曲やスライドを行う場合であっても、電線11に加えられる応力を効果的に逃がすことができる。これにより、電線11にかかる応力が緩和され、電線11の断線等を防止することができ、フラットケーブル10に高いU字スライド特性を付与することができる。
また、フラットケーブル10の端末部分に接続端子13を接続することで、非直線状の配線スペースにも折り曲げることなく蛇行させて、容易に配線が可能な図1に示したようなケーブルハーネス10が得られる。
10 フラットケーブル
11 電線
12 線状体
11 電線
12 線状体
Claims (10)
- 並列に配置された複数本の電線と、
前記電線の並列方向に沿って前記複数本の電線間を縫うように織り込まれて配置されており、ポリトリメチレンテレフタレートからなる繊維部材の周囲に金属層が設けられている線状体と、
を備えたことを特徴とするフラットケーブル。 - 前記金属層は、円以外の断面形状を有する金属線が、前記繊維部材の周囲に所定のピッチで螺旋状に巻き付けられてなる請求項1に記載のフラットケーブル。
- 前記金属層は、銅めっき或いは銀めっきからなる請求項1に記載のフラットケーブル。
- 前記金属線は、圧延加工により形成され、圧延加工後の破断伸びと破断強度とが圧延加工前よりも大きい請求項2に記載のフラットケーブル。
- 前記金属線は、圧延加工前の破断強度が300MPa以上であり、圧延加工前の破断伸びが0.50%以上である請求項4に記載のフラットケーブル。
- 前記金属線は、圧延加工前の引張強度(σ0)に対する圧延加工後の引張強度(σ1)と圧延加工前の引張強度(σ0)との差の割合が0%<100×(σ1−σ0)/σ0≦50%である請求項4又は5に記載のフラットケーブル。
- 前記金属線は、圧延加工前の破断伸び(δ0)に対する圧延加工後の破断伸び(δ1)と圧延加工前の破断伸び(δ0)との差の割合が10%≦100×(δ1−δ0)/δ0≦60%である請求項4又は5に記載のフラットケーブル。
- 前記電線は、内部導体と、前記内部導体の周囲に設けられた絶縁層と、を有する請求項1に記載のフラットケーブル。
- 前記電線は、前記絶縁層の周囲に設けられた複数本の線材からなる外部導体と、前記外部導体の周囲に設けられたジャケットと、を有する請求項8に記載のフラットケーブル。
- 請求項1〜9のいずれかに記載のフラットケーブルと、前記フラットケーブルの端末部分に接続された接続端子と、を有することを特徴とするケーブルハーネス。
Priority Applications (3)
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