JP2012223698A - 土壌表層部の汚染除去方法 - Google Patents

土壌表層部の汚染除去方法 Download PDF

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Abstract

【課題】放射性核種セシウム137のような、土壌粒子への吸着力が著しく強い汚染物質が大気中から降下することによって汚染された土壌表層部11を効率良く取り除いて、土壌1の汚染レベルを有効に低減する方法を提供する。
【解決手段】放射性核種セシウム137又はセシウム134のような汚染物質により表層部が汚染された土壌1に匍匐性植物などの植物2を栽培する。生育後、この植物2を、この植物2の根22が高密度で絡みついた土壌表層部11と共に土壌1から根切りして剥ぎ取る。
【選択図】図7

Description

本発明は、大気中からの降水(降雨、降雪)や降塵などによる汚染物質の降下によって汚染された土壌の表層部を除去することによって、汚染を低減するための方法に関する。
土壌表層部の汚染では、汚染物質への直接接触や、飛散や揮発した汚染物質の経口摂取、汚染物質が放射性核種の場合は放射線の影響などの人体への直接被害を引き起こしやすい。また、汚染された土壌表層部で栽培した農作物に汚染物質が吸収され、農作物の汚染が発生する。さらに、風による飛散や雨による侵食を容易に受けるので、汚染物質が周辺に拡大する恐れがある。このような土壌表層部の汚染の対策方法としては、従来から、汚染された土壌の上をアスファルトや非汚染土壌などで被覆する方法や、汚染された土壌を掘削し除去する方法、原位置で汚染物質の洗浄や無害化する方法等がある。原位置での浄化方法の一つとして、植物を利用して汚染物質を除去するファイトレメディエーション(Phytoremediation)などによる技術が知られている(ファイトレメディエーションによるものについては、例えば下記の特許文献1,2参照)。
しかしながら、対策後も同じ用途で土地を利用する場合、例えば農用地の場合は、農用地として利用ができなくなるような変化を伴う対策は行えない。適用可能な対策方法においても、汚染土壌を非汚染土壌で被覆する客土法では、客土するための大量の非汚染土壌を確保することが難しく、広範囲の汚染には対応することが困難であり、土壌洗浄法では、特に放射性核種セシウム137(137Cs)又はセシウム134(134Cs)のように、土壌に対する吸着力が著しく強い元素の場合、効率よく洗浄することができない(土壌洗浄法については、例えば下記の特許文献3,4参照)。また、ファイトレメディエーションによる方法は、吸収できる元素の種類が限られており、セシウム137又はセシウム134のような吸着力が著しく強い汚染物質は、容易に植物体に吸収させることができない。
また、原子力発電所などの核施設から大気中へ排出され又は漏洩した放射性核種セシウム137などの汚染物質が、降水(降雨、降雪)や降塵により地表へ降下することによって汚染された土壌の場合、前記セシウム137又はセシウム134は土壌表層部で土壌粒子に強固に吸着するために、土壌中での移動性が低く、汚染領域は深さ数cm程度の表層部のみに限定される(非特許文献1参照)。このため、汚染された土壌表層部のみを撤去すれば汚染レベルを有効に低減することができる。一般的な汚染土壌の掘削除去では、油圧ショベルなどの重機を使った掘削が行われている。しかし、油圧ショベルやブルドーザーなどの建設重機では深さ数cm程度の表層部のみを除去することは困難である。このような建設重機によって表層部を10cm以上除去した場合は、作土層が薄くなったり、農地全体が低くなるため排水性に問題を生じたり、農地に与える影響が大きい。また、作業中に発生する粉塵対策も必要となるといった問題がある。
特開2007−209894号公報 特開2004−290820号公報 特許第4116975号公報 特許第4116988号公報
Journal of Environmental Radioactivity 46(1999)45-66
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題とするところは、吸着力が著しく強い汚染物質が大気中から降下することによって汚染された土壌表層部を、効率良く取り除いて、汚染レベルを有効に低減することの可能な方法を提供することにある。
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る土壌表層部の汚染除去方法は、汚染物質により汚染された土壌の表層部を固定し、固定された表層部の土壌をその下層の土壌から剥ぎ取ることを特徴とするものである。
請求項2の発明に係る土壌表層部の汚染除去方法は、請求項1に記載の方法において、土壌の表層部の固定が、土壌に植物を栽培してこの植物の根で土壌粒子を捕捉することにより行われ、固定された表層部の土壌の剥ぎ取りが、根が絡みついた土壌粒子と共に前記植物を剥ぎ取ることにより行われることを特徴とするものである。
請求項3の発明に係る土壌表層部の汚染除去方法は、請求項2に記載の方法において、栽培する植物が地被植物であることを特徴とするものである。
請求項4の発明に係る土壌表層部の汚染除去方法は、請求項1〜3のいずれかに記載の方法において、汚染物質が放射性核種セシウム137又はセシウム134であることを特徴とするものである。
請求項5の発明に係る土壌表層部の汚染除去方法は、請求項3に記載の方法において、地被植物が芝草であることを特徴とするものである。
請求項6の発明に係る土壌表層部の汚染除去方法は、請求項5に記載の方法において、芝草を植栽した土壌に、パクロブトラゾール、フルルプリミドール、ビスピリバックナトリウム塩、プロヘキサジオンカルシウム塩、トリネキサパックエチル、シイタケ菌糸体抽出物から1以上選択される成長調整剤を添加することを特徴とするものである。
請求項7の発明に係る土壌表層部の汚染除去方法は、請求項2〜6のいずれかに記載の方法において、植物の植付が、種子に養生材、粘着剤、肥料、水を配合して、これを種子吹付け機で土壌表層部に散布することにより行われることを特徴とするものである。
請求項8の発明に係る土壌表層部の汚染除去方法は、請求項7に記載の方法において、散布する種子に、活性炭、ゼオライト、シリカゲルから1以上選択される物質、あるいはスメクタイト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、バーミキュライト、雲母、イライトから1以上選択される2:1型鉱物が添加されることを特徴とするものである。これらの添加物は、セシウム等の汚染物質に対する吸着作用を有するため、地中深くへ汚染物質が拡散するのを抑制することができる。
請求項9の発明に係る土壌表層部の汚染除去方法は、請求項1に記載の方法において、土壌の表層部の固定が、高分子化合物の散布で土壌粒子を接着することにより行われることを特徴とするものである。
請求項10の発明に係る土壌表層部の汚染除去方法は、請求項1に記載の方法において、土壌の表層部の固定が、転圧により土壌粒子を圧着することで行われることを特徴とするものである。
本発明に係る土壌表層部の汚染除去方法によれば、汚染物質により汚染された土壌の表層部を固定し、固定された表層部の土壌のみを剥ぎ取るものであるため、汚染された土壌表層部のみを効率良く除去することができる。したがって、放射性核種セシウム137又はセシウム134のような、吸着力が著しく強い汚染物質が大気中から降下することによって表層部のみが汚染された土壌の汚染レベルを有効に低減することができる。
とくに、汚染された土壌の表層部を固定する手段として、植物を栽培し、植物の根で土壌粒子を捕捉することにより、この植物の根が絡みついた土壌粒子と共に植物を剥ぎ取ることで、汚染された土壌表層部のみを効率良く除去することができる。また、粘土や腐植質の少ない砂質土壌では、土壌表層部への汚染物質の吸着が弱く地下浸透が懸念される場合も、植物を栽培することで植物が根から汚染物質を吸収するため、地中深くへ汚染物質が拡散するのを抑制することができる。
また、栽培する植物が匍匐性植物などの地被植物である場合は、地上部が地面を這うように水平方向へ伸びる多数の匍匐茎や地表近くを延びる多数の地下茎によって、平面的に広がると共に密生して地表を覆うので、汚染された土壌粒子が風などにより飛散するのを有効に防止すると共に、降水や降塵などにより降下する汚染物質を地上部でトラップするので、土壌汚染の進行も有効に防止することができる。
とくに、匍匐性植物が芝草である場合は、汚染物質により表層部が汚染された土壌に栽培した植物を、この植物の根が高密度で絡みついた土壌表層部と共に剥ぎ取る作業を、芝生収獲機を用いることによって容易に行うことができる。
本発明に係る、土壌表層部の汚染除去方法の好ましい実施の形態において、表層部が汚染された土壌を示す説明図である。 本発明に係る、土壌表層部の汚染除去方法の好ましい実施の形態において、表層部が汚染された土壌に芝草を植栽した状態を示す説明図である。 本発明に係る、土壌表層部の汚染除去方法の好ましい実施の形態において、植栽した芝草が匍匐茎を伸ばした状態を示す説明図である。 本発明に係る、土壌表層部の汚染除去方法の好ましい実施の形態において、匍匐茎から孫株が発生した状態を示す説明図である。 本発明に係る、土壌表層部の汚染除去方法の好ましい実施の形態において、芝草が匍匐茎を介して密生した状態を示す説明図である。 本発明に係る、土壌表層部の汚染除去方法の好ましい実施の形態において、芝生収獲機によって、芝草を土壌表層部と共に剥ぎ取る工程を示す説明図である。 本発明に係る、土壌表層部の汚染除去方法の好ましい実施の形態において、芝草が土壌からその表層部と共に分離される過程を示す説明図である。 本発明に係る、土壌表層部の汚染除去方法の好ましい実施の形態において、表層部が除去された土壌を示す説明図である。
以下、本発明の土壌表層部の汚染除去方法の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
まず図1は、降水(降雨、降雪)や降塵などによる汚染物質の降下によって、表層部11が汚染された土壌1を示すものである。原子力発電所などの核施設から排出又は漏洩した放射性核種による土壌汚染、とくに放射線量の半減期が30年程度と長いセシウム137又は半減期が2年程度であるセシウム134による農用地などの土壌の汚染は、収穫される農産物に深刻な放射能汚染被害を引き起こすため、このような汚染土壌は早期に除去して汚染レベルを低減しなければならない。
土壌1の汚染が、原子力発電所などの核施設から大気中へ排出され又は漏洩した放射性核種セシウム137又はセシウム134が、降水(降雨、降雪)や降塵により地表へ降下することによって引き起こされたものである場合、このセシウム137又はセシウム134は土壌への吸着力がきわめて高いために、洗浄などの方法では容易に除去することができない反面、土壌1への吸着が数cm程度の深さの範囲のみに限られるといった特徴がある。したがって、参照符号12で示される下層部は汚染レベルが無視できる程度に低い非汚染土壌である。
本発明では、まず図2に示すように、汚染低減対象の土壌1に地被植物、典型的には匍匐性植物である芝草2を栽培する。地被植物は、平坦地や法面などの地表面を密に被覆して繁茂する植物である。おおむね草丈60cm以下で群集する植物で、芝類、ササ類、ツル植物類、低木類、セダム類、シダ類、コケ類などが利用可能である。なかでも匍匐性植物は、垂直方向にはあまり成長せずに、地面に沿って水平方向へ匍匐茎を伸ばして不定根で定着し、栄養繁殖によってマット状に成長するため、好ましい。匍匐茎を持つ植物はいろいろな科で見られ、バラ科イチゴやマメ科シロツメクサ、カタバミ科カタバミ、トクサ科スギナなどが知られている。
本発明で用いることのできる匍匐性植物としては、上述のシロツメクサ、カタバミ、スギナ、ハコベやグンバイヒルガオのほか、多数の匍匐茎を伸ばして平面的に密生し、成長が早く地面を被覆するシバザクラやマツバギクなども好適であり、サツマイモ、キクなども使用可能である。また、イネ科の芝草2は生育が早く、地上部21や根22の密度も高く、根22が地中に深く張り、しかも栽培技術が確立されているので、特に好適である。
植栽する芝草2の品種は、気象条件、地理的条件、土壌条件、汚染状況に応じて、適したものを選択する。例えば温暖地では、暖地型芝草のスズメガヤ亜科シバ属(通称ノシバ、オニシバ、コウライシバなどの日本芝類)や、スズメガヤ亜科ギョウギシバ属(通称バミューダグラス類)が好ましい。このうち、ノシバやコウライシバは耐寒性も高く、コウライシバは高密度で生育する。
芝草2のうち、寒冷地でも年間を通して生長させることのできるものとしては、初期の生育がやや遅いが、匍匐茎が発達するウシノケグサ亜科イチゴツナギ属(通称ブルーグラス類)やウシノケグサ亜科コヌカグサ属(通称ベントグラス類)、ウシノケグサ亜科ウシノケグサ属(通称フェスク類)などが好ましい。このうち、ブルーグラス類は越冬性に優れるだけでなく、耐暑性も強い品種がある。
芝草2のうち、短期間で土壌1の表面を被覆することのできるものとしては、生育の早いウシノケグサ亜科ドクムギ属(通称ペレニアルライグラス類・イタリアンライグラス類)が好ましい。このうち、ペレニアルライグラス類は密度が高く、しかも耐暑性及び耐寒性に優れるものが多い。またイタリアンライグラス類は、発芽や定着が早く、低温伸長性も優れている。
植栽の方法としては、芝草2の種類によって、種子の吹き付け散布等による播種、ポット苗植え、切り苗による張芝などの方法が選択される。例えばノシバやコウライシバなどは張芝が適しており、ブルーグラス類やベントグラス類、フェスク類、ペレニアルライグラス類、イタリアンライグラス類は播種による方法が適しており、バミューダグラス類は品種によって播種、ポット苗植え、張芝のいずれも採用可能である。
種子の吹き付け散布の場合は、種子5〜15g/m2に、養生材(ファイバー等)、粘着剤(アクリル酸系樹脂や酢酸ビニル系樹脂等)、肥料、吸着剤、水を混合して、種子吹き付け機(ハイドロシーダーともいう)で、均一に散布する。吹き付け播種の場合は晩春から初夏に行うのが良い。また、吹付け材には、セシウム等の汚染物質に対する吸着作用を有する活性炭、ゼオライト、シリカゲル、あるいは2:1型鉱物を添加することも好ましい。2:1型鉱物としては、スメクタイト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、バーミキュライト、雲母、イライトが好ましい。
植栽された芝草2は、図3に示すように、成長の過程で土壌1中に根22を伸長させ、無数の根毛を発達させる。また、地上部21でも、根元から地面を這うように水平方向へ多数の匍匐茎23を伸ばし、その先端に子株2aを発生する。図4は子株2aも成長して匍匐茎23を伸ばし、その先端に孫株2bを発生させた状態を示している。そしてこれら匍匐茎23が網の目のように絡まりながら平面的に伸び、地上部21の葉などの密度も高くなって行く。
生育特性に優れた芝草2は、その地上部21が短期間で密生して土壌1の表面を覆うので、汚染された土壌粒子が風などにより表層部11から飛散するのを有効に防止する作用を奏する。種子の散布の際の吹付け材に添加されたファイバーや粘着剤も、風などによる土壌粒子の飛散を防止するのに役立つ。また、降水(降雨、降雪)や降塵などにより降下する汚染物質を、密生した地上部21でトラップするので、降下する汚染物質による土壌汚染の進行を防止する作用も奏する。
なお、土壌表面からの発塵が裸地と芝草の植栽地とでどのように異なるかについて調査したところ、発塵量は土壌の含水量によって大きく左右されるが、裸地では気象条件によって土壌の乾燥度が高まりやすく、特に太平洋側の地域における冬季乾燥期は裸地からの発塵量は極めて多く、それに対して同一場所の同一気象条件下にある芝草の植栽地では土壌表面の含水量が安定していて、発塵量は裸地に比較して遥かに僅少であることがわかった。したがって、汚染された土壌粒子の飛散による汚染の拡大や二次的汚染が有効に防止される。
施肥や農薬の散布、刈り込みなどを行いながら、一定期間(植え付けの時期や地域にもよるが、通常は2〜3カ月程度)の生育期間を経て、図5に示すように、芝草2が所要の密度に成長した状態では、土壌1のうちの汚染された表層部11中に、根22が高密度で分布している。すなわち、根22の垂直方向分布は表層部11付近に限定されるが、根22は分岐を繰り返して根毛を発生させ、このような無数の根毛が土壌粒子間にマトリクス状に延びて複雑に絡み合った状態となっている。なお、図5は地上部21の刈り込みを行った状態を示している。
このようにして芝草2が十分に生育したら、図6に示すように、公知の農業用の芝生収獲機(ソードカッターともいう)によって、この芝草2を、土壌表層部11と共に根切りして剥ぎ取って回収する。芝生収獲機は、良く知られているように、芝生の植栽地から芝生を切り剥がして土付きのシート状の芝生を収獲するもので、トラクタにより牽引されるものや自走式のものなどがあり、その移動方向を向いた略水平な根切りカッター100及びその両側の不図示の略垂直なサイドカッターを備えている。
すなわち芝草2の剥ぎ取り回収作業においては、芝草2が植栽された土壌1中に芝生収獲機の根切りカッター100の先端部を数cm(2〜3cm程度)の深さで挿入した状態で、この芝生収獲機を低速で移動させることによって、図6及び図7に示すように、芝草2をその根22が絡みついた、厚さが2〜3cm程度の土と共に前記土壌1から根切りして一定の幅の帯状に剥ぎ取って行く。上述のように、芝草2は、地上部21では匍匐茎23が網の目のように絡まってシート状に展開しており、芝草2の根22は、土壌粒子間にマトリクス状に延びて複雑に絡み合っているため、セシウム137などで汚染された土壌表層部11は、この芝草2の地上部21及び根22と共に、土壌1から分離・回収される。図8は、このようにして表層部11が除去された後の土壌1を示すものである。
芝生収獲機によって土壌1から回収された土付きの芝草2は、ロール状に巻かれるか、あるいは適当な面積のシート状にカットされ、埋め立て処分地などへ運搬される。上述のように、芝草2と共に土壌1から剥ぎ取られる表層の土壌粒子は、高密度の根22によって固定されているので、芝生収獲機による剥ぎ取り作業や運搬の際の飛散による二次汚染が有効に防止される。
芝草2の植栽後の管理においては、パクロブトラゾール、フルルプリミドール、ビスピリバックナトリウム塩、プロヘキサジオンカルシウム塩、トリネキサパックエチル、シイタケ菌糸体抽出物から選択される成長調整剤を土壌1に添加すれば、地上部21の成長が抑制されると共に根22の発達が促され、土壌粒子が根22によって強固に固定されるので、土壌表層部11を効率良く剥ぎ取ることができる。
また、種子の吹き付けによる植付の際などに、合成樹脂エマルジョンや天然高分子樹脂等を散布することによって、予め表層部11の土壌粒子を接着しておけば、上述した剥ぎ取り作業の際に、高密度の根22に捕捉された土壌粒子の落下や飛散をより確実に防止して、土壌表層部11を効率良く剥ぎ取ることができる。吹付け材に添加された粘着剤も、剥ぎ取り作業の際の土壌粒子の落下や飛散を防止するのに役立つ。
なお、上述の作業が完了した後も、土壌1の表面に汚染された土壌粒子が残留しているような場合は、上述したような芝草2の植栽及びその生育後の剥ぎ取り作業を再度行えば良い。
上述の実施の形態によれば、通常の重機による土木工事では除去することが難しい数cmの深さの表土のみを効率良く除去することができる。そして上述の剥ぎ取り工程で使用される芝生収獲機は、農業用のものであるため、この工程によって農地等の土壌に与える影響は小さく、本発明による土壌表層部の汚染除去方法の実施後は、農作業をすぐに再開することができる。しかも、小型の芝生収獲機を用いれば、果樹園などにおいて、果樹の根を傷付けることなく汚染表土を除去することができる。
なお、上述の実施の形態のように、土壌1の表層部11を効率良く剥ぎ取るための植物としては匍匐性植物、特に芝草2が好ましいが、生育期間が短く、根を密集して土壌マットを形成し、取扱や入手が容易な種であれば、匍匐性植物以外の植物を用いても良く、例えばイネ科、ユリ科、ラン科などの単子葉類の植物も好ましい。また本発明は、セシウム137以外の汚染物質による土壌表層部の汚染の除去にも適用することができる。
また、合成樹脂エマルジョンや天然高分子樹脂等を散布することによって、土壌1の表層部11の土壌粒子を接着して剥ぎ取る方法は、芝草2の植栽による方法とは独立して行うこともでき、表層部11が粘土質の場合は、ローラーによる転圧で土壌粒子を圧着して剥ぎ取る方法を採用することも可能である。
本発明は、土壌のごく浅い範囲の表層部が、汚染物質、特に放射線量の半減期の長いセシウム137などで汚染されたために、利用ができなくなった水田、畑地、果樹園などの農用地を修復するための手段として、有効に利用することができる。
1 土壌
11 表層部
2 芝草(植物,匍匐性植物)
21 地上部
22 根
23 匍匐茎
100 根切りカッター

Claims (10)

  1. 汚染物質により汚染された土壌の表層部を固定し、固定された表層部の土壌をその下層の土壌から剥ぎ取ることを特徴とする土壌表層部の汚染除去方法。
  2. 土壌の表層部の固定が、土壌に植物を栽培してこの植物の根で土壌粒子を捕捉することにより行われ、固定された表層部の土壌の剥ぎ取りが、根が絡みついた土壌粒子と共に前記植物を剥ぎ取ることにより行われることを特徴とする請求項1に記載の土壌表層部の汚染除去方法。
  3. 栽培する植物が地被植物であることを特徴とする請求項2に記載の土壌表層部の汚染除去方法。
  4. 汚染物質が放射性核種セシウム137又はセシウム134であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の土壌表層部の汚染除去方法。
  5. 地被植物が芝草であることを特徴とする請求項3に記載の土壌表層部の汚染除去方法。
  6. 芝草を植栽した土壌に、パクロブトラゾール、フルルプリミドール、ビスピリバックナトリウム塩、プロヘキサジオンカルシウム塩、トリネキサパックエチル、シイタケ菌糸体抽出物から1以上選択される成長調整剤を添加することを特徴とする請求項5に記載の土壌表層部の汚染除去方法。
  7. 植物の植付が、種子に養生材、粘着剤、肥料、水を配合して、これを種子吹付け機で土壌表層部に散布することにより行われることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の土壌表層部の汚染除去方法。
  8. 散布する種子に、活性炭、ゼオライト、シリカゲルから1以上選択される物質、あるいはスメクタイト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、バーミキュライト、雲母、イライトから1以上選択される2:1型鉱物が添加されることを特徴とする請求項7に記載の土壌表層部の汚染除去方法。
  9. 土壌の表層部の固定が、高分子化合物の散布で土壌粒子を接着することにより行われることを特徴とする請求項1に記載の土壌表層部の汚染除去方法。
  10. 土壌の表層部の固定が、転圧により土壌粒子を圧着することで行われることを特徴とする請求項1に記載の土壌表層部の汚染除去方法。
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