JP2012222856A - 電気車両におけるモータ駆動制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】減速機の油温を油温検出手段9aで検出する。また、車輪に接続される軸の回転数を軸回転検出手段10で検出する。さらに、アクセル開度9dとモータのトルク出力との関係から算出される負荷トルクとに基づいて駆動系の動力損失を推定し、その損失を補償する動力損失補償モータ指令値T0でモータを駆動する。
【選択図】図1
Description
このとき、アクスルシャフト3のトルクを正確に制御することが望ましいが、実際は、走行用モータ1の出力軸のトルクを制御している。
そのため、減速機2のギヤ系の効率が油温によって変化したときに、車両の動力性能が低下する。
すなわち、走行用モータ1の出力トルクは減速機2によってそのままアクスルシャフト3に伝達されているとは限らず、実際には油温に応じた減速ギヤ損失が発生する。
このような問題を解決する一つの方法として、「特許文献1」には、予め、油温ごとにギヤ効率推定マップを設け、前記マップにより減速機2の油温からギヤ効率を推定し、その推定したギヤ効率に基づき電気自動車の走行モータ1へのトルク指令を算出するようにしたものが記載されている。
図1に、この形態のモータ制御のシステムフロー図を示す。このシステムフロー図は、駆動系に走行用モータ1と減速機2を備えた電気自動車あるいはハイブリッドカーのもので(図10(a)、(b)参照)、その制御系に駆動系を加えたシステムのブロック図を図2に示す。
インバータ6は、前記制御信号に基づいて、充電池7の直流を交流に変換する。そして、変換した交流の電圧または電流及び周波数を制御して、走行用モータ1のトルクと回転数をコントロールする。一方、制動時(ブレーキペダルを踏み込んだ際)は、走行用モータ1の発電する電圧を充電池7の充電電圧まで昇圧して充電池7を充電する。
なお、走行用モータ1は、SMモータに限定されるものではない。回生ブレーキを使用しない場合は、3相誘導モータ(IM)やSRM(スイッチドリラクタンスモータ)を使用することもできる。
具体的には、例えば、油温(減速機2)検出用手段9aは、サーミスタなどの温度センサで構成し、車速検出手段9bは、ホールICなどの磁気センサを車軸に取り付けた磁石とで構成される回転センサなどで構成することができる。また、使用ギヤ判定手段9cとシフトレンジ判定手段9fは、ホールICなどの磁気センサを使った位置検出センサで構成したり、アクセルペダル17の開度検出9dやブレーキペダル18の操作量の検出センサ9eは、ペダルの軸にポテンショメータを取り付けたり、ペダルの軸にシャッターを取り付けて、シャッターの開度を光センサで検出したりする角度センサなどで構成したりすることができる。
SOC(%)=電池の残容量/満充電容量×100
とあらわされるもので、充電池7の充電状態を示し、無負荷時の端子電圧とSOCとの間に相関関係を有することが知られている。
そこで、ここでは、例えば、無負荷時の端子電圧とSOCとの関係において電池温度を媒介変数として測定したデータをプロットした値をもとに作成したデータテーブル設け、後述の回生時のオフセットの補正で用いる。
すなわち、走行用モータ1の出力は、減速機2及び差動装置を介して、または、この一部を介してアクスルシャフト3に伝達され、車輪を駆動している。
この伝達経路において、先に述べたように、軸回転数、負荷トルク、変速機の油温に応じた損失が発生する。そのため、操作変数である動力損失補償モータ出力トルク指令値(インバータ6への制御信号)をアクセル開度Aから演算で求める場合、同じアクセル開度Aでも前記損失の大きさに応じて車輪に伝達されるトルクが変化する。
この具体的な演算を、図3、4のフローチャートに基づいて説明する。
まず、走行用モータ1の回転を車軸(アクスルシャフト)に伝えて加速する力行時について説明する。
この場合、図3のフローチャートに示すように、アクセル開度Aから暫定モータトルク指令値T0を演算する(100)。暫定モータトルク指令値T0は、アクセルペダル17の操作によって設計上期待されるトルクの値である。例えば、図5のグラフに示すような一定の関係式で表されるもので、これらグラフや関係式から求められる値である。実際に使用する場合は、アクセル開度Aに対する算定モータトルク値のデータテーブルなどを準備するようにすればよい。
次に、ドライバー要求車両トルクTaを求める(110)。ドライバー要求車両トルクTaは、例えば、処理100で演算された暫定モータトルク指令値T0をインバータ6に入力し、その際、駆動系の動力損失がゼロと仮定したときの車両トルクである。
ちなみに、車両トルクとは、車輪に伝達されるトルク、すなわち、走行用モータ1の出力トルクが減速機2によって増幅された後のトルクのことである。
すなわち、減速機2(差動装置(デファレンシャルギヤ)を有する場合は減速機2と両方)に基づいて算出するものである。この演算は、図1のシステムフローの減速機効率演算手段12で、軸の回転数、負荷トルク(暫定モータトルク指令値T0がインバータ6に入力された場合の各部位のトルク)と油温θを用いて算出する。
このときの損失Lは、図6のように、L=(θ、T0、N)の関数で表されるものである。
すなわち、軸の回転数Nは、図1の軸回転数演算手段10で車速検出手段9bと使用ギヤ段判定手段9cのデータを演算することにより算出される(軸回転検出手段)。
油温θは、油温検出手段9aによって検出されるもので、暫定モータトルク指令値T0は、アクセルペダル17の開度Aから、先のように、データテーブルによって算出するものである。そして、これら出力が、図6のように減速機効率演算手段12に入力され、ギヤ損失、軸受損失、オイルシール損失から動力損失を演算する。
この演算は、ギヤ損失、軸受損失、オイルシール損失の一部または全体を理論式、実験式あるいは効率マップで表したものを準備し、これら準備した理論式、実験式の数式またはマップに基づいて推定動力損失Lを求める(120)。
このとき、例えば、上記演算の論理式または効率マップは油温をパラメータとして10℃ごとのデータを用意する。このデータは、実際の油温に近い2点のデータの線形補間で求めても良い。
すなわち、処理(120)で算出した推定動力損失Lを補償するトルクである動力損失補償トルク指令値T0´を算出する(130)。動力損失補償トルク指令値T0´は、ドライバー要求車両トルクTaを目標値として、この目標値との差が設定された閾値内に収まる車両トルクTa´を出力するための指令値(操作変数)である。
そのため、演算された動力損失補償モータトルク指令値T0をインバータ6に入力したと仮定したときに発生する車両トルクが許容条件を満たすか否かを判定する。満たさない場合は処理120に戻って演算を繰り返す(140)。
具体的には、ドライバー要求車両トルクTaに対して許容できる閾値ε1を設け、モータトルク指令値T0´をインバータに入力することで発生すると推定される車両トルクが、前記閾値ε1以内に収まった(|Ta−Ta´|<ε1)と判定されるまで繰り返し演算する。
なお、このときに閾値ε1は、軸回転数、負荷トルク、油温変化による駆動系の効率が変動しても、ドライバーの要求に近い車両トルクTaを安定して供給することができる値とする。
こうすることで、推定動力損失Lを補償する前記モータトルク指令値T0´を算出した際、前記モータトルク指令値T0´が変化すると推定動力損失Lも変化するため、前記演算を繰り返すことで、高精度の前記動力損失Lの推定や補償を行うというものである。
すなわち、図3の閾値ε1の比較処理(140)に代えて、図4のように、処理(115、116、135)で構成される繰り返し演算の処理を設け、その演算の繰り返し回数ε2を処理90で適宜設定することで、トルク演算の誤差を所定の範囲に丸め込むことができる。
このようにすれば、精度の高いトルク演算を高速にできる。何故なら、処理140で、誤差を閾値ε1と比較して判別するよりも、繰り返し回数を計数する処理の方が遥かに高速応答できるからである。
このようにすることにより、油温、負荷トルク、軸回転数などに基づいて、駆動系全体の損失を考慮して補償するようにしているので、駆動系の効率が変動しても、ドライバーの要求に近い車両トルクTaを安定して供給することが可能となる。
また、走行用モータ1から車輪までの動力伝達経路における動力損失を高精度で推定することができるので、トラクションコントロールなどの車両駆動制御の精度を改善(向上)することができる。
このように、本発明では、「ドライバー要求車両トルク演算(100)」、「動力損失補償モータトルク指令値演算(120)」の各処理を設け、ギヤ損失だけでなく、駆動系に関する損失を考慮して補償するようにしたので、駆動系の損失が変化しても車両トルクを安定させることができるからである。
上述の(1)では、走行用モータ1の動力を車輪に駆動系を介して伝達する力行時のトルク補償について述べた。このトルク補償は、駆動系を介して車輪の運動エネルギーを走行用モータ1で吸収する回生時にも効果がある。
すなわち、ブレーキペダル18の操作量は、図1のシステムフローに示すように、ブレーキペダル18のセンサ9cから回生制動力の演算を行う演算手段11を介して減速機効率演算手段12に入力され、ブレーキペダルが踏み込まれると、そのブレーキペダル18の操作量から制動量を検出するようになっている。そして、その制動量の変化から安全に減速中であることを検出すると、インバータ6による充電池7から走行用モータ1への電力の供給を絞り、前記モータ1を回生ブレーキとして動作するようにする。そして、ブレーキ操作量や充電池7のSOC(充電率)9gなどから回生制動モータトルク指令値を算出するのである。
因みに、充電池7のSOC9gから充電率に応じた充電池の電圧(オフセット)が分かるので、その電圧に応じた回生制動モータトルク指令値を算出する。
そのため、推定動力損失Lを演算する(220)。推定動力損失Lの演算は、図1のシステムフローの減速機効率演算手段12で、先述の「力行時」と同様に、軸回転数、負荷トルク(回生制動トルク指令値がインバータに入力された場合の各部位のトルク)、油温を用いて演算することにより、動力損失補償回生制動トルクTrを算出する(230)。
この算出は、図3の処理140及び図4の処理115、116、135などで示すような繰り返し演算の処理を行うことで、精度の向上を図ることができる。そして、それから、実際に車両に作用している回生制動トルクTrを推定するのである。
このように、機械体制動トルクTmで動力損失分を補償することで、回生制動中も安定した車両への制動力を提供できる。
また、動力損失として「ギヤ損失」、「軸受損失」、「オイルシール損失」以外に、「モータの機械損失」などを加味して考慮すれば、より精度の向上が図れる。
2 減速機
3 アクスルシャフト
6 インバータ
7 充電池
9a 油温検出手段
9b 車速検出手段
9d 開度検出手段
9e 操作量検出手段
17 アクセルペダル
18 ブレーキペダル
A アクセル開度
ε1 許容閾値
L 推定動力損失値
Ta ドライバー要求モータトルク値
T0 暫定モータトルク指令値
T0´ 動力損失補償モータトルク指令値
Tr 回生制動トルク指令値
Claims (11)
- アクセル開度に応じてモータトルク指令値をインバータに入力し、前記インバータに接続されたモータのトルク制御を行って、該モータの出力トルクを車輪に減速機を介して伝達することにより駆動する電気車両において、
前記減速機の油温を油温検出手段で検出し、
一方、前記車輪に接続される軸の回転数を軸回転検出手段で検出するとともに、
前記両検出値と、アクセル開度とモータのトルク出力との関係から算出される負荷トルクとに基づいて駆動系の動力損失を推定し、その推定された動力損失を補償する動力損失補償モータ指令値を演算し、その演算した動力損失補償モータ指令値をインバータへ入力してモータのトルク制御を行うことを特徴とする電気車両におけるモータ駆動制御方法。 - 請求項1の動力損失分を補償する動力損出補償モータトルク指令値の演算に際し、上記アクセル開度とモータの出力トルクとの関係から算出されるドライバー要求車両トルクと、推定された動力損失分を補償するモータトルク指令値をインバータに入力した場合に車両に生じる動力損失補償車両トルクを比較し、ドライバー要求車両トルクと動力損失補償トルクの差が設定された許容閾値以内に収まったか否かを判定し、許容閾値以内に収まったと判定された場合は、動力損失補償トルク指令値をインバータに入力し、
許容閾値以内に収まっていないと判定された場合には、演算された動力損失補償トルク指令値を再び暫定モータトルクと見なして、推定動力損失を演算し、許容閾値以内に収まったと判定されるまで、この作業を繰り返すことを特徴とする電気車両におけるモータ駆動制御方法。 - アクセル開度、ブレーキ操作量、電池のSOC(State Of Charge)に応じてモータトルク指令値をインバータに入力し、インバータに接続されたモータの回生制動トルク制御を行って、該モータの出力トルクを車輪に減速機を介して伝達することにより回生制御を行う電気車両において、
前記減速機の油温を油温検出手段で検出し、
一方、前記車輪に接続される軸の回転数を軸回転検出手段で検出するとともに、
前記両検出値と、アクセル開度とモータのトルク出力との関係から算出される負荷トルクとに基づいて駆動系の動力損失を推定し、その推定された動力損失を補償する回生制動モータトルク指令値を演算し、その演算した回生制動モータトルク指令値をインバータへ入力してモータのトルク制御を行うことを特徴とする電気車両におけるモータ駆動制御方法。 - 上記請求項3の動力損失補償の演算に際し、回生制動モータトルク指令値に対する駆動系の動力損失分を機械的制動力で補償し、安定した車両制動力を提供することを特徴とする電気車両におけるモータ駆動制御方法。
- 上記請求項3の動力損失分を補償するモータトルク指令値の演算に際し、アクセル開度、ブレーキ操作量から算出されるドライバー要求車両制動トルクと、推定された動力損失分を補償する回生制動モータトルク指令値をインバータに入力した場合に、車両に生じる回生トルクと機械的制動トルクの和である演算車両制動トルクを比較し、ドライバー要求車両制動トルクと演算車両制動トルクの差が設定された許容閾値以内に収まったか否かを判定し、許容閾値以内に収まったと判定された場合は、回生制動モータトルク指令値をインバータに入力し、
許容閾値以内に収まっていないと判定された場合には、演算された動力損失補償回生制動モータトルクの指令値を再び暫定回生制動モータトルクと見なして推定動力損失を演算し、許容閾値以内に収まったと判定されるまで、この作業を繰り返すことを特徴とする電気車両におけるモータ駆動制御方法。 - 上記請求項2または5の繰り返し演算上限回数を任意に設定し、演算時間の短縮を図ったことを特徴とする電気車両におけるモータ駆動制御方法。
- 上記請求項1〜6のいずれかの駆動系の動力損失を、ギヤ損失と、軸受損失またはオイルシール損失のうちのいずれか一方あるいは両方を用いて演算することを特徴とする電気車両におけるモータ駆動制御方法。
- 上記請求項1〜7のいずれかのモータ駆動制御方法を使用した瞬間燃費距離計。
- 上記請求項8の瞬間燃費距離計を搭載した車両。
- 上記請求項1〜8のいずれかのモータトルク制御方法を適用したことを特徴とする電気自動車。
- 上記請求項1〜8のいずれかのモータトルク制御方法を適用したことを特徴とするハイブリッド車。
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