JP7116551B2 - 電動ブレーキ装置および電動ブレーキシステム - Google Patents
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Description
前記電動ブレーキ装置において、電動モータ等の銅損による電力の消費割合が比較的多くなる場合がある。前記銅損は基本的に電流の二乗に比例することから、電流と概ね比例関係となるトルクの二乗に概ね比例する。すなわち、大きなトルクが必要となり得る大きなブレーキ荷重を発揮する場合ほど、消費電力が増加する傾向を示す場合が多い。
一方、前記のような車両に搭載された電動ブレーキ装置の場合、ブレーキ力は車両操縦者が決定し、基本的に要求されたブレーキ力に基づくブレーキ荷重を電動ブレーキ装置によって発生させなければならず、前記銅損の低減が困難である場合がある。このとき、電動モータ設計によって前記銅損を低減する場合、電動モータのサイズを大きくする必要があり、搭載性やコストが問題となる場合がある。
前記電動ブレーキ制御装置2が、
前記車両の停車状態と走行状態の区別を、前記ブレーキロータ8の配置された車輪15の回転運動から判断する停車判断手段23dと、
前記要求ブレーキ力に基づき前記ブレーキ荷重の制御目標値となる目標ブレーキ荷重Frを出力するブレーキ荷重指令器22と、
前記目標ブレーキ荷重に応じて前記電動モータ4に与えるブレーキ荷重保持電力の指令値Arを出力するブレーキ荷重制御器24と、
前記停車状態であるときに、前記要求ブレーキ力Brkに基づき前記電動モータ4に与える前記ブレーキ荷重保持電力の指令値Arを、前記走行状態であるときと比較して低減するブレーキ電力低減器23,23Aと備える、
ことを特徴とする。
ブレーキ力は、ブレーキロータ8への摩擦材9の押付力であるブレーキ荷重に摩擦係数とブレーキ有効径を乗じた値となるが、車両停車時は前記摩擦係数として、動摩擦係数よりも大きな静止摩擦係数が作用する。そのため、同じブレーキ荷重を与えても、停車状態では走行状態よりも大きなブレーキ力が作用する。したがって、要求ブレーキ力Brkに対して常に比例するブレーキ荷重を生じさせる制御では、停車状態では要求ブレーキ力Brkに対して過剰な摩擦力、つまり過剰なブレーキ力が発生する。
そのため、車両が停車している場合は、前記の過剰となる範囲内で、要求ブレーキ力Brkに対する目標ブレーキ荷重Frを比較的低くすることで、要求ブレーキ力Brkに対して必要なブレーキ力を維持しつつ、ブレーキ荷重の低減による電動モータ4の消費電力を低減させることができる。このように制御によって無駄な電力供給を低減させることで、電動モータ4のサイズを大きくすることなく銅損を抑えて消費電力の節減を図ることができる。
前記静止ブレーキ荷重指令部3bは、前記要求ブレーキBrkに対して、前記停車状態目標ブレーキ荷重Fstを前記走行状態目標ブレーキ荷重Fdyに比べて小さな値とするようにしてもよい。
このように静止ブレーキ荷重指令部23bと走行ブレーキ荷重指令部23aとを設けることで、制御が簡素に行える。
前記摩擦材9とブレーキロータ8との接触における動摩擦係数に対する静止摩擦係数の所定の比率kfrに基づき、前記走行状態目標ブレーキ荷重Fdyに対して、Fst=Fdy/kfrとなるように決定するようにしてもよい。
このように動摩擦係数と静止摩擦係数に基づいて目標ブレーキ荷重を切替えれば、ブレーキ力(摩擦係数×ブレーキ荷重×ブレーキ有効径)は概ね一定に保たれつつ、ブレーキ荷重が低下することで銅損を低減できる。
前記ブレーキ電力低減器23は、推定車速の大きさが所定値を下回る場合において、前記推定車速の大きさが零と見做せる値まで推移するにしたがって、最終的に決定される目標ブレーキ荷重Frが、前記走行状態目標ブレーキ荷重Fdyから前記停車状態目標ブレーキ荷重Fstへと推移させる機能を有するようにしてもよい。
このように目標ブレーキ荷重Frを車速に応じてある程度緩やかに切替えることで、目標ブレーキ荷重Frの切替時に車両が厳密な停車状態で無かった場合等において、急なブレーキ荷重の変化による車両の振動等が発生することを防止することができる。
ブレーキ力が小さい場合は微小な変化を操縦者が感じやすく、例えば厳密な車速零の検知が求められる等、この発明の実装上の難易度が上がる場合がある。一方、ブレーキ力が小さい場合の銅損は極めて軽微である為、実装することによるメリットは比較的小さい。 よって、ブレーキ力が所定より大きい場合のみ停車状態時のブレーキ荷重低減を実行することにより、実装時の難易度を下げつつ、発明の効果を発揮できる。
前記停車状態目標ブレーキ荷重Fstと、前記走行状態目標ブレーキ荷重Fdyが略同一でなくなる前記要求ブレーキ力Brkの第一の所定値と、この第一の所定値より大きい要求ブレーキ力の第二の所定値とが設定され、
前記第一の所定値から第二の所定値に至るまで、前記停車状態目標ブレーキ荷重Fstと、前記走行状態目標ブレーキ荷重Fdyとを徐々に乖離させるようにしてもよい。
前記第一の所定値および第二の所定値は、試験またはシミュレーション等により適宜の値とする。
この構成の場合、意図しない制動ショック等のフィーリング悪化を防止することができる。
この構成の場合も、意図しない制動ショック等のフィーリング悪化を防止することができる。
前記複数の電動ブレーキ装置1を統合制御するブレーキ統合制御装置20を備え、
前記複数の電動ブレーキ装置1における少なくとも二つの電動ブレーキ装置1の前記ブレーキ電力低減器23が一つに統合されて前記ブレーキ統合制御装置20に設けられ、
この一つに統合された前記ブレーキ電力低減器23は、このブレーキ電力低減器23における前記静止ブレーキ荷重指令部23bおよび前記走行ブレーキ荷重指令部23aが、統合に係る各電動ブレーキ装置1における前記目標ブレーキ荷重の合計値を出力する。
この構成の場合、車両の前輪であるか後輪であるかなどによる、各電動ブレーキの負担割合、位置に応じた制御が行える。
この場合、構成が簡単である。
この構成の場合、電動ブレーキ制御装置2を、上位制御装置19とは独立して構成することができる。
図1に示すように、この電動ブレーキ装置1は、摩擦ブレーキ7および直動アクチュエータ5により構成されるブレーキ機構部1Aと、このブレーキ機構部1Aを制御する電動ブレーキ制御装置2と、電源装置3とからなり、摩擦ブレーキ7は車輪15に搭載されている。
図2に示すように、摩擦ブレーキ7は、ブレーキロータ8と、このブレーキロータ8に接触させて制動力を発生させる摩擦材9とからなる。前記摩擦ブレーキ7は、例えば、ブレーキロータ8および摩擦材9としてブレーキディスクおよびキャリパを用いたディスクブレーキ装置である。摩擦ブレーキ7は、ドラムおよびライニングを用いたドラムブレーキ装置であってもよい。
電動モータ4は、例えば永久磁石同期電動機により構成され、その場合、省スペースで高効率かつ高トルクとなり好適と考えられるが、例えばブラシを用いたDCモータや、永久磁石を用いないリラクタンスモータ、あるいは誘導モータ等を適用することもできる。
直動機構6は、遊星ローラねじ、ボールねじ等の各種ねじ機構や、ボールランプ等、回転運動を直進運動に変換可能な各種機構を用いることができる。
減速機10は、電動モータ4の回転を減速する機構であり、この例では一次歯車12、中間歯車13、および三次歯車11を含む。減速機10は、電動モータ4のロータ軸4aに取り付けられた一次歯車12の回転を、中間歯車13により減速して、直動機構6の回転軸6aの端部に固定された三次歯車11に伝達可能としている。減速機10は、図2の平歯車による構成に代えて、ウォーム歯車、遊星歯車等を用いてもよい。
角度センサSaは、例えばレゾルバや磁気エンコーダ等を用いると高精度かつ高信頼性であり好適と考えられるが、光学式エンコーダ等の各種センサを適用することもできる。もしくは図1の他の構成として、角度センサSaを用いずに、例えば後述する電動ブレーキ制御装置2において電圧と電流との関係等からモータ角度を推定するような角度センサレス推定を用いることもできる。
荷重センサSbは、例えば変位や変形を検出する磁気センサ、歪センサ、圧力センサ、等を用いることができる。もしくは本図の他の構成として、荷重センサSbを設けずに、後述する電動ブレーキ制御装置2においてモータ角度および電動ブレーキ装置剛性や、モータ電流および直動アクチュエータ効率等から荷重センサレス推定を行うようにしてもよい。
直動アクチュエータ5には、その他にサーミスタ等の各種センサ類を必要に応じて別途設けても良い。
電源装置3は、直流電源であり、電動ブレーキ装置1に対して専用に設けられたバッテリであっても、また車両の他の機器の駆動に用いるバッテリであってもよい。
電動ブレーキ制御装置2は、ブレーキ力指令手段21の要求ブレーキ力Brkに基づき前記電動モータ4を制御することにより、摩擦ブレーキ7の摩擦材9のブレーキロータ8への押付力であるブレーキ荷重を制御する手段であり、制御演算を行う各種制御演算器と、モータドライバと、各種の推定器と、センサ類から構成される。
なお図1は、機能構成の概念を示したものであり、図示外要素は要件に応じて適宜設けられるものとする。また、各機能ブロックは便宜上設けているものであり、実装上の都合に伴い適宜統合ないし分割可能であるものとする。また、以下の各実施形態は、何れか一例に限定されるものではなく、実装上において矛盾が生じなければ、必要に応じて一部または全体を併合した構成としても良い。
ブレーキ力指令手段21は、電動ブレーキ制御装置2に対して要求ブレーキ力Brkを指令する手段であり、例えばブレーキペダルおよびストロークセンサ等の、車両操縦者がブレーキ操作を指令する手段であっても良く、また車両統合制御装置(VCU)のような上位ECUであっても良い。上位ECUである場合、車両操縦者によるブレーキペダル等の操作を上位ECUが検出する構成であっても良く、また自動運転のような、上位ECUによってブレーキ力を要求する構成であっても良い。
角度推定器27および荷重推定器28は、それぞれ、前述の角度センサSaおよび荷重センサSbの出力から制御演算に用いる角度およびブレーキ荷重を推定する機能を有する。角度推定器27および荷重推定器28は、この他に前述の通り、角度センサSaや荷重センサSb等のセンサ類を用いずに、角度センサレス推定機能や荷重センサレス推定機能を持つ手段とすることもできる。
また、角度推定器27は、例えば電流制御に用いる電気角位相や、位置制御に用いる角度の積算値等、ブレーキ荷重制御器24の構成に基づいて、必要な物理量を適宜求める機能を有する。角度推定器27は、その他に例えば、角速度や角加速度等の微分量や、角度に基づいて推定し得る外乱等を推定する機能を有していても良い。前記他の物理量の推定は、例えば状態推定オブザーバ等を用いても良く、微分や慣性方程式に基づく逆算等の直接的な演算であっても良い。
電流センサScは、モータドライバ25から電動モータ4に与える電流を検出するセンサであり、例えばシャント抵抗両端の電圧を検出するアンプからなるセンサや、通電経路周囲の磁束等を検出する非接触式センサ等を用いることができる。あるいは、例えばモータドライバ25を構成する素子等の端子電圧等を検出する構成としても良い。
ブレーキ荷重指令器22は、ブレーキ力指令手段21から入力される要求ブレーキ力Brkに基づき、制御目標値とするブレーキ荷重指令値である目標ブレーキ力Frを導出する機能を有する。ブレーキ力指令手段21から入力される要求ブレーキ力Brk は、例えば車両減速度や、減速トルク、制動力、等の車両ベースで考慮された物理量であっても良く、あるいは所定のブレーキ有効径、ブレーキ摩擦係数、等に基づいて導出されたブレーキ荷重等のアクチュエータベースで考慮された物理量であっても良い。ブレーキ荷重指令器22において、前記の要求ブレーキ力Brkに対し、最終的に目標値とする目標ブレーキ荷重Frを決定する。
ブレーキ荷重制御器24は、ブレーキ荷重指令器22により求められる目標ブレーキ荷重Frに対して、前記推定ブレーキ荷重が追従するよう電動モータ4の操作量であるブレーキ荷重保持電力の指令値Arを演算する。前記ブレーキ荷重保持電力の指令値Arは、例えばモータ電圧であっても良く、さらにモータ電流やモータ角度を制御するマイナーフィードバックを一つまたは複数設けて演算された値であってもよい。また、演算中に用いる物理量は、例えばモータ角度及びアクチュエータ等価リードから算出されるアクチュエータ位置や、モータ電流から求められるモータトルク等、設計都合に応じて適宜選択されるものとする。その他、フィードフォワード制御等を用いるか、または適宜併用することもできる。
モータドライバ25は、電源装置3から供給されて電動モータ4に与える電力であるブレーキ荷重保持電力を、ブレーキ荷重制御器24から出力された前記ブレーキ荷重保持電力の指令値Arに応じて制御する手段である。電源装置3は直流電源であるため、モータドライバ25は、直流電力を交流電力に変換するインバータ(図示せず)と、その制御手段(図示せず)とで構成される。モータドライバ25は、例えばFET等のスイッチ素子を用いたハーフブリッジ回路からなる前記インバータを構成し、所定のデューティ比によりモータ印加電圧を決定するPWM制御を行う構成とされ、この構成とすると、安価で高性能となり好適である。モータドライバ25は、変圧回路等を設け、PAM制御を行う構成としてもよい。
ブレーキ電力低減器23は、停車状態のブレーキ消費電力を走行状態より低減するための処理を行う手段であり、前記停車状態である場合の前記要求ブレーキ力Brkに基づき電動モータ4に与える前記ブレーキ荷重保持電力の指令値Arを、前記走行状態である場合と比較して低減させる。
この実施形態においては、ブレーキ電力低減器23は、ブレーキ荷重指令器22の一部として設けられ、走行ブレーキ荷重指令部23aと、静止ブレーキ荷重指令部23bと、ブレーキ荷重指令判断部23cとを備える。
静止ブレーキ荷重指令部23bは、停車状態における同様のブレーキ荷重指令値である停車状態目標ブレーキ荷重Fsyを導出する。
前記停車状態目標ブレーキ荷重Fsyは、前記走行状態目標ブレーキ荷重Fdyに対して比較的小さなブレーキ荷重となるよう設定される。小さなブレーキ荷重とすることで、モータ電流も同時に比較的小さくでき、ブレーキ保持時のモータ銅損が低減する。そのため消費電力を低減することができる。
停車判断手段23dは、例えば、車輪速が一定時間零として検出された場合を停車状態として判断しても良く、車輪速が零に向かって明らかに車輪ロックではない比較的緩やかな減速をして零に到達した場合において判断しても良い。この場合、車速推定器29は、連続的な速度推定を行う構成である必要はなく、停車状態であるか否かを判別できる機能を有すればよい。その場合でも、例えば路面とのスリップ状態等の影響によって一輪の車輪速のみでは正確な車速推定が困難である条件下においても、十分に機能を発揮することができる。
具体例として、例えば最終的な目標ブレーキ荷重(ブレーキ荷重指令値)Frを、前記停車状態目標ブレーキ荷重Fst、走行状態目標ブレーキ荷重Fdy、および車速に依存した結合係数αを用いて、次式のように導出しても良い。
Fr=α・Fst+(1-α)・Fdy
ただし、0≦α≦1(車速零でα1、切替開始の低速でα=0)
一般に、制動力が小さい場合ほど車両操縦者はブレーキ荷重変化に伴う制動力変化に敏感であるため、ブレーキ荷重が小さい場合において、車両が厳密に停車する前に前記ブレーキ荷重の切替が発生してしまうことによるフィーリング悪化のデメリットが大きくなる。また一方で、制動力が大きい場合すなわちブレーキ荷重が大きい場合ほどブレーキ荷重を低下させることによる銅損低減効果が大きいため、ブレーキ荷重が大きい場合において前記ブレーキ荷重の切替によるメリットが大きくなる。したがって、前記の要求ブレーキ力Brkが所定値より大きい場合のみ前記目標ブレーキ荷重の切替を行うことは合理的である。
この場合、要求ブレーキ力Brkが大きくなるほど停車状態目標ブレーキ荷重Fstと走行状態目標ブレーキ荷重Fdyとが乖離するように設定されていても良い。
前記第一の所定値から第二の所定値に至るまで、前記停車状態目標ブレーキ荷重Fstと、前記走行状態目標ブレーキ荷重Fdyとを徐々に乖離させるようにしてもよい。
前記各所定値は、試験またはシミュレーション等により適宜の値とする。
図3は、図1におけるブレーキ荷重指令器22の実行例を示す。
ステップS. 1で所定の仕様に基づく要求ブレーキ力Brkを取得する。要求ブレーキ力Brkは、例えば車両減速度や、車両減速度から車両重量等を含む所定相関に基づいて導出される制動力、ないしブレーキトルク等、に相当する情報とすることができる。あるいは、前記何れかの情報に基づき、所定のブレーキ摩擦力演算式に基づいて導出され得るブレーキ荷重であっても良い。
ステップS.2で車両が走行状態と判断された場合は、ステップS.5において走行状態目標ブレーキ荷重Fdyを、走行状態の演算係数kdyに基づき導出する。
前記演算係数kdyは、例えば摩擦材とブレーキロータとの特性における動摩擦係数に基づいて決定される所定係数とすることができる。前記導出された走行状態目標ブレーキ荷重Fdyを、制御目標値である目標ブレーキ荷重Frとして設定する(ステップS.6)。
前記連続的変化は、例えば、車速が零から所定の低速状態までの所定区間において、結合係数がkdy からkst へと車速に応じて変化する処理によるものであっても良い。この場合、例えば前記の走行状態から停車状態への判断の変化が、車両が厳密に停車する前に起こったとしても、ブレーキ荷重が急激に変化することを防げるため、意図しない制動ショック等のフィーリング悪化を防止することができる。
前記連続的変化は、例えば、判断が走行状態から停車状態へと変化した場合、前記判断の変化が発生してから所定時間内において、結合係数がkdyからkstへと時間に応じて変化する処理によるものであっても良い。この場合においても前記と同様、ブレーキ荷重が急激に変化することを防げることで、意図しない制動ショック等のフィーリング悪化を防止することができる。
図4は、図1の構成を適用した電動ブレーキ装置1の動作例(a) と、適用しない従来の電動ブレーキ装置の動作例(b) を示す。
(a) の例(適用例)において、(b) の例(非適用例)と比較して、車速(図の上から2番目)が零になるとき、ブレーキ荷重を低下させる(図の上から3番目)。このときブレーキ荷重は低下するものの、摩擦材9とブレーキロータ8との摩擦係数は動摩擦状態から静止摩擦状態へと変化することで上昇し、ブレーキ荷重の低下分と相殺される。そのため、発生するブレーキロータ8の摩擦力は低下することなく概ね一定に保たれる(図の上から4番目)。このとき、ブレーキ荷重が低下することで、ブレーキ保持に必要なモータトルクが低下し、モータ銅損が低減する(図の上から5番目)。
同図の各パラメータは、例えば図1における電動ブレーキ装置1のものであってもよく、後述する図6の複数の電動ブレーキ装置1の総和のものであってもよい。
図5ないし図9は、この発明の他の各実施形態を示す。これらの実施形態において、特に説明する事項の他は、第1の実施形態と同様であり、対応部分に同一符号を付して重複する説明を省略する。
図5は、電動ブレーキ制御装置2の外部に車速推定手段28を設ける例を示す。車速推定手段28は、例えば複数輪の車輪速や、あるいは加速度センサやGPS(図示せず)等に基づいて車速の推定を行う手段である。前記車速推定手段28は、例えば車両統合制御装置(VCU)等の上位ECUに設けられたものであってもよく、あるいは複数の電動ブレーキ制御装置1のうちの他の一つに設けられたものであっても良い。
例えば電動ブレーキ制御装置1においてアンチスキッド制御(図示せず)等の車輪速制御を行う場合、電動ブレーキ制御装置1にて車輪速制御演算を行う必要が生じる場合があるため、図5の構成にする方が好ましい場合がある。
図6は、複数の電動ブレーキ装置1(11,12,……)を、ブレーキ統合制御装置20で統合制御する電動ブレーキシステムの一例を示す。この電動ブレーキシステムは、ブレーキ統合制御装置20に設けられた一つのブレーキ荷重指令器22が、前記複数の電動ブレーキ装置1(11,12,……)における前記ブレーキ荷重指令器22となる。前記ブレーキ統合制御装置20は、車両の統合制御を行う車両統合制御装置(VCU)等の上位制御装置19に設けられている。
図6に示す第一,第二,…の電動ブレーキ装置11,12,……の各ブロックは、図1に示す電動ブレーキ装置1からブレーキ荷重指令器22を省いた構成部分を示しており、同図の第一,第二,…の各電動ブレーキ装置11,12,……は、ブレーキ統合制御装置20に設けられたブレーキ荷重指令器22を含めて電動ブレーキ装置1を構成する。
図6の第一,第二,…の各電動ブレーキ装置11,12,……のブロックで示す部分は、図7に示すように、図1または図5の電動ブレーキ装置1におけるブレーキ荷重指令器22以外の全ての構成、例えば電動ブレーキ制御装置2、電動アクチュエータ5、摩擦ブレーキ7等を備えている。
なお、前記ブレーキ力分担割合は、個々の電動ブレーキ装置12における電動ブレーキ制御装置2に自己のブレーキ力分担割合を設定しておき、ブレーキ統合制御装置20から
は合計目標ブレーキ荷重を出力するようにしてもよい。
このとき、例えば前輪側のブレーキ荷重をより積極的に低下させたほうが四輪総和でのブレーキ消費電力が低減できるか、あるいは逆に後輪側のブレーキ荷重を積極的に低下させた方が四輪総和でのブレーキ消費電力が低減できる場合がある。
走行ブレーキ荷重推定部23Aaは、走行状態における荷重センサSbの検出値からの荷重の推定値を求め、静止ブレーキ荷重推定部23Abは、停車状態における荷重センサSbの検出値からの荷重の推定値を求める。ブレーキ状態推定判断部23Acは、停車判断手段23dを有していて、走行状態であるか停車状態であるかによって、走行ブレーキ荷重推定部23Aaと静止ブレーキ荷重推定部23Abとのいずれの荷重推定値をブレーキ荷重制御器24に送信するかの処理を行う。
Claims (8)
- ブレーキロータと、このブレーキロータに接触してブレーキ力を発生させる摩擦材と、電動モータと、この電動モータの回転動作を前記摩擦材の前記ブレーキロータへの接触動作に変換する摩擦材操作手段と、ブレーキ力指令手段の要求ブレーキ力に基づき前記電動モータを制御することにより前記摩擦材の前記ブレーキロータへの押付力であるブレーキ荷重を制御する電動ブレーキ制御装置とを備え、車両に搭載される電動ブレーキ装置であって、
前記電動ブレーキ制御装置が、
前記車両の停車状態と走行状態の区別を、前記ブレーキロータの配置された車輪の回転運動から判断する停車判断手段と、
前記要求ブレーキ力に基づき前記ブレーキ荷重の制御目標値となる目標ブレーキ荷重を出力するブレーキ荷重指令器と、
前記目標ブレーキ荷重に応じて前記電動モータに与えるブレーキ荷重保持電力の指令値を出力するブレーキ荷重制御器と、
前記停車状態であるときに、前記要求ブレーキ力に基づき前記電動モータに与える前記ブレーキ荷重保持電力の指令値を、前記走行状態であるときと比較して低減するブレーキ電力低減器と備え、
前記ブレーキ電力低減器は、前記停車状態である場合の前記要求ブレーキ力に対する目標ブレーキ荷重である停車状態目標ブレーキ荷重Fstを演算する静止ブレーキ荷重指令部と、前記走行状態である場合の前記要求ブレーキ力に対する目標ブレーキ荷重である走行状態目標ブレーキ荷重Fdyを演算する走行ブレーキ荷重指令部とを有し、
前記静止ブレーキ荷重指令部は、前記要求ブレーキ力に対して、前記停車状態目標ブレーキ荷重Fstを前記走行状態目標ブレーキ荷重Fdyに比べて小さな値とし、
前記静止ブレーキ荷重指令部は、前記要求ブレーキ力に対して演算する前記停車状態目標ブレーキ荷重Fstを、前記走行状態目標ブレーキ荷重Fdyに比べて小さな値とする割合につき、
前記摩擦材とブレーキロータとの接触における動摩擦係数に対する静止摩擦係数の所定の比率kfrに基づき、前記走行状態目標ブレーキ荷重Fdyに対して、Fst=Fdy/kfrとなるように演算する、
ことを特徴とする、電動ブレーキ装置。 - 請求項1に記載の電動ブレーキ装置において、前記電動ブレーキ制御装置の構成要素として、または前記電動ブレーキ制御装置とは別に、少なくとも前記車輪の回転運動を含む所定の情報に基づいて前記電動ブレーキ装置搭載車両の車速を推定する車速推定器を有し、
前記ブレーキ電力低減器は、推定車速の大きさが所定値を下回る場合において、前記推定車速の大きさが零と見做せる値まで推移するにしたがって、最終的に決定される目標ブレーキ荷重が、前記走行状態目標ブレーキ荷重Fdyから前記停車状態目標ブレーキ荷重Fstへと推移させる機能を有する電動ブレーキ装置。 - 請求項1または請求項2に記載の電動ブレーキ装置において、前記静止ブレーキ荷重指令部は、前記要求ブレーキ力が所定値よりも小さい場合においては、前記停車状態目標ブレーキ荷重Fstを前記走行状態目標ブレーキ荷重Fdyと同一と見做せる値に演算し、前記要求ブレーキ力が前記所定値よりも大きい場合においては、前記停車状態目標ブレーキ荷重Fstを前記走行状態目標ブレーキ荷重Fdyよりも小さな値に演算する電動ブレーキ装置。
- 請求項3に記載の電動ブレーキ装置において、
前記ブレーキ電力低減器は、
前記停車状態目標ブレーキ荷重Fstと、前記走行状態目標ブレーキ荷重Fdyが略同一でなくなる前記要求ブレーキ力の第一の所定値と、この第一の所定値より大きい要求ブレーキ力の第二の所定値とが設定され、
前記第一の所定値から第二の所定値に至るまで、前記停車状態目標ブレーキ荷重Fstと、前記走行状態目標ブレーキ荷重Fdyとを徐々に乖離させる電動ブレーキ装置。 - 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電動ブレーキ装置において、前記ブレーキ電力低減器は、前記走行状態目標ブレーキ荷重Fdyから前記停車状態目標ブレーキ荷重Fstへの切替が発生してから所定時間内において、この所定時間内における時間経過にしたがって、前記目標ブレーキ荷重を、前記走行状態目標ブレーキ荷重Fdyから前記停車状態目標ブレーキ荷重Fstへと推移させる電動ブレーキ装置。
- 請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の電動ブレーキ装置を複数備える電動ブレーキシステムであって、
前記複数の電動ブレーキ装置を統合制御するブレーキ統合制御装置を備え、
前記複数の電動ブレーキ装置における少なくとも二つの電動ブレーキ装置の前記ブレーキ電力低減器が一つに統合されて前記ブレーキ統合制御装置に設けられ、
この一つに統合された前記ブレーキ電力低減器は、このブレーキ電力低減器における前記静止ブレーキ荷重指令部および前記走行ブレーキ荷重指令部が、統合に係る各電動ブレーキ装置における前記目標ブレーキ荷重の合計値を出力する、
ことを特徴とする電動ブレーキシステム。 - 請求項6に記載の電動ブレーキシステムにおいて、前記ブレーキ統合制御装置が、前記車両の上位制御装置に設けられた電動ブレーキシステム。
- 請求項6に記載の電動ブレーキシステムにおいて、前記ブレーキ統合制御装置が、統合に係る各電動ブレーキ装置におけるいずれかの前記電動ブレーキ制御装置である電動ブレーキシステム。
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