JP2012217251A - 回転子および永久磁石電動機 - Google Patents

回転子および永久磁石電動機 Download PDF

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Abstract

【課題】大きな回転トルクが得られると共に、複数のスリットの打ち抜きによる製造を容易にしつつ、振動や騒音の発生し難い回転子および永久磁石電動機を得ること。
【解決手段】磁石埋め込み孔の周方向両端部にフラックスバリア12と、磁石埋め込み孔の外周側に外周部鉄心15と、両端のフラックスバリア12から周方向内側へ所定間隔の磁路を介して所定形状のスリット16,18,20とを少なくとも3個形成し、外周部鉄心15の磁極部22の一定領域はスリットの無い磁性部のみで形成し、一定領域の周方向幅をa、第1スリット16と第2スリット18の間の磁路幅をbとすると、a>bの関係にあり、第2スリットとフラックスバリア12の間の径方向外側の外周部鉄心15の外周部に外周部切欠き部28を形成し、第1スリット16と第2スリット18の周方向幅は、磁路幅bより大きく、第3スリット20以降のスリットは、径方向に細長い形状である。
【選択図】図2

Description

本発明は、回転子およびその回転子を用いた永久磁石電動機に関する。
従来、回転子鉄心に永久磁石が所定間隔で埋め込まれて形成され、各永久磁石の両端部付近にフラックスバリアが設けられた磁石埋め込み型の回転子を用いた永久磁石電動機があった。例えば、永久磁石の固定子側の表面に接触させて複数の外周部鉄心が配設され、各外周部鉄心には、各永久磁石と固定子に挟まれた領域に、各外周部鉄心を回転子の軸方向に貫通する一対の貫通孔が開設されている。一対の貫通孔は、各永久磁石と固定子の間に発生する磁力線の磁気的中心線を挟んで両側に対称に開設され、夫々が細長いスリット形状を有すると共に、固定子に向かって互いの間隔が狭まってハの字状をしている永久磁石モータが開示されている(特許文献1参照)。
また、上記以外にも、スリットの形状を周方向に細長い複数個のスリットを備えた永久磁石埋込型モータの回転子(特許文献2参照)、あるいは、永久磁石収容孔の外周部鉄心に形成され、径方向に細長く、かつ、永久磁石収容孔に沿って離隔配置された4個以上のスリット孔を備えた永久磁石電動機などが開示されている(特許文献3参照)。
特開平11−46464号公報 特開2008−187778号公報 特許第4248984号公報
上記特許文献1に記載された従来の永久磁石モータは、各外周部鉄心を回転子の軸方向に貫通する一対の貫通孔が開設され、夫々が細長いスリット形状を有し、固定子に向かって互いの間隔が狭まったハの字状をしている。この貫通孔は、外周部鉄心の中と比べて、永久磁石から出た磁束を通り難くする作用がある。このため、ハの字状の貫通孔を設けることで、磁束を外周部鉄心の中央部に集中させることが可能となり、回転子の回転トルクを大きくすることができる。しかしながら、特許文献1に示すように誘起電圧波形は、2つの山があって正弦波のようになだらかな曲線が得られず、誘起電圧に高調波成分を含むことから、回転子の回転時において振動や騒音が出やすいという問題があった。
一方、特許文献2または3に記載された電動機の回転子には、各外周部鉄心に複数のスリット(貫通孔)が形成されている。特許文献2の回転子は、複数のスリットが周方向に細長く形成されており、各スリット間の間隔を磁極中心から極間部に向けて徐々に小さくすることで、誘起電圧波形が正弦波に近づくように外周部鉄心の磁束分布の改善を行っている。また、特許文献3の回転子は、複数のスリットが径方向に細長く形成されており、スリット孔の径方向外周端のピッチを略等しくすると共に、スリット孔の径方向内側端のピッチを正弦波の高さに比例させることにより、誘起電圧波形が正弦波に近づくように外周部鉄心の磁束分布の改善を行っている。このように、特許文献2または3では、振動や騒音の出にくい電動機の回転子とすることができる。しかしながら、特許文献2または3の回転子は、各外周部鉄心の径方向に複数のスリットを連続して配置しているため、磁極の中心付近のスリットにより永久磁石から出る磁束を外周部鉄心の中央部に集中させることが難しく、大きな回転トルクが得られないという問題があった。
さらに、特許文献1〜3のスリットの幅は、スリット周辺の磁性部の幅(磁路の幅)よりも小さく形成されているため、磁束がスリットを横切る磁束の漏洩現象が生じ易くなり、スリットによる磁束分布の改善を十分に行うことができないという問題があった。
そこで、スリットの周方向幅を大きくすることにより漏洩磁束を少なくできるが、スリット間の磁路の幅を小さくしつつ、幅の大きなスリットを複数打ち抜くには高度の加工技術が必要となるため、容易に製造することができないという問題があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、回転子の回転時において大きな回転トルクが得られると共に、複数のスリットの打ち抜きによる製造を容易にしつつ、誘起電圧波形を正弦波に近づけることにより、振動や騒音の発生し難い回転子および永久磁石電動機を得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、磁性体により円柱状に形成され、板状の永久磁石が埋め込まれる磁石埋め込み孔が環状に所定間隔で形成された回転子であって、前記磁石埋め込み孔に埋め込まれた永久磁石と、前記磁石埋め込み孔の周方向両端部に形成された磁束短絡防止用の非磁性部と、前記磁石埋め込み孔の外周側に形成された外周部鉄心と、前記外周部鉄心の両端の前記非磁性部から周方向内側へ所定間隔の磁性部からなる磁路を介して所定形状の貫通孔がそれぞれ少なくとも3個形成されたスリットと、を備え、前記外周部鉄心の磁極部中央の一定領域は前記スリットの無い磁性部のみで形成され、前記スリットのうち、前記外周部鉄心の磁極部寄りのスリットを第1スリットとし、順次前記極間部方向へ第2スリットと第3スリットが形成され、前記一定領域の磁性部の周方向幅をa、前記第1スリットと第2スリットとの間の前記磁路の幅をbとし前記第1スリットから径方向外側の前記磁路の幅をb’とし、前記第2スリットと前記第3スリットとの間の周方向の磁路幅をcとし、前記第2スリットと前記非磁性部との間の径方向外側の前記外周部鉄心の外周部を切り欠いた外周部切欠き部が形成され、前記第1スリットと前記第2スリットの周方向幅は、前記磁路の幅bよりも大きく、第3スリットのスリット形状は、径方向に細長い形状をしていると共に、前記第3スリットと前記非磁性部との間の周方向の磁路の幅をdとした場合に、a>c>b+b’>dの関係にあることを特徴とする。
また、本発明は、前記回転子と、前記回転子が内部に配置され、環状のヨーク部から内方に延びるティース部のティース先端面が、前記回転子の前記磁極部又は前記極間部の少なくとも1つと同一距離を隔てて対向する集中巻の固定子と、を備えていることを特徴とする。
また、本発明は、前記回転子の前記外周部鉄心の磁極部中央に形成される前記磁性部のみで形成される一定領域の周方向幅は、対向する前記固定子の前記ティース部の周方向幅よりも広く、前記ティース先端面の周方向幅よりも狭いことが好ましい。
本発明によれば、回転子の回転時において大きな回転トルクが得られると共に、複数のスリットの打ち抜きによる製造を容易にしつつ、誘起電圧波形を正弦波に近づけることにより、振動や騒音の発生し難い回転子および永久磁石電動機を得られるという効果を奏する。
図1は、本発明の実施例1にかかる回転子の構成を示す平面図である。 図2は、図1の回転子の外周部鉄心部分の拡大図である。 図3は、実施例1の回転子が永久磁石電動機の固定子内で回転する際に発生する磁束線図である。 図4は、図1の回転子の回転時における誘起電圧波形図である。 図5は、図1の回転子の回転時における誘起電圧高調波成分を示す図である。 図6は、実施例1の回転子と比較する比較例の回転子の平面図である。 図7は、図6の比較例の回転子の外周部鉄心部分の拡大図である。 図8は、図6の比較例の回転子が永久磁石電動機の固定子内で回転する際に発生する磁束線図である。 図9は、図6の比較例の回転子の回転時における誘起電圧波形図である。 図10は、図6の比較例の回転子の回転時における誘起電圧高調波成分を示す図である。
以下に、本発明にかかる回転子および永久磁石電動機の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
図1は、本発明の実施例1にかかる回転子の構成を示す平面図であり、図2は、図1の回転子の外周部鉄心部分の拡大図であり、図3は、実施例1の回転子が永久磁石電動機の固定子内で回転する際に発生する磁束線図であり、図4は、図1の回転子の回転時における誘起電圧波形図であり、図5は、図1の回転子の回転時における誘起電圧高調波成分を示す図である。
図1に示すように、実施例1の回転子10は、薄い珪素鋼板(磁性体)を多数積層して円柱状に形成され、この回転子10の中心には、回転子軸26が挿通されて固定される。
6枚の板状の永久磁石14は、回転子軸26を中心とする6角形の各辺を成すように、回転子10の外周寄りに、環状に所定間隔で形成された磁石埋め込み孔に埋め込まれて形成されている。そして、回転子10の磁石埋め込み孔の周方向両端部には、磁束の短絡を防止するための非磁性部としてのフラックスバリア12が、回転子10の外周に向かって形成されている。磁石埋め込み孔の永久磁石14とフラックスバリア12とで囲まれた回転子10の外周側は、外周部鉄心15であり、その中央が磁極部22で、両端のフラックスバリア12同士が隣接する部分が極間部24となる。実施例1の回転子10の特徴的な構成は、この外周部鉄心15の両端のフラックスバリア12から周方向内側へ所定間隔の磁性部からなる磁路を介して所定形状のスリット16,18,20それぞれ少なくとも3個形成されている点にある。
図2に示すように、実施例1の回転子10の外周部鉄心15の構造は、外周部鉄心15の両端に設けられたフラックスバリア12から周方向内側へ所定間隔の磁性部からなる磁路d,c,bを介して所定形状のスリット20,18,16がそれぞれ少なくとも3個形成されている。外周部鉄心15の磁極部22中央の一定領域は、磁路幅aで示したスリットの無い磁性部のみで形成され、外周部鉄心15の磁極部22寄りのスリット16を第1スリットとし、スリット18を第2スリットとし、スリット20を第3スリットとする。そして、スリット16(第1スリット)とスリット18(第2スリット)との間を磁路幅bとすると、磁路幅aと磁路幅bとの関係は、a>bの関係にある。外周部鉄心15の磁極部22中央の磁路幅aで示した一定領域は、スリットの無い磁性部のみで形成され、両端側にスリットを設けると共に、スリット16とスリット18との間の磁路幅bを磁路幅aよりも小さくすることにより、両端側の磁束を通り難くし、磁極部22の中央に磁束を集中させることで、回転子の回転トルクを大きくして、モータ効率を向上させるものである。
続いて、図2に示すように、スリット16(第1スリット)とスリット18(第2スリット)の周方向幅は、磁路幅bよりも大きく形成されている。これは、磁束がスリットを横切って磁路以外の所を通って漏洩するのを防止し、スリット間に設けられた磁路に磁束を導くことによって、磁束分布を改善するようにしたものである。磁束分布を改善するには、図4に示すように、誘起電圧波形をより滑らかな正弦波に近づけるようにするため、外周部鉄心15の磁極部22中央に磁束を集中させ、両端の極間部24に行くに従って磁束を通り難くして、磁束の量を少なくする。このため、本来ならばスリット18(第2スリット)に続くスリット20(第3スリット)は、磁路幅c(図2の磁路幅cは、磁路幅が最も大きくなる外周側の磁路幅とする)が磁路幅bよりも小さく、磁路幅dが磁路幅cよりもさらに小さくなるように、複数のスリット16,18,20を打ち抜いて製造する必要がある。しかしながら、幅の大きな複数のスリットを細い磁路を残して打ち抜くためには、高度な加工技術が必要となり、容易に製造することができない。
そこで、本実施例1では、磁路幅cを大きくしつつ、スリット18(第2スリット)とフラックスバリア12との間の径方向外側の外周部鉄心15には、外周部鉄心15の外周部を切り欠いた外周部切欠き部28を形成している。回転子10の外周部鉄心15の外周部は、図3に示すように、回転子10が内部に配置された固定子36の環状のヨーク部34から内方に延びるティース部32のティース先端面40に対して、一定の距離(いわゆるエアギャップ)を隔てて対向配置されている。このため、外周部鉄心15に形成された外周部切欠き部28は、空気層として作用する。つまり、外周部切欠き部28が形成された領域では、切欠きの深さに応じて永久磁石14から出た磁束を通り難くすることができるので、スリット20を径方向に細長い形状とし、磁路幅cを大きくとることによって、スリットの打ち抜きを容易に行いつつ、誘起電圧波形を正弦波に近づけることが可能となる。なお、切欠きの深さは、ティース先端面40と外周部鉄心15とのエアギャップよりも小さい方が好ましい。エアギャップ以上に切欠くと磁束の流れが極端に悪くなるからである。
このように、本実施例1では、外周部鉄心15の磁極部22の中央から両端のフラックスバリア12に行くに従って、磁束の量が徐々に絞られるように磁束分布を改善するため、スリット間の磁路幅を段階的に小さくしていくのではなく、外周部切欠き部28を併用することで、フラックスバリア12に近いスリットの磁路幅に余裕を持たせることが可能となる。本来ならば、図2に示すスリット16と隣接するスリット18との間の磁路幅bとし、スリット16の径方向の外側端と外周部鉄心15の外周部との間の磁路幅b’とし、スリット18と隣接するスリット20との間の磁路幅cとした場合に、c<b+b’とする必要がある。これは、図2の破線矢印で示した磁束線Aに見られるように、スリット16の磁路幅bを通る磁束に、磁極部22を通る磁束の一部がスリット16の外周部の磁路幅b’を通って外周部に回り込んで合流する特性を有しているため、各磁路幅の関係式はc<b+b’となる。しかし、本実施例1では、外周部切欠き部28を併用することによって、c>b+b’とすることが可能となり、外周部鉄心15の両端のフラックスバリア12近傍にスリットを形成する場合であっても、磁路幅に余裕を持って打ち抜きできることから、容易に製造が可能となる。なお、磁路幅aは、他のいずれの磁路幅よりも大きく設定されるため、a>c>b+b’となる。
また、スリット20(第3スリット)とフラックスバリア12との間の磁路幅dは、外周部鉄心15の磁極部22の中央から両端のフラックスバリア12に行くに従って、磁束の量が徐々に絞られて、磁路幅dでの磁束量が他の磁路幅における磁束量よりも少なくなる必要があるため、a>c>b+b’>dとなる。
このように構成された実施例1の回転子10は、図3に示すように、外周部鉄心の永久磁石14からの磁束を外周部鉄心15の中央側(磁極部22)に集中させることができる。固定子36側のティース部32を通った磁束は、ヨーク部34を経由して、隣の外周部鉄心に効率良く通すことができる。例えば、図3に示した磁束Bのように、回転子10のスリット16の磁極部22側近傍を通った磁束Bは、ティース部32を通りヨーク部34を経由して確実に戻っていることがわかる。このため、実施例1の回転子10は、磁極部22を通る磁束量を増やすことができ、回転子10の回転時における回転トルクを大きくすることができる。
また、実施例1の回転子10は、外周部鉄心15の両端のフラックスバリア12付近にスリット16,18,20を形成したため、磁束を磁極部22に集中させるだけでなく、永久磁石14の端部からの磁束の量を両端側にかけて小さくなるようにすることが可能となる。すなわち、回転子10の回転時における誘起電圧波形は、図4に示すように、理想的な正弦波に近い滑らかな曲線が得られることがわかる。さらに、フラックスバリア12近傍のスリット20の周方向幅を小さくして、磁路幅をc>b+b’の関係とすることにより、スリットの打ち抜き製造を容易に行うことができる。
さらに、縦軸が誘起電圧高調波で、横軸が次数を示す図5のフーリエ変換グラフによれば、図1に示す回転子は、1次の高調波成分に比べて、5次、7次、11次、13次の高調波成分が非常に低い値となっており、高調波成分と共にコギングトルクを十分に低減できていることから、回転子10の回転時における振動や騒音を低減することができると共に、鉄損による効率低下を改善することができる。
[実施例1と比較例との比較]
以下では、本実施例1における回転子の効果を検証するため、実施例1の回転子11に外周部切欠き部28が形成されていない比較例を作成し、その効果を比較することにする。
図6は、実施例1の回転子と比較する比較例の回転子の平面図であり、図7は、図6の比較例の回転子の外周部鉄心部分の拡大図であり、図8は、図6の比較例の回転子が永久磁石電動機の固定子内で回転する際に発生する磁束線図であり、図9は、図6の比較例の回転子の回転時における誘起電圧波形図であり、図10は、図6の比較例の回転子の回転時における誘起電圧高調波成分を示す図である。
実施例1の比較例として作成した回転子11は、図6に示すように、図1の外周部鉄心15に形成された外周部切欠き部28が形成されていない点のみが異なる。それ以外の構成については、実施例1の回転子10と同じであるため、重複説明を省略する。
図6の外周部鉄心部分の拡大図である図7に示すように、第1〜第3スリットに相当するスリット16,18,20については、形状および配置が図2に示した実施例1の回転子10と同じであるため、磁路幅a,b,b‘,c,dについても全く同様である。
このように構成された図7の比較例の回転子11を永久磁石電動機の固定子内で回転する際に発生する磁束線図は、図8に示すように、フラックスバリア12付近の磁束が絞りきれていないため、aの磁束量が低下すると共に、磁束が両端側にも分散していることがわかる。これを詳細に見ると、スリット16を磁束が短絡し、スリット16の磁極部22側近傍を通った磁束Dが固定子36側のティース部32を通らずにスロット38内を短絡した後、ヨーク部34を通らずに戻っている。このように、比較例の場合は、スリット20が径方向に細長く、スリット18との間の磁路幅cが大きく開いているため、磁束が磁路幅cを通りやすくなり、磁路幅a,bを通過するはずの磁束が磁路幅b,c側を通過することで、aを通過する磁束の量が減ることから、回転子11の回転時における回転トルクが回転子10の時よりも小さくなっていることがわかる。つまり、比較例では、実施例1のように、スリット18とフラックスバリア12との間に外周部切欠き部28が形成されていないため、磁路幅c,dを通過する磁束を絞ることができず、外周部鉄心15の中央側に磁束を集中させて、両端側にかけて磁束が減っていくように制御することはできない。
また、縦軸が誘起電圧で、横軸が電気角を示す図9の回転子11の回転時における誘起電圧波形を見ると、図4の回転子10の回転時における誘起電圧波形と異なり、正弦波からかけ離れている上、ゼロクロス点での線が寝ているため、誤検出の可能性がある。
さらに、縦軸が誘起電圧高調波で、横軸が次数を示す図10のフーリエ変換グラフを見ると、1次の高調波成分に比べて、5次、7次、11次、13次の高調波成分が、実施例1のフーリエ変換グラフである図5よりも明らかに増大していることがわかる。これは、磁路幅c,dの磁束量が増えるため、磁路幅a,b,b’を流れる磁束の量も変化してしまい、外周部鉄心15の磁束の量が両端側にかけて少なくならないことによる。このため、実施例1の外周部切欠き部28を形成することなく、磁路幅cを増大させ、スリット20を径方向に細長い形状に変えて、スリットを打ち抜きやすくすると、高調波成分とコギングトルクが増大し、回転子11の回転時における振動や騒音が増大し、鉄損による効率が低下することがわかる。
このように、実施例1の回転子10によれば、外周部鉄心15の磁極部22の中央の一定領域が磁性部のみで構成され、この領域にはスリットを形成しないようにしたため、磁束を磁極部22に集中させることが可能となり、その分磁極部22を通る磁束量を増やすことができ、回転子10の回転時における回転トルクを大きくすることができる。
また、実施例1の回転子10によれば、スリット18とフラックスバリア12との間の外周部鉄心15の外周部に外周部切欠き部28を形成し、磁路幅cを増大させて、スリット20を径方向に細長い形状に変えることで、スリットの打ち抜き加工が容易に行えるようになると共に、外周部鉄心15の中央側に磁束を集中させて、両端側にかけて磁束が減っていくように制御することができるため、従来例や比較例と比べて高調波成分やコギングトルクを低減できることから、トルクリップルを低減することができ、回転子10の回転時における振動や騒音を低減することができる。
なお、実施例1では、外周部鉄心15の両端にそれぞれ第1〜第3スリットであるスリット16,18,20を形成した例で説明したが、回転子の大きさに応じて4個以上のスリットを形成する場合であっても良い。
また、実施例1では、外周部切欠き部28を設けることで磁路幅を大きくとって、スリットの打ち抜き加工を容易にしているが、磁路幅を設定するにあたって、少なくとも板厚以上の磁路幅を確保することにより、スリットの打ち抜き加工が確実に行えるようにすることが望ましい。
なお、上記実施例1における回転子は、外周部鉄心15の磁極部22の中央の一定領域が磁性部のみで形成されており、この部分にはスリットを形成しないことを特徴としている。この一定領域の好ましい幅(両端のスリット16の距離)は、外周部鉄心の磁極部から出た磁束がそのままティース部32に入るだけの幅が最低限必要になるため、図3に示すティース幅42よりも広く、また、ティース先端面40よりも広くしても磁束がティース部32に入って行かないため、ティース先端面40の周方向幅よりも狭い範囲内で設定するようにする。
以上のように構成された回転子は、永久磁石電動機の固定子内に組み込まれ、180度正弦波通電で駆動する場合に、誘起電圧の高調波成分を低減することで、トルクリップルが低減され、回転時における振動や騒音を低減すると共に、鉄損の低減効果により高い効率の永久磁石電動機とすることができる。また、120度矩形波通電で駆動する場合は、誘起電圧の高調波成分を低減することで、ゼロクロスポイントの検知が容易になり、誤検知を抑制することができる永久磁石電動機とすることができる。
以上のように、本発明にかかる電動機は、効率が良く、大きいトルクが必要なコンプレッサー用のモータ等に用いられる回転子および永久磁石電動機として有用である。
10、11 回転子
12 フラックスバリア(非磁性部)
14 永久磁石
15 外周部鉄心
16、18、20 スリット
22 磁極部
24 極間部
26 回転子軸
28 外周部切欠き部
32 ティース部
34 ヨーク部
36 固定子
38 スロット
40 ティース先端面
42 ティース幅
a、b、b’、c、d 磁路幅



















Claims (3)

  1. 磁性体により円柱状に形成され、板状の永久磁石が埋め込まれる磁石埋め込み孔が環状に所定間隔で形成された回転子であって、
    前記磁石埋め込み孔に埋め込まれた永久磁石と、
    前記磁石埋め込み孔の周方向両端部に形成された磁束短絡防止用の非磁性部と、
    前記磁石埋め込み孔の外周側に形成された外周部鉄心と、
    前記外周部鉄心の両端の前記非磁性部から周方向内側へ所定間隔の磁性部からなる磁路を介して所定形状の貫通孔がそれぞれ少なくとも3個形成されたスリットと、
    を備え、
    前記外周部鉄心の磁極部中央の一定領域は前記スリットの無い磁性部のみで形成され、前記スリットのうち、前記外周部鉄心の磁極部寄りのスリットを第1スリットとし、順次前記極間部方向へ第2スリットと第3スリットが形成され、前記一定領域の磁性部の周方向幅をa、前記第1スリットと第2スリットとの間の前記磁路の幅をbとし
    前記第1スリットから径方向外側の前記磁路の幅をb’とし、前記第2スリットと前記第3スリットとの間の周方向の磁路幅をcとし、
    前記第2スリットと前記非磁性部との間の径方向外側の前記外周部鉄心の外周部を切り欠いた外周部切欠き部が形成され、前記第1スリットと前記第2スリットの周方向幅は、前記磁路の幅bよりも大きく、第3スリットのスリット形状は、径方向に細長い形状をしていると共に、
    前記第3スリットと前記非磁性部との間の周方向の磁路の幅をdとした場合に、次式(1)の関係にあることを特徴とする回転子。
    a>c>b+b’>d ……(1)
  2. 請求項1に記載の回転子と、
    前記回転子が内部に配置され、環状のヨーク部から内方に延びるティース部のティース先端面が、前記回転子の前記磁極部又は前記極間部の少なくとも1つと同一距離を隔てて対向する集中巻の固定子と、
    を備えていることを特徴とする永久磁石電動機。
  3. 前記回転子の前記外周部鉄心の磁極部中央に形成される前記磁性部のみで形成される一定領域の周方向幅は、対向する前記固定子の前記ティース部の周方向幅よりも広く、前記ティース先端面の周方向幅よりも狭いことを特徴とする請求項2に記載の永久磁石電動機。















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