JP2012214597A - エチレンイミン重合体およびその製造方法 - Google Patents

エチレンイミン重合体およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】悪臭や刺激臭がなく、さらには分子量分布の狭い工業的に要求される品質基準に適合した高純度エチレンイミン重合体を提供する。
【解決手段】エチレンイミンを重合してエチレンイミン重合体を製造する際に、重合中の反応溶液の温度と、かつ重合中の反応熱を除去する熱媒の温度を特定の範囲に維持しながら重合し、さらに熟成を特定の範囲に維持しながら行うことを特徴とするエチレンイミン重合体の製造方法により達成される。
【選択図】 なし

Description

本発明は、エチレンイミン重合体およびその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、エチレンイミンを開環重合させるエチレンイミン重合体の製造方法、並びに、エチレンイミン重合体に関するものである。
エチレンイミン重合体は紙加工剤、接着剤、粘着剤、塗料、インキ、繊維処理剤、凝集分離剤、化粧品、トイレタリー、分散剤などの分野で幅広く利用され、一般に、主鎖に二級アミンを有するポリマーであるエチレンイミン重合体は、エチレンイミンを塩酸や硫酸等の酸触媒の存在下で開環重合することにより製造されている。特許文献1には、酸触媒とエチレンジアミン中にエチレンイミンを滴下し、重合する際に、アミンとエチレンイミンのモル比を変えることによって重合体の分子量を制御することが開示されている。特許文献2には、エチレンイミンをポリメタロオキソ酸塩の存在下で重合させることにより、分岐の少ないエチレンイミン重合体、具体的には、分岐度が0を越え、30%以下であるエチレンイミン重合体を製造することができることを開示している。特許文献3エチレンイミンを溶剤中で触媒の存在下で温度少なくとも80℃で、均一液相中で、内径に対する長さの比が少なくとも5である管型反応器中で重合することによる、エチレンイミンのホモポリマーの連続的な製造方法。第二級窒素原子40〜60%を含有しておりかつMw/Mn比1.5〜3を有するエチレンイミン重合体が得られることを開示している。特許文献4は、モノエタノールアミンを触媒の存在下に分子内脱水反応させて得られる粗エチレンイミンを有効量の酸触媒、例えば塩酸の存在下に0〜200℃で反応することによりエチレンイミン重合体が得られることが開示されている。
一方、いずれのエチレンイミン重合体においても毒性や刺激性の強いエチレンイミンやエチレンジアミンが未反応のまま含まれ、また特許文献4に開示のエチレンイミン重合体には副生成物として、アンモニア、メチルアミンおよびエチルアミン等の軽質アミン類、アセトニトリル、さらにはアセトアルデヒドなどのケトン類、アセトアルデヒドと原料のモノエタノールアミンとが反応して生成するシッフ塩基などが含まれる。そのためエチレンイミン重合体中の不純物を除去する方法も検討されている。例えば、特許文献5には変性ポリアミンを98℃で加熱し、さらに窒素ガスを吹き込みながら約160℃に加熱することにより悪臭を除去する方法が開示され、特許文献6には、エチレンイミン重合体中に存在する不純物または未反応のエチレンイミンを簡便な精製操作に供して、工業的に要求される品質基準に適合した高純度エチレンイミン重合体(エチレンイミン重合体)を得ることが示されている。
しかしながら、不純物が除去された高純度エチレンイミン重合体であっても悪臭や刺激臭、特にアンモニア臭やアミン臭があることから、その刺激臭がエチレンイミン重合体を取り扱う者に不快感を与え、食品用の包装フィルム用や洗剤用原料などに関連する用途によってはエチレンイミン重合体の使用制限を受けることがあった。そのため作業環境を改善するためにエチレンイミン重合体の製法については改良の余地があった。
特公昭49−33120号公報 特開平11−158271号公報 特表2000−501757号公報 特開2001−213958号公報 特表平11−514024号公報 特開2001−261820号公報
前記問題点に鑑み、本発明は、刺激臭の少ないエチレンイミン重合体、さらには工業的に要求される品質基準に適合した高純度エチレンイミン重合体を提供することを課題としている。さらに本発明は、その高純度エチレンイミン重合体の製造方法を提供することを目的としている。
本発明者らの研究によれば、前記課題は下記発明により達成できることがわかった。
(1)エチレンイミンを重合してエチレンイミン重合体の製造方法であって、反応溶液温度が80〜160℃になるようにエチレンイミンを重合させ、かつ重合中の反応熱を除去する熱媒の温度を40℃以上で行うことを特徴とするエチレンイミン重合体の製造方法。
(2)重合反応後に80〜160℃の温度で熟成することを特徴とする(1)記載のエチレンイミン重合体の製造方法。
(3)反応溶液温度が110〜130℃になるようにエチレンイミンを重合させ、次いで110〜130℃の温度で熟成することを特徴とする(1)または(2)記載のエチレンイミン重合体の製造方法。
(4)(1)から(3)のいずれかに記載の重合を反応液の最終液量(m)当りの撹拌動力(kW)の比率(PV値=撹拌動力/最終液量)が5kW/m以上であることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載のエチレンイミン重合体の製造方法。
(5)エチレンイミンを重合して得られたエチレンイミン重合体を下記(A)〜(C)のいずれかの操作で処理することを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載のエチレンイミン重合体の製造方法。
A:エチレンイミン重合体中に不活性ガスをバブリングする。
B:エチレンイミン重合体に水を添加、混合した後、水を蒸発除去する。
C:エチレンイミン重合体に水を添加、混合した後、水を蒸発除去するとともに、エチレンイミン重合体に不活性ガスをバブリングする。
(6)臭気度が500ppm以下であることを特徴とするエチレンイミン重合体。(ここで、臭気度とは分析用の管を取り付けた1000mlの密閉容器にエチレンイミン重合体100gを充填し、その容器を60℃の水浴槽中で30分保持した後に、容器内の空間部分のガス濃度をアンモニア用ガス検知管で分析用の管を通して測定した値をいう。)
本発明によれば、反応後に残存ずる未反応エチレンイミン量を抑制できるので、アンモニア臭、アミン臭がない高純度エチレンイミン重合体を製造することができる。さらに、本発明の高純度エチレンイミン重合体は分子量分布の狭いエチレンイミン重合体でもある。
本発明にかかるエチレンイミン重合体の製造方法は、エチレンイミンを重合する際に、反応溶液温度が80〜160℃になるようにエチレンイミンを重合させ、かつ重合中の反応熱除去する熱媒の温度を40℃以上で行うエチレンイミン重合体の製造方法である。また、本発明にかかる高純度エチレンイミン重合体は、臭気度が500ppm以下であるエチレンイミン重合体である。
本発明に用いるエチレンイミンには特に制限はなく、例えば、液相でハロゲン化エチルアミンを濃アルカリにより分子内閉環する方法、モノエタノールアミン硫酸エステルを熱濃アルカリにより分子内閉環する方法(以下、液相法ともいう)、あるいはモノエタノールアミンを触媒的気相分子内脱水反応させる方法(以下、気相法ともいう)により得られるエチレンイミンを用いることができる。
気相法により得られるエチレンイミン原料としては、モノエタノールアミンの触媒的分子内脱水反応により得られるエチレンイミン含有反応混合物を簡単な蒸留操作に供して回収した粗エチレンイミンを重合用の原料とすることができる(特許文献4参照)。粗エチレンイミンを重合する場合は、エチレンイミン重合体(以下、粗エチレンイミン重合体ということもある。)を簡便な精製操作に供して、工業的に要求される品質基準に適合した高純度ポリエチレンイミンを得ることができる(特許文献6参照)。
前記エチレンイミン含有反応混合物を高度に精製して得られる精製エチレンイミンもエチレンイミン重合体合成の原料として利用することができる。この場合、前記エチレンイミン含有反応混合物中には、目的物のエチレンイミンのほかに、未反応のモノエタノールアミンや、エチレンイミンのオリゴマー、アセトアルデヒドなどのケトン類、アセトアルデヒドと原料のモノエタノールアミンとが反応して生成するシッフ塩基などの重質不純物や、アンモニア、メチルアミンおよびエチルアミンの軽質アミン類、アセトニトリルなどの軽質不純物が含まれているので、これら不純物を高度の精製工程を経て除去し、しかる後に得られる精製エチレンイミンを重合反応に供するのである。
高度の精製工程を経て得られる精製エチレンイミンを用いてエチレンイミン重合体を製造する技術は、高度の精製工程の実施にともなう生産コストのアップを免れず、工業的に有利とはいえないため、粗エチレンイミンがエチレンイミン原料として好適に用いられる。
重合触媒としては、エチレンイミンの重合に一般に用いられているものを使用でき、無機酸、有機酸、炭酸ガス又はルイス酸が適当である。無機酸としては、例えば塩酸、硫酸、臭化水素酸、燐酸、有機酸としては、例えばP−トルエンスルホン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ルイス酸としては塩化アルミニウム等があげられ、特に酢酸、塩酸、硫酸、炭酸ガスが好適に用いられる。触媒量としては、反応を調整可能な速度で製造するためにはエチレンイミンに対して、0.1〜1質量%とするのが好適である。
本発明においては、重合の基点となるベースアミンとして特許文献1記載の制御された分子量のエチレンイミン重合体を得るために1級アミン、2級アミン有する化合物が使用される。ベースアミンの分子量としては31〜1000の範囲のものを使用でき、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エタノールアミン等が好適に用いられる。ベースアミン使用量は目的とするエチレンイミン重合体の分子量により適宜選択できるが、低分子のエチレンイミン重合体を得る場合はベースアミンの比率を高くし、高分子のエチレンイミン重合体を得る場合はベースアミンの比率を低くするのが良、最終エチレンイミン重合体の重量に対し1質量%〜40質量%の範囲で使用するのが好ましい。このベースアミンは反応容器内に仕込まれ重合開始の際の溶剤としての役割を有することもある。
本発明において、エチレンイミンを重合する際の反応溶液温度としては80〜160℃、好ましくは110〜130℃で行われる。160℃を超える温度では、品質の安定したエチレンイミン重合体を得ることができない。なお、あまり低い温度では、重合時間が長くなって経済的でない。
本発明において、反応熱を除去するために用いる熱媒の温度は40℃以上に維持しながら重合を行うのが良い。好ましくは45℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上である。前記熱媒の温度を維持することにより、エチレンイミンの反応中に反応溶液が局部的に高粘度になることが抑制され、高効率の撹拌により局部滞留がなく均一な重合をさせることができるため、エチレンイミンの反応が均一かつ効率的に行うことができるようになる。熱媒としては、温水、水蒸気または加熱したオイル等が使用でき、工業的には温水および水蒸気が好適に用いられる。
本発明において熟成とは、エチレンイミンの重合終了後、好ましくは供給したエチレンイミンの95%以上が消費された後の重合のことを表し、反応液を800〜160℃、好ましくは110〜130℃で熟成させる。100℃より低い温度では、熟成に長時間を要する。また、150℃より高い温度では、生成したエチレンイミン重合体の熱分解が起こり、高品質の重合体が得られないこともある。熟成時間は、通常、1〜20時間であり、好ましくは2〜10時間である。
重合反応は常圧、加圧のいずれでもよく、通常、0〜10MPaG、好ましくは0〜2MPaGで行う。反応液の熟成は、通常、0〜10MPaG、好ましくは0〜2MPaGで行う。
重合反応および熟成処理は、回分式(バッチ式)、半回分式、連続流通式などいずれの反応形式によっても行うことができる。連続流通式のように連続的にエチレンイミン重合体を製造する場合は管型反応器等が用いられ、回分式反応の場合は反応器等が使用される。本発明に用いる反応器としては、温度計、撹拌機、冷却装置等を備えた円筒型反応器が好適に用いられる。
回分式反応の場合、重合反応の際に、重合物の粘度が高くなるため、除熱、拡散、反応促進のため撹拌機として、工業的にはパドル翼や高粘度用撹拌翼、例えばマックスブレンド翼(住友重機械工業(株)製)などが用いられ、好適にはマックスブレンド翼である。また重合により発生した反応熱を除去できるように熱媒を流すための冷却装置が付いた反応器、例えば外部ジャケット付反応器などが好適に用いられる。ジャケット式除熱の効率化を図るため縦チューブ型冷却器を用いることもでき、エチレンイミンを還流下で重合するのが好適である。
本発明においては、反応液の最終液量(m)当りの撹拌動力(kW)で表わされる値、すなわちPV値(撹拌動力/最終液量)を5kW/m以上で行うのが良く、好ましくは、8kW/m以上が好ましい。尚15kW/m超えるとエネルギーコストが高くなり経済的でない。
本発明の製法において好ましい形態は、得られたエチレンイミン重合体をさらに前記(A)〜(C)のいずれかの操作で処理して精製する工程を含む形態である。以下、(A)〜(C)の操作について説明する。
操作(A)は、エチレンイミン重合体中に不活性ガスをバブリングするものである。具体的には、例えば、重合反応終了後、反応器内の重合体中に不活性ガスをバブリングする。不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスなどのアミンに対し不活性なガスが用いられるが、経済的な面から窒素ガスが好適に用いられる。バブリングする際の重合体の温度は150℃を超えないようにするのがよく、110〜130℃の範囲に保持するのが好ましい。不活性ガスの量は、重合体1kg当り、通常、0.01〜10Nl/minであり、好ましくは0.1〜2Nl/minである。バブリング時間は、通常、0.5〜100時間であり、好ましくは1〜20時間である。操作は常圧または減圧下のいずれでもよく、減圧下で行う場合、好ましい反応器内圧力は10〜700mmHgである。操作(A)により、気相法で得られた粗エチレンイミン原料を使用する場合は軽質アミン類、アセトニトリルなどの含有量がいずれも1ppm以下の高純度エチレンイミン重合体が得られる。
操作(B)は、エチレンイミン重合体に水を添加、混合した後、混合物を加熱して水を蒸発除去するものである。具体的には、例えば、重合反応終了後、反応器内の重合体に水を添加して、よく混合した後、この混合物を加熱して水を蒸発除去する。水の添加量は、通常、重合体の1〜95質量%であり、好ましくは5〜30質量%である。水の蒸発除去に際しては、重合体の温度が160℃ を超えないようにするのがよく、100〜150℃の範囲に保持するのが好ましい。操作は常圧または減圧下のいずれでもよく、減圧下で行う場合、好ましい反応器内圧力は10〜700mmHgである。添加した水の15質量%以上を蒸発除去することにより、気相法で得られた粗エチレンイミン原料を使用する場合は軽質アミン類、アセトニトリルなどの含有量がいずれも1ppm以下の高純度エチレンイミン重合体が得られる。
操作(C)は操作(A)と操作(B)とを組み合わせたものであり、より短い操作時間で高純度エチレンイミン重合体を得ることができる。具体的には、例えば、反応終了後、反応器内の重合体に水を添加し、この混合物中に不活性ガスをバブリングしながら、水を蒸発除去する。
本発明の方法によって得られるエチレンイミン重合体は、臭気度が500ppm以下のエチレンイミン重合体である。好ましくは、400ppm以下、より好ましくは300ppm以下である。臭気度が500ppmを超えるとアンモニア臭、アミン臭を感じ、1000ppmを超えると作業環境によっては不快感が生じる場合がある。ここで、臭気度は実施例に記載の方法により定義される指標である。
本発明の方法によれば分子量分布の狭いエチレンイミン重合体が得られ、分子量分布の広がり度合いを示す分散度(Mw/Mn比)は1.00から1.40(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定、プルラン換算)である。
本発明の方法によって得られるエチレンイミン重合体の樹脂分(濃度)は、通常、90〜99.9質量%である。また、エチレンイミン重合体の平均重量分子量は1,000〜1,000,000(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定、プルラン換算)である。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下ことわりのない場合、「%」は「質量%」を、「ppm」は「容積ppm」をそれぞれ示すものとする。
<臭気度の測定方法>本発明において臭気度(ppm)とは、次の方法により測定された値である。
分析用の管を取り付けた1000mlの密閉容器にエチレンイミン重合体水溶液100gを充填し、その容器を60℃の水浴槽中で30分保持した後に、容器内の空間部分のガス濃度をアンモニア用ガス検知管で分析用の管を通して測定した値をいう。前記アンモニア用ガス検知管(例えば、ガステック社製3M)の測定範囲は10〜1000ppm範囲のものを用いる。
<エチレンイミン重合体の調製>
実施例1
撹拌機、還流冷却器および温度計を備えた容積2リットルの耐圧反応器にエチレンジアミン60gおよび35%塩酸17gを仕込み、反応器を熱媒オイル温度100℃のオイル槽中に置いて加熱した。昇温後、熱媒を温水にした水槽に移し60℃の温水にてエチレンイミン1140gを反応液温度110〜130℃になるように添加した。この時の反応液温度と水浴槽の熱媒温度の差を50〜70℃に維持した。添加終了後、反応液温度110〜130℃で2時間熟成し反応を完結させた。エチレンイミン重合体中の残存エチレンイミンは1ppm以下であり、得られたエチレンイミン重合体中の臭気度は300(ppm)であった。
尚、PV値(撹拌動力/最終液量)は10kW/mで行った。
上記の方法により得られたエチレンイミン重合体1kgをオイルバス上の2リットルフラスコに仕込み、常圧にて、窒素ガスを0.2Nl/minで重合体中にバブリングして精製を行った。バブリング中、重合体の温度を120℃に維持した。5時間バブリングした後、得られた精製エチレンイミン重合体中の臭気度は100(ppm)であった。また、粘度は6150(mPa・s/25℃、B型粘度計)、平均重量分子量3610、分子量分布の広がり度合いを示す分散度(Mw/Mn比)は1.10を示した(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定、プルラン換算)。この分散度(Mw/Mn比)の値が、特許文献3に記載の範囲1.5〜3よりも小さい値となっており、予期せずして分子量分布が狭いエチレンイミン重合体が得られたことが分かった。
実施例2
水槽に移した時の温水の温度を60℃から45℃に変更した以外は実施例1同様に実施し、エチレンイミン重合体を得た。精製前後のエチレンイミン重合体の臭気度はそれぞれ500および350ppmであった。窒素ガスでバブリングした後のエチレンイミン重合体の粘度は5800(mPa・s/25℃、B型粘度計)、平均重量分子量は3550、分散度(Mw/Mn比)は1.15であった。
実施例3
PV値(撹拌動力/最終液量)を6kW/mに変更した以外は実施例1同様に実施し、エチレンイミン重合体を得た。精製前後のエチレンイミン重合体の臭気度はそれぞれ450および300ppmであった。窒素ガスでバブリングした後のエチレンイミン重合体の粘度は6300(mPa・s/25℃、B型粘度計)、平均重量分子量は3700、分散度(Mw/Mn比)は1.18であった。
比較例1
熱媒温度を35℃未満(25℃)に変更して、PV値(撹拌動力/最終液量)を2kW/mで行った以外は実施例1同様に実施し、エチレンイミン重合体を得た。精製前後のエチレンイミン重合体の臭気度はそれぞれ1000および550(ppm)であった。また、粘度は6010(mPa・s/25℃、B型粘度計)、平均重量分子量3400、分子量分布の広がり度合いを示す分散度(Mw/Mn)は1.41を示した(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定、プルラン換算)。
実施例1および比較例1の結果より、本発明の方法で製造されたエチレンイミン重合体が、臭気の少なく、分子量分布の狭いエチレンイミン重合体であることは明らかである。
本発明のエチレンイミン重合体は、紙加工剤、接着剤、粘着剤、塗料、インキ、繊維処理剤、凝集分離剤、化粧品、トイレタリー、分散剤などの分野で安全に利用することができる。

Claims (6)

  1. エチレンイミンを重合してエチレンイミン重合体の製造方法であって、反応溶液温度が80〜160℃になるようにエチレンイミンを重合させ、かつ重合中の反応熱を除去する熱媒の温度を40℃以上で行うことを特徴とするエチレンイミン重合体の製造方法。
  2. 重合反応後に80〜160℃の温度で熟成することを特徴とする請求項1記載のエチレンイミン重合体の製造方法。
  3. 反応溶液温度が110〜130℃になるようにエチレンイミンを重合させ、次いで110〜130℃の温度で熟成することを特徴とする請求項1または請求項2記載のエチレンイミン重合体の製造方法。
  4. 請求項1から請求項3のいずれかに記載の重合を反応液の最終液量(m)当りの撹拌動力(kW)の比率(PV値=撹拌動力/最終液量)が5kW/m以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のエチレンイミン重合体の製造方法。
  5. エチレンイミンを重合して得られたエチレンイミン重合体を下記(A)〜(C)のいずれかの操作で処理することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のエチレンイミン重合体の製造方法。
    A:エチレンイミン重合体中に不活性ガスをバブリングする。
    B:エチレンイミン重合体に水を添加、混合した後、水を蒸発除去する。
    C:エチレンイミン重合体に水を添加、混合した後、水を蒸発除去するとともに、エチレンイミン重合体に不活性ガスをバブリングする。
  6. 臭気度が500ppm以下であることを特徴とするエチレンイミン重合体。ここで、臭気度とは分析用の管を取り付けた1000mlの密閉容器にエチレンイミン重合体100gを充填し、その容器を60℃の水浴槽中で30分保持した後に、容器内の空間部分のガス濃度をアンモニア用ガス検知管で分析用の管を通して測定した値をいう。
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