JP2012211645A - 油圧テンショナのリークオイル排出手段 - Google Patents

油圧テンショナのリークオイル排出手段 Download PDF

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Abstract

【課題】油圧テンショナリフタのテンショナボディにプランジャが摺動可能に嵌装されて、前記テンショナボディと前記プランジャとで高圧油室が構成され、前記テンショナボディの内周面と前記プランジャの外周面との間の接触領域に、前記高圧油室内のオイルが外部へ流出できる隙間部が設けられた油圧テンショナリフタのリークオイル排出手段において、オイル排出性を高めることにより、オイル抵抗によるプランジャの摺動抵抗を低減して、プランジャの動きを円滑にする。
【解決手段】上記接触領域全体ではなく、接触領域の上流側と下流側に分け、(1)上流側隙間面積を小さくし、下流側隙間面積は上流側隙間面積より大きくすることにより、油圧調整に作用しない下流側でオイル排出性を高める。(2)油圧調整に作用しない接触領域の下流側にオイル排出溝を形成することにより、下流側のオイルの排出性を高める。
【選択図】 図4

Description

本発明は、内燃機関の動弁機構に用いられるチェーンやベルト等からなる無端伝動部材に張力を付与する油圧テンショナのリークオイル排出手段に関するものである。
自動二輪車等に搭載される内燃機関は、動弁機構のカム駆動用に無端伝動部材を有している。運転時に無端伝動部材のバタツキを防止するために、この無端伝動部材を押圧する油圧テンショナを備えている。従来例として、可撓性材料で作られたプランジャと、その内側に嵌装された中空スリーブとの間に生じる隙間によって、高圧となる内部の圧力を適正に保ち、漏出したオイルは、ハウジングに設けられた排出流路から排出するようになっている例がある(例えば、特許文献1参照。)。しかし、プランジャ外面とチャンバ壁面(プランジャ収納孔)との間の隙間に入り込んだオイルは、速やかに外部へ流出することができないので、プランジャの前進時の動きが抑制され、テンショナスリッパの動きに対する追従性が低下していた。しかしこのようなプランジャ外面とプランジャ収納孔との間の接触領域全体にわたって隙間の精度管理をしようとすると、精度管理領域が広いためコスト上昇となっていた。
特許第3594420号公報
本発明は、テンショナボディの内周面と前記プランジャの外周面との間の隙間におけるオイルの排出性を高めることにより、オイル抵抗によるプランジャの摺動抵抗を低減して、プランジャの動きを円滑にする。
本発明は上記課題を解決したものであって、請求項1に記載の発明は、
油圧テンショナ(0)のテンショナボディ(20)にプランジャ(23)が摺動可能に嵌装されて、前記テンショナボディ(20)と前記プランジャ(23)とで高圧油室(31)が構成され、前記テンショナボディ(20)の内周面と前記プランジャ(23)の外周面との間に、前記高圧油室(31)内のオイルが外部へ流出できる隙間部(40)が設けられた油圧テンショナ(0)のリークオイル排出手段において、
前記隙間部(40)のうち、上流側隙間(47)の面積より、オイルが流出する下流側隙間(48)の面積が大きいことを特徴とする油圧テンショナ(0)のリークオイル排出手段に関するものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の油圧テンショナ(0)のリークオイル排出手段において、
上流側隙間(47)寸法が最も大きく出来上がる場合の隙間寸法より、下流側隙間(48)寸法が最も小さく出来上がる場合の隙間寸法の方が大きくなるよう、内径・外径と加工公差が設定されていることを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の油圧テンショナ(0)のリークオイル排出手段において、
前記テンショナボディ(20)の下流側摺動面(42)に、オイル排出溝(51)が形成され、その上流端が前記上流側隙間(47)に到達していることを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の油圧テンショナ(0)のリークオイル排出手段において、
前記プランジャ(23)は、上流側のプランジャ大径部(44)と、下流側のプランジャ小径部(45)とからなるプランジャ段差部(46)を有し、
前記テンショナボディ(20)は、前記プランジャ(23)の上流側のプランジャ大径部(44)と対応するプランジャ収納孔大径部(41)と、前記プランジャ(23)の下流側プランジャ小径部(45)に対応するプランジャ収納孔小径部(42)とからなるプランジャ収納孔段差部(43)を有し、
前記プランジャ(23)のプランジャ段差部(46)が、前記テンショナボディ(20)のプランジャ収納孔段差部(43)に係合して、前記プランジャ(23)の抜け止め構造をなし、
前記オイル排出溝(51)は、前記プランジャ収納孔小径部(42)に形成され、オイル排出溝(51)の上流端が前記プランジャ収納孔大径部(41)に至るよう形成されることを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の油圧テンショナ(0)のリークオイル排出手段において、
前記オイル排出溝(51)を下流端側からプランジャ収納孔小径部(42)に機械加工により形成し、前記加工工具(50)の先端がプランジャ収納孔大径部(41)に至ることを特徴とするものである。
請求項6に記載の発明は、請求項3乃至請求項5の何れかに記載の油圧テンショナ(0)のリークオイル排出手段において、
前記オイル排出溝(51)は無端伝動帯(13)の移動方向を避けた位置に配置されることを特徴とするものである。
請求項7に記載の発明は、請求項3乃至請求項6の何れかに記載の油圧テンショナ(0)のリークオイル排出手段において、
油圧テンショナ(0)を車両に取付けた状態において、前記オイル排出溝(51)のオイル排出方向が水平より下向きとなるよう配置されることを特徴とするものである。
請求項8に記載の発明は、請求項3乃至請求項7の何れかに記載の油圧テンショナ(0)のリークオイル排出手段において、
前記オイル排出溝(51)は、テンショナボディ(20)のプランジャ収納孔(20a)の中心線に対して、対向する位置に対で設けられることを特徴とするものである。
請求項1の発明において、
油圧調整として設定される上流側隙間(47)面積を小さくし、下流側隙間(48)面積は上流側隙間(47)面積より大きくすることにより、油圧調整に作用しない下流側では、オイル排出性を高めることにより、オイル抵抗によるプランジャ(23)の摺動抵抗を低減して、プランジャ(23)の動きを円滑にすることが可能となる。
請求項2の発明において、
上流側隙間(47)に比して下流側隙間(48)が確実に大きくなるよう各部の内径・外径と加工公差を設定することによって、隙間の寸法管理を確実にして、下流側のオイル排出性能を高くすることが出来る。
請求項3の発明において、
摺動面下流側にオイル排出溝(51)を形成することにより、下流側でのオイルの排出性を高めることができる。
請求項4の発明において、
プランジャ大径部(44)のプランジャ段差部(46)が係合するプランジャ収納孔小径部(42)にオイル排出溝(51)をプランジャ収納孔大径部(41)に至るよう形成したので、プランジャ収納孔小径部(42)におけるオイル排出性を向上することができる。
請求項5の発明において、
前記オイル排出溝(51)を下流端側からプランジャ収納孔小径部(42)に、先端がプランジャ収納孔大径部(41)に至るよう機械加工により形成するので、容易にオイル排出溝(51)を形成することが出来る。
請求項6の発明において、
オイル排出溝(51)を、無端伝動帯(13)の移動方向を避けて配置することにより、テンショナボディ(20)が無端伝動帯(13)の移動に伴って振動する際に、オイル排出溝(51)の縁によってプランジャ小径部(45)が傷付くことが防がれる。
請求項7の発明において、
油圧テンショナ(0)を、水平下向きに車両に取付けるということであって、車両に取付けた状態において、オイルの自重による排出もあるので、オイルを良好に排出することが出来る。
請求項8の発明において、
オイル排出溝(51)を近接した位置ではなく、対向配置に離すことによって、テンショナボディ(20)の強度低下を抑えながら、オイルを良好に排出することができる。
油圧テンショナを具備した内燃機関が自動二輪車の車体フレームに取付けられた状態を示した要部右側図である。 テンショナの後面図、即ち図1のII矢視図である。 テンショナボディを後方から見た図である。 図2のIV−IV断面図であり、上記テンショナの縦断面図である。 プランジャ収納孔に挿入されるプランジャ、バルブホルダ、チェック弁、リリーフ弁、等の分解斜視図である。 圧力保持弁及びエア抜き弁の分解状態を示す図である。 図2のVII−VII断面図である。 オイル貯溜室内の圧力が上昇して、プランジャが前方へ突出した状態を示す図である。 図4の隙間部(プランジャ収納孔とプランジャの間)の部分拡大図である。 テンショナボディ20の前面図である。 図10のXI−XI断面図である。
図1は、油圧テンショナ0を具備した内燃機関3が自動二輪車の車体フレーム1に取付けられた状態を示した要部右側図である。本図では、右方が車両の前方である。図1において、油圧テンショナ0を具備した4ストロークサイクルDOHC内燃機関3は、自動二輪車に搭載され、内燃機関3は、内燃機関3からそれぞれ突出した2個のボス8を介して、自動二輪車の車体フレーム1の前部に設けられたハンガー2と、車体フレーム1の後部と、に取付けられている。
内燃機関3では、クランクケース4の上にシリンダブロック5、シリンダヘッド6およびヘッドカバー7が順次上方へ積重ねられて、ボルト等の結合手段によって一体に結合されている。内燃機関3のクランクケース4とシリンダブロック5間に挟まれた位置で、クランク軸9が回転可能に枢支されている。1対のカム軸11がシリンダヘッド6およびヘッドカバー7内でシリンダヘッド6に回転可能に枢支されている。クランク軸9と一体の駆動スプロケット10と、上記1対のカム軸11と一体の従動スプロケット12とに、無端タイミングチェン13が架渡されている。シリンダブロック5のシリンダ孔に摺動可能に嵌装されているピストンの上下動によって、クランク軸9が回転駆動され、クランク軸9の回転トルクが、駆動スプロケット10、無端タイミングチェン13および従動スプロケット12を介して、上記1対のカム軸11に伝達されて、給排気弁が開閉可能に駆動される。
上記4ストロークサイクル内燃機関3は、クランク軸9が2回転する毎に燃焼室内の燃料が燃焼し、その燃焼ガスの圧力でピストンがクランク軸9に向って間欠的に押され、また自動二輪車が走行する路面の凹凸によって走行抵抗が変化する結果、無端タイミングチェン13の緊張状態が変動して、無端タイミングチェン13が前後方向にバタツキ易い。これを防止するために、図1で右方(車両の前方)に位置する緊張側の無端タイミングチェン13に接してチェンガイド14が配設されるとともに、図1で左方(車両の後方)に位置する弛緩側の無端タイミングチェン13に接してテンショナスリッパ15が配設され、該テンショナスリッパ15の後方でこれに隣接して油圧テンショナ0がシリンダヘッド6に組付けられている。この油圧テンショナ0の特性により、弛緩側の無端タイミングチェン13のバタツキを有効に抑制することができるようになっている。
図2はテンショナ0の後面図、即ち図1のII矢視図である。油圧テンショナ0の外殻は、テンショナボディ20とキャップ21(図2、図4)とよりなっている。キャップ21には、左右1対のボルト挿通孔21aが設けてある。
図3は上記キャップ21を取り除き、テンショナボディ20を後方から見た図である。キャップ21に設けられた左右1対のボルト挿通孔21a(図2)に嵌挿された図示されないボルトがテンショナボディ20のボルト挿通孔20b(図3)を貫通してシリンダヘッド6の後部のテンショナ取付け部6a(図1)に螺着され、油圧テンショナ0はシリンダヘッド6に一体に装着される。図3において、テンショナボディ20の中央には後述のプランジャ23やバルブホルダ22(図4)を挿通するプランジャ収納孔20a(図3)が貫通している。
図4は図2のIV−IV断面図であり、上記テンショナ0の縦断面図である。矢印Fr,Reは、テンショナ0における各部材の位置を示すために、テンショナ自体の前後方向として定義される方向を示すものであり、Frは前方、Reは後方を示している。テンショナ0の殻体は、テンショナボディ20とキャップ21とから成っている。上記キャップを取り外した状態で、テンショナボディ20の中心部に設けられたプランジャ収納孔20aに、テンショナボディ20の後端側から、プランジャ23とコイルばね24とバルブホルダ22が順次装着されている。プランジャ23はプランジャ収納孔20a内で前後に摺動可能になっている。コイルスプリング24のスプリング復元力によって、プランジャ23が前方へ突出するように付勢されている。なお、プランジャ23の先端部23aには当接部23cが一体に装着されている。
バルブホルダ22の基端部22a(図5)に形成された弁収納孔22c(図5)に、チェック弁25とリリーフ弁26とリリーフバルブシート27が順次装着されている。テンショナボディ20の下部に設けられた圧力保持弁収納孔20fに圧力保持弁29が、テンショナボディ20の後端から装着されている。テンショナボディ20の上部に設けられたエア抜き弁収納孔20h(図3)の前部から、エア抜き弁30が装着されている。キャップ21の内面とバルブホルダ22の後端の間はオイル貯留室28となっている。オイル貯留室28の周囲は、パッキン嵌装溝20d(図3)に嵌装された環状パッキン20e(図3)で囲まれている。プランジャ23の内面とバルブホルダ22のコイルスプリング保持体22dの外面の間は高圧油室31となっている。
図5は、プランジャ収納孔20aに挿入されるプランジャ23、コイルスプリング24、バルブホルダ22、チェック弁25、リリーフ弁26、リリーフバルブシート27、及びキャップ21の分解斜視図である。コイルスプリング24はプランジャ23の先端部23aの内面23bとバルブホルダ22の段部前端面22bとの間に介装される。バルブホルダ22の基端部22aに形成された弁収納孔22cの前部に、チェック弁25の弁ガイド25aが嵌装される。この弁ガイド25aにチェック弁コイルスプリング25bと球状弁体25cが後部から前方に向って順次嵌装される。
上記弁収納孔22cの後部に、リリーフ弁26の弁体26aが摺動可能に嵌装され、リリーフ弁26の弁体26aの弁室26b内において、オイル貯溜室28内に配置されたリリーフバルブシート27とリリーフ弁26の弁体26aの先端部26cとに、リリーフ弁コイルスプリング26dが介装される。オイル貯溜室28は、リリーフバルブシート27の開孔27a,リリーフ弁26,チェック弁25およびバルブホルダ22におけるコイルスプリング保持体22dの貫通孔22fを介して高圧油室31に接続されている。
図3において、プランジャ収納孔20aに対し、斜右下方に位置して、プランジャ収納孔20aと平行に圧力保持弁収納孔20fが形成され、この圧力保持弁収納孔20fに、圧力保持弁29が収納されている。圧力保持弁収納孔20fの後端は、環状パッキン20eで囲まれたオイル貯溜室28(図4)に開口している。
図6に上記圧力保持弁29の分解状態が示してある。キャップを取り外した状態で、テンショナボディ20の圧力保持弁収納孔20fの開口から、圧力保持弁29のスプリング受29aと、閉塞用コイルスプリング29bと弁体29cとが順次嵌装される。この弁体29cの後方円筒周面29dは小径に形成されており、前記閉塞用コイルスプリング29bのスプリング復元力によって、図4に図示されているように、弁体29cは後方へ付勢されて、弁体29cの後方円筒周面29dの後端面29eがキャップ21の前端面21b(図4)に当接し、バルブホルダ22のリリーフ弁ポート22e(図4、図5)に通ずるテンショナボディ20の連通ポート20g(図4、図6)が閉塞されるようになっている。なお、前記バルブホルダ22に形成されたリリーフ弁ポート22eは、基端部22aの外周面に形成された周方向溝と、その周方向溝の底において周方向へ均等な間隔をなし弁収納孔22cの中心に向って形成された複数の連通孔とで構成されている。
図3において、プランジャ収納孔20aに対し斜左上方に、プランジャ収納孔20aと平行に横断面形状が円形のエア抜き弁収納孔20hが形成され、このエア抜き弁収納孔20hに、エア抜き弁30が収容されている。エア抜き弁収納孔20hの後部は、図4に図示されるように、エア抜き通路30aを介して高圧油室31に連通している。
図6に上記エア抜き弁30の分解状態が示してある。エア抜き弁収納孔20hの前方開口端からエア抜き弁収納孔20h内に弁ボディ30b、コイルスプリング30eおよびスプリング受け筒体30fが順次嵌装され、このスプリング受け筒体30fは、エア抜き弁収納孔20hに一体に螺着される。弁ボディ30bの周面には、断面略矩形の環状溝30cが形成され、その環状溝30cに断面略矩形の環状弁体30dが嵌装される。高圧油室31内の圧力変動がエア抜き通路30aを介して弁ボディ30bに伝達されると、コイルスプリング30eの弾性復元力により弁ボディ30bが前後に往復動し、オイル中に含まれている空気がオイルから分離されて、環状溝30cと環状弁体30dの隙間を経由して、エア抜き弁30の前部開口30g(図4)とテンショナ取付け部6aのエア排出通路39(図4)から、外部へ放出されるようになっている。
図7は図2のVII−VII断面図である。テンショナボディ20の後端面20cとキャップ21の凹面21cとで構成されたオイル貯溜室28の下部には、テンショナボディ20を後部から前部に向い下方へ傾斜して貫通したテンショナオイル通路32(図3も参照)が設けてある。この通路32は、シリンダヘッド6のテンショナ取付け部6aに形成されたシリンダヘッドオイル通路33に接続されている。図1に図示されるように、このシリンダヘッドオイル通路33は、シリンダブロック5における図示されないオイル通路を介してクランクケース4のオイル通路34を介してオイルフィルタ35に接続され、オイルフィルタ35はオイル通路36を介してオイルポンプ37の吐出口に接続されており、内燃機関3の運転に連動して稼動状態となるオイルポンプ37により、クランクケース4の底部に貯溜されているオイルがストレーナ38を介してオイルポンプ37に吸入される。オイルポンプ37から吐出されたオイルは、オイル通路36,オイルフィルタ35,オイル通路34,シリンダヘッドオイル通路33およびテンショナオイル通路32を介してテンショナ0のオイル貯溜室28に供給されるようになっている。更に、オイル貯溜室28から、リリーフ弁26の弁室26b、弁孔26e、チェック弁25の弁室25e、開口25f、及びバルブホルダ22の貫通孔22fを経て、テンショナの高圧油室31に供給され、プランジャ23が駆動される。
図8は、オイル貯溜室28内の圧力が上昇して、クラッキング圧力を超え、チェック弁25が開弁して、オイルがリリーフ弁26の弁孔26eからチェック弁25の弁室25e,開口25fおよびバルブホルダ22の貫通孔22fを介して高圧油室31に流入し、プランジャ23が前方へ突出した状態を示している。プランジャ23の当接部23cがテンショナスリッパ15に当接し、高圧油室31内のオイル圧力によってテンショナスリッパ15(図1)を強く前方へ押し、弛緩側の無端タイミングチェン13が緊張状態となって、無端タイミングチェン13のバタツキが抑制される。
内燃機関3が停止して、オイル貯溜室28内のオイル圧力が低圧の状態では、図4に図示されるように、圧力保持弁29の閉塞用コイルスプリング29bのスプリング復元力で圧力保持弁29は閉塞されているが、図8に示されるように、内燃機関3の始動に連動してオイル貯溜室28内のオイル圧力が上昇すると、閉塞用コイルスプリング29bのスプリング復元力に打勝って圧力保持弁29の弁体29cが前方へ押されて、圧力保持弁29における小径の後方円筒周面29dがテンショナボディ20の連通ポート20gに接近し、図8に示されるように、この連通ポート20gが開口するので、バルブホルダ22のリリーフ弁ポート22eにオイルが流入する。
このような状態において、内燃機関3における各燃料室圧力の間欠的な圧力上昇等による駆動スプロケット10の回転トルクの変動でテンショナスリッパ15が後方へ傾いてプランジャ23が後方へ強く押返された状態になると、高圧油室31内のオイル圧力が上昇して、リリーフ弁26の弁体26aが後方へ移動し、チェック弁25の弁座25d(図5)からリリーフ弁26の先端部26cの当接面26f(図5)が離れて、チェック弁25の弁室25e内のオイルは弁座25dとリリーフ弁26の先端部26cの当接面26fとの間から、バルブホルダ22のリリーフ弁ポート22eとテンショナボディ20の連通ポート20gと圧力保持弁収納孔20fとを介してオイル貯溜室28に還流し、無端タイミングチェン13の異常な張力増大が阻止されるとともに、テンショナスリッパ15のバタツキが抑制される。
図6において、テンショナボディ20のプランジャ収納孔20aは、後部の大径部41と前部の小径部42とからなり、その境界に段差部43が形成されている。図5において、プランジャ23も、後部の大径部44と前部の小径部45を備え、その境界に段差部46が形成されている。プランジャ23はテンショナボディ20に後方から挿入される。高圧油室31の圧力に押されて、プランジャが前方へ突出しプランジャ23の段差部46がプランジャ収納孔20aの段差部43に当接すると、プランジャ23は前進を止める。即ち、上記両方の段差部は、プランジャ抜け止めのストッパの働きをしている。
第1のリークオイル排出手段:
図9は、図4の隙間部40の部分拡大図である。テンショナボディ20とプランジャ23の間の隙間はプランジャ23が摺動可能な隙間であるが、ガタが生じない程度に微小である。プランジャ23の摺動に伴って、高圧油室31のオイルはこの隙間に入って、段差部43,46に挟まれた大きい隙間の部分49に入る。プランジャ23が前進すると、大きい隙間の部分49のオイルは圧縮される。前部の小径部隙間48からの漏れが少ないと、プランジャ23は前進が阻害される。したがって、下流側の小径部隙間48の面積を上流側の大径部隙間47の面積より大きくして、オイルの流出を阻害しないようにしてある。本実施形態においては、プランジャ収納孔20a、プランジャ23は共に、流出オイルの流れにおいて、上流側は大径部、下流側は小径部となっている。
上記隙間は微小であるから、プランジャ収納孔20aの内径及びプランジャ23の外径の加工に当たっては、まず、大径部隙間47の寸法は、必要な寸法となるよう、基準寸法(内径・外径)と加工公差を適切に設定されるものとして、以下に小径部隙間48の寸法の決め方について述べる。即ち、大径部隙間47の寸法が最も大きく出来上がる場合の隙間寸法Aより、小径部隙間48の寸法が最も小さく出来上がる場合の隙間寸法Bの方が大きくなるよう、各部の内径・外径(基準寸法)と加工公差が設定される。即ち、
A=「プランジャ収納孔大径部41の内径の許容最大値」―「プランジャ大径部44の外径の許容最小値」
B=「プランジャ収納孔小径部42の内径の許容最小値」―「プランジャ小径部45の外径の許容最大値」
として、A<B の関係が成立するよう基準寸法(各内径、外径)と加工公差(許容最大値、許容最小値)が設定される。
上記のリークオイル排出手段は、プランジャ収納孔20aとプランジャ23との間の隙間全体の面積或いは寸法の精度を管理しようとするものであるが、次に述べるのはプランジャ収納孔20aの小径部にオイル排出溝51を形成するリークオイル排出手段である。
第2のリークオイル排出手段:
図10はテンショナボディ20の前面図である。図11は図10のXI−XI断面図である。テンショナボディ20の前面から、プランジャ収納孔20aの小径部42に加工工具50を当ててオイル排出溝51を形成し、加工工具50の先端がプランジャ収納孔20aの大径部41に達するまで溝50を形成する。これによって、オイルの排出性を高めることができる。
以上詳述したリークオイル排出手段においては次のような特徴と効果がある。
(1)プランジャ収納孔20aとプランジャ23との隙間のうち、上流側の大径部隙間47の面積より、オイルを流出させる下流側の小径部隙間48の面積を大きくしてある。油圧調整として設定される上流側の隙間面積を小さくし、下流側ではこの隙間より大きくすることにより、油圧調整に作用しない下流側では、オイル排出性を高めることにより、オイル抵抗によるプランジャ23の摺動抵抗を低減して、プランジャ23の動きを円滑にすることができる。
(2)上流側の大径部隙間47の寸法が最も大きく出来上がる場合の隙間寸法より、下流側の小径部隙間48の寸法が最も小さく出来上がる場合の隙間寸法の方が大きくなるよう、プランジャ収納孔20aとプランジャ23との基準寸法と加工公差を設定して加工を行なう。これによって、隙間の寸法管理を確実にして、下流側のオイル排出性能を高めることができる。
(3)前記テンショナボディ20のプランジャ収納孔小径部42の摺動面にオイル排出溝51を形成し、その上流端が前記プランジャ収納孔大径部41に到達させてある。これにより、下流側でのオイルの排出性を高めることができる。
(4)プランジャ23は、上流側のプランジャ大径部44と、下流側のプランジャ小径部45とからなるプランジャ段差部46を有し、テンショナボディ20のプランジャ収納孔20aは、上記プランジャ23の上流側のプランジャ大径部44と対応するプランジャ収納孔大径部41と、上記プランジャの下流側のプランジャ小径部45に対応するプランジャ収納孔小径部42とからなるプランジャ収納孔段差部43を有しており、このプランジャ段差部46が、前記プランジャ収納孔段差部43に係合して、プランジャ23の抜け止め構造をなしている(図9)。前記オイル排出溝51は、前記プランジャ収納孔小径部42に形成され、オイル排出溝51の上流端が前記プランジャ収納孔大径部41に至るよう形成されている。したがって、プランジャ23が前進するときのオイル排出性を向上することができる。
(5)前記オイル排出溝51を下流端側からプランジャ収納孔小径部42に機械加工により形成し、加工工具50の先端がプランジャ収納孔大径部41に至るように加工する(図11)。したがって、容易にオイル排出溝51を形成することが出来る。
(6)前記オイル排出溝51は無端タイミングチェーン13の移動方向とプランジャ23の軸線とを含む平面(図10のC−C面)を避けた位置に配置してある。これは、プランジャ23は無端タイミングチェーン13の移動方向に振動するので、オイル排出溝51が上記無端タイミングチェーン13の移動方向とプランジャ23とを含む平面内に設けられると、振動によって、オイル排出溝51の縁がプランジャ23を傷つける恐れがあるので、これを避けるためである。
(7)油圧テンショナ0を車両に取付けた状態において、オイル排出溝51のオイル排出方向が水平より下向きとなるよう取り付けられる(図1)。これによって、オイルの自重による排出も可能となるので、オイルを良好に排出することが出来る。
(8)前記オイル排出溝51は、テンショナボディ20のプランジャ収納孔20aの中心線に対して、対向する位置に対で設けられている(図10)。オイル排出溝を近接した位置ではなく、対向配置して離すことによって、テンショナボディ20の強度低下を抑えながら、オイルを良好に排出することを可能にするためである。
0…油圧テンショナ、13…無端タイミングチェーン、20…テンショナボディ、20a…プランジャ収納孔、23…プランジャ、31…高圧油室、40…隙間部(プランジャ収納孔とプランジャの間)、41…プランジャ収納孔大径部、42…プランジャ収納孔小径部、43…プランジャ収納孔段差部、44…プランジャ大径部、45…プランジャ小径部、46…プランジャ段差部、47…大径部隙間(上流側の)、48…小径部隙間(下流側の)、49…大きい隙間の部分、50…加工工具、51…オイル排出溝

Claims (8)

  1. 油圧テンショナリフタ(0)のテンショナボディ(20)にプランジャ(23)が摺動可能に嵌装されて、前記テンショナボディ(20)と前記プランジャ(23)とで高圧油室(31)が構成され、前記テンショナボディ(20)の内周面と前記プランジャ(23)の外周面との間に、前記高圧油室(31)内のオイルが外部へ流出できる隙間部(40)が設けられた油圧テンショナリフタ(0)のリークオイル排出手段において、
    前記隙間部(40)のうち、上流側隙間(47)の面積より、オイルが流出する下流側隙間(48)の面積が大きいことを特徴とする油圧テンショナリフタ(0)のリークオイル排出手段。
  2. 上流側隙間(47)寸法が最も大きく出来上がる場合の隙間寸法より、下流側隙間(48)寸法が最も小さく出来上がる場合の隙間寸法の方が大きくなるよう、内径・外径と加工公差が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の油圧テンショナリフタ(0)のリークオイル排出手段。
  3. 前記テンショナボディ(20)の下流側摺動面(42)に、オイル排出溝(51)が形成され、その上流端が前記上流側隙間(47)に到達していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の油圧テンショナリフタ(0)のリークオイル排出手段。
  4. 前記プランジャ(23)は、上流側のプランジャ大径部(44)と、下流側のプランジャ小径部(45)とからなるプランジャ段差部(46)を有し、
    前記テンショナボディ(20)は、前記プランジャ(23)の上流側のプランジャ大径部(44)と対応するプランジャ収納孔大径部(41)と、前記前記プランジャ(23)の下流側プランジャ小径部(45)に対応するプランジャ収納孔小径部(42)とからなるプランジャ収納孔段差部(43)を有し、
    前記プランジャ(23)のプランジャ段差部(46)が、前記テンショナボディ(20)のプランジャ収納孔段差部(43)に係合して、前記プランジャ(23)の抜け止め構造をなし、
    前記オイル排出溝(51)は、前記プランジャ収納孔小径部(42)に形成され、オイル排出溝(51)の上流端が前記プランジャ収納孔大径部(41)に至るよう形成されることを特徴とする請求項3に記載の油圧テンショナリフタ(0)のリークオイル排出手段。
  5. 前記オイル排出溝(51)を下流端側からプランジャ収納孔小径部(42)に機械加工により形成し、前記加工工具(50)の先端がプランジャ収納孔大径部(41)に至ることを特徴とする請求項4に記載の油圧テンショナリフタ(0)のリークオイル排出手段。
  6. 前記オイル排出溝(51)は無端伝動帯(13)の移動方向を避けた位置に配置されることを特徴とする請求項3乃至請求項5の何れかに記載の油圧テンショナリフタ(0)のリークオイル排出手段。
  7. 油圧テンショナリフタ(0)を車両に取付けた状態において、前記オイル排出溝(51)のオイル排出方向が水平より下向きとなるよう配置されることを特徴とする請求項3乃至請求項6の何れかに記載の油圧テンショナリフタ(0)のリークオイル排出手段。
  8. 前記オイル排出溝(51)は、テンショナボディ(20)のプランジャ収納孔(20a)の中心線に対して、対向する位置に対で設けられることを特徴とする請求項3乃至請求項7の何れかに記載の油圧テンショナリフタ(0)のリークオイル排出手段。
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